JP4196605B2 - コラーゲン産生促進剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧品、医薬部外品、医薬品及び食品分野に於いて使用される新規なコラーゲン産生促進剤に関する。より詳細には、優れた生理活性を有し、しかも安全性の高いコラーゲン産生促進剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体組織は、細胞とその間隙とを埋める細胞間マトリックスにより構成されている。細胞間マトリックスは、コラーゲン、エラスチン、グリコサミノグリカン及びプロテオグリカン等が三次元状に広がったゲル状態で存在しているが、これらの細胞間マトリックスのうち、線維成分の主たるもので、体の全タンパク質量の約1/3を占めるのがコラーゲンである。コラーゲンは全身のあらゆる臓器に存在しており、特に皮膚、骨、軟骨、歯、腱、血管壁に大量に存在する。特に皮膚においては、真皮乾燥重量の約70%がコラーゲンであることが知られており、他の細胞間マトリックスと共に、皮膚の収縮性、柔軟性、保湿性等の機能保持に役立つだけではなく、各種細胞の形態を正常に維持し、代謝及び接着などに対しても影響を及ぼすことが知られている。
【0003】
一方、皮膚は生理的老化や紫外線等の外的因子による光老化によって、細胞機能の低下、皮膚の乾燥、弾力性の減少及びシワ発生等の皮膚老徴を示すようになる。このような皮膚老徴を示した皮膚では、皮膚の主要な細胞間マトリックスであるコラーゲンが顕著に減少していることが明らかになっている。
【0004】
老化した皮膚の改善剤として、コラーゲンやヒアルロン酸を配合した化粧料が数多く提案されているが、これらは皮膚表面における保湿効果を発揮するだけであり、本質的に老化した皮膚を改善し得るものではない。また、コラーゲンの生合成を促進するものとして、アスコルビン酸、レチノイン酸〔J.Am.Acad.Dermatol.,15,P836,(1986)〕、インシュリン、成長ホルモン、TGF−β〔Eur.J.Biochem.,159,P69,(1986)〕等が知られている。しかし、アスコルビン酸はそれ自身が不安定なため化粧料を着色してしまい、レチノイン酸は皮膚に対して刺激性のあることが知られている。また、インシュリン、成長ホルモン、TGF−βは皮膚に対する安全性が十分に証明されておらず、いずれも化粧品、医薬部外品や医薬品として簡便かつ安心して使用できるものではない。
【0005】
特開平11−158054号公報には、酵母およびブナ属植物からの抽出物を含有する皮膚外用剤、特開2001−131049号公報にはツカサノリ科などの各種海藻抽出物を有効成分とする皮膚外用剤が記載され、いずれもコラーゲン産生促進効果が記載されており、また、特開2001−39849号公報にはダイズゼイン、ダイズジン、ゲニスタインおよびゲニスチンから選ばれるイソフラボン化合物の一種または二種以上および/またはフィトステロールを配合するコラーゲン産生促進剤が記載されているが、いずれも抽出物の安定性、効果の安定性は定かではない。
【0006】
なお、酸性キシロオリゴ糖の生理効果に関しては、水耕栽培に於けるスギ挿穂の発根促進効果の記載(セルラーゼ研究会報第16巻2001年)、育毛剤(特願2001−388881)、メラニン生成抑制剤(特願2002−17137)及び抗炎症剤(特願2002−19378)としての提案があるのみで、コラーゲン産生促進剤に関する開示はなされていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明に於いては、コラーゲン産生促進効果に優れ、かつ安全性及び安定性の高く、抗シワ剤等として人体に適用可能なコラーゲン産生促進剤を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決する為、培養コラーゲン産生細胞に於けるコラーゲン産生を指標として、コラーゲン産生促進剤のスクリーニングを行った。その結果、ウロン酸残基が付加した酸性キシロオリゴ糖組成物が優れたコラーゲン産生促進効果を有することを見出し、安全性及び安定性も優れることより、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下の構成を採用する。即ち、本発明の第1は、「キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤」である。
【0010】
本発明の第2は、前記第1発明において、該酸性キシロオリゴ糖はキシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、平均重合度が2.0〜10.0であることを特徴とするコラーゲン産生促進剤である。
【0011】
本発明の第3は、前記第1または第2の発明において、前記酸性キシロオリゴ糖が、「リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得る工程、前記工程で得られた複合体からリグニン様物質を分離するために希酸処理し、酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖を含む希酸処理液を得る工程、そして、前記工程により得られた希酸処理液から、酸性キシロオリゴ糖以外の成分を除去するために、限外濾過工程、脱色工程、吸着工程、溶出工程を経て得られたもの」であることを特徴とするコラーゲン産生促進剤である。
【0012】
本発明の第4は、前記第1〜第3の発明において、ウロン酸がグルクロン酸もしくは4-O-メチル-グルクロン酸であることを特徴とするコラーゲン産生促進剤である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について詳述する。キシロオリゴ糖とは、キシロースの2量体であるキシロビオース、3量体であるキシロトリオース、あるいは4量体〜20量体程度のキシロースの重合体を言う。本発明で使用する酸性キシロオリゴ糖とは、キシロオリゴ糖1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を有するものを言う。
また、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であっても良い。一般的には、天然物から製造するために、このような組成物として得られることが多く、以下、主として酸性キシロオリゴ糖組成物について説明する。
該組成物は、平均重合度で示す数値は正規分布をとる酸性キシロオリゴ糖のキシロース鎖長の平均値で、2.0〜15.0が好ましく、2.0〜11.0がより好ましい。キシロース鎖長の上限と下限との差は20以下が好ましく、10以下がより好ましい。ウロン酸は天然では、ペクチン、ペクチン酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸等の種々の生理活性を持つ多糖の構成成分として知られている。本発明におけるウロン酸としては特に限定されないが、グルクロン酸もしくは4-O-メチル-グルクロン酸が好ましい。
【0014】
上記のような酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることが出来れば、その製法は特に限定されないが、(1)木材からキシランを抽出し、それを酵素的に分解する方法(セルラーゼ研究会発行、セルラーゼ研究会報第16巻、2001年6月14日発行、P17-26)と、(2)リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得、次いで該複合体を酸加水分解処理してキシロオリゴ糖混合物を得、得られるキシロオリゴ糖混合物から、1分子中に少なくとも1つ以上のウロン酸残基を側鎖として有するキシロオリゴ糖を分離する方法が挙げられる。
特に、(2)の方法が5〜10量体のように比較的高い重合度のものを大量に安価に製造することが可能である点で好ましく、以下にその概要を示す。
【0015】
酸性オリゴ糖組成物は、化学パルプ由来のリグノセルロース材料を原料とし、加水分解工程、濃縮工程、希酸処理工程、精製工程を経て得ることができる。加水分解工程では、希酸処理、高温高圧の水蒸気(蒸煮・爆砕)処理もしくは、ヘミセルラーゼによってリグノセルロース中のキシランを選択的に加水分解し、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体として得る。濃縮工程では逆浸透膜等により、キシロオリゴ糖−リグニン様物質複合体が濃縮され、低重合度のオリゴ糖や低分子の夾雑物などを除去することができる。濃縮工程は逆浸透膜を用いることが好ましいが、限外濾過膜、塩析、透析などでも可能である。得られた濃縮液の希酸処理工程により、複合体からリグニン様物質が遊離し、酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖を含む希酸処理液を得ることができる。この時、複合体から切り離されたリグニン様物質は酸性下で縮合し沈殿するのでセラミックフィルターや濾紙などを用いた濾過等により除去することができる。希酸処理工程では、酸による加水分解を用いることが好ましいが、リグニン分解酵素などを用いた酵素分解などでも可能である。
【0016】
精製工程は、限外濾過工程、脱色工程、吸着工程からなる。一部のリグニン様物質は可溶性高分子として溶液中に残存するが、限外濾過工程で除去され、着色物質等の夾雑物は活性炭を用いた脱色工程によってそのほとんどが取り除かれる。限外濾過工程は限外濾過膜を用いることが好ましいが、逆浸透膜、塩析、透析などでも可能である。こうして得られた糖液中には酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖が溶解している。イオン交換樹脂を用いた吸着工程により、この糖液から酸性キシロオリゴ糖のみを取り出すことができる。糖液をまず強陽イオン交換樹脂にて処理し、糖液中の金属イオンを除去する。ついで強陰イオン交換樹脂を用いて糖液中の硫酸イオンなどを除去する。この工程では、硫酸イオンの除去と同時に弱酸である有機酸の一部と着色成分の除去も同時に行っている。強陰イオン交換樹脂で処理された糖液はもう一度強陽イオン交換樹脂で処理し更に金属イオンを除去する。最後に弱陰イオン交換樹脂で処理し、酸性キシロオリゴ糖を樹脂に吸着させる。
【0017】
樹脂に吸着した酸性オリゴ糖を、低濃度の塩(NaCl、CaCl2、KCl、MgCl2など)によって溶出させることにより、夾雑物を含まない酸性キシロオリゴ糖溶液を得ることができる。この溶液を、例えば、スプレードライや凍結乾燥処理により、白色の酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末を得ることができる。
【0018】
化学パルプ由来のリグノセルロースを原料とし、キシロオリゴ糖とリグニンからなる高分子量の複合体を中間体とした酸性キシロオリゴ糖組成物の上記製造法のメリットは、経済性とキシロースの平均重合度の高い酸性キシロオリゴ糖組成物が容易に得られる点にある。平均重合度は、例えば、希酸処理条件を調節するか、再度ヘミセルラーゼで処理することによって変えることが可能である。また、弱陰イオン交換樹脂溶出時に用いる溶出液の塩濃度を変化させることによって、1分子あたりに結合するウロン酸残基の数が異なる酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることもできる。さらに、適当なキシラナーゼ、ヘミセルラーゼを作用させることによってウロン酸結合部位が末端に限定された酸性キシロオリゴ糖組成物を得ることも可能である。
【0019】
このようにして得られた酸性キシロオリゴ糖組成物は、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール等の低級アルコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール及びグリセリン等の多価アルコール、希酸、希アルカリの水溶液等に溶解してコラーゲン酸産生促進剤に含有させる。或いは、アルコール、エステル等を含有する基材成分に直接添加、溶解して含有させることもできる。また、マイクロカプセル化やリポソームに内含させて添加してもよい。コラーゲン産生促進剤に於ける酸性キロオリゴ糖または、酸性キシロオリゴ糖組成物の含有率としては、0.001〜20%(以下全て質量%)の範囲で使用することができるが、0.01〜10%がより好ましい。
【0020】
本発明の酸性キシロオリゴ糖組成物を配合したコラーゲン酸産生促進剤は、ローション、乳剤、クリーム、軟膏等の形態をとることが出来る。また更に、柔軟性化粧水、収れん性化粧品、洗浄用化粧水等の化粧水類、エモリエントクリーム、モイスチュアクリーム、クレンジングクリーム、メイクアップクリーム等のクリーム類、エモリエント乳液、モイスチュア乳液、ナリシング乳液、クレンジング乳液等の乳液類、ゼリー状パック、ピールオフパック、洗い流しパック、粉末パック等のパック類、美容液及び洗顔料といった種々の製剤形態のコラーゲン産生促進剤としても配合することが出来る。
【0021】
本発明に於いては、更に、他のコラーゲン産生促進成分や、保湿剤、抗炎症剤、紫外線吸収剤等、他の有効成分を配合することも出来、抗シワ用化粧料、皮膚保護用化粧料、肌荒れ改善用化粧料等の薬用化粧料、医薬部外品あるいは医薬品として提供することも出来る。
【0022】
【実施例】
以下、本発明について実施例により詳説する。本発明はこれにより限定されるものではない。まず、各測定法の概要、本発明で有効成分として含有させた酸性キシロオリゴ糖組成物(UX10、UX5、UX2)の調製例1〜調製例3を示す。
【0023】
〈測定法の概要〉
(1) 全糖量の定量:
全糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製し、フェノール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(2) 還元糖量の定量:
還元糖量は検量線をD−キシロース(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、ソモジ−ネルソン法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(3) ウロン酸量の定量:
ウロン酸は検量線をD−グルクロン酸(和光純薬工業(株)製)を用いて作製、カルバゾール硫酸法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)にて定量した。
(4) 平均重合度の決定法:
サンプル糖液を50℃に保ち15000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液の全糖量を還元糖量(共にキシロース換算)で割って平均重合度を求めた。
(5) 酸性キシロオリゴ糖の分析方法:
オリゴ糖鎖の分布はイオンクロマトグラフ(ダイオネクス社製、分析用カラム:Carbo Pac PA−10)を用いて分析した。分離溶媒には100mM NaOH溶液を用い、溶出溶媒には前述の分離溶媒に酢酸ナトリウムを500mMとなるように添加し、溶液比で、分離溶媒:溶出溶媒=10:0〜4:6となるような直線勾配を組み分離した。得られたクロマトグラムより、キシロース鎖長の上限と下限との差を求めた。
(6) オリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数の決定法
サンプル糖液を50℃に保ち15000rpmにて15分遠心分離し不溶物を除去し上清液のウロン酸量(D−グルクロン酸換算)を還元糖量(キシロース換算)で割ってオリゴ糖1分子あたりのウロン酸残基数を求めた。
(7) 酵素力価の定義:
酵素として用いたキシラナーゼの活性測定にはカバキシラン(シグマ社製)を用いた。酵素力価の定義はキシラナーゼがキシランを分解することで得られる還元糖の還元力をDNS法(還元糖の定量法、学会出版センター発行)を用いて測定し、1分間に1マイクロモルのキシロースに相当する還元力を生成させる酵素量を1ユニットとした。
【0024】
〈酸性キシロオリゴ糖組成物の調製例〉
〈調製例1〉
混合広葉樹チップ(国内産広葉樹70%、ユーカリ30%)を原料として、クラフト蒸解及び酸素脱リグニン工程により、酸素脱リグニンパルプスラリー(カッパー価9.6、パルプ粘度25.1cps)を得た。スラリーからパルプを濾別、洗浄した後、パルプ濃度10%、pH8に調製したパルプスラリーを用いて以下のキシラナーゼによる酵素処理を行った。
【0025】
バチルスsp.2113株(独立行政法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター、寄託菌株FERM BP−5264)の生産するキシラナーゼを1単位/パルプgとなるように添加した後、60℃で120分間処理した。その後、ろ過によりパルプ残渣を除去し、酵素処理液1050Lを得た。
【0026】
次に、得られた酵素処理液を濃縮工程、希酸処理工程、精製工程の順に供した。
濃縮工程では、逆浸透膜(日東電工(株)製、RO NTR-7410)を用いて濃縮液(40倍濃縮)を調製した。希酸処理工程では、得られた濃縮液のpHを3.5に調整した後、121℃で60分間加熱処理し、リグニンなどの高分子夾雑物の沈殿を形成させた。さらに、この沈殿をセラミックフィルター濾過で取り除くことにより、希酸処理溶液を得た。
【0027】
精製工程では、限外濾過・脱色工程、吸着工程の順に供した。限外濾過・脱色工程では、希酸処理溶液を限外濾過膜(オスモニクス社製、分画分子量8000)を通過させた後、活性炭(和光純薬(株)製)770gの添加及びセラミックフィルター濾過により脱色処理液を得た。吸着工程では、脱色処理液を強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)、強陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PA408)、強陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製PK218)各100kgを充填したカラムに順次通過させた後、弱陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製WA30)100kgを充填したカラムに供した。この弱陰イオン交換樹脂充填カラムから75mM NaCl溶液によって溶出した溶液をスプレードライ処理することによって、酸性キシロオリゴ糖組成物の粉末(全糖量353g、回収率13.1%)を得た。以下、この酸性キシロオリゴ糖組成物をUX10とする。前述の測定方法により、UX10は平均重合度10.3、キシロース鎖長の上限と下限との差は10、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。
【0028】
〈調製例2〉
調整例1と同様にして得られた希酸処理液1160mlに、スミチームX(新日本化学工業(株)製のキシラナーゼ)28mgを添加し、40℃で20時間の反応させた。加熱処理(70℃、1時間)により酵素を失活させた後、スミチームX処理液を調整例1と同様の精製工程を経て、酸性キシロオリゴ糖粉末(全糖量21.3g、回収率22.2%)を得た。以下、この酸性キシロオリゴ糖をUX5とする。前述の測定方法により、UX5は平均重合度4.8、キシロース鎖長の上限と下限との差は9、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。
【0029】
〈調製例3〉
調整例1より得られたUX10の10%水溶液100mlに、スミチームX50mgを添加し、60℃、20時間反応後、弱アニオン交換樹脂(WA30)10gを充填したカラムに供した。カラムを水洗した後、75mM NaCl溶液によって溶出した溶液を凍結乾燥することによって、酸性キシロオリゴ糖粉末(全糖量2.1g、回収率21%)を得た。以下、この酸性キシロオリゴ糖をUX2とする。前述の測定方法により、UX2は平均重合度2.3、キシロース鎖長の上限と下限との差は2、酸性キシロオリゴ糖1分子あたりウロン酸残基を1つ含む糖組成化合物であった。
【0030】
次に、得られた酸性キシロオリゴ糖組成物を用いて行ったコラーゲン産生促進試験、細胞増殖阻害率測定試験、マウスを用いた安全性試験及び安定性試験の概要と結果をそれぞれ、実施例1、2及び3に示す。また、酸性キシロオリゴ糖組成物を含有するコラーゲン産生促進剤(化粧水及び軟膏)の処方と製造法を実施例4及び実施例5に示す。
【0031】
〈実施例1〉
コラーゲン産生促進試験を、正常ヒト皮膚線維芽細胞(クラボウ:NHDF)を用いて実施した。以下にその概要を示す。まず、正常ヒト皮膚線維芽細胞を培地(FBS(大日本製薬(株)製)10%を含むMEMダルベッコ培地(大日本製薬(株)製)5mlを入れたフラスコに播種し、前培養(CO2濃度:5%、37℃、以下培養と略す)した。6日後、常法に従い、トリプシン処理及び遠心分離により細胞を集めた。次に、得られた細胞を、12ウエルマイクロプレートに2×104個/ウエルになるように播種した。コンフルエントになるまで培養後、FBSを0.25%含むMEMダルベッコ培地(以下培地と略す)に交換して、組織培養用純水に溶解した酸性キシロオリゴ糖サンプルを培地に添加し、更に4日間培養した。培養後、培地を採取し、細胞のコラーゲン産生能力を測定した。細胞のコラーゲン産生能力は培地中に分泌されるI型プロコラーゲンのC末端ペプチド(Procollagen type IC-peptide、以下PIPと略す)量を測定することにより評価した。具体的には市販の「Procollagen type IC-peptide(PIP)EIA Kit」(宝酒造(株)、MK101)を用いて行った。また、プレート中の細胞は、常法に従い、トリプシン処理によってプレートから回収し、細胞数を測定した。コラーゲン産生促進作用はコラーゲン産生促進率により評価した。下記の計算式によりコラーゲン産生促進率を算出した。なお、酸性キシロオリゴ糖サンプル無添加による培養系をコントロールとした。
【0032】
コラーゲン産生促進率(%)=〔(a/b)/(c/d)〕×100
a:酸性キシロオリゴ糖サンプル添加培養におけるPIP量
b:酸性キシロオリゴ糖サンプル無添加培養におけるPIP量
c:酸性キシロオリゴ糖サンプル添加培養におけるプレート中の細胞数
d:酸性キシロオリゴ糖サンプル無添加培養におけるプレート中の細胞数
【0033】
酸性キシロオリゴ糖組成物のコラーゲン産生促進試験の結果を表1に示す。
【表1】
Figure 0004196605
【0034】
酸性キシロオリゴ糖組成物添加群では、コントロール群と比較して、正常ヒト皮膚線維芽細胞が産生するコラーゲン量が増加していることが認められた。
【0035】
〈実施例2〉
実施例1記載の方法で、正常ヒト皮膚線維芽細胞を培養し、培養終了後、アラマーブルー(旭テクノグラス(株)製)を用いた常法に従って、吸光度を測定(2波長測定:570nm−600nm)し、下記の計算式により細胞増殖阻害率を算出した。なお、細胞増殖阻害率は細胞毒性に相当する。細胞増殖阻害率がマイナス(−)の場合は、細胞増殖亢進又は細胞賦活活性があることを示す。酸性キシロオリゴ糖サンプル無添加による培養系をコントロールとした。
【0036】
細胞増殖阻害率(%)=100−100×〔(a−b)/(c−b)〕
a:酸性キシロオリゴ糖サンプル添加培養における吸光度
b:ブランク(培地のみ)の吸光度
c:酸性キシロオリゴ糖サンプル無添加培養における吸光度
【0037】
酸性キシロオリゴ糖組成物の細胞増殖阻害率測定試験の結果を表2に示す。
【表2】
Figure 0004196605
【0038】
表2より明らかなように、酸性キシロオリゴ糖組成物は、何れの濃度でも細胞毒性を示さなかった。
【0039】
〈実施例3〉
マウスを用いた安全性試験及び安定性試験は以下のように実施した。酸性キシロオリゴ糖組成物の2%溶液(50%エタノール)100μlをC3Hマウス(雄、6週齢、日本チャールズリバー(株)製)の背皮に約1ヶ月間連日塗布した結果、背皮の炎症等の副作用は観察されなかった。また、1ヶ月後の酸性キシロオリゴ糖組成物溶液のイオンクロマトグラムに於ける変化は認められなかった。これらのことは、酸性キシロオリゴ糖組成物の高い安全性と安定性を示す。
【0040】
〈実施例4〉
酸性キシロオリゴ糖組成物UX2を用いて、コラーゲン産生促進作用を付与した下記組成の化粧水を常法にて製造した。
処方:(1)1,3−ブチレングリコール、3.0% (2)ソルビトール、2.0% (3)エタノール、10.0% (4)カルボキシビニルポリマー1%水溶液、10.0% (5)UX2、1.0% (6)パラオキシ安息香酸メチル、0.1% (7)香料、0.1% (8)精製水、73.8%製造法:(6)(7)を(3)に溶解して(8)に加え、(1)(2)(5)を順次添加して混合した後、(4)を加え、混合し、均一化した。
【0041】
〈実施例5〉
酸性キシロオリゴ糖組成物UX2を用いて、コラーゲン産生促進作用を付与した下記組成の軟膏を常法にて製造した。
処方:(1)白色ワセリン、25.0% (2)ステアリルアルコール、15.0% (3)ラウリル硫酸ナトリウム、1.0% (4)パラオキシ安息香酸ブチル、0.1% (5)UX2、1.0% (6)精製水、57.9% 製造法:(1)〜(4)の油相成分を混合し、75℃に加熱して、溶解、均一化する。75℃に加熱した(6)に油相成分を添加して乳化し、冷却後40℃にて(5)を順次添加、混合した後、均一化した。
【0042】
【発明の効果】
本発明で得られる酸性キシロオリゴ糖組成物を含有したコラーゲン産生促進剤は、優れた薬理活性を有しており、ヒト皮膚の老化防止(シワの発生予防や弾力保持)に利用することができる。特に本発明のコラーゲン産生促進剤を化粧料、医薬部外品及び医薬品に配合することにより、細胞外マトリックスの一つであるコラーゲン産生を促進し、皮膚の水分保持能力や弾力性を保持してシワの発生を防ぐ抗シワ剤として有用である。
また、工業的に大量に安価に製造することができ、同一の製品が安定して生産でき、保存性が良いという利点がある。

Claims (4)

  1. キシロオリゴ糖分子中にウロン酸残基を有する酸性キシロオリゴ糖を有効成分とするコラーゲン産生成促進剤。
  2. 該酸性キシロオリゴ糖が、キシロースの重合度が異なるオリゴ糖の混合組成物であり、平均重合度が2.0〜10.0であることを特徴とする請求項1に記載のコラーゲン産生促進剤。
  3. 前記酸性キシロオリゴ糖が、「リグノセルロース材料を酵素的及び/又は物理化学的に処理してキシロオリゴ糖成分とリグニン成分の複合体を得る工程、前記工程で得られた複合体からリグニン様物質を分離するために希酸処理し、酸性キシロオリゴ糖と中性キシロオリゴ糖を含む希酸処理液を得る工程、そして、前記工程により得られた希酸処理液から、酸性キシロオリゴ糖以外の成分を除去するために、限外濾過工程、脱色工程、吸着工程、溶出工程を経て得られたもの」であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコラーゲン産生促進剤。
  4. ウロン酸がグルクロン酸もしくは4−O−メチル−グルクロン酸であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコラーゲン産生促進剤。
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