JP3712558B2 - ブーム式作業車の安全装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行自在な車体に少なくとも起伏及び伸縮動自在に設けたブームの先端部に、作業台やクレーン装置等の作業装置を取り付けてなるブーム式作業車の安全装置に関し、更に詳しくは、このような作業車の車体の転倒を防止する安全装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ブーム式作業車は一般に、走行自在な車体に起伏、伸縮、旋回動自在なブームが設けられ、このブームの先端部に作業車搭乗用の作業台やクレーン装置等の作業装置が取り付けられて構成されている。そして、ブームを起伏、伸縮、旋回動させて作業装置を所望の位置に移動させることにより、目的に応じた作業を行うことができるようになっている。
【0003】
このようなブーム式作業車においてブームを起伏、伸長等させた場合には車体の重心はブームの先端部方向に移動し、車体を転倒させる方向のモーメント(以下、転倒モーメントとする)は増大する。このように転倒モーメントが増大すると車体は不安定な状態となり転倒する虞もあるため、ブーム作業車には通常、転倒モーメントが車体を転倒させる大きさに至る前にブームの作動を規制する規制装置が組み込まれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような規制装置を備え、ブームを許容範囲内で起伏、伸長等させている場合であっても、ブームを大きく伸長させた状態、或いは伸長量は小さくてもブームを大きく起仰させた状態では車体の不安定度は高くなる。そしてこのような状態のまま車体を走行させ、上り傾斜面や段差に差し掛かったような場合には、転倒モーメントが急激に増大して車体が転倒に至る虞があった。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、ブームを大きく起仰若しくは伸長させた状態で上り傾斜面や段差等を走行した場合であっても車体が転倒する虞がなく、安全性の高いブーム式作業車の安全装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するため、第1の本発明に係るブーム式の作業車の安全装置は、
走行自在な車体(例えば、実施形態における走行体11)と、車体に少なくとも起伏及び伸縮自在に設けられたブームと、ブームの先端部に取り付けられた作業装置(例えば、実施形態における作業台15)とを有して構成されるブーム式作業車において、ブームの起伏角度を検出する起伏角度検出手段(例えば、実施形態における起伏角度検出器31)と、ブームの長さを検出する長さ検出手段(例えば、実施形態における長さ検出器32)と、車体の前後方向の傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段(例えば、実施形態における傾斜角度検出器34)と、起伏角度検出手段により検出されたブームの起伏角度が予め設定された基準起伏角度を上回っているか若しくは長さ検出手段により検出されたブームの長さが予め設定された基準長さを上回っていることが検知され、且つ傾斜角度検出手段により検出された車体の傾斜角度が予め定めた基準傾斜角度を上回っていることが検知されたときに車体の走行を禁止する走行規制手段(例えば、実施形態におけるコントローラ40)とを有している。この基準傾斜角度は、ブームの起伏角度が基準起伏角度であり且つブームの長さが基準長さである場合に、作業台の負荷荷重が最大であるとき、車体が転倒に至る限界の角度に所定係数(<1)を乗じて定められる。
【0007】
このような構成の安全装置によれば、ブームの起伏角度が基準起伏角度を上回っているか、若しくはブームの長さが基準長さを上回っている状態で車体を走行させ、車体の傾斜角度が基準傾斜角度よりも大きくなった場合には車体の走行が禁止される。このため、ブームを大きく起仰若しくは伸長させた状態で上り傾斜面や段差等を走行した場合であっても車体が転倒する虞がなく、安全に作業を行うことができる。
【0008】
また第2の本発明に係るブーム式作業車の安全装置は、走行自在な車体と、車体に少なくとも起伏及び伸縮動自在に設けられたブームと、ブームの先端部に取り付けられた作業装置とを有して構成されるブーム式作業車において、ブームの起伏角度を検出する起伏角度検出手段と、ブームの長さを検出する長さ検出手段と、車体の前後方向の傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、傾斜角度検出手段により検出された車体の傾斜角度が起伏角度検出手段により検出されたブームの起伏角度及び長さ検出手段により検出されたブームの長さの組み合わせに対応して定められる基準傾斜角度を上回っていることを検知したときに車体の走行を禁止する走行規制手段とを有している。この基準傾斜角度は、任意の前記ブームの起伏角度及び前記ブームの長さにおいて、作業台の負荷荷重が最大であるとき、車体が転倒に至る限界の角度に所定係数(<1)を乗じて定められる。
【0009】
このような構成の安全装置によれば、車体の傾斜角度が、そのときのブームの起伏角度及び長さの組み合わせに対応して定められる基準傾斜角度を上回った場合には車体の走行が禁止される。このため、第1の本発明に係る安全装置の場合と同様、ブームを大きく起仰若しくは伸長させた状態で上り傾斜面や段差等を走行した場合であっても車体が転倒する虞がない。
【0010】
なお、上記二つの安全装置において、上記走行規制手段により車体の走行が禁止されているときにブームの起仰及び伸長作動を禁止するブーム作動規制手段(例えば、実施形態におけるコントローラ40)を有することが好ましい。このようにすれば、走行規制された状態から誤ったブーム作動を行って車体をより不安定な状態にしてしまう危険を未然に防止することができる。また、このような規制が行われた場合、第1の安全装置では、ブームを倒伏させてブームの起伏角度を基準起伏角度よりも小さくさせ、且つブームを収縮させてブーム長さを基準長さよりも短くさせることにより上記規制を解除させることができる。また第2の安全装置では、ブームを倒伏させ或いはブームを収縮させて、これにより新たに設定される基準傾斜角度を現在の走行体傾斜角度よりも大きくさせることにより上記規制を解除させることができる。このため、規制を解除するための特別な操作が不要であるとともに、誤って非安全な状態のまま規制(走行規制及びブーム作動規制)を解除してしまう虞がなく、より高い安全性が得られる。
【0011】
なお、第1の本発明に係る安全装置では、上記規制が働いた場合において、そのときのブームの起伏角度が基準起伏角度以上であるときにはブームの収縮も禁止され、ブームの倒伏のみが可能となる規制が行われることが好ましい。これは、ブームを収縮することによる重心の後方への移動が走行体を後方転倒させる危険を避けるためであり、ブームの長さが基準長さ以下であればブーム起伏角度が基準起伏角度以下になるまでブームを倒伏させて上記基準を解除させ、またブームの長さが基準長さを上回っていれば、先ずブーム起伏角度が基準起伏角度以下になるまでブームを倒伏させ、一旦後方転倒に対する安全度を大きくしてからブームを収縮させて上記規制を解除させることとなる。これにより、車体転倒に対する安全性を一層高めることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の好ましい実施形態について説明する。図2は、第1の本発明に係るブーム式作業車の安全装置を備えた自走式高所作業車(以下、作業車と称する)10を示している。この作業車10は、左右一対のクローラ装置12,12を有する走行体11の上部に旋回台13が旋回動自在に設けられており、この旋回台13の上部には伸縮動自在なブーム14が起伏動自在に取り付けられている。そしてブーム14の先端部には作業者搭乗用の作業台15がブーム14の先端部に対して水平旋回動自在に取り付けられている。
【0013】
左右のクローラ装置12,12の各々は、旋回台13に内蔵された油圧ポンプ(図示せず)からの圧油の供給を受けて回転駆動される起動輪12aと、自由に回転できる遊動輪12bと、これら両輪12a,12bの間に掛け渡して設けられたクローラベルト12cとを有して構成されている。
【0014】
旋回台13は旋回台13自身に内蔵された旋回モータ16を油圧駆動することによりに走行体11に対して水平旋回させることができるようになっている。ブーム14は基端ブーム14a、中間ブーム14b及び先端ブーム14cが入れ子式に構成されており、ブーム14に内蔵された伸縮シリンダ17を油圧駆動することにより伸縮させることができるようになっている。またブーム14は、基端ブーム14aが旋回台13の上部に形成されたブーム支持部材18に枢結されており、旋回台13と基端ブーム14aとの両方に跨って設けられた起伏シリンダ19を油圧駆動することにより走行体11に対して起伏させることができるようになっている。なお、起伏シリンダ19、伸縮シリンダ17及び旋回モータ16は、前述のクローラ装置12の起動輪12aと同様、油圧ポンプから供給される油圧を受けて作動するようになっている。
【0015】
ブーム14の先端部には、常に垂直が保たれるように構成された垂直ポスト(図示せず)が取り付けられており、作業台15はこの垂直ポストに取り付けられている。従って作業台15はブーム14の姿勢によらず常に水平状態が保持される。また作業台15は、作業台15の内部に設けられた電動式の首振りモータ20を駆動することにより、垂直ポストに対して首振り水平旋回させることができるようになっている。
【0016】
作業台15には図3に示すように、ブーム作動レバー21と、首振り作動レバー22と、クローラ装置作動レバー23とが設けられており、クローラ装置作動レバー23は左右のクローラ装置12,12に対応するレバー23a,23bからなっている。ブーム作動レバー21は中立位置から前後左右を含む360度全ての方向への傾動操作及び軸回りの捻り操作が可能になっており、首振り作動レバー22及び左右のクローラ装置作動レバー23a,23bはいずれも中立位置から前方若しくは後方へ傾動操作することができるようになっている。これらのレバーはいずれも手動により操作されるが、傾動若しくは捻り状態から手を離したときには自動的に中立位置へ復帰する構成となっている。
【0017】
ブーム作動レバー21の基部には、このレバー21の前後方向の傾動状態(傾動方向及び傾動量)を検出するポテンショメータと、左右方向の傾動状態(傾動方向及び傾動量)を検出するポテンショメータと、捻り状態(捻り方向及び捻り量)を検出するポテンショメータとが設けられている。そして、各ポテンショメータにおいて検出された情報はそれぞれ起伏シリンダ19を作動させる指令信号、伸縮シリンダ17を作動させる指令信号及び旋回モータ16を作動させる指令信号として出力される。
【0018】
首振り作動レバー22は首振りモータ20のオン・オフスイッチになっており、レバー22が中立位置にあるときにはオフに、レバー22を前方若しくは後方に傾動させたときにはオンになるようになっている。そして、首振り作動レバー22を前方に傾動したときには首振りモータ20が正方向に回転して作業台15が垂直ポスト左回りに旋回し、首振り作動レバー22を後方に傾動したときには首振りモータ20が逆方向に回転して作業台15が垂直ポスト右回りに旋回するようになっている。
【0019】
左右のクローラ装置作動レバー23a,23bのそれぞれの基部には、これらレバー23a,23bの前後方向の傾動状態(傾動方向及び傾動量)を検出するポテンショメータが各々設けられており、各ポテンショメータにおいて検出された情報はそれぞれ左右のクローラ装置12,12を作動させる指令信号として出力される。
【0020】
ブーム14の基端部及び先端部にはそれぞれ起伏角度検出器31及び長さ検出器32が設けられており、これら検出器31,32によりブーム14の起伏角度及び長さが検出されるようになっている。また、旋回モータ16の近傍には旋回角度検出器33が設けられており、この検出器33により旋回台13の旋回角度すなわちブーム14の旋回角度が検出されるようになっている。更に、走行体11には傾斜角度検出器34(図2では図示せず)が設けられており、これにより走行体11の前後方向の傾斜角度が検出されるようになっている。
【0021】
図1は、本発明に係る安全装置を含む制御系の構成を示すブロック図である。この図に示すように、ブーム作動レバー21の操作により出力された指令信号及び左右のクローラ装置作動レバー23a,23bの操作により出力された指令信号はコントローラ40に入力される。また、起伏角度検出器31、長さ検出器32、旋回角度検出器33からの検出情報及び傾斜角度検出器34からの検出情報もコントローラ40に入力される。
【0022】
起伏シリンダ19、伸縮シリンダ17及び旋回モータ16への油圧の供給を制御してこれらを作動させる起伏シリンダ作動弁51、伸縮シリンダ作動弁52及び旋回モータ作動弁53はコントローラ40から出力される制御信号に基づいて電磁比例駆動されるようになっている。また、左右のクローラ装置12,12への油圧の供給を制御してこれらを作動させる左右のクローラ装置作動弁54a,54bもコントローラ40から出力される制御信号により電磁比例駆動されるようになっている。
【0023】
このような構成の作業車10において、作業台15に搭乗した作業者がブーム作動レバー21を傾動若しくは捻り操作すると、その操作に応じた指令信号がコントローラ40に入力される。コントローラ40のCPU41は、入力された指令信号に含まれるブーム作動レバー21の操作方向(傾動若しくは捻り方向)及び操作量(傾動量若しくは捻り量)の情報と、起伏角度検出器31、長さ検出器32、旋回角度検出器33からの検出情報とに基づいて演算処理を行い、制御信号を出力して各作動弁51〜53を駆動する。これによりブーム14はブーム作動レバー21の操作に応じて起伏、伸縮、旋回作動する。
【0024】
このように作業車10においては、ブーム作動レバー21を操作してブーム14を起伏、伸縮、旋回作動させることができるとともに、前述したように首振り作動レバー22を操作して作業台15を垂直ポストまわりに首振り作動させることができるので、作業台15に搭乗した作業者は自らのレバー操作により作業台15を所望の位置に移動させ、且つ、所望の向きに整えて高所作業を行うことが可能である。
【0025】
また、作業台15に搭乗した作業者が左右のクローラ装置作動レバー23a,23bを傾動操作すると、その操作に応じた指令信号がコントローラ40に入力される。コントローラ40のCPU41は、入力された指令信号に含まれる左右のクローラ装置作動レバー23a,23bの操作方向(傾動方向)及び操作量(傾動量)の情報に基づいて演算処理を行い、制御信号を出力して左右のクローラ装置作動弁54a,54bを駆動する。これにより左右のクローラ装置12,12はクローラ装置作動レバー23a,23bの操作に応じて前進方向若しくは後進方向に回転作動する。
【0026】
左右のクローラ装置12,12は各々独立して、正逆所望の方向に作動させることができるようになっており、左右同時に同方向に作動させることにより走行体11を前進若しくは後進させることが可能である。また、左右のいずれか一方のみを、若しくは左右互いに逆方向に作動させることにより走行体11を旋回走行させることができるようになっている。なお、前者は作動させない側のクローラ装置12を支点とした旋回(ピボットターン)となり、後者はその場における旋回(スピンターン)となる。
【0027】
コントローラ40の記憶部42には基準起伏角度αo、基準長さLo、基準傾斜角度θoの三つの値が予め記憶されている。ここで、基準起伏角度αoはブーム14の起伏角度に対して任意に定められる値であり、基準長さLoはブーム14の長さに対して任意に定められる値である。また基準傾斜角度θoは、ブーム14の起伏角度がαo、ブーム14の長さがLo、作業台15の負荷荷重が最大であるときにおいて、走行体11が転倒に至る限界の傾斜角度として求められる傾斜角度(限界傾斜角度)に所定の係数(<1)を乗じて定められる。
【0028】
コントローラ40のCPU41は常時、起伏角度検出器31により検出されたブーム14の起伏角度、長さ検出器32により検出されたブーム14の長さ、また傾斜角度検出器34により検出された走行体11の傾斜角度の各値α,L,θを取り込むとともに、これらの値α,L,θを上記三つの値αo,Lo,θoと比較してそれぞれの大小関係を求めている。そして、検出されたブーム起伏角度αが基準起伏角度αoを上回っているか、若しくは検出されたブーム長さLが基準長さLoを上回っていることを検知し、且つ検出された走行体傾斜角度θが基準傾斜角度θoを上回っていることを検知したときには、クローラ装置作動レバー22a,22bからの指令信号の出力の有無に拘わらずクローラ装置作動弁54a,54bを中立位置に保持する制御信号を出力して走行体11の走行を禁止するとともに、ブーム14を倒伏させる指令信号若しくはブーム14を収縮させる指令信号が出力されたとき以外は起伏シリンダ作動弁51及び伸縮シリンダ作動弁52を中立位置に保持する制御信号を出力してブーム14の起仰及び伸長作動(すなわち作業車10をより不安定にするブーム14の作動)を禁止する。
【0029】
このように第1の本発明に係る安全装置によれば、ブーム起伏角度αが基準起伏角度αoを上回っているか、若しくはブーム長さLが基準長さLoを上回っている状態で走行体11を走行させ、走行体傾斜角度θが基準傾斜角度θoよりも大きくなった場合には走行体11の走行が禁止される。このため、ブーム14を大きく起仰若しくは伸長させた状態で昇り傾斜面や段差等を走行した場合であっても走行体11が転倒する虞がなく、安全に作業を行うことができる。また、走行体11の走行が禁止されているときにはブーム14の起仰及び伸長作動も禁止されるので、走行体11が走行規制された状態から誤ったブーム作動を行って作業車10をより不安定な状態にしてしまう危険を未然に防止することができる。
【0030】
このように走行体11の走行が禁止され、且つブーム14の起仰及び伸長が禁止された状態においては、ブーム14を倒伏させてブーム起伏角度αを基準起伏角度αoよりも小さくさせ、且つブーム14を収縮させてブーム長さLを基準長さLoよりも短くさせることにより、上記規制を解除させることができる。このため、規制を解除するための特別な操作が不要であるとともに、非安全な状態のまま規制(走行規制及びブーム作動規制)を解除してしまう虞がなく、より高い安全性が得られる。
【0031】
なお、上記規制が働いた場合において、そのときのブーム起伏角度αが基準起伏角度αo以上であるときにはブーム14の収縮も禁止され、ブーム14の倒伏のみが可能となる規制が行われることが好ましい。これは、ブーム14を収縮することによる重心の後方への移動が走行体11を後方転倒させる危険を避けるためであり、ブーム長さLが基準長さLo以下であればブーム起伏角度αが基準起伏角度αo以下になるまでブーム14を倒伏させて上記基準を解除させ、またブーム長さLが基準長さLoを上回っていれば、先ずブーム起伏角度αが基準起伏角度αo以下になるまでブーム14を倒伏させ、一旦後方転倒に対する安全度を大きくしてからブーム14を収縮させて上記規制を解除させることとなる。これにより、車体転倒に対する安全性を一層高めることができる。図4は上記規制が働いた状態におけるブーム14の作動規制範囲を示す図であり、領域R1(斜線で示す領域)はブーム14の起仰及び伸長が禁止される領域を示し、領域R2(横線で示す領域)はブーム14の起仰、伸長及び収縮が禁止される領域を示している。
【0032】
なお、この実施形態では、基準傾斜角度θoの値は作業台15の負荷荷重が最大の場合に対するものであったが、作業台15の負荷荷重を検出できる荷重検出器を設け、この荷重検出器からの検出結果に応じて最適な基準傾斜角度θoが設定される構成とすることもできる。この場合には、基準起伏角度αoと基準長さLoに応じて設定された基準傾斜角度θoのデータが、負荷荷重Wごとに対応表の形でコントローラ40の記憶部42に予め記憶されることとなる。このようにすれば、基準起伏角度αoと基準長さLoの値は同じであっても負荷荷重Wが小さいほど基準傾斜角度θoを大きな値にすることができるので、負荷荷重を最大時に固定して基準傾斜角度θoを定めた場合よりも作業範囲を広げることが可能である。この場合における負荷荷重Wに対応する基準傾斜角度θoは、ブームの起伏角度がαo、ブーム14の長さがLo、作業台15の負荷荷重がWであるときにおいて、走行体11が転倒に至る限界の傾斜角度として求められる傾斜角度(限界傾斜角度)に所定の係数(<1)を乗じて定められる。
【0033】
次に、第2の本発明に係る安全装置について説明する。この安全装置は、上述の第1の本発明に係る安全装置におけるコントローラ40の処理が異なるのみである。従って、ここではコントローラ40についてのみ説明し、それ以外の構成についての説明は省略する。
【0034】
第2の本発明に係る安全装置におけるコントローラ40の記憶部42には、ブーム14の起伏角度α1及びブーム14の長さL1の種々の組み合わせに対応して定められた基準傾斜角度θoの値が対応表の形で予め記憶されている。ここで個々の基準傾斜角度θoは、ブーム14の起伏角度がα1、ブーム14の長さがL1、作業台15の負荷荷重が最大であるときにおいて、走行体11が転倒に至る限界の傾斜角度として求められる傾斜角度(限界傾斜角度)に所定の係数(<1)を乗じて定められる。
【0035】
コントローラ40のCPU41は常時、起伏角度検出器31により検出されたブーム14の起伏角度及び長さ検出器32により検出されたブーム14の長さの両値α,Lの組み合わせを対応表のα1,L1の組み合わせに対応させて基準傾斜角度θoを求めるとともに、傾斜角度検出器34により検出された走行体11の傾斜角度の値θをその基準傾斜角度θoと比較してその大小関係を求めている。そして、検出された走行体傾斜角度θが基準傾斜角度θoを上回っていることを検知したときには、クローラ装置作動レバー22a,22bからの指令信号の出力の有無に拘わらずクローラ装置作動弁54a,54bを中立位置に保持する制御信号を出力して走行体11の走行を禁止するとともに、ブーム14を倒伏させる指令信号若しくはブーム14を収縮させる指令信号が出力されたとき以外は起伏シリンダ作動弁51及び伸縮シリンダ作動弁52を中立位置に保持する制御信号を出力してブーム14の起仰及び伸長作動(すなわち作業車10をより不安定にするブーム14の作動)を禁止する。
【0036】
このように第2の本発明に係る安全装置によれば、走行体傾斜角度θが、そのときのブーム起伏角度α及びブーム長さLの組み合わせに対応して定められる基準傾斜角度θoを上回った場合には走行体11の走行が禁止される。このため、第1の本発明に係る安全装置の場合と同様、ブーム14を大きく起仰若しくは伸長させた状態で昇り傾斜面や段差等を走行した場合であっても走行体11が転倒する虞がない。また、走行体11の走行が禁止されているときにはブーム14を起仰及び伸長作動も禁止されるので、走行体11が走行規制された状態から誤ったブーム作動を行って作業車10をより不安定な状態にしてしまう危険を未然に防止することができる。
【0037】
このように走行体11の走行が禁止され、且つブーム14の起仰及び伸長が禁止された状態においては、ブーム14を倒伏させ或いはブーム14を収縮させて、これにより新たに設定される基準傾斜角度θoを現在の走行体傾斜角度θよりも大きくさせることにより、走行体11の走行規制及びブーム14の作動規制を解除させることができる。このため、第1の本発明に係る安全装置の場合と同様、規制を解除するための特別な操作が不要であるとともに、非安全な状態のまま規制(走行規制及びブーム作動規制)を解除してしまう虞がない。
【0038】
また、この実施形態においても、作業台15の負荷荷重を検出できる荷重検出器を設け、この荷重検出器からの検出結果に応じて最適な基準傾斜角度θoが設定される構成とすることができる。この場合基準傾斜角度θoは、検出されるブーム起伏角度αとブーム長さLのほか、荷重検出器により検出される作業台15の負荷荷重Wをも含めた組み合わせに対応して定められることになる。これにより、負荷荷重を最大時に固定して基準傾斜角度θoを定めた場合よりも作業範囲を広げることができる。なお、各々の基準傾斜角度θoは、ブーム起伏角度α、ブーム長さL、作業台負荷荷重Wであるときにおいて、走行体11が転倒に至る限界の傾斜角度として求められる傾斜角度(限界傾斜角度)に所定の係数(<1)を乗じて設定される。
【0039】
以上、本発明に係るブーム式作業車の安全装置の実施形態について説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述の実施形態(第1及び第2とも)においてはブーム14の旋回角度は考慮としなかったが、ブーム14の旋回位置に応じて基準傾斜角度θoの最適値は異なるため、ブーム14の旋回角度を考慮した基準傾斜角度θoを設定するとともに、コントローラ40が旋回角度検出器33から出力される検出情報をも含めた演算処理を行って、走行体11の走行停止やブーム14の作動規制を行うようにすることが好ましい。このようにすれば作業範囲をより一層広げることが可能である。
【0040】
また、上記の実施形態においては自走式高所作業車を例に説明したが、これは走行体に運転席が設けられており、この運転席から走行体の運転を行う構成の高所作業車であってもよい。また、ブーム14の先端部の作業装置は作業台15ではなく、クレーン装置(シーブ)等であってもよい。更に、走行体11の走行装置はクローラ装置12でなくてもよく、タイヤ車輪であっても構わない。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、第1の本発明に係るブーム式作業車の安全装置によれば、ブームの起伏角度が基準起伏角度を上回っているか、若しくはブームの長さが基準長さを上回っている状態で車体を走行させ、車体の傾斜角度が基準傾斜角度よりも大きくなった場合には車体の走行が禁止される。このため、ブームを大きく起仰若しくは伸長させた状態で上り傾斜面や段差等を走行した場合であっても車体が転倒する虞がなく、安全に作業を行うことができる。
【0042】
また、第2の本発明に係るブーム式作業車の安全装置によれば、車体の傾斜角度が、そのときのブームの起伏角度及び長さの組み合わせに対応して定められる基準傾斜角度を上回った場合には車体の走行が禁止される。このため、第1の本発明に係る安全装置の場合と同様、ブームを大きく起仰若しくは伸長させた状態で上り傾斜面や段差等を走行した場合であっても車体が転倒する虞がない。
【0043】
なお、上記二つの安全装置において、上記走行規制手段により車体の走行が禁止されているときにブームの起仰及び伸長作動を禁止するブーム作動規制手段を有することが好ましい。このようにすれば、走行規制された状態から誤ったブーム作動を行って車体をより不安定な状態にしてしまう危険を未然に防止することができる。また、このような規制が行われた場合、第1の安全装置では、ブームを倒伏させてブームの起伏角度を基準起伏角度よりも小さくさせ、且つブームを収縮させてブーム長さを基準長さよりも短くさせることにより上記規制を解除させることができる。また第2の安全装置では、ブームを倒伏させ或いはブームを収縮させて、これにより新たに設定される基準傾斜角度を現在の走行体傾斜角度よりも大きくさせることにより上記規制を解除させることができる。このため、規制を解除するための特別な操作が不要であるとともに、誤って非安全な状態のまま規制(走行規制及びブーム作動規制)を解除してしまう虞がなく、より高い安全性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るブーム式作業車の安全装置を含む制御系の構成を示すブロック図である。
【図2】上記安全装置を備えた自走式高所作業車の側面図である。
【図3】上記自走式高所作業車の作業台の斜視図である。
【図4】走行規制が働いた状態における上記高所作業車のブームの作動規制範囲を示す図である。
【符号の説明】
1 自走式高所作業車(ブーム式作業車)
11 走行体(車体)
14 ブーム
15 作業台(作業装置)
31 起伏角度検出器(起伏角度検出手段)
32 長さ検出器(長さ検出手段)
34 傾斜角度検出器(傾斜角度検出手段)
40 コントローラ(走行規制手段、ブーム作動規制手段)

Claims (3)

  1. 走行自在な車体と、
    前記車体に少なくとも起伏及び伸縮自在に設けられたブームと、
    前記ブームの先端部に取り付けられた作業装置とを有して構成されるブーム式作業車の安全装置であって、
    前記ブームの起伏角度を検出する起伏角度検出手段と、
    前記ブームの長さを検出する長さ検出手段と、
    前記車体の前後方向の傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、
    前記起伏角度検出手段により検出された前記ブームの起伏角度が予め設定された基準起伏角度を上回っているか若しくは前記長さ検出手段により検出された前記ブームの長さが予め設定された基準長さを上回っていることが検知され、且つ前記傾斜角度検出手段により検出された前記車体の傾斜角度が予め定めた基準傾斜角度を上回っていることが検知されたときに前記車体の走行を禁止する走行規制手段とを有し、
    該基準傾斜角度は、前記ブームの起伏角度が前記基準起伏角度であり且つ前記ブームの長さが前記基準長さである場合に、前記作業台の負荷荷重が最大であるとき、前記車体が転倒に至る限界の角度に所定係数(<1)を乗じて定められることを特徴とするブーム式作業車の安全装置。
  2. 走行自在な車体と、
    前記車体に少なくとも起伏及び伸縮動自在に設けられたブームと、
    前記ブームの先端部に取り付けられた作業装置とを有して構成されるブーム式作業車の安全装置であって、
    前記ブームの起伏角度を検出する起伏角度検出手段と、
    前記ブームの長さを検出する長さ検出手段と、
    前記車体の前後方向の傾斜角度を検出する傾斜角度検出手段と、
    前記傾斜角度検出手段により検出された前記車体の傾斜角度が前記起伏角度検出手段により検出された前記ブームの起伏角度及び前記長さ検出手段により検出された前記ブームの長さの組み合わせに対応して定められる基準傾斜角度を上回っていることを検知したときに前記車体の走行を禁止する走行規制手段とを有し、
    該基準傾斜角度は、任意の前記ブームの起伏角度及び前記ブームの長さにおいて、前記作業台の負荷荷重が最大であるとき、前記車体が転倒に至る限界の角度に所定係数(<1)を乗じて定められることを特徴とするブーム式作業車の安全装置。
  3. 前記走行規制手段により前記車体の走行が禁止されているときに前記ブームの起仰及び伸長作動を禁止するブーム作動規制手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブーム式作業車の安全装置。
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