JP3709616B2 - プリプレグ、繊維強化複合材料およびコンクリート構造物の補修・補強方法 - Google Patents

プリプレグ、繊維強化複合材料およびコンクリート構造物の補修・補強方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリプレグおよび繊維強化複合材料、および該プリプレグを用いたコンクリート構造物の補修・補強方法に関する。
【0002】
さらに詳しくは、大気中の湿気により硬化し、力学的特性に優れた繊維強化複合材料を与え、特にコンクリート構造物の補修・補強用途に好適に使用できるプリプレグ、およびそれを用いたコンクリート構造物の補修・補強方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量で優れた機械特性を有するため、スポーツ・レジャー用品用途、航空宇宙用途、一般産業用途など、様々な分野で広く用いられている。
【0004】
最近では、このような繊維強化複合材料を土木、建築用途へ適用することが盛んになりつつある。その主たる対象の1つに、コンクリート構造物などの補修・補強を挙げることができる。この背景には、橋梁、トンネル、煙突、建物、道路床版などのコンクリート構造物が、長年の使用によるコンクリートの中性化、鉄骨や鉄筋の錆発生による劣化、通行車輌の重量制限緩和による負荷の増大、地震による損傷、大地震を想定した耐震基準強化などへの対応から、補修・補強の必要性が高くなっていることが挙げられる。
【0005】
繊維強化複合材料を用いたコンクリート構造物の補修・補強方法については、これまでにいくつかの方法が提案されている。
【0006】
特開平3−224901号公報には、コンクリート構造物の表面に、強化繊維を一方向シート状に配列したものを配置し、その上からエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂などの熱硬化性樹脂に室温硬化型の硬化剤を混合した室温硬化型樹脂の組成物をヘラやローラー等を用いて含浸した後、樹脂を硬化させるという、構造物の補修・補強方法が開示されている。この方法では、作業現場で樹脂と硬化剤を調合した後、強化繊維に含浸させる必要があるため、作業に手間がかかる。特開平5−38718号公報、特開平5−39673号公報、特開平5−39674号公報には、硬化剤を含まない熱硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸したプリプレグをコンクリート構造物にはりつけ、その上から該熱硬化性樹脂の硬化剤を有機溶媒に溶解して塗布し、乾燥後に硬化させるという補修・補強方法が開示されている。この方法では、プリプレグに硬化剤の溶液を均一に浸透させることが難しく硬化不良が生じやすいこと、有機溶媒を使用するため硬化物中に気泡が残りやすく、作業環境も悪いことなど、問題点が多い。
【0007】
特開平7−178728号公報には、強化繊維に湿気硬化型ポリウレタン樹脂を含浸したプリプレグ、およびそれを用いたコンクリート構造物の補修・補強方法が開示されている。湿気硬化型ポリウレタンは硬化の際に二酸化炭素を発生するため、硬化物の内部および表面に多量の気泡が残る。このような気泡が存在すると、材料の力学的特性が低下したり、材料の表面平滑性が悪くなるほか、補修・補強した箇所に気泡を通して水が侵入しやすくなるため、その箇所にひび割れやプリプレグの剥がれなどが発生し、短期間で劣化してしまう恐れがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる欠点を改良すること、すなわち、樹脂調合作業や含浸作業が不要で作業性がよいうえ、硬化物に含まれる気泡が極めて少なく、特にコンクリート構造物の補修・補強に用いた場合に、長期間に渡って優れた補修・補強効果が持続できるプリプレグおよび繊維強化複合材料、および該プリプレグを用いた構造物の補修・補強方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のプリプレグは、前記課題を解決するため、次の構成を有する。
【0010】
すなわち、湿気硬化樹脂組成物を強化繊維に含浸してなるプリプレグであって、該樹脂組成物が1分子中に加水分解シリル基を1個以上有する化合物を含んでなり、硬化の際に実質的に気体を発生せず、かつ該湿気硬化樹脂組成物の硬化物の室温における曲げ弾性率が2.0GPa以上であるプリプレグである。また、湿気硬化樹脂組成物が強化繊維に含浸されてなるプリプレグであって、該湿気硬化樹脂組成物が、加水分解性シリル基を有するポリオルガノシロキサン、エポキシ樹脂、および湿気活性型のエポキシ樹脂硬化剤を含んでなり、硬化するに際して実質的に気体を発生せず、かつ該湿気硬化樹脂組成物の硬化物の室温における曲げ弾性率が2.0GPa以上であるプリプレグである。
【0011】
また、本発明の繊維強化複合材料は、前記課題を解決するため、次の構成を有する。すなわち、上記プリプレグを硬化してなる繊維強化複合材料である。
【0012】
また、本発明のコンクリート構造物の補修・補強方法は、前記課題を解決するため、次の構成を有する。すなわち、上記プリプレグをコンクリート構造物に貼付した後、該プリプレグを硬化せしめることを特徴とするコンクリート構造物の補修・補強方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
まず、強化繊維に含浸して用いる湿気硬化樹脂組成物について説明する。
【0015】
湿気硬化樹脂組成物には、硬化する際に気体を実質的に発生しないものを使用する。気体を実質的に発生しないとは、硬化反応により架橋構造が形成される際、生成する副生成物が常温・常圧下で気体でないか、あるいは架橋構造が形成される際、副生成物が実質的に発生しないことを意味する。
【0016】
例えば、硬化する際に、常温・常圧下で液体である物質、たとえばメタノール、エタノール、酢酸、アセトン、水などが発生する場合は、これらは樹脂中を拡散し表面より徐々に揮発していくため、気泡の非常に少ない硬化物が得られる。また、生成する物質が常温・常圧下で固体の場合は、これらは硬化物中にとどまるため、気泡の非常に少ない硬化物が得られる。
【0017】
硬化する際に気体が発生するか否かは、湿気硬化樹脂組成物に含まれる化合物の種類と、その硬化機構によって決まる。また、硬化する際に発生する物質を分析して判定することもできる。例えば、湿気硬化型ポリウレタンのように、硬化の際に二酸化炭素などの気体を発生する場合は、硬化物中に大量の気泡が残存し、材料の力学的特性が低下したり、プリプレグにより補修・補強した箇所に水が侵入する原因となるため、好ましくない。
【0018】
硬化する際に気体を発生しない湿気硬化樹脂組成物として、シロキサン結合を生成して硬化する湿気硬化樹脂組成物が使用できる。
【0019】
シロキサン結合を形成して硬化する樹脂組成物としては、1分子中に加水分解性シリル基を1個以上有する化合物を含んでなる湿気硬化樹脂組成物が挙げられる
【0020】
分子中に加水分解性シリル基を1個以上有する化合物を含んでなる湿気硬化樹脂組成物が、硬化速度や硬化物の力学的特性に優れる。
【0021】
加水分解性シリル基とは、ケイ素原子に加水分解性基が結合した官能基であり、加水分解反応により架橋構造を形成しうる基を意味する。加水分解性シリル基としては、下記一般式(1)で示される基が好ましい。
【0022】
【化2】
Figure 0003709616
式中、Xは加水分解性基、aは0〜2の整数、R1 はアルキル基を表す。
【0023】
Xの具体例として、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、アルケニルオキシ基等があげられる。これらの中では、加水分解性が適度で取扱いが容易な点から、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノオキシ基、アルケニルオキシ基が好ましい。加水分解性基が1個のケイ素原子に2個以上結合している場合、それらは同一でも異なっていてもよい。また、アルキル基は、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0024】
また、力学的特性に優れた硬化物を与えるためには、加水分解性シリル基を1分子中に2個以上有する化合物を使用することが好ましい。
【0025】
本発明で好ましく使用できる、加水分解性シリル基を有する化合物としては、次の(a)〜()に示すものを挙げることができる。これらは単独で用いても、複数の種類を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(a)エポキシ樹脂と、エポキシ基と反応しうる官能基を有するシラン化合物との反応物
(b)不飽和結合を有し、かつ環状構造を骨格に有する化合物と、ヒドロシラン化合物との反応物
(c)芳香族環を有し、1分子中に2個以上の1級あるいは2級アミン基を有する芳香族ポリアミンと、アミノ基と反応しうる官能基を有するシラン化合物との反応物
(d)フェノール化合物と、水酸基と反応しうる官能基を有するシラン化合物との反応
a)の化合物は、エポキシ樹脂と、エポキシ基と反応し得る官能基を有するシラン化合物を反応させることにより得られる。
【0027】
用いるエポキシ樹脂に特に制限はないが、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものが好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノール化合物とジシクロペンタジエンの共重合体を原料とするエポキシ樹脂、ジグリシジルレゾルシノール、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシリレンジアミン、テトラグリシジルビス(アミノメチルシクロヘキサン)のようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレートのようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂、および前記エポキシ樹脂を複数組み合わせたものなどを用いることができる。
【0028】
これらの中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノール化合物とジシクロペンタジエンの共重合体を原料とするエポキシ樹脂や、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシリレンジアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いたものは、耐熱性、力学的特性ともに優れた硬化物を与えるため、特に好ましい。
【0029】
エポキシ基と反応し得る官能基を有するシラン化合物としては、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリアセトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジアセトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−アミノプロピルトリス(アセトキシメート)シラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルビス(メチルエチルケトキシメート)メチルシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルビス(ジメチルケトキシメート)メチルシランなどのアミノ基含有シラン類、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシランなどのメルカプト基含有シラン類などを用いることができる。
【0030】
エポキシ樹脂と、エポキシ基と反応しうる官能基を有するシラン化合物の反応は、両者を混合して加熱することにより行うことができる。エポキシ樹脂中のエポキシ基1モルに対し、シラン化合物中の活性水素原子数が好ましくは0.3〜1.5モル、より好ましくは0.6〜1.2モルとなるよう配合し、加水分解性シリル基と水分との反応を防ぐため、真空中、あるいは窒素などの不活性ガスを流しながら反応させることが好ましい。メルカプト基含有シラン類を使用する場合、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン化合物や、トリフェニルホスフィンなどを触媒として添加しても良い。反応温度は、20〜200℃が好ましく、50〜180℃がさらに好ましい。
【0031】
(b)の化合物は、不飽和結合を有し、かつ環状構造を骨格に有する化合物に、ヒドロシラン化合物を反応せしめるヒドロシリル化反応により得ることができる。
【0032】
用いるヒドロシラン化合物は下記一般式(2)で表される。
【0033】
【化3】
Figure 0003709616
式中、Xは加水分解性基、aは0〜2の整数、R1 はアルキル基を表す。
【0034】
このような化合物には、例えばトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、フェニルジメトキシシランのようなアルコキシシラン類、トリアセトキシシラン、メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシランのようなアシロキシシラン類、トリス(アセトキシメート)シラン、ビス(メチルエチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(ジメチルケトキシメート)メチルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルシランのようなケトキシメートシラン類などが挙げられる。
【0037】
不飽和結合を有する化合物としては、芳香族基、シクロアルキレン基、イソシアヌル基などの環状構造を骨格に有する化合物を用いることにより、耐熱性、力学的特性に優れる硬化物が得られる例えばジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジアクリレート、水素化ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールSエチレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAグリシジルエーテルアクリル酸付加物などが好ましく使用できる。
【0038】
不飽和結合を有し、かつ環状構造を骨格に有する化合物と、ヒドロシラン化合物との反応は、遷移金属触媒の存在下で行うことが好ましい。触媒としては、白金、ロジウム、コバルト、パラジウム、ニッケルなどのVIII族遷移金属錯体が好ましく、特に白金触媒が好ましい。また、不飽和結合を有する化合物と、ヒドロシラン化合物の反応は、不飽和結合を有する化合物中に含まれる不飽和結合1モルに対し、ヒドロシラン化合物を0.8〜1.2モル配合し、加水分解性シリル基と水分との反応を防ぐため、真空中、あるいは窒素などの不活性ガスを流しながら反応させることが好ましい。反応温度は、30〜150℃が好ましく、60〜120℃がより好ましい。反応の際、溶剤は使用してもしなくてもよいが、使用する場合はエーテル類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが好ましい。
【0039】
(c)の化合物は、芳香族環を有し、1分子中に2個以上の1級あるいは2級アミン基を有する芳香族ポリアミンと、アミノ基と反応し得る官能基を有するシラン化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0040】
かかる芳香族環を有し、1分子中に2個以上の1級あるいは2級アミン基を有する芳香族ポリアミンとしては、例えば4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ジアミノナフタレンなどが好ましく使用できる。
【0041】
アミンと反応しうる官能基を有するシラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−)エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのようなエポキシ基含有シラン類などが挙げられる。
【0042】
アミンとグリシジル基含有シラン類の反応は、両者を混合して加熱することにより行うことができる。この反応は、加水分解性シリル基と水分の反応を防止するために、真空中、あるいは窒素ガスなどの不活性ガスを流しながら行うことが好ましい。反応温度は、20〜180℃が好ましく、50〜150℃がさらに好ましい。
【0043】
(d)の化合物は、フェノール化合物と、水酸基と反応し得る官能基を有するシラン化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0044】
フェノール化合物は、芳香族基に結合した水酸基を有する化合物である。1分子中に水酸基を2個以上有するものが好ましい。水酸基を2個有するフェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、メチルカテコールなどのフェノール類、ジヒドロキシナフタレンなどのナフトール類などが挙げられる。
【0045】
水酸基を3個以上有する化合物としては、フェノール類および/またはナフトール類とアルデヒド類との縮合物、フェノール類および/またはナフトール類とキシリレングリコールとの縮合物、フェノール類および/またはナフトール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物、フェノール類および/またはナフトール類とジシクロペンタジエンとの反応物、トリヒドロキシナフタレン、ピロガロールなどが挙げられる。ここで、フェノール類としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが用いられる。また、ナフトール類としては、例えば1−ナフトール、2−ナフトール、ジヒドロキシナフタレンなどが用いられる。また、アルデヒド類としては、たとえばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキザール、アジピンアルデヒド、グルタルアルデヒド、セバシンアルデヒド、サリチルアルデヒドなどが用いられる。
【0046】
水酸基と反応し得る官能基を有するシラン化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−)エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランなどのようなエポキシ基含有シラン類などが使用できる。
【0047】
これらの反応は、両者を混合して加熱することにより行うことができる。反応は、加水分解性シリル基と水分の反応を防止するために、真空中、あるいは窒素ガスなどの不活性ガスを流しながら行うことが好ましい。また、反応の際にはトリフェニルホスフィン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、イミダゾール化合物などを触媒として添加してもよい。
【0048】
記一般式(3)で示されるオルガノシロキサンを構造単位とし、末端および/または側鎖に加水分解性シリル基を有するポリオルガノシロキサン重合体を用いることもできる。
【0049】
【化4】
Figure 0003709616
式中、R2 、R3 はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基のいずれかを表す。
【0050】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基など、シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基など、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基など、アリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基など、アラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などが挙げられる。
【0051】
分子末端および/または側鎖に加水分解性シリル基を有するポリオルガノシロキサン重合体としては、硬化触媒などを必要に応じて混合した一液型組成物として市販されている各種の製品も適用できる。例えば、加水分解性基としてアセトキシ基を有する重合体を含むKE41、KE42(信越化学工業(株)製)、SH781、SE777(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)など、ケトキシメート基を有する重合体を含むKE45、KE44(信越化学工業(株)製)、SH780、SE778、SE5007(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)など、アルコキシ基を有する重合体を含むKE4896、KE4897、KE4898(信越化学工業(株)製)、SE555、SE798(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)などが挙げられる。
【0052】
本発明で用いる湿気硬化樹脂組成物は、加水分解性シリル基を有する化合物の硬化触媒を含有してもしなくてもよいが、硬化触媒を含有すると硬化反応が速やかに進行できるほか、低温での硬化性が改善できるため好ましい。
【0053】
硬化触媒としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル類、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズなどのスズカルボン酸塩類、ジブチルスズオキシドとフタル酸エステルとの反応物、ジブチルスズジアセチルアセトナート、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物類、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナートなどのキレート化合物類、オクチル酸鉛などが挙げられる。これらの硬化触媒は単独でも、2種以上を併用してもよい。これらの中では、湿気遮断時の保存安定性に優れ、かつ硬化速度が速いこと、低温での硬化性に優れることから、スズカルボン酸塩、チタン酸エステル類が特に好ましい。硬化触媒の添加量は、加水分解性シリル基を有する化合物100重量部に対し、0.1〜20重量部が好ましく、0.3〜10重量部がさらに好ましい。添加量が少なすぎると硬化速度が遅いことがある。一方、添加量が多すぎると、硬化むらや硬化物に凹凸が生じることがある。
【0054】
また、本発明で使用する湿気硬化樹脂組成物には、加水分解性シリル基を有する化合物に加えて、エポキシ樹脂を含むことも好ましい。エポキシ樹脂を含むことにより、硬化物の弾性率が向上できるほか、強化繊維とマトリックス樹脂の接着性、特に炭素繊維との接着性が向上できる。
【0055】
特に、加水分解性シリル基を有する化合物が、ポリオルガノシロキサン骨格を有する重合体などの場合には、硬化物の弾性率をあまり高くできないことがあるため、エポキシ樹脂を合わせて使用する。エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限なく用いることができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、フェノール化合物とジシクロペンタジエンの共重合体を原料とするエポキシ樹脂、ジグリシジルレゾルシノール、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシリレンジアミン、テトラグリシジルビス(アミノメチルシクロヘキサン)のようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレートのようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂などが挙げられ、前記の樹脂を単独あるいは複数組み合わせたものが用いられる。また、粘度を調整するため、フェニルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのモノエポキシ化合物を添加してもよい。また、エポキシ樹脂の配合量は、加水分解性シリル基を有する化合物100重量部に対して、5〜300重量部が好ましい。
【0056】
エポキシ樹脂を用いる際には、硬化剤として湿気活性型のエポキシ樹脂硬化剤を合わせて使用することが好ましい。好ましい湿気活性型硬化剤として、ケチミン化合物を挙げることができる。ケチミン化合物は、アミンとカルボニル化合物の縮合反応により得られる化合物であり、湿気を吸収するとアミンとカルボニル化合物に分解し、生じたアミンがエポキシ樹脂の硬化剤として働く。アミンとしては、室温で硬化活性を発揮し得るものが好ましく、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、p,p’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミンなどが好ましく使用できる。また、カルボニル化合物としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトンなどの脂肪族ケトン類、シクロペンタノン、トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、トリメチルシクロヘキサノンなどの脂肪族環状ケトン類、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸メチルエチルなどのβ−ジカルボニル化合物、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ジエチルアルデヒド、ジエチルアセトアルデヒド、グリオキサール、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類などが使用できる。
【0057】
ケチミン化合物中にイミノ基が存在する場合には、イミノ基をエチレンオキシドやスチレンオキシド、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類、グリシジルエステル類などとさらに反応させてもよい。また、ケチミン化合物は、単独でも複数の種類を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
ケチミン化合物の配合量は、湿気硬化樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、さらに好ましくは10〜50重量部である。
【0059】
エポキシ樹脂を配合した湿気硬化樹脂組成物は、硬化した後、加水分解性シリル基を有する化合物の硬化物を主成分とする相と、エポキシ樹脂硬化物を主成分とする相との2つの相からなる相分離構造を形成する場合がある。このような場合は、エポキシ樹脂またはエポキシ樹脂の硬化剤と反応しうる官能基と、加水分解性シリル基の両方を有する化合物を配合することにより、両相間の接着性が向上でき、機械特性に優れた硬化物が得られるため好ましい。このような化合物としては、アミノ基含有シラン類、メルカプト基含有シラン類、グリシジル基含有シラン類などが挙げられる。
【0060】
また、湿気硬化樹脂組成物に脱水剤を配合することにより、湿気硬化樹脂組成物の調製時、およびプリプレグ製造時の吸湿による硬化反応進行を防止できるほか、プリプレグの保存安定性を向上できるため好ましい。脱水剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどのシラン化合物、トルエンスルホニルイソシアネートなどのイソシアネート化合物、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケートなどのシリケート類、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチルなどのオルトギ酸エステル類、モレキュラーシーブなどが好ましく使用できる。脱水剤の配合量は、湿気硬化樹脂組成物中に0.05〜10重量%含むことが好ましく、0.1〜5重量%がさらに好ましい。
【0061】
また、上記の湿気硬化樹脂組成物には、必要に応じてシリカ、アルミナ、酸化チタン、ジルコニア、タルク、粘土鉱物、雲母、フェライトなどの無機粒子を配合することができる。これらの添加は、硬化物の弾性率を向上させたり、未硬化の樹脂組成物に揺変性を付与するなどの効果を有する。
【0062】
本発明のプリプレグは、上記した湿気硬化樹脂組成物を強化繊維に含浸することにより製造できる。プリプレグの製造は、熱硬化性樹脂組成物を用いたプリプレグの製造と同様の方法が適用できる。例えば、加熱して粘度を低下させた湿気硬化樹脂組成物を満たした樹脂槽へ強化繊維を通す方法、湿気硬化樹脂組成物を樹脂槽からキスロールやリバースロールによってロール上に塗布し、強化繊維と接触させて含浸する方法、湿気硬化樹脂組成物をリバースロールコータなどを用いて離型紙などの表面にフィルム状に塗布し、強化繊維の片側あるいは両側からはさみこんで加圧、あるいは加熱・加圧して含浸させる方法、湿気硬化樹脂組成物を溶媒に溶解して溶液とし、溶液中に強化繊維を通して含浸した後、乾燥して溶媒を除去する方法など、各種の方法により製造できる。
【0063】
プリプレグを硬化して得られる繊維強化複合材料の製品が優れた性能を発揮するため、また、プリプレグを用いてコンクリート構造物の補修・補強を行った場合、その効果を長期間にわたって維持するためには、湿気硬化樹脂組成物の硬化物が適切な弾性率、ガラス転移温度を有することが望ましい。
【0064】
弾性率については、湿気硬化樹脂組成物の硬化物の室温での曲げ弾性率が2.0GPa以上である。
【0065】
また、ガラス転移温度については、プリプレグの硬化物のガラス転移温度が30℃以上であることが好ましく、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。
【0066】
プリプレグに用いる強化繊維の種類には特に制限はなく、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などを単独または組み合わせて用いることができる。これらの中でも、炭素繊維は軽量でかつ高い強度の繊維強化複合材料を与えるため特に好ましい。
【0067】
強化繊維の形態は、繊維強化複合材料の製品の形状、補修・補強の対象となるコンクリート構造物の形状や、補修・補強の目的などに応じて、適当なものを選択すればよい。例えばストランド、複数のストランドを合わせロープ状としたもの、複数のストランドを一方向に配列しシート状としたもの、織物、不織布、編み物、組み紐などの各種の形態を用いることができる。
【0068】
本発明のプリプレグは、湿気が遮断された状態では良好な保存安定性を有するとともに、大気中の湿気により硬化し、力学的特性に優れた繊維強化複合材料を与える。また、硬化物の表面および内部には、気泡の発生が非常に少なく、表面平滑性および機械特性に優れた繊維強化複合材料が得られる。
【0069】
本発明のプリプレグは、コンクリートとの接着性に優れるとともに、硬化物に気泡の発生が非常に少ない特徴を有することから、コンクリート構造物の補修・補強に特に好ましく使用できる。特に、硬化したプリプレグの表面および内部に気泡が非常に少ないため、風雨等による水分が補修・補強箇所に侵入するのを防止でき、長期間にわたって補修・補強の効果が持続できるという長所を有する。コンクリート構造物の補修・補強は、本発明のプリプレグを対象箇所に貼りつけた後、プリプレグを硬化させることにより行うことができる。対象となるコンクリート構造物としては、例えば建物の柱、梁、床面、壁面、天井などの各種部材、高架支柱、橋梁、煙突、トンネル、道路床版などが挙げられる。
【0070】
コンクリート構造物の補修・補強に際しては、コンクリート表面の劣化層の除去、段差や欠損部の修正などの前処理を行い、プリプレグとコンクリートの接着性を高めるためのプライマー処理などを必要に応じて行った後、プリプレグを貼りつけて施工を行うとよい。
【0071】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中、部数はすべて重量部を表わす
(実施例1)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(“エピコート”828、油化シェルエポキシ(株)製)100部と、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573、信越化学工業(株)製)135部をフラスコにとり、窒素気流下で撹拌しながら150℃で5時間反応させた。反応物を室温まで冷却した後、反応物100部に対しジブチルスズジラウレート(ナカライテスク(株)製)を1部混合して湿気硬化樹脂組成物を得た。
【0072】
この湿気硬化樹脂組成物をシャーレにとり、25℃、湿度50%で10日間養生し、2mm厚の硬化樹脂板を得た。この硬化樹脂板から長さ60mm、幅10mmの試験片を切り出し、25℃での曲げ弾性率を測定したところ、2.5GPaであった。また、硬化樹脂板のガラス転移温度を示差走査熱量計(メトラー社製、TC10A型)を用い、昇温速度40℃/分で測定したところ、49℃であった。
【0073】
この湿気硬化樹脂組成物を、リバースロールコーターを用いて離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製し、炭素繊維平織織物“トレカクロス”6343B(織物目付190g/m2 、東レ(株)製)の両側からはさみこんで含浸させ、樹脂含有率65重量%のプリプレグを作製した。
【0074】
縦横20cmにカットしたプリプレグを5枚方向を揃えて積層し、気温25℃、湿度50%で10日間養生して硬化板を得た。
【0075】
硬化板を縦糸に沿って中央部で切断し、断面を研磨した後、反射型光学顕微鏡で倍率50倍で観察し、ボイド率を下式に従って求めた。
【0076】
ボイド率=断面に存在する気泡部分の面積の総和/硬化板の断面積
ボイド率は0.15%であった。
【0077】
(実施例2)
実施例1で作製したビスフェノールA型エポキシ樹脂と、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランとの反応物100部に対して、ジブチルスズジラウレート(ナカライテスク(株)製)1部、さらに脱水剤としてオルトギ酸エチル(ナカライテスク(株)製)1部を混合して湿気硬化樹脂組成物を得た。
この湿気硬化樹脂組成物をシャーレにとり、25℃、湿度50%で10日間養生して2mm厚の硬化樹脂板を得た。実施例1と同様に曲げ弾性率、およびガラス転移温度を測定した。25℃での曲げ弾性率は2.5GPa、硬化樹脂板のガラス転移温度は49℃で、実施例1と差はなかった。
【0078】
この湿気硬化樹脂組成物を、実施例1と同様に炭素繊維平織織物“トレカクロス”6343B(織物目付190g/m2 、東レ(株)製)に含浸し、樹脂含有率65重量%のプリプレグを作製した。
【0079】
縦横20cmにカットしたプリプレグを5枚方向を揃えて積層し、気温25℃、湿度50%で10日間養生して硬化板を得た。
【0080】
実施例1と同様にして、硬化板のボイド率を求めた。ボイド率は0.15%であり、実施例1と差はなかった。
【0081】
また、一定時間湿気に接触させた後、湿気を遮断して保管した場合のプリプレグの保存安定性を調べるため、このプリプレグを縦横10cmにカットし、気温25℃、湿度50%で10分間放置した後、密閉可能な容器に移し、容器中の空気をシリカゲルを通した乾燥窒素に置換して密閉した。この状態で25℃で50日間経過した後、プリプレグ表面の粘着性を調べたところ、初期状態と変わらなかった。一方、実施例1のプリプレグについても同様の評価を行ったところ、粘着性は実施例2のプリプレグより劣っていた。
【0082】
(実施例3)
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(“スミエポキシ”ELM434、住友化学工業(株)製)100部と、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM573、信越化学工業(株)製)213部をフラスコにとり、窒素気流下で撹拌しながら150℃で3時間反応させた。反応物を室温まで冷却した後、反応物100部に対して、ジブチルスズジラウレート(ナカライテスク(株)製)を1部混合して湿気硬化樹脂組成物を得た。
【0083】
この湿気硬化樹脂組成物をシャーレにとり、25℃、湿度50%で10日間養生して2mm厚の硬化樹脂板を得た。実施例1と同様に曲げ弾性率、およびガラス転移温度を測定した。25℃での曲げ弾性率は3.4GPaであった。また、硬化樹脂板のガラス転移温度は69℃であった。
【0084】
この湿気硬化樹脂組成物を、実施例1と同様に炭素繊維平織織物“トレカクロス”6343B(織物目付190g/m2 、東レ(株)製)に含浸し、樹脂含有率65重量%のプリプレグを作製した。
【0085】
縦横20cmにカットしたプリプレグを5枚方向を揃えて積層し、気温25℃、湿度50%で10日間養生して硬化板を得た。
【0086】
実施例1と同様にして、硬化板のボイド率を求めた。ボイド率は0.13%であった。
【0087】
(実施例4)
ビスフェノールAグリシジルエーテルアクリル酸付加物“エポキシエステル”3000A(共栄社化学(株)製)100部と、メチルジメトキシシラン(TSL8117、東芝シリコーン(株)製)43部、塩化白金酸水和物(アルドリッチ・ケミカル・カンパニー製)0.01部をフラスコにとり、窒素気流下で撹拌しながら90℃で2時間反応させた。反応物を室温まで冷却した後、反応物100部に対して、ジブチルスズジラウレート(ナカライテスク(株)製)を1部混合して湿気硬化樹脂組成物を得た。
【0088】
この湿気硬化樹脂組成物をシャーレにとり、25℃、湿度50%で10日間養生して2mm厚の硬化樹脂板を得た。実施例1と同様に曲げ弾性率、およびガラス転移温度を測定した。25℃での曲げ弾性率は2.2GPaであった。また、硬化樹脂板のガラス転移温度は44℃であった。
【0089】
この湿気硬化樹脂組成物を、実施例1と同様に炭素繊維平織織物“トレカクロス”6343B(織物目付190g/m2 、東レ(株)製)に含浸し、樹脂含有率65重量%のプリプレグを作製した。
【0090】
縦横20cmにカットしたプリプレグを5枚方向を揃えて積層し、気温25℃、湿度50%で10日間養生して硬化板を得た。
【0091】
実施例1と同様にして、硬化板のボイド率を求めた。ボイド率は0.12%であった。
【0092】
(実施例5)
ジアリルフタレート30部(ナカライテスク(株)製)、ビスフェノールAグリシジルエーテルアクリル酸付加物“エポキシエステル”3000A(共栄社化学(株)製)70部、メチルジメトキシシラン(TSL8117、東芝シリコーン(株)製)56部、塩化白金酸水和物0.01部(アルドリッチ・ケミカル・カンパニー製)をフラスコにとり、窒素気流下で撹拌しながら90℃で2時間反応させた。反応物を室温まで冷却した後、反応物100部に対して、ジブチルスズジラウレート(ナカライテスク(株)製)を1部混合して湿気硬化樹脂組成物を得た。
【0093】
この湿気硬化樹脂組成物をシャーレにとり、25℃、湿度50%で10日間養生して2mm厚の硬化樹脂板を得た。実施例1と同様に曲げ弾性率、およびガラス転移温度を測定した。25℃での曲げ弾性率は2.5GPaであった。また、硬化樹脂板のガラス転移温度は57℃であった。
【0094】
この湿気硬化樹脂組成物を、実施例1と同様に炭素繊維平織織物“トレカクロス”6343B(織物目付190g/m2 、東レ(株)製)に含浸し、樹脂含有率65重量%のプリプレグを作製した。
【0095】
縦横20cmにカットしたプリプレグを5枚方向を揃えて積層し、気温25℃、湿度50%で10日間養生して硬化板を得た。
【0096】
実施例1と同様にして、硬化板のボイド率を求めた。ボイド率は0.09%であった。
【0102】
比較)加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレン重合体“サイリル”SAT200(鐘淵化学工業(株)製)30部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂“エピコート”828(油化シェルエポキシ(株)製)70部、ジブチルスズジラウレート(ナカライテスク(株)製)1部、ケチミン硬化剤“エピキュア”H−3(油化シェルエポキシ(株)製)35部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE903、信越化学工業(株))0.5部を室温で混合し、湿気硬化樹脂組成物を得た。
【0103】
この湿気硬化樹脂組成物をシャーレにとり、25℃、湿度50%で10日間養生して2mm厚の硬化樹脂板を得た。実施例1と同様に曲げ弾性率、およびガラス転移温度を測定した。25℃での曲げ弾性率は1.1GPaであった。また、硬化樹脂板のガラス転移温度は31℃であった。
【0104】
この湿気硬化樹脂組成物を、実施例1と同様に炭素繊維平織織物“トレカクロス”6343B(織物目付190g/m2 、東レ(株)製)に含浸し、樹脂含有率65重量%のプリプレグを作製した。
【0105】
縦横20cmにカットしたプリプレグを5枚方向を揃えて積層し、気温25℃、湿度50%で10日間養生して硬化板を得た。
【0106】
実施例1と同様にして、硬化板のボイド率を求めた。ボイド率は0.13%であった。
【0107】
(実施例8)
ケトキシメート基を有するポリオルガノシロキサンを含有する一液型湿気硬化樹脂組成物SH780(東レ・ダウコーニングシリコーン(株)製)を、実施例1と同様に炭素繊維平織織物“トレカクロス”6343B(織物目付190g/m2 、東レ(株)製)に含浸し、樹脂含有率65重量%のプリプレグを作製した。
【0108】
また、別に湿気硬化樹脂組成物をシャーレにとり、25℃、湿度50%で10日間養生して2mm厚の硬化樹脂板を得た。実施例1と同様に曲げ弾性率、およびガラス転移温度を測定した。25℃での曲げ弾性率は2.4MPaであった。また、硬化樹脂板のガラス転移温度は−27℃であった。
【0109】
縦横20cmにカットしたプリプレグを5枚方向を揃えて積層し、気温25℃、湿度50%で10日間養生して硬化板を得た。
【0110】
実施例1と同様にして、硬化板のボイド率を求めた。ボイド率は0.14%であった。
【0111】
(比較例)ポリカーボネートジオール“ブラクセル”CD208HL(ダイセル化学工業(株)製)100部に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート“ミリオネート”MT(日本ポリウレタン工業(株)製)100部を加え、窒素気流下で攪拌しながら80℃で3時間反応させ、ポリウレタンプレポリマーを得た。室温まで冷却した後、ジブチルスズジラウレート(ナカライテスク(株)製)0.3部を混合して湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を、実施例1と同様に炭素繊維平織織物“トレカクロス”6343B(織物目付190g/m2、東レ(株)製)に含浸し、樹脂含有率65重量%のプリプレグを作製した。
【0112】
縦横20cmにカットしたプリプレグを5枚方向を揃えて積層し、気温25℃、湿度50%で10日間養生して硬化板を得た。
【0113】
実施例1と同様にして、硬化板のボイド率を求めた。ボイド率は6.40%であり、実施例1〜と比較して気泡が非常に多かった。
【0114】
【発明の効果】
本発明の湿気硬化型プリプレグは、硬化性が良く、しかも硬化物内部および表面に気泡の発生が非常に少なく、機械特性に優れた繊維強化複合材料を与える。また、このプリプレグを用いることによりコンクリート構造物の補修・補強を効率よく行えるうえ、硬化物の内部および表面に気泡の発生が非常に少なく風雨などによる水分侵入が防止できるため、長期間にわたって補修・補強効果が持続できる。

Claims (11)

  1. 湿気硬化樹脂組成物が強化繊維に含浸されてなるプリプレグであって、該樹脂組成物が1分子中に加水分解シリル基を1個以上有する化合物を含んでなり、硬化するに際して実質的に気体を発生せず、かつ該湿気硬化樹脂組成物の硬化物の室温における曲げ弾性率が2.0GPa以上であるプリプレグ。
  2. 加水分解性シリル基が、下記一般式で示される、請求項記載のプリプレグ。
    Figure 0003709616
    (式中、Xは加水分解性基、aは0〜2の整数、R1はアルキル基を表す。)
  3. 加水分解性基Xがアルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノオキシ基、アルケニルオキシ基から選ばれる、請求項1または2に記載のプリプレグ。
  4. 1分子中に加水分解性シリル基を1個以上有する化合物が、次の(a)〜()から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項のいずれかに記載のプリプレグ。
    (a)エポキシ樹脂と、エポキシ基と反応しうる官能基を有するシラン化合物との反応物
    (b)不飽和結合を有し、かつ環状構造を骨格に有する化合物と、ヒドロシラン化合物との反応物
    (c)芳香族環を有し、1分子中に2個以上の1級あるいは2級アミン基を有する芳香族ポリアミンと、アミノ基と反応しうる官能基を有するシラン化合物との反応物
    (d)フェノール化合物と、水酸基と反応しうる官能基を有するシラン化合物との反応
  5. 湿気硬化樹脂組成物が、加水分解性シリル基を有する化合物の硬化触媒を含有する、請求項のいずれかに記載のプリプレグ。
  6. 湿気硬化樹脂組成物が強化繊維に含浸されてなるプリプレグであって、該湿気硬化樹脂組成物が、加水分解性シリル基を有するポリオルガノシロキサン、エポキシ樹脂、および湿気活性型のエポキシ樹脂硬化剤を含んでなり、硬化するに際して実質的に気体を発生せず、かつ該湿気硬化樹脂組成物の硬化物の室温における曲げ弾性率が2.0GPa以上であるプリプレグ。
  7. 湿気硬化樹脂組成物が、脱水剤を含む、請求項1〜のいずれかに記載のプリプレグ
  8. 硬化後のガラス転移温度が、30℃以上である、請求項1〜のいずれかに記載のプリプレグ。
  9. 強化繊維が炭素繊維である、請求項1〜のいずれかに記載のプリプレグ。
  10. 請求項1〜のいずれかに記載のプリプレグを硬化してなる繊維強化複合材料。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載のプリプレグをコンクリート構造物に貼付した後、該プリプレグを硬化せしめるコンクリート構造物の補修・補強方法。
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