JP3726719B2 - ポリテトラフルオロエチレンの改質方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という。)の改質方法に関し、特に効率的、かつ、低コストに改質することができるPTFEの改質方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
PTFEは、耐熱特性、化学的特性、電気的特性及び潤滑性等に優れているため、絶縁材料あるいは各種機器の構成部品など広い用途において使用されている。しかし、PTFEは、耐摩耗性及び耐クリープ性等の機械的特性が劣るため、これらの特性向上を目的として、電離性放射線の照射によって、分子間を架橋することが行われている。
【0003】
特に、架橋により改質したPTFE粉末を、たとえば、未架橋のPTFEあるいはテトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体等にブレンドして成形固化し、これを所定の形状に加工することによって得られる機械部品は、摺動体の部品などとして優れた特質を有しており、従来にはない有用かつ得意な機械部品として重用されている。
【0004】
図2は、従来のPTFEの改質方法を示す図である。従来は、未架橋のPTFE粉末1を型2に入れた後(図2(a))、恒温槽3内でマット状に固め(図2(b))、このマット状PTFE4を、低酸素濃度の雰囲気下で照射ホーン5により電離性放射線を照射することによって改質を行っていた(図2(c))。符号1aは、改質されたPTFE粉末である(図2(d))。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のPTFEの改質方法によると、PTFE粉末をマット状に成型すること、あるいは放射線照射後の製品取り出し等の作業をバッチ式で行うために多くの時間と手間を要することから作業効率が悪く、その上、生産性が低く、高コストの改質とならざるを得ないという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、効率的に優れ、低コストで改質を行うことのできるPTFEの改質方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するために、電離性放射線を照射することによるポリテトラフルオロエチレンを改質するポリテトラフルオロエチレンの改質方法において、20℃以下の温度のポリテトラフルオロエチレンの粉末を用意する第1のステップと、前記ポリテトラフルオロエチレンの粉末を層状に形成しながら搬送する第2のステップと、前記層状に形成したポリテトラフルオロエチレンの粉末を搬送しながら加熱するステップと電離性放射線を照射するステップを含む第3のステップとを備えたことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの改質方法を提供する。
【0008】
前記第1のステップは、20℃以下の温度の管理下におかれたホッパ及び攪拌機を用いて前記ポリテトラフルオロエチレンの粉末を供給するステップを含むことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの改質方法を提供する。
【0009】
また、前記第1のステップは、熱伝導率の高い材料で構成した前記ホッパ及び前記攪拌機を用い、前記ホッパの外周を巡らした配管中に冷却液を通過させてホッパを冷却するステップを含むことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの改質方法を提供する。
【0010】
更に、前記第3のステップは、不活性ガス雰囲気下、前記ポリテトラフルオロエチレンの粉末に前記電離性放射線を照射するステップを含むことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの改質方法を提供する。
【0011】
また、前記第3のステップは、融点付近に加熱された前記ポリテトラフルオロエチレンの粉末に前記電離性放射線を照射するステップを含むことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの改質方法を提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明によるPTFEの改質方法の実施の形態を説明する。
図1は、本発明によるPTFEの改質方法の実施に使用される改質装置の概略を示す図である。適度に冷却されたPTFE粉末1をホッパ6に投入し、凝集を防ぐため攪拌機8により攪拌する。符号9は、攪拌機8の駆動源であるモータである。
【0013】
このとき、PTFE粉末1は、ガラス転移点が17℃付近と低いので、常温である20℃以上において凝集する性質がある。そのため、20℃以下にホッパ内を冷却する必要がある。ホッパ6や攪拌機8を銅などの熱伝導度の高い材料を用いて製作し、ホッパ6の外周を配管7で巡らして、配管中を低温水などの冷却液を流すことによりホッパ6中の温度の上昇を防止すると共に、連続供給が可能となる。
【0014】
PTFE粉末1は、ホッパ6の下方から連続運転されている第1のコンベアベルト10の上に落とされ、第1のコンベアベルト10は、ならし板11によって連続的に所定の厚さの層12にならされたPTFE粉末1を搬送する。
【0015】
所定の厚さの層12にならされたPTFE粉末1は、加熱ゾーン13に移動する。PTFE粉末1は、加熱ゾーン13に設けられている連続運転されている第2のコンベアベルト14により移動しながら、加熱装置15により所定温度に加熱される。加熱温度は、架橋効率を高めるためにPTFE粉末1の融点より若干高い温度、例えば340℃に設定される。
なお、加熱装置15の熱源としては、抵抗加熱あるいは誘導加熱のいずれでもよい。この実施例では、抵抗加熱方式を採用した。
【0016】
第2のコンベアベルト14により搬送されて加熱された層12は、連続運転されている第3のコンベアベルト17が設けられた照射ゾーン16に移動する。この照射ゾーン16は、コンベアベルト17の上方にTi箔の照射窓18を有し、コンベアベルト17の下方に配置されたビームキャッチャ19より構成される部屋20によって囲まれており、部屋20の内部には、照射による有毒ガスの発生を防ぐため、不活性ガスが封入されている。
【0017】
加熱された層12は、連続運転されているコンベアベルト17によって搬送される間に照射ホーン5により所定線量、例えば、100kGyの電離性放射線を照射されて分子間を架橋されたPTFE粉末1aに改質される。
【0018】
電離性放射線の照射線量は、層12の厚さに応じて調整される。調整は、照射ホーン5から照射される放射線出力が一定の場合、第1〜第3のコンベアベルト10、14および17の速度の変更によって行われ、これによりPTFE粉末1aの架橋改質度合が調整される。コンベアベルトの搬送速度を一定にして放射線出力を変えることによっても改質度合の調整を行うことは可能である。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によるPTFEの改質方法によれば、冷却したPTFEの粉末を所定の厚さの層にして連続搬送し、連続搬送されているPTFEの粉末の層に加熱及び電離性放射線を照射することによってPTFEの粉末の改質を行うこととしたため、作業が連続して行われることになり、効率がよく、かつ、低コストでPTFEの改質を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるPTFEの改質方法の実施に使用される改質装置の概略を示す図である。
【図2】 従来のPTFEの改質方法を示す図である。
【符号の説明】
1 PTFE粉末
1a 改質されたPTFE粉末
2 型
3 恒温槽
4 マット状PTFE
5 照射ホーン
6 ホッパ
7 配管
8 攪拌機
9 モータ
10 コンベアベルト
11 ならし板
12 層
13 加熱ゾーン
14 コンベアベルト
15 加熱装置
16 照射ゾーン
17 コンベアベルト
18 照射窓
19 ビームキャッチャ
20 部屋

Claims (5)

  1. 電離性放射線を照射することによるポリテトラフルオロエチレンを改質するポリテトラフルオロエチレンの改質方法において、
    20℃以下の温度のポリテトラフルオロエチレンの粉末を用意する第1のステップと、
    前記ポリテトラフルオロエチレンの粉末を層状に形成して搬送する第2のステップと、
    前記層状に形成したポリテトラフルオロエチレンの粉末を搬送しながら加熱するステップと電離性放射線を照射するステップを含む第3のステップとを備えたことを特徴とするポリテトラフルオロエチレンの改質方法。
  2. 前記第1のステップは、20℃以下の温度の管理下におかれたホッパ及び攪拌機を用いて前記ポリテトラフルオロエチレンの粉末を供給するステップを含むことを特徴とする請求項1記載のポリテトラフルオロエチレンの改質方法。
  3. 前記第1のステップは、熱伝導率の高い材料で構成した前記ホッパ及び前記攪拌機を用い、前記ホッパの外周を巡らした配管中に冷却液を通過させてホッパを冷却するステップを含むことを特徴とする請求項1又は2のうちいずれか1項記載のポリテトラフルオロエチレンの改質方法。
  4. 前記第3のステップは、不活性ガス雰囲気下、前記ポリテトラフルオロエチレンの粉末に前記電離性放射線を照射するステップを含むことを特徴とする請求項1記載のポリテトラフルオロエチレンの改質方法。
  5. 前記第3のステップは、融点付近に加熱された前記ポリテトラフルオロエチレンの粉末に前記電離性放射線を照射するステップを含むことを特徴とする請求項1記載のポリテトラフルオロエチレンの改質方法。
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