JP3723788B2 - 焼香組成物及びその製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、仏事などで焼香に供するお香である焼香組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
焼香は、主に仏事の際に、仏の功徳を讃えたり、死者を弔うための焚香であり、焼香に用いられる材料は、香木などを細かく刻んで混ぜ合わせたものを用いる。また、近年、煙の発生を少なくするため、木炭をはじめとする燃焼材に無機化合物等の燃焼調整材、及び着色料や糊料を混合して水で練り乾燥後、適度な粒子状の大きさに整え、香料を賦香して焼香組成物を製造し葬儀などに用いている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
人工的に煙の発生を少なくするために木炭等を主材とし燃焼調整材として不燃性無機化合物を配合した少煙型焼香組成物が実施されているが、焼香組成物は粒子状であって各粒子間の接触面積が小さく、粒子から粒子への連続燃焼性が維持できないで途中で消えるという、いわゆる立ち消えする現象が大きな課題であった。天然の香木はそれ自体が可燃物であり、香を焚く際に立ち消えする事は皆無であった。しかしながら、人工的に作られた焼香組成物には、多量の不燃性無機化合物を含有するため、天然の焼香には無かった、立ち消えという現象が起きることが大きな問題として存在していた。
【0004】
無機化合物を多量に使用する目的は、木炭の燃焼調整と天然の香木を再現するような色彩を施すため、少煙のための黒色の木炭の配合量を出来るだけ減らして、白色系の燃焼調整材を増加し着色料で明るい色に着色するためであった。
【0005】
一つの解決手段としては、個々の組成物中の燃焼材を増加することによってその連続燃焼性を高める方法があるが、これは木炭などの配合量を増加させることになる。黒色の木炭の配合量を増やすと焼香組成物全体が黒色となるので、着色料を添加しても天然品に近い色調を出すことが出来ず、非常に黒色に近い焼香しか出来ない。
【0006】
燃焼材が少なくても立ち消えしない方法として、種々の方法で焼香組成物を多孔質化し、連続燃焼性を高める研究が試みられている。その中でも特許第2623446号、特許第2559657号及び特許第2559671号に示された凍結乾燥法による多孔質化法は、良い結果を出しているが、更に明るい色調にし天然の焼香組成物に近づける為にも燃焼材の木炭を減少し、立ち消えを起こさない焼香組成物が望まれていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は以上のような課題を解決するために、種々の検討を加えた結果完成したもので、請求項1は、燃焼材、燃焼調整材、着色料及び糊料を含み多孔質に形成されている焼香組成物の粒子の表面を、可燃性物質から成るコーティング材又は可燃性物質を主成分とするコーティング材でコーティングした焼香組成物であって、乾燥後のそのコーティング材が透明である構成である。請求項2は、乾燥後のコーティング材が無色透明である要素が請求項1に限定的に付加された構成ある。
【0008】
請求項3は、コーティング材が、可燃性の高分子化合物を成分又は主成分とする要素が請求項1又は請求項2に限定的に付加された構成である。請求項4は、コーティング材が、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ブチラール樹脂若しくはアクリル酸エステル系樹脂の一種類又はこれらの少なくとも2種類の組み合わせを成分又は主成分とする要素が請求項3に限定的に付加された構成である。請求項5は焼香組成物の製造方法であって、燃焼材、燃焼調整材、着色料及び糊料を含み、水を配合して混練し、凍結乾燥によって多孔質に形成し、不定形粒子に解砕した焼香組成物の粒子の表面に、可燃性物質から成るコーティング材又は可燃性物質を主成分とするコーティング材をエタノールで溶かした溶液を噴霧し、コーティング材を乾燥する構成である。
【0009】
【発明の効果】
請求項1は、燃焼材、燃焼調整材、着色料及び糊料を含み多孔質に形成されている焼香組成物の粒子の表面を、可燃性物質から成るコーティング材又は可燃性物質を主成分とするコーティング材でコーティングした焼香組成物であって、乾燥後のそのコーティング材が透明である構成である。したがって、焼香組成物の粒子と粒子の接触部分には可燃性のコーティング材が介在しているので、粒子間の燃焼の伝達が確実であって立ち消えを確実に防止することができる。また、流通段階での衝撃などによる焼香組成物の欠片の発生を格段に抑制し、乾燥後のコーティング材が透明であるから焼香する際の手指への色素の付着とそれによるお手拭への汚れについて回避する事が出来る。さらに、焼香組成物が多孔質に形成され天然木の外観を呈するときにコーティングしてもコーティング材が透明であるためその状態が目視できるので、その天然木の外観を維持することができる。請求項2は、乾燥後のコーティング材が無色透明である。したがって、焼香に種々の色彩を施したときにその色彩をそのまま表わすことができる。
【0010】
請求項3は、コーティング材が、可燃性の高分子化合物を成分又は主成分とする構成である。請求項4は、コーティング材が、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ブチラール樹脂若しくはアクリル酸エステル系樹脂の一種類又はこれらの少なくとも2種類の組み合わせを成分又は主成分とする構成である。したがって、高分子化合物は溶剤に溶かして溶液とし、噴霧装置で焼香の粒子に噴霧することにより容易にコーティングすることができる。
【0011】
請求項5は焼香組成物の製造方法であって、燃焼材、燃焼調整材、着色料及び糊料を含み、水を配合して混練し、凍結乾燥によって多孔質に形成し、不定形粒子に解砕した焼香組成物の粒子の表面に、可燃性物質から成るコーティング材又は可燃性物質を主成分とするコーティング材をエタノールで溶かした溶液を噴霧し、コーティング材を乾燥する構成である。したがって、製造された焼香組成物はコーティングされているので、流通段階での衝撃などによる焼香組成物の欠片の発生を格段に抑制し、焼香する際の手指への色素の付着とそれによるお手拭への汚れについて回避する事が出来る。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、不定形粒子状の焼香組成物を形成後に、粒子の表面を水又は溶剤に溶解した可燃性の高分子化合物を噴霧しその後乾燥する事により、粒子の表面が高分子化合物の皮膜でコーティングされる。これによって、連続燃焼性を持ち、立ち消えしない焼香組成物を調製することが出来る。更に、強い被膜が形成され流通段階での衝撃等での欠片が発生し難く、又、湿った指で焼香組成物に触れてもそれに含まれる微粉末や染料が指に付着し難くなり、焼香をした後で使用するお手拭を汚すことも無くなった。
【0013】
本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。本発明で用いられる燃焼材は動植物の炭化物が用いられるが、炭化物としては一般的に植物の炭化物が使用される。その他、燃焼調整材としては白色系の金属化合物が用いられ、具体的には酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物や水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム又は、炭酸カルシウムなどの無機塩類が用いられる。糊材としてはカラギーナンやカルボメトキシセルロース等のいわゆるゲル化剤・増粘剤が用いられる。
【0014】
焼香組成物を製造するときは、まず、これらの基材と水を適宜配合して混練する。その後、不定形粒子に形成するために本基材を乾燥する。乾燥後、グラニュレータータイプの解砕機などにて不定形粒子に解砕する。次に、顆粒混合機にて香料を噴霧賦香する際に、コーティング材を香料と共に不定形粒子に噴霧してコーティングする。コーティング材としては、セルロース誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ブチラール樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、天然樹脂、ガム類、天然多糖類等を用いることが出来る。溶剤揮散後、最後に篩で一定の粒度にそろえて焼香組成物とする。
【0015】
【実施例】
(基材と水の配合実施例1)
炭粉末250g、酸化チタン290g、CMC30g、黄色色素30gを混練機にて混合しその中へ水400gを添加して十分に混練する。混練した生地を凍結乾燥して後、グラニュレータータイプの解砕機にて解砕し得られる不定形粒子を篩にて1.0〜2.5mmにそろえる。これによって焼香組成物は粒子状に形成されて焼香の際に指先で摘むことができる。他の配合実施例2,3も配合実施例1と同様の方法にて以下の処方にて調製する。
【0016】
Figure 0003723788
【0017】
(配合実施例1〜3に基づいた製品実施例A−1,A−2,A−3)
配合実施例1で調製した組成物100gに対して、香料1gとコート剤としてエチルセルロース溶液(3%エタノール溶液)30gを同時に噴霧コートする。その後、エタノールを揮散させ製品とする。同様に配合実施例2,3も賦香と同時に表面コートを実施する。
【0018】
(配合実施例1〜3に基づいた製品実施例B−1,B−2,B−3)
配合実施例1で調製した組成物100gに対して、香料1gとコート剤としてブチラール樹脂溶液(3%エタノール溶液)30gを同時に噴霧コートする。その後、エタノールを揮散させ製品とする。同様に配合実施例2,3も賦香と同時に表面コートを実施する。
【0019】
(配合実施例1〜3に基づいた比較例1〜3)
配合実施例1〜3で調製した組成物100gに対して、香料1gを30gのエタノールに溶解し噴霧賦香する。その後、エタノールを揮散させ製品とする。同様に配合実施例2,3も賦香を実施する。
【0020】
(連続燃焼性の評価)
18mm×18mmの大きさの香炭に着火し、香炉の中央に置く。香炭の火点中心部より真上に5.0gの焼香組成物を一気に載せる。直径50〜60mmの円錐形の山になる。この状態で連続燃焼性の評価を実施する。即ち、ほぼ全体が燃焼しきるかどの程度まで連続燃焼性が広がるかを4段階で評価する。
評価A:ほぼ全体が燃焼しきる。
評価B:中心部から半径15mm超燃焼し消えた。
評価C:中心部から半径15mm以内燃焼し消えた。
評価D:火点接触部のみ燃焼。
【0021】
連続燃焼性評価
サンプル 評価結果
製品実施例(A−1) 評価A
製品実施例(A−2) 評価B
製品実施例(A−3) 評価B
製品実施例(B−1) 評価A
製品実施例(B−2) 評価B
製品実施例(B−3) 評価C
比較例1 評価A
比較例2 評価D
比較例3 評価D
【0022】
(焼香組成物の色素の付着性の評価)
1000mlのビーカーに水を1000ml入れて、その水面に0.2gの焼香組成物を添加し着色色素が溶解し始めるまでの時間を測定して手指への付着性の評価として実施した。
【0023】
(衝撃試験方法)
500mlの広口瓶に50gの焼香組成物を入れてフタをして、10秒間激しく上下に振り評価に用いる。
【0024】
溶解試験(1)
サンプル 添加から溶解までの時間 評価結果
実施例(A) 38秒 ○
実施例(B) 31秒 ○
比較例(1) 1秒以内 ×
【0025】
溶解試験(2)衝撃試験後
サンプル 添加から溶解までの時間 評価結果
実施例(A) 17秒 ○
実施例(B) 15秒 ○
比較例(1) 1秒以内 ×

Claims (5)

  1. 燃焼材、燃焼調整材、着色料及び糊料を含み多孔質に形成されている焼香組成物の粒子の表面を、可燃性物質から成るコーティング材又は可燃性物質を主成分とするコーティング材でコーティングした焼香組成物であって、乾燥後のそのコーティング材が透明であることを特徴とする焼香組成物
  2. 乾燥後のコーティング材が無色透明である請求項1記載の焼香組成物
  3. コーティング材が、可燃性の高分子化合物を成分又は主成分とする請求項1又は請求項2記載の焼香組成物
  4. コーティング材は、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ブチラール樹脂若しくはアクリル酸エステル系樹脂の一種類又はこれらの少なくとも2種類の組み合わせを成分又は主成分とする請求項3記載の焼香組成物
  5. 燃焼材、燃焼調整材、着色料及び糊料を含み、水を配合して混練し、凍結乾燥によって多孔質に形成し、不定形粒子に解砕した焼香組成物の粒子の表面に、可燃性物質から成るコーティング材又は可燃性物質を主成分とするコーティング材をエタノールで溶かした溶液を噴霧し、コーティング材を乾燥することを特徴とする焼香組成物の製造方法
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