JP3708008B2 - クラッド材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘導加熱式炊飯器等の誘導加熱式電気機器や電気ポット等の内容器や蓋及び通常の加熱用の鍋等や保温容器、保冷容器等に採用可能なクラッド材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、クラッド材は、例えば、ステンレス板とアルミニウム板との間に銅を介在させた状態でプレス圧着(クラッディング)することにより形成されている。このクラッド材は、例えば、絞り加工により炊飯器の内鍋に形成される。この場合、ステンレス板を誘導加熱することができ、銅を介して高熱伝導性のアルミニウム板により内部を均一に加熱することが可能である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来のクラッド材では、断熱性能が低く、特に、アルミニウム板の高熱伝導性が逆に熱損失を増大させるように作用し、この結果、消費電力が大きくなるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、優れた断熱性を有するクラッド材を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、中間金属材料を介して2枚の金属製板材を接合してなるクラッド材において、前記中間金属材料を部分的に介在させることにより、内部に隙間を形成したものである。
【0006】
この構成により、前記隙間が両金属製板材間の熱伝達を防止するように作用する。
【0007】
前記金属製板材の一方を磁性材料で構成すると共に、他方を高熱伝導材料で構成してもよい。この場合、前記磁性材料をステンレス、前記高熱伝導材料をアルミニウム、前記中間金属材料を銅でそれぞれ構成すればよい。
【0008】
また、前記中間金属材料を、一方の金属製板材の全面に形成すると共に、他方の金属製板材に部分的に形成することにより、内部に隙間を形成すると、全面に形成した中間金属材料が輻射により熱の移動を防止可能となる点で好ましい。
【0009】
この場合、前記中間金属材料を全面に設ける金属製板材は磁性材料とするのが好ましい。
【0010】
また、前記隙間は、金属製板材を円板状とする一方、該金属製板材の外周部に前記中間金属材料を設けたり、さらに中心部にも中間金属材料を設けることにより形成してもよい。
【0011】
また、絞り加工により、略皿状や有底筒状に形成してもよく、有底筒状に形成する場合、高熱伝導板材が内面側に位置し、前記隙間が少なくとも側面部に位置するように形成すると、誘導加熱される底面部での磁性板材の発熱を、中間金属材料を介して高熱伝導板材に適切に伝達することができ、又、側面部の隙間により、誘導加熱領域以外での熱損失を抑制できる点で好ましい。
【0012】
また、絞り加工により有底筒状とする場合、その底面部にも部分的な隙間を形成するようにしてもよい。この場合、隙間は、中間金属材料を放射状に連続する複数の円形部からなる構成とすることにより形成すればよい。これにより、底面部では中間金属材料の形成部分が対流の起点となり、対流が促進されることになる。
【0013】
また、前記隙間を大気圧以下とすると、より一層、高熱伝導板材から磁性板材への熱伝達を防止可能な点で好ましい。
【0014】
特に、前記隙間にガス吸着物質を設けると、より一層真空度を高めて断熱性能を向上させることができる点で好ましい。ガス吸着物質としては、チタンやジルコニウム等が使用でき、箔や薄板として設けたり、金属製板材の内面に蒸着、メッキ、溶射等により形成すれば、占有スペースを抑えることができ、好適である。
【0015】
なお、前記隙間は温度センサが当接する領域には形成しない方が正確な温度検出を行う上で好ましい。
【0016】
また、前記金属製板材の少なくとも一方の対向面に複数の凹凸を形成することにより隙間を得るようにしても構わない。
【0017】
また、前記クラッド材の製造方法は、2枚の金属製板材の間に、部分的に中間金属材料を介在させ、大気圧以下の減圧槽内で、加圧及び加熱することにより、金属製板材を中間金属材料を介して接合し、金属製板材の間に形成される隙間を大気圧以下とすればよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。
図1は、本実施形態に係るクラッド材1の中央部破断斜視図である。このクラッド材1は、ステンレス板等からなる磁性板材2と、アルミニウム板、銅板等の高熱伝導板材3との間に、銅、銀、白金、金、アルミニウム等の中間金属材料4を介在させたものである。磁性板材2は、厚さ約0.5mm、直径300mmの円板状に形成され、高熱伝導板材3は、厚さ約1.2〜3mm、直径300mmの円板状に形成されている。中間金属材料4は、磁性板材2の対向面の中心部及び外周部と、高熱伝導板材3の全面とに厚さ3〜5μmでそれぞれ形成されている。中間金属材料4を全面に形成したのは、輻射により熱の移動を防止するためである。
【0019】
前記クラッド材1は次のようにして製造する。
磁性板材2及び高熱伝導板材3を円板状に打ち抜き、磁性板材2の片面の中心部及び外周部と、高熱伝導板材3の全面とに中間金属材料4を形成する。中間金属材料4は、メッキ、蒸着、溶射等、従来周知の種々の方法により形成可能である。そして、大気圧以下に減圧した減圧槽内で、磁性板材2及び高熱伝導板材3を、中間金属材料4が接触するように対向させて加圧及び加熱する(クラッディング)。これにより、磁性板材2及び高熱伝導板材3が中間金属材料4を介して接合され、内部にドーナツ状の隙間5が形成される。このとき、形成される隙間5に、図2に示すように、チタン、ジルコニウム等のガス吸着物質6を設ける。ガス吸着物質6は、箔や薄板として配設したり、磁性板材2や高熱伝導板材3の内面に、蒸着、溶射、メッキ等により形成する。図2の例では、縦50mm、横100mm、厚さ5〜10μmのチタン又はジルコニウム箔を周方向に6枚等分に配設したものが示されている。このようにして形成された隙間5は、減圧槽内で形成されるため、大気圧以下となると共に、ガス吸着物質6の存在により、減圧状態が維持されるので、長期に亘って所望の断熱性能を発揮する。
【0020】
前記クラッド材1は誘導加熱式炊飯器の内鍋に使用できる。
すなわち、前述のように、ドーナツ状の隙間5を形成されたクラッド材1を、内面側に高熱伝導板材3が位置するように絞り加工することにより、図3に示すように、底面部に中間金属材料4で接合される部分が位置し、側面部に大気圧以下に減圧された隙間5が位置する有底筒状とする。これにより、誘導加熱される底面部から発生する熱を、中間金属材料4を介して効果的に内面側の高熱伝導板材3に伝達しつつ、断熱性を高められた側面部で、側方に逃げる熱を抑制することができる。したがって、炊飯器からの熱の逃げ、特に、保温時に於ける熱の逃げを適切に防止して、消費電力を抑制することが可能となる。
【0021】
なお、前記実施形態では、クラッド材を磁性板材2と高熱伝導板材3を中間金属材料4で接合する構成としたが、磁性板材2と高熱伝導板材3は金属材料であれば、用途に応じて、同じ材料で構成したり、他の材料で構成することも可能である。
【0022】
また、前記実施形態では、磁性板材2及び高熱伝導板材3のそれぞれに中間金属材料4を形成したが、いずれか一方のみであってもよし、両板材2,3に部分的に形成するようにしてもよい。
【0023】
また、前記実施形態では、中間金属材料4によりドーナツ状の凹部を形成するようにしたが、この凹部は次のような構成としてもよい。
【0024】
すなわち、図4では、中間金属材料4をメッシュ状に形成することにより、凹部を複数の矩形状としている。図5では、中間金属材料4を放射状に延びる複数の蛇腹状としている。図6では、中間金属材料4を、放射状に形成すると共に、これらの間に円形に形成している。図7では、中間金属材料4を、内外周のほか、これらの間に4等分で円弧状に形成している。なお、中間金属材料4は、外周部のみに形成してもよく、要は、接合する磁性板材2及び高熱伝導板材3の間に大気圧以下となる隙間5(部分的に接触してもよい。)を形成可能であれば、どのように形成してもよい。そして、このようにして形成されたクラッド材を前述のように炊飯器の内鍋に適用すれば、中間金属材料4の形成部分を起点として対流を促進させることが可能となる。
【0025】
また、前記実施形態では、減圧槽内でクラッドするようにしたが、大気圧下でクラッド加工した後、加熱により隙間の空気を膨張させ、この隙間を大きくして減圧状態とするようにしても構わない。
【0026】
また、前記実施形態では、前記構成のクラッド材1を誘導加熱式炊飯器の内鍋に採用する場合について説明したが、炊飯器の内蓋に採用してもよい。内蓋に採用する場合、例えば、図8に示すように、上板と下板の中心部及び外周部に中間金属材料4を形成して接合することにより、ドーナツ状の隙間5を形成し、絞り加工により略皿形状とすればよい。この場合、上板及び下板のいずれを磁性板材2で構成してもよいし、高熱伝導板材3で構成してもよい。図8では、上板を磁性板材2、下板を高熱伝導板材3で構成しており、磁性板材2の中心部及び外周部にはヒータ7(誘導加熱コイルでもよい。)を配設している。これにより、磁性板材2から中間金属材料4を介して高熱伝導板材3に熱伝達され、炊飯器内が加熱される。また、炊飯時の加熱インターバル時や保温時には、前記隙間5によって熱が逃げにくく、消費電力を低減することが可能である。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、中間金属材料を部分的に介在させることにより、隙間を得ることができるので、従来とほぼ同様な簡単な構成であるにも拘わらず、適切な断熱性能を得ることが可能である。
【0028】
特に、絞り加工して側面部に大気圧以下の隙間を配置したので、炊飯器の内鍋や蓋に適した構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態に係るクラッド材の部分断面図である。
【図2】 図1に示す高熱伝導板材の平面図である。
【図3】 図1のクラッド材を加工してなる炊飯器の内鍋を示す断面図である。
【図4】 本実施形態に係るクラッド材の内部に隙間を形成するための中間金属材料の形成例を示す正面図である。
【図5】 本実施形態に係るクラッド材の内部に隙間を形成するための中間金属材料の形成例を示す正面図である。
【図6】 本実施形態に係るクラッド材の内部に隙間を形成するための中間金属材料の形成例を示す正面図である。
【図7】 本実施形態に係るクラッド材の内部に隙間を形成するための中間金属材料の形成例を示す正面図である。
【図8】 本実施形態に係るクラッド材を炊飯器の内蓋に採用する例を示す断面図である。
【符号の説明】
1…クラッド材
2…磁性板材
3…高熱伝導板材
4…中間金属材料
5…隙間
Claims (10)
- 中間金属材料を介して2枚の金属製板材を接合してなるクラッド材において、
前記中間金属材料を部分的に介在させることにより内部に隙間を形成すると共に、絞り加工により略皿状に形成したことを特徴とするクラッド材。 - 前記金属製板材の一方を磁性材料で構成すると共に、他方を高熱伝導材料で構成し、絞り加工により有底筒状とし、高熱伝導板材が内面側に位置し、前記隙間が少なくとも側面部に位置するように形成したことを特徴とする請求項1に記載のクラッド材。
- 前記隙間は底面部にも部分的に形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッド材。
- 形成された底面部に介在する中間金属材料は、放射状に連続する多数の円形部からなる構成としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクラッド材。
- 前記隙間を大気圧以下としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクラッド材。
- 前記隙間にガス吸着物質を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクラッド材。
- 前記ガス吸着物質は、チタン又はジルコニウムからなることを特徴とする請求項6に記載のクラッド材。
- 絞り加工により有底筒状とし、前記隙間を温度センサが当接する領域には形成しないことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のクラッド材。
- 前記金属製板材の少なくとも一方に凹凸を形成したことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のクラッド材。
- 2枚の金属製板材の間に、部分的に中間金属材料を介在させ、大気圧以下の減圧槽内で、加圧及び加熱することにより、金属製板材を中間金属材料を介して接合し、金属製板材の間に形成される隙間を大気圧以下とすることを特徴とするクラッド材の製造方法。
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