JP3717645B2

JP3717645B2 - アイドラプーリ

Info

Publication number: JP3717645B2
Application number: JP30074597A
Authority: JP
Inventors: 一貴川島; 唯久田中
Original assignee: NTN Corp
Current assignee: NTN Corp
Priority date: 1997-10-31
Filing date: 1997-10-31
Publication date: 2005-11-16
Anticipated expiration: 2017-10-31
Also published as: DE19850157A1; JPH11132316A; US6220982B1; DE19850157B4

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明はアイドラプーリに関し、特に高負荷のかかる自動車のエンジンのタイミングベルト、及び補機駆動用ベルト等に係止されるアイドラプーリに関する。
【０００２】
【従来の技術】
アイドラプーリは、自動車のエンジンのタイミングベルトや補記駆動用ベルト等において、ベルトの巻掛け角を増大させ、また、ベルトに適当な張力を与えるために配置される。
【０００３】
このアイドラプーリには、ベルトが掛け回されるプーリ周面を有する鋼板製のプーリ本体を、転がり軸受の外輪に圧入したものがあり、プーリ本体には腐食防止等のため、燐酸塩処理が施されている。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
この種のアイドラプーリは、図３に示すように、掛け回されるベルトから受ける負荷（ラジアル方向の負荷）によって、プーリ本体１及び軸受２が微小に変形するが、両者の変形パターンが異なるために、両者の間（具体的には、プーリ本体１の内径面１ａ１と軸受２の外輪２ｂの外径面２ｂ１との間）に微小な隙間ｓが生じる。この隙間ｓはベルトから受けるラジアル方向の力Ｌが高くなるのにつれて広くなり、プーリ本体１と軸受２の外輪２ｂとの締結力を弱くする。例えば、軸受２の外輪２ｂの外径が６８ｍｍであるアイドラプーリでは、ベルトの張力の変化によって、上記隙間ｓの最大値が表１に示すように変化する。
【０００５】
【表１】

【０００６】
従って、この種のアイドラプーリを大きなラジアル方向の負荷の掛る高負荷タイミングベルト等に用いた場合、プーリ本体と軸受の外輪との締結力が弱い状態で回転力が掛るので、プーリ本体と軸受の外輪とが相対回転（クリープ）し、プーリ本体と外輪の嵌合面が摩耗する。さらには、ベルトが横走りするなど、プーリ本体に横方向の力が働くことによって、プーリ本体が軸受外輪から抜け出ることも起り得る。
【０００７】
特に、プーリ本体が薄肉鋼板製である場合は、変形し易く比較的大きな隙間が生じるため、上記のようなクリープ等の現象が起り易いという問題がある。
【０００８】
そこで、本発明は、かかる鋼板製のプーリ本体を有するアイドラプーリにおいて、プーリ本体と軸受の外輪とのクリープ及びプーリ本体の抜け防止することを目的とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
本発明のアイドラプーリは、ベルトが掛け回されるプーリ周面を有する鋼板製プーリ本体を、転がり軸受の外輪に圧入したアイドラプーリにおいて、アイドラプーリに掛け回したベルトに作用する張力により、鋼板製プーリ本体が弾性変形して鋼板製プーリ本体と転がり軸受の外輪との間に隙間が生じたときに、弾性変形によって鋼板製プーリ本体と転がり軸受の外輪との間に隙間を埋めるように作用するヤング率の低い金属の層を、前記鋼板製プーリ本体と転がり軸受の外輪との間に設けたものである。
【００１０】
この金属の層は、例えば、鋼板製プーリ本体の内径面、及び／又は、軸受の外輪の外径面に施した、鋼板製プーリや転がり軸受の外輪よりヤング率の低い金属の鍍金である。
【００１１】
鋼板製プーリ本体や転がり軸受の外輪よりヤング率の低い金属としては、例えば、亜鉛、錫、金、銀、銅等がある。
【００１２】
また、金属の層及び鍍金の厚さが５〜２０μｍであること、及び、鋼板製プーリ本体が、軸受の外輪より幅広であることが好ましい。
【００１３】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のアイドラプーリの実施形態を図面に基づいて説明する。
【００１４】
本発明の一実施形態におけるアイドラプーリは、図１に示すように、ベルトが掛け回されるプーリ本体１と、プーリ本体１の内径に嵌合された玉軸受２と、玉軸受２の内輪２ａに嵌合される軸部材３とで構成されている。
【００１５】
プーリ本体１は、薄肉鋼板プレス製のもので、図２に示すように円筒部１ａと、円筒部１ａの両端から外径側に延びたフランジ部１ｂとを有する環体である。円筒部１ａは、内径に玉軸受２の外輪２ｂが嵌合される内径面１ａ１を有し、外径に図示されていないベルトが接触するプーリ周面１ａ２を有する。円筒部１ａの内径面１ａ１には、クリープを防止するため、プーリ本体１および玉軸受２の外輪２ｂよりヤング率の低い金属である亜鉛の鍍金が５〜２０μｍの厚さで施されている。また、円筒部１ａの内径面１ａ１の幅は、クリープ現象が多少生じても許容できるように、玉軸受２の外輪２ｂの幅より広く設定されていることが望ましい。フランジ部１ｂは、プーリ周面１ａ２に接触するベルトを案内するために設けられている。
【００１６】
玉軸受２は、プーリ本体１の円筒部１ａの内径に嵌合された外輪２ｂ、軸部材３に嵌合される内輪２ａ、内・外輪（２ａ，２ｂ）の軌道面間に組込まれた複数のボール２ｃ、ボール２ｃを円周等間隔に保持する保持器２ｄ、及び、グリースを密封する一対のシール２ｅで構成される。
【００１７】
軸部材３は、玉軸受２の内輪２ａに嵌合され、その中心には、図示しない固定用ボルトが挿入される締結穴３ａを有する。
【００１８】
すなわち、プーリ本体１は、固定軸に軸部材３、玉軸受２を介して取付けられており、プーリ周面１ａ２にベルトが掛け回され、ベルトの周動に応じて回転するものであり、アイドラとしての役割を果たしている。
【００１９】
アイドラプーリは、ベルトが掛け回された状態で、ベルトの張力によってラジアル方向の力Ｌが作用するため、上述の図３に示すように、従来のアイドラプーリ同様、非負荷域においてプーリ本体１の内径面１ａ１と玉軸受２の外輪２ｂの外径面２ｂ１との間に微小な隙間ｓが生じる。この隙間ｓは、上述の表１に示すように掛け回されるベルトの張力が大きくなるにつれて広くなり、プーリ本体１と軸受２の外輪２ｂとの締結力を弱くする。
【００２０】
上記実施形態におけるアイドラプーリは、プーリ本体１の内径面１ａ１に施された亜鉛鍍金が、プーリ本体１及び軸受２の外輪２ｂに比べ、ヤング率の低い軟質金属であるため、弾性変形することによってこの隙間ｓを埋めるように作用する。このため、このアイドラプーリは、ベルトの張力が大きくなった場合でも従来のアイドラプーリに比べ、締結力が低下せず、クリープ等の現象を防止することができる。
【００２１】
この亜鉛鍍金を有する場合の効果を確認するため、プーリ外径（プーリ本体１のプーリ周面１ａ２の外径）が７２ｍｍである、従来の燐酸塩被膜を有するアイドラプーリと、５〜１０μｍの厚さの亜鉛鍍金を有する上記実施形態のアイドラプーリとにおいて、ベルトを掛け回し１５００ｒｐｍで回転させた状態でベルトの張力を徐々に上げ、クリープ現象の生じた張力の値を測定する試験を行なった。本試験における、亜鉛鍍金ｍと燐酸塩処理膜ｐは、図４（Ａ），（Ｂ）に示すように金属素地ｋにそれぞれ、５〜１０μｍ施されたものである。この内、燐酸塩処理膜ｐは、金属素地の表面と化学反応が起しつつ形成される化合物被膜ｐ１と、その上に形成される２〜４μｍの燐酸塩の表層ｐ２とを有する。
【００２２】
この試験で、従来のアイドラプーリ（燐酸塩処理膜ｐを有するもの）は、ベルトの張力が８０ｋｇｆとなったときにクリープ現象が生じたのに対し、上記実施形態のアイドラプーリ（亜鉛鍍金も有するもの）は、２５０ｋｇｆまでクリープ現象が起らなかった。この結果、上記実施形態のアイドラプーリは、従来のものに比べ、３倍強の負荷に耐え得るものであることが分った。
【００２３】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。
【００２４】
本発明のアイドラプーリは、鋼板製のプーリ本体の内径面と、軸受の外輪の外径面との間に、プーリ本体や軸受の外輪よりもヤング率の低い金属の層を設けたことを特徴とする。金属の層は、上記実施形態のように鍍金に限らず、例えば、５μｍ〜２０μｍの薄い金属の膜を軸受の外輪に巻き付けその状態で、プーリ本体を圧入したものでも良く、鍍金による場合は、軸受の外輪の外径面に鍍金を施したものでも良い。但し、これら金属の層は、上述のように、プーリ本体と、軸受の外輪とのクリープを防止することを目的として設けられるものであるから、少なくとも５μｍの厚さが必要であり、圧入作業の便宜、嵌め合、圧入後の軸受隙間のばらつき等を考慮すれば５〜２０μｍの厚さであることが好ましい。
【００２５】
また、上記実施形態においては、鋼板製のプーリ本体等よりヤング率の低い金属として亜鉛を用いているが、このような金属としては亜鉛に限らず、例えば、錫、金、銀、銅等の金属を用いることができる。
【００２６】
なお、軸受、軸部材の構造、プーリ本体のフランジ部、プーリ周面等の形状は、本発明の目的に沿った種々変更が可能である。例えば、図面に例示したような複列のものに限らず単列のものを採用していてもよく、また、軸受の内輪を省略して軸受部材に直接軌道面を形成しても良い。
【００２７】
【発明の効果】
本発明のアイドラプーリは、鋼板製のプーリ本体の内径面と、軸受の外輪の外径面との間に、プーリ本体や軸受の外輪よりもヤング率の低い軟質金属の層を有している。この軟質金属層は、ベルトを掛け回したときに、弾性変形することによって、プーリ本体と軸受外輪との間に生じる隙間を埋めるように作用するので、プーリ本体と軸受外輪との締結力の低減を抑えてクリープ等の不都合が起ることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施形態に係るアイドラプーリの縦断面図。
【図２】本発明の一実施形態に係るプーリ本体の縦断面図。
【図３】本発明の一実施形態に係るアイドラプーリの側面図。
【図４】（Ａ）は亜鉛鍍金層の断面図，（Ｂ）は燐酸塩被膜の断面図。
【符号の説明】
１プーリ本体
１ａ円筒部
１ａ１内径面
１ａ１プーリ周面
１ｂフランジ部
２軸受
２ａ内輪
２ｂ外輪
２ｂ１外径面
２ｃボール
３軸部材

Claims

ベルトが掛け回されるプーリ周面を有する鋼板製プーリ本体を、転がり軸受の外輪に圧入したアイドラプーリにおいて、
アイドラプーリに掛け回したベルトに作用する張力により、鋼板製プーリ本体が弾性変形して鋼板製プーリ本体と転がり軸受の外輪との間に隙間が生じたときに、弾性変形によって鋼板製プーリ本体と転がり軸受の外輪との間に隙間を埋めるように作用するヤング率の低い金属の層を、前記鋼板製プーリ本体と転がり軸受の外輪との間に設けたことを特徴とするアイドラプーリ。
前記鋼板製プーリや転がり軸受の外輪よりヤング率の低い金属の鍍金を、鋼板製プーリ本体の内径面、及び／又は、軸受の外輪の外径面に施したことを特徴とする請求項１のアイドラプーリ。
前記鋼板製プーリ本体や転がり軸受の外輪よりヤング率の低い金属が、亜鉛、錫、金、銀、銅から選択した一の金属であることを特徴とする請求項１又は２のアイドラプーリ。
前記金属の層及び鍍金の厚さが５〜２０μｍであることを特徴とする請求項１から請求項３の何れかに記載のアイドラプーリ。
前記鋼板製プーリ本体が軸受の外輪より幅広であることを特徴とする請求項１から請求項４の何れかに記載のアイドラプーリ。