JP2007277979A - 法面の吊構造物用アンカー - Google Patents

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Abstract

【課題】周囲の土圧を十分かつ均一に受けることができ、多方向からの引張り力に対して安定に対応することができる法面吊構造物用全方向同耐力アンカーを提供する。
【解決手段】法面に非自立型構造物をロープで吊持するアンカーであって、該アンカーが設置対象法面部位に対し360度の方位において直角状に埋設されている。
【選択図】図4

Description

本発明は法面に吊持される非自立型構造物のアンカーに関する。
法面における雪崩防止や落石防止のための手段として、法面の上方にアンカーを設置し、これからロープで棚状あるいは三角錐状などの形態をなした非自立型構造物を吊持する吊柵工法やシステムが知られている。
こうした吊柵工法やシステムにおいては、アンカーを設けるべき法面の地盤が岩盤なく土質及び礫混じり、石混じりの地質である場合には先端をテーパー状にした鋼管を後端からの打撃により打ち込んで埋め殺すパイプアンカーが用いられている。
この場合、前記工法とあいまって図1(a)(b)のようにアンカーPAは地軸(下方の道路横断面)に対して鉛直に設置するのが一般的であった。
しかし、かかるアンカーは周囲の土圧で吊力を得るので、地軸に対して鉛直の埋設は前部(谷側)の土質や土量に大きく影響を受け、対象法面が沢のような切込み斜面N2がある場合に谷側の土砂量は沢傾斜に対応して減ることになるので、パイプ周辺の土圧が一様でなくなる。しかも、落石や雪崩は柵Sの中心に応力を加えるとは限らず中心から外れた部分に荷重が集中することがあるが、その場合アンカーにかかる引張り力が斜めになる。その結果、設置したパイプが倒れ、吊持が喪失して柵が落下する危険があった。
この対策として法面に切土(水平段部)を設け、ここに地軸(下方の導路横断面)に対して鉛直にパイプアンカーを設置することが行われているが、切土の掘削工事には多大な手間と時間がかかる問題があった。そこで自立構造物に関する先行技術1ではアンカー天端部に谷側に延在する補強用アームを連結しているが、特別な部材を用いるのでコストが高くなることを避けられなかった。
特開2003−82619号公報
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、周囲の土圧を十分かつ均一に受けることができ、多方向からの引張り力に対して安定に対応することができる法面吊構造物用全方向同耐力アンカーを提供することにある。
上記目的を達成するため本発明は、法面に非自立型構造物をロープで吊持するアンカーにおいて、アンカーが設置対象法面部位に対し360度の方位において直角状に埋設されていることを特徴としている。
本発明によるときには、アンカーが設置対象法面部位に対して360度の方位で直角状に埋設されているので、アンカーに対する土圧は均等になり、全方向で同耐力が得られる。このため、現場での施工時に非自立型構造物の配置自由度が増し、アンカーにどのような方向から引っ張り荷重が作用しても、安定した固定力を発揮することができる。
設置対象法面部位が上下方向にのみ傾斜した面である。
設置対象法面部位が上下方向に傾斜しかつ左右方向でも傾斜した面である。
以下本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。
図2ないし図4は本発明による法面の吊構造物用アンカーの一例を示しており、図1において、1は道路、2は道路1から上方に存する法面であり、この例では法面2は白抜きの矢印で示す方向から見て道路に対してほぼ上下方向のみの成分で傾斜する第1の傾斜領域2Aと、第1傾斜領域2Aに隣接し、道路に対して上下方向に傾斜する成分と左右方向に傾斜する成分が複合した第2の傾斜領域2Bと、該第2の傾斜領域2Bに隣接し、ほぼ上下方向のみの成分で傾斜する第3の傾斜領域2Cを有している。
前記第2の傾斜領域2Bは、端的には沢のごとき地形を指し、左右方向での傾斜は幅方向の途中で方向が切り替わり、第1の傾斜領域2Aに近づくほど高い左領域2B1と、第3の傾斜領域に近づくほど高い右領域2B2とを有している。なお、左領域2B1と右領域2B2は傾斜角度が同じであるとは限られない。
3は鋼管などのパイプを加工して構成されたアンカーであり、前記第1の傾斜領域から第3の傾斜領域に左右方向で所要の間隔をおいて設置されている。アンカー3は、上下方向では少なくとも1個所づつ、通常は上下方向で重なる位置とならぬよういわゆる千鳥状に複数箇所設置される。
前記各アンカーには、地表から突出した頭部にワイヤロープ5が連結され、そのワイヤロープ5は下方(谷側)に延在し、下部に非自立型構造物4が連結吊持される。非自立型構造物4は限定はないが、この例では図3のように梁部体40に桟部体41を横架して剛結した柵体である。
本発明においては、前記各アンカー3は、道路1の横断面に対して直角(地軸に対して鉛直)ではなく、前記第1の傾斜領域2Aと第3の傾斜領域2Cはもとより第2の傾斜領域2Bにおいても、アンカー設置対象斜面部位の360度の方位において直角状に埋設されている。
図4は、図2の埋設状態を模式的に示しており、Lはアンカー長さを表し、第1の傾斜領域2Aと第3の傾斜領域2Cでは、正面から見て道路に対してほぼ上下方向のみの成分で傾斜しているので、この領域での各アンカー3は軸線が法面傾斜角度に対して直角状に埋設されている。
第2の傾斜領域2Bは、道路に対して上下方向に傾斜する成分と左右方向に傾斜する成分が複合しており、左領域2B1においては、アンカーは第1の傾斜領域2Aに近づくほど高い左右方向での傾斜角αに対して直角状でしかも上下方向での傾斜角に対しても直角をなすように埋設される。ここでの上下方向の傾斜角は第1の領域2Aのそれに比べて小さいので、各アンカーは同等の長さを有していても左領域2B1のアンカーは正面から見た等高線では見かけ上高位に挿設されている。
第2の傾斜領域2Bの右領域2B2は第3の傾斜領域に近づくほど高いため、アンカーは図4(a)のように左領域2Bとは対照的に埋設される。したがって第2の傾斜領域での左右のアンカー3,3は、正面から見てハの字状をなすように埋設される。
こうした構成であるため、どのアンカーも周囲の土圧が十分にかつ均一にかかることになり、全方向で同耐力が得られる。したがってロープの上端を連結して非自立型構造物を吊持した場合に第1の傾斜領域も第2の傾斜領域も同等な安定した支持力が得られ、多方向の荷重が作用してもしっかりと受け止めることができる。
図5は第2の傾斜領域でのアンカー埋設角度を本発明の規定条件から外れた態様にした例を示しており、アンカー300は第2の傾斜領域2Bの上下方向での傾斜角に対して直角をなすように埋設しただけで、左右方向での傾斜角αに対して直角状をなしていない。したがって、第2の傾斜領域2Bではアンカー300は正面から見て平行状になる。
この埋設関係では、左右方向での傾斜角に逆らっているため、土圧がアンカー全周で均等にならず、第1の傾斜領域2Aと第2の傾斜領域2Bではアンカー耐力が相違する。したがって、従来技術のような地軸に対して鉛直に設置したアンカーの場合よりは耐力が高いものの、本発明アンカーに比べて劣る耐力になる。
このため、沢部に対して従来ではアンカーを設けず、沢部の上方に平坦な場所を選んでアンカーを行ったりせざるを得ず、その結果吊りロープ長が長くなって不安定化し、雪崩や落石の懸念が大きい当該領域の安全性確保に支障をきたしていたが、本発明によれば、沢領域にも安定した全方位同耐力のアンカーを設置できるので、図3のように非自立型構造物4を各傾斜領域2A,2B,2Cで個別的に吊持する態様のほか、図4のような2つの傾斜領域2A,2Bに跨る大きなスパンの非自立型構造物4を的確に吊り設置することが可能となり、この場合にも、沢領域のアンカーの耐力を沢領域以外のアンカーの耐力と略同等となしえるので、非自立型構造物4に落石や雪崩雪の荷重がかかったときにも非自立型構造物4を安定して支えることができる。
なお、図示するものは本発明の数例であり、これに限定されるものではない。
1)図6は2本の道路1A,1Bが交差し、第1の道路1Aに面する第1の法面2Aは切土成形法面であり、該法面2Aは矢印方向の方向から見て道路に対してほぼ上下方向のみの成分で傾斜している領域である。第2の法面2Cは道路1Bに面するフリーフレームなどの自然法面であり、前記第1の法面2Aとすりつけの尾根20によってつながっている。
本発明はかかる地形において、尾根20に近い第1の法面2Aに対し直角をなすようにアンカー3,3を埋設し、それらアンカーから尾根20と交差するように第2の法面2Cにロープ5,5を延在させ、それらロープに非自立型構造物4を吊持するものである。
2)非自立型構造物4の吊持の仕方は任意であり、図7(a)のように、非自立型構造物(この例では三角錘状の雪崩防止柵)4から左右のアンカー3,3にV状にロープ5,5を導いて吊持させてもよいし、同図(b)のようにアンカー3から逆V状にロープ5を導いて非自立型構造物4に連結してもよい。
前記本発明のアンカーを施工する方法は任意であるが、従来のようなパイプアンカーを後方から打撃して打ち込む方法でなく、本出願人の開発した特殊なアンカー工法を採用するのが好適である。
図8〜図12はその例を示しており、3はパイプアンカー、6は前記パイプアンカー1と独立したビット、7はビット6に軸方向の打撃力と回転運動を与えるためのハンマー部7Aと回転軸部(ロッド部)7Bを直列状に備え、ビット6とつながることで構成される掘削アッセンブリーである。
8は施工場所に据付られる打ち込みフィード用の架台であり、ガイドレールを兼ねるべく長尺矩形枠状をなす本体8Aとサポート8Bを備え、前記本体8Aには、前記回転軸部を回動する可逆回転自在な掘削機としての駆動モータ9が台座9aをもって摺動可能に取り付けられ、台座9aにはウインチ10Aからのワイヤロープ100が連結され駆動モータ9を吊持するようにしている。なお、10Bは掘削アッセンブリー7とアンカーパイプを駆動モータ9と連結する際に一時的に吊持するウインチである。
前記駆動モータ9はこの例では油圧モータが用いられており、圧縮エア送給ヘッダー90を同軸に備えている。
11は他所に配されたエアコンプレッサであり、ホース110を介して前記駆動モータ9の圧縮エア送給ヘッダー90に接続されている。12は前記駆動モータ9に圧油を供給する発電機付きの油圧ユニットであり、近傍には制御弁などを含む操作盤13Aを有し、これからホース130を介して駆動モータ9に接続されている。
14はアンカー埋設地質が粘土質である場合に用いられる水供給系であり、水タンク14Aと、ポンプ14Bとを有し、ホース140により前記圧縮エア供給系の適所に接続される。
図9は前記パイプアンカー3とビット6の詳細を示しており、パイプアンカー3は、たとえば1500〜3500mmの長さを有しており、全体に亜鉛あるいはアルミ亜鉛合金メッキが施されている。
パイプアンカー3は、上端部に吊持用のボルトを取り付ける孔を有し、埋め込み後はキャップが冠着されるようになっている。一方、先端部には、推進力受け部となるべき鋼製のリング3Bを一体に有している。
図9の例では、リング3Bはアンカー本体3Aの外径とほぼ同じ外径を有し、内径がアンカー本体3Aの内径よりも小さい。リング3Bは長手方向の適当な位置から上半部300がアンカー本体3Aの内径とほぼ合致する外径となるように薄肉化され、前記上半部300がアンカー本体3Aに内嵌されている。そして厚肉の下半部301がアンカー本体3Aの先端より延出され、上半部300と下半部301の境界部位がアンカー本体3Aと溶接されている。
ビット6は端面に超硬合金などからなるチップを配設していて回転方向によって拡縮可能なビットヘッド6Aと、軸状部60を後方に突出させたハウジング(デバイス)6Bを備えている。ビットヘッド6Aは偏心タイプでもよいし、複数刃分割タイプでもよく、いずれも、所定方向の回転時に拡径し、反対方向の回転時に縮径されるが、縮径時に前記リング3Bの内径と同等以下になり、拡径時にリング3Bの下半部外径よりも適度に大きな径となりえる寸法のものが選ばれる。
ハウジング6Bの後端部には、前記した推進力受け部としてのリング上半部300端面に激突可能な張出し量を持ったつば部601が設けられている。なお、ハウジング6Bはスライムの誘導のための軸線方向溝603がつば部601を貫通するように設けられている。
ハンマー部7Aは筒状をなしており、先端部に前記軸状部60が回転では一体に、かつ軸方向では相対移動可能に連結し、ハンマー部7Aとハウジング7Bの間が軸方向に移動可能となっている。
回転軸部7Bはパイプ状をなしており、前記ハンマー部7Aの後端に同心状に連結されている。回転軸部7Bは複数本がつながれることで所要長さとなっていてもよいが、いずれにしても、回転軸部7Bの後端は前記駆動モータ9の出力軸と連結されている。したがって、回転軸部7Bが回転すると、ハンマー部7Aとビット6が同期回転される。圧縮エア送給ヘッダー90に供給された圧縮エアは回転軸部7Bを通してハンマー部7Aに送られ、ビット6の軸状部620にあるピストン部に作用するようになっている。
なお、架台8の据付けは任意であり、サポート8Bをピンアンカー80で地表に固定すればよく、さらに、必要とあらば、架台8の上部を控えロープ8Cで地表に支持させればよい。
本発明のパイプアンカー埋設方法を説明すると、常態において、パイプアンカー3と、ビット6を含む掘削アッセンブリー7は分離状態にあり、さらに、掘削アッセンブリー7は、ハンマー部7Aと回転軸部7Bおよびビット6に分解できるので、小型軽量化することができ、現場への搬入が容易である。
埋設に当たっては、回転軸部7Bとハンマー部7Aおよびビット6を連結して掘削アッセンブリー7を組立てる。一方では、架台8をアンカー埋設予定の部位たとえば第1の傾斜領域2A、第2の傾斜領域2B、第3の傾斜領域2Cに搬入し、それら領域における左右方向および上下方向の傾斜角に応じて、架台8は図8のように直角方向に設置する。その架台8の本体8Aに駆動モータ9を装着し、ウインチ10Aとロープ100によって吊持させる。
そして、前記掘削アッセンブリー7をパイプアンカー3の後端から挿入する。このときにはビットヘッド6Aを縮径方向に回転させておく。したがってビットヘッド6Aは抵抗なくパイプアンカー3中を下降する。
図10の仮想線はこのときの状態を示している。わかりやすくするため図面では鉛直状に示している。ビットヘッド6Aがパイプアンカー3の下端から突出したならば、回転軸部7Bとハンマー部7Aを回動する。こうすれば、ビットヘッド6Aが偏心しあるいは実質的に増径して、全体あるいは一部がパイプアンカー3の外径と同等以上に拡大する。ビットヘッド6Aが抜け止めストッパーとなるので、パイプアンカー3と掘削アッセンブリー7は一体に組み付けられた状態となる。そこで、ウインチ10Bを使って全体を吊り上げ、回転軸部7Bを駆動モータ9と連結する。以上で、準備が整い、以下、掘削アッセンブリーは自重でフィードされることになる。
エアコンプレッサ11を駆動して圧縮エアをヘッダー90に供給すれば、該圧縮エアは回転軸部7B内を通過してハンマー部7A内に圧入され、ピストン部を介してビット6の軸状部60が軸方向に強圧されるため、ハウジング6Bのつば部601がアンカーのリング端面に当接するまでビット6がハンマー部7Aから突出し、したがって、ビットヘッド6Aが、リング3Bの下端から適度に離間する。
操作盤12Aを操作して圧油を駆動モータ9に供給すれば、回転軸部7Bが回転し、これと連結しているハンマー部7Aが回転し、軸状部60を介してビット6が回転する。これにより図10のように、パイプアンカー3の直近前方でビットヘッド6Aが回転するため、地層の掘削穿孔が行われる。このときに、ビットハウジング6Bのつば部601がアンカーのリング端面に当接しているので、パイプアンカー3は掘削アッセンブリー7と一体に非回転のまま地中に推進されていく。
こうして推進されているときに、前方に転石、礫、岩盤部Rがあった場合には、これらはビットヘッド6Aの推進に対する抵抗として働く。その抵抗が圧縮エアの押圧力に勝ると、ビットヘッド6Aがリング3Bの下端あるいはパイプアンカー下端に当接するまで、ビット6の全体が後方に軸方向移動され、いわば短縮する。この状態が図11(a)である。このときにも前記のようにハンマー部7Aには圧縮エアが送給されているので、図11(b)のごとく、ビット6はハウジング6Bのつば部601がリング3Bの端面に当接するまで再び衝撃的に前進ストロークし、ビットヘッド6Aが転石、礫、岩盤部Rに激突する。
そしてまた、転石、礫、岩盤部Rによる抵抗を受けると前記のように引っ込み、次いでエア圧で突出する。パイプアンカー3はビット6の前進ストローク時に、ハウジング6Bのつば部601とリング3Bの当接で掘削アッセンブリー7と一体に推進し、打ち込まれる。こうした動作の繰り返しで打撃が行われ、その間ビット6の回転は継続しており、したがって、こうした回転と打撃とによって転石、礫、岩盤部Rは短時間で効率よく破砕される。転石、礫、岩盤部Rを通過して通常の土質になったときには、ビット6がハウジング6Bのつば部601がリング3Bの端面に当接するまで前進ストロークし、図10の状態で掘削推進状態となる。
なお、前記のような掘削で生じたスライムはハウジング6Bの軸線方向溝603を経てハンマー部外周のパイプアンカー空間に排出され、回転軸部外周の空間を経て後送され、パイプアンカー後端部から排出される。
以下、駆動モータ9による回転軸部7Bを経てのビット6の回転運動と、ハンマー部7Aへの圧縮エア供給によるビット6の打撃推進運動が行われことによりパイプアンカー3が効率よくしかも法面傾斜に対して直角に地中深く推進される。この進行時に、駆動モータ9の台座9aは架台8のガイドレールに沿って案内されるので、駆動モータ9とそれ以下の各部は円滑にフィードされる。
前記のように、地層に転石、礫、岩盤部Rがあっても、ビットヘッド6Aの回転とハンマー部7Aの打撃によるビットヘッド6Aの衝撃的推進により確実に砕かれるので、施工地質に制限がなく、迅速、円滑に打ち込みを行うことができる。また、パイプアンカー3は回転しないので、粘土質以外、粘度質以外のほとんどの地盤において水を使用せずに施工が可能であり、掘削時の水の使用を低減できる。
かくして図12(a)のように法面と直角な角度で所定の深さまでパイプアンカー3が進出したならば、駆動モータ9を逆方向に回転する。こうすれば、回転軸部7Bとハンマー部7Aを経て回転がビット6に伝達され、ビットヘッド6Aの外径がパイプアンカー3の先端内面にあるリング3Bの内径と同等以下に縮径される。
そこで、ウインチ10Aを操作して掘削アッセンブリー7を吊り上げれば、図12(b)のようにビットヘッド6Aがパイプアンカー3内に収納され、ビット6とハンマー部7Aおよび回転軸部7Bがパイプアンカー3内を通って引抜かれ、パイプアンカー3だけが地中に残された状態になる。これで図2、図4、図6などに示すアンカー埋設状態になる。
掘削・打ち込み完了と同時にパイプアンカー3の埋設が完了する。そして、引抜かれたビットヘッド6Aを含む掘削アッセンブリー7は次のパイプアンカーに対して挿入することで繰り返し使用できるので経済的である。
パイプアンカー3は回転しないので、内外面にメッキを施しておくことができ、埋設後はキャップを施せば腐食の心配がなく、したがって、モルタルの注入をあえて行わなくてもよくなるので、施工がより簡易、安価なものとなる。
また、アンカーは回転しないので、架台8を設置可能である限り、60度程度の斜面まで、斜面と直角方向のアンカー埋設が可能であり、斜面の段取りが不要であるため工事も簡易化できる。
本発明の埋設法を用いれば、ビットヘッドの回転による掘削穿孔とハンマー部によるビッドつば部と推進力受け部を通じてのビット押圧・打撃によりパイプアンカーが非回転状態で推進されるので、地中に転石、礫、岩盤部があってもこれらを破砕して効率よく円滑に打ち込みを行える。しかも所要長さ打ち込み後、ビットヘッドを縮径してパイプアンカー内を通して抜き取ることによりパイプアンカーの埋設が完了するので、施工を迅速に行え、かつ、ビットはパイプアンカーに固着されておらず独立しているので繰り返し使用でき、パイプアンカーの加工も簡単なもので済むので経済的である。
本発明は、法面に柵体(金網張りタイプを含む)や三角錐状の枠体を配しこれを吊りロープによって法面の上方に固定したアンカーで吊持するが場合のほか、ポケットを形成するように張った落石防護ネットのロープや,覆式落石防護ネットのロープを法面上方のアンカーで吊持する場合、法面に沿って敷設した浮石押えロープを法面上方のアンカーで吊持する場合にも適用できる。
(a)は従来の非自立型構造物の法面アンカーを示す正面図、(b)はその断面図である。 本発明にかかる法面の吊構造物用アンカーを示す斜視図である。 吊構造物の一例を示す側面図である。 (a)は本発明を模式的に示す正面図、(b)は部分拡大図である。 比較例を模式的に示す正面図である。 本発明による法面吊構造物用アンカーの他の適用例を示す平面図である。 (a)は本発明における吊持形態の例を示す正面図、(b)は他の例を示す正面図である。 本発明にかかるパイプアンカーの埋設方法の概要を示す正面図である。 本発明におけるパイプアンカーの部分的拡大断面図である。 埋設開始段階の状態を示す断面図である。 (a)(b)は転石などがあった場合のビットの挙動を示す断面図である。 (a)は掘削・打ち込み完了状態を示す断面図、(b)はビットの抜き取り中の状態を示す断面図である。
符号の説明
1 パイプアンカー
2 法面
2A 第1の傾斜領域
2B 第2の傾斜領域
2B1 左領域
2B2 右領域
2C 第3の傾斜領域
3B リング
4 非自立型構造物
5 ロープ

Claims (4)

  1. 法面に非自立型構造物をロープで吊持するアンカーにおいて、アンカーが設置対象法面部位に対し360度の方位において直角状に埋設されていることを特徴とする法面の吊構造物用アンカー。
  2. 設置対象法面部位が上下方向に傾斜した面である請求項1に記載の法面の吊構造物用アンカー。
  3. 設置対象法面部位が上下方向に傾斜しかつ左右方向でも傾斜した面である請求項1に記載の法面の吊構造物用アンカー。
  4. 本体先端部内側に推進力受け部を有するパイプアンカーを使用し、径が拡縮可能なビットヘッドを先端に有しその後方に前記推進力受け部に当接可能なつば部を備えたビットとハンマー部および回転軸部を直列にした掘削アッセンブリーを前記パイプアンカーに挿通させ、ビットヘッドをアンカー下端外で拡径させた状態で回転軸部とハンマー部を介してビットを回転させつつ、前記ハンマー部の推進力をつば部から推進力受け部に伝えることで所要深さに達するまでパイプアンカーを推進させ、次いでビットヘッドを推進力受け部の内径より小さく縮径し、掘削アッセンブリーをパイプアンカー内から抜き取る方法で埋設されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の法面の吊構造物用アンカー。
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