JP3708993B2 - 動力伝達ベルト用アラミド繊維コード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力伝達ベルト補強用コードとして適用されるアラミド繊維コードに関するものである。特に、本発明は、タイミングベルト、ローエッジVベルトなど、ベルトの側面からベルト補強用アラミド繊維コードが露出した形態を有するベルトにおいて、筒状で成形され、加硫されたアラミド繊維コード補強ゴム複合体から輪切り状にカットしてベルトを成形する際、繊維軸方向にカットされたベルト端面に露出したアラミド繊維コードからアラミド繊維単糸がホツレず、マトリックスゴムとの接着性が良好で、且つ、耐疲労性が優れたアラミド繊維コードに関する。
【0002】
【従来の技術】
アラミド繊維コードは一般に優れた強力、弾性率、寸法安定性、耐熱性等の特性を有するために、苛酷な条件下で使用されるタイヤ、ベルト、ホース等のゴム複合体の優れた補強用繊維として有用である。特に、比強度、比弾性率が高いために、スチールやワイヤ代替の軽量化補強繊維として、アラミド繊維コードはますます需要拡大が期待されている。
【0003】
一般に、タイヤ、ベルト及びホースなどの複合体用補強繊維は撚糸コード状で接着処理され使用される。この接着処理コードは水系接着剤、溶剤系接着剤のいずれであってもコード中への含浸が不十分であるのが通常である。特に、水系処理剤の含浸性が不良である。接着処理アラミド繊維コードをタイミングベルトやローエッジVベルト用補強繊維として用いる場合、予め筒状に成形され、加硫される。引続き、筒状に成形されたアラミド繊維コード補強ゴム複合体からカッターで輪状にカットすることによりベルトが作られるが、その際に、カット面に露出したアラミド繊維コードから接着剤の含浸が不充分な各単糸がホツレ、ベルトの側面から突出することがあり、その場合、ベルトとしての品質が著しく低下する。そのまま、ベルトとしてプーリーにかけて運転すると、この単糸ホツレ部分がプーリーにこすられ、ホツレた単糸が飛び散ったり、あるいは、このホツレが原因となって、ベルトの耐久性が低下する。
【0004】
これらの欠点は、ベルトを生産する行程において、前記のホツレた各単糸を機械的に取り除いたり、切断する作業によって防止されているが、このような作業が加わることによって、ベルトの生産性は著しく低下し、アラミド繊維コードをこの分野に適応していくための大きな障害となっていた。一方、このようなアラミド繊維コードの欠点を改良するために、予めアラミド繊維をゴムラテックスなどの処理剤で処理し、カット時の単糸のホツレを防ぐことが試みられたが(特開平1−207480号公報、特開平4−29644号公報)、ゴムラテックス処理によりアラミド繊維の撚糸性が不良となったり、本来有する強力を低下させたり、接着性や耐久性を損なうなど、別の欠点を生じることもあり満足な動力伝達ベルト用アラミド繊維コードが得られなかった。本発明者らも、アラミド繊維を予めポリエポキシド化合物で処理し、次いでRFLを含む処理剤で処理後、加撚し、さらにRFL系処理で処理する方法(特開平6−25977号公報、特開平6−25978号公報、特開平6−207380号公報)を先に提案している。しかしながら、これらの方法では、ホツレ性及び接着性は著しく改良されるものの、単糸同志が接着剤で固定されているために加撚時に単糸が十分にマイグレーションしないためと推定され、撚糸強力がやや低めになったり、耐疲労性の低下が見られ、改良の余地が残されていることが判明した。
【0005】
この様に、アラミド繊維コードにRFLを含む処理剤を含浸させ、ホツレ性、強力、耐疲労性をバランスさせたアラミド繊維コードは、未だ提案されていないのが実情である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的は、従来の技術における課題を解消した動力伝達ベルト用アラミド繊維コード、すなわち、ベルト成形時にベルト端面に露出したアラミド繊維の単糸のホツレを防止し、且つ、マトリックスゴムとの接着性を向上させ、強力、疲労性が良好なアラミド繊維コードを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成することができる。すなわち、本発明は、「レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む処理剤が、予めポリエポキシ化合物で処理されたアラミド繊維より構成されるコードに付与されたRFL処理コードであって、該処理コードは、RFLを含む処理剤付着量が5〜35重量%(未処理コード重量基準)、強力利用率が95%以上、ゴムに埋没後のエアウィッキング性が0.03ml/分以下、モデルベルト疲労テスト後のコード強力保持率が70%以上であることを特徴とする動力伝達ベルト用アラミド繊維コード。」である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明におけるアラミド繊維とは、芳香族環がアミド結合で結合された繰り返し単位が全体の少なくとも80%以上を占める重合体からなる繊維を意味する。これらの重合体、または、共重合体からなる繊維の代表例として、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリメタフェニレンイソフタラミド、ポリパラフェニレン・3,4’−ジフェニルエーテル・テレフタラミド等、従来公知のアラミドからなる繊維を挙げることができる。
【0009】
本発明においては、上記のアラミド繊維は予めポリエポキシド化合物で処理されたもの、好ましくはアラミド繊維が無撚の状態で処理されたものを用いる。好ましく用いられるポリエポキシド化合物としては、一分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を、該化合物100gあたり0.2g当量以上含有する化合物を挙げることができ、具体的にはエチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、レゾルシン・ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂などの多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、過酢酸または過酸化水素などで不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、即ち、3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペートなどを挙げることができる。これらの中、特に、多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応生成物、即ち、多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を示すので好ましい。
【0010】
かかるポリエポキシド化合物は、通常少量の溶媒に溶解したものを公知の乳化剤、例えば、アルキルベンゼンスルフォン酸ソーダ、ジオクチルスルフォサクシネートNa塩などを用いて乳化液または溶液として使用される。またポリエポキシド化合物は、アミン系もしくはイミダゾール系硬化剤、ポリイソシアネートと公知のオキシム、フェノール、カプロラクタムなどのブロック化剤との付加化合物であるブロックドイソシアネート、後述のポリイソシアネートとエチレンイミンとの反応生成物であるエチレン尿素化合物などを混合使用してもよい。
【0011】
例えば、ポリエポキシド化合物(A)及び硬化剤、ブロックドイソシアネートもしくはエチレン尿素化合物(B)との混合比は0.05≦(A)/〔(A)+(B)〕≦0.9(重量比)の範囲が好ましい。ポリエポキシド化合物の濃度としては0.1〜5.0重量%が使用される。総固形分濃度は1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%になるようにして使用する。
【0012】
上記、ポリエポキシド化合物を含む処理剤は、アラミド繊維の製造時に油剤と混合して付着させても、あるいは、アラミド繊維製糸後、独立に付着させてもよいが、アラミド繊維に対する処理剤固形分付着量は0.05〜5.0重量%が適当である。なお、ポリエポキシド化合物を含む処理剤で処理したアラミド繊維は、100〜150℃で60〜180秒乾燥され、ついで、150〜250℃で30〜210秒、好ましくは60〜180秒間熱処理されていることが、最終的に得られる処理コードの接着性の観点から好ましい。
【0013】
本発明のアラミド繊維コードは、上記のようにポリエポキシド化合物を含む処理剤で処理されたアラミド繊維を、必要に応じて複数本合わせて加撚処理したコードに、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む処理剤が付与されたRFL処理コードである。
【0014】
ここで使用されるRFLは、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が1:0.1〜1:8、好ましくは1:0.5〜1:5、更に好ましくは1:1〜1:4の範囲であることが望ましい。また、レゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの配合比率は、固形分重量比で1:1〜1:15、好ましくは1:3〜1:12の範囲にあるのが好ましい。ゴムラテックスの配合比率が高すぎると、処理剤の粘着性が著しく高くなり、また凝集力も低くなって、含浸性や接着性が低下する。一方ゴムラテックスの配合比率が低すぎると、処理コードが硬くなる原因となり、処理コードの強力利用率や疲労性(強力保持率)を満足させることが困難となる。ゴムラテックスの種類としては、被着体のゴム種によって選択される。例えば、被着体のゴムがクロロプレンゴム(CR)であればCRラテックスが、また、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)や水素添加アクリロニトリル・ブタジエンゴム(H−NBR)であれば、NBRラテックス及び/又は水添NBRラテックスが使用される。クロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)であれば、CSMラテックスが用いられることが多い。もちろん、これらのゴムラテテックスを主体とする混合配合であっても構わない。
【0015】
また、酸化防止剤もしくは老化防止剤を、上記RFLに対して固形分で5.0〜15.0重量%添加すると、ベルト走行中にRFL処理コードが硬くなるのを抑制することができ、疲労テスト後のコード強力保持率が向上しやすくなるので好ましい。酸化防止剤の種類としてはヒンダードフェノール系、アミン系、リン系及び硫黄系化合物をあげることができる。代表的な例としては、ヒンダードフェノール化合物系では、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリ−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロキシシンナマミド)、1.3.5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどがある。また、分子中に硫黄や燐を含んだヒンダード系フェノール化合物としては2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)や3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステルなどがある。アミン系酸化防止剤の代表的な例は、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、アルキル化ジフェニルアミンなどがある。
【0016】
老化防止剤としては、アルデヒド・アミン反応生成物があげられるが、その代表例としてはアルドールと1ナフチルアミンの縮合体物をあげることができるし、ケトン・アミン反応生成物として2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合物がある。また、アミン系化合物としてはN,N’−ジナフチル−p−フェニレンジアミンが代表例である。フェノール系化合物としては、スチレン化フェノール、2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などがある。
【0017】
さらに上記RFL中には、特公昭57−21587号公報に示されるような下記一般式(化1)で表されるエチレン尿素化合物や、芳香族もしくは脂肪族イソシアネートとオキシム、フェノール、カプロラクタム等と反応させて得られるブロックドイソシアネートを加えてもよい。これらエチレン尿素化合物及びブロックドイソシアネートは、通常水分散液の形で、RFLに対して0.5〜30重量%添加される。
【0018】
【化1】
【0019】
式中R’は、芳香族または脂肪族の炭化水素残基を表し、nは0,1又は2である。
【0020】
また、通常の方法で調整されたカーボンブラックの水分散液をRFLに対して0.5〜5重量%、あるいは、ジメチルポリシロキサンのごときシリコン系処理剤の水分散液をRFLに対して0.5〜5.0重量%添加してもよい。なおRFLで処理されたコードには、更に、被着体のゴムマトリックスと同種類のゴムを含むゴム糊が付与されることもある。
【0021】
本発明のRFL処理コードにおいては、上記のRFLを含有する処理剤が、未処理のアラミド繊維コードの重量を基準として5〜35重量%、好ましくは10〜30重量%付着していることが大切である。付着量が5重量%より低い場合には、該アラミド繊維コードを動力伝達ベルトの補強繊維として使用した場合にベルト端面から露出した単糸がホツレやすくなり、またゴムとの接着性も不十分となるので好ましくない。一方、35重量%を越える場合には、RFL処理コードの強力利用率が95%以上のものを得ることが困難となり、またゴムとの接着性も逆に低下したり耐疲労性も低下しやすくなるので好ましくない。
【0022】
またRFL処理コードの強力利用率は、95%以上であることが必要であり、95%未満の場合では、動力伝達ベルトの補強用として同一のコード強力を得るためにはコードを太くしなければならず、また処理コード中のアラミド繊維の引き揃えが不十分となっているために、疲労テスト時の伸長・圧縮歪が各アラミド単繊維に均一にかかにくくなって応力集中が発生し、疲労テスト後のコード強力保持率が低下するので好ましくない。
【0023】
またモデルベルト疲労テスト後のコード強力保持率は75%以上であることが必要であり、この値が75%未満の場合には、動力伝達ベルトの補強用繊維コードとしては不十分で、ベルトの寿命が低下するので好ましくない。なお先に述べた強力利用率とは、RFL処理コードのコード強力を、RFL処理前のコード強力で徐した値(%)であり、アラミド繊維をRFL処理した後に撚糸してコードとなした場合については、該コード強力を、RFL処理せずに撚糸したRFL未処理コードの強力で徐した値(%)とした。
【0024】
本発明のアラミド繊維コードは、以上に述べた特性に加えて、ゴムに埋没後のエアウィッキング性が0.03ml/分以下の特性を有していることが肝要である。かかる特性を満足するRFL処理コードは、アラミド繊維の単糸表面がほぼRFL処理剤で被覆され、且つこのRFL被覆単糸が密に引き揃えられて配列されているためと推定され、単糸間の摩耗疲労性が良好となるだけでなく、疲労時の伸長・圧縮歪みが均一にかかって応力分散しやすくなるため耐疲労性が向上する。
【0025】
以上に述べた本発明の動力伝達ベルト用アラミド繊維コードの製造方法は特に限定されるものではないが、例えば以下のごとくして製造することができる。すなわち、前述の実施的に無撚の状態で予めポリエポキシド化合物を含む処理剤で処理されたアラミド繊維を、必要ならば所望の太さのコードが得られるように複数本合わせ、1≦K≦5、好ましくは2≦K≦4の範囲内で加撚処理し、先ずRFL未処理のアラミド繊維コードを得る。ここでKは撚係数であり、撚数をT(回/m)、Dを繊維コードの繊度とするとき、K=(T×D1/2 )/2874で算出される値である。この撚係数Kが1未満の場合には疲労性が不十分となり、一方5を越える場合にはコード強力が低くなって、本発明の目的とする動力伝達ベルト用アラミド繊維コードは得られなくなる。なお、アラミド繊維を複数本合わせる場合には、夫々のアラミド繊維を予め0.2≦K≦1.0の範囲内で加撚処理してもよいが、その撚糸方向は合糸後の加撚方向と同一方向である方が好ましい。
【0026】
ポリエポキシド化合物で処理されたアラミド繊維より構成される上記コードは、引続き、前述したRFL(レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス)、シリコン系処理剤及び酸化防止剤もしくは老化防止剤などを含む処理剤で、減圧条件下もしくは加圧条件下含浸加工処理されるか、又は減圧条件下含浸処理後にさらに加圧条件下で再含浸加工処理される。
【0027】
減圧条件下の場合には、例えば金属性穴空きボビンに卷いた一定量のアラミド繊維コードを、真空ポンプに接続された減圧可能な金属製含浸加工装置の中に入れ、まず減圧にしてコード中に含まれる空気を除去し、ついで前記RFLを含む処理剤を容器の中に導入し、アラミド繊維コードに減圧下含浸させる。所定の条件で5分間以上含浸加工処理をした後に常圧にもどし、過剰の処理剤を取出した後にこれを加圧処理して過剰に付着した処理剤を除去する。通常の減圧含浸条件は、容器中の減圧度10torrで、減圧開始から常圧に戻すまでの時間は約45分間である。また、過剰の処理剤を除去する圧脱条件は5kg/cm2 とするが、減圧度に制約はない。
【0028】
一方、加圧条件下の場合には、例えば金属性穴空きボビンに卷いた一定量のアラミド繊維コード及びRFLを含む処理剤を、エアコンプレッサーに接続された加圧可能な金属製含浸加工装置の中に入れ、アラミド繊維コードに加圧下含浸させる。所定の条件で50分間以上含浸加工処理をした後に常圧にもどし、過剰の処理剤を取出した後にこれを加圧処理して過剰に付着した処理剤を除去する。通常の加圧含浸条件は、容器中の圧力20kg/cm2 で50分間である。また、過剰の処理剤を除去する圧脱条件は5kg/cm2 とするが、加圧度に制約はない。
【0029】
RFLを含む処理剤で減圧条件下、あるいは加圧条件下で含浸加工処理した後、金属製容器から取り出されたアラミド繊維コードは、80〜150℃で0.5〜5分間乾燥後、150〜260℃で0.5〜5分間熱処理して硬化させる。この際の、アラミド繊維コードに対するRFLを含む処理剤のの付着量は1〜25重量%、特に5〜20重量%に調節することが好ましい。この付着量が1重量%より低い場合には、エアウィッキング性が十分には低下せず、アラミド繊維コードを動力伝達ベルトの補強繊維として使用した場合にベルト端面から露出した単糸がホツレやすくなる。逆に25重量%を越える場合には、得られるRFL処理コードの強力利用率が低下しやすく、またゴム接着性も逆に低くなることがあるので好ましくない。
【0030】
本発明においては、上述のRFLを含む処理剤で含浸処理したコードを、さらに、常法にしたがってRFLを含む第2の処理剤で処理することが好ましい。ここで使用される第2の処理剤には、先に述べた含浸処理で使用される処理剤に配合すると同様の各種配合剤を添加してもよい。また、先の処理剤と第2の処理剤は同一でも異なっていてもよい。通常第2の処理剤としては、被着体のゴムと同一のゴムラテックスを用いたRFL単独が用いられる。
【0031】
上記、第2の処理剤を常圧下に処理後、80〜150℃で0.5〜5分間乾燥後、150〜260℃で0.5〜5分間熱処理して硬化させる。撚糸コードに対する第2の処理剤の付着量は、先の含浸処理で付着させた処理剤との合計の付着量が5〜35重量%となる範囲内で1〜10重量%に調整される。
【0032】
このように予めポリエポキシド化合物で処理したアラミド繊維に特定の撚数をかけたコードを、RFLを含む処理剤で減圧条件下又は加圧条件下で、含浸加工処理して所定量付着させ、乾燥、熱硬化させたコードは、コード中へ処理剤が十分に含浸し、予めアラミド繊維に処理されたエポキシド化合物とこの含浸された処理剤とがそれぞれ相互に反応し、凝集力が高い、比較的柔軟な皮膜を形成すると同時に、アラミド繊維の単糸を1本1本処理剤が強固に被覆しており、且つ単糸の引き揃えが良好となっているので、エアーウィッキング性が低下してホツレ性が良好になると共に強力利用率が高くなるものと推定される。さらに、耐疲労性も、撚糸後にコード状態で処理剤を減圧下あるいは加圧条件下で含浸加工処理するため、単糸の引き揃え性が保持されるために、疲労テスト時の伸長・圧縮歪が均一にかかって応力分散するので強力保持率が向上するものと考えられる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、実施例において、コード強力、ホツレ性、コード剥離接着力、引抜接着力、疲労時強力保持率、エアウイッキング性は次のようにして求めた値である。
【0034】
<コード強力>
インテスコ2005型引張試験(インテスコ社製)を用いて、4Dエアーチャックを使用してチャック間250mmにコード長をとり、引張速度100mm/分でコード強力を測定した。5回測定し、その平均値をコード強力とした。
RFL処理後のコード強力/RFL処理前のコード強力×100を強力利用率とした。なお、無撚状態で処理剤を付着させた後に加撚したコードについては、撚糸後のコード強力/処理剤未付与の繊維を同様に撚糸したコード強力×100を強力利用率とした。
【0035】
<ホツレ性>
厚さ約2mmのゴムシート2枚の間に前記のホツレ処理を行い、次いでRFLを含む処理剤で処理したアラミド繊維コードを平行に並べて挟み、150℃で30分間、50kg/cm2 のプレス圧力で加硫し、ゴムシートを得た。このシートをカッターナイフを用いてゴム中に配列したコードの長さ方向に切断し、切断面にコード端面が現れるようにした。そして、端面からのアラミド単繊維の飛び出し状態を目視判定した。また、この端面をサンドペーパー(#AA−150)で摩擦し、単糸のホツレ状態を観察した。評価は良好◎→○→△→×(不良)で判定した。
【0036】
<コード剥離接着力>
処理コードとゴムとの剥離接着力を示すものである。ゴムシート表層近くに7本のコードを埋め、加圧下150℃、30分間、50kg/cm2 のプレス圧力で加硫し次いで両端の2本のコードを取り除き残りの5本のコードをゴムシートから200mm/minの速度で剥離に要した力をkg/5本で表示したものである。
【0037】
<引抜接着力>
処理コードとゴムとのせん断接着力を示すものである。コードをゴムブロック中に埋め込み、加圧下で150℃、30分間、50kg/cm2 のプレス圧力で加硫し、次いでコードをゴムブロックから200mm/分の速度で引き抜き、引抜きに要した力をkg/cmで表示したものである。
【0038】
<疲労時強力保持率>
耐疲労性をあらわす尺度でベルト式疲労テスターを用い、厚さ2mmのゴムシート2枚の間に、コードを挟み、150℃で30分間、50kg/cm2 のプレス圧力で加硫して得られたシートを50mm幅×500mm長ベルト形状に切断し荷重25kgをかけ、直径20mmのローラーに取り付け、120℃の雰囲気下で、120rpmで往復運動させ、50万回繰り返したのち、コードを取り出し残強力を測定し、疲労時の強力保持率を求めた。
【0039】
<エアウイッキング>
RFL含有処理剤のアラミド繊維コード被覆の状態を表す尺度であり、厚さ12mm、長さ50mm、幅30mmのゴム片2枚の中央に長さ方向にコードをはさみ、150℃で30分間、90kg/cm2 のプレス圧力で得られた加硫片を作成し、このコード中を、2Kg/cm2 の圧力をかけたときに通過する1分間の空気量をml単位で測定する。この空気量をエアウイッキングと定義する。
【0040】
[実施例1]
まず、接着処理剤を次のように調整した。即ち、デナコールEX−313(グリセリンジグリシジルエーテル;ナガセ化成株式会社製)17.5gに界面活性剤としてネオコールSW−30(ジオクチルスルフォサクシネートナトリウム塩;第一工業製薬株式会社製)14.5gを加えよくかき混ぜ、溶解させる。ついで、水656.2gを高速にかき混ぜながら、上記エポキシ溶液をゆっくり加えて分散させる。得られた配合液を処理剤Aとする。
【0041】
また、202.2gの水に10%水酸化ナトリウム水溶液6.4g、28%アンモニア水溶液18.8gを加え、十分撹拌し、更に、酸性触媒で反応させて得られたレゾルシン・ホルマリン初期縮合体物(40%アセトン溶液)39.5gを添加して十分に撹拌し分散させる。
【0042】
次に、水278.0にニッポールLX−1562(アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムラテックス41%水乳化物;日本ゼオン株式会社製)400.7gをゆっくり撹拌、混合する。この混合液に上記のレゾルシン・ホルマリン初期縮合物分散液をゆっくり撹拌しながら混合し、更に、ホルマリン(37%)16.4gを添加して混合する。ジメチルポリシロキサン水分散液(20%濃度)30g及びヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバガイギー株式会社製)の25%水分散液8gを添加する。得られた20%濃度の配合液を処理剤Bとする。
【0043】
アラミド繊維(テクノーラ、帝人株式会社製)1500デニール/1000フィラメントをコンピュートリーター処理機(CAリッツラー株式会社製タイヤコード処理機)を用いて、前記処理剤A中に浸漬した後、130℃で2分間乾燥し、引続き235℃で1分間熱処理をした。
【0044】
次に、この処理原糸をS方向に撚係数0.4(3回/10cm)で加撚し、さらにこれを2本あわせて、S方向に撚係数2(10.5回/10cm)で加撚し、撚糸コードを作成した。
【0045】
ついで、この加撚コード2000m(重量667g)を金属製の穴空きボビンに巻直し、容量40リットルの真空、加圧含浸加工機の中に入れ、蓋を締め、15分間で10torr. の減圧にし、次いで、20分間かけて、上記処理剤Bを容器中にいれ、更に、20分間保持してコード中に含浸させる。その後、減圧を5分間かけて徐々に常圧に戻し、エアコンプレッサーを用いて、20kg/cm2 に加圧し、50分間保った後、常圧に戻す。この後、金属製含浸加工容器から過剰の処理剤を取り出し、再び5kg/cm2 まで加圧して金属ボビンに卷かれたコードから、過剰に付着した処理剤を除去する。処理剤含浸コードを取り出し、処理剤Aと同様の条件で乾燥、熱処理を行った。このときの処理剤の付着量は20重量%であった。
【0046】
ついで、該含浸コードをRFL(R/F=1/2.5モル比、RF/L=1/5重量比、L=アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムラテックス;日本ゼオン株式会社製、ニポールLX1562)で処理し、撚糸コードに対する付着率が5重量%になるように調整し、130℃で2分間乾燥し、240℃で2分間、緊張下で硬化加熱処理してRFL処理コードを得た。
【0047】
[実施例2〜5、比較例1〜4]
実施例1において、処理剤Bの付着量及び付着条件、並びに含浸コードに付着させるRFLの付着量を表1記載のごとく変更する以外は実施例1と同様にして処理コードを得た。これらの評価結果を表1にまとめて示す。なお実施例4では撚係数を3に変更した。
【0048】
処理剤Bを通常の常圧処理(真空・加圧含浸加工無し)で処理する以外は全て実施例と同様にして得られたコードを比較例3、処理剤Bを撚糸する前に処理し、ついで撚糸する以外は実施例と同様にして得られたコード(真空・加圧含浸加工無し)を比較例4として、併せて、その結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
[実施例6、比較例5〜6]
処理剤の中、処理剤Aは実施例1と同様に調整した。また、処理剤BのRFLは実施例1の調整法に従い、NBRラテックスをニポール2518FS(ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンラテックス41%水乳化液;日本ゼオン株式会社製)に替えて調整した。また、実施例1と同様に、含浸処理後のコードは、処理剤Bで使用したと同一のラテックスを用いた、ニポール2518FS配合のRFLでさらに処理した。
【0051】
ここで処理剤Bを通常の常圧処理する以外は全て実施例6と同様にして得られたコード(比較例5)、および処理剤Bを無撚の繊維に処理した後に撚糸する以外はすべて実施例6と同様にして得られた処理コード(比較例6)を前述の方法により、CR配合ゴムを使用して、ホツレ性、剥離接着力、引抜接着力、疲労性を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
[実施例7、比較例7〜8]
実施例1と同様の処理剤Aで処理した原糸を加撚することなく2本あわせ、これをS方向に撚係数2(10.5回/10cm)で加撚し、この加撚コード2000m(重量667g)を実施例1と同様に減圧下で含浸処理して処理剤Bをコード中に含浸させ、次いで20Kg/cmの2 加圧処理を施すことなく金属製含浸加工容器から取り出す以外は実施例1と同様にして処理コードを得た。結果を表3に示す。
【0054】
ここで処理剤Bを通常の常圧処理する以外は全て実施例7と同様にして得られたコード(比較例7)、および処理剤Bを無撚の繊維に処理した後に撚糸する以外はすべて実施例7と同様にして得られた処理コード(比較例8)の結果を、表3に合わせて示す。
【0055】
[実施例8]
実施例7の加撚コード2000m(重量667g)を金属製の穴空きボビンに巻直し、容量40リットルの真空・加圧含浸加工機の中に入れ、次いで、上記処理剤Bを容器中にいれ、蓋を締め、エアコンプレッサーで20kg/cm2 に加圧し、50分間保持してコード中に含浸させる。その後、徐々に常圧に戻に戻す。この後、金属製含浸加工容器から過剰の処理剤を取り出し、再び5kg/cm2 に加圧して金属ボビンに卷かれたコードから、過剰に付着した処理剤を除去する。接着剤含浸コードを取り出し、処理剤Aと同様の条件で乾燥、熱処理を行った。このときの処理剤の付着量は20重量%であった。得られた処理コードの評価結果は表3にまとめて示す。
【0056】
【表3】
【0057】
【発明の効果】
予めポリエポキシド化合物で処理されたアラミド繊維を加撚した後に、例えば減圧下又は加圧下でRFLを含有する処理剤を含浸処理して製造される本発明のアラミド繊維コードは、強力利用率や疲労時の強力保持率が良好で、また、成形後の動力伝達ベルトのベルト端面からアラミド繊維単糸のホツレを生じることがなく、ゴムマトリックスに対する接着性及び疲労性も良好である。
Claims (1)
- レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)を含む処理剤が、予めポリエポキシ化合物で処理されたアラミド繊維より構成されるコードに付与されたRFL処理コードであって、該処理コードは、RFLを含む処理剤付着量が5〜35重量%(未処理コード重量基準)、強力利用率が95%以上、ゴムに埋没後のエアウィッキング性が0.03ml/分以下、モデルベルト疲労テスト後のコード強力保持率が75%以上であることを特徴とする動力伝達ベルト用アラミド繊維コード。
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