JP3714649B2 - フィルム用樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、フィルム用樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、成形して優れた強度、耐水性を有するとともに、紙に似た感触および剛性を有し、しかも濃色のカラー印刷適性に優れたフィルムを得ることができるフィルム用樹脂組成物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
従来、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンは成形性に優れ、そのフィルムが、強度および耐水性に優れているため、包装材として多用されている。
【0003】
しかしながら、高級品の包装用には、依然として見栄えのよい紙が使用されている。そこで、ポリオレフィンフィルムの優れた強度、耐水性および成形性を残した上で、更に紙に似た感触および剛性を有するペーパーライクポリオレフィンフィルムが求められてきている。たとえば高密度ポリエチレン、ポリプロピレンの単独、またはこれらを主成分とする組成物に、炭酸カルシウム、タルク等の無機充填剤を添加して成形したペーパーライクポリオレフィンフィルムが提案されている(特公昭46−41463号公報)。
【0004】
さらに、ペーパーライクポリオレフィンフィルムの好適な素材として、ポリエチレン、ポリプロピレン、タルク、酸化カルシウムおよび界面活性剤(たとえばステアリン酸モノグリセリド)を含有してなるフィルム用樹脂組成物も提案されている(特開平3−227340号公報)。この組成物は、強度、剛性および成形性に優れたフィルムを提供することができ、ペーパーライクフィルムいわゆる合成紙と呼ばれている。合成紙は、強度、耐水性、剛性等に優れているため、地図や選挙ポスターなどの用途に好適である。
【0005】
しかしながら、このペーパーライクフィルムは、濃色のカラー印刷を施すことには、必ずしも満足されていない。その理由の一つとして、表面にコロナ放電処理してから紺色等の濃色で印刷すると、その合成紙表面に印刷インキがのらず1〜2mm程度の白斑が生じることがあるため、見栄えを損なうことが挙げられている。そこで、濃色のカラー印刷適性に優れたペーパーライクフィルムを成形することができる原料樹脂の改良が望まれている。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、紺色等の濃色のカラー印刷適性に優れたペーパーライクフィルムを成形することができるフィルム用樹脂組成物を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係るフィルム用樹脂組成物は、
メルトフローレート(ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg)が0.01〜0.1g/10分であり、密度が0.938〜0.965g/cm3 であり、メルトテンションが10g以上である高密度ポリエチレン(A)、
メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)が0.3〜10g/10分であるプロピレン系重合体(B)、および
タルク(C)
の合計量100重量部に対し、
CaOおよび/またはMgOを0.05〜10重量部、ならびに
エチレンビスオレイン酸アミドおよび/またはステアリン酸亜鉛を0.05〜3.0重量部含有していることを特徴としている。
【0008】
本発明においては、前記の高密度ポリエチレン(A)、プロピレン系重合体(B)およびタルク(C)の合計量100重量部は、高密度ポリエチレン(A)が40〜80重量部、プロピレン系重合体(B)が5〜20重量部、タルク(C)が15〜40重量部から構成されている。
【0009】
本発明に係るフィルム用樹脂組成物は、前記プロピレン系重合体(B)、タルク(C)、CaOおよび/またはMgO、ならびにエチレンビスオレイン酸アミドおよび/またはステアリン酸亜鉛を予め混合して得られたマスターバッチと、高密度ポリエチレン(A)とのブレンド物であることが望ましい。
【0010】
上記のような本発明に係るフィルム用樹脂組成物は、合成紙用樹脂組成物として好適である。
【0011】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係るフィルム用樹脂組成物について具体的に説明する。
本発明に係るフィルム用樹脂組成物は、高密度ポリエチレン(A)、プロピレン系重合体(B)、タルク(C)、タルク(C)以外の無機充填剤(CaOおよび/またはMgO)、およびタルク分散剤(エチレンビスオレイン酸アミドおよび/またはステアリン酸亜鉛)を含有してなる。
【0012】
高密度ポリエチレン(A)
本発明で用いられる高密度ポリエチレン(A)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg)は、0.01〜0.1g/10分、好ましくは0.02〜0.07g/10分、さらに好ましくは0.02〜0.05g/10分である。
【0013】
また、この高密度ポリエチレン(A)の密度は、0.938〜0.965g/cm3 、好ましくは0.943〜0.960g/cm3 である。
さらに、この高密度ポリエチレン(A)のメルトテンションは、10g以上、好ましくは15g以上である。メルトテンションが10g以上、特に15g以上である高密度ポリエチレン(A)を用いた樹脂組成物は、インフレーションフィルム成形の際におけるバブルの安定性が良好であり、また、高密度ポリエチレン(A)の分子配向度が大きいため、耐衝撃強度、引裂強度および剛性に優れたフィルムを成形することができる。
【0014】
ここに、メルトテンションとは、溶融時の張力であり、(株)東洋精機製作所製のメルトテンションテスターを用い、下記条件で測定される。
<測定条件>
使用ノズル:有効長さL=8.000mm、口径D=2.095mm
試験温度:190℃
引取速度:2m/分
上記のような高密度ポリエチレン(A)は、高密度ポリエチレン(A)、プロピレン系重合体(B)およびタルク(C)の合計量100重量部に対し、40〜80重量部、好ましくは45〜75重量部、さらに好ましくは50〜70重量部の割合で用いられることが望ましい。
【0015】
プロピレン系重合体(B)
本発明で用いられるプロピレン系重合体(B)は、プロピレンの単独重合体、あるいはプロピレンと、プロピレンと共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体またはブロック共重合体である。
【0016】
プロピレンと共重合可能な他の単量体としては、具体的には、エチレン、ブテン等のα- オレフィンなどが挙げられる。
上記ランダムまたはブロック共重合体における「他の単量体」の含有量は、10モル%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(B)としては、プロピレン単独重合体が好ましい。
プロピレン系重合体(B)のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)は、0.3〜10g/10分、好ましくは1〜7g/10分である。メルトフローレートが上記範囲内にあるプロピレン系重合体(B)を用いると、適度の腰がある強靭なフィルムを成形することができる樹脂組成物が得られる。
【0018】
上記のようなプロピレン系重合体(B)は、高密度ポリエチレン(A)、プロピレン系重合体(B)およびタルク(C)の合計量100重量部に対し、5〜20重量部、好ましくは7〜18重量部、さらに好ましくは9〜16重量部の割合で用いられることが望ましい。プロピレン系重合体(B)を上記範囲内の割合で用いると、適度な腰を有するフィルムを成形し得る、剛性に優れた樹脂組成物が得られる。
【0019】
タルク(C)等の無機充填剤
本発明で用いられるタルク(C)は、通常、この種の樹脂組成物に配合されるものでよく、特に制限されないが、たとえば平均粒径が1.5〜4.5μmであり、吸油量38〜52ml/100gであり、かつ含水率が0.3%以下であるタルクが好ましい。
【0020】
上記のようなタルク(C)は、高密度ポリエチレン(A)、プロピレン系重合体(B)およびタルク(C)の合計量100重量部に対し、15〜40重量部、好ましくは17〜38重量部、さらに好ましくは20〜35重量部の割合で用いられることが望ましい。タルク(C)を上記範囲内の割合で用いると、得られる樹脂組成物は、良好なペーパーライクの外観を有し、かつ、耐衝撃強度および引裂強度に優れたフィルムを成形することができる。
【0021】
また、本発明でタルク(C)以外の無機充填剤として用いられるCaOおよび/またはMgOは、樹脂成分と均一混合されるものであれば、いかなるものでもよい。
【0022】
CaOおよび/またはMgOは、高密度ポリエチレン(A)、プロピレン系重合体(B)およびタルク(C)の合計量100重量部に対し、0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜8重量部の割合で用いられる。この範囲内でCaOおよび/またはMgOを用いると、フィルムの成形性に優れた組成物が得られる。
【0023】
タルク分散剤
本発明で用いられるタルク分散剤は、エチレンビスオレイン酸アミドとステアリン酸亜鉛である。特にステアリン酸亜鉛[Zn(OCOC17352] が好ましい。これらは、単独で使用してもよいし、また混合して使用してもよい。
【0024】
これらのタルク分散剤は、高密度ポリエチレン(A)、プロピレン系重合体(B)およびタルク(C)の合計量100重量部に対し、0.05〜3.0重量部、好ましくは0.1〜2.8重量部、さらに好ましくは0.4〜2.6重量部の割合で用いられる。タルク分散剤を上記範囲内の割合で用いると、得られる樹脂組成物は、タルク(C)の樹脂組成物中における分散を助け、タルク(C)が均一に分散するため、紺色等の濃色によるカラー印刷をしても、白斑が殆ど生じないペーパーライクフィルム(合成紙)を成形することができる。しかも、この樹脂組成物から、十分な強度および剛性を有するペーパーライクフィルムを成形することができ、またインフレーション法によるフィルム成形におけるバブル安定性が良好である。
【0025】
その他の成分
本発明に係るフィルム用樹脂組成物中に、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(C)成分以外の無機充填剤、およびタルク分散剤の他に、この種の樹脂組成物に通常用いられる各種の添加剤、たとえばフェノール系、リン系、イオウ系の酸化安定剤、紫外線吸収剤;酸化チタン等の無機顔料、あるいは有機顔料などの着色剤;帯電防止剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲内で添加することができる。
【0026】
フィルム用樹脂組成物の調製
本発明に係るフィルム用樹脂組成物は、上述した高密度ポリエチレン(A)、プロピレン系重合体(B)、タルク(C)、タルク(C)以外の無機充填剤、およびタルク分散剤、ならびに必要に応じて他の任意成分の所定量を、同時に混合し、得られた混合物を例えば180〜250℃で2軸押出機、バンバリーミキサー等を用いて溶融混練して調製することができる。
【0027】
また、本発明に係るフィルム用樹脂組成物は、プロピレン系重合体(B)、タルク(C)等の無機充填剤およびタルク分散剤を予め混合してマスターバッチを調製し、このマスターバッチと高密度ポリエチレン(A)とを混合することにより調製することができる。この混合は、フィルム成形時に行なうのが望ましい。
【0028】
上記のようにして調製される、本発明に係るフィルム用樹脂組成物は、インフレーションフィルム成形法、T−ダイによるフィルム成形法等のいずれのフィルム成形法にも適用することができ、特にインフレーションフィルム成形法によるフィルム製造に好適である。
【0029】
これらの成形法により調製されたペーパーライクフィルムの印刷は、通常、コロナ放電処理等により表面処理した後になされる。
本発明に係るフィルム用樹脂組成物は、それ単独でペーパーライクフィルムへと成形し使用することもできる。また、ポリエチレンフィルムやエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム等との二層フィルム、たとえば共押出しフィルムとして使用することもできる。
【0030】
【発明の効果】
本発明に係るフィルム用樹脂組成物は、タルクのように多量に配合される無機充填剤が、エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリン酸亜鉛の作用によって樹脂中に均一分散し、全体として各成分が均一混合した状態になる。その結果、本発明に係るフィルム用樹脂組成物は、機械的強度、耐水性および剛性に優れるとともに、紺色等の濃色によるカラー印刷適性に優れたペーパーライクフィルム(合成紙)を成形することができる。
【0031】
したがって、本発明に係るフィルム用樹脂組成物は、屋外用の印刷物、あるいは水物の包装体等に適しており、たとえばゴルフスコアー記入カード;地図;ヨーグルト、洗剤等の包装容器に貼着されるラベル;選挙ポスターなどの用途、さらにはカラー印刷される包装紙の用途に好適である。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
【0033】
【実施例1】
まず、プロピレン単独重合体[MFR(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg):4.5g/10分]30重量部と、タルク70重量部と、CaO 4重量部と、エチレンビスオレイン酸アミド1重量部とをヘンシェルミキサーで混合してマスターバッチを調製した。
【0034】
次いで、高密度ポリエチレン[MFR(ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg):0.03g/10分、密度:0.950g/cm3 、メルトテンション:25g]60重量部と、上記マスターバッチ40重量部とをヘンシェルミキサーで混合した後、CIM65mmφ[(株)日本製鋼所製2軸スクリュー]を用いて180〜200℃で溶融混練し、65mmφ単軸押出機でペレットを調製した。
【0035】
なお、使用したタルクは、平均粒径が3.0μmであり、吸油量が41ml/100gであり、含水分率が0.1%である。
また、使用した高密度ポリエチレンのメルトテンションは、(株)東洋精機製作所製のメルトテンションテスターを用い、下記の条件で測定した。
【0036】
<測定条件>
使用ノズル:有効長さL=8.000mm、口径D=2.095mm
試験温度:190℃
引取速度:2m/分
押出速度:15mm/分
上記のようにして得られたペレットを、50mmφインフレーションフィルム成形機[押出機:モダンマシーナリー(株)製モダンデルサー50mm、スクリュー:スクリューの長さ/スクリューの径比=24、圧縮比:2.0、ダイス直径RD :100mmφ、リップ幅:1mm]に供給し、下記の成形条件で、成形温度200℃、引取速度20m/分で厚さ40μmのフィルムを成形した。
【0037】
<フィルム成形条件>
A /RE =3.0
C=1000mm
C/RD =10
(RA :フロストライン以後のバブル直径
E :ダイス出口からフロストラインの間における最小バブル直径
C :ダイス出口からフロストラインの間において、バブル直径がダイス直径の0.8〜1.5倍である部分のフィルム引取方向長さ
D :ダイス直径)
上記のようにして得られたフィルムの片面をコロナ放電処理し、次いで、下記の条件で塗装、乾燥した。
【0038】
<塗装条件>
紺色の塗料:商品名 PANNカラー、東洋インキ(株)製
塗装機:日商グラビア印刷所(株)製のGRUO−PROOF−GM型塗装機
塗布量:4g/m2(固形分)
<乾燥条件>
乾燥機:上記塗装機と一体になっている熱風乾燥機
乾燥温度:70℃
乾燥時間:3秒
【0039】
上記のようにして得られたフィルム塗装品について、塗膜表面に白斑があるかどうか、また1m2 当たりの白斑の個数を肉眼で観察した。
その結果を第1表に示す。
【0040】
【実施例2】
実施例1において、エチレンビスオレイン酸アミドの代わりにステアリン酸亜鉛を用いた以外は、実施例1と同様にして、フィルム塗装品を調製した。
【0041】
このフィルム塗装品について、塗膜表面に白斑があるかどうか、また1m2 当たりの白斑の個数を肉眼で観察した。
その結果を第1表に示す。
【0042】
【比較例1】
まず、プロピレン単独重合体[MFR(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg):4.5g/10分]30重量部と、タルク70重量部と、ステアリン酸モノグリセリド1重量部とをヘンシェルミキサーで混合してマスターバッチを調製した。
【0043】
次いで、高密度ポリエチレン[MFR(ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg):0.03g/10分、密度:0.950g/cm3 、メルトテンション:25g]60重量部と、上記マスターバッチ40重量部とをヘンシェルミキサーで混合した後、CIM65mmφ[(株)日本製鋼所製2軸スクリュー)を用いて180〜200℃で溶融混練し、65mmφ単軸押出機でペレットを調製した。
【0044】
以下、このペレットを用いて、実施例1と同様にして、厚さ40μmのフィルムを成形、塗装してフィルム塗装品を得た。
このフィルム塗装品について、塗膜表面に白斑があるかどうか、また1m2 当たりの白斑の個数を肉眼で観察した。
その結果を第1表に示す。
【0045】
【比較例2】
比較例1で用いたステアリン酸モノグリセリドの代わりにラウリルジエタノールアミンを1重量部使用した以外は、比較例1と同様に行なった。
結果を第1表に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0003714649

Claims (3)

  1. メルトフローレート(ASTM D 1238,190℃、荷重2.16kg)が0.01〜0.1g/10分であり、密度が0.938〜0.965g/cm3 であり、メルトテンションが10g以上である高密度ポリエチレン(A)、
    メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)が0.3〜10g/10分であるプロピレン系重合体(B)、
    およびタルク(C)
    の合計量100重量部に対し、
    CaOおよび/またはMgOを0.05〜10重量部、ならびに
    エチレンビスオレイン酸アミドおよび/またはステアリン酸亜鉛を0.05〜3.0重量部含有しており、
    前記高密度ポリエチレン(A)、プロピレン系重合体(B)、およびタルク(C)の合計量100重量部が、高密度ポリエチレン(A)が40〜80重量部、プロピレン系重合体(B)が5〜20重量部、タルク(C)が15〜40重量部から構成されていることを特徴とするフィルム用樹脂組成物。
  2. 前記プロピレン系重合体(B)、タルク(C)、CaOおよび/またはMgO、ならびにエチレンビスオレイン酸アミドおよび/またはステアリン酸亜鉛を予め混合して得られたマスターバッチと、高密度ポリエチレン(A)とのブレンド物であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム用樹脂組成物。
  3. 合成紙用樹脂組成物であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム用樹脂組成物。
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