JP3711945B2 - キャブオーバートラックのボデー構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャブオーバートラックの乗降口周縁を構成するボデー構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、図12に示すように、キャブオーバートラックのキャビンにおいて、乗降口たるフロントドア開口Dの開口縁は、その前縁がフロントピラー1で構成され、フロントドア開口Dの下縁は、フロントピラー1の下端と結合した前後方向のロッカー部2と、ロッカー部2の後端からアーチ状に延びてホイールハウスを構成するフェンダー部3とで構成され、フロントドア開口Dの上縁はルーフサイドレールSで、後縁はリヤピラーRPで構成されている。これらフロントピラー1、ロッカー部2、フェンダー部3、ルーフサイドレールSおよびリヤピラーRPはいずれも閉断面構造とされ、各部材の端末をラップさせ溶接してフロントドア開口Dまわりの剛性の強化をはかっている。
【0003】
尚、フロントピラー1内にはフロントドア(図略)を支持する垂直部にリインフォースメント14が内設されている。また、図13に示すように、アーチ状のフェンダー部3は、フェンダー部3外周側、即ち上側のフェンダーアウタ31と、フェンダー部3内周側、即ち下側のフェンダーインナ32Bとで閉断面を構成し、フェンダー部3の上下幅はフロントタイヤTと干渉しないように小さくしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フロントドア開口Dまわりの剛性は、衝突時に前方から作用する大荷重に対して必ずしも充分とはいえず、特に、オフセット衝突時には、左右の一方の側に荷重が集中するので、図12の鎖線で示すように、フロントピラー1の一方の側は後方へ押し込まれ、フェンダー部3の断面が崩れて(図13の鎖線)フェンダー部3が上方へ折れ曲がって、ロッカー部2後端がフロントタイヤに当たり、フロントピラー1とロッカー部2とのコーナー部10の屈曲角度が開き変形し、フロントピラー1のピラー上半部1aからルーフサイドレールSにかけてフロントピラー1の突き上げで折れ曲がって、フロントピラー1が後方へ移動してキャビンの車室空間が前後方向に縮小されるおそれがある。また、ロッカー部2がフロントタイヤに当たった後にロッカー部2後端が車内側へずれる横ズレ変形が生じる場合があり、ロッカー部2の横ズレによりフロントピラー1の後方への移動量が大きくなる。そこで本発明は、オフセット衝突時の大荷重に対する乗降口まわりの剛性を効果的に強化して衝突時のキャビンの車室空間を確保するキャブオーバートラックのボデー構造を実現することを課題としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
キャビンの乗降口の前縁をなす閉断面構造のフロントピラーと、フロントピラーの下端から後方へ屈曲するコーナー部を介して後方へ延びて乗降口の下縁を構成する閉断面構造のロッカー部と、ロッカー部の後端から後方へアーチ状に延びてホイールハウスを形成する閉断面構造のフェンダー部とを備えたキャブオーバートラックのボデー構造において、上記アーチ状のフェンダー部は、その外周側のフェンダーアウタと内周側のフェンダーインナとで閉断面をなし、フェンダーインナはその幅方向中央部を屈曲せしめて、上方へ突出する断面ほぼ台形形状のリインフォースメント部を形成し、該リインフォースメント部の頂部をフェンダーアウタに接合して該リインフォースメント部により上記フェンダー部(3)の閉断面を上下に連結する(請求項1)。縦方向のリインフォースメントによりフェンダー部が上方へ折れ曲がり変形せず、ロッカー部後端の後退を防止するので、たとえコーナー部に変形が生じてもフロントピラーの後方への移動量を少なく抑えることができる。
【0008】
キャビンの乗降口の前縁を構成する閉断面構造のフロントピラーと、フロントピラーの下端から後方へ屈曲するコーナー部を介して後方へ延びて乗降口の下縁を構成する閉断面構造のロッカー部と、ロッカー部の後端から後方へアーチ状に延びてホイールハウスを形成する閉断面構造のフェンダー部とを備えたキャブオーバートラックのボデー構造において、上記フロントピラーから上記コーナー部を経てロッカー部の後端に至る閉断面内に、該閉断面を横切るリインフォースメントを設け、上記アーチ状のフェンダー部は、その外周側のフェンダーアウタと内周側のフェンダーインナとで閉断面をなし、フェンダーインナはその幅方向中央部を屈曲せしめて、上方へ突出する断面ほぼ台形形状のリインフォースメント部を形成し、該リインフォースメント部の頂部をフェンダーアウタに接合して該リインフォースメント部により上記フェンダー部の閉断面を上下に連結する(請求項2)。フロントピラーからコーナー部、ロッカー部を経てフェンダー部へリインフォースメントを設けたので、フェンダー部の折れ曲がり変形、ロッカー部の後方移動およびコーナー部の変形を防止でき、確実にフロントピラーの後方への移動を防止できる。
【0010】
キャビンの乗降口の前縁を構成する閉断面構造のフロントピラーと、フロントピラーの下端から後方へ屈曲するコーナー部を介して後方へ延びて乗降口の下縁を構成する閉断面構造のロッカー部と、ロッカー部の後端から後方へアーチ状に延びてホイールハウスを形成する閉断面構造のフェンダー部とを備えたキャブオーバートラックのボデー構造において、上記フロントピラーから上記コーナー部を経てロッカー部の後端に至る閉断面内に、該閉断面を横切るリインフォースメントを設け、上記アーチ状のフェンダー部は、その外周側のフェンダーアウタと内周側のフェンダーインナとで閉断面をなし、フェンダーインナはその幅方向中央部を屈曲せしめて、上方へ突出する断面ほぼ台形形状のリインフォースメント部を形成し、該リインフォースメント部の頂部をフェンダーアウタに接合して該リインフォースメント部により上記フェンダー部の閉断面を上下に連結するとともに、左右のフロントピラーの下端のコーナー部間をキャブフロアの前縁に沿って車幅方向に架けわたしたフロントクロスメンバの車幅方向中央部の左右両側位置から、キャブフロアの下面に沿って後方へ延び、キャブフロアとで閉断面を形成するフロアメンバを設け、かつ該フロアメンバの中間と上記ロッカー部の後端との間に、上記キャブフロアの下面に沿って車幅方向に延び、キャブフロアとで閉断面を形成するクロスメンバを架けわたす(請求項3)。フロントピラーからコーナー部、ロッカー部を経てフェンダー部へリインフォースメントを設け、かつキャブフロアの下面に前後方向に延びるフロアメンバと、フロアメンバとロッカー部とを架けわたすクロスメンバを設けたので、フェンダー部の折れ曲がり変形、ロッカー部の後方移動およびコーナー部の開き変形、更にロッカー部の横ズレ変形を防止でき、より確実にフロントピラーの後方への移動を防止することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1(A),(B),(C)および図2に基づいて本発明の第1の実施形態を説明する。図1(A)に示すように、キャブオーバートラックのキャビンの側面に形成した乗降口たるフロントドア開口Dの開口縁は、その前縁をキャビン前部に立設したフロントピラー1で構成し、フロントドア開口Dの下縁はフロントピラー1の下端と結合して後方へ延びるロッカー部2と、ロッカー部2の後端から後方へアーチ状に延びてホイールハウスを形成するフェンダー部3とで構成してある。また、開口上縁はフロントピラー1のピラー上半部1a上端から後方へ延びるルーフサイドレールSで構成し、開口後縁はキャビン後部に立設したリヤピラーRPで構成してある。
【0012】
フロントピラー1は、図1(A),(B)および図2に示すように、ピラーアウタ11とピラーインナ12とからなり、両ピラーパネル11,12のそれぞれの前縁フランジ、および後縁フランジを重ね合わせて溶接した閉断面構造としてある。フロントピラー1の下端は若干後方へ向かって屈曲し、下端はアウタおよびインナの両ピラーパネル11,12の下縁フランジどおしを溶接して閉じてあり、屈曲後端は開口しており、後端開口にロッカー部2の前端をラップさせて溶接して下端のコーナー部10を形成している。
【0013】
フロントピラー1にはピラー下半部1bの閉断面内に2枚のリインフォースメント4,14を設けて補強してある。ピラーアウタ11側の第1のリインフォースメント4は大型で、フロントピラー1のピラー上半部1aとの境界付近から下端のコーナー部10にかけて設けてある。ピラーインナ12側の第2のリインフォースメント14は第1のリインフォースメント4よりも小型で、フロントピラー1のピラー上半部1aとの境界付近からコーナー部10の手前迄としてある。第1および第2のリインフォースメント4,14は、前縁どうしを重ね合わせてピラーアウタ11およびピラーインナ12の前縁フランジと一体に溶接するとともに、後縁どうしを重ね合わせて両ピラーパネル11,12の後縁フランジと一体に溶接してフロントピラー1の閉断面内を横切るように設けてある。
【0014】
第1のリインフォースメント4の下端は後方へL字形に屈曲し、フロントピラー1の下端のコーナー部10の閉断面内を横切るように設けてあり、第1のリインフォースメント4の屈曲後端はフロントピラー1の屈曲後端の後端開口に至る。また、第1のリインフォースメント4は、フロントピラー1に図略のフロントドアをヒンジ結合する結合位置13(上下2ヶ所)において、側面がピラーアウタ11の内面に重合接合してあり、重合部にウェルドナットを備えたねじ穴を設け、これにフロントドアのヒンジ部材を締結してフロントドアの支持構造を強化している。
【0015】
フロントピラー1の下端のコーナー部10から後方へ延びるロッカー部3は、図1(A),(C)および図2に示すように、ロッカーアウタ21とロッカーインナ22とからなり、両ロッカーパネル21,22のそれぞれの上縁フランジ、および下縁フランジを重ね合わせて溶接して閉断面をなす。尚、ロッカーアウタ21はフェンダー部3のフェンダーアウタ31と一体成形してあり、ロッカーアウタ21の後端は後斜め上方へ屈曲し、後方へアーチ状に延びるフェンダーアウタ31へ続く。ロッカ−インナ22は後端がロッカーアウタ21の後端に対応して後斜め上方へ屈曲してある。ロッカーアウタ21およびロッカ−インナ22からなるロッカー部2は後端が閉じ、屈曲上端が開口してフェンダー部3へ続く。
【0016】
ロッカー部2はその閉断面内にリインフォースメント5が設けてある。リインフォースメント5は、上縁をロッカーアウタ21およびロッカーインナ22の上縁フランジと一体に溶接するとともに、下縁をアウタおよびインナの両ロッカーパネル21,22の下縁フランジと一体に溶接してロッカー部2の閉断面内を横切るように設けてある。また、リインフォースメント5は、その前縁をフロントピラー1内の第1のリインフォースメント4の屈曲後縁と溶接し、第1のリインフォースメント4と連続してロッカー部2の前端から後端にかけてロッカー部2の全長にわったて設けてある。リインフォースメント5の後端はフェンダー部3側へ向けて後斜め上方へ屈曲している。
【0017】
尚、ロッカー部2の後端からホイールハウスを形成するフェンダー部3は、ホイールハウスの外周をなすフェンダーアウタ31と、ホイールハウスの内周をなすフェンダーインナ32とを上下に組付けて閉断面をなす。また、ルーフサイドレールSおよびリヤピラーRPも、図は省略したが、それぞれアウタパネルとインナパネルとで閉断面を構成し、ルーフサイドレールSの後端とリヤピラーRPの上端とを端末どうしをラップさせて溶接してあり、フェンダー部3の後端とリヤピラーRPの下端とを端末どうしをラップさせて溶接してある。
【0018】
第1の実施形態は、フロントピラー1からコーナー部10を経てロッカー部2の後端まで連続するリインフォースメント4,5を設けたので、車両衝突時、特にオフセット衝突時に前側より衝突荷重が作用してフロントピラー1が後方へ押し込まれ、たとえ、フェンダー部3が上方へ折れ曲がって、ロッカー部2後端がフロントタイヤに当たっても、リインフォースメント4,5によりコーナー部10の開き変形がおこらない。従って、フロントピラー1の後方への移動変形量は、フェンダー部3が折れ曲がってロッカー部2後端がフロントタイヤに当るまでの距離に抑えることができ、車室空間を充分に確保できる。尚、フロントピラー1からロッカー部2の後端に至るリインフォースメント4,5は、L字形に屈曲した一体構造としてもよい。
【0019】
次に、図3ないし図4に基づいて本発明の第2の実施形態を説明する。尚、キャビンのフロントドア開口Dまわりの基本構造は第1の実施形態と同様で、相違点を中心に説明し、図において同一部材は同一符号で示す。図3(A)に示すように、フロントピラー1はピラーアウタとピラーインナとで閉断面を構成し、フロントピラー1にはピラー下半部1bに、その閉断面を仕切るリインフォースメント14が設けてある。フロントピラー1の下端からコーナー部10を介して後方へ延びるロッカー部2はロッカーアウタとロッカーインナパネルとで閉断面をなす。
【0020】
図3(A),(B)および図4に示すように、ロッカー部2の後端から後方へアーチ状に延びるフェンダー部3は、フェンダーアウタ31と、フェンダーインナ32とを上下に組付けて閉断面をなす。フェンダーアウタ31はホイールハウスの外周を構成するパネルで車内側の側縁には上方へ屈曲した結合フランジ33が形成してあり、車外側の側縁には段差を介して下方へ屈曲してホイールハウスの周縁を形成する周縁フランジ34が形成してある。フェンダーインナ32はフェンダーアウタ31の下面に対向する断面ほぼ逆L字形のパネルで、幅方向中央には前後方向に沿って複数のサービスホール35が形成してある。
【0021】
フェンダーアウタ31とフェンダーインナ32とは、フェンダーアウタ31の結合フランジ33とフェンダーインナ32の縦壁36上縁とをキャブフロアFの側縁フランジと一体に溶接し、フェンダーアウタ31の周縁フランジ34の段差とフェンダーインナ32の車外側の外周縁37とを溶接してある。
【0022】
フェンダー部3の閉断面内にはその延在方向に沿って、ロッカー部2後端からフェンダー部3後端にかけてフェンダー部3の閉断面を仕切るリインフォースメント6が設けてある。リインフォースメント6は断面ハット形で、頂部61にはフェンダーインナ32の各サービスホール35に対応して複数の接合面62が形成してあり、頂部61は接合面62によりフェンダーアウタ31に溶接してある。また、リインフォースメント6は左右の下縁フランジ63がフェンダーインナ32に溶接してあり、リインフォースメント6はフェンダーアウタ31とフェンダーインナ32とを縦方向に連結するように立設してある。尚、フェンダー部3を組付ける際、リインフォースメント6は予めフェンダーインナ32に溶接しておき、フェンダーアウタ31とフェンダーインナ32とを組付けた後に、フェンダーインナ32の各サービスホール35を介して頂部61をフェンダーアウタ31に溶接する。
【0023】
第2の実施形態は、フロントドア開口D下縁のロッカー部2後端からフェンダー部3後端にかけて閉断面を上下方向に連結するリインフォースメント6を設けて、剛性、特に上下方向の曲げに対する剛性を強化したので、車両衝突時、特にオフセット衝突時に前方よりフロントピラー1に衝突荷重が作用してフロントピラー1を後方へ押し込もうとしても、フェンダー部3は上方へ折れ曲がらずフロントピラー1およびロッカー部2の後方への移動を防ぐ。たとえ、フロントピラー1とロッカー部2との間のコーナー部10が変形してもロッカー部2が後方へ移動しないため、フロントピラー1の後方への移動変形量を少なく抑えることができ、車室空間を充分に確保できる。
【0024】
図5および図6に基づいて本発明の第3の実施形態を説明する。これは第2の実施形態のフェンダー部のリインフォースメントをフェンダーインナと一体成形したもので、基本構造は第2の実施形態のそれとほぼ同一で、相違点を中心に説明する。図5および図6に示すように、フェンダーインナ32Aはその幅方向中央部を屈曲せしめて、上方へ突出する断面ほぼ台形形状のリインフォースメント部30が形成してある。リインフォースメント部30はフェンダーインナ32Aの前後方向ほぼ全長にわたって延設してある。
【0025】
フェンダーインナ32Aは、その車内側の縦壁36上縁をフェンダーアウタ31の結合フランジ33とキャブフロアFの側縁フランジと一体に溶接するとともに、フェンダーインナ32Aの車外側の外周縁37をフェンダーアウタ31の周縁フランジ34の段差に溶接し、そして、リインフォースメント部30の頂面をフェンダーアウタ31に溶接してある。これによれば、第2の実施形態と同様な作用効果が得られ、かつ、構造の簡素化がはかれる。尚、フェンダーインナ32Aの車内側の縦壁36は、その上縁にフェンダーアウタ31の車内側の側縁下面に重合するフランジを形成してフェンダーアウタ31と溶接してもよい。
【0026】
図7および図8に第4の実施形態を示し、これは上述の第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせたもので、フロントピラー1から下部コーナー部10およびロッカー部2を経てフェンダー部3の後端にかけて連続的にリインフォースメント4,5,6を設置したものである。基本構造は第1および第2の実施形態と同様で、以下、構造を簡単に説明する。
【0027】
ピラーアウタ11とピラーインナ12とで閉断面をなすフロントピラー1のピラー下半部1b内には第1および第2のリインフォースメント4,14が設けてあり、第1のリインフォースメント4はその下端をフロントピラー1のコーナー部10内に延ばして端末がロッカー部2側へ臨ませてある。ロッカー部2はロッカーアウタ21とロッカーインナ22とで閉断面をなし、ロッカー部2内のリインフォースメント5は前縁をフロントピラー1内の第1のリインフォースメント4の後端縁に接合してある。また、ロッカー部2のリインフォースメント5の後端は後斜め上方へ屈曲してフェンダー部3側へ臨ませてある。フェンダーアウタ31とフェンダーインナ32とで閉断面をなすフェンダー部3には、その閉断面の幅方向中央に、断面ハット形のリインフォースメント6を、その下縁フランジ63をフェンダーインナ32に溶接するとともに頂部61をフェンダーアウタ31に溶接してフェンダー部3の閉断面を上下方向に連結している。ロッカー部2のリインフォースメント5の後端とフェンダー部3のリインフォースメント6の前端とは両者が若干ラップするようにしてある。
【0028】
第4の実施形態によれば、車両の衝突時、特にオフセット衝突時にフロントピラー1に前方より衝突荷重が作用して、フロントピラー1が後方へ押込まれても、リインフォースメント6により強化されたフェンダー部3は上方へ折れ曲がらないので、ロッカー部2の後方への移動変形を防止し、リインフォースメント4,5により強化されたフロントピラー1とロッカー部2間のコーナー部10は変形しない。従って、確実にフロントピラー1の後方への移動変形を防止することができ、車室空間を充分に確保することができる。
【0029】
図9(A),(B)および図10に基づいて本発明の第5の実施形態を説明する。図9および図10に示すように、キャビンのフロントドア開口Dまわりは、フロントピラー1、ロッカー部2、フェンダー部3、リヤピラーRPおよびルーフサイドレールSからなる第1の実施形態と同様な基本構造であり、図において同一部材は同一符号で示す。左右のフロントピラー1の下端のコーナー部10間には車幅方向に延びるフロントクロスメンバ7が架設してある。フロントクロスメンバ7は、上壁70とその後縁から下方へ屈折する後壁71とで断面ほぼ逆L字形をなす長尺体で、上壁70上面にはキャブフロアFの前端が重ね合わせて溶接してある。尚、キャブフロアFは、左右の側縁がフロントピラー1のコーナー部10から後方へ延設したロッカー部2、およびロッカー部2の後端から後方へアーチ状に続くフェンダー部3に沿って一連に溶接され、キャビンの床部を構成している。
【0030】
キャブフロアFの下面には、フロントクロスメンバ7の車幅方向中央部の左右両側位置からそれぞれ後方へ延びるフロアメンバ8が設けてある。フロアメンバ8は断面逆ハット形で、前端の溶接フランジをフロントクロスメンバ7の後壁71後面に溶接するととも、左右両側壁80の上縁フランジ81をキャブフロアFの下面に溶接してキャブフロアFとで閉断面を形成してある。フロアメンバ8は、ロッカー部2に対応するキャブフロアFの前部の下面、およびフェンダー部3に対応して立ち上がるキャブフロアFの中間傾斜部の下面にかけて設けてあり、キャブフロアFを補強する。フロアメンバ8の後端は後縁をキャブフロアFの後部下面に溶接して閉じてある。
【0031】
キャブフロアFの前部の下面には、フロアメンバ8の中間部とロッカー部2の後端間に車幅方向に沿ってクロスメンバ9が設けてある。クロスメンバ9は断面逆ハット形をなし、車内側の内側端末の高さ寸法をフロアメンバ8の高さに合わせる一方、車外側の外側端末の高さ寸法をフロアメンバ8よりも高さの大きいロッカー部2の高さに合わせてある。クロスメンバ9は、前壁および後壁の上縁フランジ91をキャブフロアFの前部の下面に沿って溶接し、キャブフロアFとで閉断面を形成するとともに、車内側の内側端末の結合フランジ92をフロアメンバ8の車外側の側壁80に溶接する一方、車外側の外側端末の結合フランジ93をロッカー部2のロッカインナパネル22の後端に溶接して、フロアメンバ8の中間部とロッカー部2の後端間を架けわたすように固定してある。
【0032】
第5の実施形態は、キャビンフロアFの下面にフロントクロスメンバ7から後方へ延びるフロアメンバ8を設け、フロアメンバ8の中間とロッカー部2の後端とを、キャビンフロアFの下面に沿って車幅方向に設けたクロスメンバ9でつないだので、車両衝突時、特にオフセット衝突時に前側より衝突荷重が作用してフロントピラー1およびロッカー部2が後方へ押し込まれ、たとえ、フェンダー部3が上方へ折れ曲がって、ロッカー部2後端がフロントタイヤに当たっても、フロアメンバ8およびクロスメンバ9の作用によりロッカー部2の横ズレ変形が発生せず、ロッカー部2をフロントタイヤに当たった状態に保持する。従って、フロントピラー1の後方への移動変形量をロッカー部2後端がフロントタイヤに当るまでの距離に抑えることができ、車室空間を充分に確保することができる。
【0033】
図11は本発明の第6の実施形態を示し、これは上述の第4の実施形態と第5の実施形態を組み合わせたものである。即ち、閉断面構造をなすフロントピラー1のピラー下半部1a、下部コーナー部10、ロッカー部2およびフェンダー部3の内部に連続的にリインフォースメント4,5,6が設置してある。そして、キャブフロアFの下面には、フロントクロスメンバ7の車幅方向中央部の左右両側位置から後方へ延びキャブフロアFとで閉断面を形成するフロアメンバ8を設置するとともに、フロアメンバ8の中間とロッカー部2の後端との間に車幅方向に沿ってキャブフロアFとで閉断面を形成するクロスメンバ9を設け、クロスメンバ9の車内側の内側端末をフロアメンバ8の中間と結合する一方、車外側の外側端末がロッカー部2の後端に結合してある。
【0034】
これによれば、車両衝突時に、リインフォースメント4,5,6によるフェンダー部3の上方への折れ防止やコーナー部10の開き変形の防止効果に加えて、フロアメンバ8とクロスメンバ9とによるロッカー部2の横ズレ変形の防止効果が発揮される。従って、衝突荷重に対するフロントドア開口Dまわりのボデー剛性をより一層強化でき、フロントピラーの後方への移動変形をより確実に防止することができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、オフセット衝突時の大荷重に対する乗降口まわりのボデー構造の剛性を効果的に強化することができ、衝突時にキャビンの車室空間を確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すもので、図1(A)はキャビンの乗降口まわりの概略図、図1(B)は図1(A)のIB−IB線に沿う断面図、図1(C)は図1(A)のIC−IC線に沿う断面図である。
【図2】上記第1の実施形態の要部分解図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すもので、図3(A)はキャビンの乗降口まわりの概略図、図3(B)は図3(A)のIIIB−IIIB線に沿う断面図である。
【図4】上記第2の実施形態の要部分解図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の要部を示すもので、図3(B)に対応する断面図である。
【図6】上記第3の実施形態の要部分解図である。
【図7】本発明の第4の実施形態のキャビンの乗降口まわりの概略図である。
【図8】上記第4の実施形態の要部分解図である。
【図9】本発明の第5の実施形態を示すもので、図9(A)はキャビンの概略斜視図、図9(B)は要部平面図である。
【図10】図9(B)のX−X線に沿う断面図である。
【図11】本発明の第6の実施形態を示すキャビンの概略斜視図である。
【図12】従来のキャビンの乗降口まわりの概略図である。
【図13】図12のXIII−XIII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
D 乗降口(フロントドア開口)
1 フロントピラー
10 下端のコーナー部
11 ピラーアウタ
12 ピラーインナ
2 ロッカー部
21 ロッカーアウタ
22 ロッカーインナ
3 フェンダー部
30 フェンダー部内のリインフォースメント部
31 フェンダーアウタ
32 フェンダーインナ
4 フロントピラー内のリインフォースメント
5 ロッカー部内のリインフォースメント
6 フェンダー部内のリインフォースメント
61 頂部
63 側縁
7 フロントクロスメンバ
8 フロアメンバ
9 クロスメンバ
F キャブフロア

Claims (3)

  1. キャビンの乗降口の前縁を構成する閉断面構造のフロントピラー(1)と、フロントピラー(1)の下端から後方へ屈曲するコーナー部(10)を介して後方へ延びて乗降口の下縁を構成する閉断面構造のロッカー部(2)と、ロッカー部(2)の後端から後方へアーチ状に延びてホイールハウスを形成する閉断面構造のフェンダー部(3)とを備えたキャブオーバートラックのボデー構造において、
    上記アーチ状のフェンダー部(3)は、その外周側のフェンダーアウタ(31)と内周側のフェンダーインナ(32)とで閉断面をなし、フェンダーインナ(32)はその幅方向中央部を屈曲せしめて、上方へ突出する断面ほぼ台形形状のリインフォースメント部(30)を形成し、該リインフォースメント部(30)の頂部をフェンダーアウタ(31)に接合して該リインフォースメント部(30)により上記フェンダー部(3)の閉断面を上下に連結したことを特徴とするキャブオーバートラックのボデー構造。
  2. キャビンの乗降口の前縁を構成する閉断面構造のフロントピラー(1)と、フロントピラー(1)の下端から後方へ屈曲するコーナー部(10)を介して後方へ延びて乗降口の下縁を構成する閉断面構造のロッカー部(2)と、ロッカー部(2)の後端から後方へアーチ状に延びてホイールハウスを形成する閉断面構造のフェンダー部(3)とを備えたキャブオーバートラックのボデー構造において、
    上記フロントピラー(1)から上記コーナー部(10)を経てロッカー部(2)の後端に至る閉断面内に、該閉断面を横切るリインフォースメント(4,5)を設け、
    上記アーチ状のフェンダー部(3)は、その外周側のフェンダーアウタ(31)と内周側のフェンダーインナ(32)とで閉断面をなし、フェンダーインナ(32)はその幅方向中央部を屈曲せしめて、上方へ突出する断面ほぼ台形形状のリインフォースメント部(30)を形成し、該リインフォースメント部(30)の頂部をフェンダーアウタ(31)に接合して該リインフォースメント部(30)により上記フェンダー部(3)の閉断面を上下に連結したことを特徴とするキャブオーバートラックのボデー構造。
  3. キャビンの乗降口の前縁を構成する閉断面構造のフロントピラー(1)と、フロントピラー(1)の下端から後方へ屈曲するコーナー部(10)を介して後方へ延びて乗降口の下縁を構成する閉断面構造のロッカー部(2)と、ロッカー部(2)の後端から後方へアーチ状に延びてホイールハウスを形成する閉断面構造のフェンダー部(3)とを備えたキャブオーバートラックのボデー構造において、
    上記フロントピラー(1)から上記コーナー部(10)を経てロッカー部(2)の後端に至る閉断面内に、該閉断面を横切るリインフォースメント(4,5)を設け、
    上記アーチ状のフェンダー部(3)は、その外周側のフェンダーアウタ(31)と内周側のフェンダーインナ(32)とで閉断面をなし、フェンダーインナ(32)はその幅方向中央部を屈曲せしめて、上方へ突出する断面ほぼ台形形状のリインフォースメント部(30)を形成し、該リインフォースメント部(30)の頂部をフェンダーアウタ(31)に接合して該リインフォースメント部(30)により上記フェンダー部(3)の閉断面を上下に連結するとともに、
    左右のフロントピラー(1)の下端のコーナー部(10)間をキャブフロア(F)の前縁に沿って車幅方向に架けわたしたフロントクロスメンバ(7)の車幅方向中央部の左右両側位置から、キャブフロア(F)の下面に沿って後方へ延び、キャブフロア(F)とで閉断面を形成するフロアメンバ(8)を設け、かつ該フロアメンバ(8)の中間と上記ロッカー部(2)の後端との間に、上記キャブフロア(F)の下面に沿って車幅方向に延び、キャブフロア(F)とで閉断面を形成するクロスメンバ(9)を架けわたしたことを特徴とするキャブオーバートラックのボデー構造。
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