JP3726179B2 - さく孔装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軟弱地盤に鋼管を打ち込むことによって、トンネルの切羽の安定および坑口の補強等、地盤を改良するためや、NATM工法等によるトンネル掘削にあたり、掘削後の地山中に補強用の鋼管を打ち込むため等に使用されるさく孔装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
トンネルの掘削前に切羽を安定させるため、予め鋼管挿入用の孔を穿孔し、しかる後、その孔に定着剤を注入し、その後鋼管を別途挿入していた。この方法は、さく孔と定着剤の注入及び鋼管の挿入を別に行うので、作業効率が悪く、しかもさく孔時又はさく孔後すぐに孔の内壁が崩落して、定着剤の注入又は棒鋼の挿入が困難になることがある等の問題点があった。
【0003】
これを解決するため、図12に示すように、さく孔部の先端部に設けられている先行ビット54と、該先行ビットより後方位置に設けられている拡縮可能な複数のウイングビット55,…とを備え、さく孔時には上記ウイングビットを外方に張出させて、さく孔を行なうと同時に、さく孔ロッド57の外周部に装着した鋼管53を地山中に挿入し、さく孔終了後はウイングビットを縮径して小径化し、鋼管53だけを残してさく孔ロッド57を引き抜くことにより、さく孔と鋼管の挿入を同時に行うことのできるさく孔装置が開発されている(特公平7−113315号)。このさく孔装置は、複数(例えば4個)のウイングビットが軸心に対し所定の間隔で放射状に配置されており、その後端部を基点として内外に回動することにより拡縮するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来のさく孔装置は、鋼管埋設後に先行ビットも回収できるので経済的ではあるが、ウイングビットが拡縮するので構造的に複雑となり、その分だけ損傷事故が生じやすいという問題点があった。また、ウイングビットが内外に回動して拡縮するため、拡径部とパイプ先端との間に一定の間隔(D)が設けられているが、崩落性の激しい地盤では、その間隔部に大径の礫が崩落し、パイプとビットの間隙を蓋して、繰粉の排出を阻害する場合があった。さらに、ウイングビットは拡張するので、大きい礫が存在すると回転抵抗が過大となり、さく孔に支障をきたすおそれがあった。そこで、本発明は、上記のような拡縮構造を採用する代わりに、鋼管埋設後にビットも地中に残してロッドを引き上げる工法を採用することとし、より堅牢で事故の生じにくいさく孔装置を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成とした。すなわち、本発明にかかるさく孔装置は、さく孔ロッドの先端部に取り付けられる中空筒状のガイド部材と、当該ガイド部材の先端部が嵌合する凹部が設けられ、前面に繰粉排出用の排出穴が設けられた先端ビットと備え、前記ガイド部材の外周面には長手方向に沿う複数の凸部が所定間隔で設けられるとともに、当該凸部と凸部の間隙部が前記排出穴と連通しており、該凸部の前後中間部には側面に開口する係合凹部が設けられるとともに、前記先端ビットの凹部には、その内周面から突出する係合凸部が設けられ、当該先端ビットの凹部に前記ガイド部材の先端部を嵌合した状態で、当該先端ビットとガイド部材とを所定方向に相対回転させることにより前記係合凸部がガイド部材の係合凹部に係合して、先端ビットがガイド部材に対し離脱不能に結合した状態にとなり、当該結合状態にある先端ビットとガイド部材とを前記と反対方向に相対回転させると、先端ビットの係合凸部がガイド部材の係合凹部から外れ、前記先端ビットとガイド部材とが分離可能となるように構成されており、前記凸部において前記係合凹部より後方には、埋設用パイプの先端部に設けられた内向き突出部に当接してさく孔ロッドの推進をパイプに伝達し、当該パイプを前進させるパイプ押圧用凸部が設けられていることを特徴としている。
【0006】
前記先端ビットとしては、外周部が円形の大径部と、該大径部の中心部から前向きに突出する小径部とを有する2段形状に形成され、前記大径部の前面に繰粉排出用の排出穴が設けられるように構成したビットを使用するのが好ましい。また、先端ビットをガイド部材に離脱不能に結合した状態で、前記排出穴がガイド部材の凸部と凸部の間隔部に連通して繰粉の経路が形成されるように構成したビットを使用するのが好ましい。
【0007】
このさく孔装置の使用に際しては、さく岩機に連結されたさく孔ロッドの先端部にガイド部材を取り付け、その先端部にビットを取り付けると共に、ガイド部材の外周部に鋼管等の埋設用パイプを嵌合して、さく孔とパイプの埋め込みを同時に行う。ガイド部材に対するビットの取り付けは、先端ビットに設けた中空部にガイド部材の嵌合部(先端部)を挿入し、両者を所定の方向に相対回転させることにより、両者を離脱不能に結合すると共に、先端ビットの繰粉排出用の穴とガイド部材の凸部の間隔部とを連通させて、繰粉排出用の通路を形成する。この状態でさく孔を行い、所定深さのさく孔とパイプの埋設が終了したら、さく孔ロッドを前記係合時の回転方向と逆方向に回転させる。するとビットとガイド部材とが離脱可能となるので、さく孔ロッドをガイド部材共々後向きに引き抜く。これにより、地中にビットとパイプが残留させられる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図1乃至図11にあらわされた実施の形態について説明する。このさく孔装置1は、さく孔ロッド2にネジで装着されるガイド部材3を備え、このガイド部材3の先端部に先端ビット5が取り付けられている。ガイド部材3は、中空筒体として形成され、その外周部には、等間隔で断面扇型の3個の凸部7,…が並設されている。凸部7は、前後方向中央部よりも若干後よりの部分が最も高いパイプ押圧用凸部8となっており、その前端面8aは傾斜面として形成されている。前記パイプ押圧部8よりも前側の部分は、ガイド部材3の前端部に達する凸条部9となっている。この凸条部9の前後方向中間部には、一方の側面に開口する所定長さの係合凹部10が設けられている。なお、パイプ押圧用凸部8よりも後側の部分は、ガイド部材3の後端部に達する補強部11となっている。
【0009】
ガイド部材3の中空部は、中間部から後側の部分がロッド装着用のネジ穴部13となっており、それよりも前側の部分は当該ネジ穴部13からガイド部材の前端開口部に連通するフラッシングホール14となっている。
【0010】
前記ビット5は、後方に開口する中空部21を有するリング状の胴部20と、該胴部の前側に一体に設けられた大径部22と、該大径部の中心部から前方に突出する小径部23とを備えた2段形状に形成され、該小径部の前端部に超硬合金チップで作られた3個の硬質刃体25,…が放射状に植設されている。これら硬質刃体の間隔部には、ビット内部に連通するフラッシングホール28の開口部が設けられている。また、前記大径部の22の前面は軸心に対しほぼ垂直な平面として形成され、この面にも同様な硬質刃体26,…が等間隔で植設されている。さらに、これら硬質刃体26,…の間隔部には、繰粉を後方へ排出するための長穴状の排出穴30,…(図示例では3個)が穿設されている。
【0011】
先端ビット5の中空部21の後端部には、内側(軸心側)に突出する3個の係合凸部35,…が設けられている。この係合凸部35は、前記ガイド部材3を当該係合凸部に対し所定方向(さく孔時における回転方向)に相対回転させたときに該ガイド部材の係合凹部10に嵌り込んで係合するもので、その係合状態ではガイド部材3とビット5とが互いに離脱不能に結合した状態となる。ガイド部材3とビット5とを相対的に逆回転させれば両者の係合が解かれて、両者を分離することができるようになる。なお、ガイド部材3とビット5とが互いに離脱不能に結合した状態では、ビット5の排出穴30がガイド部材3の凸部7と凸部7の間隔部に連通し、後方への繰粉の排出通路が形成される。
【0012】
このさく孔装置1は、さく岩機に連結したさく孔ロッド2の先端部にガイド部材3を螺着し、その先端部に先端ビット5を取り付けて使用される。さく孔ロッド2は1本のみを使用する場合と、複数のさく孔ロッドを直列につなぎ合わせて使用する場合がある。使用に際しては、さく孔ロッド2を埋設用のパイプP内に挿通し、先端部にはパイプリーダー40を螺着しておく。パイプリーダー40は、円筒状であり、図9に示すように、後部はパイプPに螺着するためのネジ穴部41となっており、前端部には内側に突出する環状の突出部42が設けられている。また、パイプリーダー40の前側外周部には、段部43a付きの小径部43が形成されている。場合によっては、このパイプリーダー40をパイプPと一体に形成しておくこともできる。
【0013】
さく孔ロッド2をパイプPに完全に挿入した状態では、ガイド部材3のパイプ押圧部8の傾斜前面8aがパイプの延長部であるパイプリーダー40の突出部42の傾斜段部42aに当接する。ガイド部材3に対する前記先端ビット5の取り付けに際しては、当該先端ビット5の係合凸部35がガイド部材の凸部7,…の間隔部に位置する角度で、ガイド部材3をビット5の中空部21に嵌合し、しかる後、ガイド部材3(ロッド2に装着)とビット5を所定方向に相対回転させて、前記係合凸部35をガイド部材3の係合凹部10に係合させる。係合凸部35は、係合凹部10の側面側の開口部から嵌合する。これにより、ビット5がガイド部材3から離脱しなくなる。この係合時のガイド部材の回転方向は、さく孔時における回転方向と同じ方向である。
【0014】
上記組み立て状態では、ガイド部材に取り付けた先端ビット5とパイプに取り付けたパイプリーダー40との間に隙間dができるので、この隙間を覆うため、環状のパイプカバー45が嵌め込まれる。パイプカバー45の後端部は、パイプリーダー40の外周部に設けられている段部43aに当接して支持される。
【0015】
図11は、このさく孔装置1の使用法の説明図であって、さく孔ロッド2をさく岩機DのシャンクロッドSにジョイントJで接続し、該ジョイントの前部にパイプPを嵌合する。さく孔ロッド2の先端部にはガイド部材3を取り付け、該ガイドロッドに先端ビット5を取り付ける。なお、パイプPの先端部にはパイプリーダー40を取り付け(パイプリーダー40がパイプPと一体の場合はこの作業は不要)、当該パイプリーダー40と先端ビットとの隙間部はパイプカバー45で覆った状態としておく。さく孔中の先端ビット5には、打撃力と回転力と推力がロッド2を介して加えられる。また、パイプPにはガイド部材3のパイプ押圧用凸部8とパイプリーダー40の内向き突出部42との当接を介して該パイプを前向きに引張る力が作用するので、パイプは無理なくさく孔された孔内に引き込まれる。
【0016】
さく孔中は、ロッド2の芯部に設けられている水孔を通して水、空気等の冷却流体が供給され、ビット5のフラッシングホール開口部から吐出される。また、ビットの硬質刃体によって粉砕された繰粉は、上記水、空気等の流れにしたがって、排出穴30からビット5の中空部21内部に入り込み、パイプPとロッド2との隙間を通って後方へ排出される。
【0017】
この先端ビット5は、大径部22と小径部23の二段構造となっており、小径部23が前向きに突出しているので、当該小径部によって、まず小径の孔が穿孔される。このため、穴の位置決めが容易である。また、大径部(図示例では小径部も)の外周部が円形であり、従来のウイングビットのように凹凸が少ないので、さく孔中に受ける回転抵抗が少なく、しかもビットの外周部に岩石等が詰まりにくい。
【0018】
所定深さのさく孔が行われ、パイプPが所望の深さまで地中に埋設されると、さく孔を停止し、ロッド2を逆転させつつ若干後退させる。これにより、ビット5の係合凸部がガイド部材3の係合凹部10から外れ、ガイド部材3とビット5の結合が切り離される。このため、ビット5とパイプリーダー40とはパイプPとともにさく孔された孔底に残留させられる。ビット5から切り離されたガイド部材3とロッド2はそのまま後退させてパイプから抜き取られる。
【0019】
1本孔のさく孔とパイプ埋設を終えたら、当該孔から抜き取ったロッド2に新たなパイプPを嵌合し、パイプリーダー40を取り付けるとともに、ガイド部材3の先端部に新たなビット5を取り付けて、引き続き新たなさく孔とパイプ埋設を行うことができる。
【0020】
このさく孔装置1は、さく孔とパイプ埋設後に該パイプ内を通して回収することのできる拡縮ビットを用いる代わりに、さく孔後は当該さく孔された孔内に残留させるビットを使用するので、ビットの構造を簡単で堅牢なものとすることができる。このビット自体のコストはそれほど大きくないので、従来の拡縮ビットを使用するよりも経済的であり、トラブルも生じにくい。
【0021】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明にかかるさく孔装置は、ビットをさく孔ロッドに取り付けるに際し、ロッドの先端部に装着したガイド部材と当該ビットとを相対回転させることにより互いに着脱可能に係合させる機構によって両者を結合し、さく孔を行うもので、所定深さにさく孔した後は、ロッドを逆回転させて後退させることによりビットからガイド部材を簡単に取り外すことができる。このため、さく孔後にビットを残してガイド部材とロッドとをパイプの内部を通して回収することができるので、ビットとして簡単な構造の堅牢なものを採用できるようになり、能率よく、経済的にパイプの埋設を行うことが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のさく孔装置の1例を表す側面図であり、上半分は断面図、下半分は外観図である。
【図2】 ガイド部材の側面図であり、上半分は縦断面図、下半分は外観図である。
【図3】 ガイド部材の上記と異なる断面図である。
【図4】 ビットの半分を断面で表した側面図である。
【図5】 ビットの正面図である。
【図6】 ビットの上記と異なる位置における断面図である。
【図7】 ビットの背面図であり、半分は図1におけるX−X断面を表す。
【図8】 ビットとガイド部材との係合関係を表す正面図である。
【図9】パイプリーダーの側面図であり上半分は縦断面図、下半分は外観図である。
【図10】 パイプカバーの側面図であり、中心線から上は断面を表す。
【図11】 使用法の説明図である。
【図12】 従来のさく孔装置の説明図である。
Claims (2)
- さく孔ロッドの先端部に取り付けられる中空筒状のガイド部材と、
当該ガイド部材の先端部が嵌合する凹部が設けられ、前面に繰粉排出用の排出穴が設けられた先端ビットと備え、
前記ガイド部材の外周面には長手方向に沿う複数の凸部が所定間隔で設けられるとともに、当該凸部と凸部の間隙部が前記排出穴と連通しており、
該凸部の前後中間部には側面に開口する係合凹部が設けられるとともに、前記先端ビットの凹部には、その内周面から突出する係合凸部が設けられ、
当該先端ビットの凹部に前記ガイド部材の先端部を嵌合した状態で、当該先端ビットとガイド部材とを所定方向に相対回転させることにより前記係合凸部がガイド部材の係合凹部に係合して、先端ビットがガイド部材に対し離脱不能に結合した状態にとなり、
当該結合状態にある先端ビットとガイド部材とを前記と反対方向に相対回転させると、先端ビットの係合凸部がガイド部材の係合凹部から外れ、先端ビットとガイド部材とが分離可能となるように構成されており、
前記凸部において前記係合凹部より後方には、埋設用パイプの先端部に設けられた内向き突出部に当接してさく孔ロッドの推進をパイプに伝達し、当該パイプを前進させるパイプ押圧用凸部が設けられている、さく孔装置。 - 前記先端ビットは、外周部が円形の大径部と、該大径部の中心部から前向きに突出する小径部とを有する2段形状に形成され、前記大径部の前面に繰粉排出用の排出穴が設けられている請求項1に記載のさく孔装置。
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