JP3718021B2 - オール・シーズン乗用車用空気入りラジアル・タイヤ - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は空気入りタイヤに関するもので、特に、オール・シーズン乗用車用空気入りラジアル・タイヤに関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来の典型的なオール・シーズン乗用車用空気入りラジアル・タイヤは、図２に示すように、周方向に直線状に延びる複数本の周方向溝と、周方向に対して４５度程度の傾斜角度で延びる傾斜溝とによって、タイヤ軸方向および周方向に間隔を置いて多数のブロックが形成されたトレッド・パターンを備えていた。
【０００３】
オール・シーズン乗用車用空気入りラジアル・タイヤには、濡れた路面を走行したときの排水性能、乾燥した路面での操縦安定性能、雪上を走行したときの制動性能、発進性能、直進性能およびコーナリング性能などの雪上性能ならびに耐偏摩耗性能などの種々の性能が要求される。最近、乾燥した路面での操縦安定性能、雪上性能および耐偏摩耗性能などを著しく犠牲にしないで、濡れた路面を走行したときの排水性能に優れたオール・シーズン乗用車用空気入りラジアル・タイヤの開発が要求されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来のオール・シーズン乗用車用空気入りラジアル・タイヤの諸性能、特に、乾燥した路面での操縦安定性能、雪上性能および耐偏摩耗性能を低下することなく、濡れた路面を走行したときの排水性能に優れたオール・シーズン乗用車用空気入りラジアル・タイヤを提供することである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に間隔を置いて配置された多数の傾斜溝によって、タイヤ周方向に間隔を置いて多数のブロックが形成されているパターンをトレッドに備え、パターン・センターにタイヤ周方向に延びる少なくとも１本の中央周方向溝が配置され、トレッド幅の３０乃至６０％程度の幅を有する中央領域と該中央領域の両側に位置する両側領域とでトレッドが形成されている、回転方向の指定のない空気入りタイヤにおいて、（１）該傾斜溝は、周方向に対して比較的小さな傾斜角度で延びる急傾斜溝と、周方向に対して比較的大きな傾斜角度で延びる緩傾斜溝とより成り、（２）該急傾斜溝はトレッドの該中央領域に配置され該中央周方向溝に開口し、該緩傾斜溝はトレッドの該両側領域に配置されトレッド端に開口し、（３）該緩傾斜溝の周方向間隔は該急傾斜溝の周方向間隔の１／２以下となるように、該緩傾斜溝は該急傾斜溝の本数の２倍以上配置され、（４）該ブロックには、各ブロック毎に少なくとも１本のサイプが設けられ、（５）該中央周方向溝と該急傾斜溝とによって区画される該ブロックの表面は、先細先端部から太幅部に向けて徐々に浅くなるように、先細先端部から長手方向に１０乃至３０ｍｍに亙って面取りされ、（６）トレッド端からトレッド幅の１／４程度タイヤ軸方向内側に入った個所に、タイヤ周方向に延びる側部周方向溝が配置され、（７）該緩傾斜溝は該側部周方向溝に開口し、（８）該ブロックに設けられた該サイプは、トレッドの該両側領域では該緩傾斜溝と平行または実質上平行に延び、該側部周方向溝に開口し、トレッドの該中央領域では該急傾斜溝に４５度以上の交差角度で開口していることを特徴とする空気入オール・シーズン乗用車用空気入りラジアル・タイヤである。
【０００６】
上記目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤでは、該急傾斜溝は周方向に対して１０乃至５０度の傾斜角度で延びていること、および／または該緩傾斜溝は周方向に対して６０乃至９０度の傾斜角度で延びていることが好ましい。
【０００７】
上記目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤでは、面取りされている該ブロックの表面は、曲率半径１０乃至１００ｍｍの曲面で形成されていること、および／または該急傾斜溝が該緩傾斜溝に連通していることが好ましい。
【０００８】
本発明の空気入りタイヤは上記のような構成であり、特に、パターン・センターにタイヤ周方向に延びる少なくとも１本の中央周方向溝が配置され、トレッドの中央領域に配置され中央周方向溝に開口している急傾斜溝が、トレッドの両側領域に配置されトレッド端に開口している緩傾斜溝に連通しているので、パターン・センターからトレッド端に向けた排水作用がスムースに行われ、濡れた路面を走行したときの排水性能に優れた空気入りタイヤが得られる。さらに、本発明の空気入りタイヤは上記のように、中央周方向溝と急傾斜溝とによって区画されるブロックの表面は、先細先端部から太幅部に向けて徐々に浅くなるように、先細先端部から長手方向に１０乃至３０ｍｍに亙って面取りされているので、水流の分岐がスムースに行われ乱流による気泡発生が抑制または防止され、タイヤの排水性能が向上する。さらに、この面取りされているブロックの表面は、好ましくは、曲率半径１０乃至１００ｍｍの曲面で形成されているので、水の抵抗を効率的に減ずることができる。なお、上記のように、パターン・センターにタイヤ周方向に延びる少なくとも１本の中央周方向溝が配置されこの中央周方向溝に急傾斜溝が開口していると、濡れた路面を走行したときの排水性能に優れた空気入りタイヤが得られるが、中央周方向溝と急傾斜溝とによって区画されるブロックに先細先端部が形成されるので、ブロックの剛性不足により乾燥した路面での操縦安定性能や耐偏摩耗性能が極端に低下する傾向がある。本発明の空気入りタイヤは上記のように、中央周方向溝と急傾斜溝とによって区画されるブロックの表面は、先細先端部から太幅部に向けて徐々に浅くなるように、先細先端部から長手方向に１０乃至３０ｍｍに亙って面取りされているので、ブロック剛性が確保され、乾燥した路面での操縦安定性能や耐偏摩耗性能が極端に低下することはない。さらに、この面取りされているブロックの表面は、好ましくは、曲率半径１０乃至１００ｍｍの曲面で形成されているので、クラッシングを抑えることができ高い接地圧が得られ操縦安定性能が確保される。
【０００９】
本発明の空気入りタイヤは上記のような構成であり、特に緩傾斜溝の周方向間隔は急傾斜溝の周方向間隔の１／２以下となるように、緩傾斜溝は急傾斜溝の本数の２倍以上配置されているので、急傾斜溝が配置されたトレッドの中央領域では急傾斜溝の周方向間隔が相対的に大きいのでブロック剛性が確保され、一方、緩傾斜溝が配置されたトレッドの両側領域では緩傾斜溝の周方向間隔が相対的に小さいので濡れた路面を走行したときの排水性能、パターン・ノイズ抑制のためのピッチ・バリエーション効果および耐偏摩耗（ヒールアンドトー摩耗）性能の優れたタイヤが得られるわけである。
【００１０】
本発明の空気入りタイヤは上記のような構成であり、特に各ブロック毎に少なくとも１本のサイプが設けられているので、オール・シーズン用タイヤとしての雪上性能および濡れた路面を走行したときのグリップ性能が確保される。本発明の空気入りタイヤでは、ブロックに設けられたサイプの延びる方向が、トレッドの中央領域と両側領域とでは異なる方向であるので、トレッド・パターンの持つブロック剛性分布の異方性を打ち消して、ハンドル取られや偏摩耗（ダイアゴナル摩耗）を抑制できる。本発明の空気入りタイヤでは、ブロックに設けられた該サイプは、トレッドの中央領域では急傾斜溝に４５度以上の交差角度で開口しているので、耐偏摩耗性能に優れたタイヤが得られる。
【００１１】
【発明の実施の形態】
本発明に従う実施例について図面を参照して説明すると、図１は本発明に従う実施例のタイヤのトレッド・パターンの一部拡大正面図であって、タイヤ・サイズは２０５／６０Ｒ１５で、トレッド幅ＴＷは１６０ｍｍである。図１に示す本発明に基づく実施例１のタイヤは、トレッド幅ＴＷの４５％の幅を有する中央領域ＴＣとこの中央領域ＴＣの両側に位置する両側領域ＴＳとでトレッドが形成され、タイヤ周方向に間隔を置いて配置された多数の傾斜溝１、２によって、タイヤ周方向に間隔を置いて多数のブロック３が形成されているパターンをトレッドに備え、パターン・センターにタイヤ周方向に延びる２本の中央周方向溝４が配置されている。傾斜溝１、２は、周方向に対して比較的小さな傾斜角度の２０乃至４０度で延びる急傾斜溝１と、周方向に対して比較的大きな傾斜角度の７０乃至８０度で延びる緩傾斜溝２とより成る。急傾斜溝１はトレッドの中央領域ＴＣに配置され中央周方向溝に開口し、緩傾斜溝２はトレッドの両側領域ＴＳに配置されトレッド端ＴＥに開口している。緩傾斜溝２の周方向間隔は急傾斜溝１の周方向間隔の１／２となるように、緩傾斜溝２は急傾斜溝１の本数の２倍配置されている。急傾斜溝１は緩傾斜溝２に連通している。緩傾斜溝２は急傾斜溝１の本数の２倍配置されているので、急傾斜溝１は全数緩傾斜溝２に連通しているが、緩傾斜溝２は半数だけ急傾斜溝１に連通している。トレッド端ＴＥからトレッド幅ＴＷの１／４程度タイヤ軸方向内側に入った個所に、タイヤ周方向に延びる側部周方向溝５が配置され、緩傾斜溝２はこの側部周方向溝５に開口している。ブロック３には各ブロック毎に少なくとも１本のサイプ６が設けられ、ブロック３に設けられたサイプ６の延びる方向が、図示のごとくトレッドの中央領域ＴＣでは右上がりで両側領域ＴＳでは左上がりとなっていて、両者が異なる方向である。ブロック３に設けられたサイプ６は、トレッドの両側領域ＴＳでは緩傾斜溝２と平行または実質上平行に延び、側部周方向溝５に開口している。ブロック３に設けられたサイプ６は、トレッドの中央領域ＴＣでは急傾斜溝１に４５度以上の交差角度で開口している。中央周方向溝４と急傾斜溝１とによって区画されるブロック３の表面は、先細先端部から太幅部に向けて徐々に浅くなるように、先細先端部から長手方向に２５ｍｍに亙って面取りされていて、曲率半径が約３０ｍｍの曲面で形成されている。
【００１２】
図２は従来例のタイヤのトレッド・パターンの一部拡大正面図である。従来例のタイヤは、周方向に直線状に延びる５本の周方向溝と、周方向に対して４５度程度の傾斜角度で延びる多数の傾斜溝とによって、タイヤ軸方向および周方向に間隔を置いて多数のブロックが形成されたトレッド・パターンを備えている。
【００１３】
本発明に基づく上記実施例のタイヤと上記従来例のタイヤについて、濡れた路面を走行したときの排水性能、乾燥した路面での操縦安定性能、雪上性能および耐偏摩耗性能の評価試験を実施した。濡れた路面を走行したときの排水性能は水深５ｍｍの濡れた路面を走行したときのハイドロプレーニング発生限界速度をフィーリングで評価したもので、乾燥した路面での操縦安定性能は乾燥した状態のサーキット・コースを各種走行モードによりスポーツ走行したときのテスト・ドライバイーによるフィーリングで評価したもので、雪上性能は圧雪路面のテスト・コースにおける制動性能、発進性能、直進性能およびコーナリング性能の総合フィーリング評価であり、耐偏摩耗性能は、高速道路、山坂道および市街地の道路を含めたモード走行において、１万ｋｍ走行時の摩耗形態の目視評価および隣接ブロック間の段差量計測評価の総合評価である。
【００１４】
上記の評価試験の結果、上記従来例のタイヤを１００とすると本発明に基づく上記実施例のタイヤは、 乾燥した路面での操縦安定性能が１００、耐偏摩耗性能が１００、雪上性能が１０５であり、ほぼ同等の性能であった。一方、濡れた路面を走行したときの排水性能は、上記従来例のタイヤを１００とすると本発明に基づく上記実施例のタイヤは１２０であった。
【００１５】
【発明の効果】
上記の結果から、本発明によって、乾燥した路面での操縦安定性能、雪上性能および耐偏摩耗性能を低下することなく、濡れた路面を走行したときの排水性能に優れたオール・シーズン乗用車用空気入りラジアル・タイヤが得られることことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明によるタイヤのトレッド・パターンの一部拡大正面図である。
【図２】従来例のタイヤのトレッド・パターンの一部拡大正面図である。
【符号の説明】
１ 急傾斜溝
２ 緩傾斜溝
３ ブロック
４ 中央周方向溝
５ 両側周方向溝
６ サイプ
ＴＣ 中央領域
ＴＥ トレッド端
ＴＳ 両側領域
ＴＷ トレッド幅

Claims (5)

1. タイヤ周方向に間隔を置いて配置された多数の傾斜溝によって、タイヤ周方向に間隔を置いて多数のブロックが形成されているパターンをトレッドに備え、パターン・センターにタイヤ周方向に延びる少なくとも１本の中央周方向溝が配置され、トレッド幅の３０乃至６０％の幅を有する中央領域と該中央領域の両側に位置する両側領域とでトレッドが形成されている、回転方向の指定のない空気入りタイヤにおいて、
   （１）該傾斜溝は、周方向に対して比較的小さな傾斜角度で延びる急傾斜溝と、周方向に対して比較的大きな傾斜角度で延びる緩傾斜溝とより成り、（２）該急傾斜溝はトレッドの該中央領域に配置され該中央周方向溝に開口し、該緩傾斜溝はトレッドの該両側領域に配置されトレッド端に開口し、（３）該緩傾斜溝の周方向間隔は該急傾斜溝の周方向間隔の１／２以下となるように、該緩傾斜溝は該急傾斜溝の本数の２倍以上配置され、（４）該ブロックには、各ブロック毎に少なくとも１本のサイプが設けられ、（５）該中央周方向溝と該急傾斜溝とによって区画される該ブロックの表面は、先細先端部から太幅部に向けて徐々に浅くなるように、先細先端部から長手方向に１０乃至３０ｍｍに亙って面取りされ、（６）トレッド端からトレッド幅の１／４だけタイヤ軸方向内側に入った個所に、タイヤ周方向に延びる側部周方向溝が配置され、（７）該緩傾斜溝は該側部周方向溝に開口し、（８）該ブロックに設けられた該サイプは、トレッドの該両側領域では該緩傾斜溝と平行または実質上平行に延び、該側部周方向溝に開口し、トレッドの該中央領域では該急傾斜溝に４５度以上の交差角度で開口していることを特徴とする空気入オール・シーズン乗用車用空気入りラジアル・タイヤ。
2. 該急傾斜溝は周方向に対して１０乃至５０度の傾斜角度で延びていることを特徴とする請求項１記載の空気入りタイヤ。
3. 該緩傾斜溝は周方向に対して６０乃至９０度の傾斜角度で延びていることを特徴とする請求項１乃至２記載の空気入りタイヤ。
4. 面取りされている該ブロックの表面は、曲率半径１０乃至１００ｍｍの曲面で形成されていることを特徴とする請求項１乃至３記載の空気入りタイヤ。
5. 該急傾斜溝が該緩傾斜溝に連通していることを特徴とする請求項１乃至４記載の空気入りタイヤ。

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