JP5678859B2 - 焼付け補修材 - Google Patents

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Description

本発明は、溶湯容器の稼動面の熱間補修に使用される焼付け補修材に関する。
溶鋼などを受ける溶湯容器(以下、単に容器ともいう)の稼動面側の耐火物は、局部的に損耗する場合が多く、この損耗部位を補修して、耐火物の寿命延長を図るのが一般的である。この補修は、容器の温度が低下した後に行う冷間補修と、容器の温度が低下しないうちに行う熱間補修とに、大別される。
一般に、冷間補修は、耐用性が高い補修効果が得られるが、容器の温度を低下させる時間や補修後の容器を予熱する時間が必要であるなど、容器の稼働率が低くなるという課題があった。一方、熱間補修は、容器の温度低下が少なく、また予熱時間を短くできるため、容器の稼働率向上に有益であるが、冷間補修に比べると、耐用性の高い補修が得られないという課題があった。
上記した熱間補修の課題に対し、例えば、特許文献1には、短時間で燃焼し炭化して強固なカーボン結合体を形成することを目的に、流動性が向上する物質を、有機バインダーに添加する技術が記載されている。
また、特許文献2には、耐用性の高いマグネシア・クロミアれんがを焼付け補修材の骨材に用い、骨材の粒径を0.3〜20mmになるように粉砕・整粒することで、耐用性を確保する技術が記載されている。特に、特許文献2には、粒径が0.3mm未満の骨材の微粉に、耐用性を低下させるものが富化し集積していることが記載され、この0.3mm未満の微粉を除外することを特徴としている。
特開平11−302085号公報 特開2007−45673号公報
しかしながら、特許文献1、2に記載の補修材は、カーボン結合体を形成することで、一定の耐用性が得られるものの、その流動性を確保しているため、溶湯容器の側壁稼動面を補修する場合、補修材が補修部位(損耗部位)に留まらず、補修部位から流下する(流れ落ちる)。このため、補修材が補修部位の下方に流出して堆積する事態を招き、補修材を補修部位に効率的に積層(配置)することが困難であった。
また、この補修材を主として使用する熱間補修は、溶湯容器の温度が、作業者が作業可能な温度まで低下しない時期に行うものであるため、作業者が補修部位に近づくことができない。このため、人手をかけることなく、補修部位からの補修材の流下を抑制することが期待されている。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、熱間補修に汎用される焼付け補修材を前提とし、補修部位からの補修材の流下を抑制して、補修部位に補修材を効率的に積層でき、補修部位の耐用性を向上可能とする焼付け補修材を提供することを目的とする。
前記目的に沿う本発明に係る焼付け補修材は、溶湯容器の稼動面の熱間補修に使用される焼付け補修材において、
使用済みのマグネシア・クロミアれんがを有する骨材を65質量%以上95質量%以下含み、前記骨材は、前記使用済みのマグネシア・クロミアれんがを粉砕してなるクロミアを、該骨材の全量に対して8質量%以上50質量%以下含み、かつ前記骨材中の篩目100μmアンダーが該骨材の全量に対して5質量%以上50質量%以下である。
本発明に係る焼付け補修材は、使用済みのマグネシア・クロミアれんがを粉砕して骨材に使用するので、篩目100μmアンダーの骨材粒子が生成し易く、しかも骨材中に耐用性向上につながるクロミアが濃化した骨材粒子が多く含まれる。また、補修材の骨材含有量と、篩目100μmアンダーの骨材粒子の割合を規定することで、補修材の粘性が高められ、補修部位からの補修材の流下を抑制できるため、例えば、人手を介することなく、骨材を補修部位に多く残留させることができる。
従って、補修部位に補修材を効率的に積層できるため、補修部位の耐用性を向上でき、施工による耐火物の寿命延長が可能となる。
(A)は本発明の一実施の形態に係る焼付け補修材で補修した溶湯容器の加熱前後の説明図、(B)は従来例に係る焼付け補修材で補修した溶湯容器の加熱前後の説明図である。 (A)は本発明の一実施の形態に係る焼付け補修材の加熱前後の説明図、(B)は従来例に係る焼付け補修材の加熱前後の説明図である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、図2(A)に示すように、本発明の一実施の形態に係る焼付け補修材(以下、単に補修材ともいう)10は、溶湯容器11の稼動面(溶湯との接触面、即ち内面)12を構成する耐火物の熱間補修に使用され、補修部位13からの流下を抑制して、補修部位13に効率的に積層でき、補修部位13の耐用性を向上させる材料である。この溶湯容器11には、例えば、溶鋼や溶銑を受ける容器があるが、溶湯を受ける容器であれば、特に限定されるものではない。以下、詳しく説明する。
焼付け補修材(熱間補修材)は、骨材(耐火物粒子)に、例えば、タール、ピッチ、フェノール樹脂(ノボラック型)の熱可塑性樹脂等を含む有機バインダーを混入させたものである。この有機バインダーは、容器内の熱を受けて熱硬化あるいは熱分解し、補修材が炭化物と耐火物の混合施工体を形成すると共に、炭素成分によりカーボン結合を形成して、補修部位に積層した補修材の耐用性を高めるものである。
従来の焼付け補修材は、熱間での流動性や展開性を重視した設計となっており、上記した熱可塑性樹脂の軟化や溶融後に流動して、局部的な損耗や損傷(窪み)が発生した補修部位に充填できていた。なお、流動性等を所望の程度に実現するため、従来は主として樹脂の種類や配合などの操作により、流動促進を図ってきた(例えば、特許文献1)。
上記した焼付け補修材は、有機バインダーの流動性を確保したため、補修材の積層厚みの均一化が可能になり、有機バインダーが局部的に厚くなる部分が存在せず、熱硬化(焼付け完了)時間を短縮できるとされている。
しかし、本発明者らは、図2(B)に示すように、焼付け補修材(以下、単に補修材ともいう)14の流動性が過度に向上すれば、図1(B)に示すように、補修材14の有機バインダー(補修時に溶融する)が補修部位13に留まらず、その下方へ流下することを知見した。更に、流下する有機バインダーと共に流下する骨材があり、補修部位13に骨材が留まらない場合があることに想到した。
上記した状況では、十分な補修効果が得られず、また頻繁な補修が必要になるなど、焼付け補修材による補修部位の耐用性向上には、解決すべき課題があった。
本発明者らは、焼付け補修材による補修部位の耐用性向上について、骨材に、マグネシア・クロミアれんがを粉砕してなる微粉を含ませ、これと有機バインダーを混合することで、上記した課題を解決できることに想到した。
即ち、焼付け補修材10は、使用済みのマグネシア・クロミアれんがを有する骨材を65質量%以上95質量%以下含み、骨材は、使用済みのマグネシア・クロミアれんがを粉砕してなるクロミアを、骨材の全量に対して8質量%以上50質量%以下含み、かつ骨材中の篩目100μmアンダーが骨材の全量に対して5質量%以上50質量%以下である。以下、上記した限定理由について説明する。
まず、焼付け補修材10の骨材の含有量(混合量)について説明する。
補修材中の骨材量が少量(65質量%未満)である場合、骨材の含有量が少な過ぎて、補修材の粘性が急激に低下し、図1(B)、図2(B)に示すように、流下する有機バインダーと共に骨材が流され易くなり、補修部位13からの補修材14の流下を抑制しにくくなる。
従って、骨材の含有量を65質量%以上とすることで、図1(A)、図2(A)に示すように、流下の抑制効果が大きくなり、補修部位13への補修材10の残留率が高くなる。
なお、補修材の使用にあっては、補修材の補修部位への施工後に補修材の温度が上昇するため、有機バインダーの粘性が急激に低下する。このため、補修材全体が大きく流動化するが、低粘度の有機バインダーに含まれる骨材の質量割合が多いほど、補修材全体の粘性(有機バインダーに対する相対粘度)が高まり、補修材の効率的な積層につながる。また、例え有機バインダーが流下しようとしても、骨材粒子間に有機バインダーが効果的に保持され、補修材の効率的な積層につながる。
一方、補修材中の骨材量が95質量%を超える場合、骨材の含有量が多過ぎて、骨材に対する有機バインダーの相対的な量が不足し、骨材のカーボン結合強度を確保できず、補修材の耐用性が低下する。
以上のことから、焼付け補修材10の骨材の含有量を、65質量%以上95質量%以下としたが、下限を、68質量%、更には70質量%とし、上限を、92質量%、更には90質量%、とすることが好ましい。
次に、上記した骨材の粒径とその含有量について説明する。
骨材中の篩目100μmアンダーを、骨材の全量に対して5質量%以上にした場合、有機バインダーが流下しても、骨材が補修部位に多く残留する効果(補修材の流下防止効果)が得られる。
上記したように、補修材の使用にあっては、補修材の補修部位への施工後に補修材の温度が上昇するため、有機バインダーの粘性が急激に低下する。このため、補修材全体が大きく流動化するが、低粘度の有機バインダーに含まれる骨材の粒径が小さいほど、補修材の粘性(有機バインダーに対する相対粘度)が高まることに本発明者らは着目し、一部の有機バインダーが流下しても、骨材を多く含む補修材を補修部位に残留できることに、本発明者らは想到した。なお、補修部位に、粒径100μmアンダーの小さな骨材が残留すると、その周囲に濡れた有機バインダーが多く残留し、骨材のカーボン結合による固定が促進される。
一方、骨材中の篩目100μmアンダーを、骨材の全量に対して50質量%超にした場合、補修部位への骨材の残留効果や、補修材の流下防止効果の向上が、顕著でなくなる(効果が飽和する)。また、粒径の小さな骨材が増加することで、相対的に粒径の大きな骨材が減少するため、補修材の耐用性維持が図れない。
即ち、篩目100μmアンダーを50質量%以下とすることで、骨材の流下抑制と、一定の粗粒保持による耐用性維持とを両立できる。
以上のことから、骨材中の篩目100μmアンダーを、骨材の全量に対して5質量%以上50質量%以下としたが、下限を、10質量%、更には15質量%とし、上限を、47質量%、更には45質量%、とすることが好ましい。
続いて、上記した骨材の構成について説明する。
骨材に使用するマグネシア・クロミアれんがは、マグネシア(酸化マグネシウム:MgO)とクロミア(酸化クロム:Cr)を主成分とする耐火物であり、用途に応じてマグネシアにクロミアを、使用するマグネシア・クロミアれんがの全量(100質量%)に対して1質量%以上50質量%以下添加したものが一般的である。
骨材の製造において、粉砕により上記した100μmアンダーの微粉を多く生成するには、使用済み耐火物が好ましい。この使用済み耐火物は、使用に際し熱履歴を受けているため、微細な亀裂を多く内包し、粉砕すると微粉(例えば100μmアンダー)が生成し易いからである。
本発明者らは、この使用済み耐火物に、上記したマグネシア・クロミアれんがを使用することにより、MgO粒とCr粒とが個別に存在し易く、またこれを細かく(例えば100μmアンダーが5質量%以上50質量%以下)粉砕することで、クロミアが濃化した(クロミアリッチな)骨材粒子の個数を増加させることが可能となり、耐用性向上につなげることができることに想到した。
この耐用性向上の作用効果を得るには、骨材に使用済みのマグネシア・クロミアれんがを所定量含ませる必要があり、骨材の全量を100質量%としてクロミアが8質量%以上50質量%以下となる量、含ませる必要がある。
ここで、骨材がクロミアを8質量%以上含む場合、耐用性向上の効果が発現する。
このクロミア含有量の調整に際しては、一般的に上記したマグネシア・クロミアれんがにクロミアが1質量%以上50質量%以下(最も一般的な含有量は約20質量%)含まれる点、また使用済みのマグネシア・クロミアれんがを回収する際にマグネシア・クロミアれんが以外の耐火物やスラグが混合する場合がある点、等を踏まえると良い。
一方、上記した耐用性向上の作用効果を得るためのクロミア含有量の上限値は特段無いが、マグネシア・クロミアれんがのクロミア含有量は、上記したように、一般的に最大で50質量%程度といわれており、骨材のクロミア含有量の上限値を50質量%とした。
以上のことから、骨材は、使用済みのマグネシア・クロミアれんがを粉砕してなるクロミアを、骨材の全量に対して8質量%以上50質量%以下含むように規定したが、下限を、10質量%、更には15質量%とすることが好ましい。なお、世の中に主として出回っているマグネシア・クロミアれんがを考慮すると、上限は40質量%程度がよい。
ここで、上記した構成の骨材を製造するに際し、クロミア含有量が8質量%未満のマグネシア・クロミアれんがを用いる場合は、選鉱により、事前にマグネシアを除去する必要がある。
また、クロミア含有量が、約20質量%の一般的なマグネシア・クロミアれんがを骨材に用いる場合は、そのまま粉砕して骨材として用いることや、また骨材のクロミア含有量が8質量%未満とならない範囲で他の骨材を添加すること、等が可能である。
従って、100μmアンダーの微粉は、その全量が、使用済みのマグネシア・クロミアれんがの粉砕により得られる微粉で構成される場合や、また、骨材中の使用済みのマグネシア・クロミアれんが量に応じて、この微粉と、他の骨材の微粉とで構成される場合とがある。
なお、前記した特許文献2には、粒径が0.3mm未満の使用済みマグネシア・クロミアれんがの粉砕物に、夾雑物や塵埃等の不純物が富化し集積して、耐食性(耐用性)が低下すると記載されていた。
しかし、本発明者らは、仮に耐用性が低下しても、100μm(0.1mm)アンダーの粒子を所定量含む使用済みマグネシア・クロミアれんがを使用することで、骨材の流下を抑制し、補修部位における補修材の積層厚さを所定量確保することが可能となり、更にはクロミアリッチな骨材粒子の使用による耐用性の向上効果で、夾雑物等が混入することによる耐用性悪化が顕在化しないものと考えた。
上記した焼付け補修材に使用する有機バインダーには、タール、ピッチ、熱可塑性樹脂等、公知の焼付け補修材用の有機バインダーを用いることができる。ここで、有機バインダーは、補修部位への充填性を担保するため、補修施工時に流動性を備えることができるように、融点、軟化点(硬化点)、溶剤揮発温度、等が設定されている。
なお、本発明では、同じ種類の焼付け補修材用の有機バインダーの使用を前提とし、使用済みのマグネシア・クロミアれんがの骨材の粒径を制御することで、骨材の流下抑制の改善効果が得られる有機バインダーを使用する。
この有機バインダーには、更に熱硬化性樹脂(例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等)が含まれていることが好ましい。
前記したように、骨材の粒径分布や混合率を上記した数値範囲とすることで、補修部位からの骨材と有機バインダーの流下を抑制できる。ここで、更に、熱硬化性樹脂を有機バインダーに添加することで、使用に際し、補修材の補修部位への施工後に、補修材が温度上昇して有機バインダーが炭化するまでの間、硬化した熱硬化性樹脂が、補修部位からの骨材と有機バインダーの流下防止に効果を奏する。
この焼付け補修材中の熱硬化性樹脂量は、骨材の量に応じて、補修材の全量に対し10質量%以上20質量%であるのがよい。これは、熱硬化性樹脂量が10質量%以上で効果が発現し、20質量%を超えると効果の向上が顕著でなくなる(効果が飽和する)ことによる。
なお、使用に際しては、熱硬化性樹脂を含有させた焼付け補修材を塊状化して加熱処理すると、塊状化した補修材の外表面が硬化し、補修部位に施工した補修材から有機バインダー成分が流下することを抑制できるので好ましい。
このように、熱硬化性樹脂を添加することで、焼付け補修材を更に効率的に積層でき、更なる寿命延長が可能となる。
次に、本発明の一実施の形態に係る焼付け補修材の製造方法について説明する。
焼付け補修材の製造方法は、骨材の一部又は全部に使用する使用済みのマグネシア・クロミアれんがを粉砕処理し、骨材が、使用済みのマグネシア・クロミアれんがを粉砕してなるクロミアを、骨材の全量に対して8質量%以上50質量%以下含み、かつ骨材中の篩目100μmアンダーが骨材の全量に対して5質量%以上50質量%以下となるように調整して、この骨材と焼付け補修材用の有機バインダーとを混合し、骨材の含有量を65質量%以上95質量%以下に調整する方法である。以下、詳しく説明する。
まず、使用済みのマグネシア・クロミアれんがを準備する。
この使用済みのマグネシア・クロミアれんがには、スラグが付着しているため、マグネシア・クロミアれんがを粉砕処理する前に、事前にハツリ除去しておく。
次に、使用済みのマグネシア・クロミアれんがを粉砕する。
この粉砕には、従来公知の粉砕機(例えば、ハンマーミル)を使用できる。なお、使用済みのマグネシア・クロミアれんがには、地金が含まれているため、粉砕処理後に、地金を磁力選別処理して除去する。
このように、粉砕処理した使用済みのマグネシア・クロミアれんがを使用して、骨材を製造する。
骨材の製造に際しては、使用済みのマグネシア・クロミアれんがを粉砕して得られるクロミアを、上記したように、骨材の全量に対して8質量%以上50質量%以下含み、かつ骨材中の篩目100μmアンダーが骨材の全量に対して5質量%以上50質量%以下となるように、例えば、粉砕方法や粉砕時間、また篩選別を用いて、調整する。
ここで、篩目100μmアンダーの微粉骨材量は、使用済みのマグネシア・クロミアれんがが、使用に際し熱履歴を受け、微細な亀裂を多く内包しているため、粉砕処理することにより調整できる。また、粉砕して得られるクロミア量は、使用済みのマグネシア・クロミアれんがのクロミア含有量や、使用済みのマグネシア・クロミアれんがの回収時の状態を踏まえることで調整できるが、以下の方法で行うこともできる。
例えば、クロミア含有量が8質量%未満のマグネシア・クロミアれんがを用いる場合は、選鉱により、事前にマグネシアを除去する。
一方、クロミア含有量が、一般的な約20質量%のマグネシア・クロミアれんがを骨材に用いる場合は、このマグネシア・クロミアれんがをそのまま粉砕して骨材として用いることや、また骨材のクロミア含有量が8質量%未満とならない範囲で他の骨材を添加する。
なお、他の骨材を添加する場合は、マグネシア・クロミアれんがに他の骨材を添加して、これを粉砕すればよいが、使用済みのマグネシア・クロミアれんがと他の骨材を個別に粉砕した後、粉砕した使用済みのマグネシア・クロミアれんがに粉砕した他の骨材を添加することもできる。
そして、上記した骨材と焼付け補修材用の有機バインダーとを、骨材の含有量が65質量%以上95質量%以下となるように配合し、混合機(例えば、オムニミキサー)を用いて混合処理する。
ここで、有機バインダーに、熱硬化性樹脂を含有させることもできる。なお、補修材中の熱硬化性樹脂量は、骨材の量に応じて、補修材の全量に対し10質量%以上20質量%の範囲内で調整する。
以上の方法により、補修部位からの補修材の流下を抑制して、補修部位に補修材を効率的に積層でき、補修部位の耐用性を向上可能とする焼付け補修材を製造できる。
続いて、本発明の一実施の形態に係る焼付け補修材を用いた補修方法について、図1(A)を参照しながら説明する。
上記した製造方法で得られた焼付け補修材10を、溶湯容器11の補修部位13に施工する。この施工に際しては、補修材を、1)そのまま塊状に成形した形態、2)可燃性の容器に包み込んだ(包摂した)形態(パッケージ)、3)熱可塑性樹脂を用いた成形体、4)熱可塑性樹脂でコーティングした形態、のいずれか1又は2以上の形態にする。そして、例えば、投射、吹付け、又はシュートを用いて搬送して装入、等の方法を用いることで、補修材10を補修部位13に積層する。
これにより、補修部位13に補修材10を効率的に積層できるため、補修部位13の耐用性を向上でき、施工による耐火物の寿命延長が可能となる。
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、損傷部位を熱間補修するに際し、使用する焼付け補修材の構成を種々変更し、補修の効果を調査した。
補修材中の骨材には、ハンマーミルで粉砕したれんがを使用した。使用したれんがは、使用済みマグネシア・クロミアれんが、未使用マグネシア・クロミアれんが、使用済みマグネシアれんが、の3種類である。この使用済みマグネシア・クロミアれんがと使用済みマグネシアれんがは、付着したスラグを事前にハツリ除去し、含まれる地金を磁力選別機で除去したものであり、スラグの混入量は5質量%未満である。更に、使用済みマグネシア・クロミアれんがは、クロミア含有量が20質量%のものを使用し、使用済みマグネシアれんがと混合して、骨材中のクロミア量を、骨材の全量に対して8質量%に調整した。
補修材を製造するに際しては、上記した骨材と有機バインダーとを、公知のオムニミキサーで撹拌した。なお、補修材中の有機バインダーには、ノボラック型フェノール樹脂(熱可塑性樹脂)とピッチの混合物を使用した。また、有機バインダーに、熱硬化性樹脂を含ませる場合は、この熱硬化性樹脂にレゾール型フェノール樹脂を用い、その量を、補修材の全量に対して1質量%以上20質量%以下に調整した。
上記方法で製造した補修材を袋体に装入して梱包した後、スクラップシュートを用いて、袋体を補修部位に投下し施工した。なお、施工対象は転炉(溶湯容器の一例)であり、その炉壁垂直面の耐火物に生じた凹部(内幅:20〜50cm程度、深さ:5〜20cm程度)を補修部位とした。
試験条件と試験結果(効果)を、表1に示す。
Figure 0005678859
表1において、実施例1〜5はそれぞれ、骨材の種類、補修材中の骨材量、及び骨材中の微粉量を、適正範囲内(骨材の種類:使用済みマグネシア・クロミアれんが、補修材中の骨材量:65質量%以上95質量%以下、骨材中の微粉量:100μmアンダーが5質量%以上50質量%以下)とした結果である。なお、実施例5は、有機バインダーに、熱硬化性樹脂を含ませた場合の結果である。
一方、比較例1〜6はそれぞれ、骨材の種類、補修材中の骨材量、及び骨材中の微粉量のいずれか1の条件を、上記した適正範囲外にした結果である。
なお、表1中の骨材の種類で、「A」は使用済みマグネシア・クロミアれんがを、「B」は未使用マグネシア・クロミアれんがを、「C」は使用済みマグネシアれんがを、それぞれ示している。
また、表1中の焼付け補修材の残存率は、施工後(溶鋼を受ける前)の結果で、補修部位に補修材を効率的に積層できたか否かを評価し、1チャージ(1回溶湯を受けた)後の結果で、補修部位の耐用性を向上できたか否かを評価した。この補修材の残存率は、補修部位に焼付け補修材を施工し、この施工後に補修部位に残存した補修材の体積率(補修部位を補修材が覆っている面積)を目視で評価した。なお、補修部位に残存していない補修材は、補修部位から流下し、また溶鋼との接触後に溶損して補修部位から消失している。
また、各評価の合格基準は、施工後の残存率を70%以上とし、1チャージ後の残存率を60%以上とし、各評価で合格基準を満たす補修材を、総合評価で使用に適しているとし(○)、それ以外を使用に適さないとした(×)。
まず、骨材の種類が、焼付け補修材の残存率に及ぼす影響について、実施例1と比較例3、実施例2と比較例4を参照しながら説明する。なお、実施例1と比較例3、実施例2と比較例4は、それぞれ補修材中の骨材量、骨材中の微粉量、及び熱硬化性樹脂の各条件を、同一条件にしている。
実施例1は、使用済みマグネシア・クロミアれんがを使用したため、クロミアリッチな骨材粒子の個数を増加させることができ、補修部位の耐用性を向上できた(1チャージ後の残存率:70%、総合評価:○)。一方、比較例3は、未使用マグネシア・クロミアれんがを使用したため、クロミアリッチな骨材粒子の個数が少なくなり、補修部位の耐用性が実施例1と比較して大幅に低下した(1チャージ後の残存率:20%、総合評価:×)。
また、実施例2と比較例4についても、比較例4は、使用済みマグネシアれんがを使用したため、クロミアリッチな骨材粒子がなく、補修部位の耐用性が実施例2と比較して大幅に低下した(1チャージ後の残存率:10%、総合評価:×)。
次に、焼付け補修材中の骨材量が、焼付け補修材の残存率に及ぼす影響について、実施例2、4、比較例5、6を参照しながら説明する。なお、実施例2、4、比較例5、6は、骨材の種類、骨材中の微粉量、及び熱硬化性樹脂の各条件を、同一条件にしている。
実施例2、4は、補修材中の骨材量を適正範囲内(実施例2:65質量%、実施例4:95質量%)としたため、補修材の粘性が高められ、補修部位からの補修材の流下を抑制して、補修部位に補修材を効率的に積層できた(施工後の残存率:実施例2は100%、実施例4は80%)。また、骨材に対する有機バインダーの相対量も適正となり、骨材のカーボン結合強度を確保できて、補修部位の耐用性を向上できた(1チャージ後の残存率:実施例2は80%、実施例4は70%、総合評価:○)。
一方、比較例5は、補修材中の骨材量が適正範囲の上限値を超えた(97質量%)ため、骨材に対する有機バインダーの相対的な量が不足し、骨材のカーボン結合強度を確保できず、補修材の耐用性が低下した(1チャージ後の残存率:40%、総合評価:×)。
また、比較例6は、補修材中の骨材量が適正範囲の下限値未満(50質量%)であるため、補修材の粘性が急激に低下し、補修部位からの補修材の流下を抑制できず、補修部位に補修材を効率的に積層できなかった(施工後の残存率:40%、総合評価:×)。
続いて、骨材中の篩目100μmアンダーの量が、焼付け補修材の残存率に及ぼす影響について、実施例1〜3、比較例1、2を参照しながら説明する。なお、実施例1〜3、比較例1、2は、骨材の種類、補修材中の骨材量、及び熱硬化性樹脂の各条件を、同一条件にしている。
実施例1〜3は、補修材中の篩目100μmアンダーの量を適正範囲内(実施例1:5質量%、実施例2:20質量%、実施例3:50質量%)としたため、有機バインダーが流下しても、骨材が補修部位に多く残留する効果が得られた(施工後の残存率:実施例1は90%、実施例2は100%、実施例3は90%、総合評価:○)。
一方、比較例1は、補修材中の篩目100μmアンダーの量が適正範囲の下限値未満(0質量%)であるため、骨材中の粗粒が多くなり、流下する有機バインダーと共に骨材が流下し、補修部位に骨材が留まらなかった(施工後の残存率:10%、総合評価:×)。また、比較例2は、補修材中の篩目100μmアンダーの量が適正範囲の上限値を超えた(60質量%)ため、相対的に粒径の大きな骨材が減少し、補修材の耐用性維持が図れなかった(1チャージ後の残存率:0%、総合評価:×)。
最後に、熱硬化性樹脂の使用の有無が、焼付け補修材の残存率に及ぼす影響について、実施例3、5を参照しながら説明する。なお、実施例3、5は、骨材の種類、補修材中の骨材量、及び骨材中の微粉量の各条件を、同一条件にしている。
実施例5のように、有機バインダーに熱硬化性樹脂を添加することで、焼付け補修材を更に効率的に積層でき、補修部位の耐用性も向上できた(施工後の残存率:100%、1チャージ後の残存率:70%、総合評価:○)。
なお、上記した実施例1〜5では、骨材中のクロミア量を、骨材の全量に対して8質量%に調整した結果について説明したが、8質量%を超える(50質量%以下)場合は、クロミア量の増加と共に耐用性向上の効果がより顕著になる。
以上のことから、本発明の焼付け補修材を用いることで、補修部位からの補修材の流下を抑制して、補修部位に補修材を効率的に積層でき、補修部位の耐用性を向上できることを確認できた。
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の焼付け補修材を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
10:焼付け補修材、11:溶湯容器、12:稼動面、13:補修部位、14:焼付け補修材

Claims (1)

  1. 溶湯容器の稼動面の熱間補修に使用される焼付け補修材において、
    使用済みのマグネシア・クロミアれんがを有する骨材を65質量%以上95質量%以下含み、前記骨材は、前記使用済みのマグネシア・クロミアれんがを粉砕してなるクロミアを、該骨材の全量に対して8質量%以上50質量%以下含み、かつ前記骨材中の篩目100μmアンダーが該骨材の全量に対して5質量%以上50質量%以下であることを特徴とする焼付け補修材。
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