JP3724713B2 - 鋼管杭、およびその埋設工法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、土木工事、建設工事に用いる鋼管杭、およびその埋設工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋼管杭を埋設する工法として、有底の鋼管の先端際に螺旋翼を固着した鋼管杭を、回転させながら地中にネジ込み、鋼管杭の先端に設けた切削刃によって土砂を掘削し軟化させるとともに、螺旋翼を鋼管杭の側面の未掘削土砂中に食い込ませて、鋼管杭を下方へ進行させつつ、掘削されて軟化した土砂を鋼管杭によって圧縮し、地盤を強化しながら、鋼管杭を埋設する工法が知られている(特公平2−62648号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記鋼管杭の埋設工法は、鋼管杭の土中への押し込みによって、鋼管杭の先端際の周囲の土砂が解されるため、埋設された鋼管杭が、建築物の基礎杭としては、十分な強度を発現しない場合がある。かかる不具合を解消するためには、鋼管杭の先端際の周囲の土砂を硬化させるために、別途大量のセメントミルク等を鋼管杭の外周から鋼管杭の先端際まで斑なく流し込まなければならず、コストおよび手間がかかる。加えて、鋼管杭が有底であるため、鋼管杭の外周からセメントミルクを流し込んでも、セメントミルクが鋼管杭の真下の部分まで浸透せず、埋設された鋼管杭が十分な強度を発現しないこともある。また、鋼管杭の先端の底板に孔を穿設し、その孔を介してセメントミルクを周囲の土砂に浸透させる方法が採用されることもあるが、かかる方法を採用した場合でも、鋼管杭を土中に押し込む際に孔が目詰まりしてしまうため、セメントミルクを鋼管杭の真下の部分に十分に浸透させることができない。一方、鋼管杭の先端を単純に開放したのでは、鋼管杭を土中に押し込む際に、鋼管杭の下側に位置した土砂が鋼管杭の内部へ侵入してしまい、鋼管杭の下側に位置した土砂の圧縮によって地盤を強化することができない。
【0004】
本発明の目的は、上記従来の鋼管杭の埋設工法が有する問題点を解消し、十分な強度を有する鋼管杭を、安価かつ容易に埋設することが可能な鋼管杭の埋設工法、およびその埋設工法に用いる鋼管杭を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の構成のうち、請求項1に記載された発明の構成は、先端および基端を開放した円筒状の管本体の先端際の外周に、螺旋翼が取り付けられているとともに、管本体の先端際の内部に、前記螺旋翼の螺旋と反対向きの螺旋内翼が設けられており、かつ、前記管本体の上端際に、2つの回転押し込みプレートが左右対称に突設されている鋼管杭であって、管本体の先端に、バイトが固着されており、そのバイトが、前記螺旋内翼の幅と同じ長さだけ管本体の内側へ突出していることにある。請求項2に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、管本体が、内部に流し込んだセメントミルクを螺旋翼の周囲に浸透させるための流出孔を、螺旋翼の設置際に穿設したものであることにある。請求項3に記載された発明の構成は、請求項1の鋼管杭を、回転させながら地中に押し込むことによって埋設させるとともに、鋼管杭を押し込む際に、螺旋内翼により鋼管杭の内部への土砂の侵入を防止し、鋼管杭の先端の土砂を締め固めることにある。請求項4に記載された発明の構成は、請求項3に記載された発明において、埋設された鋼管杭の内部にセメントミルクを流し込み、鋼管杭の先端際の周囲の土砂を硬化させることにある。
【0006】
本発明の鋼管杭は、管本体の先端際の内部に、螺旋翼の螺旋と反対向きの螺旋内翼が設けられているため、土中に押し込まれる際に、螺旋内翼が鋼管杭の下側に位置した土砂を鋼管杭の外側に押し出す(排出する)ように作用する。したがって、径が大きい場合(200mm〜300mm)には、下側に位置した土砂がわずかに内部に侵入するものの、径が小さい場合(80mm〜200mm)には、下側に位置した土砂がほとんど内部に侵入しない。それゆえ、本発明の鋼管杭は、有底の鋼管杭と同様に、土中に押し込む際に、下側に位置した土砂を圧縮することができ、地盤を強化することができる。
【0007】
本発明の鋼管杭は、管本体が、外径80mm〜300mm、厚さ3mm〜12mm、長さ2m〜10mであると、埋設工事に使用し易く、製造が容易であり、運搬も容易であるので好ましい。なお、鋼管杭を接続自在に構成することも可能である。また、管本体に取り付ける螺旋翼は、外径が管本体の1.5倍〜3.0倍であると、鋼管杭を地中に埋設させた後の螺旋翼による地盤の保持力が高くなるとともに、埋設工事の作業効率が良好なものとなるので好ましい。さらに、螺旋翼の厚さは、鋼管杭を埋設させる地盤の硬さに応じて適宜変更することができ、4mm〜20mmの範囲内であると、製造が容易である上、螺旋翼の強度が十分なものとなるので好ましい。加えて、螺旋翼の管本体への捲回が、約1周(5/6周〜7/6周)であると、土中に押し込み易い上、セメントミルクを流し込んだ場合に、セメントミルクにより硬化された土砂と螺旋翼との結合によって、鋼管杭を埋設させた後の地盤の保持力が高くなるので好ましい。
【0008】
一方、鉄筋を固着することによって管本体の内部へ螺旋内翼を設ける場合には、鉄筋の太さが約8mm〜30mmであると、鋼管杭の製造が容易になるとともに、螺旋内翼の強度が十分なものとなるので好ましい。また、平鋼を固着することによって管本体の内部へ螺旋内翼を設ける場合には、平鋼の厚さが約4mm〜20mmであり、かつ平鋼の幅が8mm〜30mmであると、鋼管杭の製造が容易になるとともに、螺旋内翼の強度が十分なものとなるので好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る鋼管杭を、図面に基づいて詳細に説明する。図1〜図3は、それぞれ、鋼管杭1の正面、底面、鉛直断面を示したものであり、図4は、鋼管杭1の一部を透視した状態を示したものである。鋼管杭1は、管本体2、バイト3、螺旋翼4、螺旋内翼5、回転押し込みプレート7,7によって構成されている。管本体2は、鉄によって、外径約114.3mm、厚さ4.5mm、長さ6mの筒状に形成されている。そして、管本体2の先端には、鉄製で四角柱状(幅約20mm、厚さ約12mm)の2つのバイト3,3が取り付けられており(管本体2の内壁に溶接されており)、管本体2の先端から約20mm突出した状態になっている。なお、各バイト3,3の先端は、中央が尖った状態になっている。また、管本体2の先端際の部分には、厚さ約6.0mmの鉄板からなる螺旋翼4が、外径約265mmの円形フランジ状に、溶接によって一体的に取り付けられている。そして、螺旋翼4は、管本体2の外周を、約150mmの間隔で、右向きに(すなわち、上から見た場合に上端から下端にかけて右方向に回転する向きに)、約1周捲回した状態になっている。一方、管本体2の上端際には、2つの回転押し込みプレート7,7が左右対称に突設されている。
【0010】
一方、管本体2の内壁には、直径約12mmの鉄筋からなる螺旋内翼5が、溶接によって一体的に取り付けられている。そして、螺旋内翼5は、管本体2の内壁を、約150mmの間隔で、左向きに(すなわち、上から見た場合に上端から下端にかけて左方向に回転する向きに)、約1周捲回した状態になっている。
【0011】
上記の如く構成された鋼管杭1は、建設工事用の基礎杭の埋設工事等に好適に用いることができる。鋼管杭1を地面に埋設する場合には、地面に突き立てて、圧力を加えて右向き(上から見た場合の右向き)に回転させながら地中に押し込む。鋼管杭1を地中に押し込む際には、鋼管杭1の回転に伴い、螺旋翼4が、効率良く土砂を噛み込み、鋼管杭1を土中に進行させる推力を生み出す。また、鋼管杭1が下方へ押し込まれる際には、管本体2の内壁に螺旋翼4と逆向きに固着された螺旋内翼5によって、鋼管杭1の下側に位置した土砂の管本体2の内部への侵入が阻止される。そして、侵入を阻止された土砂は、管本体2の下方あるいは側方で圧縮され、締め固められる。
【0012】
そして、鋼管杭1を土中に深く埋設させた後には、図5の如く、注水具6等により、セメントミルク(水にセメント系固化材を100〜700Kg/m3 程度の配合量で溶解(分散)させたセメント含有水)8を、鋼管杭1の管本体2の内部へ流し込み、管本体2の先端際に位置した螺旋翼4の周囲の土砂に十分に浸透させる。しかる後、十分な時間をかけて、螺旋翼4の周囲の土砂に浸透したセメントミルク8を土砂とともに十分に硬化させる。かかる一連の作業によって、埋設された鋼管杭1の周囲の地盤が強化され、埋設された鋼管杭1が高い強度を発現する。
【0013】
鋼管杭1は、上記の如く、先端および基端を開放した円筒状の管本体2の先端際に、螺旋翼4が取り付けられているとともに、管本体2の先端際の内部に、螺旋翼4の螺旋と反対向きの螺旋内翼5が設けられているため、土中に押し込む際に螺旋翼4が良好な掘削力を発現するので、容易に土中に押し込むことができる。その上、埋設した場合に、螺旋翼4が良好な地盤保持力を発現するとともに、土中に押し込む際に、螺旋翼4と反対向きの螺旋内翼5が、管本体2の下側に位置した土砂の管本体2の内部への侵入を効果的に阻止し、侵入を阻止した土砂を管本体2の下方あるいは側方で圧縮して締め固める。したがって、埋設後に高い強度を発現することができる。
【0014】
また、鋼管杭1は、螺旋内翼5が、管本体2の内壁への鉄筋の固着によって形成されているため、螺旋内翼5の強度が高く、硬い地盤に埋設する場合おいても、螺旋内翼5が破損することなく、管本体2の下側に位置した土砂の管本体2の内部への侵入を効果的に阻止し、侵入を阻止した土砂を管本体2の下方あるいは側方で圧縮して締め固めることができるとともに、安価かつ容易に製造することができる。
【0015】
さらに、鋼管杭1は、管本体2の先端に、バイト3,3が固着されているため、掘削力が非常に高く、きわめて容易に土中に押し込むことができる。
【0016】
一方、上記鋼管杭1の埋設工法は、鋼管杭1を回転させながら地中に押し込むことによって埋設させるとともに、鋼管杭1を押し込む際に、螺旋内翼5により鋼管杭1の内部への土砂の侵入を阻止し、鋼管杭1の下側に位置した土砂を締め固めるものであるため、鋼管杭1を、高い強度を発現するように、安価かつ容易に埋設することができる。
【0017】
また、上記鋼管杭1の埋設工法は、埋設された鋼管杭1の内部にセメントミルクを流し込み、鋼管杭1の先端際の周囲の土砂を硬化させるものであるため、鋼管杭1を非常に高い強度を発現するように埋設することができる上、埋設した鋼管杭1の螺旋翼4の周囲の地盤をきわめて強度の高いものとすることができる。
【0018】
なお、本発明の鋼管杭の構成は、上記した各実施例の態様に何ら限定されるものではなく、管本体、螺旋翼、螺旋内翼、バイトの形状・構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更できる。また、本発明の鋼管杭の埋設工法の構成も、上記実施形態の態様に何ら限定されず、必要に応じて適宜変更することができる。
【0019】
たとえば、鋼管杭は、螺旋翼を右向きに設け、螺旋内翼を左向きに設けたものに限定されず、螺旋翼を左向きに設け、螺旋内翼を右向きに設けたものでも良い。一方、先端際の外周にのみ螺旋翼を設けたものに限定されず、全体に亘って螺旋翼を設けたもの等でも良い。また、先端際の内部にのみ螺旋内翼を設けたものに限定されず、内部の全体に亘って螺旋内翼を設けたもの等でも良い。なお、上記実施形態の如く、先端際の外周にのみ螺旋翼を設けた場合や、先端際の内部にのみ螺旋内翼を設けた場合には、鋼管杭の加工コストが安価なものとなる、というメリットがある。さらに、鋼管杭の内部に螺旋内翼を設ける方法は、管本体の内壁に鉄筋を固着する方法に限定されず、管本体の内壁に平鋼を固着する方法や、管本体の内壁に螺旋翼と同様な帯状の鉄板を固着する方法等の別の方法を採用することができる。一方、鋼管杭は、上記実施形態の如く棒状のバイトを先端に設けたものに限定されず、円周状のバイトや円弧状のバイトを設けたものでも良いし、バイトのないものでも良い。また、図6の如く、管本体2の螺旋翼4の設置際に、少なくとも1個以上の流出孔9,9を穿設することも可能である。かかる構成を採用した場合には、埋設された鋼管杭1の内部にセメントミルクを流し込む際に、セメントミルクが螺旋翼4の周囲に浸透し易くなる、というメリットがある。なお、螺旋翼4の真上に流出孔9,9を穿設すると、セメントミルクがより効率的に螺旋翼4の周囲に浸透するようになる。
【0020】
【発明の効果】
請求項1に記載された鋼管杭は、先端および基端を開放した円筒状の管本体の先端際に、螺旋翼が取り付けられているとともに、管本体の先端際の内部に、前記螺旋翼の螺旋と反対向きの螺旋内翼が設けられているため、土中に押し込む際に螺旋翼が良好な掘削力を発現するので、容易に土中に押し込むことができる。その上、埋設した場合に、螺旋翼が良好な地盤保持力を発現するとともに、土中に押し込む際に、螺旋翼と反対向きの螺旋内翼が、管本体の下側に位置した土砂の管本体の内部への侵入を効果的に阻止し、侵入を阻止した土砂を管本体の下方あるいは側方で圧縮して締め固めるため、埋設後に高い強度を発現することができる。また、本体の先端に、バイトが固着されているため、掘削力が非常に高く、きわめて容易に土中に押し込むことができる。
【0021】
請求項2に記載された鋼管杭は、内部に流し込んだセメントミルクを螺旋翼の周囲に浸透させるための流出孔が螺旋翼の設置際に穿設されているので、セメントミルクが螺旋翼の周囲に浸透し易い。
【0023】
請求項3に記載された鋼管杭の埋設工法は、請求項1の鋼管杭を、回転させながら地中に押し込むことによって埋設させるとともに、鋼管杭を押し込む際に、螺旋内翼により鋼管杭の内部への土砂の侵入を阻止し、鋼管杭の下側に位置した土砂を締め固めるものであるため、鋼管杭を、高い強度を発現するように、安価かつ容易に埋設することができる。
【0024】
請求項4に記載された鋼管杭の埋設工法は、埋設された鋼管杭の内部にセメントミルクを流し込み、鋼管杭の先端際の周囲の土砂を硬化させるものであるため、鋼管杭を非常に高い強度を発現するように埋設することができる上、埋設した鋼管杭の螺旋翼の周囲の地盤をきわめて強度の高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼管杭の正面図である。
【図2】鋼管杭の底面図である。
【図3】鋼管杭の鉛直断面図である。
【図4】鋼管杭の部分透視図である。
【図5】鋼管杭の埋設工法を示す説明図である。
【図6】鋼管杭の変更例を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・鋼管杭、2・・管本体、3・・バイト、4・・螺旋翼、5・・螺旋内翼、8・・セメントミルク。
Claims (4)
- 先端および基端を開放した円筒状の管本体の先端際の外周に、螺旋翼が取り付けられているとともに、管本体の先端際の内部に、前記螺旋翼の螺旋と反対向きの螺旋内翼が設けられており、かつ、
前記管本体の上端際に、2つの回転押し込みプレートが左右対称に突設されている鋼管杭であって、
管本体の先端に、バイトが固着されており、そのバイトが、前記螺旋内翼の幅と同じ長さだけ管本体の内側へ突出していることを特徴とする鋼管杭。 - 管本体が、内部に流し込んだセメントミルクを螺旋翼の周囲に浸透させるための流出孔を、螺旋翼の設置際に穿設したものであることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭。
- 請求項1の鋼管杭を、回転させながら地中に押し込むことによって埋設させるとともに、鋼管杭を押し込む際に、螺旋内翼により鋼管杭の内部への土砂の侵入を防止し、鋼管杭の先端の土砂を締め固めることを特徴とする鋼管杭の埋設工法。
- 埋設された鋼管杭の内部にセメントミルクを流し込み、鋼管杭の先端際の周囲の土砂を硬化させることを特徴とする請求項3に記載の鋼管杭の埋設工法。
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