以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の助手席用エアバッグ装置(以下「エアバッグ装置」と省略する)Mは、図1,19に示すように、インストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面2の内部に配置されるトップマウントタイプとされている。エアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、折り畳まれたエアバッグ17と、エアバッグ17に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ17及びインフレーター8を収納保持するケース12と、エアバッグ17及びインフレーター8をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、折り畳まれたエアバッグ17を覆うエアバッグカバー6と、を備えている。
エアバッグカバー6は、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、エアバッグ17の展開膨張時に、前後二枚の扉部6a,6bを、エアバッグ17に押されて開くように、構成されている(図1,19参照)。また、エアバッグカバー6における扉部6a,6bの周囲には、ケース12に連結される連結壁部6cが、形成されている。
インフレーター8は、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース12に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えて構成されている。実施形態の場合、インフレーター8は、図1,2に示すように、本体部8aにおけるフランジ部8cより上側の部位を、後述するガス流入口25を経て、エアバッグ17内に挿入させるようにして、エアバッグ17と連結されている。
ケース12は、上端側に略長方形状としたエアバッグ17突出用の開口12aを有して、長手方向を左右方向に略沿わせて配置される板金製の略箱形状として構成され、図1,2に示すように、開口12aに対向して下面側に配置される底壁部13と、底壁部13の外周縁から上方に延びてエアバッグカバー6の連結壁部6cを係止する周壁部14と、を備えて構成されている。底壁部13における前後左右の略中央には、インフレーター8を下方から挿入可能に略円形に開口した挿通孔13aが、形成されている。
また、底壁部13における挿通孔13a周縁には、リテーナ9の各ボルト9aを挿通させる挿通孔(図符号省略)が、形成されている(図2参照)。そして、実施形態の場合、エアバッグ17とインフレーター8とは、エアバッグ17内に配置させたリテーナ9の各ボルト9aを、エアバッグ17におけるガス流入口25の周縁、ケース12の底壁部13、及び、インフレーター8のフランジ部8cを、貫通させて、ナット10止めすることにより、ケース12の底壁部13に取り付けられている。また、ケース12の底壁部13には、車両のボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
エアバッグ17は、図3〜6に示すように、バッグ本体18と、バッグ本体18内に配置されてバッグ本体18の膨張完了形状を規制する縦テザー35,横テザー43と、を備えて構成されている。
バッグ本体18は、実施形態の場合、図1の二点鎖線及び図19に示すように、膨張完了時に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置可能な略袋状として構成されている。具体的には、バッグ本体18は、図3〜6に示すように、膨張完了時の形状を、頂部を前端側に配置させた略四角錐形状とされるもので、膨張完了時に乗員側となる乗員側壁部30と、乗員側壁部30の周縁から前方に延びるとともに前端側にかけて収束される先細り形状の周壁部19と、を備えている。
周壁部19は、エアバッグ17の膨張完了時に、主に、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウィンドシールド4との間を塞ぐように配置される部位であり、上下両側で略左右方向に沿って配置される上壁部20,下壁部21と、左右両側で略前後方向に沿って配置される左壁部22,右壁部23と、を備えている。バッグ本体18の膨張完了時の前端付近となる周壁部19における下壁部21の前端近傍には、内部に膨張用ガスを流入可能なガス流入口25が、インフレーター8の本体部8aを挿入可能に、略円形に開口して形成されている。このガス流入口25は、図8に示すように、下壁部21における左右の略中央となる位置に形成されるもので、下壁部21におけるガス流入口25の周縁には、リテーナ9のボルト9aを挿通させて、ガス流入口25の周縁をケース12の底壁部13に取り付けるための複数(実施形態の場合、4個)の取付孔26が、形成されている。また、周壁部19における左壁部22と右壁部23とには、バッグ本体18内に流入した余剰の膨張用ガスを排気するためのベントホール28が、略円形に開口して、形成されている。なお、実施形態のエアバッグ17では、ベントホール28は、周縁を略円環状のパッチ布(図符号省略)により、補強されている。
また、実施形態のエアバッグ17では、周壁部19において、上壁部20と下壁部21とに、それぞれ、周壁部19を構成する後述する周壁パネル部50の2枚の外左パネル51,外右パネル52の上縁51c,54a相互、下縁51d,54b相互を、それぞれ、結合(縫着)させて形成される上側縫合部61(上側結合部)と下側縫合部62(下側結合部)とが、配置されている(図3,7,8参照)。上側縫合部61は、乗員側壁部30における凹部31の部位から前方に延びるように、形成されるもので、実施形態の場合、乗員側壁部30において、凹部31の凹みの底側部(前端31a)を構成している内側縫合部63の上端63aから連なるように、形成されている。また、この上側縫合部61は、図7に示すように、膨張完了時のエアバッグ17を上下方向側から見た状態で、前端61a側を左方に向けるように、前後方向に対して傾斜して、構成されている。詳細には、実施形態の場合、上側縫合部61は、後端61b側の部位を左方に突出させるようになだらかに湾曲させつつ前端61a側の部位を前後方向に対して傾斜した略直線状として、前端61a側を、左右の中央を通る中心線CLから離隔させつつ、左方に向けるように、傾斜して配置されている。また、上側縫合部61は、実施形態の場合、前端61aを、バッグ本体18の前端側の部位を構成する前側縫合部65の左端65aと連結させるようにして、上壁部20の前後の略全域にわたって、配置されている(図3,7参照)。
下側縫合部62は、上側縫合部61と同様に、乗員側壁部30における凹部31の凹みの先端(底側部)を構成している内側縫合部63の下端63bから連なるように、凹部31の部位から前方に延びて形成されている。下側縫合部62は、図8に示すように、膨張完了時のエアバッグ17を上下方向から見た状態で、前端62aを、上側縫合部61の前端61aと左右方向側で相互に離隔させるように、前端62a側を右方に向けるように、前後方向に対して傾斜して、構成されている。詳細には、下側縫合部62は、後端62b側の部位を右方に突出させるようになだらかに湾曲させつつ前端62a側の部位を前後方向に対応して傾斜した略直線状として、前端62a側を、中心線CLから離隔させつつ、右方に向けるように、傾斜して配置されている。また、下側縫合部62は、実施形態の場合、前端62aを、ガス流入口25の周縁において縦テザー35の後述する前側部位36を結合させている連結縫合部66の右後端66aに近接させるようにして、下壁部21の前後の略全域にわたって、配置されている(図8参照)。実施形態では、乗員側壁部30に形成される内側縫合部63は、エアバッグ17の膨張完了時に、上下方向若しくは前後方向に略沿って配置される構成であり(図4,7,8参照)、内側縫合部63の上端63a側及び下端63b側からそれぞれ前方に延びる上側縫合部61と下側縫合部62とは、膨張完了時のエアバッグ17を上下方向側から見た状態において、後端61b,62b側を略一致させつつ、前端61a,62a側を相互に左右方向側で離隔させるようにして、交差しないように、配置されている。
乗員側壁部30は、バッグ本体18の膨張完了時に、助手席に着座した乗員と対向するように、乗員側となるバッグ本体18の後端側において略鉛直方向に沿って配設される。乗員側壁部30は、バッグ本体18の膨張完了時において、左右方向の略中央となる位置に、前方側に凹ませるような凹部31を、上下方向に略沿って、配設させた構成とされている(図4,5参照)。この凹部31は、実施形態の場合、乗員側壁部30の上下の略全域にわたって、配設されている。そして、乗員側壁部30における凹部31の左右両側には、相対的に後方に突出する突出部32L,32Rが、配設されている。すなわち、実施形態のバッグ本体18の乗員側壁部30には、バッグ本体18の膨張完了時に、左右方向の中央で凹む凹部31と、凹部31の左右両側に配置される突出部32L,32Rと、が、上下方向に沿って連続的に配設されている(図4,5参照)。具体的には、実施形態の場合、左右の突出部32L,32Rの隆起した状態と凹部31の凹んだ状態とは、乗員側壁部30の上下の略全域にわたって、略同一として、周壁部19における上壁部20,下壁部21の領域内において、前方にかけて凹凸を収束させるような形状とされている。そして、実施形態のバッグ本体18では、凹部31における凹みの先端(前端31a)は、乗員側壁部30を構成する後述する内左パネル57,内右パネル58の内周縁57b,58b相互を縫着(結合)させて形成される内側縫合部63から、構成され、各突出部32L,32Rにおける突出頂部32aは、外左パネル51,外右パネル52の後縁51e,54cと、内左パネル57,内右パネル58の外周縁57a,58aと、をそれぞれ縫着させて形成される外側縫合部64L,64Rから、構成されている(図4,5参照)。
バッグ本体18内に配置される縦テザー35は、可撓性を有したシート材から構成されるもので、膨張完了時の凹部31の前端31a側を前方に引っ張るように、バッグ本体18内に配置されている。詳細には、実施形態の場合、縦テザー35は、図4,5,9に示すように、周壁部19側となる前側部位36と、乗員側壁部30側となる後側部位41L,41Rと、を備えて構成されている。
前側部位36は、ガス流入口25を中心とした左右対称形となるように、ガス流入口25の左方と右方とから、それぞれ、後側部位41L,41R側に延びる帯状の部材を有した二股状として、構成されている。実施形態の場合、前側部位36は、図10に示すように、ガス流入口25を中心として左右対称形とされる2枚の前側部位用基材37L,37Rから構成されている。各前側部位用基材37L,37Rは、それぞれ、バッグ本体18に連結される連結部38L,38Rと、連結部38L,38Rから後方に延びる本体部39L,39Rと、を備えている。連結部38L,38Rは、長手方向を左右方向に略沿わせた略長方形状として構成されるもので、中央に、ガス流入口25及び取付孔26に対応する開口38a,38bを配置させている。本体部39L,39Rは、前側部位用基材37L,37Rを平らに展開した状態において、連結部38L,38Rにおける左縁若しくは右縁から、後方に延びるような略帯状として構成されるもので、先端(後端39a)側を、左右の外方に向けるように、前後方向に対して傾斜して構成されている。すなわち、実施形態の前側部位36では、前側部位用基材37L,37Rを、連結部38L,38R相互をガス流入口25周縁の部位に重ねるようにして平らに展開した状態で、本体部39L,39Rが、先端(後端39a)を左右方向側で相互に離隔させるように、傾斜して、配置されることとなる(図12のA参照)。そして、実施形態では、前側部位36は、連結部38L,38Rを、外周縁38cを一致させるようにして、周壁部19における下壁部21のガス流入口25周縁となる部位に重ね、ガス流入口25周縁となる部位と、外周縁38c近傍となる部位と、で、縫合糸を用いて、連結縫合部66,67を形成するように、下壁部21に縫着させて、下壁部21に連結されている。また、本体部39L,39Rは、先端(後端39a)側を、それぞれ、後側部位41L,41Rの前端41a側に、縫合部72L,72Rを形成するようにして、縫合糸を用いて縫着(連結)されている。
後側部位41L,41Rは、シート状として、実施形態の場合、バッグ本体18における乗員側壁部30を構成する内左パネル57及び内右パネル58の内周縁57b,58bからそれぞれ延びて、内左パネル57及び内右パネル58と一体的に構成されている(図4,5参照)。詳細には、実施形態の場合、各後側部位41L,41Rは、前側部位36の本体部39L,39Rに連結される前端41a側から、後端41b側となる内左パネル57,内右パネル58の内周縁57b,58bに向かって上下に拡開するような略台形状として、構成されている。そして、後側部位41L,41Rは、内左パネル57及び内右パネル58と一体として、換言すれば、内左パネル57及び内右パネル58の内周縁57b,58b相互を縫着させる内側縫合部63から直接的に延びるように構成されている。実施形態の場合、前側部位用基材37L,37Rと、後側部位41L,41Rと、は、エアバッグ17の膨張完了時に、相互に連結される縫合部72L,72Rを、間に空間を設けるように、相互に離隔させて配置させるように、構成されている。
横テザー43は、バッグ本体18の膨張完了時において、左壁部22と右壁部23とを連結するように、左右方向に略沿って配置されるもので、実施形態の場合、図4,6に示すように、縦テザー35の上方となる領域と下方となる領域との2箇所に、配置されている。実施形態の場合、縦テザー35の上方に配置される上側横テザー44と、縦テザー35の下方に配置される下側横テザー46と、は、左右方向に略沿った帯状として、バッグ本体18の膨張完了時に、水平方向に略沿うように、配置されており、上側横テザー44は、下側横テザー46よりも幅広として、構成されている(図4参照)。また、実施形態の場合、上側横テザー44と下側横テザー46とは、ともに、可撓性を有したシート材からなる2つの基材45,47の端部相互を縫着(結合)させることにより、構成されている。そして、実施形態の場合、上側横テザー44と下側横テザー46とは、図6に示すように、全体の左右方向側の幅寸法を略同一として構成されるものの、基材45,47の端部相互を結合させる縫合部69,70を、左右の中央、又は、ガス流入口25から左方あるいは右方の反対側にずらすように、基材45,47自体の長さ寸法を異ならせて構成されている。上側横テザー44を構成する基材45は、左側部位45aの長さ寸法を長くし、右側部位45bの長さ寸法を短く設定して、左側部位45aと右側部位45bとの端部相互を縫着させる縫合部69を、バッグ本体18の膨張完了時に、左右の中央、又はガス流入口25よりも右側にずれた位置に配置させるように、構成されている。逆に、下側横テザー46を構成する基材47は、左側部位47aの長さ寸法を短くし、右側部位47bの長さ寸法を長く設定して、左側部位47aと右側部位47bとの端部相互を縫着させる縫合部70を、バッグ本体18の膨張完了時に、左右の中央、又は、ガス流入口25よりも左側にずれた位置に配置させるように、構成されている。なお、このように左右で2分割させる構成とすれば、エアバッグの製造時に、1つの帯状の基材から構成する場合と比較して、両端を、左壁部,右壁部へ連結させる作業が、周壁部19の縫製(結合)前に予め行なうことができて、容易となることから、左右で2分割した2つの基材を連結させて構成することが好ましい。
バッグ本体18は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて袋状に構成されるもので、実施形態の場合、図10に示すように、主に周壁部19側を構成する周壁パネル部50と、主に乗員側壁部30側を構成する乗員側パネル部56と、を備えて構成されている。周壁パネル部50は、2枚の外左パネル51,外右パネル52から構成され、乗員側パネル部56は、左右一対の内左パネル57,内右パネル58から構成されている。
周壁パネル部50を構成する外左パネル51及び外右パネル52は、周壁部19を左右で2分割するように構成されるもので、図10に示すように、それぞれ、略扇形状として、構成されている。実施形態のエアバッグ17では、外左パネル51と外右パネル52とは、上縁51c,54a相互、下縁51d,54b相互を、それぞれ、結合(縫着)させることにより、略筒状の周壁部19を構成しており、外左パネル51と外右パネル52との上縁51c,54a相互を縫着させた上側縫合部61と、外左パネル51と外右パネル52との下縁51d,54b相互を縫着させた下側縫合部62と、は、上述したごとく、前後方向に対して傾斜するように構成されていることから、外左パネル51と外右パネル52とは外形形状を僅かに異ならせるようにして、構成されている。
外左パネル51は、ガス流入口25の周縁を構成する元部側部位51aと、元部側部位51aから乗員側パネル部56側にかけて拡開するように形成される略扇形状の先端側部位51bと、を備えて、外形形状を略扇形状とされている。先端側部位51bは、左壁部22と、上壁部20における左後半分程度の領域と、下壁部21における左前半分程度の領域と、乗員側壁部30の突出部32Lにおける突出頂部32aから左側の領域と、を構成する部位である。外左パネル51の上縁51cは、上側縫合部61の形成される部位であり、上側縫合部61の湾曲形状に対応して、僅かに凹むように湾曲して、形成されている。また、外左パネル51の下縁51dは、下側縫合部62の形成される部位であり、下側縫合部62の湾曲形状に対応して、僅かに外方に突出するように湾曲して形成されている。
外右パネル52は、略扇形状の本体部54と、ガス流入口25の周縁を構成するように本体部54の元部側において突出して形成される突出部53と、を備えている。本体部54は、右壁部23と、上壁部20における右前半分程度の領域と、下壁部21における右後半分程度の領域と、乗員側壁部30の突出部32Rにおける突出頂部32aから右側の領域と、を構成する部位である。本体部54の上縁54aは、外左パネル51の上縁51cの湾曲形状に対応して、わずかに上方に突出するように湾曲して、形成されている。本体部54の下縁54bは、外左パネル51の下縁51dの湾曲形状に対応して、わずかに凹むように湾曲して、形成されている。また、実施形態のバッグ本体18では、外左パネル51の後縁51eと、外右パネル52における本体部54の後縁54cと、は、外形形状を略一致させて構成されている。
内左パネル57及び内右パネル58は、乗員側壁部30における各突出部32L,32Rの突出頂部32a,32a間の領域を、構成している。詳細には、内左パネル57及び内右パネル58は、周壁部19における上壁部20の後半分程度の領域から、乗員側壁部30における各突出部32L,32Rの突出頂部32a,32a間の部位にかけての領域を構成するもので、この領域を、凹部31の先端(前端31a)となる位置で左右に2分割し、それぞれ、凹部31の前端31aから左側の突出部32Lの突出頂部32aまでの領域と、凹部31の前端31aから右側の突出部32Rの突出頂部32aまでの領域と、を構成するように、略三日月形状に湾曲した左右一対とされている。そして、実施形態の場合、内左パネル57,内右パネル58の内周縁57b,58b側には、縦テザー35の後側部位41L,41Rを構成する延設部57c,58cが、それぞれ、形成されている。また、内左パネル57,内右パネル58は、平らに展開した状態で、外周縁57a,58aを、外左パネル51,外右パネル52の後縁51e,54cの湾曲形状に略沿わせるように、構成されている。
また、実施形態のバッグ本体18には、ガス流入口25の周縁を補強する1枚の補強布59が、配設されている。補強布59は、図4,5に示すように、バッグ本体18内におけるガス流入口25の周縁であって、縦テザー35を構成する前側部位36の連結部38L,38Rの上に配置されるもので、ガス流入口25から前方に延びる延設部59aを、備えている。この延設部59aは、図4に示すように、エアバッグ17の膨張完了時に、後述する前側縫合部65の内周側を覆って、ガス流入口25から内部に流入した膨張用ガスが、前側縫合部65に直接当たるのを防止するためのものである。
実施形態では、バッグ本体18を構成する外左パネル51,外右パネル52,内左パネル57,内右パネル58、縦テザー35を構成する前側部位用基材37L,37R、横テザー43を構成する基材45,47、及び、補強布59は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布からなるエアバッグ用基布を裁断して、形成されている。
次に、エアバッグ17の製造について述べる。なお、内左パネル57と内右パネル58とは、平らに展開した状態で、外周縁57a,58a相互を一致させるように重ね、内周縁57b,58b相互を、縫合糸を用いて縫着させて、内側縫合部63を形成しておく(図13のA参照)。
まず、図11のAに示すように、外左パネル51に、上側横テザー44を構成する基材45の左側部位45aと、下側横テザー46を構成する基材47の左側部位47aと、の一端側を、縫合糸を用いて縫着させる。同様に、外右パネル52に、上側横テザー44を構成する基材45の右側部位45bと、下側横テザー46を構成する基材47の右側部位47bと、の一端側を、縫合糸を用いて縫着させる。次いで、図11のBに示すように、外左パネル51と外右パネル52とを、外表面側を内側に向けつつ、下縁51d,54bの前側の領域を一致させるように、重ね、下縁51d,54b相互を、全域にわたって縫合糸を用いて縫着させて、下側縫合部62を形成する(図12のA参照)。
その後、図12のAに示すように、外左パネル51と外右パネル52とを、下側縫合部62を中心として開き、外右パネル52の突出部53を外左パネル51の元部側部位51a上に重ね、さらに、縦テザー35の前側部位36を構成する各前側部位用基材37L,37Rを、連結部38L,38Rの外周縁38cを一致させるようにして、突出部53上に重ね、さらに、この連結部38L,38Rの上に補強布59を重ねて、ガス流入口25の周縁の部位と、連結部38L,38Rの外周縁38cの部位と、で、縫合糸を用いて縫着させて、連結縫合部66,67を形成し、突出部53と元部側部位51aとを縫着させると同時に、補強布59と、縦テザー35における前側部位36の連結部38L,38Rと、を、周壁部19に連結させる。その後、孔明け加工により、ガス流入口25,取付孔26を、形成する(図12のA参照)。
次いで、図12のBに示すように、外左パネル51と外右パネル52とを、外表面側を内側に向けるように二つ折りし、外左パネル51と外右パネル52との上縁51c,54a相互を、縫合糸を用いて縫着させて、上側縫合部61を形成する(図13のA参照)。その後、図13のBに示すように、後縁51e,54c相互を離隔させるように開いた状態の外左パネル51,外右パネル52に、外周縁57a,58a相互を離隔させるように開いた状態の内左パネル57,内右パネル58を重ね、内左パネル57の外周縁57aと外左パネル51の後縁51eとを縫合糸を用いて縫着させて、外側縫合部64Lを形成し、同様に、内右パネル58の外周縁58aと外右パネル52の後縁54cとを縫合糸を用いて縫着させて、外側縫合部64Rを形成する(図13のB参照)。
その後、上側横テザー44を構成する基材45の左側部位45aと、右側部位45bと、の端部相互を、縫合部69を形成するように縫合糸を用いて縫着させて、上側横テザー44を形成する。同様に、下側横テザー46を構成する基材47の左側部位47aと、右側部位47bと、の端部相互を、縫合部70を形成するように縫合糸を用いて縫着させて、下側横テザー46を形成する。その後、図13のC,図14のAに示すように、縦テザー35の前側部位36を構成する本体部39L,39Rと、後側部位41L,41Rと、を、それぞれ、対応する後端39a,前端41a相互を、縫合部72L,72Rを形成するように縫合糸を用いて縫着させて、縦テザー35を形成する。次いで、前端側の非縫合の部位を利用して、縁部の縫い代が外部に露出しないように反転させた後、図14のBに示すように、外左パネル51の前縁51fと、外右パネル52における突出部53,本体部54の前縁53a,54dと、を、縫合糸を用いて縫着させて、前側縫合部65を形成すれば、エアバッグ17を製造することができる。
そして、エアバッグ17の製造後、各取付孔26からボルト9aを突出させるようにして、内部にリテーナ9を配設させた状態で、エアバッグ17を折り畳む。具体的には、実施形態では、エアバッグ17は、図15,16に示す模式図のごとく、乗員側壁部30の上下の中央部位付近を平らに展開するように、所定箇所に左右方向に沿った折目を付けて折り畳み、略左右対称形の略平面状(略平板状)に展開させた予備折りエアバッグ75から、前後方向に沿った折目を付けて折り畳む左右縮小折りと、左右方向に沿った折目を付けて折り畳む前後縮小折りと、を経て、前後左右の幅寸法を縮めるように、折り畳まれることとなる。
予備折りエアバッグ75の状態では、図15,16に示すように、乗員側壁部30における膨張完了時の凹部31の前端31aを構成する内側縫合部63が、中心線CLと一致するように、左右の中央において前後方向に略沿って配置されるものの、周壁部19に配置される上側縫合部61と下側縫合部62とが、ともに、内側縫合部63と交差するように、前後方向に対して傾斜して配置されており、部分的に相互に重なるのみであって、前後に広い領域で相互に重なるのを抑制されている。また、この予備折りエアバッグ75の状態では、縦テザー35における前側部位36の本体部39L,39Rと後側部位41L,41Rとを縫着させている縫合部72L,72Rは、内側縫合部63と重ならないように、それぞれ、内側縫合部63から左右にずれた位置に配置されることとなり(図16参照)、また、上側横テザー44の縫合部69及び下側横テザー46の縫合部70も、予備折りエアバッグ75の状態で、内側縫合部63と重ならないように、それぞれ、内側縫合部63から左右にずれた位置に配置されている(図15参照)。さらに、上側横テザー44の縫合部69(縫合ラインSL)及び下側横テザー46の縫合部70(縫合ラインSL)は、ガス流入口25より左右方向の外側に位置し、後述する前後方向に沿った折目VC(最もガス流入口25近い折目)より、内側に配置されている。(図15参照)
左右縮小折りでは、予備折りエアバッグ75において、ガス流入口25の左側となる左側部位76と、ガス流入口25の右側となる右側部位77と、を、それぞれ、前後方向に沿った折目VC(図15、図16参照)をつけて、先端76a,77aを左右の外方に向けつつガス流入口25側(周壁部19側)の面に載せるように蛇腹折りして蛇腹折り部位78L,78Rを形成し、図17のAに示すように、左右縮小折りエアバッグ80を形成する。
その後、左右縮小折りエアバッグ80を、左右方向に沿った折目HC(図17のA参照)をつけつつ、後端80a側から周壁部19側に向かって巻くようにロール折りして、図17のBに示すように、ロール折り部位81を形成する。このロール折り部位81を、反転させるようにしてガス流入口25上に載せ(図18のA参照)、ガス流入口25の前側となる前側部位82を、ロール折り部位81の前側を覆うように折って、前後縮小折りを行ない、図18のBに示すように、折り完了体83を形成し、エアバッグ17の折り畳みを完了する。この折り完了体83では、蛇腹折り部位78L,78Rは、ガス流入口25から左右にずれた位置に、配置されている。また、折り畳み完了時、上側横テザー44の縫合部69及び下側横テザー46の縫合部70は、ガス流入口25より左右方向の外側に位置し、前後方向に沿った折目VC(最もガス流入口25近い折目)より、内側に配置されている。(図18B参照)
次いで、折り完了体83の周囲を、折り崩れしないように、破断可能な図示しないラッピングシートによりくるんでおく。そして、各ボルト9aをケース12の底壁部13に挿通させつつ、折り畳んだエアバッグ17(折り完了体83)をケース12の底壁部13に載置させる。次いで、インフレーター8の本体部8aを、底壁部13の下方から、挿通孔13aを経てケース12内に挿入させるとともに、底壁部13から下方に突出している各ボルト9aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させる。その後、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト9aにナット10を締結させれば、ケース12の底壁部13に対して、折り畳んだエアバッグ17とインフレーター8とを取り付けることができる。
そして、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー6の連結壁部6cに、ケース12の周壁部14を係止させ、ケース12の図示しない所定のブラケットを、車両のボディ側に固定させれば、エアバッグ装置Mを車両に搭載することができる。
エアバッグ装置Mの車両への搭載後、車両の前面衝突時、インフレーター8の各ガス吐出口8bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ17が内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを、図19に示すように、押して開かせることとなる。そして、エアバッグ17は、エアバッグカバー6の扉部6a,6bが開いて形成された開口12aから、上方へ突出するとともに、車両の後方側へ展開膨張して、図19,20に示すごとく、膨張を完了させることとなる。
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、周壁部19の領域において、乗員側壁部30における凹部31の部位から前方に延びるように形成される結合部位としての上側縫合部61と下側縫合部62とが、前後方向に対して傾斜するように、構成されていることから、エアバッグ17を、前後の幅寸法を縮めるように折り畳んだ際に、上側縫合部61,下側縫合部62相互が左右の中央付近において重なって配置されることを、抑制できる。そのため、外左パネル51と外右パネル52との端縁を重ねられる縫合代(結合代)を備える上側縫合部61,下側縫合部62が、連続して配置される構成であっても、エアバッグ17の折り畳み完了時に、左右の中央付近の部位が嵩高くなることを抑制できて、エアバッグ17を、コンパクトに折り畳むことができ、ケース12の高さを抑えることができて、搭載スペースが小さな部位にも、容易にエアバッグ装置Mを搭載できる。
したがって、実施形態の助手席用エアバッグ装置Mでは、搭載スペースが小さい場合にも、支障なく搭載することができる。
特に、実施形態のエアバッグ装置Mでは、凹部31の凹みの先端(前端31a)を構成する内側縫合部63が、上下方向に沿って(予備折りエアバッグ75においては、前後方向に沿って)配置される構成であるものの(図7,8,15,16参照)、上側縫合部61と下側縫合部62とが、ともに、図7,8に示すように、前後方向に対して傾斜するように構成されていることから、前後縮小折り時に、上側縫合部61及び下側縫合部62が、内側縫合部63と重なって配置されることを、極力防止することができ、上下方向に沿って配置される長尺状の内側縫合部63を備える構成であっても、エアバッグ17の折り畳み完了時に、左右の中央付近の部位が嵩高くなることを、極力抑制することができる。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、バッグ本体18の内部に、膨張完了時のバッグ本体18の外形形状を規制する縦テザー35と横テザー43とを配置させているが、縦テザー35は、左右の部位を連結するような連結部もなく、間に空間を有するようにして、左右に分岐するように構成され、前側に配置される前側部位36と後側に配置される後側部位41L,41Rとを連結(縫着)させる縫合部72L,72Rも、左右の中央を通らず、予備折りエアバッグ75の状態で、左右に離隔して配置される構成である(図16参照)。また、横テザー43も、縦テザー35の上方と下方との2箇所に配置されるものの、上側横テザー44と下側横テザー46とは、それぞれ、左右方向の長さ寸法を異ならせた2枚の基材45,47から構成されており、各基材45(左側部位45a,右側部位45b),基材47(左側部位47a,右側部位47b)を連結させる縫合部69,70は、それぞれ、左右の中央に位置せず、左右の中央から左方あるいは右方にずれた位置に配置されている(図6参照)。そして、これらの縫合部69,70は、予備折りエアバッグ75の状態でも、左右の中央を通る中心線CLの左方あるいは右方にずれた位置に、配置されている(図15参照)。そのため、これらの縫合部69,70,72L,72Rが、前後縮小折り時に、内側縫合部63と重なって配置されることを、極力防止することができ、エアバッグ17の折り畳み完了時に、左右の中央付近の部位が嵩高くなることを、極力抑制することができる。また、縫合部69、70が、それぞれ、左方あるいは右方にずれた位置に配置されている為、折畳完了時ではお互い重なることがなく、局部的に嵩高くなることを抑制できる。さらに、縫合部69(縫合ラインSL)及び縫合部70(縫合ラインSL)は、ガス流入口25より外側に位置し、前後方向に沿った折目VC(最もガス流入口25近い折目)より内側に配置されている為、折畳完了時、縫合部69、70がインフレーター8の直上に来ることがなく、左右の中央付近が嵩高くなることを、抑制することができる(図15参照)。
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、周壁部19において、上壁部20と下壁部21との領域に配置される上側縫合部61(上側結合部)と、下側縫合部62(下側結合部)と、が、膨張完了時のエアバッグ17を上下方向側から見た状態で、前端61a,62a側を、左右方向側で相互に離隔させつつ、それぞれ、左右の一方に向けるように、ともに、前後方向に対して傾斜して配置される構成である。そのため、周壁部19の上面側と下面側とに、上側縫合部61と下側縫合部62とが、それぞれ、連続して配置される構成であっても、エアバッグ17の折り畳み時に、上側縫合部61と下側縫合部62とが相互に重なる領域を極力小さくすることができ、左右の中央付近の部位が嵩高くなることを的確に抑制できる。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、周壁部19を構成する周壁パネル部50が、外左パネル51と外右パネル52との2枚の基材から構成されていることから、周壁部を1枚の基材から構成する場合と比較して、歩留まりを良好にし、エアバッグ17の製造コストの増大を抑制することもできる。なお、このような点を考慮しなければ、周壁部を1枚の基材から構成し、周壁部の上面側と下面側とのどちらか一方に、結合部を配置させる構成としてもよい。
なお、実施形態では、エアバッグ17が、乗員側壁部30も、左右で2分割される2枚の基材(内左パネル57,内右パネル58)から、構成され、凹部31の前端31aは、内左パネル57,内右パネル58の内周縁57b,58b相互を縫着させる内側縫合部63から構成されているが、本発明を適用可能なエアバッグは、実施形態に限られるものではなく、上述した特許文献2に記載のエアバッグのごとく、乗員側壁部を1枚の基布から構成したタイプのエアバッグにも、本発明は適用可能である。なお、実施形態のエアバッグ17のごとく、乗員側壁部30を内左パネル57,内右パネル58の2枚の基材から構成し、凹部31の凹みの先端(前端31a)を内側縫合部63から構成する場合、歩留まりを一層良好にできる上、エアバッグ17の膨張完了時に、凹部31の凹みの状態を安定させることができる。