JP3727577B2 - 炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法 - Google Patents

炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、燃料電池用電解質膜を成形する炭化水素系ポリマー溶液の溶媒を置換する炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図14は従来の燃料電池を示す説明図である。この燃料電池100は、負極(水素極)101と正極(酸素極)102との間に電解質膜103を配置し、負極101に含む触媒に水素分子(H2)を接触させるとともに、正極102に含む触媒に酸素分子(O2)を接触させることにより、電子e-を矢印の如く流して電流を発生させるものである。電流を発生させる際に、水素分子(H2)と酸素分子(O2)とから生成水(H2O)を得る。
【0003】
図15は従来の燃料電池を構成する電解質膜の成形方法を示す説明図である。負極101を基板105に積層した電極板106を準備するとともに、電解質膜用の炭化水素系ポリマー溶液(以下、「HC系ポリマー溶液」という)108を用意し、このHC系ポリマー溶液108を電極板106の負極101などに塗布する。
塗布したHC系ポリマー108を、例えばヒータで乾燥することにより電解質膜103を成形する。この電解質膜103に正極102を重ねることで、図14に示す燃料電池100を得る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、HC系ポリマー溶液108は、溶媒としてNメチル2ピロリドン(以下、「NMP」という)を含み、このNMP溶媒にイオン交換性HC系樹脂としてHC系ポリマーを溶媒と同量以下含む。このHC系ポリマーについて次図で説明する。
【0005】
図16(a),(b)はHC系ポリマー溶液の性質を説明した図である。
(a)において、HC系ポリマーを構成するポリマー分子111・・・(1個のみ示す)は、個々に分散しており、各分子111・・・はNMP溶媒の分子(NMP分子)112・・・で取り囲まれている。
このNMPは表面張力が高いという性質を備えているので、HC系ポリマー溶液108のぬれ性は悪い。
【0006】
(b)において、HC系ポリマー溶液108のぬれ性が悪いために、電極板106の負極101などにHC系ポリマー溶液108を塗布した際に、HC系ポリマー溶液108が負極101などで弾かれる。
これにより、HC系ポリマー溶液108を負極101などに均一に塗布することは難しく、電解質膜103の膜厚が不均一になり、燃料電池100の発電能力などを十分に確保することはできない。なお、想像線の電解質膜115は、膜厚が均一の状態を示す。
【0007】
そこで、本発明の目的は、電解質層膜の膜厚を均一に成形することができる炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1は、溶媒に炭化水素系ポリマーを混合させた混合液に、水を加えることで炭化水素系ポリマーのポリマー分子をゲル化させるゲル化工程と、ゲル化したポリマーゲルを大量の水で希釈することでポリマーゲル中の溶媒の濃度を下げる希釈工程と、希釈に用いた水を概ね除去する水除去工程と、乾燥によりポリマーゲル中の水を除去する乾燥工程と、ポリマーゲルをアルコール系溶媒に混合し、撹拌する溶解工程とからなる炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を特徴とする。
【0009】
ポリマー分子をゲル化し、ゲル化したポリマーゲル中の溶媒を水で希釈して溶媒濃度を下げ、希釈に用いた水をある程度除去した後、ポリマーゲルをアルコール系溶媒に混合して撹拌する。
ポリマーをゲル状にすることで、ポリマー分子がアルコール系溶媒に接触する面積が大きくなる。
これにより、アルコール系溶媒がポリマーゲルを取り囲んでポリマー分子をアルコール系溶媒に溶解することができるので、炭化水素系ポリマー溶液の溶媒をアルコール系に置換することができる。
【0010】
置換したアルコール系溶液は表面張力が小さいので、アルコール系の炭化水素系ポリマー溶液の表面張力を小さく抑えることができる。このため、炭化水素系ポリマー溶液のぬれ性を好適に保つことができるので、例えば炭化水素系ポリマー溶液を電極に塗布した際に、炭化水素系ポリマー溶液が電極で弾かれることを抑えることができる。
【0011】
請求項2は、希釈工程後の最初の溶媒の濃度を10wt%を越えないように設定したことを特徴とする。
【0012】
最初の溶媒の濃度が10wt%を越えないようにして、溶媒を少量に調整することで、炭化水素系ポリマー溶液の表面張力を小さく抑えることができる。これにより、炭化水素系ポリマー溶液のぬれ性を好適に保つことができ、例えば炭化水素系ポリマー溶液を電極に塗布した際に、炭化水素系ポリマー溶液が電極で弾かれることを防止できる。
このため、炭化水素系ポリマー溶液を電極板に均一の厚さで塗布することができるので、炭化水素系ポリマー溶液を乾燥した際に、電解質膜を均一の膜厚に成形することができる。
【0013】
一方、最初の溶媒の濃度が10wt%を越えてしまうと、溶媒が比較的多量になり、炭化水素系ポリマー溶液の表面張力を小さく抑えることが難しくなる。これにより、炭化水素系ポリマー溶液のぬれ性を好適に保つことが難しく、例えば炭化水素系ポリマー溶液を電極に塗布した際に、炭化水素系ポリマー溶液が電極で弾かれてしまう。
このため、炭化水素系ポリマー溶液を電極板に均一の厚さで塗布することができないので、炭化水素系ポリマー溶液を乾燥した際に、電解質膜を均一の膜厚に成形することができない。
【0014】
請求項3は、水除去工程では、室温・常圧において濾紙を用いて水を除去することを特徴とする。
【0015】
希釈に用いた水を濾紙を用いて室温・常圧において除去することで、希釈に用いた水を手間をかけないで簡単に除去することができる。このため、水除去工程を簡素化して生産性の向上を図ることができる。
加えて、濾紙を用いる簡単な設備で水を除去することができるので、設備費を抑えることができる。
【0016】
請求項4は、水除去工程で水を除去することで、ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を0.1〜3wt%に調整することを特徴とする。
【0017】
水除去工程後の、ポリマー分子の濃度が0.1wt%未満にしかならないと、希釈に用いた水がポリマーゲルの表面から十分に除去されないことになる。このため、乾燥工程において、ポリマーゲル中から水分子を効率よく乾燥させることが難しくなる。
そこで、ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を0.1wt%以上に調整して、乾燥工程においてポリマーゲル中から水分子を効率よく乾燥させることができるようにした。
【0018】
一方、ポリマー分子の濃度が3wt%を越えるまで水除去工程をおこなうと、希釈に用いた水の除去に時間がかかり過ぎて生産性を高める妨げになる。
そこで、ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を3wt%を越えないように調整して、水除去工程を短くして生産性の向上を図るようにした。
【0019】
請求項5は、乾燥工程で水を除去することで、ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を0.1〜20wt%に調整することを特徴とする。
【0020】
乾燥工程後の、ポリマー分子の濃度が0.1wt%未満にしかならないと、ポリマーゲル内の水分子が十分に除去されないことになり、ポリマーゲル中にアルコール溶媒を取り込むことが難しくなる。このため、ポリマーゲルをアルコール溶媒に溶解することができない。
そこで、ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を0.1wt%以上に調整して、ポリマーゲル中にアルコール溶媒を取り込み、ポリマーゲルをアルコール溶媒に溶解することができるようにした。
【0021】
一方、ポリマー分子の濃度が20wt%を越えるまで乾燥工程をおこなうと、ポリマーゲルはアルコール溶媒に再溶解しなくなる。
そこで、ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を20wt%を越えないように調整して、ポリマーゲルをアルコール溶媒に再溶解させるようにした。
なお、ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を20wt%を越えないように調整することで、乾燥工程を短くして生産性の向上を図ることも可能になる。
【0022】
請求項6は、乾燥工程の条件を、常圧において乾燥温度20〜80℃、乾燥時間0.5〜24時間としたことを特徴とする。
【0023】
乾燥温度が20℃未満になると、乾燥時間が24時間を越えることになり生産性を高める妨げになる。そこで、乾燥温度を20℃以上にすることで、乾燥時間を短くして生産性の向上を図ることにした。
一方、乾燥温度が80℃を越えるとポリマーが固化してしまう。そこで、乾燥温度を80℃を越えないようにすることでポリマーの固化を防ぐようにした。
【0024】
請求項7において、アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びノルマルプロピルアルコールのうちの少なくとも一種であることを特徴とする。
【0025】
ここで、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールやノルマルプロピルアルコールは、表面張力が小さく、HC系ポリマーゲルとの溶解能力に優れている。そこで、請求項7において、アルコール系溶媒として、メタノール、イソプロピルアルコール及びノルマルプロピルアルコールのうちの少なくとも一種を採用した。
【0026】
請求項8は、撹拌として遠心撹拌法を採用し、この遠心撹拌法により常温・常圧でポリマーゲルをアルコール系溶媒に混合させることを特徴とする。
【0027】
ポリマーゲルをアルコール系溶媒に混合させた状態で、この混合液を撹拌することでポリマーゲル内にアルコール系溶媒を効率よく取り込むことができる。これにより、ポリマー分子をアルコール系溶媒に効率よく溶解することができる。
また、遠心撹拌法とは、試料容器を自転させるとともに公転させながら試料容器内の溶液を混合・溶解させる方法をいい、この方法を採用することにより、スターラー等の一般的な撹拌法と比べて短時間で溶液の混合・溶解が可能になる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を採用した燃料電池を示す分解斜視図である。
燃料電池ユニット10は複数(2個)の燃料電池11,11で構成したものである。燃料電池11は、負基板13に負極(水素極)14を設けて負電極板12を形成し、この負電極板12に燃料電池用の電解質膜15を設け、正基板17に正極(酸素極)18を設けて正電極板16を形成し、この正極18を電解質膜15に重ね、負基板13の外側に負極側流路基板21を配置し、正基板17の外側に正極側流路基板24を配置したものである。
この燃料電池11をセパレータ26を介して複数個(2個)備えることで、燃料電池ユニット10を構成する。
【0029】
負基板13に負極側流路基板21を積層することで、負極側流路基板21の流路溝21aを負基板13で覆うことにより、水素ガス流路22を形成する。また、正基板17に正極側流路基板24を積層することで、正極側流路基板24の流路溝24aを正基板17で覆うことにより、酸素ガス流路25を形成する。
【0030】
水素ガス流路22に水素ガスを供給することで、負極14に含む触媒に水素分子(H2)を吸着させるとともに、酸素ガス流路25に酸素ガスを供給することで、正極18に含む触媒に酸素分子(O2)を吸着させる。これにより、電子(e-)を矢印の如く流して電流を発生させることができる。
なお、電流を発生させる際に、水素分子(H2)と酸素分子(O2)とから生成水(H2O)を得る。
【0031】
図2は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法で成形した電解質膜を示す断面図であり、負基板13に負極14を設けて負電極板12を形成し、負極14及び負基板13のうちの負極14の周囲のから突出した部位13aを、電解質膜15でそれぞれ覆った状態を示す。
負基板13は、炭素で形成した板材であり、一方の面13bに負極14を備える。この負極14に触媒を含み、この触媒に水素分子(H2)を吸着させる。
なお、図1に示す正基板17は、負極板13と同様に炭素で形成した板材であり、一方の面に正極18を備える。この正極18に触媒を含み、この触媒に酸素分子(O2)を吸着させる。
【0032】
電解質膜15は、HC系ポリマー溶液に含む溶媒を、アルコール系溶媒に置換した状態で、負極14及び負基板13のうちの負極14の周囲のから突出した部位13aにHC系ポリマー溶液を塗布し、塗布した後、乾燥することで得たイオン交換用の膜である。
【0033】
アルコール系溶媒は表面張力が小さい。このため、HC系ポリマー溶液中の溶媒をアルコール系に置換することで、HC系ポリマー溶液の表面張力を小さくすることができるので、HC系ポリマー溶液のぬれ性を好適に保つことができる。これにより、HC系ポリマー溶液を負電極板12の負極14に均一の厚さで塗布することができるので、電解質膜15を均一の膜厚に成形することができる。
【0034】
次に、電解質膜15の成形方法について説明する。先ず、図3〜図7に基づいて炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法について説明する。
図3(a)〜(c)は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を説明する第1工程説明図である。
(a)において、NMP溶媒31にHC系ポリマー33・・・を混合させた混合液30を水37に投入する。
【0035】
(b)において、HC系ポリマー33を構成するポリマー分子34・・・が水分子38・・・中に混合する。なお、混合液30を水37に投入した当所は、HC系ポリマー33の周囲にNMP溶媒31のNMP分子32・・・が存在するが、時間が経過することにより、HC系ポリマー33の周囲に水分子38・・・が進入する。
(c)において、HC系ポリマー33の周囲に水分子38・・・が進入することで、ポリマー分子34が(b)の密の状態から粗の状態に分解しして水37に溶解する。
【0036】
図4(a)〜(c)は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を説明する第2工程説明図である。
(a)において、ポリマー分子34・・・をゲル化させてポリマーゲル35とする。ポリマーゲル35は、略球体となる袋状を形成し、このポリマーゲル35内に水分子38・・・及びNMP分子31・・・を取り込む。
【0037】
(b)において、ポリマーゲル35を水洗いすることにより、ポリマーゲル35内からNMP分子31・・・を除去するとともにポリマーゲル35内に水分子38・・・を取り込ませる。すなわち、ポリマーゲル35内を大量の水37で希釈する。
【0038】
(c)において、ポリマーゲル35を大量の水37で希釈すること、すなわちポリマーゲル35中の水分子38・・・を増やすことで、ポリマーゲル35中のNMP分子32・・・を減少させ、ポリマーゲル35中のNMP溶媒の濃度を下げる。この際、NMP溶媒31の濃度を10wt%を越えないように調整する。
なお、NMP溶媒31の濃度を10wt%を越えないように調整した理由は図11で細説する。
【0039】
図5(a),(b)は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を説明する第3工程説明図である。
(a)において、ポリマーゲル35・・・を濾紙40に載せ、室温・常圧の条件で、ポリマーゲル35・・・の外周35a・・・に付着した水37を濾紙40の排水孔41・・・から除去する。これにより、希釈に用いた水37を概ね除去することができる。この際、ポリマーゲル35を構成するポリマー分子34の濃度を0.1〜3wt%に調整する。
なお、ポリマー分子34の濃度を0.1〜3wt%に調整した理由は図12で細説する。
【0040】
(b)において、例えばヒータ42でポリマーゲル35・・・を乾燥する。乾燥の条件は、常圧において乾燥温度20〜80℃、乾燥時間0.5〜24時間である。
なお、乾燥温度20〜80℃、乾燥時間0.5〜24時間に設定した理由は図13で細説する。
【0041】
図6(a),(b)は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を説明する第4工程説明図である。
(a)において、乾燥でポリマーゲル35内の水分子38・・・を所定量除去することにより、ポリマーゲル35を構成するポリマー分子34・・・の濃度を0.1〜20wt%に調整する。
なお、ポリマー分子34・・・の濃度を0.1〜20wt%に調整した理由は図12で細説する。
(b)において、ポリマーゲル35・・・にアルコール系溶媒44を加えることにより、ポリマーゲル35・・・をアルコール系溶媒44に混合する。
【0042】
図7(a)〜(c)は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を説明する第5工程説明図である。
(a)において、ポリマーゲル35をアルコール系溶媒44に混合した状態で、この混合液を撹拌する。混合液を撹拌することで、ポリマーゲル35内にアルコール系溶媒44のアルコール分子45・・・を取り込む。
【0043】
ポリマー分子34・・・をゲル状にすることで、ポリマー分子34・・・がアルコール系溶媒44に接触する面積が大きくなる。加えて、アルコール系溶媒44はポリマーゲル35内に進入しやすい性質を備えている。このため、ポリマーゲル35内にアルコール系溶媒44のアルコール分子45・・・を効率よく取り込むことができる。
加えて、ポリマーゲル35をアルコール系溶媒44に混合させた状態で、この混合液を撹拌することでポリマーゲル35内にアルコール分子45・・・をより一層効率よく取り込むことができる。
【0044】
(b)において、ポリマーゲル35内にアルコール分子45・・・を取り込むことで、ポリマーゲル35をポリマー分子34・・・に分解して、分解したポリマー分子34・・・をアルコール系溶媒44に溶解する。
(c)において、ポリマー分子34・・・をアルコール系溶媒44に溶解することで、混合液30のNMP溶媒31をアルコール系溶媒44に置換することができ、アルコール系のHC系ポリマー溶液46を得る。
【0045】
また、撹拌として遠心撹拌法を採用することで、試料容器を自転させるとともに公転させながら試料容器内の溶液を混合・溶解させるので、この方法を採用することにより、スターラー等の一般的な撹拌法と比べて短時間で溶液の混合・溶解が可能になる。
【0046】
ここで、アルコール系溶媒44としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)及びノルマルプロピルアルコール(NPA)のうちの少なくとも一種が該当する。
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールやノルマルプロピルアルコールは、表面張力が小さく、炭化水素系ポリマーとの溶解能力に優れている。このため、これらの溶媒を使用することで、炭化水素系ポリマーを比較的簡単にアルコール系溶媒に置換することができる。
【0047】
次に、炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法で得たアルコール系のHC系ポリマー溶液46で電解質膜を成形する方法を図8〜図9に基づいて説明する。
図8(a),(b)は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法で得た溶液による電解質膜の成形方法を説明する第1工程説明図である。
(a)において、負電極板12を負極14が上向きになるようにセットし、負極14及び負基板13のうちの負極14の周囲のから突出した部位13aにアルコール系のHC系ポリマー溶液46を塗布する。
【0048】
(b)において、アルコール系のHC系ポリマー溶液46の部位P1における力のつり合いは次式で表わすことができる。
γSV=γSL+γLV×cosθ1
但し、γSV:負電極板〜気体間の界面張力
γSL:負電極板〜溶液間の界面張力
γLV:溶液〜気体間の界面張力
θ1 :接触角
ここで、アルコール系のHC系ポリマー溶液46の表面張力を小さく抑えたので、γLV及びγSLを小さく抑えることができる。これにより、接触角θ1を小さくできるので、アルコール系のHC系ポリマー溶液46のぬれ性を好適に保つことができる。
【0049】
また、負極14などの電極は、触媒をバインダ(以下、「電極用溶媒」という)で結合している。このため、負極14などの電極に電解質膜を好適に積層するためには、電解質膜の溶媒で電極用溶媒を溶解する必要がある。
HC系ポリマー溶液46はアルコール系溶媒を含んでおり、このアルコール系溶媒は、電極用溶媒を溶解する極性やプロトン溶解性を備えている。このため、アルコール系のHC系ポリマー溶液46を負極14に塗布した際に、アルコール系のHC系ポリマー溶液46が負極14に弾かれることを防止できる。
【0050】
図9(a),(b)は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法で得た溶液による電解質膜の成形方法を説明する第2工程説明図である。
(a)において、上述したように、アルコール系のHC系ポリマー溶液46は、ぬれ性を好適に保つことができ、さらに電極用溶媒を溶解する極性やプロトン溶解性を備えているので、負極14及び負基板13の部位13aに塗布したアルコール系のHC系ポリマー溶液46が、負極14及び負基板13の部位13aで弾かれることを防止できる。
このため、アルコール系のHC系ポリマー溶液46を負極14及び負基板13の部位13aに均一の厚さで塗布することができる。
【0051】
(b)において、負極14及び負基板13の部位13aに均一に塗布したアルコール系のHC系ポリマー溶液46を、一例として乾燥炉のヒータ35で乾燥する。これにより、負極14及び負基板13の部位13aに電解質膜15を均一の膜厚で成形することができる。
【0052】
図10(a),(b)は比較例に係る電解質膜の成形方法を説明する図であり、HC系ポリマー溶液30(すなわち、NMP溶媒を含む混合液)を塗布した例について説明する。
(a)において、図3(b)に示す負極14及び負基板13のうちの負極14の周囲のから突出した部位13aにHC系ポリマー溶液30を塗布する。
HC系ポリマー溶液30に含まれているNMPは、表面張力が高いという性質を備えており、HC系ポリマー溶液30の表面張力は高くなる。
【0053】
ここで、HC系ポリマー溶液30の部位P2における力のつり合いは次式で表わすことができる。
γSV=γSL+γLV×cosθ2
但し、γSV:負電極板〜気体間の界面張力
γSL:負電極板〜溶液間の界面張力
γLV:溶液〜気体間の界面張力
θ2 :接触角
HC系ポリマー溶液30の表面張力が大きくので、γLV及びγSLが大きくなり、接触角θ2が大きくなる。このため、HC系ポリマー溶液30のぬれ性は悪くなる。
【0054】
また、HC系ポリマー溶液30はNMPの溶媒31を含んでおり、このNMP溶媒31は、電極用溶媒を溶解する極性やプロトン溶解性を備えていない。このため、HC系ポリマー溶液30を負極14に塗布した際に、HC系ポリマー溶液30が負極14に弾かれる。
【0055】
(b)において、上述したように、HC系ポリマー溶液30は、ぬれ性が悪く、さらに電極用溶媒を溶解する極性やプロトン溶解性を備えていないので、HC系ポリマー溶液30が負極14及び負基板13の部位13aで弾かれる。これにより、HC系ポリマー溶液30を均一に塗布することは難しく、電解質膜15の膜厚が不均一になる。
このように電解質膜15の膜厚が不均一になることで、電解質膜15で負極14を覆うことができない部位が発生し、負極14が露出する可能性がある。
【0056】
次に、図4(c)の希釈工程において、NMP溶媒31の濃度を10wt%を越えないように調整した理由を図11に基づいて説明する。
図11は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法で得た溶液で電解質膜を成形した際の膜厚のバラツキ幅を説明するグラフである。縦軸は電解質膜15の膜厚のバラツキ幅(μm)を示し、横軸はNMP溶媒31の濃度(wt%)を示す。
なお、電解質膜15の膜厚のバラツキ幅は20μmまでは許容するものとする。
【0057】
NMP溶媒31の濃度が0〜10wt%の範囲において、グラフ50は、比較的緩やかな傾斜となり、濃度が10wt%のときに膜厚のバラツキ幅を20μmに抑えることができる。よって、NMP溶媒31の濃度が0〜10wt%の範囲に設定することで、電解質膜15の膜厚のバラツキ幅を許容値(20μm)を越えないようにすることができる。
一方、NMP溶媒31の濃度が10wt%を越えると、グラフ50は、比較的急な傾斜となり、電解質膜15の膜厚のバラツキ幅は20μmを大きく越えてしまう。
そこで、希釈工程後の、NMP溶媒31の濃度を10wt%を越えないように設定した。
【0058】
ここで、NMP溶媒31の濃度と電解質膜15の膜厚のバラツキ幅との関係について説明する。
電解質膜15の膜厚のバラツキ幅は溶媒の表面張力に大きく影響を受ける。そこで、表面張力の大きなNMP溶媒31の濃度を10wt%を越えないように設定して、アルコール系のHC系ポリマー溶液46の表面張力を小さく抑えるようにした。
【0059】
これにより、アルコール系のHC系ポリマー溶液46のぬれ性を好適に保つことができるので、例えばHC系ポリマー溶液46を負極14に塗布した際に、HC系ポリマー溶液46が負極14で弾かれることを防ぐことができる。
このため、HC系ポリマー溶液46を負電極板12に均一の厚さで塗布して、図2に示すように電解質膜15を均一の膜厚に成形することができる。
【0060】
一方、NMP溶媒31の濃度が10wt%を越えると、アルコール系のHC系ポリマー溶液46の表面張力を小さく抑えることが難しくなる。これにより、HC系ポリマー溶液46のぬれ性を好適に保つことが難しく、例えばHC系ポリマー溶液46を負極14に塗布した際に、HC系ポリマー溶液46が負極14で弾かれてしまう。
このため、HC系ポリマー溶液46を電極板12に均一の厚さで塗布することが難しく、電解質膜を均一の膜厚に成形することはできない。
【0061】
次に、図5(a)の水除去工程において、ポリマーゲル35を構成するポリマー分子34の濃度を0.1〜3wt%に調整し、図6(a)の乾燥工程において、ポリマーゲル35を構成するポリマー分子34の濃度を0.1〜20wt%に調整した理由を図12に基づいて説明する。
【0062】
図12は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法の水除去工程後及び乾燥工程後のポリマー分子の濃度に関するグラフである。縦軸は乾燥工程後のポリマー分子34の濃度(wt%)を示し、横軸は水除去工程後のポリマー分子34の濃度(wt%)を示す。
グラフに示すように、水除去工程においてポリマー分子34の濃度を0.1〜3wt%に調整し、乾燥工程においてポリマー分子34の濃度を0.1〜20wt%に調整した領域51内であれば、ポリマーゲル35をアルコール系溶媒44に溶解することができる。
【0063】
水除去工程においてポリマー分子34の濃度を0.1〜3wt%に設定した理由はは以下の通りである。
水除去工程後の、ポリマー分子34の濃度が0.1wt%未満にしかならないと、希釈に用いた水37がポリマーゲル35の表面35aから十分に除去されないことになる。このため、乾燥工程において、ポリマーゲル35中から水分子38を効率よく乾燥させることが難しくなる。
そこで、ポリマーゲル35を構成するポリマー分子34の濃度を0.1wt%以上に設定して、希釈に用いた水37をポリマーゲル35の表面35aから十分に除去するようにした。
【0064】
一方、ポリマー分子34の濃度が3wt%を越えるまで水除去工程をおこなうと、希釈に用いた水37の除去に時間がかかり過ぎて生産性を高める妨げになる。そこで、ポリマーゲル35を構成するポリマー分子34の濃度を3wt%以下に設定して、希釈に用いた水37を比較的短い時間で除去するようにした。
【0065】
また、乾燥工程においてポリマー分子の濃度を0.1〜20wt%に設定した理由は以下の通りである。
乾燥工程後の、ポリマー分子34の濃度が0.1wt%未満にしかならないと、ポリマーゲル35内の水分子38が十分に除去されないことになり、ポリマーゲル35中にアルコール溶媒44を取り込むことが難しくなる。このため、ポリマーゲル35をアルコール溶媒44に溶解することができない。
そこで、ポリマーゲル35を構成するポリマー分子34の濃度を0.1wt%以上に設定して、ポリマーゲル35中にアルコール溶媒44を取り込むことができるようにした。
【0066】
一方、ポリマー分子34の濃度が20wt%を越えるまで乾燥工程をおこなうと、ポリマーゲル35はアルコール溶媒に再溶解しなくなる。
そこで、ポリマーゲル35を構成するポリマー分子34の濃度を20wt%を越えないように調整して、ポリマーゲル35をアルコール溶媒に再溶解させるようにした。
なお、ポリマーゲル35を構成するポリマー分子34の濃度を20wt%以下に設定することで、ポリマーゲル35内の水分子38を比較的短い時間で除去することが可能になり、生産性の向上に貢献することもできる。
【0067】
次に、図5(b)の乾燥工程において、乾燥の条件を常圧において乾燥温度20〜80℃、乾燥時間0.5〜24時間に設定した理由を図13に基づいて説明する。
図13は本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法の乾燥条件を説明するグラフである。縦軸は乾燥温度(℃)を示し、横軸は乾燥時間(hr)を示す。
このグラフはアルコール系溶媒に溶解可能なポリマー分子の好適な濃度(0.1〜20wt%)に調整するための乾燥条件を示すグラフである。
【0068】
すなわち、このグラフのエリア52がポリマー分子の好適濃度(0.1〜20wt%)に調整可能なエリアを示す。
このグラフから、乾燥温度を20℃に設定した際には、24時間継続して乾燥をおこなうことでポリマー分子34の濃度を20wt%に調整することができることが判る。また、乾燥温度を80℃に設定した際には、0.5時間の乾燥をおこなうことでポリマー分子34の濃度を20wt%に調整することができることが判る。
一方、ポリマー分子34の濃度を0.1wt%に調整する際には、乾燥温度を20℃に設定して、0.5時間の乾燥をおこなえばよいことが判る。
【0069】
ここで、乾燥工程の条件を、常圧において乾燥温度を20〜80℃、乾燥時間を0.5〜24時間と設定した理由は以下の通りである。
乾燥温度が20℃未満になると、乾燥時間が24時間を越えることになり生産性を高める妨げになる。そこで、乾燥温度が20℃以上に設定して生産性の向上を図ることを可能にした。
一方、乾燥温度が80℃を越えるとポリマーが固化してしまう。そこで、乾燥温度を80℃を越えないようにすることでポリマーの固化を防ぐようにした。
【0070】
次に、アルコール系溶媒44を、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)及びノルマルプロピルアルコール(NPA)のうちの少なくとも一種とした理由を、表1に基づいて説明する。ここで、比較例はNMP、実施例1はメタノール、実施例2はエタノール、実施例3はIPA、実施例4はNPAである。なお、メタノール、エタノール、IPA及びNPAには、それぞれ水が含まれている。
【0071】
【表1】
Figure 0003727577
【0072】
表1に示すように、比較例のNMPは、HC系ポリマーに対する溶解能力や、炭素との相性はともに良好であるが、表面張力(25℃において)が0.041N/mと大きい。
このため、比較例を溶媒としたHC系ポリマーにおいて、電解質膜15の目標膜厚50μmに対して、成形膜厚は0〜110μmとなる。これにより、成形膜厚のバラツキ幅が110μmになり膜厚は不均一になる。
【0073】
実施例1のメタノールは、アルコール系溶媒である。メタノールはHC系ポリマーに対する溶解能力や、炭素との相性はともに良好であり、加えて表面張力(25℃において)も0.022N/mと小さい。
このため、実施例1を溶媒としたHC系ポリマーにおいて、電解質膜15の目標膜厚50μmに対して、成形膜厚を40〜60μmの範囲に抑えることができる。これにより、成形膜厚のバラツキ幅を20μmと小さくして膜厚を均一にできる。
【0074】
実施例2のエタノールは、アルコール系溶媒である。エタノールはHC系ポリマーに対する溶解能力や、炭素との相性はともに良好であり、加えて表面張力(25℃において)も0.022N/mと小さい。
このため、実施例2を溶媒としたHC系ポリマーにおいて、電解質膜15の目標膜厚50μmに対して、成形膜厚を40〜55μmの範囲に抑えることができる。これにより、成形膜厚のバラツキ幅を15μmと小さくして膜厚を均一にできる。
【0075】
実施例3のIPAは、アルコール系溶媒である。IPAはHC系ポリマーに対する溶解能力や、炭素との相性はともに良好であり、加えて表面張力(25℃において)も0.021N/mと小さい。
このため、実施例3を溶媒としたHC系ポリマーにおいて、電解質膜15の目標膜厚50μmに対して、成形膜厚を45〜55μmの範囲に抑えることができる。これにより、成形膜厚のバラツキ幅を10μmと小さくして膜厚を均一にできる。
【0076】
実施例4のNPAは、アルコール系溶媒である。NPAはHC系ポリマーに対する溶解能力や、炭素との相性はともに良好であり、加えて表面張力(25℃において)も0.023N/mと小さい。
このため、実施例4を溶媒としたHC系ポリマーにおいて、電解質膜15の目標膜厚50μmに対して、成形膜厚を45〜55μmの範囲に抑えることができる。これにより、成形膜厚のバラツキ幅を10μmと小さくして膜厚を均一にできる。
【0077】
以上説明したように、比較例の溶液は表面張力が大きく、比較例の溶液をHC系ポリマーの溶媒とすることで、電解質膜15の膜厚は不均一になる。この結果、比較例はHC系ポリマーの溶媒として好ましくないので、判断は×である。
一方、実施例1〜4の溶液は表面張力が小さく、実施例1〜4の溶液をHC系ポリマーの溶媒とすることで、電解質膜15の膜厚を均一にすることができる。この結果、実施例1〜4はHC系ポリマーの溶媒として好適なので、判断は○である。
【0078】
なお、前記実施形態では、アルコール系溶媒としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びノルマルプロピルアルコールのうちの一種を採用する例について説明したが、これに限らないで、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びノルマルプロピルアルコールのうちから、例えば2種のように複数種を選択することも可能である。
また、前記実施形態では、本発明の溶媒置換方法で溶媒を置換したアルコール系のHC系ポリマー溶液46を電解質膜15の成形に用いる例について説明したが、この他の用途に用いることも可能である。
【0079】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、ポリマー分子をゲル化し、ゲル化したポリマーゲル中の溶媒を水で希釈して溶媒濃度を下げ、希釈に用いた水をある程度除去した後、ポリマーゲルをアルコール系溶媒に混合して撹拌する。
【0080】
ポリマーをゲル状にすることで、ポリマー分子がアルコール系溶媒に接触する面積が大きくなる。加えて、アルコール系溶媒はポリマーゲル内に進入しやすい性質を備えている。
これにより、アルコール系溶媒がポリマーゲル内に入り込んでポリマー分子をアルコール系溶媒に溶解することができるので、炭化水素系ポリマー溶液の溶媒をアルコール系に置換することができる。
【0081】
置換したアルコール系溶液は表面張力が小さいので、アルコール系の炭化水素系ポリマー溶液の表面張力を小さく抑えることができる。よって、炭化水素系ポリマー溶液のぬれ性を好適に保つことができるので、例えば炭化水素系ポリマー溶液を電極に塗布した際に、炭化水素系ポリマー溶液が電極で弾かれることを抑えることができる。
従って、炭化水素系ポリマー溶液を電極に均一の厚さで塗布することができるので、炭化水素系ポリマー溶液を乾燥した際に、電解質膜を均一の膜厚に成形することができる。
【0082】
請求項2は、希釈工程後の最初の溶媒の濃度を10wt%を越えないように設定することで、最初の溶媒を少量に調整する。これにより、炭化水素系ポリマー溶液の表面張力を小さく抑えることができ、炭化水素系ポリマー溶液のぬれ性を好適に保つことができる。これにより、例えば炭化水素系ポリマー溶液を電極に塗布した際に、炭化水素系ポリマー溶液が電極で弾かれることを防止できる。
このため、炭化水素系ポリマー溶液を電極板に均一の厚さで塗布することができるので、炭化水素系ポリマー溶液を乾燥した際に、電解質膜を均一の膜厚に成形することができる。
【0083】
請求項3は、希釈に用いた水を濾紙を用いて室温・常圧において除去することで、希釈に用いた水を手間をかけないで簡単に除去することができる。このため、水除去工程を簡素化して生産性の向上を図ることができる。
加えて、濾紙を用いる簡単な設備で水を除去することができるので、設備費を抑えることができ、生産性の向上を図ることができる。
【0084】
請求項4は、ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を0.1〜3wt%に設定することで、希釈に用いた水をポリマーゲルの表面から十分に除去することができ、かつ希釈に用いた水を比較的時間をかけないで除去することができる。
このように、希釈に用いた水をポリマーゲルの表面から十分に除去することで、乾燥工程においてポリマーゲル中から水分子を効率よく乾燥させることができる。加えて、希釈に用いた水を比較的時間をかけないで除去することができるので、生産性の向上を図ることが可能になる。
【0085】
請求項5は、ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を0.1〜20wt%に設定することで、ポリマーゲル内の水分子が十分に除去することができ、かつポリマーゲルをアルコール溶媒に再溶解させることを可能にした。
このように、ポリマーゲル内の水分子を十分に除去し、ポリマーゲルをアルコール溶媒に再溶解可能とすることで、ポリマーゲル中にアルコール溶媒を取り込むことができる。
なお、ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を20wt%を越えないように調整することで、乾燥工程を短くして生産性の向上を図ることも可能になる。
【0086】
請求項6は、乾燥温度を20〜80℃に設定することでポリマーの固化を防ぐことができる。さらに、乾燥時間を0.5〜24時間に抑えることで、乾燥時間を比較的短く抑え、かつ設備費を抑えるようにした。このように、乾燥時間を比較的短く抑えることで生産性の向上を図ることができ、設備費を抑えることでコストアップを抑えることが可能になる。
【0087】
請求項7によれば、メタノール、イソプロピルアルコールやノルマルプロピルアルコールは、表面張力が小さく、HC系ポリマーゲルとの溶解能力に優れている。そこで、アルコール系溶媒として、メタノール、イソプロピルアルコール及びノルマルプロピルアルコールのうちの少なくとも一種を採用した。
このため、これらの溶媒を使用することで、炭化水素系ポリマーを比較的簡単にアルコール系溶媒に置換することができる。
【0088】
請求項8は、ポリマーゲルをアルコール系溶媒に混合させた状態で、この混合液を撹拌することでポリマーゲル内にアルコール系溶媒を効率よく取り込むことができる。これにより、ポリマー分子をアルコール系溶媒に効率よく溶解することができる。
また、遠心撹拌法を採用することで、試料容器を自転させるとともに公転させながら試料容器内の溶液を混合・溶解させることができるので、スターラー等の一般的な撹拌法と比べて短時間で溶液の混合・溶解が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を採用した燃料電池を示す分解斜視図
【図2】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法で成形した電解質膜を示す断面図
【図3】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を説明する第1工程説明図
【図4】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を説明する第2工程説明図
【図5】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を説明する第3工程説明図
【図6】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を説明する第4工程説明図
【図7】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法を説明する第5工程説明図
【図8】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法で得た溶液による電解質膜の成形方法を説明する第1工程説明図
【図9】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法で得た溶液による電解質膜の成形方法を説明する第2工程説明図
【図10】比較例に係る電解質膜の成形方法を説明する図
【図11】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法で得た溶液で電解質膜を成形した際の膜厚のバラツキ幅を説明するグラフ
【図12】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法の水除去工程後及び乾燥工程後のポリマー分子の濃度に関するグラフ
【図13】本発明に係る炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法の乾燥条件を説明するグラフ
【図14】従来の燃料電池を示す説明図
【図15】従来の燃料電池を構成する電解質膜の成形方法を示す説明図
【図16】HC系ポリマー溶液の性質を説明した図
【符号の説明】
11…燃料電池、14…負極、15…電解質膜、18…正極、30…混合液、31…NMP溶媒(最初の溶媒)、32…NMP分子、33…HC系ポリマー、34…ポリマー分子、35…ポリマーゲル、37…水、38…水分子、40…濾紙、44…アルコール系溶媒、45…アルコール分子、46…アルコール系のHC系ポリマー溶液。

Claims (8)

  1. 溶媒に炭化水素系ポリマーを混合させた混合液に、水を加えることで炭化水素系ポリマーのポリマー分子をゲル化させるゲル化工程と、
    ゲル化したポリマーゲルを大量の水で希釈することでポリマーゲル中の溶媒の濃度を下げる希釈工程と、
    希釈に用いた水を概ね除去する水除去工程と、
    乾燥によりポリマーゲル中の水を除去する乾燥工程と、
    ポリマーゲルをアルコール系溶媒に混合し、撹拌する溶解工程と、からなる炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法。
  2. 前記希釈工程後の最初の溶媒の濃度を10wt%を越えないように設定したことを特徴とする請求項1記載の炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法。
  3. 前記水除去工程では、室温・常圧において濾紙を用いて水を除去することを特徴とする請求項1記載の炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法。
  4. 前記水除去工程で水を除去することで、前記ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を0.1〜3wt%に調整することを特徴とする請求項1記載の炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法。
  5. 前記乾燥工程で水を除去することで、前記ポリマーゲルを構成するポリマー分子の濃度を0.1〜20wt%に調整することを特徴とする請求項1記載の炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法。
  6. 前記乾燥工程の条件を、常圧において乾燥温度20〜80℃、乾燥時間0.5〜24時間としたことを特徴とする請求項1記載の炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法。
  7. 前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びノルマルプロピルアルコールのうちの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法。
  8. 前記撹拌として遠心撹拌法を採用し、この遠心撹拌法により常温・常圧でポリマーゲルをアルコール系溶媒に混合させることを特徴とする請求項1記載の炭化水素系ポリマーの溶媒置換方法。
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