JP3729256B2 - コプレーナ線路 - Google Patents
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Description
本発明は、線路の幅がテーパー状に変化する伝送線路に関し、特にテーパー部分での高周波信号の反射を低減し、特性インピーダンスを一定に保持することが可能な伝送線路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、伝送線路は特性インピーダンスが一定な高速・高周波用の線路であり、同軸線路、マイクロストリップ線路及びコプレーナ線路(Coplanar Waveguide)等が存在する。また、コプレーナ線路は平面上に構成することが可能であり、製造が容易である。
【0003】
図7はこのような従来の伝送線路(コプレーナ線路:以下、単に伝送線路と呼ぶ。)の一例を示す平面図である。図7において1は中心導体、2及び3はグランドである。中心導体1と両端のグランド2及び3との間には図7中”GP01”及び”GP02”に示すようなギャップが存在する。
【0004】
伝送線路では中心導体1の幅とギャップの幅との比によって線路の特性インピーダンスが決定される。また、同じ特性インピーダンスであっても中心導体1等の幅の異なる伝送線路を構成することが可能である。
【0005】
すなわち、図7に示す伝送線路において中心導体1の左端の幅とギャップの幅を”W1”及び”S1”とし、中心導体1の右端の幅とギャップの幅を”W2”及び”S2”とした場合、
W1:S1=W2:S2 (1)
なる関係を満足すれば同一の特性インピーダンスとなる。
【0006】
但し、図7に示すように”W1+2×S1<W2”なる関係の場合には、単純に両端の中止導体1の幅を維持しながら中心部に向って延長しただけでは、中心導体1とグランド2及び3が短絡してしまう。
【0007】
このため、図7中”TP01”及び”TP02”に示す部分に直線的にテーパー形状を設けている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図7に示すような直線状のテーパー形状では、伝送線路を伝送するエネルギーは中央導体1の縁の部分に集中するため、微分できない中央導体1の部分で高周波信号の反射が生じ伝送損失が発生してしまうと言った問題点があった。
【0009】
また、図7に示すような直線状のテーパー形状では図7中”TP01”及び”TP02”に示すテーパー部分で特性インピーダンスが一定ではなく、伝送線路に沿って特性インピーダンスを保持すると言った伝送線路の要請を満足できないと言った問題点があった。
従って本発明が解決しようとする課題は、テーパー部分での高周波信号の反射を低減し、特性インピーダンスを一定に保持することが可能な伝送線路を実現することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
線路の幅がテーパー状に変化するコプレーナ線路において、
中央導体と、この中央導体の両端にギャップを介して形成された2つのグランドとを備え、前記中央導体のテーパー部分の縁の形状を微分可能な曲線の形状とし、前記テーパー部分の両端の微分係数が”0”で微分可能な曲線の形状であると共に、前記テーパー部分であって、前記中心導体の縁の法線方向の中心導体の中心線迄の幅と前記法線方向の前記ギャップの幅とが一定の比率になるように前記グランドの縁の形状を形成することにより、高周波信号の反射を低減させることが可能になり、テーパー部分の特性インピーダンスを一定に保持することが可能になる。
【0011】
請求項2記載の発明は、
請求項1記載の発明であるコプレーナ線路において、
前記曲線の形状が、
余弦曲線若しくは正弦曲線のうち微分係数が”0”になる2点の間の曲線の形状であることにより、高周波信号の反射を低減させることが可能になる。
【0012】
請求項3記載の発明は、
請求項1若しくは請求項2記載の発明であるコプレーナ線路において、
前記曲線の形状が、
2以上の直線によって近似されたことにより、伝送線路(コプレーナ線路)の設計が容易になる。
【0013】
請求項4記載の発明は、
請求項1若しくは請求項2記載の発明であるコプレーナ線路において、
前記グランドの縁の形状が、
2以上の直線によって近似されたことにより、伝送線路(コプレーナ線路)の設計が容易になる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る伝送線路の一実施例を示す構成平面図である。
【0017】
図1において4は中心導体、5及び6はグランドである。中心導体4と両端のグランド5及び6との間には図1中”GP11”及び”GP12”に示すようなギャップが存在する。
【0018】
また、特性インピーダンスとしては一般的に”50Ω”が用いられる場合が多いので、アルミナ基板を用いて中心導体の幅とギャップの幅の比が”8:2”になるようにすることにより、”約50Ω”の特性インピーダンスが実現できる。
【0019】
具体的には、図1中”W1’”及び”S1’”に示す中心導体4の左端の幅及びギャップの幅”80μm”及び”20μm”から、図1中”W2’”及び”S2’”に示す中心導体4の右端の幅及びギャップの幅”800μm”及び”200μm”に変化する。
【0020】
ここで、図1中”TP11”に示すテーパー部分の中心導体及びグランドの形状を図2を用いて説明する。図2は余弦(コサイン)曲線の一例を示す説明図である。但し、説明の簡単のために図1中の一点鎖線で示す中心導体4の中心線の図面上方の中心導体4及びグランド5について説明する。
【0021】
中心導体4は図1中”TP11”に示すテーパー部分で微分可能な滑らかな曲線でテーパーを形成し、図1中”TP11”に示すテーパー部分の両端では微分係数が”0”になるようにする。
【0022】
例えば、図2中”CC21”に示すような余弦(コサイン)曲線の内で、微分係数が”0”になる図2中”PT21”と図2中”PT22”との間の図2中”TS21”に示す曲線形状を中心導体4の縁の形状とする。
【0023】
一方、伝送線路を伝送するエネルギーは中心導体4の縁の近傍に集中するので、グランド5の形状は中心導体4の縁の法線方向の中心導体4の中心線迄の幅と当該法線方向のギャップの幅が一定の比率になるようにする。
【0024】
例えば、図1中”PT11”に示す点の法線方向の中心導体4の中心線迄の幅を”a”、図1中”PT11”に示す点の法線方向のギャップの幅を”b”とした場合、
a:b=4:2 (2)
となるようにすれば、特性インピーダンスを”約50Ω”にすることができる。
【0025】
すなわち、図7に示す従来例では中心導体の微分できない形状の縁の部分で高周波信号の反射が生じて伝送損失となるが、図1に示す実施例では中心導体の縁の形状は微分可能であるので従来例のような高周波信号の反射を低減させることが可能になる。
【0026】
また、図1に示す実施例ではテーパー部分の中心導体4の縁の法線方向の中心導体4の中心線迄の幅と当該法線方向のギャップの幅が一定の比率になるようにしているので、テーパー部分の特性インピーダンスを所望の値にさせることが可能になる。
【0027】
この結果、テーパー部分の中心導体4の形状を、テーパー部分の両端の微分係数が”0”で微分可能な滑らかな曲線の形状とし、グランド5の形状を中心導体4の縁の法線方向の中心導体4の中心線迄の幅と当該法線方向のギャップの幅が一定の比率になるようにすることにより、高周波信号の反射を低減させることが可能になり、テーパー部分の特性インピーダンスを一定に保持することが可能になる。
【0028】
なお、図1に示す実施例では余弦(コサイン)曲線の曲線を用いているが、このような曲線を直線近似しても構わない。図3及び図4は8本の直線で曲線を近似した場合の中心導体4及びグランド5の縁の座標を示す表である。
【0029】
すなわち、図1中”OP11”に示す中心導体4の中心線上であってテーパーの開始位置を原点とし、中心線を”x軸”、図1中”OP11”に示す原点を通過し中心線に垂直な軸を”y軸”とした場合の近似直線の通過する座標を示している。
【0030】
この場合には、テーパー部分を直線近似によって形成できるので伝送線路の設計が容易になる。
【0031】
また、図3及び図4では8本の直線により曲線を近似しているが、勿論、直線の数は8本に限定される訳ではなく、伝送線路の設計に応じて2本以上の直線 によって曲線を近似すれば良い。
【0032】
また、図1に示す実施例では余弦(コサイン)曲線の曲線を用いているが、位相が異なる正弦(サイン)曲線を用いても同様の結果を得ることができる。
【0033】
また、図1に示す実施例では余弦(コサイン)曲線の曲線を用いているが、テーパー部分の両端の微分係数が”0”で微分可能な滑らかな曲線の形状であれば、どのような曲線であっても良く、例えば、3次式等によって表現される曲線の形状を用いても構わない。
【0034】
また、図5は実施例と従来例との反射特性の一例を示す特性曲線図、図6は実施例と従来例との伝送特性の一例を示す特性曲線図である。
【0035】
具体的には、”0.254mm”厚のアルミナ基板上にテーパーを2つ用いて、両端の中心導体が細くなり、中心部の太い中心導体の部分が”3.5mm”連続するようにし、両端の細い中心導体の間で周波数特性を測定したものである。
【0036】
例えば、図5中”CH31”に示す実施例の反射特性は図5中”CH32”に示す従来例の反射特性と比較して極大値において”5〜10dB”程度改善され、図6中”CH41”に示す実施例の伝送特性は図6中”CH42”に示す従来例の伝送特性と比較して極小値において”0.5dB”程度改善されている。
【0037】
また、コプレーナ線路は基板の厚さによって所望の特性インピーダンスを得るための中心導体の幅とギャップの幅との比が変化する場合があるので、当該変化に応じて図1中”b”に示す中心導体の縁の法線方向のギャップの幅を調整すれば良い。
【0038】
例えば、図1中”a”に示す中心導体4の縁の法線方向の中心導体4の中心線迄の幅を決定しておき、基板の厚さによって変化した比率に応じて、図1中”b”に示す中心導体の縁の法線方向のギャップの幅を調整すれば良い。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果がある。
請求項1及び請求項2の発明によれば、テーパー部分の中心導体の形状を、テーパー部分の両端の微分係数が”0”で微分可能な滑らかな曲線の形状とすることにより、高周波信号の反射を低減させることが可能になる。
【0040】
また、請求項1及び請求項2の発明によれば、テーパー部分の中心導体の形状を、テーパー部分の両端の微分係数が”0”で微分可能な滑らかな曲線の形状とし、グランドの形状を中心導体の縁の法線方向の中心導体の中心線迄の幅と当該法線方向のギャップの幅が一定の比率になるようにすることにより、テーパー部分の特性インピーダンスを一定に保持することが可能になる。
【0041】
また、請求項3及び請求項4の発明によれば、曲線の形状を2以上の直線で近似することにより、テーパー部分を直線近似によって形成できるので伝送線路の設計が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る伝送線路の一実施例を示す構成平面図である。
【図2】余弦(コサイン)曲線の一例を示す説明図である。
【図3】8本の直線で曲線を近似した場合の中心導体4の縁の座標を示す表である。
【図4】8本の直線で曲線を近似した場合のグランド5の縁の座標を示す表である。
【図5】実施例と従来例との反射特性の一例を示す特性曲線図である。
【図6】実施例と従来例との伝送特性の一例を示す特性曲線図である。
【図7】従来の伝送線路の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
1,4 中心導体
2,3,5,6 グランド
Claims (4)
- 線路の幅がテーパー状に変化するコプレーナ線路において、
中央導体と、
この中央導体の両端にギャップを介して形成された2つのグランドとを備え、
前記中央導体のテーパー部分の縁の形状を微分可能な曲線の形状とし、前記テーパー部分の両端の微分係数が”0”で微分可能な曲線の形状であると共に、前記テーパー部分であって、前記中心導体の縁の法線方向の中心導体の中心線迄の幅と前記法線方向の前記ギャップの幅とが一定の比率になるように前記グランドの縁の形状を形成することを特徴とするコプレーナ線路。 - 前記曲線の形状が、
余弦曲線若しくは正弦曲線のうち微分係数が”0”になる2点の間の曲線の形状であることを特徴とする
請求項1記載のコプレーナ線路。 - 前記曲線の形状が、
2以上の直線によって近似されたことを特徴とする
請求項1若しくは請求項2記載のコプレーナ線路。 - 前記グランドの縁の形状が、
2以上の直線によって近似されたことを特徴とする
請求項1若しくは請求項2記載のコプレーナ線路。
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