JP3719207B2 - 育毛剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬部外品、医薬品、或いは化粧品分野に於いて利用される育毛剤に関する。より詳細には、優れた育毛・養毛作用及び脱毛抑制作用を有し、しかも安全性の高い育毛剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
男性型脱毛症とは中高齢の男性に一般的にみられる薄毛や脱毛のことで、皮脂腺及び毛根部に於ける男性ホルモンの関与による毛根組織の機能低下、頭皮皮下組織及び末梢血管の血液量減少に起因する毛根組織の新陳代謝機能の低下、栄養摂取不良、ふけの過剰発生による頭皮生理機能の低下、及び精神的なストレス等、種々多様な原因により発生する。近年、この脱毛症は顕著な若年化及び増加傾向にあり、医薬部外品や医薬品に属する育毛剤による脱毛抑制や改善が特に求められている。
【0003】
育毛剤成分としては、エストロン、エストラジオール、エチニルエストラジオール等の卵胞ホルモン類、ビタミンE及びその誘導体、センブリ抽出物、ニンニク抽出物、ニンジン抽出物、アロエ抽出物、セファランチン、塩化カルプロニウム及びミノキシジル等の末梢血管血流促進剤、パントテン酸及びその誘導体、胎盤抽出物、ビオチン及びペンタデカン酸グリセリド等の毛根賦活剤、トウガラシチンキ、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ、ハッカ油、1−メントール及びカンフル等の局所刺激剤、レゾルシン、サリチル酸及び乳酸等の角質溶解剤、ピリドキシン及びその誘導体等の抗脂漏剤、ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン及びヒノキチオール等の殺菌剤、グリチルリチン酸及びその誘導体、アラントイン、アズレン及びヒドロコルチゾン等の抗炎症剤、ビタミンA、B2、B6、B12及びD等のビタミン剤、システイン、セリン、メチオニン、ロイシン及びトリプトファン等のアミノ酸類等が使用されてきた。
【0004】
また、男性型脱毛症の根本原因とされる男性ホルモンの働きを抑える試みも行われ、男性ホルモンのテストステロンから活性型のジヒドロテストステロンへの変換を触媒するテストステロン-5αリダクターゼの活性を阻害するものが多くスクリーニングされてきた。前記酵素の阻害剤としては、プロゲステロン、デオキシコルチコステロン等のステロイド物質の他、多種の植物抽出物が知られている。また、オキセンドロン、スピロノラクトン及び酢酸シプロテロン等は、ジヒドロテストステロンがその受容体に結合するのを阻害するといわれている。
【0005】
しかしながら、従来用いられている上記育毛剤成分やテストステロン-5αリダクターゼ剤の中には、副作用の為に配合可能量が制限されたり、効果が不十分であったり、育毛剤製剤中での安定性が不十分であったり、或いは一定の品質のものを得るのが困難であったりするものが多かった。また、種々の要因により生じる男性型脱毛症の薄毛や脱毛に対し、有効な毛髪成長促進効果を有する育毛成分はほとんどないといっても過言ではない。
【0006】
なお、酸性キシロオリゴ糖の生理効果に関しては、水耕栽培に於けるスギ挿穂の発根促進効果の記載があるのみで(セルラーゼ研究会報第16巻2001年)、育毛作用等のヒト外皮に適用される外用剤としての効果についての開示は全くない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明に於いては、男性型脱毛症の薄毛や脱毛に対して効果が高く、天然物を原料とし、副作用が無く、安全性の高い育毛剤を得ることを目的とした。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、マウス育毛効果を指標として育毛成分のスクリーニングを行った。その結果、ウロン酸残基が付加した酸性キシロオリゴ糖組成物が優れた育毛効果を有することを見出した。更に、酸性キシロオリゴ糖組成物を含有した育毛剤への応用を検討したところ、男性型脱毛症に対する顕著な脱毛抑制効果と発毛促進効果が認められ、製剤中の安定性及び安全性も優れることより、本発明を完成するに至った。
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。即ち、本発明の第1は、「キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を含有することを特徴とする育毛剤」である。
【0010】
本発明の第2は、前記第1発明において、該酸性キシロオリゴ糖はキシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、平均重合度が2.0〜11.0であることを特徴とする育毛剤である。
【0011】
本発明の第3は、前記第2の発明において、前記酸性キシロオリゴ糖の混合組成物が、リグノセルロース材料を原料とし、酸性キシロオリゴ糖を構成成分とする複合体を中間体として得た後に、該複合体を酵素的もしくは物理化学的に分解処理して得られた組成物であること特徴とする育毛剤である。
【0012】
本発明の第4は、前記第1〜第3の発明において、ウロン酸がグルクロン酸もしくは4-O-メチル-グルクロン酸であることを特徴とする育毛剤である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について詳述する。キシロオリゴ糖とは、キシロースの2量体であるキシロビオース、3量体であるキシロトリオース、あるいは4量体〜20量体程度のキシロースの重合体を言う。本発明で使用する酸性キシロオリゴ糖とは、キシロオリゴ糖1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を有するものを言う。
また、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であっても良い。一般的には、天然物から製造するために、このような組成物として得られることが多く、以下、主として酸性キシロオリゴ糖組成物について説明する。
該組成物は、平均重合度で示す数値は正規分布をとる酸性キシロオリゴ糖のキシロース鎖長の平均値で、2.0〜15.0が好ましく、2.0〜11.0がより好ましい。キシロース鎖長の上限と下限との差は20以下が好ましく、10以下がより好ましい。ウロン酸は天然では、ペクチン、ペクチン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸等の種々の生理活性を持つ多糖の構成成分として知られている。本発明におけるウロン酸としては特に限定されないが、グルクロン酸もしくは4-O-メチル-グルクロン酸が好ましい。
【0014】
上記のような酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることが出来れば、その製法は特に限定されないが、リグノセルロース材料を原料とし、酸性キシロオリゴ糖を構成成分とする複合体を中間体として得た後に、該複合体を酵素的もしくは物理化学的に分解処理する方法が好ましい。その一例として、ウロン酸残基を持たない中性キシロオリゴ糖組成物の製造工程(特開2000−333692、セルラーゼ研究会報第16巻2001年)において得ることが出来る。以下にその概要を示す。
【0015】
酸性オリゴ糖組成物は、化学パルプ由来のリグノセルロース材料を原料とし、加水分解工程、濃縮工程、希酸処理工程、精製工程を経て得ることができる。加水分解工程では、希酸処理、高温高圧の水蒸気(蒸煮・爆砕)処理もしくは、ヘミセルラーゼによってリグノセルロース中のキシランを選択的に加水分解し、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体として得る。濃縮工程では逆浸透膜等により、キシロオリゴ糖−リグニン様物質複合体が濃縮され、低重合度のオリゴ糖や低分子の夾雑物などを除去することができる。濃縮工程は逆浸透膜を用いることが好ましいが、限外濾過膜、塩析、透析などでも可能である。得られた濃縮液の希酸処理工程により、複合体からリグニン様物質が遊離し、酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖を含む希酸処理液を得ることができる。この時、複合体から切り離されたリグニン様物質は酸性下で縮合し沈殿するのでセラミックフィルターや濾紙などを用いたろ過等により除去することができる。希酸処理工程では、酸による加水分解を用いることが好ましいが、リグニン分解酵素などを用いた酵素分解などでも可能である。
【0016】
精製工程は、限外濾過工程、脱色工程、吸着工程からなる。一部のリグニン様物質は可溶性高分子として溶液中に残存するが、限外濾過工程で除去され、着色物質等の夾雑物は活性炭を用いた脱色工程によってそのほとんどが取り除かれる。限外濾過工程は限外濾過膜を用いることが好ましいが、逆浸透膜、塩析、透析などでも可能である。こうして得られた糖液中には酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖が溶解している。イオン交換樹脂を用いた吸着工程により、この糖液から酸性キシロオリゴ糖のみを取り出すことができる。糖液をまず強陽イオン交換樹脂にて処理し、糖液中の金属イオンを除去する。ついで強陰イオン交換樹脂を用いて糖液中の硫酸イオンなどを除去する。この工程では、硫酸イオンの除去と同時に弱酸である有機酸の一部と着色成分の除去も同時に行っている。強陰イオン交換樹脂で処理された糖液はもう一度強陽イオン交換樹脂で処理し更に金属イオンを除去する。最後に弱陰イオン交換樹脂で処理し、酸性キシロオリゴ糖を樹脂に吸着させる。
【0017】
樹脂に吸着した酸性オリゴ糖を、低濃度の塩(NaCl、CaCl2、KCl、MgCl2など)によって溶出させることにより、夾雑物を含まない酸性キシロオリゴ糖溶液を得ることができる。この溶液を、例えば、スプレードライや凍結乾燥処理により、白色の酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末を得ることができる。また、弱陰イオン交換樹脂に吸着しない画分を同様に処理することにより、中性キシロオリゴ糖組成物の粉末を得ることができる。
【0018】
化学パルプ由来のリグノセルロースを原料とし、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体とした酸性キシロオリゴ糖組成物の上記製造法のメリットは、経済性とキシロースの平均重合度の高い酸性キシロオリゴ糖組成物が容易に得られる点にある。平均重合度は、例えば、希酸処理条件を調節するか、再度ヘミセルラーゼで処理することによって変えることが可能である。また、弱陰イオン交換樹脂溶出時に用いる溶出液の塩濃度を変化させることによって、1分子あたりに結合するウロン酸残基の数が異なる酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることもできる。さらに、適当なキシラナーゼ、ヘミセルラーゼを作用させることによってウロン酸結合部位が末端に限定された酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることも可能である。
【0019】
このようにして得られた酸性キシロオリゴ糖組成物は、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、ジプリピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及びグリセリン等の多価アルコール、希酸、希アルカリの水溶液等に溶解して育毛剤基材に含有させる。或いは、アルコール、エステル等を含有する基材成分に直接添加、溶解して含有させることもできる。また、マイクロカプセル化やリポソームに内含させて添加してもよい。育毛剤に於ける含有量としては、0.001〜20.0%(以下全て質量%)の範囲で使用することができるが、0.01〜10.0%がより好ましい。
【0020】
なお、本発明に係わる育毛剤には、本発明の効果を損なわない範囲内で、医薬部外品、医薬品、化粧品等に配合し得る油脂類、界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子類、顔料、色素、防腐剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤等を含有させることができる。また更に、卵胞ホルモン類(エストロン、エストラジオール及びエチニルエストラジオール等)、末梢血管血流促進剤(ビタミンE及びその誘導体、センブリ抽出物、ニンニク抽出物、ニンジン抽出物、アロエ抽出物、セファランチン、塩化カルプロニウム及びミノキシジル等)、毛根賦活剤(パントテン酸及びその誘導体、胎盤抽出物、ビオチン及びペンタデカン酸グリセリド等)、局所刺激剤(トウガラシチンキ、カンタリスチンキ、ショウキョウチンキ、ハッカ油、1−メントール及びカンフル等)、角質溶解剤(レゾルシン、サリチル酸及び乳酸等)、抗脂漏剤(ピリドキシン及びその誘導体等)、殺菌剤(ジンクピリチオン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン及びヒノキチオール等)、抗炎症剤(グリチルリチン酸及びその誘導体、アラントイン、アズレン及びヒドロコルチゾン等)、ビタミン類(ビタミンA、B2、B6、B12及びD等)、アミノ酸類(システイン、セリン、メチオニン、ロイシン及びトリプトファン等)といった育毛成分や、テストステロン-5αリダクターゼ阻害剤(プロゲステロン、デオキシコルチコステロン等のステロイド物質及び多種の植物抽出物)、或いはジヒドロテストステロンの受容体への結合の阻害剤(オキセンドロン、スピロノラクトン及び酢酸シプロテロン等)を併用して含有することもできる。
【0021】
育毛剤の剤型は任意であり、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム、軟膏、エアゾール剤等の形態で提供することができ、ヘアーローション、ヘアートニック、ヘアークリーム、ヘアーミルク、ヘアージェル等として実施できる。また、毛髪用化粧料としても使用することができ、ヘアーリキッド、ヘアーフォーム、ヘアーパック、ヘアートリートメント、ヘアーシャンプー、ヘアーリンス、染毛剤として実施できる。医薬品の成分として用いる際の剤型も任意であるが、例えば、経皮、静脈注射等、種々の方法で投与することができ、それぞれに適した剤型、例えば、ローション剤、塗布剤及びアンプル剤に製剤することができる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明について実施例により詳説する。本発明はこれにより限定されるものではない。まず、各測定法の概要、本発明で有効成分として含有させた酸性キシロオリゴ糖組成物(UX10、UX5及びUX2)の調製例1〜調製例3、中性キシロオリゴ糖組成物(X10、X5及びX2)の調製例4〜調製例6を示す。次に、得られたキシロオリゴ糖を用いて行ったマウス育毛効果試験を概要と結果を示す。
【0023】
<測定法の概要>
(1) 全糖量の定量:
全糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製し、フェノール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(2) 還元糖量の定量:
還元糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、ソモジ−ネルソン法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(3) ウロン酸量の定量:
ウロン酸は検量線をD−グルクロン酸(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、カルバゾール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(4) 平均重合度の決定法:
サンプル糖液を50℃に保ち15000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液の全糖量を還元糖量(共にキシロース換算)で割って平均重合度を求めた。
(5) 中性及び酸性キシロオリゴ糖の分析方法:
オリゴ糖鎖の分布はイオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製、分析用カラム:Carbo Pac PA−10)を用いて分析した。分離溶媒には100mM NaOH溶液を用い、溶出溶媒には前述の分離溶媒に酢酸ナトリウムを500mMとなるように添加し、溶液比で、分離溶媒:溶出溶媒=4:6となるような直線勾配を組み分離した。得られたクロマトグラムより、キシロース鎖長の上限と下限との差を求めた。
(6) オリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数の決定法
サンプル糖液を50℃に保ち15000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液のウロン酸量(D−グルクロン酸換算)を還元糖量(キシロース換算)で割ってオリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数を求めた。
(7) 酵素力価の定義:
酵素として用いたキシラナーゼの活性測定にはカバキシラン(シグマ社製)を用いた。酵素力価の定義はキシラナーゼがキシランを分解することで得られる還元糖の還元力をDNS法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)を用いて測定し、1分間に1マイクロモルのキシロースに相当する還元力を生成させる酵素量を1ユニットとした。
【0024】
<酸性キシロオリゴ糖組成物の調整例>
<調製例1>
混合広葉樹チップ(国内産広葉樹70%、ユーカリ30%)を原料として、クラフト蒸解及び酸素脱リグニン工程により、酸素脱リグニンパルプスラリー(カッパー価9.6、パルプ粘度25.1cps)を得た。スラリーからパルプをろ別、洗浄した後、パルプ濃度10%、pH8に調製したパルプスラリーを用いて以下のキシラナーゼによる酵素処理を行った。
【0025】
バチルスsp.S−2113株(独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター、寄託菌株FERM BP-5264)の生産するキシラナーゼを1単位/パルプgとなるように添加した後、60℃で120分間処理した。その後、ろ過によりパルプ残渣を除去し、酵素処理液1050Lを得た。
【0026】
次に、得られた酵素処理液を濃縮工程、希酸処理工程、精製工程の順に供した。
濃縮工程では、逆浸透膜(日東電工(株)製、RO NTR-7410)を用いて濃縮液(40倍濃縮)を調製した。希酸処理工程では、得られた濃縮液のpHを3.5に調整した後、121℃で60分間加熱処理し、リグニンなどの高分子夾雑物の沈殿を形成させた。さらに、この沈殿をセラミックフィルターろ過で取り除くことにより、希酸処理溶液を得た。
【0027】
精製工程では、限外濾過・脱色工程、吸着工程の順に供した。限外濾過・脱色工程では、希酸処理溶液を限外ろ過膜(オスニクス社製、分画分子量8000)を通過させた後、活性炭(和光純薬(株)製)770gの添加及びセラミックフィルター濾過により脱色処理液を得た。吸着工程では、脱色処理液を強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)、強陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PA408)、強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)各100kgを充填したカラムに順次通過させた後、弱陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製WA30)100kgを充填したカラムに供した。この弱陰イオン交換樹脂充填カラムから75mM NaCl溶液によって溶出した溶液をスプレードライ処理することによって、酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量353g、回収率13.1%)を得た。以下、この酸性キシロオリゴ糖組成物をUX10とする。前述の測定方法により、UX10は平均重合度10.3、キシロース鎖長の上限と下限との差は10、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。
【0028】
<調製例2>
調整例1と同様にして得られた希酸処理液1160mlに、スミチームX28mgを添加し、40℃で20時間反応させた。活性炭9.8gの添加及び加熱処理(70℃、1時間)により酵素を失活させた後、セラミックフィルターで活性炭を除去した。スミチームX処理液を調整例1と同様の精製工程を経て、酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量21.3g、回収率22.2%)を得た。以下、この酸性キシロオリゴ糖組成物をUX5とする。前述の測定方法により、UX5は平均重合度4.8、キシロース鎖長の上限と下限との差は9、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。
【0029】
<調製例3>
調整例1より得られたUX10の10%水溶液100mlに、スミチームX50mgを添加し、60℃、20時間反応後、弱アニオン交換樹脂(WA30)10gを充填したカラムに供した。カラムを水洗した後、75mM NaCl溶液によって溶出した溶液を凍結乾燥することによって、酸性キシロオリゴ糖組成物粉末(全糖量2.1g、回収率21%)を得た。以下、この酸性キシロオリゴ糖組成物をUX2とする。前述の測定方法により、UX2は平均重合度2.3、キシロース鎖長の上限と下限との差は2、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。
【0030】
<中性キシロオリゴ糖組成物の調整例>
<調製例4>
調整例1と同様にして得られた活性炭処理液1100mlを強陽イオン交換樹脂(PK218)、強陰イオン交換樹脂(PK408)、強陽イオン交換樹脂(PK218)、弱陰イオン交換樹脂(WA30)各100gを充填したカラムを順次通過させた。非吸着画分(1.5L)をエバポレーターにより500mlに濃縮後、静置(室温、24時間)させて得られる沈殿の凍結乾燥によりウロン酸側鎖を持たない中性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量は682mg、回収率0.9%)が得られた。以下、この中性キシロオリゴ糖組成物をX10とする。前述の測定方法により、X10は平均重合度11.3、キシロース鎖長の上限と下限との差は10、ウロン酸残基を含まない糖組成化合物であった。
【0031】
<調製例5>
調整例2と同様にして、スミチームX処理液を得た後、その溶液1100mlを強陽イオン交換樹脂(PK218)、強陰イオン交換樹脂(PK408)、強陽イオン交換樹脂(PK218)、弱陰イオン交換樹脂(WA30)各100gを充填したカラムを順次通過させた。カラムを通過した画分を凍結乾燥することによって、ウロン酸側鎖を持たない中性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量49.7g、回収率54.7%)が得られた。以下、この中性キシロオリゴ糖組成物をX5とする。前述の測定方法により、X5は平均重合度4.8、キシロース鎖長の上限と下限との差は6、ウロン酸残基を含まない糖組成化合物であった。
【0032】
<調製例6>
調整例3と同様にして、スミチームX処理液を得た後、その溶液100mlに、10gの弱アニオン交換樹脂を充填したカラムに供した。カラムを通過した溶液を凍結乾燥することによって、ウロン酸側鎖を持たない中性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量7.5g、回収率75%)を得た。以下、この中性キシロオリゴ糖組成物をX2とする。前述の測定方法により、X2は平均重合度2.3、キシロース鎖長の上限と下限との差は3、ウロン酸残基を含まない糖組成化合物であった。
【0033】
<マウス育毛効果試験の概要>
C3Hマウス(雄、5週齢、日本チャールズリバー(株)製)を購入後、7日間予備飼育した。1群10匹としてマウス尾部側背毛部(2cm×2cm)を電気バリカンで剃毛後、除毛剤処理を行った。その3日後から、剃毛した背皮に塗布サンプル100μlを毎日1回塗布した。上記処理済みのマウスの背皮はピンク色、灰色、黒色へと変色後、発毛を開始するので、その過程を経日的に観察することで、塗布サンプルの育毛活性を評価できる。塗布開始後、8、12、16日目の塗布部の育毛スコアは、下記のようにして算出した。各マウスの背皮を観察し、「変色開始(ピンク色〜灰色):1、灰色:2、黒色:3、発毛開始:4、背毛伸長:5」の基準により評点をつけた後、各群10匹の評点の和を育毛スコアとした。
【0034】
<実施例1〜実施例6>
調製例1〜3によって得られた酸性キシロオリゴ糖組成物を終濃度0.1及び1.0%になるように50%エタノールに溶解した塗布サンプルを用いて、上記マウス育毛効果試験を行い、実施例1(0.1%UX10使用)、実施例2(1.0%UX10使用)、実施例3(0.1%UX5使用)、実施例4(1.0%UX5使用)、実施例5(0.1%UX2使用)及び実施例6(1.0%UX2使用)を得た。
【0035】
<比較例1〜比較例3>
同様に、調製例4〜6によって得られた中性キシロオリゴ糖組成物を終濃度0.1%になるように50%エタノールに溶解した塗布サンプルを用いて、マウス育毛効果試験を行い、比較例1(0.1%X10使用)、比較例2(0.1%X5使用)、比較例3(0.1%X2使用)を得た。
【0036】
<比較例4及び比較例5>
また、効果が高いとされる市販育毛剤(ロゲイン5、アップジョン社製)を用いた例を比較例4とし、塗布サンプルの溶剤である50%エタノールだけを用いた例を比較例5とした。
【0037】
【表1】
【0038】
表1の育毛スコアから明らかなように、酸性キシロオリゴ糖組成物は中性キシロオリゴ糖組成物と比較して、顕著な育毛効果が認められた。特に、UX10及びUX5は単一で、市販育毛剤に匹敵する効果があった。
【0039】
また、実施例1〜実施例6に於いて、塗布期間16日及び塗布終了後1ヶ月間、マウス背皮の炎症等の副作用は観察されなかった。このことは酸性キシロオリゴ糖組成物の高い安全性を示唆している。
【0040】
続いて、本発明に係わる育毛剤の処方例と男性型脱毛症のパネラーによるヒト育毛効果試験の概要及び結果を示す。
【0041】
<処方例1> 育毛剤A
処方:(1)エタノール50.0%、(2)酢酸トコフェロール0.5%、(3)プロピレングリコール2.0%、(4)精製水46.5%、(5)酸性キシロオリゴ糖組成物UX10(調製例1)1.0%
製法:室温で(4)に(5)を添加し完全に溶解させた後、(1)〜(3)、(5)を溶解済みの(4)の順に添加、溶解させて均一に混合した。
【0042】
<処方例2> 育毛剤B
処方例1における酸性キシロオリゴ糖組成物UX10をUX5(調製例2)に代替したものを処方例2とし、処方例1と同製法で調製した。
【0043】
<処方例3> 育毛剤C
処方例1における酸性キシロオリゴ糖組成物UX10をUX2(調製例3)に代替したものを処方例3とし、処方例1と同製法で調製した。
【0044】
<処方例4> 育毛剤D
処方例1における酸性キシロオリゴ糖組成物UX10を精製水に代替したものを処方例4とし、処方例1と同製法で調製した。
【0045】
<ヒト育毛効果試験の概要、実施例7〜実施例9、比較例6>
男性型脱毛症状を呈する男性パネラー20名を1群とし、各群に上記処方例1〜4にて調製した育毛剤A〜Dをブラインドで1日2回、6ヶ月間連続使用させた。6ヶ月後に脱毛及び発毛の改善状況の聞き取り評価を実施し、実施例7(育毛剤A使用)、実施例8(育毛剤B使用)、実施例9(育毛剤C使用)及び比較例6(育毛剤D使用)を得た。脱毛に関する判定基準は「悪化した:A、やや悪化した:B、変化無し:C、やや改善:D、改善:E」、発毛に関する判定基準は「発毛を認めない:A、部分的に産毛を認める:B、全体的に産毛を認める:C、部分的に硬毛を認める:D、全体的に硬毛を認める:E」の各5段階とし、評価を解答したパネラー数を表2に示した。
【0046】
【表2】
【0047】
表2により明らかなように、酸性キシロオリゴ糖組成物を含有する育毛剤には、脱毛抑制効果及び発毛促進効果が認められた。特に、UX10及びUX5を含有する育毛剤においては、パネラーの85%以上で脱毛症状の改善、全てのパネラーで発毛の促進傾向が認められた。
【0048】
なお、本発明の実施例7〜実施例9については、上記使用期間中に変色、変臭、含有成分の凝集、析出、分離等の状態変化は全く認められなかった。また、各実施例において、皮膚刺激性反応や感作性反応を認めたパネラーもいなかった。
【0049】
【発明の効果】
本発明で得られる酸性キシロオリゴ糖を含有した育毛剤は、優れた脱毛抑制効果及び発毛促進効果を有しており、男性型脱毛症の改善及び治療に有効である。
Claims (4)
- キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を含有することを特徴とする育毛剤。
- 該酸性キシロオリゴ糖はキシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、平均重合度が2.0〜11.0であることを特徴とする請求項1に記載の育毛剤。
- 前記酸性キシロオリゴ糖の混合組成物が、リグノセルロース材料を原料とし、酸性キシロオリゴ糖を構成成分とする複合体を中間体として得た後に、該複合体を酵素的もしくは物理化学的に分解処理して得られた組成物であること特徴とする請求項2に記載の育毛剤。
- ウロン酸がグルクロン酸もしくは4-O-メチル-グルクロン酸であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の育毛剤。
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