JP3725910B2 - 熱間補修用不定形耐火物の製造方法 - Google Patents

熱間補修用不定形耐火物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
各種高温窯炉の耐火物内張りに対する熱間補修に用いられる不定形耐火物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
転炉、取鍋、タンディッシュ、高炉樋などの局部損傷を熱間で補修する方法として、焼付け補修がある。その補修材の形態及び形状方式としては、ドライ型、セミウェット型、ウェット型等があり、熱消失性の容器に入れて補修箇所に投入する方式を採っているが、特にフェノール樹脂をバインダーとしたウェット型熱間補修材においては、作業性を改善するために大型フレコンバッグに充填して作業の合理化を図る形で利用されつつある。
【0003】
例えば、粉末フェノール樹脂と多価アルコールを混合混練時に配合したウエット型熱間補修材(特開昭63−156031号公報)が提案されている。
【0004】
ウエット型熱間補修材は、その作業の優位さを利用するために室温では自己流動性を有するスラリー状で大型のフレコンバッグに充填される場合が多く、作業上有利であるが、反面多くの不利な状態が生じている。
【0005】
例えば、製造された後、大型容器に充填された熱間補修材は、経日的あるいは運搬時の振動等により、比重の大きい粗粒、中粒骨材が沈降し容器の上部には微粉骨材のみと過剰の液ノボラックからなる極低粘性のスラリー状となる。反対に容器の下部は、液ノボラックが少なく粗粒、中粒が硬い塊状を呈することがしばしばである。このような状態の熱間補修材は、当初の室温時の自己流動性が失われ、熱間時に炉の補修部に投入された際、骨材沈降層が塊のままで流動変形しないために投入部に山積みの状態となり補修部への充分な充填が困難となる。一方、容器上部に形成された低粘性のスラリーは容易に流動し、薄い端部を形成するが、ソリ現象を伴い容易に溶鋼、溶銑が浸透するため好ましくない。又、全体的に組織が粗となり耐食性が著しく劣るものとなる。
【0006】
この改善策として、有機質分離防止材の添加(特開平3−126679号公報)が提案されているが、溶剤に溶解しないで、且つ室温で固形の少量の粒状物質を比重の大きい骨材の粒子間に浮遊させて全体の系の安定化を図る試みは十分な効果が得られない。
【0007】
又、熱間投入時に被補修面との接着強度を重視する観点から数平均分子量600以下の低分子量型液ノボラック樹脂を利用することが提案されているが(特開平3−271168号公報)、焼付け時間を早くし、熱間時の組織を緻密にして強度アップを図り耐用性を向上させるには不十分である。
【0008】
即ち、焼付け時間を短縮するためには、熱間時にまず内在した溶剤が表面に移行し、且つ、残存するフェノール樹脂が多環化、重縮合化による固化現象が生じるという焼付け過程を早める必要がある。従って、分子量の低いノボラック樹脂は固化速度の点から不利となる。又、熱間時において特に補修部に深みがある場合、内部の溶剤が残留してノボラック樹脂の固化が始まるまでには溶剤の沸点近辺の温度(200〜300℃)で15〜60分間の時間を要する。その間は特に内部は溶剤、ひいては低分子型樹脂の上部への移行が激しく組織の緻密さを保つ観点からは不利となる。従って、焼付け時間短縮及び内部組織を改善するためには、熱間時溶融粘度が高く、あるいは溶融粘度の上昇が早いバインダーを利用した熱間補修用耐火物が必要となる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、常温時、熱間時に流動性を有し、焼付け時間が早く(速硬化性)且つ耐用性の良い熱間補修材の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、耐火性骨材、フェノール樹脂、溶剤に湿潤分散剤を加えることにより上記の種々な熱間補修材の欠陥が解消されることを発見し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち本発明は、耐火性骨材(A)が1.0mm以上の粒子径を有する骨材(a)と0.1〜1.0mmの粒子径を有する骨材(b)と0.1mm以下の粒子径を有する耐火骨材(c)とからなり、該骨材(a)、又は該骨材(a)及び該骨材(b)に前記耐火性骨材の表面に吸着する湿潤分散剤(D)を含浸させた後に、これに重量平均分子量が900以上であるノボラック型フェノール樹脂(B)、溶剤(C)及び該耐火骨材(c)を混合することを特徴とする。
【0012】
本発明に用いる湿潤分散剤としては、耐火性骨材の表面に吸着する浸潤分散剤であり、カチオン系、アニオン系、ノニオン系および両性の湿潤分散剤が挙げられる。カチオン系湿潤分散剤としては、例えば、不飽和ポリカルボン酸のポリアミノアミド等が挙げられる。ノニオン系湿潤分散剤としては、例えば、高分子酸エステル、ポリエーテル変性ポリシロキサン、脂肪酸のエチレンオキシド付加物、アルキルアミンのエチレンオキシド付加物等が挙げられる。アニオン系湿潤分散剤としては、例えば、高分子不飽和ポリカルボン酸、カルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸等が挙げられる。又、両性湿潤分散剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアミン脂肪酸エステル、分子中に遊離アミンと遊離カルボキシル基を含む化合物等が挙げられる。
【0013】
湿潤分散剤の添加量は、耐火性骨材100重量部に対し0.05〜1.0重量部の添加で効果を発揮するが、好ましくは0.2〜0.8重量部である。添加量が0.05重量部未満ではスラリーの安定化効果が著しく低下し、逆に1.0重量部以上でも安定性効果は同程度である。又、スラリーの自己流動性の面ではむしろ阻害要因となり適性なフリーフロー値を確保するためには樹脂添加量の増量が必要となる。
【0014】
本発明における湿潤分散剤は、耐火性骨材、特に粗粒及び中粒の表面に吸着することにより生じる静電気斥力及び立体障害的斥力により相互に、特に粗粒骨材の接近を阻害させスラリーの安定性を確保することが可能である。従って、湿潤剤の吸着効果を確実にするためには、好ましくは、予め粗粒または粗粒および中粒の骨材に湿潤剤を混合して吸着させるプロセスを設け、その後、微粉骨材及びフェノール樹脂、溶剤を投入し混合混練して熱間補修材とする。
【0015】
本発明に用いるフェノール樹脂は、その種類を問わないが、重量平均分子量が900以上であるノボラック型フェノール樹脂である。又、熱間時の焼付け時間の短縮ならびに熱間特性の向上により耐用性の向上を図るためには、ノボラック型フェノール樹脂に10重量%以下でレゾール樹脂を併用することが好ましい。レゾール型フェノール樹脂の併用の効果を十分発揮させるためには、レゾール型フェノール樹脂の併用割合が0.2〜10重量%の範囲がより好ましい。
【0016】
従来、熱間流動性が低下することを避けるため、低分子量ノボラック樹脂を利用する動きがあったが、我々の知見によれば、熱間補修材スラリーの安定性が良く使用時においても十分な自己流動性を維持し、且つ、適性な範囲のフロー値を有していれば、用いるノボラック樹脂の分子量の高低は特に関係なく、スラリーは熱間時の流動性に優れ、且つ、維持し続けることを見出している。
【0017】
又、上部のみから被熱される熱間補修材は、雰囲気温度が1000℃にも拘らず熱間補修の内部は溶剤が蒸発するまでは、ほぼ溶剤の沸点付近(200〜300℃)で持続される。特にその時間は熱間補修材の深さにより左右され、深さが100mm程度であれば15分まで同温度を持続し、深さが400mmであれば120分まで持続される。溶剤が大半蒸発して内部温度が上昇に転じ300〜600℃になると、フェノール樹脂の多環化、重縮合化を生じて固化に至る。
【0018】
従って、熱間特性を向上させる手段としては、重量平均分子量が900以上のノボラック樹脂を利用して溶剤残留時においても系の粘度を上げて樹脂の上部への移行を防ぎ、又、300℃以上に昇温経過した際の固化を促進する。あるいはレゾール樹脂を併用して、溶剤が残留している段階においてもノボラックとレゾールの反応により増粘を図り、系の増粘及び固化現象を短縮し、焼付け時間の短縮、更には熱間特性の向上を図っている。
【0019】
本発明に用いるフェノール樹脂の性状は、固形もしくは粉末状、またはこれらを溶剤で溶解した液状のいずれかであっても良い。
【0020】
本発明に用いるフェノール樹脂の使用量は、特に限定されるものではないが、耐火性骨材100重量部に対し、5〜15重量部用いるのが好ましい。耐火性骨材100重量部に対しフェノール樹脂5重量部以下では、カーボン結合の強度不足を招き、15重量部以上では、性能向上は望めずむしろ気孔率のアップ等を招くので、好ましくない。
【0021】
本発明におけるフェノール樹脂の製法は、特に限定するものではなく、酸性触媒下で縮合し所定の重量平均分子量のノボラックを製造し、アルカリ触媒下で縮合しレゾール樹脂を得ることが出来る。
【0022】
本発明での耐火性骨材としては、例えば、マグネシア、カルシア、ドロマイト等の塩基性材料、シリカ、ジルコン、アルミナ等の酸性、中性材料が挙げられる。更にこれらに、必要に応じて、耐食性向上のために黒鉛、ピッチ、カーボンブラック等の炭素物質を添加してもよい。又、カーボンボンドの酸化防止や熱間強度向上の目的でAl、Si、Mgやこれらの合金である金属粉を少量添加してもよい。また耐摩耗性を向上させる目的で、金属ファイバーやセラミックファイバーなどを添加してもよい。
【0023】
耐火性骨材の粒子径は、通常の不定形耐火物に配合されるものと同様でよく、例えば0.1mm以下の微粉が20〜50重量%とし、最大粒子径を3〜5mmに設計することが好ましい。
【0024】
本発明に用いる溶剤は、フェノール樹脂を溶解する溶剤であれば使用可能である。しかし、熱間補修用耐火物の熱間流動性と相関性のある室温流動性は、溶剤の選定、配合量等により大きく影響されている。又、低沸点、揮発性の高い溶剤の場合は、作業環境、スラリーの安定化、熱間時の流動保持に不向き等を考慮する必要がある。従って、高沸点多価アルコールが一般的であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0025】
本発明での溶剤の使用量は、特に限定されないが、耐火性骨材100重量部に対し、5〜15重量部用いるのが好ましい。溶剤が5重量部以下では、室温時の自己流動性、熱間流動性等が不足する。溶剤が15重量部以上では、流動性が大きくてソリ現象が顕著であり、又、施工体の強度も著しく低いものである。
【0026】
本発明の熱間補修用耐火物の製造方法は、特に限定されるものではないが、耐火性骨材に対し重量平均分子量が900以上であるフェノール樹脂、溶剤、及び前記耐火性骨材の表面に吸着する湿潤分散剤をミキサー内で室温ないしは加熱下で混合・混練して室温のフリーフロー値が110〜180mmの範囲好ましくは120〜160mmにあることを確認してスラリー状熱間補修用耐火物とする。フリーフロー値は、JIS・R−2521のフロー試験機を用いて、コーンに材料を充填した後、コーンを取外し一分間自然に流動させ、その直径を二か所計測し平均値で示した。
【0027】
本発明における湿潤分散剤の効果を高めるためには、始めに粒子径1.0mm以上の粗粒骨材、もしくはこの粗粒骨材と粒子径0.1〜1.0mmの中粒骨材に湿潤剤を混合・湿潤させ、その後にフェノール樹脂と溶剤もしくは液状フェノール樹脂及び粒子径0.1mm以下の微粉骨材を混合・混練する方式が好ましい。
【0028】
【実施例】
以下に実施例を挙げて説明する。以下、断りのないかぎり部、%は重量基準である。
【0029】
製造例1
フェノール940部、37%フォルマリン550部、蓚酸5部を反応容器に投入し100℃/4時間保持した後、190℃に昇温し、脱水、遊離フェノール及びホルムアルデヒドを除去して固形状ノボラック樹脂を得た。該樹脂50部にエチレングリコール50部を混ぜて均一な樹脂液A液を得た。該樹脂A液は固形分50%、粘度3000cPs(25℃)、重量平均分子量1,200であった。
【0030】
製造例2
フェノール940部、37%フォルマリン610部、蓚酸5部を反応容器に投入し、製造例1と同一条件で反応し、固形状ノボラック樹脂を得た。該樹脂を粉砕し粉末樹脂Bを得た。粉末樹脂Bは、軟化点90℃、重量平均分子量2,000であった。
【0031】
製造例3
フェノール940部、37%フォルマリン510部、蓚酸5部を反応容器に投入し、製造例1と同一条件で反応し、固形状ノボラック樹脂を得た。該樹脂50部にジエチレングリコール50部を混ぜて均一な樹脂C液を得た。該樹脂C液は、固形分50%、粘度、2,000cPs(25℃)、重量平均分子量800であった。
【0032】
製造例
フェノール940部、37%フォルマリン920部、水酸化バリウム49部を反応容器に投入し、80℃/3時間保持し、P−トルエンスルフォン酸55部で中和した後、脱水し、遊離フェノール及びフォルムアルデヒドを除去してエチレングリコール30部を投入し、レゾール樹脂D液を得た。該樹脂D液は、固形分75%、粘度1,000cPs(25℃)であった。
【0033】
実施例1
マグネシア骨材粗粒(1mm以上)30部に湿潤分散剤(不飽和ポリカルボン酸のポリアミノアマイド)0.5部を混合して湿潤させ、その後、マグネシア骨材中粒(0.1〜1mm)30部、微粉(0。1mm以下)40部及び製造例1の樹脂A液18部を混合・混練し、スラリーのフリーフロー値が室温で140mmであることを確認して熱間補修用不定形耐火物を得た。
【0034】
該不定形耐火物のスラリーの安定性の評価方法として、試料2kgを入れた容器を35℃雰囲気下において、加振力4Gの振動を1時間与えた後、容器底部に形成された粗粒及び中粒の骨材よりなる沈降層(硬い層)の厚みを測定した。厚みは6mmであり良好な安定性であった。
【0035】
該不定形耐火物を35℃の雰囲気下で30日間保存後の容器内の下層部にも硬い沈降層は見られず、そのフリーフロー値が135mmであり、流動性保持の観点からも安定性が良好であることが確認された。
【0036】
該不定形耐火物の熱間流動性の評価方法として、1,000℃に加熱された煉瓦上に該不定形耐火物200gを直径50mmのビニール袋に詰めた状態で静置し、熱流動した後、最大の広がりと最大の高さを測定した。各々130mm,高さ8mmであり、熱流動性がよいことを確認した。
【0037】
該不定形耐火物の焼付け時間の評価方法として、煉瓦で枠を築炉し予め1,000℃に加熱し、試料を枠内に20kg入れ、金棒にて上部から硬さを調べた。金棒が試料内に刺さらなくなった時間を焼付け時間とした。該不定形耐火物は30分であり短時間焼付けであった。
【0038】
該不定形耐火物の熱間及び焼成後の特性値の評価方法として、600℃雰囲気下の炉内に、試料10kgを深さが50mm確保しうる上部が開放された容器に投入し,2時間加熱して取りだし、更に、40×40×160mmの寸法に切り出して試料を作成した。更に、該試料を還元雰囲気下で1,400℃に加熱して熱間時の特性値と還元雰囲気下で1,500℃に焼成した後の特性値を測定した。表1に記載のごとく、密度、強度、気孔率等優れたものであった。
【0039】
該不定形耐火物を250t転炉の装入壁の熱間補修のため、ポリプロピレン製バッグに500kgを入れた状態でシュートを介して補修部分に投入した。被補修部分の凹凸は大であるにもかかわらず、補修面は平滑で、20分後には補修面の流動性はなくなり、且つ銑鉄、スクラップ等のチャージ数は、10回に及び耐用性の優れたものであった。
【0040】
参考例1
マグネシア骨材粗粒30部に、湿潤分散剤(不飽和カルボン酸のポリアミノアマイド)0.5部を混合して湿潤させ、その後、製造例2の粉末樹脂B4部を更に混合させ、次にマグネシア中粒30部、微粒40部、製造例3の樹脂C液10部及びジエチレングリコール4部を混合・混練してスラリーのフリーフロー値が室温で135mmであることを確認して熱間補修用不定形耐火物を得た。
【0041】
該不定形耐火物の強制振動下におけるスラリーの安定性は沈降層の厚みが5mmであり良好な安定性であった。
【0042】
該不定形耐火物を35℃の雰囲気下で30日間保存後の容器内の下層部にも硬い沈降層が見られず、且つ、そのフリーフロー値が130mmであり、流動性保持の観点からも安定性が良好であることが確認された。
【0043】
該不定形耐火物の熱間流動性の評価方法として、実施例1と同一条件で熱流動した後の最大の広がりと高さを測定し、各々125mm、9mmであり熱流動性が良いことが確認された。
【0044】
該不定形耐火物の焼付け時間の評価として、実施例1と同一条件で金棒の刺さらなくなる時間を測定した。結果は20分であり、短時間焼付けが可能であった。
【0045】
該不定形耐火物の熱間及び焼成後の特性値の評価として、600℃雰囲気下で実施例1と同一条件で試料を作成し、更に、該試料を還元雰囲気下で1,400℃に加熱して熱間時の特性値と還元雰囲気下で1,500℃に焼成した後の特性値を測定した。表1記載のごとく、密度、強度及び気孔率等優れたものであった。
【0046】
該不定形耐火物を250t転炉の装入壁の熱間補修のため、実施例1と同じ条件で補修を施した。補修面は、平滑で10分後には補修面の流動性はなくなり、溶銑、スクラップ等のチャージ数は、10回であり耐用性の優れたものであった。
【0047】
参考例2
マグネシア骨材粗粒30部に、湿潤分散剤(ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル)0.5部を混合して湿潤させ、その後、製造例1の樹脂A液18部を、製造例3の樹脂C液17部と製造例の樹脂D液0.5部に置換した以外は同一条件で混合・混練しスラリーのフリーフロー値が140mmであることを確認して熱間補修用不定形耐火物を得た。
【0048】
該不定形耐火物の強制振動下におけるスラリーの安定性は沈降層の深さが6mmであり良好な安定性であった。
【0049】
該不定形耐火物を35℃の雰囲気下で30日間保存後の容器内の下層部にも硬い沈降層が見られず、且つ、そのフリーフロー値が136mmであり、流動性保持の観点からも安定性が良好であることが確認された。
【0050】
該不定形耐火物の熱間流動性の評価として、実施例1と同一条件で熱流動したときの最大の広がりと高さを測定し、各々120mm、10mmであり熱流動性が良いことが確認された。
【0051】
該不定形耐火物の焼付け時間の評価として、実施例1と同一条件で金棒の刺さらなくなる時間を測定した。結果は25分であり短時間焼付けが可能となった。
該不定形耐火物の熱間及び焼成後の特性値の評価として、600℃雰囲気下で実施例1と同一条件で試料を作成し、更に、該試料を還元雰囲気下で1,400℃に加熱して熱間時の特性値と還元雰囲気下で1,500℃に焼成した後の特性値を測定した。表1記載のごとく、密度、強度及び気孔率等優れたものであった。
【0052】
該不定形耐火物を250t転炉の装入壁の熱間補修のため、実施例1と同じ条件で補修を施した。補修面は、平滑で15分後には補修面の流動性はなくなり、溶銑、スクラップ等のチャージ数は、10回であり耐用性の優れたものであった。
【0053】
実施例
マグネシア骨材粗粒30部、中粒40部及び微粉30部に、湿潤分散剤(ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル)0.5部及び製造例1の樹脂A液18部を、混合・混練してスラリーのフリーフロー値が120mmであることを確認して熱間補修用不定形耐火物を得た。湿潤分散剤の初期混合方式に比べてフロー値が低下する傾向にあったが使用できる範囲に留まった。
【0054】
該不定形耐火物の強制振動下におけるスラリーの安定性は沈降層の深さが10mmであり使用可能な安定性の範囲であった。
【0055】
該不定形耐火物を35℃の雰囲気下で30日間保存後の容器内の下層部に僅かに沈降層が見られるが、そのフリーフロー値110mmであり、使用できる範囲内であった。
【0056】
該不定形耐火物の熱間流動性の評価として、実施例1と同一条件で熱流動したときの最大の広がりと高さを測定し、各々100mm、12mmであり使用可能な範囲であった。
【0057】
該不定形耐火物の焼付け時間の評価として、実施例1と同一条件で金棒の刺さらなくなる時間を測定した。結果は30分であり短時間焼付けが可能となった。該不定形耐火物の熱間及び焼成後の特性値の評価として、600℃雰囲気下で実施例1と同一条件で試料を作成し、更に、該試料を還元雰囲気下で1,400℃に加熱して熱間時の特性値と還元雰囲気下で1,500℃に焼成した後の特性値を測定した。表1記載のごとく、密度、強度及び気孔率とも使用可能の範囲であった。
【0058】
比較例1
実施例4の配合条件から湿潤分散剤を使用しない以外は、同一条件で混合・混練してスラリーのフリーフロー値が150mmを確認して熱間補修用不定形耐火物を得た。
【0059】
該不定形耐火物の強制振動下におけるスラリーの安定性は沈降層の厚みが50mmとなり安定性不良となった。
【0060】
該不定形耐火物を35℃の雰囲気下で30日間保存後の容器内の下層部に硬い沈降層が見られる。そのフリーフロー値は110mmはあるが大半が中央部に山なりに堆積しており安定性は不良であった。
【0061】
該不定形耐火物の熱間流動性の評価として、実施例1と同一条件で熱流動したときの最大の広がりと高さを測定し、各々85mm、20mmであり熱流動性が不良であった。又、その先端部は、ソリあがっている現象が見られた。
【0062】
該不定形耐火物の焼付け時間の評価として、実施例1と同一条件で金棒の刺さらなくなる時間を測定した。結果は40分であった。上部に微粉の浮上が認められ、硬化が遅くなった。
【0063】
該不定形耐火物の熱間及び焼成後の特性値の評価として、600℃雰囲気下で実施例1と同一条件で試料を作成し、更に、該試料を還元雰囲気下で1,400℃に加熱して熱間時の特性値と還元雰囲気下で1,500℃に焼成した後の特性値を測定した。表1記載のごとく、密度が低く、気孔率が高く、強度が低いものであった。 該不定形耐火物を250t転炉の装入壁の熱間補修のため、実施例1と同じ条件で補修を施した。投入箇所に山なりに堆積し補修面への充填が出来なかった。
【0064】
比較例2
マグネシア骨材粗粒30部、中粒40部及び微粉30部に、樹脂C液18部と融点62℃の鱗状パラフィン1.5を混合・混練しスラリーのフリーフロー値が室温で140mmであることを確認して熱間補修用不定形耐火物を得た。
【0065】
該不定形耐火物の強制振動下におけるスラリーの安定性は、沈降層の厚みが30mmとなり安定性良好とは言えなかった。
【0066】
該不定形耐火物を35℃の雰囲気下で30日間保存後観察すると、容器内の下層部に硬い沈降層が見られる。そのフリーフロー値は120mmはあるが大半は中央部に山なりに堆積しており安定性は良好とは言えなかった。
【0067】
該不定形耐火物の熱間流動性の評価として、実施例1と同一条件で熱流動したときの最大の広がりと高さを測定した結果、各々90mm、18mmであり熱流動性が不良であった。又、その先端部は、ソリ上がっている現象が見られた。
【0068】
該不定形耐火物の焼付け時間の評価として、実施例1と同一条件で金棒の刺さらなくなる時間を測定した。結果は、60分であり、硬化の著しく遅いものであった。
【0069】
該不定形耐火物の熱間及び焼成後の特性値の評価として600℃雰囲気下で実施例1と同一条件で試料を作成し、更に、該試料を1,400℃に加熱して熱間時の特性値と1,500℃に焼成した後の特性値を測定した。表1記載のごとく密度が低く、気孔率が高く、強度の低いものであった。
【0070】
【表1】
Figure 0003725910
【0071】
【発明の効果】
本発明の熱間補修用不定形耐火物は、スラリーの安定性に著しく優れたものであり、熱間流動性およびそれに関連する補修箇所への平滑な充填を約束するものである。
【0072】
更に特筆すべきは、深みのある補修箇所に対しても、焼付け時間が短く且つ内部の組織が強固で耐用性のある補修を可能とすることができる。

Claims (1)

  1. 耐火性骨材(A)が1.0mm以上の粒子径を有する骨材(a)と0.1〜1.0mmの粒子径を有する骨材(b)と0.1mm以下の粒子径を有する耐火骨材(c)とからなり、該骨材(a)、又は該骨材(a)及び該骨材(b)に前記耐火性骨材の表面に吸着する湿潤分散剤(D)を含浸させた後に、これに重量平均分子量が900以上であるノボラック型フェノール樹脂(B)、溶剤(C)及び該耐火骨材(c)を混合することを特徴とする熱間補修用不定形耐火物の製造方法。
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