JP3713801B2 - 車両用エアバッグ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗員保護装置である車両用エアバッグ装置のためのエアバッグに関する。
【0002】
【従来の技術】
エアバッグ装置は、車両衝突時にエアバッグが膨張して乗員を保護する装置であり、ガス発生器であるインフレータと、該インフレータのガスによって膨張(インフレーション)するエアバッグとを備えてなり、車両のインストルメントパネルやステアリングホイール中央部等に配設されている。
【0003】
このようなエアバッグ装置のエアバッグは、乗員側布とインフレータ側布とが両者の周縁部において接合されて三次元形状に膨張可能な袋状に形成されており、その内部には、乗員側布とインフレータ側布とを連結する1又は複数のテザーが形成されており、このテザーによって、インフレーション時に、乗員側布とインフレータ側布との間隔が所定長以上に広がらないように規制している。
【0004】
このようなテザーを形成する方法として、脚片付きの補強布を、乗員側布及びインフレータ側布にそれぞれ縫着した後、この脚片の端末部を接合することにより形成することが公知である(特開平5−116575号)。
【0005】
図8に示すように、公知のエアバッグ100は、インフレータ側布101と乗員側布102の周縁部を縫合103して袋状に形成され、インフレータ側布101には、その中央部にインフレータ取付用の取付孔104が形成されている。この取付孔104の周縁部には脚片105,105を有する補強布106が縫着107され、また、この取付孔104に相対するように乗員側布102の中央部の内面にも脚片108,108を有する補強布109が縫着110されている。そして、互いに対向する脚片105,105,108,108同士を重ね合せて縫合することにより、インフレータ側布101と乗員側布102とを連結するテザー111,111が形成されている。
【0006】
このエアバッグ100では、図示するように、前記縫合された縫合部112,112がテザー111,111の長さ方向の中央部に配され、エアバッグ100の未膨張時においてテザー111,111が折曲げられる折曲げ線D,Dが、縫合部112,112の位置と一致している。このように、縫合部112と折曲げ線Dとが重なると、縫合部112を良好に折曲げることができず、そのため、エアバッグ100を折り畳む際にテザー111,111の配置が定まらないという問題がある。このように、テザー111の配置が定まらないと、エアバッグ100の折畳み性が悪いという問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、エアバッグ内でのテザーの配置が定まり易く、折畳み性に優れる車両用エアバッグを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の車両用エアバッグは、乗員側布とインフレータ側布とが両者の周縁部において接合されて三次元形状に膨張可能な袋状に形成され、その内部で、前記乗員側布と前記インフレータ側布とが、両者の間隔が所定長以上に広がらないように規制するテザーにより連結された車両用エアバッグにおいて、前記テザーが、前記乗員側布の中央部と前記インフレータ側布の中央部にそれぞれ取着されたテザー形成布の自由端を互いに接合することにより形成され、エアバッグを折畳まずに平面状態とした未膨張時において前記テザーが折曲げられる折曲げ線が、前記テザーの長さ方向の中央に配され、一方の前記テザー形成布の、エアバッグの中心線からその自由端までの長さと、他方の前記テザー形成布の、前記中心線から前記折曲げ線までの距離と、がほぼ等しく設定され、前記他方のテザー形成布が、前記接合のための重ね合せ部の長さだけ、前記一方のテザー形成布よりも長く形成されており、これにより、これらテザー形成布の自由端の接合部が、前記未膨張時において前記テザー折曲げ線と重ならないように、当該折曲げ線から前記一方のテザー形成布の取着端に向ってずらされたことを特徴とする。
【0009】
上記構成により、エアバッグの未膨張時において、テザーが折曲げられる折曲げ線と、テザー形成布を接合した接合部とが重ならない。そのため、エアバッグを折畳む際に、テザーが折れ曲り易く、エアバッグ内におけるテザーの配置が定まり易い。よって、エアバッグの折畳み性に優れる。
【0010】
請求項2の車両用エアバッグは、請求項1において、前記接合部が、前記2枚のテザー形成布を縫合する所定領域を有する縫合部であり、前記テザーの折曲げ線が、前記縫合部の領域外に配されたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例に係る車両用エアバッグ10について図1〜6を参照して説明する。
【0012】
このエアバッグ10は、運転席用エアバッグであり、図1はその一部欠截斜視図を、図2はその断面図を示している。
【0013】
このエアバッグ10は、インフレータ側布12と乗員側布14とから構成されている。両布12,14はともに円形であり、織布等のフレキシブルな素材よりなる。両布12,14はその周縁部において縫合16されて、袋状に形成されている。インフレータ側布12の中央部には、インフレータ18の頭部が取付けられる円形の取付孔20が形成されている。インフレータ18から噴出するガスによりエアバッグ10は図1,2に示すように三次元状に膨張する。
【0014】
符号22は、織布等のフレキシブルな素材よりなるストラップ状のテザーであって、インフレータ側布12と乗員側布14とを連結し、両布12,14の間隔がテザーの長さ以上に広がらないよう規制する。テザー22は、エアバッグ10の直径上において、取付孔20を中心とした対称な位置に2つが配されている。これにより、エアバッグ10が展開して膨張が完了した状態で図示のような均一な扁平状態を保持する。
【0015】
この2つのテザー22,22は、インフレータ側布12に縫着された第1のテザー形成布24と、乗員側布14に縫着された第2のテザー形成布26とから構成されている。第1のテザー形成布24は、図4に示すように、円形の基部28と、その周縁の相対する2箇所から直径方向の外方に延びるとともに前記基部28の直径より幅の狭い2本の脚部30,30とからなり、基部28がインフレータ側布12に縫着部29により縫着されている。第2のテザー形成布26も、同様に、円形の基部32と、その周縁に相対向する2箇所から直径方向に延びるとともに前記基部32の直径より幅の狭い2本の脚部34,34とからなり、基部32が乗員側布14に縫着部33により縫着されている。そして、2対の脚部30,30;34,34同士が、テザー22,22の長さ方向の略中央に位置する中間縫合部36,36で縫合されて、テザー22,22が形成されている。
【0016】
詳細には、中間縫合部36は、第1のテザー形成布24の脚部30の自由端を、第2のテザー形成布26の対応する脚部34の自由端と縫合することにより形成されており、該縫合は、互いの自由端が他方の固定端に向うように両脚部30,34を重ね合せて、その重ね合せ部を、図5に示すように、縫い目線37が矩形形状になるように縫製を施すことによりなされている。
【0017】
図3に示すように、エアバッグ10の未膨張時において、テザー22,22は、エアバッグ10の中心線Cから最も離れた位置で折曲げられる。なお、図3は、未膨張時における図2のA−A断面の略図であって、図では補強布44が省略して示されている。テザー22の中間縫合部36は、このテザー22の折曲げ線Dと重ならないように、即ち、矩形領域を有する中間縫合部36の領域内に折曲げ線Dが通らないように、折曲げ線Dから第1のテザー形成布24の縫着部29に向って若干ずらされている。これにより、図3,6に示すように、未膨張時において、テザー22は、第2のテザー形成布26で折れ曲がり、この折曲げられる折曲部に近接して中間縫合部36が設けられ、かつ、中間縫合部36がインフレータ側布12の内面に当接するように配されている。
【0018】
なお、図5,6に示すように、テザー22の折曲げ線Dは、矩形の中間縫合部36の領域外であれば、両脚部30,34の重ね合せ部内にあってもよい。
【0019】
図3に示すように、第1のテザー形成布24において、エアバッグ10の中心線Cから脚部30の自由端までの長さは、該中心線Cからテザー22の折曲げ線Dまでの距離L1にほぼ等しく設定されている。一方、第2のテザー形成布26において、前記中心線Cから脚部34の自由端までの長さは、該中心線Cからテザー22の折曲げ線Dまでの距離L2と、両脚部30,34の重ね合せ部の長さL3との和にほぼ等しく設定されている。このように、両テザー形成布24,26の長さは相違しており、中心線Cから半分の領域でみれば、第2のテザー形成布26の方が前記重ね合せ部の長さL3だけ長くなっている。
【0020】
なお、この実施例においては、第1のテザー形成布24の該中心線Cから縫着部29の外端までの長さL4と、第2のテザー形成布26の該中心線Cから縫着部33の外端までの長さL5とが、同一寸法に設定されているため、テザー22の長さ(縫着部29の外端から縫着部33の外端までの長さ)方向の中央に、テザー22の折曲げ線Dが配され、中間縫合部36が、このテザー22の中央の折曲げ線Dからインフレータ側布12の縫着部29に向って、ややずらされて形成されている。
【0021】
ここで、本エアバッグ10では、L1=150mm、L2=150mm、L3=30mm、L4=L5=50mm、テザー22の脚部30,34の幅=70mm、矩形の中間縫合部36の短辺寸法=8mm、同長辺寸法=60mmに設定されている。
【0022】
エアバッグ10を製造する際には、まず、インフレータ側布12に、図4に示すように、第1のテザー形成布24、補強布44を順次重ね合せて縫着29して、取付孔20を穿設する。また、乗員側布14に第2のテザー形成布26を縫着33する。その後、インフレータ側布12と乗員側布14とを、裏返した状態で縫合16し、さらに、第1及び第2のテザー形成布24,26の対応する脚部30,30;34,34の自由端を縫合36してテザー22,22を形成する。そして、取付孔20から乗員側布14を引出して、テザー22,22がエアバッグ10内に配されるように裏返すことによりエアバッグ10が得られる。
【0023】
以上よりなるエアバッグ10であると、その未膨張時において、テザー22の中間縫合部36が、テザー22の折曲げ線Dからずらされて形成されているため、テザー22が折れ曲り易い。そのため、該未膨張時におけるエアバッグ10内でのテザー22の配設状態が一定になり易い、即ち該配設状態が安定化するので、エアバッグ10内におけるテザー22の収納性が良く、よって、エアバッグ10の折畳み性に優れ、折畳み状態でのかさを小さくすることができる。
【0024】
また、この中間縫合部36を折曲げ線Dからややずらして形成するだけであるので、エアバッグの製造時における作業性は従来のものと実質的に同等であり、工数増加を伴なうものではない。
【0025】
なお、上記実施例においては、縫い目線37が矩形形状をなすように縫製することにより矩形領域を有する中間縫合部36を形成したが、中間縫合部36の外形輪郭線がほぼ矩形形状を呈するものであれば、必ずしも上記矩形の縫い目線37によるものに限定されることはない。また、強度的に満足するものであれば、矩形に限らず、他の形状よりなる所定領域を有する中間縫合部36とすることもできる。
【0026】
図7は、本発明の他の実施例に係る車両用エアバッグ50の未膨張時における断面略図である(図では補強布44を省略している)。この実施例においては、テザー22の中間縫合部36が、乗員側布14側に配されるように構成されている点で上記実施例と異なる。すなわち、テザー22の中間縫合部36が、テザー22の折曲げ線Dから第2のテザー形成布26の縫着部33に向って若干ずらされており、未膨張時において、テザー22は、第1のテザー形成布24において中間縫合部36に近接する部分で折曲する。そして、第1のテザー形成布24の中心線Cから脚部30の自由端までの長さが、中心線Cからテザー22の折曲げ線Dまでの距離L1と、両脚部30,34の重ね合せ部の長さL3との和にほぼ等しく設定され、一方、第2のテザー形成布26の中心線Cから脚部34の自由端までの長さが、中心線Cからテザー22の折曲げ線Dまでの距離L2にほぼ等しく設定されており、中心線Cから半分の領域でみれば、第1のテザー形成布24の方が前記重ね合せ部の長さL3だけ長くなっている。
【0027】
このように、本発明においては、テザー22の中間縫合部36を乗員側布14側に配してもよい。
【0028】
なお、本発明は、上述した運転席用エアバッグに限らず、助手席用や、他の個所に配される車両用エアバッグに適用可能であり、乗員側布及びインフレータ側布の形状も上記した円形状に限られるものではない。
【0029】
【発明の効果】
本発明の車両用エアバッグであると、エアバッグの未膨張時において、テザーが折曲げられる折曲げ線と、テザー形成布を接合した接合部とが重ならないため、この未膨張時においてテザーが折曲し易く、よって、エアバッグ内におけるテザーの配置が定まり易い。そのため、エアバッグを折畳んだ際のテザーのかさばりを低減することができ、エアバッグの折畳み性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る車両用エアバッグ10の一部欠截斜視図である。
【図2】エアバッグ10の断面図である。
【図3】エアバッグ10の未膨張時における断面略図である。
【図4】エアバッグ10の製造時におけるインフレータ側布12の平面図である。
【図5】エアバッグ10におけるテザー22の中間縫合部36の拡大平面図である。
【図6】テザー22の中間縫合部36を折曲げた状態を示す断面図である。
【図7】本発明の他の実施例に係る車両用エアバッグ50の未膨張時における断面略図である。
【図8】従来のエアバッグ100の断面略図である。
【符号の説明】
10,50……エアバッグ
12……インフレータ側布
14……乗員側布
16……縫合
22……テザー
24……第1のテザー形成布
26……第2のテザー形成布
29,33……縫着部
36……中間縫合部
D……テザー22の折曲げ線

Claims (2)

  1. 乗員側布とインフレータ側布とが両者の周縁部において接合されて三次元形状に膨張可能な袋状に形成され、その内部で、前記乗員側布と前記インフレータ側布とが、両者の間隔が所定長以上に広がらないように規制するテザーにより連結された車両用エアバッグにおいて、
    前記テザーが、前記乗員側布の中央部と前記インフレータ側布の中央部にそれぞれ取着されたテザー形成布の自由端を互いに接合することにより形成され、
    エアバッグを折畳まずに平面状態とした未膨張時において前記テザーが折曲げられる折曲げ線が、前記テザーの長さ方向の中央に配され、
    一方の前記テザー形成布の、エアバッグの中心線からその自由端までの長さと、他方の前記テザー形成布の、前記中心線から前記折曲げ線までの距離と、がほぼ等しく設定され、前記他方のテザー形成布が、前記接合のための重ね合せ部の長さだけ、前記一方のテザー形成布よりも長く形成されており、これにより、これらテザー形成布の自由端の接合部が、前記未膨張時において前記テザー折曲げ線と重ならないように、当該折曲げ線から前記一方のテザー形成布の取着端に向ってずらされたことを特徴とする車両用エアバッグ。
  2. 前記接合部が、前記2枚のテザー形成布を縫合する所定領域を有する縫合部であり、前記テザーの折曲げ線が、前記縫合部の領域外に配されたことを特徴とする請求項1記載の車両用エアバッグ。
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