JP3716563B2 - 高シス−高ビニルポリブタジエン組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、ウエットスキッド特性、発熱特性の改良された新規な高シス−高ビニルポリブタジエン組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車タイヤトレッド用ゴム素材として、走行安定性と関係のあるウエットスキッド特性、発熱特性、耐久性などがよいこと、燃料消費と関係する転がり摩擦抵抗が小さいことなどが特に最近重要視されるようになった。
一般にはアルキルリチウムを触媒として1,3−ブタジエンを重合して得られるシス−1,4構造が30〜35%、ビニル構造が10〜20%であり、トランス−1,4構造が50〜60%である低シスポリブタジエン(以下、低シスBR)とコバルト、チタン或いはニッケル系触媒により1,3−ブタジエンを重合して得られるシス−1,4構造が90〜98%、ビニル構造が1〜5%であり、トランス−1,4構造が1〜5%である高シスポリブタジエン(以下、高シスBR)がある。
一方、メチルアルミノキサン(以下、MAO)とチタン系メタロセン錯体、ブトキシチタネート化合物又は遷移金属のアセチルアセトン錯体を組合せた触媒、即ちMAO−CpTiCl3 〔CpTi(OBu)3 ,Ti(OBu)4 〕触媒系〔Makromol.Symp.89,383(1995)〕や、MAO−CpVCl2 (Cp2 VCl)触媒系〔Polymer,37,363(1996)〕又はMAO−Cr(acac)3 〔V(acac)3 ,Fe(acac)3 )触媒系〔IRC−95Kobe,Preprint,25C−4(1995)〕を使用して高シス−高ビニルBR(以下、HC- HVBR)が得られたと報告されている
【0003】
高シスBRの特徴はガラス転移温度Tg (通常−95〜−110℃)が低いため低温特性に優れるものの、低ビニル構造含有量に起因するために上記問題を有している。結晶性シンジオタクチック−1,2−BRを含む高シスBRが開発されている〔M.Takayanagi,I.I.S.R.P 19th Anual Meeting(1978,Hong Kong ) p93〕。他方、低シスBRはガラス転移温度(通常−75〜−95℃)が高いものの、高ビニル構造含有量や触媒の開始剤に起因するため上記問題に対しての対応が多様化し、ゴム分子末端がスズ化合物〔N.Oshima etal ,I.R.D Kyoto ,October(1985) 16A04 やアミノ基などの含窒素化合物で変性された低シスBR[N.Nagata,et al,16A04 〕も開発されている。
従って、BRをタイヤトレッド用ゴムに使用する場合には、高シスBRの特性を保持し、且つ低シスBRの特性を保持したBRの開発が強く望まれている。
単に低燃料消費にするものであればTg が低く、反発弾性の大きい、即ち変形時のエネルギーロスの少ないポリブタジエンゴムBRを使用すればよいが、濡れた路面での制動性ウエットスキッド特性が著しく悪くなり安全性が問題となる。その改善のためガラス転移温度が高く、反発弾性の小さい、即ち変形時のエネルギーロスの大きい高スチレン含有率のスチレン−ブタジエンゴムSBRを使用するとウエットスキッド特性はよいことが知られているが、動的特性、特に発熱性が著しく低下するという問題があり、ウエットスキッド特性の改良は困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記のウエットスキッド特性、発熱特性の改良された新規な高シス−高ビニルポリブタジエン組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決のための手段】
この発明によれば、高シス−高ビニルポリブタジエン組成物において、(1)シス−1,4構造が65〜95%であり、1,2構造が30〜4%で構成された高シス−高ビニルポリブタジエンであり、(2)1,2構造と1,4構造の分布状態を表すパラメーターのβ値が、1.0<β≦1.43であり、(3)高シス−高ビニルポリブタジエン100重量部に対し無機充填剤を30〜100重量部を配合したことを特徴とする高シス−高ビニルポリブタジエン組成物が提供される。
【発明の実施の形態】
【0006】
次にこの発明の構成成分について具体的にに説明する。
(1)成分について説明する。
(1)成分は、ゴム状ポリマーのシス−1,4構造が65〜95%であり、ビニル構造が4〜30%で構成された高シス−高ビニルポリブタジエン(HC- HVBR)である。このような構成において、この発明の目的を達成することが出来き上記のウエットスキッド特性、発熱特性の改良される。
このようなゴム状ポリマーのHC- HVBRの分子量や分岐度及びムーニー粘度(ML1+4 )は特に限定するものではないが、5%のトルエン溶液とした時の25℃での粘度が20〜400センチポイズ(cp)、好ましくは30〜300cpの範囲のものが好ましい。20cp未満では分子間の絡み合いが弱くなり,耐摩耗性が低下する。400cpを超えるとこの発明の組成物の配合時の相溶性が低下して十分なウエットスキッド特性,発熱特性,耐摩耗性が得られなくなり作業性も低下する。
【0007】
(2)成分について説明する。
この発明のHC- HVBR鎖中の1,2構造と1,4構造の分布状態を表すパラメーターのβ値である。即ち、1.0<β≦1.43。
この発明のHC- HVBRのβ値は、次記式(A)で定義され、ポリブタジエン中の1,2構造と1,4構造の分布を状態を示すパラメーターである。即ち、β=1の場合は1,2構造と1,4構造が完全にランダム状態で分布していることを表している。β>1では1,2構造と1,4構造が交互に連なってダイヤッド連鎖が、完全ランダム分布の場合より多く存在していることを表している。逆にβ<1では1,2構造と1,4構造がそれぞれブロック的に連なっているダイヤッド連鎖が、完全ランダム分布の場合より多く存在していることを表している。この発明のHC- HVBRのβ値が1.0<β≦1.43、好ましくは1.0<β≦1.25を満足する範囲にあり、1,2構造と1,4構造が交互に連なっているダイアッド連鎖の割合が、完全ランダム分布の場合より多いことを特徴とするものである。それ故に、上記のウエットスキッド特性、発熱特性の改良された新規な高シス−高ビニルポリブタジエン組成物が提供される。
【0008】
この発明で規定するHC- HVBRのβ値は、Macromolecules,20,2418(1987)記載の解析方法を参考にして、13C−NMRスペクトルから1,2構造含有率、シス−1,4構造含有率、トランス−1,4構造含有率、(1,2構造)(1,4構造)ダイアッド連鎖の含有率を求めて、下記で定義されるP1,2 、P1,4 及びP1,2-1,4 より算出されたものである。
β = P1,2-1,4 /(2×P1,2 ×P1,4 ) (A)
式中のP1,2 は1,2構造含有率を示し、P1,4 は1,4構造含有率を示し、P1,2-1,4 は全ダイアッド連鎖中の(1,2構造)(1,4構造)ダイアッド連鎖の含有率を示す。
13C−NMRスペクトルの測定条件は以下の通りである。
【0009】
(3)成分について説明する。
この発明のゴム組成物として使用する無機充填剤としてはカーボンブラックが最適であるが、その他にも二酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化チタン、白艶華などが使用できる。
カーボンブラックとしては、HAF,ISAF,SAFなどのカーボンブラックであり、好ましくはヨウ素吸着量が60mg以上、且つジブチルフタレート吸油量が80ml/100g以上のカーボンブラックが用いられる。このようなカーボンブラックの使用量は、HC- HVBR100重量部に対して30〜100重量部であり、30重量部未満では加硫物の引張強度や耐摩耗性などが十分でなく、他方100重量部を越える反発弾性、発熱性などが低下する。それ故に上記範囲内であるとウエットスキッド特性や発熱特性などが向上する。
【0010】
この発明のHC- HVBRは、(a)周期表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体,及び(b)非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物及び/又はアルミノキサンからなる触媒系で製造される。
【0011】
この発明のHC- HVBRの製造触媒成分を更に具体的に説明する。
(a)周期表第5族遷移金属化合物のメタロセン型錯体としては、
(1) RMX3 , (2) Rn MX3-n ・La ,
(3) RM(O)X2 , (4) Rn MX3-n (NR’) ,
などの一般式で示される化合物が挙げられる。
上記式でRはシクロペンタジエニル基及びその置換シクロペンタジエニル基、インデニル基及びその置換インデニル基、シリルシクロペンタジエニル基又はフルオレニル基である。aは0、1又は2である。nは1又は2である。
Mは周期表第5族遷移金属化合物を示す。具体的にはバナジウム(V),ニオブ(Nb),タンタル(Ta)であり、好ましくはバナジウムである。
Xは水素、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、沃素が挙げられる)、炭素数1〜20の炭化水素基(メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、tert- ブチル、n-ヘキシルなどの直鎖状炭化水素基又は分岐状炭化水素基、フェニル、トリル、ナフチル、ベンジルなどの芳香族炭化水素基、更にトリメチルシリルなどのケイ素原子を含有する炭化水素基なども含む) 、アルコキシル基( メトキシル基、エトキシル基、フェノキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基、アミルオキシル基、ヘキシルオキシル基、オクチルオキシル基、2-エチルヘキシルオキシル基、チオメトキシル基など) 又はアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基など)を示す。上記の中でもXとしては、フッ素・塩素・臭素原子、メチル基、エチル基、ブチル基、メトキシル基、エトキシル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが好ましい。
Lは、対電子を有し、金属に配位できるルイス塩基性の一般的な無機・有機化合物であるルイス塩基である。その中でも活性水素を有しない化合物が特に好ましく、具体的にはピリジン、トリエチルアミン、トリブツルアミン、又はジメチルアニリンなどの第3アミン、メタノール、エタノールなどのアルコール、トリメチルフォスフィン、トリエチルフォスフィン、トリブチルフォスフィン、又はトリフェニルフォスフィンなどの第3フォスフィン、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルフォルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのN,N−ジアルキルアミド、エチルエーテル、ブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ベンジルエーテル、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコールジメチルエーテル類、アニゾール、フェネトールなどのエーテルなどが挙げられる。エステル化合物、シリルオキシル化合物も含まれる。
【0012】
一般式(1) RMX3 で示される具体的化合物としては、以下の通りである。
(イ) シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドが挙げられる。そのモノ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドとしては、例えばメチルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、エチルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、プロピルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、イソプロピルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、tert- ブチルシクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、(1,1- ジメチルプロピル) シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、(1,1- ジメチルベンジル) シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、(1- エチルプロピル) シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、(1- エチル,1- メチルプロピル) シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、( ジエチルベンジル) シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライド、〔ビス( トリメチルシリル) シクロペンタジエニル〕バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0013】
ジ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドとしては、例えば(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムトリクロライド、(1- メチル-3- エチルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライド、(1- メチル-3- プロピルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライド、〔 1- メチル-3- ビス( トリメチルシリル)シクロペンタジエニル〕バナジウムトリクロライド、 1- メチル-3- ビス( トリメチルシリルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライド、(1- メチル-3- フェニルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライド、(1- メチル-3- トリルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライド、〔 1- メチル-3-(2,6-ジメチルフェニル) シクロペンタジエニル〕バナジウムトリクロライド、(1- メチル-3- ブチルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0014】
トリ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドとしては例えば(1,2,3- トリメチルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライド、(1,2,4- トリメチルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。テトラ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドとしては、例えば(1,2,3,4- テトラメチルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライド、(1,2,3、4-テトラフェニルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
ペンタ置換シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライドとしては、例えば( ペンタメチルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライド、(1,2,3,4- テトラメチル-5- フェニルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライド、(1,2,3,4- テトラフェニル-5- メチルシクロペンタジエニル) バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0015】
(ロ)インデニルバナジウムトリクロライドが挙げられる。その置換インデニルバナジウムトリクロライドとしては、例えば(2-メチルインデニル) バナジウムトリクロライド、(2-トリメチルインデニル) バナジウムトリクロライドなどが挙げられる。
【0016】
(ハ)上記の(イ)〜(ロ)の化合物の塩素原子をアルコキシ基、メチル基で置換したモノアルコキシド、ジアルコキシド、トリアルコキシドなどが挙げられる。例えばトリメチルシリルシクロペンタジエニルバナジウムトリ tert-ブトキサイド、トリメチルシクロペンタジエニルバナジウムトリ iso- プロポキサイド、トリメチルシリルシクロペンタジエニルバナジウムジメトキシクロライド、トリメチルシリルシクロペンタジエニルバナジウムジtert- ブトキシクロライド、トリメチルシリルシクロペンタジエニルバナジウムジフェノキシクロライド、トリメチルシリルシクロペンタジエニルバナジウムジ iso- プロキシクロライド、トリメチルシリルシクロペンタジエニルバナジウム tert-ブトキシジクロライド、トリメチルシリルシクロペンタジエニルバナジウムフェノキシジクロライドなどである。そして、これらの塩素原子をメチル基で置換したジメチル体である。そして、更にこのジメチル体の塩素原子をアルコキシ基で置換したモノアルコキシ体、ジアルコキシ体である。モノクロル体をメチル基で置換した化合物が挙げられる。
【0017】
(ニ)上記の(イ)〜(ロ)の化合物の塩素原子をアミド基で置換したアミド体が挙げられる。例えば( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(トリスジエチルアミド) バナジウム、( トリメチルシクロペンタジエニル) ( トリスiso-プロピルアミド) バナジウム、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(トリス n- オクチルアミド) バナジウム、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(ビスジエチルアミド) バナジウムクロライド、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル) ( ビス iso- プロピルアミド) バナジウムクロライド、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(ビスn-オクチルアミド) バナジウムクロライド、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(ジエチルアミド) バナジウムジクロライド、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(iso-プロピルアミド) バナジウムジクロライド、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(n-オクチルアミド) バナジウムジクロライドなどである。そして、これらの塩素原子をメチル基で置換したメチル体である。
【0018】
Rが炭化水素基、シリル基によって結合されたものが挙げられる。例えば(tert- ブチル) ジメチルシリル( η5-シクロペンタジエニル) バナジウムジクロライド、(tert- ブチルアミド) ジメチルシリル( トリメチル- η5-シクロペンタジエニル) バナジウムジクロライド、(tert- ブチルアミド) ジメチルシリル( テトラメチル- η5-シクロペンタジエニル) バナジウムジクロライドなどである。そして、これらの塩素原子をメチル基で置換したジメチル体である。そして、更にこのジメチル体の塩素原子をアルコキシ基で置換したモノアルコキシ体、ジアルコキシ体である。モノクロル体をメチル基で置換した化合物が挙げられる。
【0019】
(イ)〜(ニ)の塩素原子をアミド基で置換したアミド体が挙げられる。例えば、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(トリスジエチルアミド) バナジウム、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(トリスiso-プロピルアミド) バナジウム、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(トリスn-プロピルアミド) バナジウム、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(トリスn-オクチルアミド) バナジウム、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(ビスジエチルアミド) バナジウムクロライド、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(ビスiso-プロピルアミド) バナジウムクロライド、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(ビスn-オクチルアミド) バナジウムクロライド、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(ジチルアミド) バナジウムジクロライド、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(iso-プロピルアミド) バナジウムジクロライド、( トリメチルシリルシクロペンタジエニル)(n-オクチルアミド) バナジウムジクロライドなどが挙げられる。これらの塩素原子をメチル基で置換したメチル体が挙げられる。
【0020】
一般式(2) Rn MX3-n ・La の中で、RMX2 で表せる具体的な化合物としては、、シクロペンタジエニルバナジウムジクロライド、メチルシクロペンタジエニルバナジウムジクロライド、(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムジクロライド、(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)バナジウムジクロライド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)バナジウムジクロライド、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)バナジウムジクロライド、〔1,3−ジ(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル〕バナジウムジクロライド、インデニルバナジウムジクロライド、(2−メチルインデニル)バナジウムジクロライド、(2−メチルシリルインデニル)バナジウムジクロライド、フルオレニルバナジウムジクロライドなどのジクロライド体が挙げられる。上記の各化合物の塩素原子をメチル基で置換したジメチル体も挙げられる。
【0021】
RとXが炭化水素基、シリル基によって結合されたものも含まれる。例えば、(t−ブチルアミド)ジメチルシリル(η5 −シクロペンタジエニル)バナジウムクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチルシリル(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)バナジウムクロライドなどのアミドクロライド体、或いはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したアミド体などが挙げられる。
シクロペンタジエニルバナジウムジメトキサイド、シクロペンタジエニルバナジウムジiso−プロポキサイド、シクロペンタジエニルバナジウムジtert−ブトキサイド、シクロペンタジエニルオキソバナジウムジフェノキサイド、シクロペンタジエニルバナジウムメトキシクロライド、シクロペンタジエニルバナジウムiso−プロポキシクロライド、シクロペンタジエニルバナジウムtert−ブトキシクロライド、シクロペンタジエニルバナジウムフェノキシクロライドなどのアルコキシド体が挙げられる。これらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したジメチル体も挙げられる。
(シクロペンタジエニル)(ビスジエチルアミド)バナジウム、(シクロペンタジエニル)(ビスジiso−プロピルアミド)バナジウム、(シクロペンタジエニル)(ビスジn−オクチルアミド)バナジウムなどのビスアミド体が挙げられる。
【0022】
一般式(2) Rn MX3-n ・La の中でRMX2 ・L2 で表せる具体的な化合物としては、シクロペンタジエニルバナジウムジクロライド・ビストリメチルフォスフィン錯体、シクロペンタジエニルバナジウムジクロライド・ビストリエチルフォスフィン錯体、(クロペンタジエニル)(ビスジiso−プロピルアミド)トリメチルフォスフィン錯体、モノメチルシクロペンタジエニルバナジウムジクロライド・ビストリエチルフォスフィン錯体などのフォスフィン錯体があげられる。
【0023】
一般式(2) Rn MX3-n ・La の中でR2 MX1 ・L2 で表せる具体的な化合物としては、ジシクロペンタジエニルバナジウムクロライド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)バナジウムクロライド、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)バナジウムクロライド、ビス(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)バナジウムクロライド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)バナジウムクロライド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)バナジウムクロライド、ビス〔1,3−ジ(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル〕バナジウムクロライド、ジインデニルバナウムジクロライド、ビス(2−メチルインデニル)バナジウムクロライド、ビス(2−メチルシリルインデニル)バナジウムクロライド、ジフルオレニルバナジウムクロライドなどのクロライド体が挙げられる。上記の各化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体も挙げられる。
シクロペンタジエニルバナジウムメトキサイド、ジシクロペンタジエニルバナジウムiso−プロポキサイド、ジシクロペンタジエニルバナジウムtert−ブトキサイド、ジシクロペンタジエニルバナジウムフェノキサイド、ジシクロペンタジエニルジエチルアミドバナジウム、ジシクロペンタジエニルジiso−プロピルアミドバナジウム、ジシクロペンタジエニルジn−オクチルアミドバナジウムなどが挙げられる。
【0024】
Rが炭化水素基、シリル基によって結合されたものも含まれる。例えば、ジメチルビス(η5 −シクロペンタジエニル)シランバナジウムクロライド、ジメチルビス(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)シランバナジウムクロライドなどのクロライド体、或いはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したメチル体などが挙げられる。
【0025】
一般式(3) RM(O)X2 で表せる具体的な化合物としては、シクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、メチルシクロペンタジエニルオキソバナジウムジクロライド、(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)オキソバナジウムジクロライド、(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)オキソバナジウムジクロライド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)オキソバナジウムジクロライド、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)オキソバナジウムジクロライド、〔1,3−ジ(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル〕オキソバナジウムジクロライド、インデニルオキソバナジウムジクロライド、(2−メチルインデニル)オキソバナジウムジクロライド、(2−メチルシリルインデニル)オキソバナジウムジクロライド、フルオレニルオキソバナジウムジクロライドなどが挙げられる。上記の各化合物の塩素原子をメチル基で置換したジメチル体も挙げられる。
【0026】
RとXが炭化水素基、シリル基によって結合されたものも含まれる。例えば、(t−ブチルアミド)ジメチルシリル(η5 −シクロペンタジエニル)オキソバナジウムクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチルシリル(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)オキソバナジウムクロライドなどのアミドクロライド体、或いはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したアミド体などが挙げられる。
シクロペンタジエニルオキソバナジウムジメトキサイド、シクロペンタジエニルオキソバナジウムジiso−プロポキサイド、シクロペンタジエニルオキソバナジウムジtert−ブトキサイド、シクロペンタジエニルオキソバナジウムジフェノキサイド、シクロペンタジエニルオキソバナジウムメトキシクロライド、シクロペンタジエニルオキソバナジウムiso−プロポキシクロライド、シクロペンタジエニルオキソバナジウムtert−ブトキシクロライド、シクロペンタジエニルオキソバナジウムフェノキシクロライドなどが挙げられる。これらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したジメチル体も挙げられる。
(シクロペンタジエニル)(ビスジエチルアミド)オキソバナジウム、(シクロペンタジエニル)(ビスジiso−プロピルアミド)オキソバナジウム、(シクロペンタジエニル)(ビスジn−オクチルアミド)オキソバナジウムなども挙げられる。
【0027】
(4) Rn MX3-n (NR’)で表せる具体的な化合物としては、シクロペンタジエニル(メチルイミド)バナジウムジクロライド、シクロペンタジエニル(フェニルイミド)バナジウムジクロライド、シクロペンタジエニル(2,6−ジメチルフェニルイミド)バナジウムジクロライド、シクロペンタジエニル(2,6−ジiso−プロピルフェニルイミド)バナジウムジクロライド、(メチルシクロペンタジエニル)(フェニルイミド)バナジウムジクロライド、(メチルペンタメチルシクロペンタジエニル)バナジウムジクロライド、〔1,3−ジメチルシクロペンタジエニル(フェニルイミド)〕バナジウムジクロライド、(1−メチル−3−ブチルシクロペンタジエニル)(フェニルイミド)バナジウムジクロライド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(フェニルイミド)バナジウムジクロライド、インデニル(フェニルイミド)バナジウムジクロライド、2−メチルインデニル(フェニルイミド)バナジウムジクロライド、フルオレニル(フェニルイミド)バナジウムジクロライドなどのジクロライドが挙げられる。
【0028】
RとXが炭化水素基、シリル基によって結合されたものも含まれる。例えば、(t−ブチルアミド)ジメチルシリル(η5 −シクロペンタジエニル)(フェニルイミド)バナジウムクロライド、(t−ブチルアミド)ジメチルシリル(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)(フェニルイミド)バナジウムクロライドなどのアミドクロライド体、或いはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したアミド体などが挙げられる。
Rが炭化水素基、シリル基によって結合されたものも含まれる。例えば、ジメチルビス(η5 −シクロペンタジエニル)シラン(フェニルイミド)バナジウムクロライド、ジメチルビス(η5 −シクロペンタジエニル)シラン(トリルイミド)バナジウムクロライド、ジメチル(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)シラン(フェニルイミド)バナジウムクロライド、ジメチル(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)シラン(トリルイミド)バナジウムクロライドなどのアミドクロライド体、或いはこれらの化合物の塩素原子をメチル基で置換したアミド体などが挙げられる。
シクロペンタジエニルバナジウム(フェニルイミド)ジメトキサイド、シクロペンタジエニルオキソバナジウム(フェニルイミド)ジiso−プロポキサイド、シクロペンタジエニルバナジウム(フェニルイミド)(iso−プロポキシ)クロライド、(シクロペンタジエニル)(ビスジエチルアミド)バナジウム(フェニルイミド)、(シクロペンタジエニル)(ビスiso−プロピルアミド)バナジウム(フェニルイミド)などが挙げられる。
【0029】
この発明の(b)成分のうち、非配位性アニオンとカチオンとのイオン性化合物を構成する非配位性アニオンとしては、例えば、テトラ(フェニル)ボレート、テトラ(フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラメチルフルオロフェニル)ボレート、テトラ(トリイル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、〔トリス(ペンタフルオロフェニル)フェニル〕ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート、テトラフルオロボレートなどが挙げられる。
【0030】
一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスフォニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどを挙げることができる。
カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンを挙げることができる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンの具体例としては、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどを挙げることができる。
アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアンモニウムカチオン、ジ(iso−プロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどを挙げることができる。
ホスフォニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルフォスフォニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)フォスフォニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)フォスフォニウムカチオンなどのトリアリールフォスフォニウムカチオンなどを挙げることができる。
【0031】
そして、イオン性化合物としては、前記の非配位性アニオン及びカチオンの中から任意に選択して組み合わせたものを、好ましく用いることができる。なかでもイオン性化合物としては、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラ(フルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが好ましい。イオン性化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0032】
この発明の(b)成分としてアルミノキサンを使用してもよい。アルミノキサンとしては、一般式(化1、化2)が直鎖状のものや環状のものが挙げられる(R" は炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部をハロゲン原子及び又はアリコキシル基で置換されたもの、nは重合度であり2以上の整数を示す)。特にR" はメチルであるメチルアルミノキサンでnが5以上、好ましくは10以上のものが利用される。上記のアルミノキサン類には若干のアルキルアルミニウム化合物が混入していても差し支えない。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
この発明において(a)成分及び(b)成分に、更に(c)成分として周期表第1〜3族元素の有機金属化合物を組合せた触媒系を使用してもよい。(c)成分の添加により重合活性が向上する。周期表第1〜3族元素の有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物、有機ホウ素合物などが挙げられる。又、これらの有機金属ハロゲン化合物、水素化有機金属化合物も含まれる。また有機金属化合物を2種以上併用することができる。
(c)成分の具体的な化合物としては、トリメチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、トリエチルアルミニウム、セスキエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、ネオペンチルリチウム、トリメチルシリルメチルリチウム、ビストリメチルシリルメチルリチウム、ジブチルマグネシウム、ブチルマグネシウムクロライド、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロライド、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、トリフッ化ホウ素、トリフェニルホウ素などを挙げることができる。
更に、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのような有機金属ハロゲン化合物、ジエチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドなどのような水素化有機金属化合物素などを挙げることができる。有機金属化合物は2種類以上併用することができる。
また、(b)成分としてイオン性化合物を用いる場合には、(c)成分として前記のアルミノキサンを組合せて使用してもよい。
【0036】
各触媒成分の配合割合は、各種条件により異なるが、(a)成分のメタロセン錯体と(b)成分のアルミノキサンとのモル比は、好ましくは1:1〜1:10,000、より好ましくは1:1〜1:5,000である。
(a)成分のメタロセン型錯体と(b)成分のイオン性化合物とのモル比は、好ましくは1:0.1〜1:10、より好ましくは1:0.2〜1:5である。
(a)成分のメタロセン型錯体と(c)成分の有機金属化合物とのモル比は、好ましくは1:0.1〜1:1,000、より好ましくは1:0.2〜1:500である。
【0037】
触媒成分の添加順序は、特に制限はないが、例えば次の順序で行うことができる;
▲1▼重合モノマ−と(b)成分との接触混合物にメタロセン型錯体を添加する。
▲2▼重合モノマ−と(b)成分及び(c)成分を任意の順序で添加した接触混合物にメタロセン型錯体を添加する。
▲3▼重合モノマ−と(c)成分の接触混合物に(b)成分、次いでメタロセン型錯体を添加する。
▲4▼重合モノマ−にメタロセン型錯体と(b)成分を任意の順序で接触させた混合物を添加する。
尚、HC−HVBRの分子量調節剤としては、水素を使用するのが経済的であり、重合方法としては、特に制限はなく、塊状重合や溶液重合などを適宜目的に合わせて行えばよい。溶媒として脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素やこれらのハロゲン化炭化水素を適宜目的に合わせて行えばよく、2種以上組合せて用いてもよい。
【0038】
この発明のHC−HVBR組成物には、製造時や製造後に適宜必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤、離型剤、滑剤、着色剤、各種充填剤及び各種の可塑剤、高級脂肪酸、有機ポリシロキサン、シリコーンオイル、難燃剤、帯電防止剤や発泡剤などの公知添加剤を添加してもよい。 この発明のHC−HVBR組成物は、自動車のタイヤ用途ばかりでなく運搬用ベルト,ゴムホース,伝動ベルト,ゴムクローラ、ブッシュ,パッキン,ブーツ,防振ゴムなどの工業用品やゴルフボール,シューズの靴底などにも使用できる。
【0039】
【実施例】
以下、参考例、実施例及び比較例を示して、本発明について具体的に説明するが、この発明はこれらによって制約されるものではない。
参考例、実施例及び比較例において、得られたHC−HVBRのミクロ構造,ムーニー粘度,トルエンcp及びHC−HVBR組成物の加硫物の反発弾性,発熱特性,耐摩擦性,スキッド抵抗などは以下のようにして測定した。
ミクロ構造:赤外吸収スペクトル分析法によって、Hampton法より求めたシス−1,4構造;740cm-1,ビニル構造;911cm-1,トランス−1,4構造;967cm-1の分子吸光係数からミクロ構造を算出した。
ムーニー粘度:JIS K6300に準じて温度100℃,ローター回転数2rpmで1分余熱して4分測定してML1+4,100 で示した。
トルエンcp:5%トルエン溶液をキャノンフェンスケ粘度計を用いて25℃で測定した。
加硫時間:JSRキュラストメーター2F型を用いてt90×2,t90×3の加硫時間で測定した。
反発弾性:JIS K6255に準じて70℃で測定して示した。
発熱特性:ASTM D623に準じて測定した。動的変化時の圧縮永久歪みとしてPS(%)で示すと共にスタート温度50℃で20分後の上昇温度をΔTとして示した。
耐摩耗性:ランボーン摩耗試験機を用いて負荷荷重4.5kg,落砂量約15g/min.にて下記スリップ率で試験した。スリップ率:20%,サンプル回転速度60m/min.,ドラム回転速度48m/min.;スリップ率:60%,サンプル回転速度60m/min,ドラム回転速度24m/min.で測定した摩耗量(cc/分)を求め比較例1を100として指数で評価した。指数が大きいほど耐摩耗性は良好である。
スキッド抵抗:ASTM E303に準じてブリティシュポータブルスキッドテスターを用いて乾燥面(ドライ)と湿潤面(ウエット)で室温で測定して比較例1を100として指数で評価した。指数が大きいほどスキッド抵抗は良好である。
【0040】
〔参考例1〕
窒素置換した攪拌機付8リットルのオートクレーブに30wt%の1,3−ブタジエンを含有するトルエン溶液(1,3−ブタジエン:814g)3.5リットルを導入した。次いで水素ガスを導入して0.092kgG/cm2 圧力だけ高くした。30℃で3分かけてトリエチルアルミニウム2.25m−molを、次いでトリチルテトラ(パーフルオロフェニル)ボレート0.039m−mol,シクロペンタジエニルバナジウムトリクロライド0.026m−mol連続して添加して40℃で30分間重合した。収率32%,得られたポリブタジエンのミクロ構造はシス1,4構造=88.7%,トランス1,4構造=1.8%,ビニル構造=9.5%であった。ムーニー粘度ML1+4,100 =43.3,トルエン溶液粘度(5%SV)=148であった。これらの結果を表1に示した。又、得られたポリブタジエンの13C−NMRスペクトルからの測定結果から算出されるダイアッド連鎖の含有率、1,2構造と1,4構造の分布状態を表すパラメーターのβ値を表2に示した。
【0041】
〔参考例2〕
触媒量及び水素ガスを0.093kgG/cm2 、20wt%の1,3−ブタジエのトルエン溶液(1,3−ブタジエン:543g)に変更した以外は参考例1と同様にして重合した。収率36%、得られたポリブタジエンのミクロ構造はシス1,4構造=88.8%、トランス1,4構造=1.7%,ビニル構造=9.5%であった。ムーニー粘度ML1+4,100 =53.0、トルエン溶液粘度(5%SV)=210はであった。これらの結果を表1に示した。又、得られたポリブタジエンの13C−NMRスペクトルからの測定結果から算出されるダイアッド連鎖の含有率、1,2構造と1,4構造の分布状態を表すパラメーターのβ値を表2に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
〔実施例1〜2〕
参考例1〜2で製造したHC−HVBRを使用して表3の配合処方に従って配合した。結果を表4に示した。
【0044】
〔比較例1〜4〕
表1のサンプル参考例3〜6を使用して表3の配合処方で配合して加硫した。結果を表4に示した。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【発明の効果】
この発明におけるHC−HVBR組成物は、シス−1,4構造が65〜95%、ビニル構造30〜4%で構成された高シス−高ビニルポリブタジエンであるため、高シス−1,4構造に由来する高反発弾性率と高ビニル構造に由来する優れたスキッド抵抗性を併せ持つポリブタジエン組成物であり、このHC−HVBRを用いて得られるゴム組成物の加硫物物性は、ウエットスキッド抵抗性、耐摩耗性などの物性を損ねることなく反発弾性、発熱特性に優れるためタイヤのトレッド用途として有望である。
Claims (3)
- 高シス−高ビニルポリブタジエン組成物において、 (1)シス−1,4構造が65〜95%であり、1,2構造が30〜4%で構成された高シス−高ビニルポリブタジエンであり、 (2)1,2構造と1,4構造の分布状態を表すパラメーターのβ値が、1.0<β≦1.43であり、(ここで、β=P1,2-1,4/(2×P1,2×P1,4)であり、式中のP1,2は1,2構造含有率を示し、P1,4 は1,4構造含有率を示し、P1,2-1,4 は全ダイアッド連鎖中の(1,2構造)(1,4構造)ダイアッド連鎖の含有率を示す。)、かつ、(3)高シス−高ビニルポリブタジエン100重量部に対し無機充填剤を30〜100重量部を配合したことを特徴とする高シス−高ビニルポリブタジエン組成物。
- 該高シス−高ビニルポリブタジエンが、5%のトルエン溶液とした時の25℃での粘度が30〜300センチポイズ(cp)の範囲のものであることを特徴とする請求項1に記載の高シス−高ビニルポリブタジエン組成物。
- 該無機充填剤がカーボンブラックであることを特徴とする請求項1〜2に記載の高シス−高ビニルポリブタジエン組成物。
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