JP3722255B2 - 血漿または血清分離フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血球成分を含んだ血液中から、血漿または血清を分離回収できるフィルターに関する。さらに詳しくは臨床検査に必要となる血漿または血清を短時間で得ることのできる血漿または血清分離フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒトの健康状態を観察する手段として、各種検査方法が開発され、病気の予防、診断、経過観察等に有効に利用されてきた。なかでも血液検査はその歴史が長く、最も基本的な臨床検査法である。血液検査は近年著しく進歩し、各種自動診断検査装置が開発され、検査に必要な時間もかなり短縮された。
【0003】
こうした血液検査の生化学検査の多くは赤血球などの血球成分が検査値に影響を与える。そのため、採取された血液はすぐに遠心分離を行い、その上澄みとして得られる血漿、または血液を凝固させたのち遠心分離を行い、その上澄みとして得られる血清が生化学検査に必要となる。すなわちほとんどの生化学検査には遠心分離が必要である。
【0004】
しかし、遠心分離は10分以上の時間がかかるだけでなく、大型で高価な遠心分離機が必要である。特に血清を得る場合には、血液を凝固させる時間も必要であり、短時間に検査結果が得られていない。
検体分離作業の運用方法などに工夫を加えて、無駄になっている時間を節約したとしても、採血から検査結果が出されるまで最短で30分、平均で1時間はかかっているのが現状である。
【0005】
特に救急治療においては患者の状態をいち早く把握して的確な治療を実施することが重要であり、早急に血液検査を実施し、その結果から治療方針を判断しなければならない。
【0006】
そこで上記問題を解決する手段として、一般にドライケミストリーと呼ばれる技術が知られている。これはガラス繊維などの極細繊維フィルターからなる血清分離層と、その下層に位置する反応層とから成り立つ小型プレートに微量の血液を滴下すると血清分離層にて血清が分離されその下層の反応層にて反応、発色し、これを分光光度計で測定する。このドライケミストリーは、液状の発色試薬を使わず、遠心分離による面倒な血清採取も必要としない簡便な方法であるが、測定できる項目が一般の生化学分析や免疫分析に比べて数が限られていること、一つのプレートに一つの検査項目を用いるため、複数の項目を検査するためには多数のプレートを用いなければならず、簡便であるわりには時間的メリットが少ないこと、高価であることなどから普及するには至っていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
血漿または血清を遠心分離を使わずに得る方法としては、特開昭53−72691号に一端が閉塞された細かいチューブ状フィルター素子を濾材として、血液から血漿を分離する方法や、特開昭60−11166号に中空繊維束を用いた濾過カートリッジを使用し、血液から血漿を分離する方法が提案されている。しかしながら前者の方法では蛋白質の透過率が悪い上に、血球がフィルター表面に付着するため、血漿の濾過に極めて長時間を要し、また逆に濾過速度を速くするために濾過圧を高くすると、赤血球の溶血を生じるといった問題がある。また、後者の中空繊維束を用いた濾過カートリッジを使用した方法では、血漿分離作業の準備としてプライミングによる前処理、つまり生理食塩水などで中空糸膜を濡らす作業が必要となり、得られる血漿が希釈されてしまったり、血漿分離の作業そのものより準備の作業に手間がかかる問題点を有する。
【0008】
また、これらの膜分離による方法は、血球と血漿・血清の分子サイズの違いによる分離法であるために、血液中の蛋白質など比較的分子量の大きな物質は膜を十分に透過できず、得られた血漿中の各蛋白の組成は、正確に元の血液中の蛋白質の組成を反映しない問題がある。さらに膜の孔径を大きくしすぎると赤血球が目詰まりをおこし、溶血する問題があり、実用化には至っていない。
【0009】
上記とは別に繊維状フィルターを用い、臨床検査用血清または血漿分離技術が種々提案されている。特開昭61−38608号には体積濾過効果を用いた繊維質からなる固液分離器具が開示されている。特開平4−208856号にはポリアクリルエステル誘導体とポリエチレングリコールを含有するガラス繊維とレクチン含浸層からなる血清または血漿成分の分離回収方法が開示されている。また、特開平5−196620号には、特開平4−208856号で示された分離フィルターを用いた血清・血漿分離器具が開示されている。
【0010】
特開平5−99918ではガラス繊維を用い全血から血漿を分離する方法が検討されている。ここでは親水化を目的としたものではなく、分離の際の溶血を防ぐために、ガラス繊維をポリビニルアルコールまたはポリ酢酸ビニルで被覆させている。
【0011】
これらの方法および器具は、遠心分離を用いずに臨床検査用の血清または血清を得ることができるものの、得られる血漿の量が100μLと非常に少ないうえに、繊維からの溶出や、繊維への吸着が大きく、得られた血漿中の電解質、リン、脂質の測定値が、遠心分離での値と一致しないことがあり、応用できる検査項目が限られ、ほとんど普及していない。
【0012】
また特開平9−143081にはメルトブロー法で得られたポリエステル製極細繊維を用いた血清・血漿分離フィルターが開示されている。このフィルターは繊維間隙を示す平均動水半径と、血液流路径(L)と血液流路長(D)の比(L/D)、さらには繊維径、充填率を最適化することにより、得られる血清・血漿が数百μLで、分離に必要な時間も一分以内で短いことと、フィルター素材と血液成分の相互作用が少なく、得られた血清・血漿中の濃度が分離前の血液と変わらないという特徴を有する。
【0013】
また、特願平8−348746には三次元多孔質体を用いた、血清・血漿分離フィルターが開示されている。このフィルターは、特開平9−143081のポリエステル製極細繊維の代わりに、三次元多孔質体を用いることで、フィルターの組立性を改善している。
【0014】
しかしながら、ポリエステル製極細繊維または三次元多孔質体を無処理でフィルターを構成すると、フィルター内濾過材に血液中の蛋白質が吸着し、得られた血清・血漿中の蛋白質濃度が分離前と比べてわずかな差を生じる。
よって、上記の差をなくす手段として、極細繊維を親水化処理して蛋白吸着を抑制する方法が考えられるが、親水化処理は簡便かつ、他の分析項目への影響が極力少ないものが要求される。
このように、全血から短時間で血清・血漿を得る手段において、より効率的でかつ正確なフィルターを簡便に得る方法が望まれている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記の(1)乃至(3)の血漿または血清分離フィルターを提供するものである。
(1) 入口と出口を有する容器内に高分子極細繊維集合体または多孔質ポリマーで構成される濾過材を装着し、濾過材中で血液を移動させ、血液中の血漿または血清と血球成分の移動速度差を利用することにより、血漿または血清と血球成分を分離採取するための下記( 1 )〜( 4 )の特徴を有する血漿または血清分離フィルター。
(1)高分子極細繊維集合体または多孔質ポリマーがポリエステルからなる。
(2)濾過材に固定化される親水性ポリマーが完全ケン化型ポリビニルアルコールまたはゼラチンである。
(3)血漿または血清分離フィルターを用いて得られた血漿または血清の総蛋白、アルブミンおよび電解質濃度の値と通常の遠心分離で得られた血漿または血清の前記項目についての検査測定値との差の割合が10%以内であり、かつ採取された液のフィブリノーゲン濃度が15mg/dl以下である。
(4)親水性ポリマーの0.01%〜0.025%水溶液に極細繊維集合体または多孔質ポリマーを浸漬した後、加熱乾燥することにより、親水化されている。
(2) 極細繊維の集合体または多孔質ポリマーの形状が円盤状であり、円盤の外周部から中心部に向かって血液が流れ、円盤の中心部より血漿または血清を採取する(1)に記載の血漿または血清分離フィルター。
(3) 容器内に収納される極細繊維の集合体または多孔質ポリマーが容器内にて圧縮されることで0.25g/cm3 以上、0.50g/cm3 以下の密度を有する(1)または(2)に記載の血漿または血清分離フィルター。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明による血漿、血清採取の原理は以下に述べる通りである。血液が極細繊維集合体または多孔質ポリマーで構成される濾過材中を移動するとき、血球は繊維または濾過材に衝突したりして摩擦抵抗を受けて、移動速度が低下する。しかし、血液の液状成分である血漿や血清は抵抗を受けずに移動するので、血球と血漿または血清成分には移動速度差が生じる。ここで分離長を充分に大きくして、繊維集合体の繊維径や嵩密度、多孔質ポリマーのポアサイズや空孔率を制御し、分離材中に血液を流して血球が移動してくるまでの間、血漿または血清を採取することができる。
【0017】
極細繊維集合体や多孔質ポリマーの素材にもよるが、一般的に、そのまま何も処理せずに用いては、分離できなかったり、たとえ分離できたとしても、血液中の蛋白や脂質を吸着して、測定値に誤差を与えてしまう。これでは臨床検査の意味が失われるため好ましくなく、極細繊維集合体や多孔質ポリマーを親水化して物質の吸着を妨げることが必要である。
【0018】
そこで、極細繊維集合体や多孔質ポリマーを親水化するために、親水性ポリマーを固定化する方法に関して鋭意検討を実施した結果、親水性ポリマーにはポリビニルアルコールまたはゼラチンが良好であることを見いだした。
使用されるポリビニルアルコールは特に限定されるものではないが、ケン化度の低い部分ケン化型ポリビニルアルコールは吸水性が高く、得られる血漿または血清を濃縮して検査値が高く測定されることと、わずかに溶血する傾向があるため、完全ケン化型ポリビニルアルコールが好ましい。
また、ポリビニルアルコールの重合度が低いと、血漿または血清を分離している途中にポリビニルアルコールが溶出して血漿または血清中に混入する可能性があるため、重合度は1000以上が好ましい。
【0019】
固定化する方法としては、特に限定されるものでなく、グルタルアルデヒド、水溶性カルボジイミドといった化合物を用いて、極細繊維集合体や多孔質ポリマーの表面に固定化する方法、またはゼラチンまたはポリビニルアルコールを架橋させて極細繊維集合体や多孔質ポリマーのまわりに絡ませる方法、またはただ単に極細繊維集合体や多孔質ポリマーにゼラチンまたはポリビニルアルコールを付着させる方法などがある。
【0020】
なかでも、極細繊維集合体や多孔質ポリマーにゼラチンまたはポリビニルアルコールを付着させる方法は、極細繊維集合体や多孔質ポリマーをゼラチンまたはポリビニルアルコールの水溶液に浸して乾燥させるだけであり、非常に簡便に親水化できる手段であるばかりではなく、血液を濾過材中に流しても、ゼラチンまたはポリビニルアルコールはやや膨潤するだけで、容易には溶出されない。たとえ溶出して検体に混入したとしても、ゼラチンまたはポリビニルアルコールは不活性物質であるため、生化学検査の測定値には影響を与えない。
【0021】
ゼラチンまたはポリビニルアルコールを固定化する量は、その水溶液の濃度を変化させて、極細繊維集合体や多孔質ポリマーを浸し、乾燥させるだけでよい。固定化する量が少ないと、親水化が充分でなく、極細繊維集合体や多孔質ポリマーに血液中の蛋白が吸着されて、採取される血漿または血清の蛋白濃度は遠心分離法で得られる検査値に比べて低下する。逆に固定化する量が多いと、親水性ポリマーが膨潤して血液中の水分を多量に奪うために、採取される血漿または血清の蛋白濃度が上昇する。そこで正確な検査値が得られるように、固定化する親水性ポリマーの量をコントロールする必要がある。
【0022】
並行して親水化ポリマーとしてポリビニルピロリドンを極細繊維集合体や多孔質ポリマーに固定化する方法も検討したが、親水化する手段として不十分であるのに加え、金属成分にも悪影響を与えるだけでなく、親水化する方法が煩雑でかつ時間もかかり、本発明による血漿または血清分離フィルターが明らかに有効である。
【0023】
極細繊維集合体としてポリエチレンテレフタレート不織布を用いると、分離中にフィブリノーゲンが除去されて、フィブリノーゲン濃度が15mg/dl以下の血清が得られるため、非常に好ましい。しかし、親水性ポリマーとしてポリビニルアルコールを用いる場合、ポリエチレンテレフタレート不織布へのポリビニルアルコール固定化量が多いときは、ポリエチレンテレフタレート不織布のフィブリノーゲン吸着能が減少し、血清ではなく血漿が得られる。よって、血清を得るためにはポリビニルアルコールの固定化量をコントロールする必要がある。また、ゼラチンをポリエチレンテレフタレート不織布に固定化する場合は、たとえ固定化量を増加させたとしてもフィブリノーゲン吸着能は保持されるため特に好ましい。
【0024】
使用する極細繊維集合体や多孔質ポリマー、固定化する親水性ポリマーに不純物が含まれていたり、血液中のイオンなどを拘束する性質がある場合も採取された血漿または血清の電解質濃度の検査値に大きな影響を及ぼす。本発明により得られた血漿または血清分離フィルターを用いて、採取した血漿または血清の電解質濃度が遠心分離法による血漿または血清と比べて差がないためには、電解質、金属等を含まず、イオンを拘束する性質をもたない極細繊維集合体や多孔質ポリマーを用いることが必要であるだけではなく、使用する親水性ポリマーであるゼラチンまたはポリビニルアルコールが電解質や金属を含んでいないことが必要である。
【0025】
電解質、金属等を含まず、イオンを拘束する性質をもたない極細繊維集合体または多孔質ポリマーの素材としては特に限定されるものではないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリビニルホルマールが好ましい。特に、フィブリノーゲンを除去でき、血清を得られるといった点でポリエステル、なかでもポリエチレンテレフタレートの極細繊維不織布集合体が好ましい。
【0026】
フィルターの形状は円盤状が好ましく、円盤の外周部から中心部に向かって血液が流れ、円盤の中心部より血漿または血清を採取する手段が、分離長を充分に得ることができ、かつ血液の漏れを防ぐことが容易であり、さらに好ましい。
【0027】
フィルター内に収納される極細繊維の集合体または多孔質ポリマーの密度は0.25g/cm3 以下の場合、血球が摩擦抵抗を充分に得ることができず、血漿または血清を分離採取できない。また、0.50g/cm3 以上であると血球が移動する空間を確保することができず、溶血してしまうので好ましくない。
【0028】
本発明における血球成分と血漿または血清成分の分離機構は両成分の極細繊維の集合体または多孔質ポリマー中の移動速度差を利用しており従来の遠心分離法や、サイズを利用した膜分離とは根本的に異なる。極細繊維の集合体または多孔質ポリマー中の移動速度は、血漿または血清成分の方が、血球成分に比べて速いため、先に血漿または血清成分が到達し、その後血球成分が到達するので、血球成分が到達するまでの間、血液から血漿または血清を採取することができる。
【0029】
上記の採取方法において、正確な検査値を得ることが重要であり、そのためには極細繊維の集合体または多孔質ポリマーの親水化が必要である。親水化する手段として、親水性ポリマーとしてゼラチンまたはポリビニルアルコールをポリエチレンテレフタレートに付着させる手段を検討した結果、採取された血漿または血清の総蛋白、アルブミンおよび電解質濃度の値と通常の遠心分離で得られた血漿または血清の測定値との差が10%以内であり、短時間に血漿または血清を得る手段として有用である。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに何等限定されるものではない。
【0031】
〔実施例1〕
分離材としてメルトブロー法によって得られた平均繊維直径1.8μmのポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布に親水性ポリマーであるゼラチンを付着させたものを用いた。ゼラチンを不織布に付着させる方法としては、ゼラチン0.025%水溶液に不織布を1時間浸漬した後、800rpmで5分間余分な水分を絞り出し、70℃で20時間乾燥させた。こうして得られた親水化不織布を直径29.0mmの円形に切断したものを48枚積層し、容器に充填した。充填した極細繊維集合体は0.30g/cm3 の密度を有していた。
容器には図1に示すようなものを用いて血漿または血清分離フィルターを作製した。すなわち入口として容器の上面端部に直径1.0mmの穴、出口として底面中央部に直径1.0mmの穴を有し、容器内部の直径30.0mm、厚さ7mmの円盤状容器である。
血液には抗凝固剤としてヘパリンを用いヘマトクリット40%のヒトの血液を使用し、容器の外周部から内側へ送液したところ、血清が採取でき、血清を0.83ml採取できたところで血球が混入し始めたため採取を終えた。得られた血清の生化学的検査値の値を表1に示すが、いずれも通常の遠心分離法である3000rpmにて遠心操作を10分行ったときの上澄みである血漿を測定したものと比べて10%以内の差であり、フィブリノーゲンも検出限界以下の15mg/dl以下であった。総蛋白がやや低下している分については、フィブリノーゲンが除去された分であると考えられる。ほぼ遠心分離法と同等の成績が得られた。
【0032】
〔比較例2〕上記実施例1と同様のメルトブローポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布を用い、不織布に固定化させる親水性ポリマーとしてポリビニルアルコール(重合度1000、完全ケン化型)を用いた。ポリビニルアルコールを不織布に付着させる方法としては、ゼラチンと同様に0.01%水溶液に不織布を1時間浸漬した後、800rpmで5分間余分な水分を絞り出し、70℃で20時間乾燥させた。こうして得られた親水化不織布を直径29.0mmの円形に切断したものを58枚積層し、上記容器に充填した。充填した極細繊維集合体は0.37g/cm3 の密度を有していた。血液には抗凝固剤としてACDを用いヘマトクリット41%のウシの血液を使用し、容器の外周部から内側へ送液したところ、血清が採取でき、血清を0.50ml採取できたところで血球が混入し始めたため採取を終えた。得られた血清の生化学的検査値の値は表2に示すが、いずれも遠心分離法によるものと比べて10%以内の差であり、フィブリノーゲンもかなり除去されて42mg/dlであった。
【0033】
〔比較例3〕上記比較例2と同様にメルトブローポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布を用い、不織布に固定化させる親水性ポリマーとしてポリビニルアルコールを用いた。固定化するポリビニルアルコールの量を増やすために、0.1%水溶液に浸漬させて付着させた。上記実施例1、2と同様の容器を用い、不織布を54枚積層させて得たフィルターは0.37g/cm3 の密度を有していた。血液には比較例2と同じく、抗凝固剤としてACDを用いヘマトクリット41%のウシの血液を使用し、容器の外周部から内側へ送液したところ、血漿を0.31ml採取できたところで血球が混入し始めたため採取を終えた。得られた血清の生化学的検査値の値は表2に示すが、いずれも遠心分離法によるものと比べて10%以内の差であったが、フィブリノーゲンは全く除去されず血漿が得られた。
【0034】
〔比較例1〕
分離材としてメルトブロー法によって得られた平均繊維直径1.8μmのポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布を処理せずにそのまま、直径29.0mmの円形に切断して48枚積層し、容器に充填した。充填した極細繊維集合体は0.28g/cm3 の密度を有していた。血液には抗凝固剤としてヘパリンを用いヘマトクリット40%のヒトの血液を使用し、容器の外周部から内側へ送液したところ、血清が採取でき、血清を0.80ml採取できたところで血球が混入し始めたため採取を終えた。
総蛋白は6.7から6.0へと低下し、不織布内に蛋白が吸着されていることが示唆される。
【0035】
〔比較例4〕比較例1で使用したフィルターと全く同じものを用い、血液に抗凝固剤としてACDを用いヘマトクリット41%のウシの血液を使用し、容器の外周部から内側へ送液したところ、血清が採取でき、血清を0.33ml採取できたところで血球が混入し始めたため採取を終えた。総蛋白は6.5から5.1へと低下し、不織布内に蛋白が吸着されていることが示唆される。
【0036】
〔比較例5〕分離材としてメルトブロー法によって得られた平均繊維直径1.8μmのポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布に親水性ポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)を固定化したものを用いた。PVPを不織布に付着させる方法としては、PVP1%水溶液に不織布を1時間浸漬した後、800rpmで5分間遠心して余分な水分を絞り出し、γ線を20kGy照射してPVPを架橋させ、不織布へPVPを固定化して親水性を付与した。この不織布を一時間以上水洗したのち、70℃で20時間乾燥した。こうして得られた親水化不織布を上記と同様に、直径29.0mmの円形に切断したものを48枚積層し、容器に充填した。充填した極細繊維集合体は0.32g/cm3 の密度を有していた。血液には抗凝固剤としてACDを用いヘマトクリット41%のウシの血液を使用し、容器の外周部から内側へ送液したところ、血清を0.43ml採取できた。総蛋白は6.5から5.6へと低下し、親水化は不十分であり、不織布内に蛋白が吸着されていることが示唆される。また、血清鉄にも異常がみられた。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の血漿または血清分離フィルターの例を示す図である。
Claims (3)
- 入口と出口を有する容器内に高分子極細繊維集合体または多孔質ポリマーで構成される濾過材を装着し、濾過材中で血液を移動させ、血液中の血漿または血清と血球成分の移動速度差を利用することにより、血漿または血清と血球成分を分離採取するための下記( 1 )〜( 4 )の特徴を有する血漿または血清分離フィルター。
(1)高分子極細繊維集合体または多孔質ポリマーがポリエステルからなる。
(2)濾過材に固定化される親水性ポリマーが完全ケン化型ポリビニルアルコールまたはゼラチンである。
(3)血漿または血清分離フィルターを用いて得られた血漿または血清の総蛋白、アルブミンおよび電解質濃度の値と通常の遠心分離で得られた血漿または血清の前記項目についての検査測定値との差の割合が10%以内であり、かつ採取された液のフィブリノーゲン濃度が15mg/dl以下である。
(4)親水性ポリマーの0.01%〜0.025%水溶液に極細繊維集合体または多孔質ポリマーを浸漬した後、加熱乾燥することにより、親水化されている。 - 極細繊維の集合体または多孔質ポリマーの形状が円盤状であり、円盤の外周部から中心部に向かって血液が流れ、円盤の中心部より血漿または血清を採取する請求項1に記載の血漿または血清分離フィルター。
- 容器内に収納される極細繊維の集合体または多孔質ポリマーが容器内にて圧縮されることで0.25g/cm3 以上、0.50g/cm3 以下の密度を有する請求項1または2に記載の血漿または血清分離フィルター。
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