JP3870468B2 - 血漿又は血清分離フィルター - Google Patents

血漿又は血清分離フィルター Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液中から血漿又は血清成分を分離回収するフィルターに関する。さらに詳しくは、臨床検査等に用いられる際、少量の血液でも、迅速に純度の高い血漿又は血清を得ることが可能で、且つ、操作性も簡便で、安全性が高く、さらに製造が容易な血漿分離フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
血液中の成分を測定する、いわゆる生化学検査は、各種疾患の診断・経過観察に広く利用され、臨床検査として重要な地位を占めている。その分析技術は、近年著しく進歩し、各種自動分析機器の開発により、多数の検体が精度よく迅速に分析できるようになった。
【0003】
しかし、生化学検査の多くの分野では赤血球等の血球の存在が検査を妨害するため、予め血液から血清または血漿を分離し使用されている。そのため、検査に先立ち、患者や被験者から採取した血液を一旦凝固させた後、遠心分離し、血清を得るという過程を経る必要がある。凝固、遠心分離の操作は時間がかかり、臨床検査の短時間化を妨げるネックとなっているばかりでなく、大型の遠心分離器が必要であるため、比較的大きな病院を除いては、臨床検査を外部の検査業者に依頼しているところが多く、検査結果を入手するまでに数日要している。また、血液から血清を分離する作業は未だほとんど人手に頼ってるために、作業者は血液に触れ、感染等の恐れにもさらされている。
【0004】
上記の問題点を解決する手段として、一般にドライケミストリーと呼ばれる技術が知られている。これは、ガラス繊維などの極細繊維フィルターからなる血清分離層とその下層に位置する反応層とから成り立つ小型プレートに、微量の血液を滴下すると、血清分離層にて血清が分離され、その下層の反応層にて反応、発色し、これを分光光度計にて測定する。このドライケミストリーは、液状の発色試薬を使わず、遠心分離による面倒な血清採取も必要としない簡便な方法であるが、測定できる項目が、液状試薬を用いる一般の生化学分析や免疫分析に比べ数が限られていること、一つのプレートに一つの検査項目を用いるため複数の項目を検査するために多数のプレートを用いなければならず、簡便である割に時間的メリットが少ないこと、高価であることなどから、広く普及するには至っていない。
【0005】
血漿又は血清を遠心分離を使わずに得る方法としては、特開昭53−72691号に一端が閉塞された細かいチューブ状フィルター素子を濾材として、血液から血漿を分離する方法や特開昭60−11166号に中空繊維束を用いた濾過カートリッジを使用し、血液から血漿を分離する方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、前者の方法では、タンパク質の透過率が悪い上に、血球がフィルター表面に付着するため、血漿の濾過に極めて長時間を要し、又逆に濾過速度を速くするため濾過圧を高くすると赤血球の溶血を生じる等の問題がある。また、後者の中空繊維束を用いた濾過カートリッジを使用した方法では、血漿分離作業の準備としてプライミングによる前処理、つまり生理食塩水等で中空糸膜を濡らす等の作業を行うことが必要で、得られる血漿が希釈されてしまったり、血漿分離の作業そのものより準備の作業に手間がかかるという問題点を有する。
【0007】
また、これらの膜分離による方法は、血球と血漿・血清の分子サイズの違いによる分離法であるために、血液中の蛋白質など比較的分子量の大きい物質は、膜を十分に通過できず、得られた血漿中の各蛋白質の組成は正確に元の血液中の蛋白質の組成を反映しない問題がある。さらに、膜の孔径を大きくしすぎると赤血球が目詰まりを起こし、溶血する問題があり、実用化には至っていない。
【0008】
上記とは別に繊維状フィルターを用い臨床検査用血清又は血漿分離技術が種々提案されている。特開昭61−38608には体積ろ過効果を用いた繊維質からなる固液分離器具が開示されている。この固液分離器具は繊維質に血液を加圧して流すことにより、血漿を得ることが出来るが、圧力損失が大きく濾剤の抵抗が大きいため血漿を得るまでに数分要し、また、初期の得られた血漿のタンパク質濃度が、繊維質による吸着により低下するという問題があり実用化には至っていない。特開平4−208856には、ポリアクリルエステル誘導体とポリエチレングリコールを含有するガラス繊維と、レクチン含浸層からなる血清または、血漿成分の分離回収方法が開示されている。また、特開平5−196620には特開平4−208856で示された分離フィルターを用いた血清・血漿分離器具が開示されている。
【0009】
これらの方法および器具は遠心分離を用いずに臨床検査用の血清又は血漿を採取できるものの、得られる血清・血漿の量が100μL前後と少ない上、分離に必要な時間も2分前後で、遠心分離に比べ短縮はされているは充分とはいえず、さらにこれらの技術は、分離材にガラス繊維を用いており、繊維からの溶出や繊維への吸着のため、得られた血漿・血清中の電解質・リン・脂質の濃度が分離前の血液と大きく異なってしまうという欠点を有する。このため、これらの技術も広く普及するには至っていない。
【0010】
以上説明した通り、臨床検査用途として、小量の血液から短時間、効率的、安全に、血漿・血清成分を分離するフィルターとして充分な性能を有するものは存在しないのが現状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、血液中と同一の成分組成を有する血漿又は血清成分を、血液中の血球を損傷することなく、簡便・迅速・安全に血液から分離することが可能で、かつ組立性に優れた血漿又は血清分離フィルターを得るべく、極細繊維集合体による血液成分の分離機構に付いて種々検討した結果、極細繊維の素材、平均繊維直径および繊維間隙部の大きさ、血球分離層長さ、極細繊維の形態、血液の流動方向、繊維の表面状態を最適化することによって、極細繊維集合体中を移動する赤血球と血漿又は血清の移動速度に差を生じさせ、血液中の血漿又は血清と赤血球を分離して回収するとともに、低い圧力損失で迅速に処理でき、また得られた血漿又は血清の電解質やタンパク質の濃度の経時的変化がなく、通常の遠心分離によって得られる血漿又は血清と同等の血漿又は血清を得ることが可能であることを見いだした。以下に本発明を詳細に説明する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、下記の▲1▼乃至▲8▼の血漿又は血清分離フィルターを提供するものである。
▲1▼ 入口と出口を有する容器に極細繊維集合体を装着し、出入口間の圧力差により該極細繊維集合体中で血液を移動させて、血漿又は血清と血球の極細繊維中の移動速度差を利用して、血漿又は血清を血球と分離採取する血漿又は血清分離フィルターにおいて、該極細繊維集合体が平均繊維直径0.5〜3.5μm、平均動水半径0.5〜3.0μmの極細繊維からなる不織布単独又は該不織布を複数枚重ねたものからなり、血球分離層の長さが5mm以上であって、血液の流動方向が、不織布の面に対して水平方向であることを特徴とする血漿又は血清分離フィルター。
▲2▼ 極細繊維がポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド又はポリエチレンからなる上記▲1▼の血漿又は血清分離フィルター。
▲3▼ 極細繊維集合体の形状が円盤状であり、円盤の外周部から中心部に向かって血液が流れ、円盤の中心部より血漿又は血清を採取する上記▲1▼又は▲2▼の血漿又は血清分離フィルター。
▲4▼ 極細繊維の表面に親水化剤が固定化されている上記▲1▼乃至▲3▼のいずれかの血漿又は血清分離フィルター。
▲5▼ 親水化剤がポリビニルピロリドンである上記▲4▼の血漿又は血清分離フィルター。
▲6▼ 採取された血漿又は血清中の電解質濃度と、通常の遠心分離で得られた血漿又は血清中の電解質濃度の差が10%以内である上記▲1▼乃至▲5▼のいずれかの血漿又は血清分離フィルター。
▲7▼ 採取初期、採取終了時、通常の遠心分離で得られた血漿又は血清中の総タンパク質およびアルブミン濃度の差が10%以内である上記▲1▼乃至▲6▼のいずれかの血漿又は血清分離フィルター。
▲8▼ 極細繊維不織布がメルトブロー法により得られたものである上記▲1▼乃至▲6▼のいずれかの血漿又は血清分離フィルター。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明による、血漿又は血清採取の原理は以下に述べる通りである。すなわち、極細繊維中を血液が移動するとき、繊維間隙で血球成分は変形や摩擦抵抗により移動速度が低下するのに対し、液性成分である血漿や血清は抵抗を受けずに移動するので血球成分と血漿又は血清成分の移動速度に差が生じる。ここで、血球が目詰まりする事なく、また血球が極細繊維に接触したときの変形や摩擦抵抗を大きくするよう、繊維間隙と繊維直径を制御し、また、分離長を充分に大きくすることで、血球と血漿又は血清の移動距離差を大きくし、分離効率を高めることができ、血液から血漿又は血清を採取することができる。
【0014】
本発明に適用される血液は、特に限定されるものではなく、血液成分を含むものは全て、本発明に用いることが出来る。すなわち、血液の由来は、ヒト、牛、ヤギ、犬、兎等何でもよく、血液をそのまま用いても、抗凝固剤や赤血球凝集剤等の添加剤を加えて用いてもよい。また通常、血液に添加剤を加えずに放置したり、凝固剤を添加した場合には、血液中にフィブリノーゲンがフィブリンに変化し、血液の凝固が進行するが、これらの凝固性血液をそのまま用いても、遠心分離等の処理を加えた後に用いても、化学的な処理を加えて用いてもよい。
【0015】
本発明に用いられる極細繊維の平均繊維直径は、0.5〜3.5μmが好ましく、0.5〜2.5μmであればより好ましく、0.5〜2.0μmであれば特に好ましい。
【0016】
上記において極細繊維の平均繊維直径とは、極細繊維集合体を2000倍の電子顕微鏡で撮影した写真中よりランダムに選択した50本の極細繊維の径をノギスまたはスケールルーペで計測し求めた値の平均値である。
【0017】
平均繊維直径が3.5μmを超える場合には、極細繊維集合体の単位体積当たりの繊維長が短くなるため、単位体積当たりの繊維と繊維の交絡箇所が少なくなり、繊維間隙も大きくなる。その結果、赤血球が繊維に接触した際の変形の度合いが小さくなり、また、繊維間隙の通過抵抗が小さくなるので、血漿又は、血清と血球の分離効率が低下する。
【0018】
平均繊維直径が0.5μm以下の極細繊維は入手することが困難であり、さらに極細繊維集合体の繊維間隙が小さくなりすぎて、血球が目詰まりを起こし易く、また極細繊維集合体の圧力損失が大きくなるため赤血球の溶血が起こり易くなる。
【0019】
なお、この範囲においては、繊維径が小さいほど繊維集合体の単位体積当たりの繊維の本数が多くなり、繊維間隙が狭くなり、繊維表面積が大きくなるので、血球の透過抵抗が大きくなり、血球と血漿又は血清の分離効率が向上するので、極細繊維の平均繊維直径は0.5〜2.5μmであればより好ましく、0.5〜2.0μmであれば特に好ましい。
【0020】
本発明に用いられる極細繊維集合体の平均動水半径は、0.5〜3.0μmであることが必要であり、好ましくは0.5〜2.5μm、さらに好ましくは0.5〜2.0μmである。ここで、平均動水半径とは、極細繊維の集合体の間隙が非円形の場合、直径に代わる概念として表され、以下のように定義される。
Figure 0003870468
【0021】
本発明において、動水半径は下記の式(1) により計算される。
DH=R×(ρ−rm)/4rm (1)
DH:装着された極細繊維集合体の平均動水半径
R:極細繊維の平均繊維直径(μm)
ρ:極細繊維の密度(g/cm3)
rm:装着された極細繊維の集合体の平均嵩密度(g/cm3)
式(1)に示されるように、装着された極細繊維の集合体の平均動水半径DHは、同じ素材の極細繊維を用いた場合(つまり、ρが一定の場合)Rおよびrmにより決定される。
上記平均動水半径が3.0μmを超える場合には、血球が繊維間隙を通過しやすくなり、その結果、血球と血漿あるは血清の移動速度差が小さくなり、血漿又は血清が分離できなかったり、分離採取量が少なくなるので好ましくない。
平均動水半径が0.5μm未満の場合、フィルター内の繊維間隙が狭くなりすぎて血球成分が目詰まりをおこし易く、さらに目詰まりを起こすと赤血球膜が破れ溶血を起こすことがあり好ましくない。
【0022】
なお、平均動水半径0.5〜3.0μmの範囲においては、平均動水半径が小さいほど、血漿又は血清の透過性に影響を与えることがなく、血球成分の通過抵抗が大きくなり分離効率が高くなる。従って、0.5〜2.8μmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2.0μmである。
【0023】
さらに、本発明の極細繊維集合体の動水半径は、血液の入口側から血漿又は血清の出口側に至る軸方向にわたって、一定であり得、また、極細繊維の集合体の部分により変化させ得る。また、動水半径は、血液の入口から透過液の出口に向かって徐々に小さくされ得る。このことにより、血漿又は血清の出口付近での血球成分と血漿又は血清成分との分離効率が高くされ得る。
【0024】
なお、本発明において、平均動水半径というときは、入口と出口とを有する容器に装着された状態の極細繊維集合体であって、実質的に血漿又は血清分離に関与し得る極細繊維集合体における平均動水半径をいう。従って、例えばプレフィルターや血液流路を埋めるために基材として極細繊維集合体を用いた場合は、プレフィルターや基材の極細繊維集合体は血漿又は血清分離に寄与しないので、この部分を除いた部分の平均動水半径をいう。
【0025】
このことを別の側面からみると、フィルターに装着された極細繊維の集合体を全体としてみたときに、上記好ましい範囲外の平均動水半径となる場合があることを示している。
しかし、この場合であっても血漿又は血清を分離し得るということは、少なくとも装着された極細繊維の集合体の一部が、上記好適な範囲の平均動水半径を有することを示すことに他ならない。
【0026】
本発明において、極細繊維の素材は、血液との適合性がよく有害な物質が溶出しないポリエステルやポリプロピレン、ポリアミド、またはポリエチレンが好ましい。
これらの素材は血液と接触するとき、血漿又は血清の成分を吸着したり、逆に血漿又は血清中に素材の一部が溶出することがなく好ましい。従来技術の項で述べたようにガラス繊維を用いる血漿又は血清分離フィルターを用いると、ガラス繊維から金属イオンが溶出したり、リンや脂質がガラス繊維に吸着するため、これらの物質を測定することが出来なかった。
【0027】
ポリエステルまたはポリプロピレンまたはポリアミドまたはポリエチレンを用いて、前記糸径の極細繊維集合体を得る方法は特に限定するものでなく、任意の既知の方法が用いられ得る。メルトブロー法が特に好ましい。
【0028】
本発明における血球分離層の長さは5mm以上である。血球分離層の長さとは極細繊維集合体と血液とが接触するところから、血液(血漿又は血清)が極細繊維集合体と離れるところまでの長さをいう。前述したように、本発明は、極細繊維集合体中における血液成分の移動速度差を利用して、血球と血漿又は血清とを分離している。血球分離層の入口側からの加圧、又は出口側からの減圧、又は両方を同時に行うことにより、血液を極細繊維集合体中で移動させる。このとき、血球成分は、極細繊維の間隙を極細繊維と衝突を繰り返す。粘着性を持つ白血球や血小板は極細繊維に吸着し、赤血球は粘着性を持たないので、変形を繰り返しながら移動する。他方、血漿又は血清は、液性成分であるので、赤血球より早く極細繊維中を移動し、出口に早く到達する。このとき、血球分離層の長さが5mm未満であると、血球と血漿又は血清の移動距離に充分な差が生じず、両者の分離が不十分となるので好ましくない。血球分離層の長さは長いほど、血球と血漿又は血清の分離効率は高くなるが、他方で、圧力損失は大きくなる。又は必要なフィルター量や血液量が増加するという問題が生じる。従って、必要とする血漿又は、血清量、用いる血液量、フィルターの大きさの限界等により、血液分離層の長さは決定されるが、理論上の上限値は存在しない。好ましい血液分離層の長さは15〜50mm程度である。
【0029】
本発明において、極細繊維の集合体は、極細繊維が不規則に集合した状態をいう。この状態は、例えば、綿状、不織布状、織布状、編布状の極細繊維を、単独で、又は組み合わせて、例えば圧縮することにより得られ得る。フィルターに装着する極細繊維は、成型性、加工性、取扱いの容易さ、および成型後のチャンネリングや偏流の起こり難さの点から、好ましくは、不織布状である。これは、極細繊維集合体をフィルターケースに充填したとき、均一性が保たれ易く、また部分的な粗密ができ難く、血液の流れが均一になるからである。
【0030】
本発明において、不織布をフィルターとして用いることが好ましいが、用いる不織布が一枚では厚みが足りない場合、複数枚を重ねて使用する事が出来るが、血液が不織布の面(積層面)に対して水平方向に流動することが好ましい。一般に不織布をフィルターとして用いる場合、処理流体の流動方向は不織布の面(積層面)に対して垂直方向とされている。しかし、本発明においては、不織布の面に対して水平方向に血液を流動させることにより、血球と血漿又は血清成分の分離効率が向上する。不織布の面方向に対して水平方向に血液を流すと、血液が入口から出口まで流れるときに、全流路長にわたって、極細繊維の切れ目がなく、そのために、血液の流れの均一性が向上するためと考えられるが、この理由に限定されない。
【0031】
本発明において、フィルターの形状は直方体状、円盤状、円筒状、円錐台状、扇型状などが上げられる。例えば、直方体の一方の端面から他方の端面に血液を流す、又は、円盤状に形成し、その周囲面から中心に向かって血液を流し、中心部から血漿又は血清を採取する方法がある。円盤状の容器を用いることにより、不織布を押圧するのみならず、フィルターをシールすることが出来る。従って、接着剤を用いる必要がなくなるので特に好ましい。
【0032】
極細繊維に親水化剤が固定化されたものも、本発明に用いられる。親水化剤の固定は、物理的又は化学的に行われ得る。親水化剤を繊維表面に固定化することにより、極細繊維と血液との親和性が高まる。従って、血液を血球と血漿又は血清に分離する際、圧力損失が低下し、分離速度が早められ得る。親水化剤としては、血漿又は血清に混入しても分析を妨害しないものであれば、特に限定されないがポリビニルピロリドンが好ましい。ポリビニルピロリドンは、分子量が比較的大きいため溶出速度が比較的遅いものの、血液中に溶出する。しかし、血液成分の分析に影響しない。ポリビニルピロリドンの固定化方法は特に限定されず、公知の方法が用いられ得る。例えば、ポリビニルピロリドンの水溶液に極細繊維集合体を浸した後に乾燥することで容易に繊維表面に物理的に固定化できる。また、このようなポリビニルピロリドンを加熱処理、放射線処理することにより容易にポリビニルピロリドン同士を架橋させ得る。架橋することにより、血液中へのポリビニルピロリドンの溶出を低く抑え得るのでさらに好ましい。
【0033】
加熱処理する場合、その方法は特に限定されない。例えば、オートクレーブ処理のように加圧下において加熱する方法、又は恒温槽内に放置する方法等が挙げられる。また、加熱処理の温度も特に限定されないが、70℃以上が好ましく、100℃以上がさらに好ましい。加熱温度は高いほど架橋の効率が向上する。上限温度は、用いる極細繊維の性質、ポリビニルピロリドン自体の耐熱性などにより、一義的に決まらないが、200℃以下が好ましく、150℃以下がさらに好ましい。加熱時間は、架橋を充分に行うため、長い方が好ましいが、用いる極細繊維の性質、ポリビニルピロリドンの変性の面から制限を受ける。一般的には、20分以上2時間以下が好ましい。また、加熱による架橋は、極細繊維が親水化剤溶液に浸漬している場合(WET状態) 、又は浸漬後乾燥した場合(DRY状態) のいずれにおいても行われ得る。いずれの場合においても、ポリビニルピロリドンが極細繊維に固定され得る。未反応のポリビニルピロリドンは水で洗浄することにより取り除かれ得る。
【0034】
放射線を用いて親水化剤を固定化する方法も特に限定されない。例えば、γ線照射や電子線照射、コロナ放電等が挙げられる。処理できる厚みや、操作性の面からγ線照射が好ましい。照射量についても、ポリビニルピロリドンが充分に架橋される照射量であれば特に限定されない。放射線照射による極細繊維素材やポリビニルピロリドン自体の変性を起こさない範囲として10KGy 以上、50KGy 以下が好ましい。また、放射線照射はWET 状態又はDRY 状態で行われ得る。未反応のポリビニルピロリドンは、水洗浄等で取り除かれ得る。
【0035】
ポリビニルピロリドンは種々の分子量のものが入手されうる。血液中への溶出を避けるために、大きい分子量のものを用いることが特に好ましい。
【0036】
本発明に用いられる装着された極細繊維の集合体の平均嵩密度は、好ましくは0.15〜0.60g/cm3 であり、さらに好ましくは0.18〜0.50g/cm3 であり、特に好ましくは0.25〜0.40g/cm3 である。
ここで、極細繊維の集合体の平均嵩密度とは、極細繊維の集合体の重量を極細繊維の集合体の容積で除した値をいう。
平均嵩密度が0.15g/cm3 より小さい場合、極細繊維集合体の紡糸上がり直後の平均嵩密度(例えばメルトブロー紡糸法の場合、0.08〜0.10g/cm3 )との差が小さいため、極細繊維集合体の圧縮率が小さくなる。従って、装着された極細繊維の集合体において部分的に疎密が発生し易く、血液の通過速度にムラが生じ得る。また、平均的に繊維間隙が大きいため、血液と血漿又は血清との分離が不十分になる。
【0037】
装着された極細繊維の集合体の平均嵩密度が0.60g/cm3 より大きい場合、極細繊維の集合体の製造に特殊な加熱圧縮などの工程を必要とし、圧縮加工工程が複雑になる。さらに、装着された極細繊維の集合体の繊維間隙が小さくなるために血球成分がフィルターに目詰まりを起こし易く、そして、血液が極細繊維の集合体を通過する際の圧力損失が大きくなるために、赤血球の溶血が起こり易くなる。なお、平均嵩密度0.15〜0.60g/cm3 の範囲において、平均嵩密度を大きくすることにより、極細繊維集合体の均一度は、より向上する。他方、加工性は低下するので、好ましくは0.18〜0.50g/cm3 であり、特に好ましくは0.25〜0.40g/cm3 である。
【0038】
本発明のフィルターに装着される極細繊維の集合体の嵩密度は部分的に変化させ得る。例えば、フィルターの容器の入口から出口に向かって、装着された極細繊維の集合体の嵩密度を徐々に大きくし得る。このようにすると、血液成分が出口に向かって移動するに従って、血球と血漿又は血清との分離性が向上される。
【0039】
本発明のフィルターに装着される極細繊維の集合体の血液成分の流路径(D) に対する血球分離層長(L) の比(L/D) は、0.15〜6である。好ましくは0.25〜4であり、特に好ましくは0.5〜2である。ここでL/Dは上記の範囲内にあっても、血球分離層長は5mm以上必要である。
【0040】
ここで、血液成分の流路径(D) とは、流路長の方向と垂直方向をなす血液入口部の極細繊維の集合体の断面積の円相当直径をいう。
L/D が0.15より小さい場合には、血球分離層長に対して流路径が大きいため血液中の各成分の移動速度の横方向にムラを生じるために、血球成分と血漿成分の分離が不十分となり好ましくない。
L/D が6より大きい場合には、分離効率は高まるが、移動距離が長くなるために、血液が流れる際の圧力損失が高まり、赤血球の溶血を生じ易く、またフィルターの入口部断面積が小さいので、フィルターに供給された血液の内分離され血漿又は血清採取に寄与する血液の比率が低下し、分離効率が低下してしまうので好ましくない。
【0041】
円相当直径は、断面積(A)から、次式により求める。
D=2(A/π)1/2
なお、極細繊維集合体表面は、厳密には極細繊維の折れ曲がりに起因する小さな凸凹を有するが、上記断面積はこの凸凹を無視して、平面として算出する。また、極細繊維の折れ曲がりに起因する凸凹以外に、極細繊維の集合体の表面加工などにより形成された大きな凸凹を有する場合は、上記断面積は、凸凹部を平均的とした平面として算出する。
なお、容器の形状によっては、例えばディスク状の容器の外周部から中心に向かって送液する場合や、円錐の底面部から頂点部に向かって送液する場合等、場所によって血液流路の断面積の円相当直径は変化するが、本発明におけるL/DのDは血液入口部の血液流路断面積の円相当直径と定義する。
さらに、本発明は前述のように赤血球と血漿・血清の移動距離の差を利用して赤血球と血漿・血清を分離しているので、入口から出口までの距離がフィルターの場所によって変わると、血漿・血清が出口に達する場所がフィルター内で変わってしまい分離効率が低下する。このため血液流路長はフィルターの全ての部分で同一であることが望ましい。すなわち、フィルターの形状としては、円柱や角柱型で、端面から反対の端面に血液を流す、円盤状の外周部から中心に向かって血液を流す、円錐型で底面から頂点部に向かって血液を流す、等の形状が望ましいが、特にこれに限るものではない。
【0042】
次に得られる血漿・血清は、フィルターに最初に入った血液から分離されるものであり、後からフィルターに入った血液は、前の血液を押し出す媒体として働くだけで、得られる血漿・血清とは直接関係ない。すなわち、フィルター入口の流路面積が大きいほど、得られる血漿・血清の量は増加する。このため、フィルターの形状は、円柱や角柱型で、端面から反対の端面に流すように、血液の流路進行と血液流路型が一定の場合の他、円盤状の外周部から中心に向かって流したり、円錐型で底面から頂点方向に流すように、血液の流路進行に従って、血液流路型が減少するような形状が考えられる。本発明の一つの重要な応用先である臨床検査用の血漿・血清分離の場合、使用する血液量を下げることが望ましく、この場合、フィルター形状は後者の方が望ましい。
【0043】
血漿は、血液から血球成分のみを除いたものであるが、本発明においては、実質的に血球成分を含まないものとしている。すなわち、例えば、血液を遠心分離して、得られた血漿でも、小量の赤血球、白血球、血小板や血球の破片の混入を完全に防ぐことは出来ない。実質的にとは、分離前の血液中の血球の99.9%以上を除去したものとする。この程度の血球を除去すれば、得られた血漿の臨床検査データに血球の影響は現れない。また、血清とは血漿からフィブリノーゲンを含む凝固因子の一部または全部を取り除いたものとされるが、本発明においては、得られた透過液中のフィブリノーゲンを定量し、これが検出されれば血漿、検出限界以下であれば血清と定義する。
【0044】
また、本発明のフィルターは複数を連結して用いてもよく、血漿成分と血球の分離性が向上する場合には直列に連結し、処理液量を増加する場合には並列に連結すればよい。
さらに、本フィルターをサンプリング容器に結合して一体型として用いることもできる。この場合には、自動的に一定量の血液試料を本発明の血漿分離フィルターユニットに流入し、自動的にフィルターを交換する機構を有する自動分析装置等に容易に適用することが可能となる。
【0045】
本発明において、分離された血漿又は血清中の電解質濃度と、通常の遠心分離して得られた血漿又は血清中の電解質濃度の差が、10%以内であることが好ましく、5%以内であれば、より好ましい。通常の遠心分離で得られた血漿又は血清と分離された血漿又は血清中の電解質濃度の差が10%を越えると、生化学診断に用いた際の信頼性が低くなり好ましくない。生化学検査の測定精度からみて、両者の差が10%以内であれば、事実上問題を生じるレベルではなく、5%以内であればほとんど問題はない。ここで、通常の遠心分離で得られた血漿又は血清とは、採血で得られた血液に抗凝固剤を添加した後遠心分離(通常1000G、10分間程度)して得られた上清が血漿であり、血液に抗凝固剤を加えることなく、又は凝固促進剤を加え、血液が凝固した後に遠心分離して得られた上清が血清である。今日の生化学診断では、自動分析装置を使用することが多く、フィブリンの析出による機械の故障を防ぐため、試料としては血清を用いることが多い。
また、従来技術の項で説明したように、血球分離材としてガラス繊維を用いると、試料中へのガラス成分の溶出や、試料成分のガラス繊維への吸着のため電解質濃度が、遠心分離によって得られた試料と大きく異なり、実質上測定が出来ないことが問題となっている。
【0046】
本発明において、フィルターにて分離された初期、分離終了時の血漿又は血清と通常の遠心分離により得られた血漿又は血清中の総タンパク質濃度の差が10%以内であること好ましく、5%以内であれば、より好ましい。血漿又は血清中の総タンパク質濃度と、通常の遠心分離で得られた血漿又は血清中の総タンパク質濃度の差が、10%を越えると、血漿又は血清タンパク質の組成が大きく変動することがあり、病状の診断に用いることが出来なくなり、好ましくない。また、分離初期と分離終了時の総タンパク質濃度の差が10%を越えると、試料を採取する時期によって、診断値が大きく異なり、上記理由により好ましくない。通常、10%以内の差であれば、臨床診断上、大きな問題はなく、5%以内の差であれば測定の誤差範囲内におさまるので好ましい。
【0047】
本発明のフィルターを用いた血漿・血清分離方法では、血液の処理速度(線速)は、0.05〜50cm/分程度である。線速度が、0.05cm/分より小さいと、極細繊維中を血液成分が通過する時間が長くなり、血漿又は血清分離に要する時間が長くなるほか、分離した血漿又は血清が血球中に拡散して、分離が不十分になり好ましくない。線速度が、50cm/分より大きいと、圧力損失が大きくなり、赤血球が溶血したり、透過する血漿又は血清と血球がリークする時間差が小さくなり正確に血漿又は血清を分取する事が困難になり好ましくない。この範囲においては、処理速度(線速)を大きくすると血球と血漿の移動速度の差も大きくなり、血漿の分離効率が高くなり、血漿が得られる時間も短縮できるが圧損が高く溶血の危険性も大きくなるので、0.1〜25cm/分の範囲がより好ましく、0.5〜10cm/分が特に好ましい。
【0048】
なお、円盤状の外周部から中心部に向かって送液する場合、又は円錐状の容器を用いて、円錐の底面から頂点方向に向かって送液する場合には、場所により線速度が異なる。このような場合の線速度は、血液が極細繊維と接触してから離れるまでの平均処理線速度をいう。
【0049】
本発明の血漿・血清分離フィルターを用いた血漿・血清分離での血液の通過圧力損失(すなわち、フィルターので入口間に付与する圧力差)は、フィルターの形状や血液の処理速度に依存するため一義的には決まらないが、0.01〜5kg/cm2が好ましく、0.05〜3kg/cm2がより好ましく、0.1〜1kg/cm2が特に好ましい。 圧力損失が0.01kg/cm2より小さい場合には、血液が極細繊維集合体を通過するための負荷が小さいため、例えば疎水性が高い材料を使用したときに、血液を極細繊維集合体内に送ることができなかったり、処理速度が低下し血漿・血清が得られるまでに時間がかかりすぎる上、極細繊維集合体内の血漿・血清と血球の移動速度が生じず、血漿・血清の分離が出来ないことがあり好ましくない。
【0050】
圧力損失が5kg/cm2より大きい場合は、血液の送液速度が早すぎて、血漿・血清と血球の透過時間の差が短いため、血漿・血清を正確に分取する事が出来なかったり、血球成分にダメージを与えて溶血して、臨床検査用の血漿・血清が採取出来なくなったり、装置やフィルターに損傷が生じることがあり好ましくない。この範囲内では圧力を大きくすると得られる血漿量が多くなり、また血漿・血清が得られる時間を短縮することができるが、逆に溶血が発生する危険性も高まるので範囲としては0.05〜3kg/cm2がより好ましく、0.1〜1kg/cm2が特に好ましい。
【0051】
本発明における血球成分と血漿・血清成分の分離機構は、両成分の極細繊維中の移動速度の差を利用しており、従来の比重差を利用した遠心分離や、サイズの差を利用した膜分離や吸着現象とは根本的に異なる。極細繊維中の移動速度は血漿・血清成分の方が血球成分より早いため、極細繊維に血液を供給し、圧力差を生じさせると、透過液側に初めに血漿・血清成分が到達し、その後血球成分が到達するので、この時間差を利用することにより血液から血漿・血清を得ることができる。
【0052】
つまり、本発明においては、極細繊維中の血漿と血球との移動速度の差が大きければ大きいほど得られる血漿の量は多くなるが、透過液側には最終的には血球が透過してくるので、ふるい分けの原理を利用した膜分離や、吸着の原理を利用した白血球分離とは概念は根本的に異なる。
また、ゲルクロマトグラフィーや電気泳動等が原理的に比較的よく類似しているが、前者はゲル内の移動可能空間の差を利用しており、分子量の大きいものほど移動可能空間が少ないため早く流出する点で異なり、後者はゲル構造による立体障害の差を利用する点で一致し、本発明が圧力により分離成分を移動させるのに対して電気泳動ではクーロン力により分離成分を移動させる点が異なる。
【0053】
このように、本発明では遠心分離や膜分離と違って、長時間処理や大量処理には向かないが、臨床検査など、小量の血液を短時間で血漿および/または血清に分離することが要求される分野において最適な血漿および/または血清の分離方法といえる。
なお、本発明において血漿を得たい場合には、極細繊維をポリビニルピロリドンでコーティングするか又は抗凝固剤入りの血液を用いることが推奨される。また、血清を得たい場合には、極細繊維をポリビニルピロリドンでコーティングしないか又は抗凝固剤を入れない血液を用いることが推奨される。
【0054】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに何等限定されるものではない。
【0055】
〔実施例1〕
図1に示すような血漿・血清分離フィルターを作成した。すなわち、入口として容器の上面端部に直径1.0mmの穴、出口として底面中央部に直径1.0mmの穴を有し、容器内部の直径52.0mm、厚さ2.0mmのアクリル製の円盤上容器に、メルトブロー法により得られた平均繊維直径1.5μmのポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布(目付50g/m3)を直径50.0mmの円形に切断したものを16枚積層し(1.6g)、容器の内周部表面との間に1.0mmの隙間を設けて充填した。充填率は0.41g/m3、 平均動水半径は0.90μm、容器の血液入口部断面積は2mm×50mm×π=314mm2 であり、円相当直径は20mm、血液流路長さ(入口から出口までの距離、血球分離層の長さに相当)は25mm(直径50mmの半分)であるのでL/Dは25/20である。
【0056】
図1に示す実験装置を用い、抗凝固剤としてACD 液と加えヘマトクリット45%の牛血液を容器の外周部から内側へ、0.5Kg/cm2の圧力で送液した。血液は容器内を極細繊維不織布面に対して水平方向に極細繊維中を通過し、25秒後に出口から血漿が透過してきた。血漿の透過は15秒間続き、その後は透過液中に血球が混入し始めた。血球の混入のない血漿は加圧後25秒から15秒間採取でき、その総量は0.6mLであった。この時の採取血漿から求めた極細繊維集合体中の平均処理線速度は6cm/分である。得られた血漿のヘモグロビン濃度は3mg/dL 以下で溶血は認められなかった。また、血血漿・血清分離フィルター球分析器で測定した赤血球、白血球、血小板も全て検出限界以下であった。得られた血漿を透過初期から100μL 毎に分取し、透過初期、透過終了時および全透過液平均の生化学分析値を表1に示すが、全て同一の血液を遠心分離して得られた血漿と有意差を認めなかった。また、得られた血漿中のフィブリノーゲンの定量をセルロースアセテート電気泳動法により求めたところ、遠心分離で得られた血漿中の濃度の約50%に減少していたが、完全に除かれてはいなかったが、一昼夜放置したときに、フィブリンの析出は認められなかった。
【0057】
〔実施例2〕
実施例1で用いたものと同じフィルターを使用した。これに抗凝固剤を加えず採血直後のヘマトクリット47%のヒト血液を、実施例1と同様の装置を用いて0.5Kg/cm2の圧力で送液した。血液は容器内を極細繊維集合体積層面に対して水平方向に極細繊維集合体内を通過し、30秒後に出口から透過液が得られた。透過液は50秒後から血球が混入し始めた。血球の混入のない透過液は加圧後30秒から20秒間採取でき、その総量は1.1mLであった。この時の採取透過液から求めた極細繊維集合体中の平均処理線速度は5cm/分である。得られた透過液のヘモグロビン濃度は3mg/dL以下で溶血は認められなかった。また、血球分析器で測定した赤血球、白血球、血小板も全て検出限界以下であった。実施例1と同様に得られた透過液の生化学分析値を表1に示すが、全て同一の血液を凝固後遠心分離して得られた血清と有意差を認めなかった。また、得られた透過液中にフィブリノーゲンは検出されず、得られた液体は血漿でなく、血清であった。同一人からヘパリンを抗凝固剤として加えた血液を遠心分離して得られた血漿中のフィブリノーゲン濃度は220mg/dL であった。
実施例1と用いた血液以外は同一の実験を行ったにも係わらず、採取できた透過液量に違いが認められたのは、赤血球の大きさがヒトとウシで違うためと考えられる。また、フィブリノーゲンが完全に除去されているのは、抗凝固剤を添加していないため、フィルターに吸着したためと考えられる。
【0058】
〔実施例3〕
実施例1でもちいたポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布を0.1%ポリビニルピロリドンK-90(BSAF 社KOLLIDON90F)溶液に浸漬し、これをWET 状態のまま50KGy のγ線照射を行った。γ線照射後の不織布を純水にて洗浄し未反応のポリビニルピロリドンを除去し、乾燥した。このようにして得られた表面にポリビニルピロリドンが固定化されたポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布を実施例1と同様にモジュールケースに充填し、実施例2と同様の実験を行った。血液は容器内を不織布の積層面に対して水平方向に極細繊維中を通過し、約15秒後に出口から透過液が得られた。透過液は約25秒後から血球が混入し始めた。血球の混入のない透過液は加圧後15秒から10秒間採取でき、その総量は1.2mLであった。得られた透過液のヘモグロビン濃度は3mg/dL 以下で溶血は認められなかった。また、血球分析器で測定した赤血球、白血球、血小板も全て検出限界以下であった。得られた透過液の生化学分析値を表1に示すが、採取初期、採取終了時、同一の血液を凝固後遠心分離して得られた血清と有意差を認めなかった。また、得られた血漿中のフィブリノーゲンの定量をセルロースアセテート電気泳動法により求めたところ、遠心分離で得られた血漿中の濃度の約20%に減少していたが、完全に除かれてはいなかったが、一昼夜放置したときに、フィブリンの析出は認められなかった。
ポリビニルピロリドンを固定化することにより、血液との親和性が向上し、極細繊維集合体内の血液通過時の抵抗が減少し透過液が得られるまでの時間が短縮された。
【0059】
〔比較例1〕
ガラス繊維濾紙(平均糸径1.65μm)を直径50mmに切断し、実施例1で用いたフィルターケースに充填量1.6g 、充填率0.41g/cm3 となるよう積層して充填した。平均動水半径は1.81μmである(ガラス繊維の比重2.2) 。これに、実施例1と同様に、抗凝固剤としてACD 液を加えヘマトクリット45%の牛血液を、0.5Kg/cm3の圧力で送液した。血液はガラス繊維の外側から中央部に向かってガラス繊維内を通過し、約30秒後に出口から血漿が透過してきた。血漿の透過は約40秒後まで続き、その後は透過液中に血球が混入し始めた。血球の混入のない血漿は加圧後30秒から10秒間採取でき、その総量は0.5mLであった。得られた血漿のヘモグロビン濃度は3mg/dL 以下で溶血は認められなかった。また、血球分析器で測定した赤血球、白血球、血小板も全て検出限界以下であった。得られた血漿の生化学分析値を表1に示すが、採取初期および採取終了時、同一の血液を遠心分離して得られた血漿のうち、総タンパク質濃度は採取初期のものが他に比べて有意に低かったほか、電解質や脂質の測定値が遠心分離血漿と測定値が異なった。これは、タンパク質、電解質、脂質がガラス繊維に吸着するほか、電解質の一部がガラス繊維から血漿中に溶出するためと考えられる。また、得られた血漿中のフィブリノーゲンの定量をセルロースアセテート電気泳動法により求めたところ、遠心分離で得られた血漿中の濃度の約30%に減少していたが、完全に除かれてはいなかったが、一昼夜放置したときに、フィブリンの析出は認められなかった。
【0060】
〔比較例2〕
図2に示すような径24mm、有効径20mm(締め代2mm) 、厚さ4mmの容器に実施例1で用いたポリエチレンテレフタレート不織布0.72g(有効充填量0.50g)を充填した。充填率は0.4g/cm3 であり、このときの平均動水半径は0.92μmである。これに抗凝固剤としてACD 液を加えヘマトクリット45%の牛血液を、0.5Kg/cm3の圧力で送液した。その結果、約10秒に出口から透過液が得られたが、この透過液には初期から赤血球が含まれ、血漿又は血清の分離は出来なかった。この原因は、血球分離層の長さであるフィルターの厚みが4mmと短く、血球と血漿又は血清の分離が充分に行われなかったためと考えられる。
【0061】
〔比較例3〕
実施例1と同様のフィルターケースに糸径4.0μmのポリエチレンテレフタレート不織布を2.4g 充填した。充填率は0.6g/cm3 であり、このときの平均動水半径は1.30μmである。これに実施例1と同様の方法で血液を送液したところ、約45秒後に出口から透過液が得られたが、この透過液には初期から赤血球が含まれ、血漿又は血清の分離は出来なかった。この原因は、繊維径が4.0μmと大きく、そのため、繊維間隙を赤血球が通り抜けるときの変形度が小さく、赤血球と血漿又は血清の移動速度差が生じなかったためと考えられる。
【0062】
〔比較例4〕
実施例1と同様のフィルターケースに糸径0.9μmのポリエチレンテレフタレート不織布を2.0g 充填した。このときの平均動水半径は0.40μmであった。これに実施例1と同様の方法で血液を送液したところ、約120秒後に出口から透過液が得られた。透過液は約300秒まで得られその間、血球の混入は観察されなかったが、その後透過液は得られなかった。また、透過液は初期の段階から激しい溶血を起こしており、透過液中のヘモグロビン濃度は透過初期で30mg/dL 、終了時では120mg/dL に達し、生化学分析に供することは出来なかった。この原因は、平均動水半径が0.40μmと小さく、繊維間隙を通り抜ける際、赤血球が破壊されヘモグロビンが放出され、さらに血球が目詰まりを起こしたため、透過液が得られるまでの時間が長くなり、さらには透過しなくなったものと考えられる。
【0063】
〔比較例5〕
実施例1と同様のフィルターケースに糸径1.5μmのポリエチレンテレフタレート不織布を0.48g 充填した。充填率は0.12g/cm3 であり、このときの平均動水半径は3.94μmである。これに実施例1と同様の方法で血液を送液したところ、約15秒後に出口から透過液が得られたが、この透過液には初期から赤血球が含まれ、血漿又は血清の分離は出来なかった。この原因は、平均動水半径が3.93μmと大きく、そのため、繊維間隙を赤血球が通り抜けるときの変形度が小さく、赤血球と血漿又は血清の移動速度差が生じなかったためと考えられる。
【0064】
〔比較例6〕
図3に示すような径24mm、有効径20mm(締め代2mm) 、厚さ25mmの容器に実施例1で用いたポリエチレンテレフタレート不織布4.5g(有効充填量3.1g)を充填した。充填率は0.4g/cm3 であり、このときの平均動水半径は0.92μmである。また、血球分離層の長さは、25 mm であり、このときのL/D は実施例1と同様25/20である。これに抗凝固剤としてACD 液を加えヘマトクリット45%の牛血液を、0.5Kg/cm2の圧力で送液したが、フィルターの周囲と容器の間のシール性が悪く、血液が端部をチャンネリングしてしまい血漿又は血清の分離が出来なかった。このため、不織布と容器周囲の間に接着剤を充填し、チャンネリングを防ぎ、再び、血液を送液した。その結果、チャンネリングは発生せず、血液は極細繊維の積層面に対して垂直方向に通過し約120秒に出口から透過液が得られ、その後30秒間血漿を採取することができた。採取血漿量は0.3mlであった。この時の採取血漿から求めた極細繊維集合体中の平均処理線速度は1cm/分である。得られた血漿中のヘモグロビン濃度は12mg/dL であり、若干の溶血を認めたが、検査値に影響を与えるレベルではなかった。得られた血漿の生化学分析値を表1に示すが、全て同一の血液を遠心分離して得られた血漿と有意差を認めなかった。フィブリノーゲンは遠心分離で得られた血漿の約50%に減少していた。
比較例6では、血漿分離は出来たものの、実施例1と同じL/Dでありながら、使用した不織布量は2倍以上であり、容器の体積も約2倍である。これは、実施例1の容器が円盤状であり、入口部の円相当直径が同一でも、容器体積を小さくできることに起因している。また、円盤状の容器を用いることで、不織布と容器のシールが可能で、比較例6のようにチャンネリングを防ぐために周囲に接着剤を充填する必要もない。さらに、比較例6では、得られた血漿量が実施例1に比べ少なかった。これは比較例6では、血液が多数枚の不織布を通過し、極細繊維が連続していないので、血液の移動距離に部分的な不均一が生じ、分離が効率的でなかったためと考えられる。
【0065】
【表1】
Figure 0003870468
【0066】
【表2】
Figure 0003870468
【0067】
【表3】
Figure 0003870468
【0068】
【表4】
Figure 0003870468
【0069】
【発明の効果】
本発明は上記のような構成、説明から明らかなように、少量の血液でも、迅速に純度の高い血漿・血清を得ることが可能で、且つ、組立性・操作性も簡便ながら、安全性の高い血漿・血清分離を行うことが可能となる。
すなわち、本発明の血漿・血清分離フィルターを用いれば、臨床検査等をはじめとしてその他の研究等において、血液成分を含む検液から、容易、迅速、安全に、血球成分を除くことが可能であり、引いては、細菌や細胞培養液中の細菌や細胞を除去することが可能である。
このように、本発明の効果は大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の血漿又は血清分離フィルターの一例を示す図である。
【図2】図2は比較例2の血漿又は血清分離フィルターを示す図である。
【図3】図3は比較例6の血漿又は血清分離フィルターを示す図である。
【符号の説明】
1 血液入口
2 透過液出口
3 極細繊維集合体
4 容器

Claims (8)

  1. 入口と出口を有する容器に極細繊維集合体を装着し、出入口間の圧力差により該極細繊維集合体中で血液を移動させて、血漿又は血清と血球の極細繊維中の移動速度差を利用して、血漿又は血清を血球と分離採取する血漿又は血清分離フィルターにおいて、該極細繊維集合体が平均繊維直径0.5〜3.5μm、平均動水半径0.5〜3.0μmの極細繊維からなる不織布単独又は該不織布を複数枚重ねたものからなり、血球分離層の長さが5mm以上であって、血液の流動方向が、不織布の面に対して水平方向であることを特徴とする血漿又は血清分離フィルター。
  2. 極細繊維がポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド又はポリエチレンからなる請求項1に記載の血漿又は血清分離フィルター。
  3. 極細繊維集合体の形状が円盤状であり、円盤の外周部から中心部に向かって血液が流れ、円盤の中心部より血漿又は血清を採取する請求項1又は2に記載の血漿又は血清分離フィルター。
  4. 極細繊維の表面に親水化剤が固定化されている請求項1乃至3のいずれかの項に記載の血漿又は血清分離フィルター。
  5. 親水化剤がポリビニルピロリドンである請求項4記載の血漿又は血清分離フィルター。
  6. 採取された血漿又は血清中の電解質濃度と、通常の遠心分離で得られた血漿又は血清中の電解質濃度の差が10%以内である請求項1乃至5のいずれかの項に記載の血漿又は血清分離フィルター。
  7. 採取初期、採取終了時、通常の遠心分離で得られた血漿又は血清中の総タンパク質およびアルブミン濃度の差が10%以内である請求項1乃至6のいずれかの項に記載の血漿又は血清分離フィルター。
  8. 極細繊維不織布がメルトブロー法により得られたものである請求項1乃至7のいずれかの項に記載の血漿又は血清分離フィルター。
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