JP3718338B2 - 分解性記録シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自然環境中で崩壊する特徴を持ち、透明性に優れたシートを提供するものである。特に、インクジェット記録特性の優れた分解性記録シートおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
親水性高分子化合物を主成分とする記録層を設けた記録シートは被記録材、特にOHP用透明記録材として、現在使用されている。
最近ではまた、記録用インクには安全性の観点から、水やアルコールを主成分とする水溶性インクが用いられることが多くなっている。特に、インクの小滴を飛翔させ、記録材に付着させて記録を行うインクジェット記録法では、その高速印字適性、多色印刷適性の観点からも、水溶性インクが用いられることが多い。これらの要求に応えるべく、最近ではプラスチックシート上に、水溶性インクを吸収し、定着させることができる受容層として、親水性高分子化合物を主成分とする記録層を設けた記録シートが用いられている。
【0003】
ところで、記録層を支持する基材としては、物理的に安定したポリエチレンやポリプロピレン、芳香族ポリエステル等の合成ポリマーから製造されるものが多い。特に、透明性が必要な場合は、2軸配向ポリプロピレン(OPP)、2軸配向芳香族ポリエステル(OPET)等のシートが用いられている。しかし、これらのプラスチックシートは、自然環境中では崩壊することなく、埋立処理しても地中で減量することはない。このことは、埋立地の延命化を妨げる一因となっている。
【0004】
一方、ここ数年活発に研究されている生分解性重合体からなるシートは、上記問題を解決するものと期待されている。なかでも、脂肪族ポリエステルは、生分解した後、無毒で安全な低分子化合物になることから、特に研究が盛んである。
生分解性脂肪族ポリエステルとしては、環状ラクトン類を開環重合したポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成されるポリエステル、脂肪族多官能アルコールと脂肪族多官能カルボン酸を縮合して得られるポリエステル等が挙げられる。
【0005】
さらに具体的に、環状ラクトン類を開環重合して得られるポリエステルとしては、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ−δ−バレロラクトン、ポリ−β−メチル−δ−バレロラクトン等が代表的に挙げられる。合成系脂肪族ポリエステルとしては、環状酸無水物とオキシラン類、例えば、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等との共重合体が挙げられる。菌体内で生合成されるポリエステルとしては、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシブチレート/バリレート等が挙げられる。また、脂肪族多官能アルコールと脂肪族多官能カルボン酸を縮合して得られるポリエステルとしては、コハク酸またはアジピン酸、あるいはこれら両者からなるジカルボン酸成分と、エチレングリコールまたはブタンジオール、あるいはこれら両者からなるジオール成分を主な構造単位とする脂肪族ポリエステルが代表的に挙げられる。さらに異なるポリエステルとして、酸成分にスベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の化合物、または、これらの無水物や誘導体を縮合して得られるポリエステル、アルコール成分に、ヘキサンジオール、オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の化合物、およびこれらの誘導体を縮合して得られるポリエステル、また、溶融粘度の向上のためポリマー中に分岐を設ける目的で、3官能以上のカルボン酸、アルコールあるいはヒドロキシカルボン酸を極少量共重合して得られるポリエステルが挙げられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの脂肪酸ポリエステルはガラス転移点が室温以下で、結晶性が高く、室温では結晶状態にある。これらの樹脂は、溶融押出した後、急冷しても球晶の成長を抑えることは困難で、不透明化し、透明シートとしては適さない。
【0007】
例えば、特開平6−239014号公報は、上記に示される種々の生分解材料を用いた記録用基材について開示しているが、いずれにおいても透明性に難がある。特に、OHP用記録シートとして用いる場合は少なくとも、直線光線透過率が70%以上必要であり、これを下回るとOHPで投影したとき鮮明な像を得ることができない。さらに、現在広く用いられているOPETシートと比べると、明らかに腰(弾性率)が不足し、これを補うには厚みを増さざるを得ないため、さらに透明性が低下する結果を招く。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記問題を解決するため、水溶性インク受容層(記録層)と生分解性の基材とからなり、全体として崩壊性で直線光線透過率の高い記録材、特にOHP用記録材およびその製造方法を提供するものである。
【0009】
本発明の要旨の第1は、下記に示す特定のポリ乳酸系重合体からなる基材上に、下記一般式(1)で示されるポリビニルアルコール系重合体の親水性高分子化合物を主成分とする記録層を備え、直線光線透過率が70%以上であることを特徴とする分解性記録シートにある。
【0010】
本発明で使用するポリ乳酸系重合体は、L−乳酸単位:D−乳酸単位の割合が100:0〜94:6もしくは6:94〜0:100のポリ乳酸系重合体である。
【0011】
【化1】
【0012】
上記一般式中、mおよびnは、次の関係式:
m+n≧150、
88≧(m/(m+n))×100≧30、
を満たす0または1以上の整数である。
【0013】
第2は、上記基材が、2軸配向ポリ乳酸系重合体シートであることを特徴とする要旨1記載の分解性記録シートである。
【0014】
第4は、ポリ乳酸系重合体からなる無配向シートもしくは1軸配向シートに、上記一般式(1)で示されるポリビニルアルコール系重合体の溶液を塗布した後、該シートを2軸配向させて、熱処理することを特徴とする要旨第3の分解性記録シートの製造方法であって、
ポリビニルアルコール系重合体の溶液を、無機粒子などの他の配合物を含有させずに、20℃粘度を50〜10,000poiseの範囲に調整して塗布することによって分解性記録シートのOHP適性を高めた製造方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の詳細について説明する。
本発明シートにおいて、基材を構成するポリ乳酸系重合体としては、ポリ乳酸が最も一般的なものである。ガラス転移点が室温以上であるポリ乳酸は、成形方法にもよるが、透明な基材シートを得ることのできる分解性重合体である。
ポリ乳酸の構造単位には、2種類の光学異性体のL−乳酸単位およびD−乳酸単位があり、これら2種の構造単位の割合で結晶性が異なる。例えば、L−乳酸単位とD−乳酸単位の割合がおおよそ80:20〜20:80のランダム共重合体では結晶性を持たず、ガラス転移点60℃付近で軟化する透明完全非晶性重合体となる。一方、L−乳酸単位のみ、またはD−乳酸単位のみからなる単独重合体はガラス転移点は同じく60℃程度であるが、180℃以上の融点を有する半結晶性重合体となる。この半結晶性ポリ乳酸は、溶融押出した後、直ちに急冷することで、透明性の優れた非晶性の材料になる。
また、透明なポリ乳酸材料を得る、さらに好ましい方法は、ポリ乳酸を、1軸延伸もしくは2軸延伸して分子を配向させた後、熱処理することにある。これによって、可視光線の波長以上の大きさを持つ球晶の成長を抑制しながら、結晶化させることができる。
【0016】
また、ポリ乳酸系重合体は、上記のポリ乳酸だけでなく、必要なポリ乳酸の性質を損なわない程度に、他のヒドロキシカルボン酸等を共重合したものであってもよい。さらに、少量の鎖延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を使用して分子量を増大したものでもよい。重量平均分子量は6万から70万の範囲のものが好ましい。この範囲を下回る場合は、実用物性がほとんど発現されず、上回る場合には、溶融粘度が高すぎ成形加工性に劣る。
【0017】
ポリ乳酸の製造方法は特に制限はなく、縮重合法、開環重合法等、公知の諸方法を採用することができる。例えば、縮重合法では、L−乳酸、D−乳酸またはこれらの混合物を、直接脱水縮重合し任意の組成を持つポリ乳酸を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状2量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用い、選ばれた触媒の存在下で重合してポリ乳酸を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸の2量体であるL−ラクチド、D−乳酸の2量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを適切な比率で混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を持つポリ乳酸を得ることができる。特に、ポリ乳酸を2軸延伸した後、熱処理することで透明性を維持しつつ結晶化させ、熱収縮性を抑制することができる。この場合、その結晶性を考慮すると、重合体中のL−乳酸単位とD−乳酸単位の割合が、100:0〜94:6もしくは6:94〜0:100の範囲内であることが好ましい。この範囲外では、十分に熱収縮性を抑制できるほどの結晶化度が得られない。
【0018】
基材シートの製膜には、公知の任意の方法を採用することができる。例えば、上記のポリ乳酸系重合体に、必要に応じて滑剤や帯電防止剤等の添加剤を混合した重合体組成物を、T−ダイより溶融押出して、回転するキャスティングドラムで引き取りながら急冷して、固化させる方法でもよいし、丸ダイより円筒状に溶融ポリマーを引き上げ、空冷しながら、同時に風船状に膨らまして製膜するインフレーション法でもよい。一般には、後者の方が、冷却速度が遅くなり、結晶化しやすく、シートの透明性には不利な条件となるが、空気の代わりに水を用いて、冷却効率をあげることもできる。
【0019】
また、2軸配向した基材シートは、例えば上記の方法で製膜されたシートを、既存のロール式、テンター式のフラット延伸機や、チューブラー式延伸機等を用いて、延伸することによって得られる。延伸温度はポリ乳酸系重合体のガラス転移温度から結晶化温度の範囲内で、延伸倍率は少なくとも1軸方向に6倍以下の範囲内で、シートの配向度を考慮しながらそれぞれ選択することができる。熱収縮を極力抑えたいときは、結晶性を有するポリ乳酸系重合体を使用し、その2軸延伸後のシートの結晶化温度から融点までの範囲内で、シートの緊張状態を保持しながら数秒以上熱処理することで得られる。
【0020】
本発明シートにおいて、水溶性インク受容層(記録層)の主成分となる親水性高分子化合物は、水に対して親和性を持つ種々の化合物から適切なものが選ばれる。親水性化合物の多くは、水に溶けやすい性質を持つので、水溶性インクがこの記録層に載ると、定着する前に流れ出したり、ぼやけたりする問題も含む。インクの定着性は、そのインクが記録層に速やかに吸収されることが好ましく、逆にインクに記録層成分が吸収されてしまうものは定着性が悪い。したがって、記録層は分子量の大きな成分すなわち高分子化合物が好ましく、少量の水では容易に基材から剥がれないことが重要である。
【0021】
本発明でいう「親水性高分子化合物を主成分とする記録層」とは、記録層を構成する成分のうち、親水性高分子化合物が重量比でもっとも多いことをさし、好ましくは50%以上である。記録層に含まれる化合物は上述した記録層に望まれる特性を阻害しないものであれば、特に限定されることはない。例えば、無機または有機のフィラー、界面活性剤、増粘剤等を含有することができる。
【0022】
このような点を考慮して選択される、親水性高分子化合物(親水性樹脂)は、天然に存在するもの、合成されたものがある。具体的には、天然の親水性高分子化合物としては、多糖類のヒアルロン酸、アガロース、たんぱく質類のコラーゲン等が挙げられる。また、天然の親水性高分子化合物を変成したものとしては、でんぷんやセルロースに、アクリルニトリル、アクリル酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミド等をグラフト重合したもの等が挙げられる。合成高分子化合物としては、ポリビニルアルコール系重合体、ポリアクリル酸ナトリウムやポリヒドロキシエチルメタクリレート等のアクリル系重合体、ポリエチレングリコールをはじめとするポリエーテル系重合体、さらには無水マレイン酸系重合体やビニルピロリドン系重合体等が挙げられる。
【0023】
上記の親水性高分子化合物の中で、最も好ましいのはポリビニルアルコール系重合体であり、OHP記録用シートとして、透明性、インクの定着性そして分解性の点で、特に優れている。また、親水性高分子化合物の多くは、水に溶ける性質を持ち、いわば崩壊性材料であるが、中でもポリビニルアルコール系重合体は、ケン化率が高いものは生分解性材料で、環境中で微生物により水と炭酸ガスに分解される。さらに、ポリビニルアルコール系重合体は、熱処理することで結晶化度が増加し、物理的架橋構造を持つこととなる。このことは、水による溶け出しを抑制し、インクの定着を良くする。
【0024】
すなわち、分解性記録シートに使用する親水性高分子化合物としては、下記一般式(1)で示されるポリビニルアルコール系重合体であることが好ましい。
【0025】
【化1】
【0026】
[上記式中、mおよびnは、次の関係式:m+n≧150、100≧100m/(m+n)≧30を満たす、0または1以上の整数である。]
【0027】
ポリビニルアルコール系重合体は、前述の水溶性インクの定着性の観点から、重合度(上記一般式(1)中、m+n)が、少なくとも150であることが好ましい。また、ケン化率、すなわちケン化してできる水酸基の割合(上記一般式(1)中、100m/(m+n))は、30%以上であることが好ましく、より好ましくは40%以上であることが好ましい。ケン化率がこれより小さい場合、水との親和性が小さくなり、水溶性インクの定着性の劣化する場合がある。一方、ケン化率があまりに大きいと、水酸基の割合の増加にともない、分子内、分子間での水素結合が増加することによって、結晶化度を増大させ、相対的に分子と水との親和性は低下し、水溶性インクの吸収性を阻害する場合もある。これらを考慮すると、ケン化率は85%以下であることが、より好ましい。
【0028】
本発明シートの製造方法としては、ポリ乳酸系重合体からなる基材上に、親水性高分子化合物を主成分とする記録層を設けることのできるものであれば特に制限はなく、種々の公知の積層方法が採用できる。なかでも、次のような方法が重要である。
▲1▼ 親水性高分子化合物(ポリビニルアルコール系重合体)フィルムを、接着剤を介して、基材シートと貼り合わせる方法、
▲2▼ 親水性高分子化合物(ポリビニルアルコール系重合体)を、水溶液やアルコール溶液等にして、基材シートに塗布した後、乾燥する方法、
▲3▼ ▲2▼の工程の後、同時に延伸・熱処理する方法。
【0029】
ポリ乳酸系重合体のガラス転移点は60℃程度で、これ以上の温度では、シートは軟化し、ゴム状態を経て流動する場合がある。2軸配向ポリ乳酸系重合体シートでは、この温度を越えても結晶化しているため融点以下であればゴム状になることはないが、それでも弾性率の低下は免れない。特に100℃以上ではシートの収縮が大きく、寸法安定性に難がある。したがって、ポリ乳酸系重合体シートのこれらの欠点を考慮して積層する必要がある。
【0030】
積層方法▲1▼は、いわゆるウェットラミ方式でも、ドライラミ方式でも行うことができる。ラミネート時の接着剤としては、ビニル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系等が用いられるが、接着剤も生分解性にする場合には、デンプン、アミロース、アミロペクチン等の多糖類や、膠、ゼラチン、カゼイン、ゼイン、コラーゲン等の蛋白質類やポリペプチド類、未加硫天然ゴム、あるいは脂肪族ポリエステルやその変成体等が好ましい。通常、ラミネーターで貼り合わせを行う場合には、貼り合わせ前にシートを予熱し、貼り合わせ後にも溶剤の乾燥と接着剤の硬化を目的にして、エージングすることが多いが、シートが軟化して平面性を損なったり、収縮したりしないように、予熱やエージングの加熱温度は80℃以下にする必要がある。また、記録層をごく薄いものにする場合、ラミネート時に巻き出される親水性重合体フィルムの強度や腰がないものでは、張力がかかるとフィルムが破断したり、伸長して精密にラミネートできない場合があるので注意を要する。
【0031】
積層方法▲2▼では、ポリ乳酸系重合体シート、好ましくは2軸配向シートに、親水性高分子化合物溶液を、ノズルから噴霧して塗布したり、あるいはローラーで塗布した後、シートを乾燥する。この時の乾燥温度は、80℃を越えないことが好ましい。水溶液の場合、80℃以下の乾燥では長時間を要し、短時間に仕上げるためには減圧乾燥する必要があり、工程上不利である。乾燥を容易にする点では、アルコール等の低沸点溶剤を用いるのが好ましい。
【0032】
また、▲3▼の方法は、ポリ乳酸系重合体シート、好ましくは1軸配向(縦延伸)シートに、親水性高分子化合物溶液を塗布し、延伸(横延伸)・熱処理して、ポリ乳酸系重合体シートを2軸配向させながら、溶剤を揮発させる方法である。特に、親水性高分子化合物がポリビニルアルコール系重合体である場合、溶剤の揮発と同時に、ポリビニルアルコール系重合体の結晶化を促進させることもできる。この方法では、特にテンター式のフラット2軸延伸装置を用い、先に詳述したポリ乳酸系重合体の延伸・熱処理条件で行うことができる。
【0033】
例えば、逐次2軸延伸シート製造の好ましい態様では、押出して作製した実質的に無配向のポリ乳酸系重合体シートを、まず、流れ方向(縦方向)に延伸して1軸配向シートを得、この1軸配向(縦延伸)シートにポリビニルアルコール系重合体溶液をロール等を用いて均一に塗布する。続いて、該シートをテンターに導き横延伸を行い、次いで熱処理を行い熱固定シートを得ることができる。
【0034】
塗布液(ポリビニルアルコール系重合体溶液)の溶剤が水である場合、延伸工程では、ほとんど乾燥されることはなく、塗布液は基材シートの延伸に追随して延展することができる。熱処理工程は、いわゆる熱固定を目的とする場合は、少なくとも100℃以上の温度で行い、この間に水分を蒸発させ、塗布液の乾燥を行うことができる。一方、低沸点溶剤(メタノール、エタノール等)を用いる場合は、延伸工程で溶剤が揮発する恐れがあり、延伸が完了する前に乾燥が完了しないように注意する必要がある。いずれの溶剤を使用する場合においても、溶剤の揮発性と延伸性を考慮して、塗布液の重合体濃度を設定することが肝要である。特に、塗布性と延伸性を考慮すると、塗布液の20℃における粘度を、50〜10,000poiseの範囲内に設定しておくことが好ましい。この範囲にあると基材シートの延伸に追随しやすく、均一な厚みに塗布することができる。この方法は、製膜後に改めて貼り合わせ等の工程を採る必要がないので、シートの熱変形を考慮する必要がなく、また安価に製造できる利点もある。
【0035】
本発明シートにおいては、直線光線透過率が70%以上であることが必要であり、これを下回るとOHPで投影したとき鮮明な像を得ることができない。しかして、ここで直線光線透過率とは、入射光として、試料シート表面に対して垂直方向の平行光線を使用した場合の、入射光量に対する透過光量の割合を、JISK 7105に準拠して測定したものである。一般に光線透過率は、直線透過率と拡散透過率にわけられ、これらを合わせて全透過率という。このうち、拡散透過は入射光に対して、通常の媒体の屈折率に依存せずに透過することである。したがって、全体に透明であっても拡散透過率の高いシートでは、OHPで投影しても、画像がぼやけるなどの問題が生じ、全体に不鮮明感を得ることになる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、各例で得られる記録シートの物性の測定、評価は次に示すような条件で行った。
【0037】
(1)直線光線透過率
JIS K 7105に準拠して、測定を行った。値が大きいほど透明性に優れていることを示す。
【0038】
(2)インクの流れ出し
インクジェット式プリンターを使用し、黒色インクで印字した。目視により観察して、記録シート表面上のインクの流れ出しの有無を判定した。インクが吸収され切らずに、インクの流れが起こったものを×、インクの流れはないものの文字がぼやけているものについては△、流れやぼやけのない良好なものを○と表記した。
【0039】
(3)OHP適性
オーバーヘッドプロジェクター(OHP)を用い、(2)で印字した記録画像をスクリーンに投影し、目視観察でOHP適性を判定した。印字されていない箇所が明るく、印字とのバランスにおいて鮮明で見やすいものを○、印字されていない箇所が暗く、印字部が鮮明に写し出されないものを×と表記した。
【0040】
(4)土中埋設分解性テスト
生分解性プラスチック研究会で行われた試験方法に準拠して行った。すなわち、日当たりがよく、やや水はけの悪い草地を10cm掘り起こし、次いで、掘り起こした土を1cmのふるいにかけながら、掘り起こしたところの深さが5cmになるまでもどした。その上に、サンプルを置き、再度ふるいにかけた土をもどしてサンプルが完全に埋まるようにした。3年間放置した後、掘り起こしサンプルの外観の変化を観察した。
【0041】
(実験例1)
厚みが100μmである透明なOPETシート(ダイアホイルヘキスト(株)製、商品名:ダイアホイル/H500タイプ(表面易接着処理品))に、ケン化率約80%、重合度500のポリビニルアルコール系重合体の30重量%水溶液(粘度600poise(20℃))を乾燥後の厚みが3μmになるようにメイヤーバーで塗布した後、105℃のオーブン中に60分乾燥した。得られた記録シートの評価を表1に示す。
なお、このシートの土中分解性を調べた結果、ポリビニルアルコール系重合体層(以下、PVA層と略称する。)は崩壊・消失していたが、基材は特に変化はなかった。
【0042】
(実験例2)
ポリ乳酸((株)島津製作所製、商品名:ラクティ1000、重量平均分子量約20万、重合体中のL−乳酸単位とD−乳酸単位の割合が99:1)を30mmφ小型単軸押出機を用い、210℃でTダイより溶融押出した後、表面温度57℃にしたキャスティングドラムで急冷しながら引き取り、厚み100μmの透明な無延伸シートを作製した。このシートをエネルギー25W/m2 /分のコロナ処理を行った後、ポリウレタン系溶剤型接着剤(武田薬品工業(株)製、タケラックA−970/タケネートA−19=15/1)をおおよそ1μmとなるように塗布し、その上に、ケン化率約99%、厚み12μmのポリビニルアルコールフィルム(商品名:ボブロン/EX、2軸延伸フィルム、日合フィルム(株)製)をハンドローラーで圧着しながら貼り合わせた。貼り合わせた記録シートの接着剤の溶剤成分の除去を目的に乾燥を行った。乾燥温度は60℃で60分間行い、さらに、40℃で2日間エージングして表1に示す記録シートを得た。
土中での分解性を調べた結果、PVA層は崩壊・消失していた。また、基材のポリ乳酸は白化し、表面があれ、分解が進行している様子がうかがえた。
【0043】
(実験例3)
ポリ乳酸((株)島津製作所製、商品名:ラクティ1000、重量平均分子量約20万、重合体中のL−乳酸単位とD−乳酸単位の割合が99:1)を60mmφ単軸押出機にて、210℃でTダイより押出し、キャスティングロールにて急冷し、厚み600μmの未延伸シートを得た。
この未延伸シートを、長手方向に75℃で2.3倍にロール延伸、次いで、幅方向にテンターで70℃で2.5倍に延伸した。引き続き、熱処理をテンターの熱処理ゾーンで温度130℃、処理時間60秒で行って約100μmの透明な2軸配向ポリ乳酸シートを得た。
【0044】
この2軸配向シートを、エネルギー25W/m2 /分のコロナ表面処理を行った後、ケン化率約80%、重合度500のポリビニルアルコール系重合体の30重量%水溶液(粘度600poise(20℃))を乾燥後の厚みが3μmになるようにメイヤーバーで塗布した後、70℃のオーブン中に30分間乾燥し、表1に示す透明な記録シートを得た。
土中埋設分解性テストでは、PVA層は崩壊・消失し、基材である2軸配向ポリ乳酸シートは著しい崩壊はないものの、白い斑点模様がみられた。わずかであるが分解が進行しているようにみられる。
【0045】
(実験例4)
実験例3において、ケン化率約90%、重合度およそ1700のポリビニルアルコール系重合体の30重量%メタノール溶液(粘度約2500poise(20℃))を用いた以外は、同様にして表1に示す透明な記録シートを得た。
【0046】
(実験例5)
実験例3と同様の方法で2軸配向ポリ乳酸シートを製造する工程において、原シートを流れ方向に延伸(縦1軸延伸)した後、メイヤーバーコート方式で片面にポリビニルアルコール系重合体水溶液を均一に塗布した。使用したポリビニルアルコール系重合体のケン化率は約80%、重合度1700、水溶液の濃度を10重量%(粘度60poise(20℃))に調整した。塗布したシートはテンター内でそのまま横延伸・熱処理して2軸配向シートを得た。得られたシートの評価を表1に示す。
【0047】
(実験例6、7および8)
実験例5において、ポリビニルアルコール系重合体が重合度1750、ケン化率88%でその水溶液の濃度が20重量%(粘度4500poise(20℃))のもの、重合度500、ケン化率88%、水溶液濃度15重量%(粘度15poise(20℃))のもの、および重合度2400、ケン化率88%、濃度20重量%(粘度20000poise(20℃))のものを使用した以外は同様にして記録シートを得た。得られたそれぞれの記録シートを表1に示す。
【0048】
(実験例9)
菌体内で生合成されたポリヒドロキシブチレート/バリレート(日本モンサント販売、商品名:バイオポールD610G)を30mmφ小型単軸押出機を用い、190℃でTダイより溶融押出した後、表面温度30℃にしたキャスティングドラムで急冷しながら引き取り、厚み100μmの無延伸シートを作製した。2軸配向ポリ乳酸シートを用いる代わりに、エネルギー20W/m2 /分でコロナ処理したこのシートを用いた以外は、実験例4と同様にして表1に示す記録シートを得た。
【0049】
(実験例10)
ポリヒドロキシブチレート/バリレートの代わりに、合成系脂肪族ポリエステルで主に1,4−ブタンジオールとコハク酸の縮合物で構成される、ポリブチレンサクシネート(昭和高分子(株)製、ビオノーレ#1001)を使用した以外は、実験例9と同様にして表1に示す記録シートを得た。
【0050】
【表1】
【0051】
本発明の実施例である、実験例2〜6の記録シートは、直線光線透過率が高く、OHP特性に優れている。なかでも、実験例3、5のシートは、インクの流れ出しがなく、水溶性インクを用いた印字適性にも秀でている。また、実験例7および8では、むらの発生、厚みの点で不具合があり、外観の良好なシートを得ることはできなかった。また、比較例として挙げた、ポリ乳酸系重合体でない生分解性樹脂を基材とした実験例9および10のシートは、分解性に優れてはいるが直線光線透過率が低く、OHP適性がないことがわかる。実験例1のシートは、分解性がない。
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、L−乳酸単位:D−乳酸単位の割合が特定割合のポリ乳酸系重合体からなる分解性の基材と本発明で規定した特定の親水性高分子化合物を主成分とする記録層とからなるので、全体として崩壊性で直線光線透過率が高く、記録層における水溶性インクの定着性に優れかつ十分に熱収縮性を抑制できるほどの結晶化度が得られる記録シート、特にOHP用記録材として有用な記録シートを得ることができる。
Claims (1)
- L−乳酸単位:D−乳酸単位の割合が100:0〜94:6もしくは6:94〜0:100のポリ乳酸系重合体からなる無配向シートもしくは1軸配向シートに、下記一般式(1)で示され、重合度すなわち下記一般式(1)におけるm+n値が150以上であって、ケン化率すなわち下記一般式(1)における(m/(m+n))×100値が30%以上88%以下であるポリビニルアルコール系重合体の溶液を塗布した後、該シートを2軸配向させ、熱処理して、前記のポリ乳酸系重合体からなる2軸配向ポリ乳酸系重合体シート上に下記一般式(1)で示されるポリビニルアルコール系重合体の親水性高分子化合物を主成分とする記録層を備え、直線光線透過率が70%以上である分解性記録シートを製造する分解性記録シートの製造方法であって、
ポリビニルアルコール系重合体の溶液を、無機粒子などの他の配合物を含有させずに、20℃粘度を50〜10,000poiseの範囲に調整して塗布することによって分解性記録シートのOHP適性を高めることを特徴とする分解性記録シートの製造方法。
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JP02787598A JP3718338B2 (ja) | 1998-01-27 | 1998-01-27 | 分解性記録シートの製造方法 |
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