JP3727138B2 - ポリエステルの連続製造方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、又は脂肪族ジカルボン酸乃至これらのエステル形成性誘導体と、ジオール成分とから連続溶融重合法によってポリエステルを連続して製造する方法とその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートで代表されるポリエステルはそのすぐれた物理的、化学的性質を有するため、種々の用途に広く用いられている。特に、繊維、フィルム、その他の成形品において、強度や弾性率等の機械特性、耐熱性等に優れているため、衣料、タイヤコード等の産業用繊維、エンジニアリングプラスチック等に広く用いられている。
【0003】
一般に、このような各種の用途に使用されるポリエステルは、直接重合法又はエステル交換法によって製造される。ここで、前者の直接重合法は、酸成分とジオール成分とを直接エステル化反応させることによりポリエステル先駆体を形成し、次いで該ポリエステル先駆体を減圧下で重縮合させて製造する方法である。他方、後者のエステル交換法は、酸成分の低級アルキルエステルとジオールとをエステル交換反応させてポリエステル先駆体を形成し、次いで該ポリエステル先駆体を減圧下で重縮合させて製造する方法である。
【0004】
上記のポリエステルの重合は、従来はバッチ方式によるものが多く用いられていたが、スケールメリットを生かし、安価にポリエステルを製造するために、連続方式への切り替えが進められてきており、連続方式を採用することによる歩留まりと品質の向上、重合度の均一化、操業性の向上等そのメリットは極めて大きいものがある。
【0005】
一般にポリエステルの連続製造方法の多くは、エステル交換反応槽又はエステル化反応槽と、重縮合反応槽とが複数組み合わせれたプロセスにより行われている。例えば、原料をエステル交換反応槽又はエステル化反応槽に供給して単量体を生成し、得られた単量体を初期重縮合反応槽へと供給して減圧下で反応させて低重合体を生成し、さらにこの低重合体を減圧下の重縮合反応槽へ供給して中間重合体及び高重合体を得ることが行われている。
【0006】
しかしながら、上記の反応設備の多くは複雑な構造を有しておリ、特に重縮合反応槽では、反応物を撹拌させて蒸発面積を大きくするために、極めて複雑な撹拌装置を備えた反応槽が提案されているが、これらの設備では、多大な設備費とエネルギーコストが必要となり、さらには、複数の反応設備とその附帯設備を設置する為のスペースも必要となるという問題がある。
【0007】
そこで、前掲の反応設備の製作コストを低下させる目的で、簡略化した反応装置による製造方法が提案されている。例えば、特公昭42−24191号公報には、垂直方向に反応室、蒸発室、及び仕上げ室の順に互いに連結された各室により連続的に高分子量重合体を生成させる方法とその装置が提案されている。しかしながら、該方法とその装置では、各室の気相部の表面更新が十分に行なわれず、また不活性ガス雰囲気下ではないため、装置内に飛散して付着したポリマーが滞留劣化を起こして異物となるという問題がある。更には、仕上げ室においては、1mmHgという高い真空度に維持する必要があって、大規模生産設備においては真空装置の大型化が必要となる。
【0008】
また、特開平8−311107号公報には、上塔のエステル交換塔と下塔の初期重合塔とを結合して一体構造物とした重縮合系高分子の連続製造装置が提案されている。すなわち、該装置は、原料の混合物からエステル交換反応によりオリゴマーを生成するエステル交換槽と、該オリゴマーを重縮合させて中間重合物を生成する初期重合槽とを鉛直方向に直列に上下に配置して一体構造物とした、重縮合系高分子の連続製造装置である。しかしながら、該連続製造装置では、初期重合までしか行なわれず、製品として価値のある高重合体を得るためには、さらにこれとは別の製造装置が必要となる。また、その気相部の表面更新が十分に行なわれず、しかも不活性ガス雰囲気ではないため、装置内に飛散付着したポリマーが滞留して熱劣化を起こして異物となるという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
以上に述べた諸問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、ポリエステル製造装置内に不活性ガスを吹き込みながら反応させることで反応速度と製造されるポリエステルの品質を、著しく向上させることができる、異物の発生が少ないポリエステルの連続製造装置を提供することにある。
【0010】
更には、一体構造化された反応装置を用いることで、設備の製作コストを大幅に削減でき、従来の製造方法と比較して大幅な設置スペースの縮小を図ることができ、しかも一つの製造装置でポリエステルの製造を可能とするポリエステルの連続製造装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決する手段】
ここに、本発明のポリエステルの連続製造方法として、
(請求項1) 芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、又は脂肪族ジカルボン酸乃至これらのエステル形成誘導体と、ジオール成分とからなる原料を連続溶融重合してポリエステルを連続して製造する方法において、
該原料を上部のエステル反応室でエステル交換反応又はエステル化反応させた後、得られた反応物を下部の重縮合反応室へ供して重縮合反応させると共に、これら反応室内に不活性ガスを吹き込むことを特徴とするポリエステルの連続製造方法、
(請求項2) 常圧若しくは常圧以上の圧力下でポリエステル重合体を得る請求項1記載のポリエステルの連続製造方法、
(請求項3) 反応物の液相中に不活性ガスを吹き込む請求項1記載のポリエステルの連続製造方法、及び
(請求項4) ジオール成分が含まれる不活性ガスを吹き込む請求項1記載のポリエステルの連続製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明のポリエステルの連続製造装置として、
(請求項5) 芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、又は脂肪族ジカルボン酸乃至これらのエステル形成誘導体と、ジオール成分とを連続溶融重合するポリエステルの連続製造装置において、
該連続製造装置は、上部がエステル交換反応室又はエステル化反応室、下部が重縮合反応室とからなる反応装置からなり、かつ該反応装置内への不活性ガス供給手段を含むポリエステルの連続製造装置が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の方法と装置によって製造するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリブチレンイソフタレート等を挙げることができる。また、芳香族ジカルボン酸成分を主成分とするジカルボン酸乃至そのエステル形成性誘導体としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、及び/又はそれらの低級アルキルエステル(アルキル基の炭素数は通常1〜4個)等を挙げることができる。更に、脂環族ジカルボン酸成分乃至そのエステル形成性誘導体としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸乃至そのエステル形成性誘導体としては、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸等が挙げられ、好ましくは、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレートが挙げられる。なお、これらの芳香族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分、脂肪族ジカルボン酸成分は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併せて用いてもよい。
【0014】
次に、ジオール成分としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、プロピレングリコール等が例示でき、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコールが挙げられる。これらのグリコール成分は、1種のみを単独で用いても、2種以上を併せて用いてもよい。
【0015】
また、ポリエステルには、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール等の三官能以上の多官能化合物、安息香酸、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物等の化合物を共重合することもできる。
【0016】
本発明におけるポリエステルの製造は、触媒の存在下或いは不存在下のどちらで行ってもよく、触媒を用いる場合には、公知の触媒を使用することができる。例えば、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、スズ化合物、亜鉛化合物、マグネシウム化合物等が用いられる。このような触媒を供給する位置や供給方法については、特に限定されるものではない。また、必要に応じて、慣用されている他の熱可塑性樹脂、添加剤、無機充填剤、有機充填剤等の一種以上をそのまま若しくはジオール成分とともに、本発明の反応装置に添加したり、反応装置の出側で、成形機、押出機、混合器等によって直接練り込んだり、ぺレット化した後、再溶融させてこれらを練り込むことこともできる。ここで、前記の他の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール等が例示される。また、添加剤としては、公知の酸化防止剤、帯電防止剤、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ化合物等の難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の難燃助剤、可塑剤、潤滑剤、離型剤、着色剤、結晶核剤等が例示される。さらに、無機充填剤としては、ガラス繊維、タルク、マイカ、ガラスフレークス、カーボン繊維、シリカ、アルミナ繊維、ミルドガラスファイバー、クレー、カーボンブラック、カオリン、酸化チタン、酸化鉄、酸化アンチモン、アルミナ等の金属化合物、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属化合物等が例示される。そして、有機充填剤としては、芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリエステル繊維等が例示される。
【0017】
以下、本発明の実施の態様について、図面を参照しながら更に詳細に説明する。図1は、本発明を実施するためのポリエステルの製造装置を例示したフロー図(模式断面図)である。
【0018】
該図において、1は本発明の方法を適用する、一体構造化した円筒状の連続製造装置を示し、該装置1には反応物を所望の温度に加熱する加熱装置(図示せず)が設けられている。なお、該加熱装置は、円筒状の連続製造装置1の胴廻りにジャケット室を形成し、該ジャケット室に熱媒等の加熱手段を通す加熱装置等、公知の加熱装置を用いることができる。
【0019】
また、2はエステル交換反応室又はエステル化反応室(以下、単に「エステル反応室」と称することもある)であり、3は上下に連結された一つ以上の室からなる重縮合反応室である。ここで、該エステル反応室2と重縮合反応室3とは、図示したように上下に連結されている。なお、4は屈曲溝を有する棚段、5及び6は原料供給管、7は流量調節バルブ、8は多孔板、そして9は不活性ガス供給管をそれぞれ示す。
【0020】
ここで、先ずエステル反応室2について説明すると、エステル反応室2においては、該原料供給管5及び6から連続的に原料が棚段4に供給される。なお、該棚段4の端部には、特公昭35−7380号公報に記載されている堰の如きレベル調整部材が設けられており、反応物を一定の液面レベルに維持している。このため、反応物は多段に設けられた棚板4上に所望量だけ滞留しながら順次溢流して流下し、エステル交換反応若しくはエステル化反応に必要な滞留時間を確保しながら反応を起こす。また、最下部の棚段4には液面レベル計(図示せず)設けられ、これによって液面が常に検出され、最適な液面レベルとなるようにコントロールされる。そして、流量調整バルブ7の下に設けられた、例えば特公昭36−13815号公報に記載の如き目皿構造を有する多孔板8を通過することで、反応物はフィラメント状、或いはフィルム状となって流下し、この間に副生物の蒸発が促進される。この際、不活性ガスの供給手段として設けられた不活性ガス供給管9から加熱された不活性ガスがエステル反応室2の気相部へと吹き込まれる。
【0021】
次に、重縮合反応室3について説明する。
図示した重縮合反応室3には、不活性ガスを吹き込むための複数の孔の開いたリング状配管10が設けられており、連続製造装置1の内壁面より該リング状配管10へと不活性ガスを供給する配管11が接続されている。このとき、不活性ガスは、不活性ガス供給配管12より供給され、加熱器13により所望の温度まで加熱された後、各重縮合反応室3へ吹き込まれる。
【0022】
各重縮合反応室3の底部14は、上方に漏斗状に開口した円錐状壁面を有しており、上部より連続的に流下する反応物を該底部14で受ける構造になっている。したがって、連続製造装置1の円筒内壁面と該底部14の円錐状壁面とによって反応物の液溜り部すなわち液相部が形成される。なお、円錐面の開度は反応条件によって変更できるようにすることができる。このようにして、反応物は、1つ以上の反応室を順次移動しながら不活性ガスによる撹拌効果と、気液接触部の面積の増大効果とにより著しく速い速度で重縮合反応が進行する。
【0023】
また、重縮合反応室間は管により連結されているが、その連結部に前記の流量調節バルブ7と多孔板8とを必要に応じて設置することができる。なお、該流量調節バルブ7と、各重縮合反応室3での反応物の滞留量を一定に維持するための液面レベル計(図示せず)とを連動させ、液面レベル計による液面レベルの検出値に応じて液量を任意の値にコントロールすることもできる。
【0024】
以上のように構成される、エステル反応室2及び重縮合反応室3において、反応により副生された蒸気状の副生物は、不活性ガスとともにその排出口と該反応室とを所望の圧力に保つための排気口を兼ねる開口15及び16より排気される。そして、このようにして、最終的に、最下段の液留部17より所望の重縮合反応を起こさせて得られたポリエステルは、排出口18よりギヤポンプ19によって連続的に排出される。
【0025】
なお、本発明の連続製造法によるポリエステルの製造法においては、反応時の圧力は特に制限されるものではなく、真空、常圧あるいは常圧以上の圧力下における重合反応においても適用は可能であるが、常圧あるいは常圧以上であることが好ましい。このため、従来法のように各反応室を減圧にして反応させる場合、抽気装置としてスチームエジェクター等を通常設けることが必要であるが、本発明の方法のように常圧あるいは常圧以上の圧力下で反応させる場合にはこのような装置は必ずしも必要ではない。したがって、該抽気装置を省略することにより設備費をさらに削減することができる。
【0026】
また、本発明においては、不活性ガスを吹き込む位置としては、連続製造装置1の液相部及び/又は気相部に吹き込むことが可能であるが、より速い反応速度を得るためには気相部よりも液相部とすることが好ましい。なお、ここでいう「液相部」とは、「連続製造装置内に滞留している反応物の内部」又は[輸送配管内に滞留する反応物の内部」を指し、その吹き込み方法については特に限定されるものではない。したがって、例えば、複数の供給管を設けて不活性ガスを液相部の複数箇所へ供給するようにしてもよく、また、静的あるいは動的混合器を設置して反応物と不活性ガスとを混合して供給する等の手段を用いることもできる。なお、不活性ガスの吹き込み速度及びその流量については、安定して連続運転が行なえる範囲であればよく、目的とするポリエステルの品質、例えば固有粘度、カルボキシル末端基濃度等が得られるように不活性ガスの流量を供給配管に設けたバルブ等によって調節することが好ましい。また、不活性ガスの吹き込みは連続的及び/又は間欠的であっても良い。さらには、導入する不活性ガスは加熱器13等で加温して導入することが好ましく、これによって吹き込んだ不活性ガスから反応物へと均一に熱が与えられ、反応に必要な熱を供給することができる。ただし、所望の温度よりも不活性ガスの温度が高い場合には、冷却器等で冷却して供給することが好ましい。
【0027】
さらには、予めジオール成分を含んだ不活性ガスを連続製造装置1内へ導入することも好ましい態様である。このようにジオール成分と共に不活性ガスを供給することによって、実質反応モル比の増加と不活性ガスの良好な分散とが期待でき、反応を促進する効果が大きくなる。なお、ここで言う「予めジオール成分等を含んだ不活性ガス」とは、他の重縮合反応室において反応時に副生されたジオール成分等を含んだ不活性ガス、或いは連続製造装置1へ供給する以前の段階で予めジオール成分と不活性ガスとを混合したものを指す。
【0028】
次に、本発明の不活性ガスとしては、反応に悪影響を及ぼさず、重合反応室における反応温度において気体であることが好ましく、このような不活性ガスとして、N2、Ar、He等を例示できる。なかでも、容易に得られることや低コストの利点から見て、特に窒素が望ましい。なお、このような不活性ガスは、反応器の液相部中だけでなく、気相部中にも導入することが好ましいことは言うまでもない。
【0029】
以上に述べたようにして最終的に得られたポリエステルは、引き続いて連続的に製糸工程へ供給し、前記の熱可塑性樹脂、添加剤、無機充填剤、有機充填剤等と連続的に混練装置や静的混合器などで混合あるいは反応させた後、紡糸することで繊維化したり、製膜工程へ供給することで薄膜化することができる。また、一旦、造粒化工程等でペレット化し、繊維化工程、薄膜化工程、樹脂成型工程等へ送ることもできる。
【0030】
また、最終的に得られたポリエステルを、造粒化工程等でペレット化し、不活性ガス雰囲気下及び/又は高真空下で固相重合してさらに重合度を高めることもでき、更には該ポリエステルを真空装置が連結された混練装置(例えば、2軸のベント付き押出機等)へと供給してさらに重合度を高めることができる。
【0031】
なお、ギアポンプを介して取り出されるポリエステルに不活性ガスが多く含まれると、造粒化工程等で十分にペレット化できないことがあり、この場合、造粒化する前段階において、脱ガス排出口を備えた脱ガス室あるいはベント付きの混練装置などへ該ポリエステルを供給して、脱ガスを行うことが好ましい。この場合、不活性ガス以外にジオール成分、あるいは水分などの除去も同時に行なうことができる。また、ポリエステルを連続的に取り出す手段として、ギアポンプ以外の手段、例えば、連続製造装置のポリエステル排出口に取り出し用のスクリューを設置し、該排出装置を本発明の連続製造装置と一体化させてもよい。
【0032】
なお、上記のポリエステルの製造工程において、反応副生物等を含んだ不活性ガスは、公知の方法である凝縮器、フィルター、燃焼装置、吸収装置等によって反応副生物等と分離することができる。また、このようにして分離した不活性ガスは循環ポンプ等によって前記の不活性ガス供給管へ還流させることで、循環使用することができる。この再循環使用の利点としては、反応副生物を系外にほとんど排出することなく運転できることが挙げられ、運転コストの低減が図られるのは勿論であるが、系外へそのまま放出することがないため、環境破壊の防止と公害防止という面からも大きなメリットを生じる。
【0033】
さらに、本発明のポリエステルの製造工程においては、ポリエステルの重合度が高くなる段階では、反応物の溶融粘度が大きくなり、不活性ガスの液相での移動速度は小さくなる。このため、重縮合反応室の反応物の液深を浅くしたり、薄膜化することによって、蒸気状副生物の移動距離を短縮することが好ましく、これによって、さらに高い重縮合反応速度が得られる。
【0034】
また、本発明の連続製造装置の加熱は、公知の手段で行うことができることは前述の通りである。例えば、このような公知の手段として、製造装置外殻より電気ヒーターにより直接加熱することも、また製造装置外殻を二重ジャケット構造となし、ジャケット内部に適当な加熱媒体、例えばダウサムの液あるいは蒸気、又は水蒸気を存在せしめて加熱する方法、反応室中に筒状の伝熱面を設置し、反応物を対流により反応室内で自己循環させる方法等を適宜採用することができる。前記加熱は各反応室毎及び反応室内をさらに分割し、独立して加熱しうるようにしてもよく、また2つ以上の反応室を一体として加熱することもできる。さらに、必要に応じて本発明の連続製造装置とは別個に設けた熱交換器中を通すことで加熱することもできる。
【0035】
なお、重縮合反応室の数及びその構造については、特に制限することはないが、重合反応室中での不活性ガスの分散を向上させる目的で、撹拌翼、分散板、整流部材、邪魔板、棚段等を必要に応じて設けることができる。
【0036】
【実施例】
図1に示した連続製造装置を用いて、ジメチルテレフタレート(DMT)300kg/hr及びエチレングリコール(EG)202部/hrと酢酸マンガン0.05mole%/DMT(以下、DMTに対するmole百分率を「mole%/DMT」と表記する)、酢酸亜鉛0.01mole%/DMTの触媒と共に原料供給管5よりエステル反応室2へと連続的に供給した。このとき、不活性ガス供給管9を介して反応物と向流で加熱した窒素をエステル反応室2の気相部へ連続的に0.5Nm3/minで吹き込んだ。そして、向流で吹き込んだ窒素に随伴させて、エステル交換反応で副成したメタノール蒸気を排気口15より排気した。該排気ガスにはエチレングリコール(EG)の蒸気も含まれており、該蒸気を蒸留塔でメタノールと分離した後、再度エステル反応室2へと還流させ、棚段4で仕切られたエステル室2中で不活性ガス雰囲気下150〜260℃の温度に加熱させながら常圧若しくは常圧以上の反応圧力下でエステル交換反応を進めた。次いで得られたエステル交換反応生成物に亜リン酸0.1mole%/DMT、更に重合触媒として三酸化アンチモン0.03mole%/DMTを供給管6を介して加えた後、流量調整バルブ7及び多孔板8を介することで、重縮合反応室3の上室へと反応物を複数本のフィラメント状にして流下させた。
【0037】
このとき、重縮合反応室3での反応温度は上段の反応室では260〜290℃とし、反応圧力は常圧若しくは常圧以上の圧力とし、下段の反応室では290℃とし、反応圧力は常圧若しくは常圧以上の圧力とした。このような条件下で、反応物は上段の反応室より順次下段の反応室へと流量調整バルブ7及び多孔板8を介して流下させた。窒素は、供給管11を介しリング状配管10より液相中に供給し、重縮合反応室3の上段に20Nm3/min、下段に5Nm3/minで供給し重縮合反応を進めた。
【0038】
また、反応により副生された蒸気状副生物は、窒素とともに排気口より排気し、図示しない凝縮器、フィルター、吸収装置等で反応副生物等と分離して、不活性ガス供給管12へ還流させ、循環使用した。なお、窒素とともに排出されたEGは回収して原料として再使用した。
【0039】
更に、下段の液留部17より最終的に得られるポリエステルは排出口18よりギヤポンプ19により連続的に排出し、造粒化工程でペレット化した。
【0040】
得られたポリエステルの固有粘度(オルソクロロフェノール中25℃で測定した溶融粘度から算出した値)は0.50、末端カルボキシル基濃度[エイ・コニックス(A.Conix)の方法(Makromol.Chem,26,226,1958参照)によって測定したポリマー106gあたりの当量数]は18eq/Tであった。また、得られたポリエステルは、窒素が絶えず反応室の気相部に存在するため異物の少ないポリエチレンテレフタレートであり、反応速度も従来法と比較して極めて速かった。
【0041】
[比較例]
上記実施例において、窒素を一切吹き込まない以外は、全く同様に反応させたが、ポリエステルの固有粘度が上昇しないのみならず、分解反応が著しかった。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の連続溶融重合法による製造法及び製造装置にくらべ、著しく反応速度を促進することができ、製造されるポリエステルの品質も向上させることができる。さらには、反応装置の製作コストを大幅に削減し、一つの製造装置でポリエステルの連続製造を可能とし、従来の製造方法と比較して大幅な設置スペースの縮小を可能とする。また、異物の発生が少ないポリエステルが製造でき、繊維、フィルム、その他成形素材として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するためのポリエステルの連続重合製造装置の概略フロー図(模式断面図)である。
【符号の説明】
1 ポリエステルの連続重合製造装置
2 エステル交換反応室
3 重縮合反応室
5、6 原料供給管
10 リング状配管
11、12 不活性ガス供給管
13 加熱器
Claims (5)
- 芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、又は脂肪族ジカルボン酸乃至これらのエステル形成誘導体と、ジオール成分とからなる原料を連続溶融重合してポリエステルを連続して製造する方法において、
該原料を上部のエステル反応室でエステル交換反応又はエステル化反応させた後、得られた反応物を下部の重縮合反応室へ供して重縮合反応をさせると共に、これら反応室内に不活性ガスを吹き込むことを特徴とするポリエステルの連続製造方法。 - 常圧若しくは常圧以上の圧力下でポリエステル重合体を得る請求項1記載のポリエステルの連続製造方法。
- 反応物の液相中に不活性ガスを吹き込む請求項1記載のポリエステルの連続製造方法。
- ジオール成分が含まれる不活性ガスを吹き込む請求項1記載のポリエステルの連続製造方法。
- 芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、又は脂肪族ジカルボン酸乃至これらのエステル形成誘導体と、ジオール成分とを連続溶融重合するポリエステルの連続製造装置において、
該連続製造装置は、上部がエステル交換反応室又はエステル化反応室、下部が重縮合反応室とからなる反応装置からなり、かつ該反応装置内への不活性ガス供給手段を含むポリエステルの連続製造装置。
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