JP3711081B2 - 合成樹脂製容器の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、合成樹脂製容器の製造方法に関するものである。とくに、この発明は、蓋の開閉が容易で安価に提供できる直方体状の合成樹脂製容器の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
蓋が開閉できる簡単な合成樹脂製容器は、合成樹脂製シートを真空成形法又は圧空成形法によって作られている。ところが、これらの成形法によって作られた従来の容器は、底と蓋とが一枚の合成樹脂製シートで一体に作られていて、底と蓋とを繋ぐ部分の厚みが底及び蓋の厚みと同じか又はこれより大きくなっている。このため、蓋を開いたり閉じたりするには、両手で容器を持って、蓋を開閉させることが必要である。また、蓋を開いた状態に維持するにも矢張り両手で容器を持つことが必要とされる。従って、このような容器は開閉が容易でないことになる。
【0003】
合成樹脂製の容器で蓋を片手でも容易に開くことができるようにするためには、蓋と底との継ぎ目を軸着しなければならない。そのためには、底と蓋とを射出成形又は圧縮成形などによって成形しなければならない。
【0004】
ところが、射出成形又は圧縮成形するには複雑で高価な成形用金型を用意しなければならない。製造する容器の数が多ければ、高価な成形型を準備することもできるが、製造する容器の数が少ない場合には、高価な成形型を準備することができない。また、大量に作るとしても、射出成形又は圧縮成形によって作った容器は、高価なものとなる。
【0005】
そこで、格別に高価な成形型などを用意しないで、片手でも容易に蓋を開閉できる容器を、格別高価な成形型を用意しないで簡単に安価に製造する方法の案出が必要となった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上述の必要に応じて生れたものである。すなわち、この発明は蓋を容易に開閉できる容器を、格別高価な成形型を使用しないで、安価に簡単に製造できる合成樹脂製容器の製造方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題解決のための手段】
この発明者は、開閉容易な合成樹脂製容器を高価な成形型を使用しないで安価に簡単に製造するには真空成形又は圧空成形によるべきだと考えた。なぜならば、真空成形又は圧空成形では成形型が雄型又は雌型の一方だけを作れば足りるからである。さらにこの発明者は、開閉容易にするためには容器の底体と蓋体とを切り離して作り、あとでこれを軸着して一体にすべきだ、と考えた。
【0008】
また、蓋と底とを軸着するには、蓋を底に被せたとき、互に重なり合う蓋の側壁と底の側壁とに突起又は窪みを設けておいて、その突起又は窪みを嵌め合わせ、これを軸として蓋と底とが回動できるようにするのが適していることに気付いた。ところが、蓋と底とを上述のような形状に成形するには側壁上と側壁面に垂直な突起又は窪みを設けなければならないが、このようなことは真空成形又は圧空成形では避けるべきこととされている。
【0009】
一般に、底から側壁がほぼ垂直に立ち上っただけの直方体状の容器の底体又は蓋体は、これを真空成形又は圧空成形によって成形することは容易である。ところが、上記直方体状の容器の側壁上に、側壁に垂直に突出し又は窪んだ部分のある容器を真空又は圧空成形によって作ろうとすると、突出し又は窪んだ部分がアンダーカットとなって、底体又は蓋体を成形型から外すことができなくなるので、上述のように避けるべきこととされた。
【0010】
そこで、この発明者は、蓋と底とを軸着するに足る窪み又は突起の大きさと、真空又は圧空成形して成形型から取り出せる窪み又は突起の大きさとの関係を検討した。その結果、上記の窪み又は突起を局部に限ってその深さ又は高さを小さなものとすれば、直方体状の蓋体と底体とを成形型から離すことができ、また成形型から離すことができる程度の窪み又は突起によって蓋体と底体とを回動自在に係止できることを見出した。具体的には、底体と蓋体との側壁同士を密接させるという前提に立つと、真空又は圧空成形に供しようとする熱可塑性合成樹脂製シートの厚みを基準として、窪みの深さ又は突起の高さをシートの厚みに対して0.5〜5倍の大きさにすると、成形型から成形体を離すことができ、また回動軸として働かせることができることを見出した。この発明はこのような知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
この発明は、熱可塑性合成樹脂製シートを真空又は圧空成形して、直方体状の容器の底体と蓋体とを作るにあたり、底体と蓋体とは、底体に蓋体を被せた状態において三方の側壁の間で互いに密接するが、残る一方の側壁間では離れた状態になっており、互いに密接する側壁のうち対向する二組の側壁上には、上記の離れた側壁寄りの部分に、対称に容器の外方から内部へ向かう窪みを形成し、窪みを奥ほど狭くし、窪みの深さを上記合成樹脂製シートの厚みの0.5〜5倍とした構造に、一挙に成形することを特徴とする、合成樹脂製容器の製造方法を提供するものである。
【0012】
この発明では、蓋の開閉を容易にするために、容器を構成している底体と蓋体とを離して、真空又は圧空成形する。また、底体も蓋体も直方体状にする。すなわち、底体と蓋体とに付設された4個の側壁が、それぞれ直角四辺形の断面を持った四角筒を構成しているものとする。
【0013】
この発明では、底体に蓋体を被せた場合に、底体と蓋体とは三方の側壁で密接するが、残る一方の側壁では離れている形状にする。そして、互いに密接する三方の側壁のうち、互いに向かい合っている二組の側壁上には、容器の外方から内部へ向かう窪みを形成する。
【0014】
窪みを設ける位置は、二組の側壁上で上述の離れている一方の側壁寄りの位置とする。また、その位置は、二組の側壁上で左右対称の位置とする。
【0015】
窪みは奥ほど狭くする。これは窪み部分を成形型から離す必要から出ているが、また窪み同士を嵌め合わせるための便宜にも由来している。
【0016】
窪みの深さについては、蓋体と底体に軸着して一体的に安定なものとするためには、窪みの深さを大きくする必要がある。ところが、窪みの深さを大きくすると、成型時に成形型から底体及び蓋体を離して取り出すことが困難となる。従って、窪みの深さは蓋体と底体との間の軸着の安定度と、成形型からの離脱の容易さという、2つの相反する要求の妥協によって適当に定めなければならない。
【0017】
一般に、上に述べた軸着の安定度と、離脱の容易さとは、側壁に形成する窪みの深さだけでなく、成形に供される熱可塑性合成樹脂の種類と合成樹脂製シートの厚みによっても影響を受ける。
【0018】
合成樹脂としては色々なものを使用することができる。理論から云えば、すべての熱可塑性合成樹脂を用いることができる。しかし、実用上は数種のものに限定される。例を挙げるとポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等である。これらの樹脂の中では、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンがとくに適している。
【0019】
この発明では、上述の合成樹脂をシートとして使用する。シートの厚みは0.1〜1.5mmの範囲内が適している。このような厚みのシートを用いて、例えばこの発明に係る容器の底体を真空成形によって作るには、図1に示したように操作する。
【0020】
【実施の態様】
図1は、この発明に係る容器の底体Aを作る場合に用いる成形型Bを一部切欠して示した斜視図である。成形型Bは作ろうとする底体Aの外形に等しい凹陷部Cを持っており、この凹陷部Cが底体Aを成形するための雌型となっている。凹陷部Cの表面には合成樹脂製シートを引き付けるための空気吸引用小孔Dが多数穿設されている。また、凹陷部Cの外周には成形された合成樹脂製シートを凹陷部Cから脱出させるための押出板Eが付設されている。これらのものは、従来の真空又は圧空成形で用いられて来たものである。
【0021】
この発明で用いられる成形型は、底体Aの側壁を構成する成形面F上に、突出部Gが付設されている点で、従来の成形型とは異なっている。突出部Gは、成形面Fと向き合うもう1つの成形面F’上にも対称の位置に設けられている。そして成形面F’上に設けられる突出部は、成形面F上に設けられた突出部Gと同形同大とされている。突出部Gは先ほど狭まる形状をして、その高さは合成樹脂製シートの厚みの0.5〜5倍とされている。そのうちでは、突出部Gはシートの厚みの0.8〜3倍とすることが好ましく、とくに1〜2倍とすることが最も好ましい。
【0022】
図1に示した成形型Bによって真空成形を行うと、得られた成形体は、成形型B通りの底体Aを形成しているが、底体Aには側壁面に垂直に突出部Gが食い込んでいる。このために、成形体は成形型Bから簡単には離れない。しかし、突出部Gは、成形面下のうちの小さな部分を占め、しかも先細とされ、突出高が合成樹脂製シートの厚みの0.5〜5倍の小さなものとされているから、押出板Eを成形型Bから突き出すことにより、成形体を成形型Bから離して取り出すことができる。
【0023】
成形体を成形型Bから離すに困難なときは、成形面に設けた小孔Dから空気を噴出することにより成形型Bからの引き剥がしを容易にすることができる。とくに突出部Gの先端又は側面に小孔Dを設けて、ここから空気を噴出させることにより、引き剥がしを一層容易にすることができる。
【0024】
図1では、容器の底体Aを真空成形する場合を例に取って説明したが、容器の蓋体を真空成形する場合も、成形型を変更するだけで、全く同じようにして、蓋体を作ることができる。また、図1では、真空成形する場合を例に取ったが、圧空成形する場合も、真空の代わりに加圧空気を合成樹脂製シートの反対側から加えることとするだけで、同様にして成形することができる。
【0025】
こうして成形された成形体は、周縁部を切り取って底体とされる。得られた底体は、図2のPに示したように直方体状を呈している。底体Pは、対向する側壁11と13上で、側壁14寄りの対称部分に、外方から内部へ向かう窪み1と2とを備えたものとなっている。
【0026】
他方、同様にして蓋体を成形し周縁部を切り取って作って蓋体とする。図2のQは、このようにして製造された直方体状の蓋体を示している。蓋体Qは、対向する側壁21と23上で、側壁24寄りの対称部分に、外方から内部へ向かう窪み3と4とを備えたものとなっている。
【0027】
この場合、蓋体Qの窪み3と4とは、その反対面へ突出している部分が、それぞれ底体Pの窪み1と2とに丁度嵌まり込む大きさのものとなるようにする。また、窪み1、2、3及び4は、何れも深さが、底体及び蓋体の成形に使用された元の合成樹脂製シートの厚みの0.5〜5倍にされ、その直径が何れも元の合成樹脂シートの厚みの1〜20倍とされる。また、蓋体Qにおける側壁22から窪み3までの距離Lは、底体Pにおける側壁12から窪み1までの距離Mよりもシートの厚み分だけ大きくし、実質的にはほぼ等しくしておく。他方、蓋体Qにおける側壁24から窪み3までの距離Nは、底体Pにおける側壁14から窪み1までの距離Oよりも大きくしておく。
【0028】
そこで、図2の蓋体Qを底体Pに被せると、蓋体Qの側壁21、22、23はそれぞれ底体Pの側壁11、12、13と密接し、蓋体Qの窪み3と4との反対面にある突出部が、それぞれ底体Pの窪み1と2とに嵌まり込む。こうして、蓋体Qは底体Pに1ないし4によって軸着される。このとき、距離Nが距離Oよりも大きくされているから、側壁14と24との間には隙間があるため、蓋体Qは底体Pに対して軸着された個所を中心として、開閉できることとなる。この開閉は、軸による回動であるために容易である。
【0029】
図2に示した容器では、底体Pの内部に軸着のための窪み1及び2のよって生じた突出部が突出している。これは容器の見栄えを悪くする。そこで、容器内部へ突出部が突出することを避けるために、底体Pの側壁を二重壁とする。側壁を二重にした底体Rを成形する状態が図3に示されている。
【0030】
図3において、底体Rを成形するための成形型Bは、雄型となっている。成形型Bの成形面には、多数の小孔Dが穿設されて、小孔Dから空気を吸引して、合成樹脂製シートを成形面に密接するようにされている。こうして成形された成形体は、側壁が側壁11と内壁11’で構成されているように、内外二重壁とされている。窪み1は、側壁11に形成され内壁11’には形成されていない。このため、容器の内部は、突出物のない状態になっている。
【0031】
底体が二重壁とされたこの発明に係る容器が、図4に示されている。図4の(a)は蓋体Qを示し、図4の(b)は底体Rを示している。
【0032】
図4では、蓋体Qの側壁は一重壁のままであるが、底体Rの側壁は、例えば側壁12と内壁12’のように内外の二重壁で構成され、窪みは、例えば窪み1のように側壁11だけに形成されている。但し、図4の(b)における窪み1は上下に長い長孔とされている。これは、底体Rに蓋体Qを被せて軸着した状態で、蓋体Qを大きく開けることができるようにするためである。すなわち、蓋体Qを底体Rに対して大きく開けることができるようにするためには、蓋体Qの側壁24と底体Rの側壁14との間の距離を大きくすればよいが、この距離を大きくすると、蓋体Qの側壁24が大きく出張ることとなるので、この距離を小さくして大きく開けるために長孔としたのである。
【0033】
これに伴ない底体Rには側壁14寄りの上面に突条16が形成されている。突条16は窪み1を長孔とたために、蓋体Qを閉じたとき、蓋体Qの側壁14寄りの部分が落ち込むことを避けるために付設したものである。
【0034】
また、図4の容器では、蓋体Qの側壁21に係止部25を窪ませて形成し、底体Rの側壁11上の対応する部分にも係止部15を形成し、係止部25が係止部15に嵌まり込むことによって、蓋体Qが底体Rに一時的に係止できるようにされている。
【0035】
【発明の効果】
この発明によれば、容器の底体と蓋体とを直方体状とし、底体に蓋体を被せた状態では、三方の側壁の間で互いに密接するが、残る一方の側壁では離れた状態にし、互いに密接する側壁のうち対向する二組の側壁上には、上記の離れた側壁寄りの部分に対称に容器の外方から内部へ向かう窪みを形成したので、蓋体を底体に被せると蓋体は窪みによって底体に軸着されることとなり、互いに離れている側壁間には傾きを変えることのできる空間があるので、蓋は軸を中心として回動できることとなり、従って開閉容易な容器が得られる。
【0036】
また、この発明では、窪みを奥ほど狭くし、窪みの深さを真空又は圧空成形に供する熱可塑性合成樹脂製シートの厚みの0.5〜5倍としたので、真空又は圧空成形の際に窪みがアンダーカットになるのに拘らず、底体と蓋体とを損傷することなく、成形型から離して取り出すことができる。従って、底体と蓋体とを真空又は圧空成形によって一挙に作ることができる。真空又は圧空成形によるので、成形用型は雄型又は雌型の一方で足り、しかも木製等の安価なものとすることができるので、成形型を安価に簡単に作ることができる。このために、容器を安価に簡単に作ることができる。この発明はこのような利益を与えるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明方法によって容器の底体を製造する際の、成形型の一部切欠斜視図である。
【図2】この発明方法によって製造された容器の底体と蓋体の斜視図である。
【図3】この発明方法によって容器の底体を製造する際の他の成形型の一部切欠斜視図である。
【図4】この発明方法によって製造された他の容器の斜視図である。
【符号の説明】
A、P、R 容器の底体
B 成形型
C 凹陷部
D 小孔
E 押出板
F、F’ 成形面
G 突出部
Q 蓋体
1、2、3、4 窪み
11、12、13、14、21、22、23、24 側壁
11’、12’、13’、14’ 内壁
15、25 係止部
16 突条
Claims (4)
- 熱可塑性合成樹脂製シートを真空又は圧空成形して、直方体状の容器の底体と蓋体とを作るにあたり、底体と蓋体とは、底体に蓋体を被せた状態において三方の側壁の間で互いに密接するが、残る一方の側壁間では離れた状態になっており、互いに密接する側壁のうち対向する二組の側壁上には、上記の離れた側壁寄りの部分に、対称に容器の外方から内部へ向かう窪みを形成し、窪みを奥ほど狭くし、窪みの深さを上記合成樹脂製シートの厚みの0.5〜5倍とした構造に、一挙に成形することを特徴とする、合成樹脂製容器の製造方法。
- 窪みの底にあたる成形型の表面上に、空気流通用の小孔を設けて成形することを特徴とする、請求項1に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
- 窪みの直径を合成樹脂製シートの厚みの1〜20倍としたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
- 成形された底体と蓋体とを窪み同士を嵌め合わせて一体にすることを特徴とする、請求項1−3の何れか1つの項に記載の合成樹脂製容器の製造方法。
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