JP3709540B2 - 皮巻きステアリングホイールとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の操舵用の皮巻きステアリングホイールとその製造方法に関し、特に、リング部の被覆層を覆う皮革が、リング部の平面周方向に沿った端末を、被覆層におけるリング部の断面周方向に設けられた環状溝に嵌め込んで、構成された皮巻きステアリングホイールとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来、皮巻きステアリングホイールでは、リング部の被覆層を覆う皮革が、リング部の平面周方向に沿った端末を、被覆層におけるリング部の断面周方向に設けられた環状溝に嵌め込んで、構成されるものがあった(特開平10ー226338号公報参照)。
【0003】
このような皮巻きステアリングホイールでは、環状溝の周囲を硬質合成樹脂等の硬質材で形成すれば、皮革におけるリング部平面周方向に沿った端末を、環状溝に嵌め込んでも、アールダレが生じず、皮革の外観を良好にすることができた。
【0004】
しかし、皮革の端末を環状溝に嵌め込む際、皮革の端末部分の長さを的確に環状溝に配置させ難く、長く余れば、その周囲にしわが発生し、また、短ければ、端末が環状溝から抜けてしまう。
【0005】
さらに、皮革の端末を環状溝から抜けないように、接着剤を使用すれば、環状溝の周囲を接着剤で汚してしまう場合も生ずる。
【0006】
さらにまた、皮革の端末を環状溝に嵌め込む際には、ヘラを使用することとなるが、ヘラで皮革端末に傷を付ける虞れも生じてしまう。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、皮革端末を環状溝に嵌め込むこととなっても、皮革端末や環状溝の周囲を奇麗にした状態で、容易に嵌め込むことができて、皮巻き作業を奇麗かつ簡単に行なえる皮巻きステアリングホイールとその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る皮巻きステアリングホイールは、リング部の被覆層に、皮革が被覆され、該皮革における前記リング部の平面周方向に沿った端末が、前記被覆層における前記リング部の断面周方向に設けられた環状溝に嵌め込まれて構成される皮巻きステアリングホイールであって、
前記皮革の端末に、前記リング部平面周方向に沿う移動を規制されて、前記環状溝に沿って移動可能に挿通された結び紐が、配設され、
前記皮革端末が、前記結び紐を含めて前記環状溝に配置されるとともに、前記結び紐の両端相互を引っ張って結ぶことにより、前記環状溝内に嵌め込まれていることを特徴とする。
【0009】
前記結び紐は、前記皮革端末に対して、前記環状溝に沿う方向に縫い付けても良い。
【0010】
また、前記皮革に、前記リング部の被覆層から延設されるスポーク部の被覆層にかけての表裏を覆い、周縁相互を縫合して前記スポーク部被覆層の表裏に配置される上・下延設部が設けられる場合には、
該上・下延設部は、前記環状溝の部位で結んだ後の前記結び紐を使用し、周縁相互を縫合して、前記スポーク部被覆層を覆うようにすることが望ましい。
【0011】
本発明に係る皮巻きステアリングホイールの製造方法は、皮革が、リング部の内周側で周縁相互を縫合して前記リング部の被覆層を覆う本体部と、該本体部から延設され、周縁相互を縫合して前記リング部被覆層から延設されるスポーク部の被覆層にかけての表裏を覆う上・下延設部と、を備え、
前記皮革本体部における前記リング部の平面周方向に沿った端末が、前記リング部被覆層における前記リング部の断面周方向に設けられた環状溝に嵌め込まれる構成の皮巻きステアリングホイールの製造方法であって、
前記皮革の配設時、
結び紐を、前記リング部平面周方向に沿う移動を規制して、前記環状溝に沿って移動可能に、前記皮革本体部の端末に、挿通させ、
前記皮革本体部の端末を、前記結び紐を含めて前記環状溝に配置させるとともに、前記結び紐の両端相互を引っ張って結ぶことにより、前記環状溝内に嵌め込み、
さらに、前記環状溝の部位で結んだ後の前記結び紐を使用し、前記上・下延設部の周縁相互を縫合して製造することを特徴とする。
【0012】
そして、前記環状溝の部位で結んだ後の前記結び紐を使用し、前記上・下延設部の周縁相互を縫合する際には、
前記結び紐の一方の端部側を、前記上・下延設部の周縁相互の縫合の千鳥縫いに使用し、他方の端部側を該縫合部位の背面側に挿通させ、縫合終了部位で、前記結び紐の一方と他方との端部相互を結んで、製造することが望ましい。
【0013】
【発明の効果】
本発明に係る皮巻きステアリングホイールでは、結び紐を挿通させておいた皮革端末を、結び紐を含めて環状溝に配置させ、ついで、結び紐を引っ張って結ぶことにより、皮革端末が環状溝に嵌め込まれている。
【0014】
すなわち、皮革端末は、環状溝内で結び紐を引っ張って結ぶだけで、環状溝内に嵌め込むことができるため、極めて簡単に、皮革端末を環状溝に嵌め込むことができる。
【0015】
なお、結び紐は、リング部平面周方向に沿う移動を規制され、かつ、環状溝に沿って移動可能に、皮革端末に挿通されているため、引っ張って結ぶことにより、リング部平面周方向に沿う方向へ皮革端末から外れることなく、皮革端末を、環状溝に沿って縮めて、環状溝に嵌め込むことができることとなる。
【0016】
また、皮革端末は、結び紐を結ぶことにより、結び紐を挿通させた部位を、確実に環状溝の底面に配置させることができるため、的確に位置決めされて、環状溝に嵌め込まれることとなる。
【0017】
そして、接着剤やヘラを使用することなく、単に、結び紐を結ぶだけで皮革端末を環状溝に嵌め込むことができるため、皮革端末や環状溝の周囲を汚したり傷付けることもない。
【0018】
したがって、本発明に係る皮巻きステアリングホイールでは、環状溝付近の皮巻き作業を奇麗かつ簡単に行なうことができる。
【0019】
そして、結び紐を、皮革端末に対して、環状溝に沿う方向に縫い付けるように構成すれば、リング部平面周方向に沿う結び紐の移動を規制し、かつ、環状溝に沿って結び紐を移動可能とするように、皮革端末にループ部を設け、そのループ部内に結び紐を挿通させるように構成する場合に比べて、ループ部の加工工数や加工コストを削減できる。
【0020】
また、皮革に、リング部の被覆層から延設されるスポーク部の被覆層にかけての表裏を覆い、周縁相互を縫合してスポーク部被覆層の表裏に配置される上・下延設部を、設けている場合には、環状溝の部位で結んだ後の結び紐を使用し、上・下延設部の周縁相互を縫合して、スポーク部被覆層を覆うようにすれば、結び紐の端末を、切断することなく、有効利用することができる。
【0021】
そして、本発明に係る皮巻きステアリングホイールの製造方法では、接着剤やヘラを使用することなく、環状溝内で結び紐を引っ張って結ぶだけで、皮革本体部の端末を的確に位置決めして環状溝内に嵌め込むことができることから、皮革端末や環状溝の周囲を汚したり傷付けることなく、極めて簡単に、皮革本体部の端末を奇麗に環状溝に嵌め込むことができる。また、環状溝の部位で結んだ後の結び紐を使用し、皮革における上・下延設部の周縁相互を縫合して、皮巻きステアリングホイールを製造することから、結び紐を有効利用することができる。
【0022】
さらに、皮革本体部の端末を的確に位置決めして環状溝に嵌め込んだ後、上・下延設部を縫合することから、上・下延設部も的確に位置決めされて配置され、皮巻き部位の外観を良好にすることができる。
【0023】
そして、環状溝の部位で結んだ後の結び紐の一方の端部側を、上・下延設部の周縁相互の縫合の千鳥縫いに使用し、他方の端部側を縫合部位の背面側に挿通させ、縫合終了部位で、結び紐の一方と他方との端部相互を結んで、製造する場合には、つぎの作用・効果を得ることができる。
【0024】
すなわち、結び紐の他方の端部側が、縫合部位の背面側を挿通して、上・下延設部の周縁相互を結んだ結び紐の一方の端部側と、結ばれることから、紐の抜けが防止され、皮革の剥れや移動を抑えることができる。
【0025】
ちなみに、従来の千鳥縫いでは、千鳥縫いした紐の端部は、その端部が皮革から抜けないように、大きな結び目を設けて結んだだけであり、その結び目が皮革から抜ける虞れが生じていた。しかし、上記製造方法では、皮革の表裏をくるむようにして、結ぶことから、皮革からの紐の抜けが防止される。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
実施形態の皮巻きステアリングホイールWは、図1〜4に示すように、操舵時に把持する円環状のリング部Rと、リング部Rの中央に配置されるボス部Bと、リング部Rとボス部Bとを連結する4本のスポーク部Sと、を備えて構成され、各部には、相互を連結するためのステアリングホイール芯金1が配設されている。すなわち、ステアリングホイール芯金1は、図1・4に示すように、ボス部Bに配置されるボス部芯金2、各スポーク部Sに配置されるスポーク部芯金3、リング部Rに配置されるリング部芯金4、から構成されている。
【0028】
このステアリングホイール芯金1は、ステアリングシャフトと接続されるボス部芯金2の中央のボス2aが鋼製として、他の、ボス部芯金2におけるボス2aの周囲のボス被覆部2b、スポーク部芯金3、及び、リング部芯金4が、マグネシウム合金・アルミニウム合金等の軽合金を利用したダイカスト鋳造により形成されている。
【0029】
なお、リング部芯金4の断面形状は、図2・3に示すように、ステアリングホイールWの裏面側(下方側)を開口させるように、逆U字形状としている。
【0030】
ステアリングホイールWにおけるリング部Rとリング部R近傍のスポーク部Sとの芯金4・3の周囲には、図1〜4に示すように、被覆層5が被覆されている。リング部芯金4の周囲の被覆層5は、リング部Rの平面周方向に沿うように、硬質合成樹脂からなる硬質被覆層6と、硬質被覆層6より軟質の軟質合成樹脂からなる軟質被覆層12と、が交互に2つずつ配置されて構成されている。
【0031】
軟質被覆層12は、スポーク部芯金3の周囲を被覆するスポーク部被覆層13(13F・13B)を備えて構成されて、ステアリングホイールWの左右に配置されている。そして、左右の軟質被覆層12L・12Rの外周面には、スポーク部被覆層13を含めて、それぞれ、ポリアミドやポリエステル等の糸からなる結び紐26・27を使用して、皮革15が巻き付けられている。
【0032】
なお、実施形態の場合、左右の軟質被覆層12L・12Rは、発泡ウレタン製として、前後の硬質被覆層6F・6Bは、ポリプロピレン製としている。これらの硬質被覆層6F・6Bの本体7の表面には、それぞれ、水圧転写により印刷される木目模様の薄い装飾層10が配設されている。
【0033】
また、実施形態では、製造工程の都合により、装飾層10が、硬質被覆層6F・6Bの後述する支持部9やリング部芯金4の周囲にまで、延設されている。
【0034】
さらに、各硬質被覆層6F・6Bの本体7におけるリング部Rの平面周方向の各先端には、図1・2・4に示すように、リング部Rの断面周方向に円環状に設けられた環状溝としての木目込み溝8を配設させて、皮革15の後述する本体部16における端部16aを支持する支持部9が形成されている。各支持部9は、略円柱状として、皮革本体部16の端部16aを支持する支持面部9aと、先端側の先細り状のテーパ部9bと、を備えて構成されている。各木目込み溝8には、それぞれ、皮革本体部16の各端末17・18が嵌め込まれている。
【0035】
左右の皮革15L・15Rは、それぞれ、図5のAに示すように、長方形形状の本体部16と、本体部16の両側から対称的に突出する4つの延設部21・22・23・24と、を備えて構成されている。これらの延設部は、前方側のスポーク部被覆層13Fの表裏(上下)を覆う上延設部21・下延設部22と、後方側のスポーク部被覆層13Bの表裏(上下)を覆う上延設部23・下延設部24と、から構成されている。皮革15L・15Rの本体部16は、それぞれ、リング部Rの軟質被覆層12L・12Rを覆うとともに、両端部16a・16aで、硬質被覆層6F・6Bの支持部9・9を覆うように、構成されている。
【0036】
そして、各皮革15L・15Rは、本体部16の両端の端末17・18に、図6のC・図2に示すように、結び紐26を挿通させたループ部19が形成されており、結び紐26を結んで、端末17・18が、硬質被覆層6F・6Bの木目込み溝8・8に嵌め込まれている。また、上・下延設部21・22は、前方側のスポーク部被覆層13Fの表裏を覆うように、端末17側の周縁21a・22a相互が、端末17側に配置された結び紐26を使用して、縫合されている(図10のA・B参照)。さらに、上・下延設部23・24は、後方側のスポーク部被覆層13Bの表裏を覆うように、端末18側の周縁23a・24a相互が、端末18側に配置される結び紐26を使用して、縫合されている。さらに、本体部16の周縁における延設部21・22・23・24間の部位16b・16c相互は、図3に示すように、リング部Rの内周側の部位で、結び紐27によって縫合されている。この結び紐27は、端末17側から離れた上・下延設部21・22の周縁21b・22b相互や、端末18側から離れた上・下延設部23・24の周縁23b・24b相互も、縫合している。
【0037】
この皮革15の製造について述べると、まず、図5のAに示すように、本体部16・延設部21・22・23・24を備える所定形状に裁断した皮革素材14を準備し、ついで、図5のBに示すように、本体部16や延設部21・22・23・24の端末17・18・21c・22c・23c・24cを、皮巻き時のなじみを良好にするため、先端側にかけて薄くなるように、漉く。さらに、図5のCに示すように、ループ部19・19を形成し易いように、端末17・18に、ウレタン(一液タイプ)等の接着剤30を塗布しておく。さらにまた、図6のAに示すように、木目込み溝8への端末17・18の嵌め込みが容易となるように、延設部21・22・23・24に、仮止め用の粘着テープ31を貼着しておく。
【0038】
そして、図6のBに示すように、端末17・18に結び紐26を配置させる。この時、紐26のずれ(端末17・18からの外れ)を防止するため、図例のように、縁側の2箇所程度、端末17・18を幅方向で縫うようにして、結び紐26を配置させておく。
【0039】
ついで、接着剤30を活性化させるために、端末17・18付近を加熱した後、図6のCに示すように、端末17・18を折り返して接着させ、端末17・18に結び紐26を挿通させたループ部19を形成すれば、リング部Rへの皮巻き前の皮革15(L・R)を準備することができる。
【0040】
なお、実施形態の場合、ループ部19によって、結び紐26が、皮革15の端末17・18において、リング部Rの平面周方向に沿う移動を規制されて、木目込み溝8に沿って移動可能に挿通されることとなる。ちなみに、結び紐26は、接着剤30が付着しても、細いことから、剥れ易く、木目込み溝8に沿って容易に移動可能となる。
【0041】
つぎに、実施形態の皮巻きステアリングホイールWの製造方法について説明すると、予め、ステアリングホイール芯金1を製造しておく。このステアリングホイール芯金1の製造は、所定のダイカスト鋳造型に、ボス2aをセットして、ダイカスト鋳造して製造する。
【0042】
そして、硬質被覆層6F・6Bの成形型にステアリングホイール芯金1をセットし、木目込み溝8と支持部9とを備えた硬質被覆層6F・6Bを一括して成形する。
【0043】
その後、型開きさせて離型させ、ついで、バリ取り作業を行ない、さらに、ステアリングホイール芯金1のボス部芯金2をマスキングして、各硬質被覆層6F・6Bの木目込み溝8・8間の本体7部位を含めて、ボス部芯金2以外の部位に、水圧転写によって、装飾層10を形成する。
【0044】
ついで、マスク材を外して、軟質被覆層12L・12Rの成形型に、硬質被覆層6F・6Bを設けたステアリングホイール芯金1をセットし、型締め後、軟質部本体12L・12Rの成形材料を注入し、軟質被覆層12L・12Rを成形する。なお、軟質被覆層12L・12Rの成形型の型面では、型締め時、硬質被覆層6の支持部9における支持面部9aの外周面を圧接する状態にする。
【0045】
その後、軟質被覆層12L・12Rの成形型から離型させて、バリ取り作業を行ない、ついで、各軟質被覆層12L・12Rの周囲に皮革15(L・R)を縫合して配置させる。
【0046】
この皮革15の皮巻き時には、まず、結び紐26を挿通させておいた皮革端末17・18を、結び紐26を含めて木目込み溝8付近に配置させ、図7のAに示すように、粘着テープ31を利用して、上・下延設部21・23・22・24をスポーツ部被覆層13に仮止めしておく。そして、図7のBに示すように、結び紐26を引っ張って結ぶ。
【0047】
この時、図9のAに示すように、結び紐26の一方の端部側26aを、1周分、木目込み溝8の周囲に巻き付け、ついで、図9のBに示すように、両端部側26a・26bを締めるように強く引っ張り、図9のCに示すように、コマ結び等の結び方で、両端部側26a・26b相互を結ぶ。結び目26cは、その後の延設部21・22・23・24の縫合作業が容易なように、リング部Rの内周側に配置させる。
【0048】
そしてこの時、結び紐26が、リング部Rの平面周方向に沿う移動を規制され、かつ、木目込み溝8に沿って移動可能に、皮革端末17・18に挿通されているため、引っ張って結ぶことにより、リング部Rの平面周方向に沿う方向へ皮革端末17・18から外れることなく、皮革端末17・18を、木目込み溝8に沿って縮めて、木目込み溝8に嵌め込むことができることとなる。また、皮革端末17・18は、結び紐26を結ぶことにより、結び紐26を挿通させた部位を、確実に木目込み溝8の底面8a側に配置させることができるため、的確に位置決めされて、木目込み溝8に嵌め込まれることとなる。
【0049】
皮革端末17・18を木目込み溝8に嵌め込んだ後には、図8のAに示すように、スポーク部被覆層13の表裏に接着剤32を塗布し、上・下延設部21・22・23・24をスポーク部被覆層13に押し付けるとともに、結び紐26を使用して、図8のBに示すように、本体部端部16aの両縁相互を縫合し、上・下延設部21・22の端末17側の周縁21a・22a相互を縫合する。
【0050】
この時、図8のBや図10のA・Bに示すように、結び紐26の一方の端部側26aを使用して、千鳥縫いするとともに、他方の端部側26bを縫合部位25の背面側に挿通させ、縫合終了部位で、図10のCに示すように、結び紐26の一方と他方との端部側26a・26b相互を、皮革15の裏面側でコマ結び等の結び方で結ぶ。
【0051】
なお、図10のAには図示していないが、皮革端末18側においても、結び紐26を使用して、本体部16aの両縁相互を縫合するととも、上・下延設部23・24の周縁23a・24a相互を、同様に、縫合する。
【0052】
そしてさらに、結び紐27を使用して、上・下延設部21・22の周縁21b・22b相互、本体部16の周縁16b・16c相互、上・下延設部23・24の周縁23b・24b相互、を縫合する。
【0053】
なお、これらの紐26・27による縫合前には、木目込み溝8から硬質被覆層6F・6Bの本体7側へはみ出ないように、リング部Rの軟質被覆層12L・12R・支持部9の表面に、接着剤を塗布しておいて、皮革15を縫合しても良い。
【0054】
その後、図8のCに示すように、スポーク部被覆層13の端面に接着剤33を塗布し、上・下延設部21・22・23・24の端末21c・22c・23c・24cをスポーク部被覆層13の端面に接着させれば、皮革15L・15Rの皮巻き作業を完了させることができる。
【0055】
そして、ボス部Bの下部や上部に、図示しないロアカバーやパッドPを取り付ければ、皮巻きステアリングホイールWの製造が完了し、車両に装着して使用することができる。なお、車両への装着時には、ステアリングホイールWをステアリングシャフトにナット止めすることから、パッドPを取り外した状態で車両に装着し、装着後にパッドPを組み付けることとなる。
【0056】
このような実施形態の皮巻きステアリングホイールWでは、皮革端末17・18が、木目込み溝8内で結び紐26を引っ張って結ぶだけで、木目込み溝8内に嵌め込むことができるため、極めて簡単に、皮革端末17・18を木目込み溝8に嵌め込むことができる。
【0057】
また、皮革端末17・18は、結び紐26を結ぶことにより、結び紐26を挿通させた部位を、確実に木目込み溝8の底面8a側に配置させることができるため、的確に位置決めされて、木目込み溝8に嵌め込まれることとなる。
【0058】
そして、接着剤やヘラを使用することなく、単に、結び紐26を結ぶだけで皮革端末17・18を木目込み溝8に嵌め込むことができるため、皮革端末17・18や木目込み溝8の周囲を汚したり傷付けることもない。
【0059】
したがって、実施形態の皮巻きステアリングホイールWでは、木目込み溝8付近の皮巻き作業を奇麗かつ簡単に行なうことができる。
【0060】
なお、実施形態では、皮革端末17・18に、結び紐26を挿通させるループ部19を設けて、リング部Rの平面周方向に沿う結び紐26の移動を規制し、かつ、木目込み溝8に沿って結び紐26を移動可能とするように、構成した。しかし、図11に示すように、皮革端末17・18に対して、結び紐26を環状溝としての木目込み溝8に沿う方向に縫い付けるだけの構成にしても良い。
【0061】
この場合でも、図12・13に示すように、実施形態と同様に、結び紐26を挿通させておいた皮革端末17・18を、結び紐26を含めて木目込み溝8付近に配置させ、結び紐26の一方の端部側26aを、1周分、木目込み溝8の周囲に巻き付け、ついで、両端部側26a・26bを締めるように強く引っ張り、さらに、図9のCに示すように、コマ結び等の結び方で、両端部側26a・26b相互を結べば、良い。
【0062】
そして、このように、結び紐26を、皮革端末17・18に対して、木目込み溝8に沿う方向に縫い付けるように構成すれば、実施形態のように、皮革端末17・18にループ部19を設け、そのループ部19内に結び紐26を挿通させるように構成する場合に比べて、ループ部19の加工工数や加工コストを削減できる。
【0063】
ちなみに、上述のように、ループ部19を設けることなく、結び紐26を皮革端末17・18に縫い付けて、木目込み溝等の環状溝8に皮革端末17・18を嵌め込む場合には、図12に示すように、環状溝8の部位で、皮革端末17・18における結び紐26の縫い目が露出しないように、環状溝8の深さは、5mm程度以上とするように、深くすることがことが望ましい。
【0064】
また、実施形態では、皮革15に、リング部Rの被覆層12から延設されるスポーク部被覆層13にかけての表裏を覆い、周縁21a・22a・23a・24a・21b・22b・23b・24b相互を縫合してスポーク部被覆層13の表裏に配置される上・下延設部21・22・23・24が、配設されていても、木目込み溝8の部位で結んだ後の結び紐26を使用し、上・下延設部21・22・23・24の周縁21a・22a・23a・24a相互を縫合して、スポーク部被覆層13を覆うように構成している。そのため、結び紐26の端末を、切断することなく、有効利用することができる。
【0065】
さらに、実施形態では、皮革本体部16の端末17・18を的確に位置決めして木目込み溝8に嵌め込んだ後、上・下延設部21・22・23・24を縫合することから、上・下延設部21・22・23・24も的確に位置決めされて配置され、皮巻き部位の外観を良好にすることができる。
【0066】
また、実施形態では、木目込み溝8の部位で結んだ後の結び紐26の一方の端部側26aを、上・下延設部21・22・23・24の周縁相互の縫合の千鳥縫いに使用し、他方の端部側26bを縫合部位25の背面側に挿通させ、縫合終了部位で、結び紐26の一方と他方との端部側26a・26b相互を結んでいることから、紐26が皮革15をくるんで、紐26の抜けが防止され、皮革15の剥れや移動を抑えることができる。
【0067】
なお、実施形態では、本体部16の端部16aの縁相互、上・下延設部21・22の周縁21a・22a相互や周縁21b・22b相互、本体部16の周縁16b・16c相互、及び、上・下延設部23・24の周縁23a・24a相互や周縁23b・24b相互を、結び紐26・27を使用して、千鳥縫いした場合を示したが、図14に示すように、結び紐26の両端部側26a・26bを共に縫い付けるような2本縫いで、周縁相互を縫合しても良い。
【0068】
また、実施形態では、2箇所に皮革15L・15Rを設けた場合を示したが、大きな皮革を1箇所に設けたり、あるいは、3箇所以上に皮革を巻き付けても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の皮巻きステアリングホイールの平面図である。
【図2】図1のIIーII部位の断面図である。
【図3】図1の IIIー III部位の断面図である。
【図4】同実施形態の皮巻き前の状態のステアリングホイールを示す平面図である。
【図5】同実施形態で使用する皮革を製造する工程を順次示す概略図である。
【図6】同実施形態で使用する皮革を製造する工程を順次示す概略図であり、図5に示す工程の後の工程を示す。
【図7】同実施形態で皮革を巻き付ける工程を順次示す概略図である。
【図8】同実施形態で皮革を巻き付ける工程を順次示す概略図であり、図7に示す工程の後の工程を示す。
【図9】同実施形態で皮革端末を環状溝に嵌め込む際における結び紐の結ぶ工程を順次示す概略図である。
【図10】同実施形態で皮革の上・下延設部の縫合工程を示す概略図である。
【図11】他の実施形態における皮革端末に結び紐を挿通させる状態を示す概略図である。
【図12】同実施形態の皮革端末を嵌め込んだ状態のリング部平面周方向に沿った断面図である。
【図13】図12のXIII−XIII部位の部分省略断面図である。
【図14】さらに他の実施形態の縫合を示す図である。
【符号の説明】
5…被覆層、
8…(環状溝)木目込み溝、
8a…底面、
13…スポーク部被覆層、
15(15L・15R)…皮革、
16…本体部、
17・18…端末、
19…ループ部、
21・23…上延設部、
22・23…下延設部、
25…縫合部位、
26…結び紐、
W…皮巻きステアリングホイール、
R…リング部。
Claims (5)
- リング部の被覆層に、皮革が被覆され、該皮革における前記リング部の平面周方向に沿った端末が、前記被覆層における前記リング部の断面周方向に設けられた環状溝に嵌め込まれて構成される皮巻きステアリングホイールであって、
前記皮革の端末に、前記リング部平面周方向に沿う移動を規制されて、前記環状溝に沿って移動可能に挿通された結び紐が、配設され、
前記皮革端末が、前記結び紐を含めて前記環状溝に配置されるとともに、前記結び紐の両端相互を引っ張って結ぶことにより、前記環状溝内に嵌め込まれていることを特徴とする皮巻きステアリングホイール。 - 前記結び紐が、前記皮革端末に対して、前記環状溝に沿う方向に縫い付けられていることを特徴とする請求項1に記載の皮巻きステアリングホイール。
- 前記皮革が、前記リング部の被覆層から延設されるスポーク部の被覆層にかけての表裏を覆い、周縁相互を縫合して前記スポーク部被覆層の表裏に配置される上・下延設部を備え、
該上・下延設部が、前記環状溝の部位で結んだ後の前記結び紐を使用し、周縁相互を縫合して、前記スポーク部被覆層を覆っていることを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の皮巻きステアリングホイール。 - 皮革が、リング部の内周側で周縁相互を縫合して前記リング部の被覆層を覆う本体部と、該本体部から延設され、周縁相互を縫合して前記リング部被覆層から延設されるスポーク部の被覆層にかけての表裏を覆う上・下延設部と、を備え、
前記皮革本体部における前記リング部の平面周方向に沿った端末が、前記リング部被覆層における前記リング部の断面周方向に設けられた環状溝に嵌め込まれる構成の皮巻きステアリングホイールの製造方法であって、
前記皮革の配設時、
結び紐を、前記リング部平面周方向に沿う移動を規制して、前記環状溝に沿って移動可能に、前記皮革本体部の端末に、挿通させ、
前記皮革本体部の端末を、前記結び紐を含めて前記環状溝に配置させるとともに、前記結び紐の両端相互を引っ張って結ぶことにより、前記環状溝内に嵌め込み、
さらに、前記環状溝の部位で結んだ後の前記結び紐を使用し、前記上・下延設部の周縁相互を縫合して製造することを特徴とする皮巻きステアリングホイールの製造方法。 - 前記環状溝の部位で結んだ後の前記結び紐を使用し、前記上・下延設部の周縁相互を縫合する際、
前記結び紐の一方の端部側を、前記上・下延設部の周縁相互の縫合の千鳥縫いに使用し、他方の端部側を該縫合部位の背面側に挿通させ、縫合終了部位で、前記結び紐の一方と他方との端部相互を結ぶことを特徴とする請求項4に記載の皮巻きステアリングホイールの製造方法。
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