JP3727476B2 - 回転電機の固定子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は回転電機の固定子に関し、特に分割形成したヨーク及びティースを組み立てて構成する固定子に適用して有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
図3は従来技術に係る回転電機の固定子鉄心の一部を抽出して示す説明図である。同図に示すように、この固定子鉄心は、磁路を形成する環状のヨーク1と、このヨーク1の内周面から径方向に関し中心側に突出したティース2とを有している。ティース2は、柱状の磁極部2aと、内周面が円弧状に形成された磁極片2bとからなる。磁極部2aは固定子コイル(図示せず。)が嵌装される部分で、その基端部はヨーク1の内周面に固着され、その先端部には磁極片2bが固着されている。磁極片2bは回転子(図示せず。)との間のギャップの磁束分布を改善して磁束を回転子の表面に広く分布させるためのもので、周方向に関し磁極部2bから両側に突出している。
【0003】
かかる固定子鉄心に固定子コイルを装着してなる固定子においては、固定子コイルの内径よりも磁極片2bの周方向に関する幅が小さいので、固定子コイルを磁極部2aに嵌装した後に磁極片2bを磁極部2aに固着している。このため、磁極部2aと磁極片2bとは分割して形成される。また、磁極部2aとヨーク1とを分割形成するとともに、ヨーク1自体も複数のヨーク片1aに分割して形成する場合が多い。ちなみに、図3に示す固定子は、部分分割した珪素鋼板を積層してヨーク片1a、磁極部2a及び磁極片2bをそれぞれ形成し、その後これらの3部分を結合して固定子鉄心を形成している。すなわち、積層したヨーク片1a、磁極部2a及び磁極片2bを接合部A、B、Cで結合し、カシメ、溶接、接着等により接続して組み立てている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
図3に示す固定子鉄心では、積層したヨーク片1a、磁極部2a及び磁極片2bを接合部A、B、Cで結合する際に、接合部Aはヨーク片1aの外周部の溶接、接合部B、Cはレジン含浸法(一部カシメを含む。)による工法が採られているが、この場合の接合面積が狭いため、大トルクの回転電機にあっては強度不足を招来し、信頼性に欠けるという問題を生起する。特に、溶接の場合は、設備費が高価となり、少量生産に向かないばかりでなく、溶接作業時の熱により絶縁物の劣化が生じ易いという問題もある。また、積層するヨーク片1aの曲がり等が発生している場合には、接合部の嵌合が困難になるので、各部分の精度を高精度に保つとともに、治具精度の管理も重要になる。さらに、接合部A、B、Cはいずれも磁束密度が高い部分であるため、各接合部A、B、Cにおける起磁力損失が大きい。
【0005】
本発明は、上記従来技術に鑑み、特別な治具を必要とせずに高精度に組み立てることができ、また効率も向上させることができる回転電機の固定子を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成する本発明の構成は、次の点を特徴とする。
【0007】
1) 磁路を形成する環状のヨークと、このヨークから径方向に突出し、周方向に分散して複数個配設されるとともに固定子コイルが装着されて固定子磁極となるティースとを有する回転電機の固定子において、
ティースをティース外周部とティース芯部とで形成するとともに、
ティース外周部は、径方向に開口する凹部をその内部に有するようにヨークから径方向に突出させてヨークと一体的に形成する一方、
ティース芯部は磁極片を有するとともにこの磁極片と径方向に関する反対側の端部である先端部に、軸方向に伸びるスリ割り及びこのスリ割りに連続して同様に軸方向に伸びるピン孔を有するものとし、
ティース芯部をティース外周部の凹部にその開口部から嵌入するとともにピン孔にピンを圧入することによりティース芯部の先端部を拡幅してこのティース芯部をヨーク及びティース外周部と一体化するように構成したこと。
【0008】
2) 上記1)に記載する回転電機の固定子において、
ピンの圧入に伴うティース外周部の先端部の周方向への拡幅を防止するようにこのティース外周部の先端部が嵌入される凹部である補助溝をティース芯部の磁極片に設けたこと。
【0009】
3) 上記1)又は2)に記載する回転電機の固定子において、
ティース芯部はその幅が基端部から先端部に向けて漸減するように構成したこと。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る回転電機の固定子の一部を抽出して示す説明図である。同図に示すように、本形態に係る固定子は、磁路を形成する環状のヨーク11と、このヨーク11から径方向に突出し、周方向に分散して複数個配設されるとともに固定子コイル13が装着されて固定子磁極となるティース12とからなる。ここで、ティース12はティース外周部12aとティース芯部12bとで形成してある。これらのうちティース外周部12aは、径方向に関して中心側に開口する凹部をその内部に有するようにヨーク11から径方向に突出させてヨーク11と一体的に形成してある。すなわち、一体的に形成されるヨーク11及びティース外周部12aはヨーク11及びティース12が一体となった形状からティース芯部12bの部分を除いた部分がティース外周部12aの凹部となるように打ち抜いた珪素鋼板を軸方向に積層して形成してある。
【0012】
ティース芯部12bは磁極片12cを有するとともにこの磁極片12cと径方向に関する反対側の端部である先端部(ヨーク1側端部)に、軸方向に伸びるスリ割り12d及びこのスリ割り12dに連続して同様に軸方向に伸びるピン孔12eを有するものとして形成してある。すなわち、磁極片12c、スリ割り12d及びピン孔12eを有してティース外周部12aの凹部に嵌入し得る形状に打ち抜いた珪素鋼板を軸方向に積層して形成してある。このとき、ティース芯部12bはその幅が基端部から先端部に向けて漸減するように形成してあり、このことによりティース芯部12bをティース外周部12aの凹部に嵌入する際の作業性が良好になるように工夫している。
【0013】
本形態に係る固定子の固定子鉄心は、上述の如くヨーク11とティース外周部12aとが一体となった1つのブロックと、このブロックのティース外周部12aの凹部に嵌入するティース芯部12bである他のブロックとに2分割した点を最大の特徴とするものである。
【0014】
固定子コイル13は積層したヨーク11及びティース外周部12aのブロックのティース外周部12aの外周に径方向中心側から絶縁層14を介して嵌装する。かかる固定子コイル13の嵌装作業が終了した後、積層したティース芯部12bのブロックをティース外周部12aの凹部にその開口部から径方向に嵌入し、続いてピン孔12eにピン15を圧入することによりティース芯部12bの先端部を拡幅してこのティース芯部12bをヨーク11及びティース外周部12aが一体となったブロックに固着する。その後全体にレジンを含浸して当該固定子を完成する。ここで、ピン15のピン孔12eに対する圧入に伴うティース外周部12aの先端部(反ヨーク11側端部)の周方向への拡幅を防止するようにこのティース外周部12aの先端部が嵌入される凹部である補助溝12fをティース芯部12bの磁極片12cに設けてある。また、ピン15の圧入によるティース芯部12bの拡幅・固定が良好になされるよう、ティース外周部12aの凹部の底部の幅t2 と、この底部よりも若干開口部に寄った部分の幅t1 との関係は、t1 <t2 となっている。
【0015】
上述の如き第1の実施の形態に係る固定子は磁極片12cの内周面に回転子(図示せず。)の外周面が相対向する通常の回転電機の固定子であるが、本発明は磁極片の外周面に回転子の内周面が相対向するアウターロータ形の回転電機の固定子にも適用し得る。アウターロータの回転電機の固定子を、第2の実施の形態として図2に示す。同図に示すように、本形態に係る固定子は、磁路を形成する環状のヨーク21から径方向に関し遠心側にティース外周部22aを突出させ、このティース外周部22aの凹部にティース芯部22bを遠心側から凹部に嵌入したものであり、ティース芯部22bのピン孔22eにピン15を圧入することにより、前記実施の形態と同様に、ティース芯部22bの先端部を拡幅してヨーク21に固定するようにしたものである。本形態においてもティース22は、ティース外周部22aと、磁極片22cを有するティース芯部22bとで構成してある。また、ピン15の圧入による拡幅の際のティース外周部22aの先端部の周方向への拡幅を防止するようにこの先端部を磁極片22cに形成した補助溝22fに嵌入してある。この点の構成も前記実施の形態と同様である。なお、図中22dはスリ割り、23は固定子コイル、24は絶縁層である。
【0016】
【発明の効果】
以上実施の形態とともに詳細に説明した通り、本発明によれば磁極片を有するティース芯部をヨークと一体となったティース外周部の凹部に嵌入し、ティース芯部のヨーク側の端部のピン孔にピンを圧入することによりこの端部を拡幅してティース芯部がヨーク及びティース外周部と一体になるようにしたので、ティース芯部とティース外周部との接触面積を大きくとることができ、レジン含浸強度面での大きな強度を確保することができる。また、ティース芯部をティース外周部の凹部に嵌入する際に特別な治具を必要とすることなくこの作業を行うことができるので、高精度の固定子を容易に形成することができる。このときのティース外周部とティース芯部との接合部は磁束密度が小さい部分であるので、起磁力損失が少ないばかりでなく、接合に溶接を使用しないので、溶接時の熱が原因となる絶縁物の劣化を生起することはない。
【0017】
さらに、ヨークとティース外周部とを一体に形成して両者の間に接合部がないように構成したので、表皮効果により高密度磁束となる磁路表面での鉄損を抑制して高効率の回転電機を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る回転電機の固定子の一部を抽出して示す説明図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る回転電機の固定子の一部を抽出して示す説明図である。
【図3】従来技術に係る回転電機の固定子鉄心の一部を抽出して示す説明図である。
【符号の説明】
11、21 ヨーク
12、22 ティース
12a、22a ティース外周部
12b、22b ティース芯部
12c、22c 磁極片
12d、22d スリ割り
12e、22e ピン孔
12f、22f 補助溝
13、23 固定子コイル
15 ピン
Claims (3)
- 磁路を形成する環状のヨークと、このヨークから径方向に突出し、周方向に分散して複数個配設されるとともに固定子コイルが装着されて固定子磁極となるティースとを有する回転電機の固定子において、
ティースをティース外周部とティース芯部とで形成するとともに、
ティース外周部は、径方向に開口する凹部をその内部に有するようにヨークから径方向に突出させてヨークと一体的に形成する一方、
ティース芯部は磁極片を有するとともにこの磁極片と径方向に関する反対側の端部である先端部に、軸方向に伸びるスリ割り及びこのスリ割りに連続して同様に軸方向に伸びるピン孔を有するものとし、
ティース芯部をティース外周部の凹部にその開口部から嵌入するとともにピン孔にピンを圧入することによりティース芯部の先端部を拡幅してこのティース芯部をヨーク及びティース外周部と一体化するように構成したことを特徴とする回転電機の固定子。 - 〔請求項1〕に記載する回転電機の固定子において、
ピンの圧入に伴うティース外周部の先端部の周方向への拡幅を防止するようにこのティース外周部の先端部が嵌入される凹部である補助溝をティース芯部の磁極片に設けたことを特徴とする回転電機の固定子。 - 〔請求項1〕又は〔請求項2〕に記載する回転電機の固定子において、
ティース芯部はその幅が基端部から先端部に向けて漸減するように構成したことを特徴とする回転電機の固定子。
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