JP3727248B2 - エアバッグドアの表皮材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車の衝突時に作動して展開するエアバッグの展開圧力で薄肉の表皮材破断予定部を破断してエアバッグドア部が開くエアバッグドアの表皮材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
特開平9−48313号公報には、エアバッグドアが設けられたインストルメントパネルが開示されている。このインストルメントパネルでは、表皮材がポリ塩化ビニル(PVC)製であると、−30℃位の低温時にエアバッグドアの表皮材の脆化が激しくなるため、エアバッグの展開圧力で表皮材破断予定部を破断する時、図4に示すように、エアバッグドアaの略コ字状の表皮材破断予定部bとヒンジ部cとで囲まれるエアバッグドア部d外側の所要領域の表皮材eに亀裂fが生じて表皮材eの破片が飛散することから、この飛散を防止するために表皮材eの素材として靱性があり衝撃に対して強いオレフィン系エラストマー(TPO)等の熱可塑性エラストマーを採用している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の公報例では、表皮材が特定の素材に限定されるため、表皮材の素材選択の自由度が狭くなるとともに、上記熱可塑性エラストマーはポリ塩化ビニル(PVC)等の汎用樹脂に比べて高価であるため、製造コストが嵩む。
【0004】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、表皮材の素材選択に制約されることなく、しかも、製造コストをあまり掛けることなく、エアバッグドア部外側の表皮材が破片となって飛散しないようにしたことである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、この発明は、エアバッグドア部外周りの表皮材の構造を工夫したことを特徴とする。
【0006】
具体的には、この発明は、芯材表側に設けられ、エアバッグ作動時に破断する薄肉の表皮材破断予定部を有し、自動車の衝突時に作動して展開するエアバッグの展開圧力で上記表皮材破断予定部を破断してエアバッグドア部が開くエアバッグドアを上記芯材と共に構成する表皮材を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記表皮材は、パウダースラッシュ成形品であり、かつ、上記エアバッグドア部外側の表皮材裏側に上記表皮材破断予定部に沿うように形成され表皮材裏側へ向けて突出する突状部と、該突状部に対応する表皮材表側に上記表皮材破断予定部に沿うように形成され表皮材裏側へ向けて凹陥する凹溝とを備え、上記突状部の基部は他の部分に比べて厚肉に形成され、上記表皮材破断予定部は上記突状部の裾に形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成により、請求項1に記載の発明では、表皮材はパウダースラッシュ成形品であり、その裏側の突状部は、成形型であるシェル型の型突状部にパウダー樹脂原料が付着溶融することで形成されるため、型突状部の基部にはパウダー樹脂原料が他の部分に比べて多く付着する。その結果、成形された表皮材の突状部の基部の肉厚が他の部分に比べて厚くなり、この突状部の厚肉基部によりエアバッグドア部外側の表皮材が補強されて剛性が高くなり、エアバッグの展開圧力が作用しても、エアバッグドア部外側の表皮材に亀裂が生じず、表皮材が破片となって飛散しない。なお、型突状部により表皮材表側には突状部に対応して凹溝が形成される。
【0009】
また、上述の如く表皮材が構造面から補強されるため、表皮材の素材に制約がなく、しかも、安価な汎用樹脂を原料として採用することで製造コストがあまり掛からず、経済的なものになる。
【0010】
さらには、パウダー樹脂原料をシェル型に付着溶融させるだけで、エアバッグ展開時に飛散しない剛性大なる表皮材が簡単に成形される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、表皮材は発泡層を介して芯材と一体に設けられていることを特徴する。
【0012】
上記の構成により、請求項2に記載の発明では、発泡層の弾性により感触の良いソフト感が得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0014】
図3は車両用インストルメントパネル1を示し、このインストルメントパネル1は後述するエアバッグ装置13(図2に部分的に現れる)を備えている。本例では、エアバッグ装置13が運転席側方の助手席前方に配置されたフロントエアバッグ装置であり、エアバッグ装置13が車体前後方向からの衝撃から助手席の乗員を保護するようになっているが、運転者を保護するためにステアリングハンドルのパッドにも適用することができるものである。その他、センターピラーガーニッシュ等の車両用内装品にエアバッグ装置13を装備した場合にも適用することができる。
【0015】
図2に示すように、上記インストルメントパネル1は、ポリ塩化ビニル(PVC)等からなる表皮材3と、ポリプロピレン(PP)等からなる芯材5と、該芯材5と上記表皮材3との間に発泡ウレタン樹脂原料等を注入して発泡硬化させて一体成形したウレタンフォーム等からなる発泡層7とで構成されたインストルメントパネル本体9を備えている。つまり、表皮材3は発泡層7を介して芯材5に一体に設けられており、この発泡層7があることで表皮材3に感触の良いソフト感を付与することができる。図2のインストルメントパネル1では、芯材5がパネル全体に亘って一体に連続した1枚物であり、この芯材5裏側には、エアバッグ装置13の装着箇所に対応して前後2枚の取付プレート11が突設され、この2枚の取付プレート11にエアバッグ装置13が装着されるようになっている。
【0016】
上記エアバッグ装置13は、折り畳んだ状態のエアバッグ15と、図示しないインフレータとが収納されたエアバッグケース17を備え、このエアバッグケース17の前後には、係止爪19aを有する係止プレート19が設けられていて、上記前後2枚の取付プレート11の係合孔11aに上記係止プレート19の係止爪19aを係合させることで上記エアバッグケース17が取付プレート11に取り付けられ、上記エアバッグ装置13がインストルメントパネル本体9の裏側に配置されるようになっている。
【0017】
そして、上記エアバッグ装置13装着箇所に対応するインストルメントパネル本体9部分をエアバッグドア21としている。つまり、このエアバッグドア21は、上記表皮材3、芯材5及び発泡層7の三者でもって構成されている。
【0018】
上記エアバッグドア21の芯材5裏側には、図1にも拡大詳示するように、断面V字形の凹部23が形成され、この凹部23は、図3に破線及び一点鎖線にて示すように、車両後方側で車幅方向に延びる横長凹部23aと、この横長凹部23aの両端から車両前方に延びる左右2つの縦長凹部23bと、この両縦長凹部23bの車両前方端で車幅方向に延び、両縦長凹部23bの車両前方端同士を連結する横長凹部23cとで平面視で矩形に形成されている。そのうち、車両後方側の横長凹部23a及び左右2つの縦長凹部23bは、車両前方側の横長凹部23cよりも深く形成されてエアバッグドア21の芯材5にその一般部の肉厚より薄い薄肉脆弱部を構成している。
【0019】
したがって、上記薄肉脆弱部は、上記車両後方側の横長凹部23aに対応して車幅方向に延びる横破断予定部25aと、上記左右2つの縦長凹部23bに対応して上記横破断予定部25aの両端から車両前方に延びる左右2つの縦破断予定部25bとで平面視で略コの字形に形成され、これら横破断予定部25a及び左右2つの縦破断予定部25bにより、エアバッグ15の展開圧力で破断する薄肉の芯材破断予定部25が形成されている。また、上記車両前方側の横長凹部23cに対応してヒンジ部25cが形成されている。
【0020】
一方、上記エアバッグドア21の表皮材3裏側には、断面V字形の凹部27が形成され、この凹部27は、図3に破線にて示すように、車両後方側で車幅方向に延びる横長凹部27aと、この横長凹部27aの両端から車両前方に延びる左右2つの縦長凹部27bとで平面視で略コの字形に形成されて、エアバッグドア21の表皮材3にその一般部の肉厚より薄い薄肉脆弱部を構成している。
【0021】
したがって、上記薄肉脆弱部は、上記車両後方側の横長凹部27aに対応して車幅方向に延びる横破断予定部29aと、上記左右2つの縦長凹部27bに対応して上記横破断予定部29aの両端から車両前方に延びる左右2つの縦破断予定部29bとで平面視で略コの字形に形成され、これら横破断予定部29a及び左右2つの縦破断予定部29bにより、エアバッグ15の展開圧力で破断する薄肉の表皮材破断予定部29が形成されている。
【0022】
そして、上記芯材破断予定部25、表皮材破断予定部29及びヒンジ部25cで囲まれる矩形領域によりエアバッグドア部31が構成され、車両が衝突すると、エアバッグ15がインフレータの作動によって展開し、その展開圧力で芯材破断予定部25及び表皮材破断予定部29が破断することにより、上記エアバッグドア部31がヒンジ部25cを支点に車両前方上向きに開くようになっている。
【0023】
この発明の特徴の1つとして、上記表皮材3は、ポリ塩化ビニル(PVC)等のパウダー樹脂を原料としてパウダースラッシュ成形により成形されたパウダースラッシュ成形品である。
【0024】
今1つの特徴は、上記エアバッグドア部31外側の表皮材3裏側には、表皮材3裏側へ向けて突出する突状部33が上記表皮材破断予定部29に沿うように略コの字形に形成され、この突状部33の基部33aは、他の部分に比べて厚肉に形成されている。この基部33aが厚肉に形成されるのは、パウダースラッシュ成形法に起因するものであり、上記突状部33は、成形型であるシェル型の型突状部にパウダー樹脂原料が付着溶融することで形成されるため、型突状部の基部にはパウダー樹脂原料が他の部分に比べて多く付着する。その結果、成形された表皮材3の突状部33の基部33aの肉厚が他の部分に比べて厚くなるのである。そして、上記表皮材破断予定部29は上記突状部33の基部33a近傍(裾)に形成されている。
【0025】
また、上記突状部33に対応する表皮材3表側には、表皮材3裏側へ向けて凹陥する凹溝35が上記表皮材破断予定部29に沿うように平面視で略コの字形に形成されている。この凹溝35は、表皮材3をパウダースラッシュ成形する際に、シェル型の型突状部により必然的に形成されるものである。
【0026】
したがって、上記突状部33の厚肉の基部33aによりエアバッグドア部31外側の表皮材3を補強して剛性を高めることができ、エアバッグ15の展開圧力が表皮材3に作用しても、エアバッグドア部31外側の表皮材3に亀裂が生じて表皮材3が破片となって飛散するのを防止することができる。
【0027】
また、このように表皮材3を構造面から補強していることから、表皮材3の素材に制約がなく、しかも、ポリ塩化ビニル(PVC)等の安価な汎用樹脂を原料として採用することで、表皮材3を製造コストをあまり掛けずに経済的なものにすることができる。
【0028】
さらには、パウダー樹脂原料をシェル型に付着溶融させるだけでよいので、エアバッグ15展開時に飛散しない剛性大なる表皮材3を簡単に成形することができる。
【0029】
なお、上記の実施の形態では、エアバッグドア21がインストルメントパネル本体9と一体である場合を示したが、インストルメントパネル本体9に開口部を形成して該開口部にエアバッグドア21を嵌め込むようにしたタイプであってもよい。
【0030】
また、上記の実施の形態では、芯材破断予定部25及び表皮材破断予定部29を略コの字形に形成してエアバッグドア部31をヒンジ部25cを支点に車両前方上向きに開くようにしたが、芯材破断予定部25及び表皮材破断予定部29を略H字形に形成するとともに、上記芯材破断予定部25の車幅方向に延びる横破断予定部の両端で車両前後方向に延びる左右2つの縦破断予定部の車両前端同士及び車両後端同士を結ぶ位置にヒンジ部25cをそれぞれ形成することにより、エアバッグドア部31を車両前後方向上向きに観音開きに開くようにしてもよい。この場合には、突状部33及び凹溝35は表皮材破断予定部29の車両前後方向に延びる左右2つの縦破断予定部に沿って設けられることになる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、表皮材はパウダースラッシュ成形品であり、エアバッグドア部外側の表皮材裏側に表皮材破断予定部に沿うように突状部を形成するとともに、該突状部の基部を他の部分に比べて厚肉に形成し、上記表皮材破断予定部を上記突状部の裾に形成したので、その成形法に起因して厚肉になった基部によりエアバッグドア部外側の表皮材を補強してその大なる剛性により、エアバッグ展開時にエアバッグドア部外側を亀裂が生じないように強化して表皮材の飛散を防止することができる。また、表皮材を構造面から補強しているので、表皮材を素材選択に制約されることなく、しかも、安価な汎用樹脂でコストをあまり掛けることなく成形することができる。さらには、パウダー樹脂原料をシェル型に付着溶融させるだけで、エアバッグ展開時に飛散しない剛性大なる表皮材を簡単に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図3のA−A線における断面図である。
【図2】図3のB−B線における断面図である。
【図3】この発明の実施の形態に係る表皮材が適用されたエアバッグドアを備えたインストルメントパネルの斜視図である。
【図4】従来例の表皮材が適用されたエアバッグドアにおいてエアバッグドア部外側に亀裂が生じた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
3 表皮材
5 芯材
7 発泡層
15 エアバッグ
21 エアバッグドア
29 表皮材破断予定部
31 エアバッグドア部
33 突状部
33a 突状部の基部
35 凹溝
Claims (2)
- 芯材表側に設けられ、エアバッグ作動時に破断する薄肉の表皮材破断予定部を有し、自動車の衝突時に作動して展開するエアバッグの展開圧力で上記表皮材破断予定部を破断してエアバッグドア部が開くエアバッグドアを上記芯材と共に構成する表皮材であって、
上記表皮材は、パウダースラッシュ成形品であり、かつ、
上記エアバッグドア部外側の表皮材裏側に上記表皮材破断予定部に沿うように形成され表皮材裏側へ向けて突出する突状部と、
該突状部に対応する表皮材表側に上記表皮材破断予定部に沿うように形成され表皮材裏側へ向けて凹陥する凹溝とを備え、
上記突状部の基部は他の部分に比べて厚肉に形成され、
上記表皮材破断予定部は上記突状部の裾に形成されていることを特徴とするエアバッグドアの表皮材。 - 請求項1記載のエアバッグドアの表皮材において、
表皮材は発泡層を介して芯材と一体に設けられていることを特徴するエアバッグドアの表皮材。
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