JP3726255B2 - 安定な凍結乾燥済みチオテパ組成物 - Google Patents

安定な凍結乾燥済みチオテパ組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、抗腫瘍性アルキル化剤(N,N’,N”−トリエチレンホスホルアミド)の安定な凍結乾燥済み組成物、およびに活性成分と薬剤学的に容認されるアルカリ化剤との同時凍結乾燥を介するそのような組成物の調製法に関する。
【0002】
【発明の背景】
チオテパはエチレンイミン類の化合物であり、以下に示す構造、
【0003】
【化1】
Figure 0003726255
【0004】
を有する1,1’,1”−ホスフィノチオイリジントリスアジリジンとしても引用される。これは、乳房および卵巣の腺癌を始めとする多様な新形成性疾患の化学療法において用いられ、かつ膀胱の表層性乳頭状癌の治療のために用いられる多重機能性アルキル化剤である。この化合物の調製は、米国特許第2,670,347号の明細書およびに米国特許第4,918,199号の明細書において報告されている。
【0005】
現在ではチオテパは、チオテパ粉末、塩化ナトリウム、および重炭酸ナトリウムの混合物を含む再構成用滅菌粉末として、非経口的用途のための薬剤学的用量形態において商業的に提供されている。注射用滅菌水(Sterile Water for Injection)で再構成させる際、結果として生じる溶液は約7.6のpHを有する。チオテパはもともとの粉末形態であってもあるいは再構成されていても、冷蔵条件下(2−8℃)において保存する必要がある。再構成させた溶液は、冷蔵条件下においてさえも再構成済み溶液として約5日間のみ安定である。
【0006】
チオテパ滅菌粉末は培地水溶液で再構成させた際に濁りを帯びた溶液へと迅速に分解することが知られている。この濁りは、この化合物が水にさらされる際に起こる重合反応に起因するということが理論化されている。チオテパの塊が分解する際には水が消費され、そして水の含有量の減少を検出することが可能であることが知られている。またこの溶液はアルカリ性pHにおいてより安定であることも報告されている。
【0007】
チオテパ組成物を安定化させ、そして培地水溶液中において生じる濁りの形成の速度を遅くしたり、それを防いだりするために数々の試みが行われてきた。重炭酸塩の存在がこの粉末の環境をアルカリ性にさせ、そしてpH機構を介してチオテパを安定化させるであろうという理論に基づいて、安定化剤として重炭酸ナトリウムをこの粉末製剤に添加した。しかしながらこの理論に反して、データは、滅菌粉末中における重炭酸ナトリウムの存在はチオテパを安定化させず、そして迅速な濁りの形成も防がないことを示していた。
【0008】
したがって、安定性が改良され、かつ培地水溶液での再構成の際にこのような迅速な濁りの形成を生じないチオテパの製剤に対する必要性が存在する。
【0009】
水溶液中において比較的不安定である産物のフリーズドライ化(凍結乾燥)が安定な産物をもたらし、そしてそのためこの産物は水溶液である場合と比較してより長い在庫有効期間を有することができるということが当技術分野において知られている。そのうえ、フリーズドライ化させた産物は、注射による投与の前に迅速に溶解しそして簡便に再構成するという、粉末形態をとる産物に勝る利点を有している。水溶液においては不安定である産物のフリーズドライ化の別の利点は、この産物に処理を加え、そして液体状態のまま用量容器内に充填し、低温度において乾燥させることにより不利な温度効果を除外し、そしてより安定であることができる乾燥状態において保存することができるということである。(Reminton’s Pharmaceutical Sciences、15th edition、pp.1483−1485(1975)、を参照せよ)。したがって、フリーズドライ化はチオテパの製剤を取得する理想的な方法であると思われ、これによりチオテパは改良された安定性を示すものと思われた。
【0010】
しかしながら本発明者は、チオテパの水溶液の凍結乾燥は評価できるほどの安定性の改良をもたらしていない、すなわち再構成の際の濁りの形成を評価できるほどには減少させていないことを発見した。
【0011】
【発明の要約】
改良された安定性を示し、かつ培地水溶液中における迅速な濁りの形成を示さないチオテパ組成物を提供することは本発明の一つの目的である。
【0012】
安定性を改良するためのチオテパ組成物の調製の方法を提供することも本発明の目的である。
【0013】
注射による投与の前に迅速に溶解しそして簡便に再構成するチオテパ組成物を提供することも本発明の目的である。
【0014】
これらおよびその他の目的および利点は、希釈剤水溶液での再構成の際にチオテパ組成物が7−9のpHを有するようにチオテパを薬剤学的に容認される塩基と同時凍結乾燥させることにより調製される、非経口的投与のためのチオテパ組成物を含んでなる本発明により行われる。驚くべきことに、凍結乾燥前にチオテパ組成物に対して薬剤学的に容認される塩基を添加することにより、かなり改良された安定性およびに培地水溶液での再構成の際の濁りの形成の低下を示す産物を生じることを発見した。
【0015】
「薬剤学的に容認される塩基」は、その分子がプロトンを捕獲することができるが、ただし重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および水酸化ナトリウムのような求核性のものではない任意の薬剤学的に容認される物質から選択されることができる。
【0016】
本発明の処理法に従うと、7−9のレベルに滴定されるpHの溶液を取得するためにチオテパ水溶液に対して薬剤学的に容認される塩基を添加することによって改良されたチオテパ組成物を調製する。結果として生じる溶液をその後常法のフリーズドライ化技術を使用してフリーズドライ化する。結果として生じる産物は再構成の際にかなり低減された濁りの形成を示す。
【0017】
【発明の詳細な記述】
本発明の任意の特別な理論によって拘束されなくとも、薬剤学的に容認される塩基とチオテパとの同時凍結乾燥によりチオテパ結晶の表面上にその塩基が沈着してアルカリ性微小環境に影響を与え、そしてこの微小環境がチオテパ溶液のプロトン促進性重合化の速度を遅めるということが仮定される。このことにより、チオテパ粉末と塩基との固体混合物は濁りの形成の速度を遅めない一方で、フリーズドライ化前に溶液に対して塩基を添加する場合は濁りの形成の低下を示す産物を生じる、という驚くべき発見が説明される。したがって、本発明は非経口的投与のためのフリーズドライ化済みチオテパ組成物を調製するための処理法における改良法であり、この改良法は、フリーズドライ化前に、容認される量の薬剤学的に容認される塩基を添加してその塩基がチオテパ結晶に密接に接触することを促進してチオテパ分子の周囲に塩基の保護包皮を形成させることを含んでなる。
【0018】
本発明のチオテパ活性成分の記載は、本明細書により本出願内に引用文献として取り込まれている既述の米国特許第2,670,347号の明細書および第4,918,199号の明細書に記載されている。
【0019】
本発明に従うと、フリーズドライ化させたチオテパ調製物は水溶液であるチオテパの大量濃厚液から製造される。このチオテパの大量濃厚液は約6.0のpHを有する。チオテパの大量溶液と比較してより高い濃度である薬剤学的に容認される塩基の別の水溶をチオテパの大量溶液に対して添加して、結果として生じる溶液のpHを7−9のレベル、好ましくは8−9のレベルまで上昇させる。その後この溶液をフィルター滅菌させ、そしてバイアル内に充填し、そしてフリーズドライ化する。フリーズドライ化は以下に示す条件下において行うことが好ましく、その条件とは、
凍結周期:−30℃で少なくとも2時間、
一次乾燥:−30℃から0℃まで2℃/時間で変化させる加熱保存、
二次乾燥:約6℃の温度での少なくとも3時間の産物の維持、
脱水させてあるフィルター処理済み窒素での真空化の解除、
である。結果として生じる産物をその後冷蔵条件下に保存するのが好ましい。患者に対してこの調製物を投与する前に、フリーズドライ化させたこの産物を注射用滅菌水のような薬剤学的に容認される希釈剤で再構成させる。
【0020】
他の成分が本発明の産物の製剤中に含まれることがあるということは予測がつく。展着剤もしくは乳化剤、抗生物質、あるいは保存料が必要に応じてこれに含まれることがある。また、フリーズドライ化させた固体の特性を改善するために、マニトール、デキストローズ、ショ糖、もしくはデキストランのような非電解質である非求核性充填剤もこれに含まれることがある。他の適切な賦形剤を伴う先のものの多くの変形物が既に記載した詳細な説明の観点において当業者にひらめくであろう。このような明白な変形物のすべては、添付される特許請求の範囲の範疇に含まれるものとみなされる。
【0021】
以下に示す実施例はこの組成物の製造法、およびに本発明のフリーズドライ化済み調製物と、アルカリ化剤抜きでフリーズドライ化させた製剤との比較を示す。これらの実施例は、特許請求の範囲において示される本発明の範囲を制限するものとしてみなすべきではない。
【0022】
【実施例】
実施例1
20mg/mlの濃度のチオテパのフィルター滅菌済み水溶液の0.5Lの溶液を、120ml中に10gという濃度の重炭酸ナトリウムの水溶液で7のpHにまで滴定する。大量溶液を氷浴槽中に維持しながらこの溶液をバイアル中に充填する。このバイアルをフリーズドライ化装置にかけ、この際バイアルをこの装置内において−40℃の温度で一晩凍結状態に保つ。バイアルは、以下に記載する条件下においてフリーズドライ化するが、その条件とは、
凍結周期:−30℃で少なくとも2時間、
一次乾燥:−30℃から0℃まで2℃/時間で変化させる加熱保存、
二次乾燥:約6℃の温度での少なくとも3時間の産物の維持、
脱水させてあるフィルター処理済み窒素での真空化の解除、
である。
【0023】
実施例2
本発明のフリーズドライ化済み調製物は、実施例1における重炭酸ナトリウムを炭酸ナトリウムに置き換えて、実施例1の処理法に従って調製した。
【0024】
実施例3
表Iは、本発明の組成物についての効力決定分析およびその後のHPLC法の結果を示す。
【0025】
表IIは、再構成させた本発明のチオテパ溶液の透明度の分析を示す。
【0026】
【表1】
Figure 0003726255
【0027】
【表2】
Figure 0003726255
【0028】
本発明の特徴および態様を示せば以下の通りである。
【0029】
1.以下に示す、
(a)チオテパの水溶液を調製する段階、
(b)結果として生じる溶液のpHを7−9のレベルにさせるのに充分な量の薬剤学的に容認される塩基を添加する段階、およびその後の
(c)その水溶液をフリーズドライ化させる段階、
を含んでなる処理法により調製される、非経口的投与のためのフリーズドライ化済みチオテパ組成物。
【0030】
2.フリーズドライ化済みチオテパ組成物を調製するための処理法における、その組成物をフリーズドライ化する前に容認される量の薬剤学的に容認される塩基を添加してその塩基とチオテパ結晶との密接な接触を促進させることを含んでなる改良法。
【0031】
3.薬剤学的に容認される塩基が重炭酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムから選択される、上記1に記載の組成物。
【0032】
4.薬剤学的に容認される塩基が重炭酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウムから選択される、上記2に記載の処理法。
【0033】
5.薬剤学的に容認される賦形剤と配合させてある請求項1のフリーズドライ化済み組成物から主になる、上記1に記載の組成物。
【0034】
6.薬剤学的に容認される賦形剤が非電解質性充填剤である、上記5に記載の組成物。
【0035】
7.非電解質性充填剤がマニトールおよびデキストローズから選択される、上記6の組成物。

Claims (2)

  1. (a)チオテパの水溶液を調製する段階、
    (b)結果として生じる溶液のpHを7−9のレベルにさせるのに充分な量の薬剤学的に容認される塩基を添加する段階、およびその後の
    (c)その水溶液をフリーズドライ化させる段階、
    を含んでなる処理法により調製されることを特徴とする、非経口的投与のためのフリーズドライ化済み再構成用チオテパ組成物。
  2. 非経口的投与のためのフリーズドライ化済み再構成用チオテパ組成物調製方法において、チオテパの水溶液を調製し、結果として生じる溶液のpHを7−9のレベルにさせるのに充分な量の薬剤学的に容認される塩基を添加し、その塩基とチオテパ結晶密接接触した後、凍結乾燥することを特徴とする方法。
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