JP4006551B2 - 血漿あるいは血清分離フィルター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血液中から血漿あるいは血清成分を分離回収するフィルターに関する。さらに詳しくは、臨床検査等に用いられる際、少量の血液でも迅速かつ効率的に純度の高い血漿あるいは血清を得ることが可能で、かつ操作性も簡便で安全性が高い血漿あるいは血清分離フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
血液中の成分を測定する、いわゆる生化学検査は、各種疾患の診断・経過観察に広く利用され、臨床検査として重要な位置を占めている。その分析技術は近年著しく進歩し、各種自動分析器の開発により、多数の検体が精度良く迅速に分析できるようになった。
【0003】
しかし、生化学検査の多くの分野では赤血球等の血球の存在が検査を妨害するため、予め血液から血漿あるいは血清を分離する必要がある。そのため、検査に先立ち、患者や被験者から採取した血液を一旦凝固させた後、遠心分離し、血漿あるいは血清を得るという過程を経る必要がある。また、凝固・遠心分離の操作は時間がかかり、臨床検査の短時間化を妨げるばかりでなく、大型の遠心分離器が必要である。よって、比較的大きな病院を除いては、臨床検査を外部の検査業者に依頼しているところが多く、検査結果を入手するまでに数日要している。更に、血液から血漿あるいは血清を分離する作業は、未だほとんど人手に頼っているため、作業者は血液に触れることにより、感染等の危険にもさらされている。
【0004】
血漿あるいは血清を遠心分離を使わずに得る方法として、繊維状フィルターを用いた臨床検査用血漿あるいは血清分離技術が種々提案されている。特開昭61−38608号公報には、体積濾過効果を用いた繊維質からなる固液分離器具が開示されている。この固液分離器具は、繊維質に血液を加圧して流すことにより血漿を得ることができるが、圧力損失が大きく濾材の抵抗が大きいため血漿を得るまでに数分を要し、また、初期に得られた血漿の蛋白濃度が、繊維質による吸着により低下するという間題があり、実用化には至っていない。
【0005】
さらに、特開平4−208856号公報には、ポリアクリルエステル誘導体とポリエチレングリコールとを含有するガラス繊維と、レクチン含浸層からなる血漿あるいは血清成分の分離回収方法が開示されている。また、特開平5−196620号公報には、上記特開平4−208856号公報で示された分離フィルターを用いた血清・血漿分離器具が開示されている。
【0006】
これらの方法および器具は、遠心分離を用いずに臨床検査用の血漿あるいは血清を採取できる。
しかし、得られる血漿あるいは血清の量が100μl前後と少ない上に、分離に必要な時間も2分前後で、遠心分離に比べ時間は短縮されてはいるものの十分とは言えない。更に、これらの技術は、分離材にガラス繊維を用いているため、繊維からの溶出や繊維への吸着により、得られた血漿あるいは血清中の電解質・リン・脂質の濃度が分離前の血液と大きく異なってしまうという欠点を有する。このため、これらの技術も広く普及するには至っていない。
【0007】
特開平9−143081号公報には、メルトブロー法で得られたポリエステル製の極細繊維を用いた血漿あるいは血清分離フィルターが開示されている。このフィルターは、図3に示すように極細繊維で形成された円盤状の分離素子3と、分離素子3を内部に収容する容器4とで構成され、血液が分離素子3の外周部から供給され、中央部下面から血漿あるいは血清を採取するものである。また、このフィルターは繊維間隙を示す平均動水半径、血液流路径(L)と血液流路長(D)の比(L/D)、さらに繊維径及び充填率を最適化したものである。このフィルターは、得られる血漿あるいは血清の量が数百μl〜数mlと多く、分離に必要な時間も1分以内で短いといった特徴を有している。また、フィルター素材と血液成分との相互作用が少なく、血漿・血清中の濃度が分離前の血液と変わらないといった特徴も有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の極細繊維を用いた血漿あるいは血清分離フィルターであっても、血液5ml〜10mlから得られる血漿あるいは血清は通常1ml前後であり、血液5mlから最大2ml程度の血漿あるいは血清が得られる従来の凝固・遠心分離を組み合わせた方法に対し、回収率が低いと言える。
そのため、被験者のダメージを小さくする観点から、より効率的に血漿あるいは血清を採取できるフィルターが望まれている。
【0009】
本発明の目的は、血液中と同一の成分組成を有する血漿あるいは血清成分を、血液中の血球を損傷することなく、簡便・迅速・安全かつ効率的に血液から分離し得るフィルターを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討を加えた結果、分離素子の上層の血液通過抵抗を、分離素子の下層より小さくする事により、飛躍的に分離効率(回収率)が向上することを見出し上記目的を達成した。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の血漿あるいは血清分離フィルターは次の特徴を有するものである。
(1) 血液の入口と出口を有する容器と、該容器の内部に設置された円盤状の分離素子とを有し、
前記入口は容器の外周部に設けられ、前記出口は容器の中央部下面に設けられ、かつ、該分離素子は、繊維構造体よりなり、これによって、前記入口から供給された血液を該分離素子の外周部から中央部に向かって移動させ、血液中の血球と血漿との間に、あるいは、血球と血清との間に、移動速度差を生じさせて、該分離素子の中央部に到達した血漿あるいは血清を容器の中央部下面の出口で採取し得る分離フィルターであって、
該分離素子は、上半分の層の平均嵩密度が下半分の層の平均嵩密度よりも小さくかつその差が0.01g/cm3 〜0.40g/cm3 であり、該分離素子の上半分の層の平均動水半径が下半分の層のそれよりも大きくかつ上半分の層と下半分の層との間の平均動水半径の差が0.1μm〜2.0μmとなっており、これによって、
該分離素子の上層側を外周部から中央部に向かって移動する血漿あるいは血清の方が、該分離素子の下層側を外周部から中央部に向かって移動する血漿あるいは血清よりも早く中央部に到達し、もって、容器の中央部下面の出口には、前記両者が略同時に到達し得る構成となっていることを特徴とする、血漿あるいは血清分離フィルター。
(2) 上記分離素子が、平均動水半径を異にする複数の層を厚さ方向に積層して形成されており、各層がそれぞれの下面側にある層より動水半径の大きいものであることを特徴とする上記(1)記載の血漿あるいは血清分離フィルター。
(3) 上記分離素子が単一の層からなり、上層から下層に向かって動水半径が減少していることを特徴とする上記(1)記載の血漿あるいは血清分離フィルター。
(4) 上記繊維構造体がポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドまたはポリエチレンからなるものであって、上半分の層において平均動水半径が0.6μm〜3.0μmの範囲内にあり、下半分の層において平均動水半径が0.5μm〜2.8μmの範囲内にある上記(1)記載の血漿あるいは血清分離フィルター。
(5) 上記分離素子の最上層の平均繊維直径が、最下層のそれよりも大きく、その差が0.1μm〜2.5μmである上記(2)記載の血漿あるいは血清分離フィルター。
(6) 上記繊維構造体がポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドまたはポリエチレンからなるものであって、
最上層において平均繊維直径が0.6μm〜3.5μmの範囲内に、最下層において平均繊維直径が0.5μm〜2.5μmの範囲内にある上記(5)記載の血漿あるいは血清分離フィルター。
【0024】
【作用】
本発明における血球成分と血漿・血清成分との分離機構は、両成分の分離素子中の移動速度差を利用しており、従来の比重差を利用した遠心分離や、サイズの差を利用した膜分離や吸着現象とは根本的に異なる。分離素子中の移動速度は、血漿・血清成分の方が血球成分より速いため、分離素子に血液を供給し、圧力差を生じさせると、分離素子出口に、最初に血漿・血清成分が到達しその後血球成分が到達するので、この差を利用することにより血液から血漿・血清を得ることができる。
【0025】
本発明においては、分離素子の形状は円盤状であり、容器の入口より供給された血液は外周部から中央部に向かって移動し、中央部の下面に対応する位置に設けられた容器の出口で血漿あるいは血清が採取される。即ち、分離素子に血液を流すと、血液は外周部から中央部に向かって流れ、血球成分と血漿あるいは血清とに分離され、採取される。
【0026】
円盤状分離素子の外周部から血液が供給され、分離された血漿あるいは血清が分離素子の中央部下面に設けられた出口で回収採取される特開平9−143081号公報に記載のフィルターでは、分離素子の上層で分離された血漿あるいは血清は、分離素子の厚み分だけ、分離素子の下層を流れる血漿あるいは血清よりも長い距離を流れることになる。よって、その間に分離素子の下層を通った血球が底面中央部の出口から出てくるため、その時点で血漿あるいは血清の採取が終了する。このときには、分離素子最下部を除いた中央部分は血漿あるいは血清で満たされているので、供給した血液に対して採取される血漿あるいは血清の量は少なく、回収率は低いものであった。
【0027】
本発明の分離素子は、上層の血液通過抵抗が下層のそれよりも小さくなるように、分離素子を構成する繊維構造体の平均動水半径や、多孔質体の平均孔径が制御されている。よって、分離素子の上層を流れる血液の移動速度は下層を流れる血液のそれよりも大きく、又上層を流れる血液と下層を流れる血液との分離素子を通過する時間の差は従来のように大きくなく、略一致している。従って、上層で血球が分離された血漿あるいは血清が長く分離素子に留まることなく、出口より回収できる。そのため、血漿あるいは血清の採取量が増加し、回収率を向上せしめることが出来る。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の分離素子とは容器内に充填されて血液分離を行う材料を言う。なお、本発明では容器内に分離素子を組み込んだ組立体をフィルターと定義する。
本発明の分離素子の材料としては、繊維構造体または連通する細孔を有する多孔質体が用いられる。分離素子は、これらを円盤状に成形または切断することにより形成できる。
【0029】
最初に分離素子の材料として繊維構造体を用いる場合について説明する。この場合、分離素子は、上半分の層と下半分の層とに分けたときに、上半分の層の平均動水半径が下半分の層の平均動水半径よりも大きくなるように形成すれば良い。なお、本明細書でいう分離素子の「上半分の層」とは、分離素子を面方向と平行に二等分したときに上面側となる部分をいい、「下半分の層」とは下面側となる部分をいう。
【0030】
具体的な態様としては、▲1▼平均動水半径を異にする複数の層を厚さ方向に積層して形成されたものであって、各層の平均動水半径がそれぞれの下面側にある層のそれよりも大きいものや、▲2▼単一層で形成されたものであって、上層から下層に向かって平均動水半径が減少しているもの、が挙げられる。
【0031】
このように上層における平均動水半径を、下層における平均動水半径より大きくすることにより、上層を流れる血液の通過抵抗を、下層を流れる血液の通過抵抗よりも下げる事ができる。よって、上層を流れる血液から分離された血漿あるいは血清が分離素子内を通過し出口に達するまでの時間と、下層を流れる血液から分離された血漿あるいは血清のそれとを合わせる事が可能となる。
【0032】
上半分の層と下半分の層との平均動水半径の差は0.1μm〜2.0μmとするのが好ましい。上半分の層と下半分の層との平均動水半径の差が0.1μm未満では、上半分の層と下半分の層を流れる血液の通過抵抗の差が充分に得られず、本発明の効果が得られにくく好ましくない。また、平均動水半径の差が2.0μmを越えると、上半分の層の平均動水半径が大きくなりすぎ、分離素子上部での血漿あるいは血清の分離が行われなくなったり、上半分の層を流れる血液の通過抵抗が低すぎて、本発明の目的とは逆に、上半分の層を流れる血液が先に出口に到達してしまうことがあり好ましくない。
【0033】
但し、分離素子の厚みが大きく、後述する血液流路長(L)が短い場合(即ち、L/Dが小さい場合)は、分離素子の厚さが上面側の部分と下面側の部分との血液流路の長さの差に与える影響が大きいため、上半分の層と下半分の層との平均動水半径の差は0.3μm〜2.0μmとするのが特に好ましい。
【0034】
本発明に用いられる繊維構造体(極細繊維集合体)の平均動水半径は、0.5μm〜3.0μmの範囲内にあることが必要であり、上半分の層においては0.6μm〜3.0μm、下半分の層においては0.5μm〜2.8μmであるのが好ましい。
平均動水半径が3.0μmを超える場合には、血球が繊維間隙を通過し易くなり、その結果、血球と血漿あるいは血清との移動速度差が小さくなり、血漿あるいは血清が分離できなかったり、分離採取量が少なくなるので好ましくない。
平均動水半径が0.5μm未満の場合、分離素子内の繊維間隙が狭くなりすぎて血球成分が目詰まりを起こしやすく、さらに目詰まりを起こすと赤血球膜が破れ溶血を起こすことがあり好ましくない。
【0035】
なお、平均動水半径0.5μm〜3.0μmの範囲においては、平均動水半径が小さいほど血漿あるいは血清の透過性に影響を与えることが無く、血球成分の通過抵抗が大きくなり分離効率が高くなる。従って、平均動水半径は0.5μm〜2.5μmが好ましく、特に好ましくは0.5μm〜2.0μmである。
【0036】
ここで、平均動水半径とは、極細繊維の集合体の間隙が非円形の場合、直径に代わる概念として表され、以下のように定義される。
【0037】
本発明において、動水半径は下記の数1により求めることができる。なお、数1において、DHは容器に装着された極細繊維集合体の平均動水半径、Rは極細繊維の平均繊維直径(μm)、ρは極細繊維の密度(g/cm3 )、rmは装着された極細繊維の集合体の平均嵩密度(g/cm3 )をそれぞれ示している。なお、平均嵩密度としては、分離素子を容器内に設置した状態で測定した測定値を用いる。
【0038】
【数1】
【0039】
上記数1に示されるように、容器に装着された極細繊維の集合体の平均動水半径DHは、同じ素材の極細繊維を用いた場合(つまり、ρが一定の場合)、Rおよびrmにより決定される。
【0040】
本発明において、分離素子の上半分の層の平均動水半径を下半分の層のそれよりも大きくすることは、分離素子の上半分の層の平均嵩密度を、下半分の層のそれよりも小さくすることでも達成できる。またその他、分離素子の上半分の層の平均繊維直径を、下半分の層のそれよりも大きくすることでも達成できる。これらのことが有効であるのは、上記数1より明らかである。
【0041】
前者については、平均嵩密度を異にする複数の層を厚さ方向に積層し、各層の嵩密度をそれぞれの下面側の層のそれよりも小さくすることによって、例えば、予め加熱プレス等で平均嵩密度を高めに設定した極細繊維不織布と、プレスをしていない極細繊維不織布とを積層することによって達成できる。また、分離素子を単一層で形成し、上層から下層に向かって平均嵩密度を大きくすることによって、例えば、一方側が高温に保たれ、他方側が常温に保たれたプレス機で、繊維不織布を重ねたものを挟んでプレスし、高温側の不織布ほど高嵩密度に、常温側の不織布ほど低嵩密度に調整することによっても達成できる。
【0042】
但し、分離素子として用いる極細繊維の平均嵩密度は0.1g/cm3 〜0.5g/cm3 の範囲とすることが好ましい。極細繊維不織布はプレスを加える前のバルクの状態での平均嵩密度が約0.1g/cm3 程度であり、分離素子の平均嵩密度を0.1g/cm3 未満とすることは困難である。また、0.5g/cm3 を越えてプレスするためには、加熱量を多くすることが必要となり、コストや手間の面から好ましくない。
【0043】
前者においては、上半分の層の平均嵩密度は0.10g/cm3 〜0.45g/cm3 の範囲内に、下半分の層の平均嵩密度は0.15g/cm3 〜0.50g/cm3 の範囲内にあるのが好ましい。また、上半分の層と下半分の層との平均嵩密度の差は0.01g/cm3 〜0.40g/cm3 の範囲内にあるのが好ましい。
【0044】
上半分の層と下半分の層との平均嵩密度の差が0.01g/cm3 未満では、上半分の層と下半分の層を流れる血液の通過抵抗の差が充分に得られず、本発明の効果が得られにくく好ましくない。また、平均嵩密度の差が0.40g/cm3 を越えると、上半分の層の平均嵩密度が小さくなりすぎ、分離素子上部での血漿あるいは血清の分離が行われなくなったり、上半分の層を流れる血液の通過抵抗が低すぎて、本発明の目的とは逆に、上半分の層を流れる血液が先に出口に到達してしまうことがあり好ましくない。
【0045】
また、後者については、平均繊維直径を異にする複数の層を厚さ方向に積層し、各層の平均繊維直径をそれぞれの下面側の層のそれよりも大きくすることによって達成できる。この場合、最上層における平均繊維直径が0.6μm〜3.5μm、最下層における平均繊維直径が0.5μm〜2.5μm、最上層における平均繊維直径と最下層におけるそれとの差が0.1μm〜2.5μmとなるようにするのが好ましい。
【0046】
最上層と最下層の平均繊維直径の差が0.1μm未満では、最上層と最下層を流れる血液の通過抵抗の差が充分に得られず、本発明の効果が得られにくく好ましくない。また、平均繊維直径の差が2.5μmを越えると、最上層の平均繊維直径が大きくなりすぎ、分離素子上部での血漿あるいは血清の分離が行われなくなったり、最上層を流れる血液の通過抵抗が低すぎて、本発明の目的とは逆に、最上層を流れる血液が先に出口に到達してしまうことがあり好ましくない。
【0047】
本発明に用いられる繊維構造体における平均繊維直径は、0.5μm〜3.5μmの範囲内であるのが好ましい。平均繊維直径が3.5μmを超える場合には、極細繊維集合体の単位体積当たりの繊維長が短くなるため、単位体積当たりの繊維間の交絡箇所が少なくなり、繊維間隔も大きくなる。その結果、赤血球が繊維に接触した際の変形の度合いが小さくなり、また、繊維間隔の通過抵抗も小さくなり、血漿あるいは血清と血球との分離効率が低下するので好ましくない。平均繊維直径が0.5μm以下の極細繊維は入手することが困難であり、さらに極細繊維集合体の繊維間隔が小さくなりすぎて、血球が目詰まりを起こしやすくなるので好ましくない。また、極細繊維集合体の圧力損失が大きくなるため赤血球の溶血が起こりやすくなるので好ましくない。
【0048】
また、平均繊維直径が0.5μm〜3.5μmの範囲内においては、繊維径が小さいほど繊維集合体の単位体積当たりの繊維の本数が多くなり、繊維間隙が狭くなる。また、繊維表面積が大きくなるので、血球の透過抵抗が大きくなり、血球と血漿あるいは血清との分離効率が向上する。従って、平均繊維直径は0.5μm〜2.5μmであればより好ましく、0.5μm〜2.0μmであれば特に好ましい。
【0049】
本発明でいう平均繊維直径とは、繊維構造体を2000倍の電子顕微鏡で撮影した写真中よりランダムに選択した50本の極細繊維の径を、ノギスまたはスケールルーペで計測して求めた値の平均値である。
【0050】
分離素子に用いられる繊維構造体としては、極細繊維不織布が好ましく用いられる。具体的には、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン等を素材としたものが好ましいものとして挙げられる。これらの素材は血液と接触するときに、血漿あるいは血清の成分を吸着したり、逆に血漿あるいは血清中に素材の一部が溶出することがないため好ましい。前述の従来技術で記載したように、ガラス繊維を用いると、ガラス繊維から金属イオンが溶出したり、リンや脂質がガラス繊維に吸着する。よってガラス繊維を分離素子として使用すると、本発明を臨床検査用血漿あるいは血清の採取へ応用する場合には、測定値が正しく得られないといった問題点がある。
【0051】
ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドまたはポリエチレンを用いて、繊維構造体を得る方法は特に限定するものでなく、任意の既知の方法が用いられ得るが、メルトブロー法が特に好ましい。
【0052】
次に、本発明の分離素子として連通する多孔質体を用いる場合について説明する。この場合、分離素子は、上半分の層と下半分の層とに分けたときに、上半分の層の平均孔径が下半分の層の平均孔径よりも大きくなるように形成すれば良い。
【0053】
具体的な態様としては、▲1▼平均孔径を異にする複数の層を厚さ方向に積層して形成されたものであって、各層の平均孔径がそれぞれの下面側にある層のそれよりも大きいものや、▲2▼単一層で形成されたものであって、上層から下層に向かって平均孔径が減少しているもの、が挙げられる。
【0054】
このように上層における平均孔径を、下層における平均孔径より大きくすることにより、上層を流れる血液の通過抵抗を、下層を流れる血液の通過抵抗よりも下げる事ができる。よって、上層を流れる血液から分離された血漿あるいは血清が分離素子内を通過し出口に達するまでの時間と、下層を流れる血液から分離された血漿あるいは血清のそれとを合わせる事が可能となる。
【0055】
上半分の層と下半分の層との平均孔径の差は1μm〜30μmとするのが好ましい。上半分の層と下半分の層との平均孔径の差が1μm未満では、上半分の層と下半分の層を流れる血液の通過抵抗の差が充分に得られず、本発明の効果が得られにくく好ましくない。また、平均孔径の差が30μmを越えると、上半分の層の平均孔径が大きくなりすぎ、分離素子上部での血漿あるいは血清の分離が行われなくなったり、上半分の層を流れる血液の通過抵抗が低すぎて、本発明の目的とは逆に、上半分の層を流れる血液が先に出口に到達してしまうことがあり好ましくない。但し、分離素子の厚みが大きく、後述する血液流路長(L)が短い場合(即ち、L/Dが小さい場合)は、分離素子の厚さが上面側の部分と下面側の部分との血液流路の長さの差に与える影響が大きいため、上半分の層と下半分の層との平均孔径の差は3μm〜30μmとするのが好ましい。
【0056】
本発明に用いられる多孔質体の平均孔径は、5μm〜50μmの範囲内であることが必要であり、好ましくは8μm〜30μm、より好ましくは10μm〜20μmである。また、上半分の層においては6μm〜50μm、下半分の層においては5μm〜30μmであるのが好ましい。
【0057】
平均孔径が50μmを超える場合には、赤血球の細孔内の通過抵抗(即ち変形と細孔壁との摩擦)が減少し、赤血球と血漿・血清成分との移動速度差が充分生じず、分離が不十分となるので好ましくない。
平均孔径が5μm未満の場合には、血液の流路が狭くなりすぎて、血球成分が目詰まりを生じ易く、またフィルターの圧力損失が大きくなり、溶血が生じることがあるので好ましくない。
【0058】
本発明でいう平均孔径とは、多孔質体の表面または、任意の断面の細孔径の平均である。平均孔径は、多孔質体を血液の流れ方向に対して垂直方向に切断し、断面を電子顕微鏡により撮影し、断面状に分布している細孔の直径をランダムにそれぞれ100個以上測定したときの、相加平均により求める。細孔断面の形が円形でない場合は、画像処理等により細孔断面積を求め、それに相当する円の相当径とする。この場合径とは全て直径を意味する。
【0059】
本発明のフィルターに用いる多孔質体の空孔率は20%〜95%であることが好ましく、より好ましくは30%〜90%である。空孔率が20%未満であると、フィルター自体の嵩が大きくなり、また血液の通過抵抗が大きくなり易い傾向がある。空孔率が95%より大きい場合は、フィルターの強度が低下して、組立性が低下し易い傾向がある。
【0060】
空孔率とは、多孔質体の体積に占める多孔質体内空孔体積の比率(%)を意味する。空孔率P(%)は、下記の数2より求めることができる。なお、rmは多孔質体嵩密度、ρは多孔質体材料の密度をそれぞれ示している。
【0061】
【数2】
【0062】
円盤状の分離素子として互いに連通する細孔を有する多孔質体を用いる場合、多孔質体を形成する材料は特に限定されるものではない。多孔質体を形成する材料としては、例えばセルロース、セルロースアセテート、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロクロロビニル、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−へキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等が挙げられる。このうち、適度な親水性を有しており、細孔径の制御が容易な点から、セルロース、ポリビニルホルマールが好ましい。上記に列挙した材料は、1種でも2種以上でも用いることができる。
【0063】
本発明のフィルターに装着される分離素子の血液流路径(D)に対する血液流路長(L)の比(L/D)は、0.15〜6である。好ましくは0.25〜4であり、特に好ましくは0.5〜2である。
ここで、血液流路径(D)とは、血液入口部となる円盤状の分離素子の外周部の面積(側面の表面積)と等しい面積の円の直径をいう。なお、円盤状の分離素子の外周部の面積の測定は、分離素子を容器内に設置した状態で行う。血液流路長さとは、血液(血漿あるいは血清)が分離素子と接触するところから、血液が分離素子と離れるところまでの長さをいう。本発明では円盤状の分離素子を用いているため、血液流路長(L)は分離素子の外周から中心までの最短距離であり、円盤状の分離素子の半径に等しくなる。
【0064】
L/Dが0.15より小さい場合には、血液流路長に対して流路径が大きいため、血液中の各成分の移動速度の横方向にムラを生じるため、血球成分と血漿または血清成分との分離が不十分となり好ましくない。
L/Dが6より大きい場合には、分離効率は高まるが、移動距離が長くなるために血液が流れる際の圧力損失が高くなり、赤血球の溶血を生じ易いので好ましくない。また、分離素子に供給された血液のうち、分離された血漿あるいは血清採取に寄与する血液の比率が低下し、分離効率が低下してしまうので好ましくない。
【0065】
血液流路径(D)は、円盤状の分離素子の外周部の面積Aから、下記の数3により求めることができる。
【0066】
【数3】
【0067】
なお、分離素子の外周部の表面は、厳密には小さな凹凸を有するが、上記面積Aはこの凹凸を無視して平面として算出する。また、この凹凸以外に、分離素子外表面加工などにより形成された大きな凹凸を有する場合は、上記面積は、凹凸部を平均化した平面として算出する。
【0068】
本発明において、血液流路長(L)は5mm以上であれば良く、5mm〜100mm程度が好ましく、10mm〜50mm程度が特に好ましい。血液流路長(L)が5mm未満であると血球と血漿あるいは血清との間の移動距離に充分な差が生じず、両者の分離が不十分になるので好ましくない。血液流路長は長いほど、血球と血漿あるいは血清との分離効率は高くなるが、他方で圧力損失は大きくなる。また、必要な分離素子の量や血液の量が増加するという問題も生じる。従って、必要とする血漿あるいは血清の量、用いる血液の量、フィルターの大きさの限界等により、血液流路長(L)は決定される。但し、理論上の上限値は存在しない。
【0069】
本発明に適用される血液は、特に限定されるものではなく、血液成分を含むものは全て本発明に用いることができる。すなわち、血液の由来は、ヒト、牛、ヤギ、イヌ、ウサギ等、何でもよく、血液をそのまま用いても、抗凝固剤や赤血球凝集剤等の添加剤を加えて用いても良い。通常、血液に添加剤を加えずに放置したり、凝固剤を添加した場合には、血液中のフィブリノーゲンがフィブリンに変化し、血液の凝固が進行するが、これらの凝固性血液をそのまま用いても、遠心分離等の処理を行った後に用いても、化学的な処理を加えて用いても良い。
【0070】
本発明においては、円盤状の分離素子の表面に親水化剤を固定することも、好ましい態様である。親水化剤の固定は、物理的または化学的に行うことができる。親水化剤を分離素子に固定化することにより、分離素子と血液との親和性が高まる。従って、血液を血球と血漿あるいは血清とに分離する際、圧力損失を低下させ、分離速度を早めることができる。親水化剤の種類は、特に限定されるものではない。
【0071】
図1は、本発明の血漿あるいは血清分離フィルターの一例を示す図であり、図1(a)は厚み方向に切断した断面で示しており、図1(b)は厚み方向に垂直な方向で切断した断面を示している。
【0072】
図1の例に示すように、本発明の血漿あるいは血清分離フィルター10は、入口1と出口2とを有する容器4と、容器4の内部に設置される円盤状の分離素子3とを有している。分離素子3は、血液を分離素子3の外周部3aから分離素子の中央部3bに向かって移動させ、血液中の血球と血漿あるいは血清との間に移動速度差を生じさせて、中央部下面3cで血漿あるいは血清を採取し得るものである。
【0073】
図1の例では、分離素子3は二層構造(上層9、下層8)を有しており、繊維構造体または多孔質体で形成される。分離素子3においては、上層9の平均動水半径又は平均孔径を下層8のそれらよりも大きくして、上層9における血液通過抵抗を下層8における血液通過抵抗よりも小さくしている。
【0074】
容器4は中空の円盤状を呈しており、内壁は分離素子3の上下の面と接触している。分離素子3は容器4の内部に同心円に配置されており、その外周部3aと容器4の内壁との間には隙間5が環状に一定の幅で設けられている。容器4の入口1は、容器4の上部であって、隙間5に対応する位置に設けられている。容器4の出口2は、容器4の下部であって、分離素子3の中央部下面3cに対応する位置に設けられている。
【0075】
上記の構成により、入口1から供給される血液は、隙間5に入り、分離素子3の外周部3aから分離素子内に浸透し、中央部3bに向けて移動する。浸透した血液のうち上層9を流れる血液は、下層8を流れる血液よりも短い時間で出口2に到達するため、上層9で分離された血漿あるいは血清と下層8で分離された血漿あるいは血清とは、同時又は略同時に出口2で回収される。
【0076】
本発明で用いられる容器は、入口と出口を有し、内部に円盤状の分離素子を収容し得るものであれば限定されるものではない。但し、容器の形状は、入口から供給された血液が分離素子の外周部から中央部に向かって同心円状に移動し得る形状であるのが好ましい。具体的には、図1に示すように、分離素子を設置したときに内壁が円盤状の分離素子の上下面と接触し、内壁と分離素子の外周部との間に一定の幅の隙間を形成する形状であるのが好ましい。
【0077】
容器の入口は、供給された血液が分離素子にその外周部から導入され得る位置に設ければ良い。容器の出口は、分離素子中央部下面に対応する位置に設ければ良い。入口および出口の大きさや数は処理する血液の量などに応じて適宜設定すれば良い。
【0078】
血液の供給の際に容器の入口と出口に与える圧力差は、0.03kg/cm2 〜5kg/cm2 であることが好ましく、0.05kg/cm2 〜3kg/cm2 がより好ましい。圧力差が5kg/cm2 より大きい場合は、血液の送液速度が早すぎて、血漿あるいは血清と血球との通過時間の差が短いため、血漿あるいは血清を採取するのが困難になったり、圧力が大きいため赤血球が溶血したり、又、装置やフィルターに損傷が生じることがあるので好ましくない。また、圧力差が0.03kg/cm2 より小さい場合には、分離素子内の血液に対する負荷が小さいため、疎水性の高い分離素子を使用した場合には、血液を分離素子内に送ることができなかったり、処理時間がかかりすぎたり、分離素子内の血漿あるいは血清と血球との移動速度に差が生じず、血漿あるいは血清の分離が不十分となる場合があるので好ましくない。
【0079】
容器を形成する材料としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、塩ビ、ABS樹脂、ナイロン等のプラスチックや、ガラス、金属等が挙げられる。このうち安価で、軽量で割れにくく、成型性に優れたポリカーボネートやポリプロピレン等が好ましい。
【0080】
血漿は、血液成分から血球成分のみを除いたものであるが、本発明においては、実質的に血球を含まないものをいう。すなわち、例えば、血液を遠心分離して得られた血漿でも、少量の赤血球、白血球、血小板や血球の破片などの混入を完全に防ぐことはできない。本発明では実質的には、分離前の血液中の血球の99.9%以上を除去したものとする。この程度の血球を除去すれば、得られた血漿の臨床検査データに血球の影響は現れない。
【0081】
血清とは、血漿からフィブリノーゲンを含む凝固因子の一部または全部を取り除いたものとされるが、本発明においては、得られた透過液中のフィブリノーゲンを定量し、これが検出されれば血漿、検出限界以下であれば血清と定義する。
【0082】
本発明の血漿あるいは血清分離フィルターは、複数個を連結して使用しても良い。血漿あるいは血清成分と血球との分離性を更に向上させるのであれば、直列に連結すれば良い。処理液量を増加させるのであれば、並列に連結すればよい。
さらに、本発明の血漿あるいは血清分離フィルターは、サンプリング容器に結合し、一体型として用いることもできる。この場合には、自動的に一定量の血液試料を本発明の分離フィルターユニットに供給し、且つ、自動的にフィルターを交換する機構を有する自動分析装置等に、容易に適用することが可能となる。
【0083】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0084】
実施例1
〔容器の作製〕
実際に、図1に示す血漿・血清分離フィルターを作製した。容器としては、ポリカーボネート製の内部が中空となっている円盤状容器を用いた。容器の大きさは、容器内部の直径が30.0mm、内部の高さが7.0mmとなるように設定した。容器の入口は、図1に示す容器の上面端部に直径2.0mmの貫通孔を設けて形成した。容器の出口は、図1に示す容器の底面中央部に直径2.0mmの貫通孔を設けて形成した。
【0085】
〔分離素子の作製〕
メルトブロー法により得られた平均繊維直径1.8μmのポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布(目付43.9g/m2 )を直径29.5mm、厚み約0.5mmの円形に切断したものを、48枚作製した。このうちの24枚を重ね合わせ(積層体の重さ:0.72g)、これを嵩密度0.26g/cm3 に圧縮した。この圧縮したものを試料1とする。次に、別の24枚も重ね合わせ(積層体の重さ:0.72g)、これについては嵩密度0.35g/cm3 に圧縮した。この圧縮したものを試料2とする。この試料1と試料2とを、試料1が上層となるように積層して図1と同様に容器と同心円に、且つ、容器の内壁と外周部との隙間の幅が0.25mmとなるように、容器内部に充填した。
【0086】
平均動水半径は試料1(上層)については1.94μm、試料2(下層)については1.32μmであった。分離素子の血液入口部断面積は7mm×29.5mm×π=648.4mm2 、血液流路径(D)は28.74mm、血液流路長(L)は14.75mmであるのでL/Dは0.51である。
【0087】
〔血液の供給〕
上記で得た本発明の血漿あるいは血清分離フィルターを、ペリスターポンプに接続し、抗凝固剤としてACD液を加え、ヘマトクリット41%に調節した牛血液を、10ml/minの流量で送液した。
【0088】
〔評価〕
血液をそれぞれ2ml、4ml、5ml流した場合の血液の流動状態を観察した後、フィルターを分解し、内部の分離素子であるポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布を一枚づつはがし、実際の分離状況、血液の流れ具合を観察した。
【0089】
結果を図2に示す。図2は、実施例1で使用した分離素子を厚み方向に切断した断面を示す図であり、血液送液前および血液送液後の状態を示している。なお、図2(a)は血液送液前、図2(b)は2ml送液後、図2(c)は4ml送液後、図2(d)は5ml送液後を示している。
【0090】
▲1▼血液2mlを流した場合:図2(b)に示すように、血液はフィルターケース入口より進入後、容器の内壁と分離素子の外周部との隙間へ廻った後、外周部より中心部に向かって分離素子内へ浸透していった。6は分離素子のうち血球が浸透している部分を示している。
【0091】
▲2▼血液を4ml流した場合:図2(c)に示すように、分離素子内へ血液の浸透が進み、分離素子上層の血液の浸透が早く進んでいる。分離素子内の血液先端部分は、極細繊維不織布の間隙を通過することで血球の移動速度が低下し、血清が分離されていた。7は分離素子のうち血清が浸透している部分を示している。
【0092】
▲3▼血液を5ml流した場合:図2(d)に示すように、フィルターの容器中心部に設けられた出口を通過してフィルター外へ、分離された血清の流出が始まった。0.75mlの血清を採取した段階で、遅れて浸透してきた血球の流出が始まった。従って、得られた血清の量は0.75mlである。また、この場合、分離素子の上層においても略全面が血液で着色されており、分離素子内には回収されない血清がほとんど残っていなかった。
【0093】
実施例2
メルトブロー法により得られた平均繊維直径1.8μmのポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布(目付43.9g/m2 )を48枚重ね、直径29.5mmの円形に切断した。この極細繊維不織布の積層体を、上面温度が室温に保たれており、下面温度が180℃に加熱されたプレス機で厚さ7mmに成型した。成型後の積層体の嵩密度は、プレス機の加熱面に接していた層においては0.45g/cm3 (平均動水半径0.93μm)、室温面に接していた層においては0.25g/cm3 (平均動水半径2.03μm)となっており、厚さ方向に対し連続的に変化していた。
【0094】
分離素子を上記のように作製した以外は実施例1と同様にして、嵩密度が小さい層(平均動水半径が大きい層)が上面側となるように容器に充填した。この場合、上半分における嵩密度は、下半分における嵩密度よりも小さくなっている。なお、実施例1と同様、分離素子の血液入口部断面積は7mm×29.5mm×π=648.4mm2 、血液流路径(D)は28.74mm、血液流路長(L)は14.75mmであるのでL/Dは0.51である。この血漿あるいは血清分離フィルターに、実施例1と同様にして血液を送液したところ、得られた血清量は0.86mlであった。
【0095】
実施例3
メルトブロー法により得られた平均繊維直径1.5μmのポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布(目付42.8g/m2 )を直径29.5mm、厚み約0.5mmの円形に切断したものを、24枚重ね合わせ(積層体の重さ:0.70g)、これを試料3とする。次に、平均繊維直径2.0μmのポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布(目付45.7g/m2 )を直径29.5mm、厚み約0.5mmの円形に切断したものを、24枚重ね合わせ(積層体の重さ:0.75g)、これを試料4とする。試料3と試料4とを積層し、試料4が上層となるように、実施例1と同様に容器内部に充填した。この場合、上半分における平均繊維直径は、下半分における平均繊維直径より大きくなっている。
【0096】
平均動水半径は試料4(上層)については1.8μm、試料3(下層)については1.5μmであった。嵩密度は、容器内部への充填が均一に行われたとすると、両層において0.3g/cm3 である。なお、実施例1と同様、分離素子の血液入口部断面積は648.4mm2 、血液流路径(D)は28.74mm、血液流路長(L)は14.75mmであるのでL/Dは0.51である。この血漿あるいは血清分離フィルターに、実施例1と同様にして血液を送液したところ、得られた血清量は0.78mlであった。
【0097】
実施例4
平均孔径12μm、空孔率86%、直径29.5mm、厚さ3.6mmの円盤状のポリビニルホルマールスポンジと、平均孔径18μm、空孔率90%、直径29.5mm、厚さ3.6mmの円盤状のポリビニルホルマールスポンジとを積層した。この積層体を分離素子として、平均孔径の大きいポリビニルホルマールスポンジが上層となるようにして、実施例1と同様に容器の内部に充填し、本発明の血漿あるいは血清分離フィルターを完成させた。なお、容器の内部の高さとスポンジの厚みの差0.2mmは容器とスポンジとの間の締めしろとした。
【0098】
また、分離素子の血液入口部断面積は648.4mm2 、血液流路径(D)は28.74mm、血液流路長(L)は14.75mmであるのでL/Dは0.51である。このフィルターに、実施例1と同様のペリスターポンプにより、抗凝固剤を加えないヘマトクリット46%のヒト血液を10ml/minの流量で送液したところ、1.45mlの血清を採取できた。
【0099】
比較例1
円盤状の分離素子としては、メルトブロー法により得られた平均繊維直径1.8μmのポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布(目付43.9g/m2 )を直径29.5mm、厚み約0.5mmの円形に切断したものを48枚積層して形成したもの(積層体の重さ:1.44g)を使用した。この分離素子を実施例1と同様にして容器内部に充填し、血漿あるいは血清分離フィルターを完成させた。なお、分離素子において、ポリエチレンテレフタレートの密度は1.38g/cm3 であり、嵩密度は0.30g/cm3 、平均動水半径は1.62μm、分離素子の血液入口部断面積は7mm×29.5mm×π=648.4mm2 であり、血液流路径(D)は28.74mm、血液流路長(L)は14.75mmであるのでL/Dは0.51である。
【0100】
図3は従来の血漿あるいは血清分離フィルターを示す図であり、上記で得られた血漿あるいは血清分離フィルターを示している。図3(a)は厚み方向に切断した断面で示しており、図3(b)は厚み方向に垂直な方向で切断した断面を示している。図3に示す血漿あるいは血清分離フィルター10は、分離素子3が多層で形成されていない以外は図1で示したものと同様に構成されている。
【0101】
次に、実施例1と同様に血液を送液し、血液をそれぞれ2、4、5ml流した場合の血液の流動状態を観察した後、フィルターを分解し、内部の分離素子であるポリエチレンテレフタレート極細繊維不織布を一枚づつはがし、実際の分離状況、血液の流れ具合を確認した。
【0102】
結果を図4に示す。図4は、比較例1で使用した分離素子を厚み方向に切断した断面を示す図であり、血液送液前および血液送液後の状態を示している。なお、図4(a)は血液送液前、図4(b)は2ml送液後、図4(c)は4ml送液後、図4(d)は5ml送液後を示している。
【0103】
▲1▼血液2mlを流した場合:図4(b)に示すように、血液は容器の入口より進入後、容器の内壁と分離素子の外周部との隙間へ廻った後、外周部より中心部に向かって分離素子内へ浸透していった。6は分離素子のうち血球が浸透している部分を示している。
【0104】
▲2▼血液を4ml流した場合:図4(c)に示すように、分離素子内へ血液の浸透が進み、均一に流れている。分離素子内の血液先端部分では、極細繊維不織布の間隙を通過することで血球の移動速度が低下し、血清が分離されていた。7は分離素子のうち血清が浸透している部分を示している。
【0105】
▲3▼血液を5ml流した場合:図4(d)に示すように、フィルター容器中心部に設けられた出口よりフィルター外へ、分離された血清の流出が始まり、0.50mlの血清を採取した段階で、遅れて浸透してきた血球の流出が始まった。また、この場合、分離素子の最下層(フィルター容器の出口に最も近い層)のシートは全面に血液で着色されているのに対し、分離素子の上面側に向かうに従って(フィルター容器の出口から離れるに従って)、中心部には、分離されたが回収されない血清が多く残っていることが観察された。
【0106】
比較例2
分離素子として平均細孔径12μm、空孔率86%、直径29.5mm、厚さ7.2mmの円盤状のポリビニルホルマールスポンジを使用した以外は実施例1と同様に、分離素子を容器の内部に充填して本発明の血漿あるいは血清分離フィルターを完成させた。なお、容器の内部の高さとスポンジの厚みの差0.2mmは容器とスポンジとの間の締めしろとした。
【0107】
分離素子の血液入口部断面積は7mm×29.5mm×π=648.4mm2 であり、血液流路径(D)は28.74mm、血液流路長(L)は14.75mmであるのでL/Dは0.51である。
このフィルターに、実施例4と同様に抗凝固剤を加えないヘマトクリット46%のヒト血液を10ml/minの流量で送液したところ、1.10mlの血清を採取できた。
【0108】
上記実施例1〜4および比較例1、2より、分離素子の上半分を、下半分に比べて通過抵抗が小さいもの(即ち、平均動水半径が大きいもの、又は平均孔径が大きいもの)とすれば、分離素子内に残留する血漿あるいは血清の量を少なくすることができるのが分かる。即ち、本発明の血漿あるいは血清分離フィルターを用いれば、血漿あるいは血清の採取効率を高めることができる。
【0109】
【発明の効果】
以上の説明のように本発明の血漿あるいは血清分離フィルターを用いれば、少ない血液量から多くの血漿あるいは血清を得ることができる。従って、効率良く血漿あるいは血清を採取することができ、被験者のダメージを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の血漿あるいは血清分離フィルターの一例を示す図である。
【図2】実施例1で使用した分離素子を厚み方向に切断した断面を示す図であり、血液送液前および血液送液後の状態を示している。
【図3】従来の血漿あるいは血清分離フィルターを示す図である。
【図4】比較例1で使用した分離素子を厚み方向に切断した断面を示す図であり、血液送液前および血液送液後の状態を示している。
【符号の説明】
1 容器の入口
2 容器の出口
3 分離素子
4 容器
5 分離素子の外周部と容器の内壁との間の隙間
6 分離素子のうち、血球が浸透している部分
7 分離素子のうち、血漿あるいは血清が浸透している部分
8 下層
9 上層
Claims (6)
- 血液の入口と出口を有する容器と、該容器の内部に設置された円盤状の分離素子とを有し、
前記入口は容器の外周部に設けられ、前記出口は容器の中央部下面に設けられ、かつ、該分離素子は、繊維構造体よりなり、これによって、前記入口から供給された血液を該分離素子の外周部から中央部に向かって移動させ、血液中の血球と血漿との間に、あるいは、血球と血清との間に、移動速度差を生じさせて、該分離素子の中央部に到達した血漿あるいは血清を容器の中央部下面の出口で採取し得る分離フィルターであって、
該分離素子は、上半分の層の平均嵩密度が下半分の層の平均嵩密度よりも小さくかつその差が0.01g/cm3 〜0.40g/cm3 であり、該分離素子の上半分の層の平均動水半径が下半分の層のそれよりも大きくかつ上半分の層と下半分の層との間の平均動水半径の差が0.1μm〜2.0μmとなっており、これによって、
該分離素子の上層側を外周部から中央部に向かって移動する血漿あるいは血清の方が、該分離素子の下層側を外周部から中央部に向かって移動する血漿あるいは血清よりも早く中央部に到達し、もって、容器の中央部下面の出口には、前記両者が略同時に到達し得る構成となっていることを特徴とする、血漿あるいは血清分離フィルター。 - 上記分離素子が、平均動水半径を異にする複数の層を厚さ方向に積層して形成されており、各層がそれぞれの下面側にある層より動水半径の大きいものであることを特徴とする請求項1記載の血漿あるいは血清分離フィルター。
- 上記分離素子が単一の層からなり、上層から下層に向かって動水半径が減少していることを特徴とする請求項1記載の血漿あるいは血清分離フィルター。
- 上記繊維構造体がポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドまたはポリエチレンからなるものであって、上半分の層において平均動水半径が0.6μm〜3.0μmの範囲内にあり、下半分の層において平均動水半径が0.5μm〜2.8μmの範囲内にある請求項1記載の血漿あるいは血清分離フィルター。
- 上記分離素子の最上層の平均繊維直径が、最下層のそれよりも大きく、その差が0.1μm〜2.5μmである請求項2記載の血漿あるいは血清分離フィルター。
- 上記繊維構造体がポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドまたはポリエチレンからなるものであって、
最上層において平均繊維直径が0.6μm〜3.5μmの範囲内に、最下層において平均繊維直径が0.5μm〜2.5μmの範囲内にある請求項5記載の血漿あるいは血清分離フィルター。
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