JP3709970B2 - 交流変換装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、交流電源のオンオフ、交流電圧の調整、交流電力の調整等を行う交流電源装置の制御方法に特徴を有する交流変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の三相交流変換回路として、図3に示す構成が知られている。この回路は、公知文献1:IAS’92 conference record pp 880〜887に記載されている回路である。
図3において、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のスイッチング素子1〜6とダイオード7〜12をそれぞれ逆並列接続したスイッチング回路を2個直列接続して直列回路を3個構成し、各直列回路の一端は互いに共通接続され、他端の各々には三相交流電源19の出力端子U,V,Wが接続される。また、各直列回路内の直列接続点には三相負荷20が接続され、各直列回路の両端にはスナバコンデンサ13〜15と放電用抵抗16〜18とからなる並列回路(スナバ回路)が接続されている。
【0003】
このような構成において、スイッチング素子1〜6を特定のオンオフ比でスイッチングさせると、三相負荷20には、三相交流電源19の電圧より低い電圧が印加され、三相交流電圧及び三相交流電力の変換が実現される。ここで、スイッチング素子1,3,5(以下では上アーム素子と呼ぶ)用のオンオフ信号とスイッチング素子2,4,6(以下では下アーム素子と呼ぶ)用のオンオフ信号とは、互いに反転した関係にある。
【0004】
また、上アーム信号と下アーム信号との切替時には、スナバコンデンサ13〜15または三相交流電源19の短絡を防止するため、上下アーム素子が同時にオフ状態となる期間(以下ではデッドタイムと呼ぶ)が設けられる。三相負荷20が誘導性の場合、デッドタイム期間中はスナバコンデンサ13〜15は負荷電流で充電され、コンデンサ電圧は上昇する。コンデンサに蓄積された電荷は次のデッドタイム期間までに放電させる必要があるため、スナバコンデンサ13〜15には並列に放電用抵抗16〜18が接続されている。
【0005】
図4は、上記の公知文献1の説明に基づいて作成したPWM制御回路のブロック図(図4(a))とタイムチャート(図4(b))である。この構成は、図3の負荷電圧を一定電圧に調整するための構成であり、調節器32の出力とキャリア発生器33の出力とが変調器34により比較され、PWM信号Aが作られる。この信号はデッドタイム確保用タイマー(t1)36を通して上アーム素子のオンオフ信号Bになり、また、PWM信号Aは符号反転器(インバータ)35により反転されたうえ、デッドタイム確保用タイマー(t2)37を通して下アーム素子のオンオフ信号Cとなる。
【0006】
更に、パルス分配回路43は、三相交流電源19の位相関係から作られる同期信号に応じて、各スイッチング素子1〜6へ信号BまたはCを分配する。図4(b)のタイムチャートから、上アーム用信号Bと下アーム用信号Cとの切替時には、前記デッドタイム確保用タイマー36または37によって確保されるt1,t2の期間、上下アームの両方のスイッチング素子にオフ信号が与えられている。
【0007】
図5は、従来の単相交流変換回路の構成である。この回路は、公知文献2:IEE Proc. - Electr. Power Appl., Vol. 143, No.4, July 1996, pp 323〜330に基づくものであり、PWM方式のACチョッパの主回路である。
図5において、スイッチング素子1〜4とダイオード7〜10とを逆並列接続したスイッチング回路を2個直列接続して直列回路を2個構成する。そして、各直列回路の一端は互いに共通接続され、他端にはそれぞれ単相交流電源21の出力端子U,Vが接続されると共に、各直列回路内の直列接続点には単相負荷22が接続され、各直列回路の両端にはスナバコンデンサ13,14が接続されている。
【0008】
この回路におけるスイッチング素子用のゲート信号は、上記公知文献2のFig.29に示されており、単相交流電源21の半サイクル期間はスイッチング素子1,2が高周波で、スイッチング素子3,4が単相交流電源21の周波数で各々スイッチングする。なお、制御ブロック図は図4と同じであるが、パルス分配回路43は三相用と単相用との違いがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
図3に示した三相交流変換回路と図4の制御方式では、デッドタイム中にスナバコンデンサ13〜15に蓄積された電荷を抵抗16〜18により放電させているため、高周波スイッチング動作では抵抗16〜18の損失が大きく、抵抗やその冷却装置が大型化し、高価になると共に、装置の変換効率が低下するという問題があった。
【0010】
また、図5に示した単相交流変換回路と図4の全てのスイッチング素子が高周波でオンオフする制御方式では、放電用抵抗を持たないこと等に起因してスナバコンデンサ13,14の放電経路が確保できないので、上下アームスイッチング素子のデッドタイムを極小にする必要がある。従って、スイッチング時間が短くて済み、しかもばらつきの少ないスイッチング素子を選択することが要求される。このことは、部品を選別する際の制約となり、歩留まりの低下や部品の試験・選別に要する時間の増加を招き、結果として装置が高価になるという問題を生じていた。
【0011】
そこで本発明の解決課題は、装置の小型化、低価格化を図り、部品選別の自由度や電力変換効率の向上を可能にした三相または単相の交流変換装置を提供することにある。
【0012】
上記課題を解決するため、請求項1記載の三相交流変換装置は、スイッチング素子とダイオードとを逆並列接続したスイッチング回路を2個直列接続してなる直列回路を3個備え、各直列回路の一端を共通接続すると共に他端を三相交流電源の出力端子にそれぞれ接続し、各直列回路内の直列接続点には三相負荷を接続し、かつ各直列回路の両端にスナバコンデンサのみをそれぞれ接続し、全てのスイッチング素子が高周波でスイッチングする三相交流変換装置において、3個の直列回路のうち何れかの直列回路内の三相交流電源側のスイッチング素子をオンさせるタイミングから、前記スナバコンデンサの蓄積電荷を負荷に放電させる一定時間経過後に、前記タイミング以前からオン状態にあった他の直列回路内の共通接続側のスイッチング素子をオフさせる制御手段を備えたことにより、デッドタイム期間中にスナバコンデンサに蓄積された電荷を、スイッチング素子をオンさせるタイミングで三相負荷へ放電させるようにしたものである。
【0013】
更に、請求項2記載の単相交流変換装置は、スイッチング素子とダイオードとを逆並列接続したスイッチング回路を2個直列接続してなる直列回路を2個備え、各直列回路の一端を共通接続すると共に他端を単相交流電源の出力端子にそれぞれ接続し、各直列回路内の直列接続点には単相負荷を接続し、かつ各直列回路の両端にスナバコンデンサのみをそれぞれ接続し、全てのスイッチング素子が高周波でスイッチングする単相交流変換装置において、2個の直列回路のうち何れかの直列回路内の単相交流電源側のスイッチング素子をオンさせるタイミングから、前記スナバコンデンサの蓄積電荷を負荷に放電させる一定時間経過後に、前記タイミング以前からオン状態にあった他の直列回路内の共通接続側のスイッチング素子をオフさせる制御手段を備えたことにより、請求項1の発明と同様に、デッドタイム期間中にスナバコンデンサに蓄積された電荷を、スイッチング素子をオンさせるタイミングで単相負荷へ放電させるようにしたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態を示しており、この実施形態は、図3と同様に三相交流電源19の交流電力を変換して三相負荷20に供給する三相交流変換装置に関するものである。
図3と同一の構成要素には同一の参照符号を付してあり、1〜6はそれぞれ2個直列接続されるIGBT等のスイッチング素子、7〜12は各スイッチング素子1〜6に逆並列接続されたダイオード、13〜15は各々2個のスイッチング素子からなる3個の直列回路の両端に接続されたスナバコンデンサである。
【0015】
図3と同様に、前記3つの直列回路の一端は共通接続され、他端は三相交流電源19の出力端子U,V,Wにそれぞれ接続されていると共に、各直列回路内の接続点には三相負荷20が接続されている。
【0016】
図2は、図1のスイッチング素子1〜6用のオンオフ信号を作り出すPWM制御回路のブロック図(図2(a))とタイムチャート(図2(b))である。
この実施形態の動作を、三相交流電源19のU相から三相負荷20を介してV相とW相へ電流が流れるモードで説明する。図2(a)の制御回路は、図1の負荷電圧を一定電圧に調整するための構成であり、調節器32の出力とキャリア発生器33の出力とが変調器34により比較され、PWM信号Aが作られる。このPWM信号Aは、デッドタイム確保用タイマー(t1)36を通してU相上アーム素子1のオンオフ信号Bになり、同時に、符号反転器35により反転されたうえデッドタイム確保用タイマー(t2)37を通してU相下アーム素子2のオンオフ信号Cとなる。
【0017】
更に、前記信号Bから放電時間確保用タイマー(t3)38を通して信号Dが作られる。このタイマー(t3)38は、スナバコンデンサ13〜15から三相負荷20へ電荷を放電させる際の放電時間を確保するためのものである。
そして、上記信号Dはデッドタイム確保用タイマー(t4)40を通してV相、W相の上アーム素子3,5のオンオフ信号Eになる。また、信号Dは符号反転器39により反転され、デッドタイム確保用タイマー(t5)41を通してV相、W相の下アーム素子4,6のオンオフ信号Fとなる。
【0018】
なお、三相交流電源19のV相から三相負荷20を介してW相とU相へ電流を流すモードと、W相から三相負荷20を介してU相とV相へ電流を流すモードも同様に説明できる。一例を挙げれば、V相から三相負荷20を介してW相とU相へ電流を流すモードにおいては、信号B,Cが各々V相上アーム素子3、下アーム素子4のオンオフ信号となり、信号EがW相、U相上アーム素子5,1のオンオフ信号となり、信号FがW相,U相下アーム素子6,2のオンオフ信号となる。
パルス分配回路42はこれらの通流モードを選択する役割を受け持ち、三相交流電源19の位相関係から作られる同期信号に応じて、各スイッチング素子1〜6へ信号B,C,E,Fを分配する。
【0019】
図2(b)に示すタイムチャートにおいて、信号B,C間に設けられる時間t1,t2、信号E,F間に設けられる時間t4,t5は上下アームの短絡防止用のデッドタイムである。これらの時間t1,t2,t4,t5は、前述したようにデッドタイム確保用タイマー36,37,40,41によって確保される。
【0020】
また、信号Bが立ち上がってから信号Dが立ち上がるまでの時間t3は、スナバコンデンサ13,14,15の蓄積電荷を三相負荷20へ放電させるための時間である。この時間t3は、前記放電時間確保用タイマー38によって確保される。
例えば、三相交流電源19のU相から三相負荷20を介してV相とW相へ電流が流れるモードにおいて、時間t3はU相のスイッチング素子1がオン、同スイッチング素子2がオフ、V相のスイッチング素子3がオフ、同スイッチング素子4がオン、W相のスイッチング素子5がオフ、同スイッチング素子6がオンの状態であり、その直前の時間t1(スイッチング素子1,2の短絡防止用デッドタイム)にスナバコンデンサ13に充電された電荷が、スイッチング素子1のオンのタイミングでスイッチング素子1、三相負荷20、スイッチング素子4,6を介して放電される。
【0021】
このように、本実施形態によれば、図3の主回路から放電用抵抗16〜18を除去することによって主回路を簡略化させると共に、従来、放電用抵抗によって消費させていた電力を三相負荷20に供給することで、電力変換装置としての変換効率を向上させることができる。また、制御回路としては若干数のタイマー及び符号反転器を追加するだけで済み、装置全体としてみれば主回路の部品数削減、小型化、低価格化による利点の方が大きい。
【0022】
なお、図示しないが、単相交流変換装置に対しても、図2と同様の制御方式を適用することができる。これは、本発明の第2実施形態に相当する。
すなわち、単相交流変換装置の主回路の一例である図5において、単相交流電源21のU相から単相負荷22を介してV相へ電流を流す場合は、図2の信号BはU相のスイッチング素子1へ、信号CはU相のスイッチング素子2へ、信号EはV相のスイッチング素子3へ、信号FはV相のスイッチング素子4へ供給する。V相から単相負荷22を介してU相へ電流を流す場合には、信号BはV相のスイッチング素子3へ、信号CはV相のスイッチング素子4へ、信号EはU相のスイッチング素子1へ、信号FはU相のスイッチング素子2へ供給する。
【0023】
例えば、単相交流電源21のU相から単相負荷22を介してV相へ電流を流す通流モードでは、U相のスイッチング素子1,2の短絡防止用デッドタイムにスナバコンデンサ13に充電された電荷が、スイッチング素子1のオンのタイミングでU相のスイッチング素子1、単相負荷22、V相のスイッチング素子4を介して放電される。
このように単相交流変換装置においても、放電用抵抗を用いることなくスナバコンデンサに蓄積された電荷を単相負荷を通じて放電させることができ、主回路の小型・簡略化、変換効率の向上が実現される。
【0024】
なお、図1及び図5の主回路はスイッチング回路としてIGBTのコレクタとダイオードのカソードの接続点側を三相または単相交流電源へ接続した構成であるが、IGBTのエミッタとダイオードのアノードの接続点側を三相または単相交流電源に接続した場合も同様に動作可能であることは容易に推測可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上のように本発明は、いわゆるデッドタイム期間中にスナバコンデンサに蓄積された電荷を、スイッチング素子がオンするタイミングで負荷に放電するようにしたものである。この結果、
(1)従来、スナバコンデンサと並列に接続されていた放電用抵抗が不要となり、冷却装置を含めた装置全体の小型化、軽量化、低価格化を達成することができる。
(2)スナバコンデンサの電荷を負荷へ所定時間、放電する制御方式を採用したため、従来のようにデッドタイムの極小化に苦慮したりスイッチング時間のばらつきが素子選別の制約になるような不都合がなく、部品選択の自由度の向上と試験時間の短縮が可能になる。
(3)従来、放電用抵抗で消費していたスナバコンデンサの蓄積電荷を負荷に放電させるので、装置の変換効率が向上する。
等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す回路図である。
【図2】図1の制御回路を示すブロック図である。
【図3】従来の三相交流変換回路を示す回路図である。
【図4】図3の制御回路を示すブロック図である。
【図5】従来の単相交流変換回路を示す回路図である。
【符号の説明】
1〜6…スイッチング素子
7〜12…ダイオード
13〜15…スナバコンデンサ
16〜18…放電用抵抗
19…三相交流電源
20…三相負荷
21…単相交流電源
22…単相負荷
31…電圧設定器
32…調節器
33…キャリア発生器
34…変調器
35,39…符号反転器
36〜38,40,41…タイマー
42,43…パルス分配回路

Claims (2)

  1. スイッチング素子とダイオードとを逆並列接続したスイッチング回路を2個直列接続してなる直列回路を3個備え、各直列回路の一端を共通接続すると共に他端を三相交流電源の出力端子にそれぞれ接続し、各直列回路内の直列接続点には三相負荷を接続し、かつ各直列回路の両端にスナバコンデンサのみをそれぞれ接続し、全てのスイッチング素子が高周波でスイッチングする三相交流変換装置において、
    3個の直列回路のうち何れかの直列回路内の三相交流電源側のスイッチング素子をオンさせるタイミングから、前記スナバコンデンサの蓄積電荷を負荷に放電させる一定時間経過後に、前記タイミング以前からオン状態にあった他の直列回路内の共通接続側のスイッチング素子をオフさせる制御手段を備えたことを特徴とする交流変換装置。
  2. スイッチング素子とダイオードとを逆並列接続したスイッチング回路を2個直列接続してなる直列回路を2個備え、各直列回路の一端を共通接続すると共に他端を単相交流電源の出力端子にそれぞれ接続し、各直列回路内の直列接続点には単相負荷を接続し、かつ各直列回路の両端にスナバコンデンサのみをそれぞれ接続し、全てのスイッチング素子が高周波でスイッチングする単相交流変換装置において、
    2個の直列回路のうち何れかの直列回路内の単相交流電源側のスイッチング素子をオンさせるタイミングから、前記スナバコンデンサの蓄積電荷を負荷に放電させる一定時間経過後に、前記タイミング以前からオン状態にあった他の直列回路内の共通接続側のスイッチング素子をオフさせる制御手段を備えたことを特徴とする交流変換装置。
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