JP3722171B2 - 防振ゴム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、防振技術に係る防振ゴムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、図3に示す防振ゴムが知られているが、この防振ゴムには、以下の問題がある(特開平6−147245号公報参照)。
【0003】
(1)内周側剛性部材51とこの内周側剛性部材51の外周側に配置された筒状の外周側剛性部材52とが、荷重入力時に剪断方向に弾性変形する第一および第二弾性部材53,54のみによって接続されているために、当該防振ゴムの作動を長期的に見た場合、弾性部材53,54に「へたり」の問題が発生する。ここに言う荷重は、内周側剛性部材51に対して図上上方から作用するモーメントを備えたものである。
(2)図上上下方向、左右方向および紙面と直交する方向の三方向についてそれぞれ弾性部材53,54のばね定数を規定された場合、チューニング要素が少ないために、合わせるのに工数がかかる。
(3)外周側剛性部材52に対する内周側剛性部材51の図上下方への相対変位を所定量迄に制限するストッパ部55が、内周側剛性部材51に接着された弾性部材56と、外周側剛性部材52に接着された弾性部材57と、両弾性部材56,57の間に設定された間隙58とによって構成されているために、このストッパ部55が接触作動したときの面圧が大きく、よって耐久性が乏しい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の点に鑑み、比較的へたりに強く、ばね定数をチューニングし易く、しかもストッパ部の耐久性に優れた防振ゴムを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による防振ゴムは、内周側剛性部材と前記内周側剛性部材の外周側に配置された筒状の外周側剛性部材とを、荷重入力時に剪断方向に弾性変形する第一および第二弾性部材と圧縮方向に弾性変形する第三弾性部材とによって接続するとともに、前記第三弾性部材の両側に、前記内周側剛性部材に設けられたフランジと、前記外周側剛性部材の内周面に接着された弾性部材と、前記フランジおよび弾性部材の間に設定された間隙とよりなるストッパ部を設け、前記ストッパ部は、前記フランジと弾性部材とが所定の大きさの間隙を介して対向し、所定の大きさの荷重が入力したときに互いに当接してストッパ作動をなし前記弾性部材の弾性変形を抑制するものであり、前記筒状の外周側剛性部材の弾性部材をバックアップする部分は、フランジのストッパ当り面と略平行に形成されていることを特徴とするものである。
【0006】
【0007】
上記構成を備えた本発明の請求項1による防振ゴムのように、内周側剛性部材とこの内周側剛性部材の外周側に配置された筒状の外周側剛性部材とが、荷重入力時に剪断方向に弾性変形する第一および第二弾性部材と圧縮方向に弾性変形する第三弾性部材とによって接続されていると、
(1)荷重入力時に第三弾性部材が圧縮方向に弾性変形するために、弾性部材全体のへたりを減少させることが可能となり、
(2)また第一および第二弾性部材と第三弾性部材とをそれぞれ独立してチューニングすることが可能となる。
【0008】
また併せて、外周側剛性部材に対する内周側剛性部材の相対変位を所定量迄に制限するストッパ部が、内周側剛性部材に設けられたフランジと、外周側剛性部材の内周面に接着された弾性部材と、このフランジおよび弾性部材の間に設定された間隙とによって構成されているために、
(3)ストッパ部が接触作動したときの面圧を下げることが可能となる。
【0009】
またこれに加えて、筒状の外周側剛性部材が、弾性部材をバックアップする部分において、フランジのストッパ当り面と略平行に形成されているために、
(4)外周側剛性部材が弾性部材を支持する作用が高められるために、ストッパ部のばね定数を上げることが可能となり、
(5)また弾性部材のボリュームを小さくすることが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
請求項1による防振ゴムについては、中心軸線を水平に向けて配置された内周側剛性部材とこの内周側剛性部材の外周側に配置された筒状の外周側剛性部材とを、内周側剛性部材の左右両側に配置された第一および第二弾性部材と内周側剛性部材の下側に配置された第三弾性部材とによって接続するとともに、第三弾性部材の左右両側にそれぞれ、内周側剛性部材に設けられたフランジと、外周側剛性部材の内周面に接着された弾性部材と、このフランジおよび弾性部材の間に設定された間隙とよりなるストッパ部を設ける。ストッパ部が接触作動したときの面圧を下げることができるのは、接触作動部の一方を構成するフランジが金属等の剛材よりなる内周側剛性部材に一体成形されていて、比較的硬いからである。
【0011】
また、基本的に円筒形を呈する外周側剛性部材をフランジのストッパ当り面に沿った異形形状に加工する。その際、被加工部であるバックアップ部の内周面に接着する弾性部材の厚みは、実寸で3mm以下と薄くするのが更に好適である。
【0012】
【実施例】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
図1および図2に示すように、内周側剛性部材(内筒とも称する)1とこの内周側剛性部材1の外周側に配置された略円筒状の外周側剛性部材(外筒とも称する)2とが、荷重入力時に剪断方向に弾性変形する第一および第二弾性部材3,4と圧縮方向に弾性変形する第三弾性部材5とによって接続されており、すなわち内周側剛性部材1の左右両側に配置された第一および第二弾性部材3,4と内周側剛性部材1の下側に配置された第三弾性部材5とによって接続されている。上記したように、ここに言う荷重は、内周側剛性部材1に対して図上上方から作用するモーメントを備えたものである。
【0022】
第三弾性部材5の左右両側にそれぞれ、内周側剛性部材1に一体突設されたフランジ7と、このフランジ7に対向するように外周側剛性部材2の内周面に加硫接着された弾性部材8と、このフランジ7および弾性部材8の間に設定された所定の大きさの間隙9とよりなるストッパ部6が設けられており、これにより外周側剛性部材2に対する内周側剛性部材1の図上下方への相対変位が所定量迄に制限されている。
【0023】
フランジ7の下面は略平坦なストッパ当り面7aを構成しており、これに対して外周側剛性部材2の弾性部材8をバックアップする部分(バックアップ部とも称する)2aが、このストッパ当り面7aと略平行な平坦面となるように形成されている。弾性部材8の厚さは、ばね定数の低下を促進するため、実寸で3mm以下に設定されており、その左右の皮膜部21,22と同じ厚さであっても良い。バックアップ部2aは同じ外周側剛性部材2の他の部分より内周側に変位した位置に設けられている。
【0024】
また外周側剛性部材2に対する内周側剛性部材1の図上上方への相対変位を所定量迄に制限するように、内周側剛性部材1の上側にも、この内周側剛性部材1と、この内周側剛性部材1に対向するように外周側剛性部材2の内周面に加硫接着された弾性部材11と、この内周側剛性部材1および弾性部材11の間に設定された所定の大きさの間隙12とよりなるストッパ部10が設けられている。
【0025】
内周側剛性部材1の上面は略平坦なストッパ当り面1aを構成しており、これに対して外周側剛性部材2の弾性部材11をバックアップする部分(バックアップ部とも称する)2bが、このストッパ当り面1aと略平行な平坦面となるように形成されている。弾性部材11の厚さは、ばね定数の低下を促進するため、実寸で3mm以下に設定されており、その左右の皮膜部19,20と同じ厚さであっても良い。バックアップ部2bは同じ外周側剛性部材2の他の部分より内周側に変位した位置に設けられている。
【0026】
符号13,14,15はそれぞれ、軸方向に貫通するように設けられた空間、すなわち、すぐりである。
【0027】
内周側剛性部材1および外周側剛性部材2はそれぞれ金属等の剛体によって成形されている。弾性部材3,4,5,8,11はそれぞれ所定のゴムによって加硫成形されており、かつ加硫成形と同時に内周側剛性部材1の外周面または外周側剛性部材2の内周面に加硫接着されている。フランジ7を含む内周側剛性部材1の外周面または外周側剛性部材2の内周面であって弾性部材3,4,5,8,11が接着されていないところには、薄膜状の皮膜部16,17,18,19,20,21,22が加硫接着されている。皮膜部16,17,18,19,20,21,22は弾性部材3,4,5,8,11と一体のゴムである。符号23はストッパクリアランス調整用のスペーサであるが、これについては後述することにし、取敢えずは、このスペーサ23が無いものとして当該防振ゴムの作動を説明する。
【0028】
すなわち、上記構成を備えた防振ゴムは、例えば、内周側剛性部材1を自動車のエンジン側に接続されるとともに外周側剛性部材2を自動車の車体側に接続され、各弾性部材3,4,5,8,11の弾性を利用してエンジンを防振支持するものである。また図面は当該防振ゴムに、エンジンの重量等の初期荷重(1G)が入力する以前の状態を示しており、これに対してこの初期荷重が内周側剛性部材1に上方から入力すると、内周側剛性部材1の中心軸線がA線からB線まで下方に変位する。しかして上記構成の防振ゴムは、以下の作用効果を奏する。
【0029】
(1)すなわち先ず、内周側剛性部材1とこの内周側剛性部材1の外周側に配置された円筒状の外周側剛性部材2とが、荷重入力時に剪断方向に弾性変形する第一および第二弾性部材3,4の他に、荷重入力時に圧縮方向に弾性変形する第三弾性部材5によって接続されているために、第一ないし第三の弾性部材3,4,5全体のへたりを減少させることが可能である。したがって比較的へたりに強く、耐クリープ性ないし耐久性に優れた防振ゴムを提供することができる。
(2)また第一および第二弾性部材3,4と第三弾性部材5とをそれぞれ独立してチューニングすることができるために、図上上下方向(軸直角上下方向)、左右方向(軸直角左右方向)および紙面と直交する方向(軸方向)の三方向についてそれぞれ弾性部材3,4,5のばね定数を規定された場合のチューニング要素を増加させることができる。したがってチューニングの工数を削減することができ、ばね定数を比較的チューニングし易い防振ゴムを提供することができる。
【0030】
(3)また外周側剛性部材2に対する内周側剛性部材1の図上下方への相対変位を所定量迄に制限するストッパ部6が、内周側剛性部材1に一体突設されたフランジ7と、外周側剛性部材2の内周面に加硫接着された弾性部材8と、このフランジ7および弾性部材8の間に設定された所定の大きさの間隙9とによって構成されているために、上記した理由によりストッパ部6が接触作動したときの面圧を下げることが可能である。したがってストッパ部6の耐久性に優れた防振ゴムを提供することができる。
(4)また内周側剛性部材1の側面に一体突設されたフランジ7が、内周側剛性部材1と外周側剛性部材2とが図上左右方向に相対変位する場合にも、外周側剛性部材2に当接してストッパ作動する。したがってこの方向についても各弾性部材3,4,5が過度に弾性変形するのを防止することができる。尚、このように内周側剛性部材1と外周側剛性部材2とが図上左右方向に相対変位した場合のフランジ7の当り面を大きく確保するため、外周側剛性部材2の該当箇所に、フランジ7の左右方向端部と略平行なストッパ面部2cが設けられている。このストッパ面部2cは、上記したバックアップ部2a,2bと同様に、同じ外周側剛性部材2の他の部分より内周側に変位した位置に設けられている。
【0031】
(5)また外周側剛性部材2の弾性部材8,11をバックアップする部分2a,2bがフランジ7のストッパ当り面7aまたは内周側剛性部材1のストッパ当り面1aと略平行に形成されているために、外周側剛性部材2が弾性部材8,11を支持する作用が高められている。したがってこれに伴ってストッパ部6,10のばね定数を高めることができるために、内周側剛性部材1の変位を有効に抑えるとともに弾性部材8,11の耐久性を向上させることができる。
(6)また同じ理由から弾性部材8,11のボリュームを小さくすることが可能であるために、ゴムについてコスト的に有利な防振ゴムを提供することができる。
【0032】
(7)また外周側剛性部材2に、フランジ7の左右方向端部と略平行なストッパ面部2cが設けられているために、内周側剛性部材1と外周側剛性部材2とが図上左右方向に相対変位した場合のフランジ7の当り面を大きく確保することができる。
(8)また図1および図2に示したように、すぐり13にストッパクリアランス調整用のスペーサ23を差し込んだ場合には、これにより間隙12の大きさを変更して、ストッパ部10の作動タイミングを変更することができる。尚、このスペーサ23は、すぐり13に差し込まれる平板状のスペーサ本体24と、内周側剛性部材1の先端円筒部25に嵌着される円形の穴27を備えた取付部26とを鉤状に一体成形したもので、取付部26に更に、内周側剛性部材1に設けた位置決め用または回止め用の穴28に差し込まれるピン状の差込み部29が設けられている。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0034】
すなわち先ず、上記構成を備えた本発明の請求項1による防振ゴムにおいては、
(1)内周側剛性部材とこの内周側剛性部材の外周側に配置された筒状の外周側剛性部材とが、荷重入力時に剪断方向に弾性変形する第一および第二弾性部材の他に、荷重入力時に圧縮方向に弾性変形する第三弾性部材によって接続されているために、第一ないし第三の弾性部材全体のへたりを減少させることが可能である。したがって比較的へたりに強く、耐クリープ性ないし耐久性に優れた防振ゴムを提供することができる。
(2)また第一および第二弾性部材と第三弾性部材とをそれぞれ独立してチューニングすることができるために、軸直角上下方向、軸直角左右方向および軸方向の三方向についてそれぞれ弾性部材のばね定数を規定された場合のチューニング要素を増加させることができる。したがってチューニングの工数を削減することができ、ばね定数を比較的チューニングし易い防振ゴムを提供することができる。
【0035】
(3)また外周側剛性部材に対する内周側剛性部材の下方への相対変位を所定量迄に制限するストッパ部が、内周側剛性部材に設けられたフランジと、外周側剛性部材の内周面に接着された弾性部材と、このフランジおよび弾性部材の間に設定された間隙とによって構成されているために、ストッパ部が接触作動したときの面圧を下げることが可能である。したがってストッパ部の耐久性に優れた防振ゴムを提供することができる。
(4)また内周側剛性部材に設けられたフランジが、内周側剛性部材と外周側剛性部材とが軸直角左右方向に相対変位する場合にも、外周側剛性部材に当接してストッパ作動する。したがってこの方向についても各弾性部材が過度に弾性変形するのを防止することができる。
【0036】
またこれに加えて、
(5)外周側剛性部材の弾性部材をバックアップする部分がフランジのストッパ当り面と略平行に形成されているために、外周側剛性部材が弾性部材を支持する作用が高められている。したがってこれに伴ってストッパ部のばね定数を高めることができるために、内周側剛性部材の変位を有効に抑えるとともに弾性部材の耐久性を向上させることができる。
(6)また同じ理由から弾性部材のボリュームを小さくすることが可能であるために、ゴムについてコスト的に有利な防振ゴムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係る防振ゴムの一部切欠した正面図
【図2】 同防振ゴムの側断面図
【図3】 従来例に係る防振ゴムの正断面図
【符号の説明】
1 内周側剛性部材
1a,7a ストッパ当り面
2 外周側剛性部材
2a,2b バックアップ部
2c ストッパ面部
3,4,5,8,11 弾性部材
6,10 ストッパ部
7 フランジ
9,12 間隙
13,14,15 すぐり
16,17,18,19,20,21,22 皮膜部
23 スペーサ
24 スペーサ本体
25 先端円筒部
26 取付部
27,28 穴
29 差込み部
Claims (1)
- 内周側剛性部材(1)と前記内周側剛性部材(1)の外周側に配置された筒状の外周側剛性部材(2)とを、荷重入力時に剪断方向に弾性変形する第一および第二弾性部材(3)(4)と圧縮方向に弾性変形する第三弾性部材(5)とによって接続するとともに、
前記第三弾性部材(5)の両側に、前記内周側剛性部材(1)に設けられたフランジ(7)と、前記外周側剛性部材(2)の内周面に接着された弾性部材(8)と、前記フランジ(7)および弾性部材(8)の間に設定された間隙(9)とよりなるストッパ部(6)を設け、
前記ストッパ部(6)は、前記フランジ(7)と弾性部材(8)とが所定の大きさの間隙(9)を介して対向し、所定の大きさの荷重が入力したときに互いに当接してストッパ作動をなし前記弾性部材(3)(4)(5)の弾性変形を抑制するものであり、前記筒状の外周側剛性部材(2)の弾性部材(8)をバックアップする部分(2a)は、フランジ(7)のストッパ当り面(7a)と略平行に形成されていることを特徴とする防振ゴム。
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