JP3706842B2 - 吸着剤によるリチウム含有水溶液からのリチウムイオンの吸着方法 - Google Patents

吸着剤によるリチウム含有水溶液からのリチウムイオンの吸着方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸着剤によるリチウム含有水溶液からのリチウムイオンの吸着方法に関するものである。特に、本発明は、粒状吸着剤による海水またはかん水からのリチウムイオンの吸着方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高い電気エネルギー密度、高い動作電圧、長期間のサイクル寿命及び記憶効果がないなどの利点から、リチウムイオン電池は、ノートブック型コンピューター、移動電話、及び電気自動車などにおいて広範に使用され、その使用量は倍増していくであろう。加えて、多くの異なるリチウム化合物が、セラミック工業、ガラス工業、アルミニウム電解融解工業(aluminum electrolysis melting industry)及び合成ゴム工業等の、様々な工業分野で使用されてきた。これらのうち、最も一般的なリチウム化合物としては、炭酸リチウムがあり、多くのリチウム化合物は炭酸リチウムから製造される。したがって、炭酸リチウムは最も重要なリチウム化合物の一つである。
【0003】
現在、リチウム鉱石及びかん水という、2種の異なる材料源が主に炭酸リチウムを製造するのに使用されている。リチウム鉱石の天然資源のない台湾のような国では、海水が炭酸リチウムを製造するための供給源として代わりに使用されている。海水は、直接あるいは濃縮された後、即ち、かん水として使用できるが、この際、海水は約0.1〜0.5ppmのリチウム濃度であり、かん水は約10ppmというリチウム濃度である。しかしながら、リチウムイオンを含む水溶液から炭酸リチウム沈殿物を形成するためには、その濃度は、海水やかん水の濃度に比べてかなり高い、15000ppm以上でなければならない。その結果、海水またはかん水のリチウムイオン濃度を、炭酸リチウムを製造するのに必要な15000ppmのレベルにまで増加するための技術を開発することは、非常に有益である。
【0004】
米国特許第4,665,049号公報には、吸着剤へのリチウムの吸着量が低品位リチウム鉱石のリチウム含量に匹敵するほど高められるようにするために、水性媒質中のリチウム濃度が天然の海水中などのように非常に低い場合でもリチウムを吸着できる水性媒質におけるリチウムの吸着剤が開示される。上記公報で開示される吸着剤は、(a)マンガン化合物の水溶液またはマンガン化合物の粉末ブレンド及び含浸化合物(例えば、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属またはマグネシウム及びカルシウム等のアルカリ土類金属の化合物)を混合することによって水溶液中の含浸化合物を水不溶性マンガン化合物に吸着させ、マンガン及び含浸要素を一緒に沈殿させることによって、マンガン化合物を上記含浸化合物に含浸させ、(b)このようにして含浸させたマンガン化合物を、マンガン及び含浸要素との複合化合物を形成するのに十分高い温度で熱処理し、さらに(c)酸を用いて熱処理後に複合マンガン化合物から含浸剤の成分を溶出する段階を含む方法によって調製される。このようにして調製される吸着剤は粉末形態であるため、質量損失及びカラムに充填する際に非常に大きな圧力低下を受けやすい。
【0005】
特開平3−8439号公報には、リチウム含有マンガン酸化物の粒状吸着剤が開示される。LiMn24またはLi2MnO3等の、リチウム含有マンガン酸化物を、有機溶剤(ジメチルホルムアミド;DMFなど)中にバインダーとしての機能を有する有機高分子物質を溶解することによって調製された溶液中に添加した後、十分に混練する。この混合液を、有機溶剤に対して親和性を有しかつ高分子物質に対して非溶剤性である液体中に細管を通して滴下することによって、粒状体が製造できる。次に、この粒状体を、リチウム溶出能を有する酸またはリチウムを溶出する酸性を示す酸化性物質を含む水溶液中に浸漬する。このようにして、粒状リチウム吸着剤が得られる。この吸着剤を、カラムに充填して、これにリチウムを含む希釈溶液を流してリチウムを吸着剤に吸着させ、次いでリチウムを脱着させるための溶液(希酸溶液または酸性を示す酸化性物質を含む水溶液)をカラムに流して、吸着剤に吸着されたリチウムを溶出させる。上記公報で使用されるDMF溶剤は、毒性を有し、環境に有害であり、その使用が限定される場合があるため、粒状吸着剤の大量生産に使用するには適さない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、吸着剤1g当たりのリチウムイオン(Li+)の飽和吸着量を増加できる、リチウム含有マンガン酸化物の吸着剤によるリチウム含有水溶液からのリチウムイオンの吸着方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、粒状吸着剤が環境に対して比較的毒性の低い有機溶剤を用いて調製される、リチウム含有マンガン酸化物の粒状吸着剤によるリチウム含有水溶液からのリチウムイオンの吸着方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記諸目的は、下記(1)〜(11)によって達成される。
【0009】
(1) リチウム含有水溶液中のリチウムイオンが吸着剤に吸着されるように、リチウム含有水溶液をリチウム含有マンガン酸化物の吸着剤に接触させることを含み、上記リチウム含有水溶液が10以上のpH値を有することを特徴とする、吸着剤によるリチウム含有水溶液からのリチウムイオンの吸着方法。
【0010】
(2) 上記リチウム含有水溶液のpHが11である、前記(1)に記載の方法。
【0011】
(3) 上記リチウム含有マンガン酸化物の吸着剤は、リチウム含有マンガン酸化物の粉末、及びバインダーとしてのポリマーを含む粒状吸着剤である、前記(1)または(2)に記載の方法。
【0012】
(4) 上記バインダーは、ポリ塩化ビニルである、前記(3)に記載の方法。
【0013】
(5) 上記リチウム含有マンガン酸化物の吸着剤は、LiMn24及びLi2MnO3からなる群より選ばれる少なくとも一種である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
【0014】
(6) 上記リチウム含有マンガン酸化物の粉末は、(a)Li2O及びマンガン化合物を混合し;(b)得られた混合物を300〜1200℃の温度で加熱して、リチウム及びマンガンを含む生成物を形成し;さらに(c)酸性溶液で生成物からリチウムを溶出することによって、調製される、前記(3)〜(5)のいずれかに記載の方法。
【0015】
(7) 上記リチウム含有マンガン酸化物の粒状吸着剤は、バインダーを有機溶剤に溶解し;上記リチウム含有マンガン酸化物の粉末を得られたバインダー溶液と混合して、スラリーを形成し;上記スラリーを、細管を介して、有機溶剤と親和性を有しかつバインダーに対して非溶剤性である液体中に通して、粒状体を形成し;さらに粒状体を酸の水溶液と接触させて、リチウムを溶出させることによって調製される、前記(6)に記載の方法。
【0016】
(8) 有機溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)である、前記(7)に記載の方法。
【0017】
(9) 上記液体は、水または水とアルコールとの混合液である、前記(7)または(8)に記載の方法。
【0018】
(10) 上記リチウム含有水溶液は、海水、または海水から塩を製造するためのプロセス若しくは海水からの純水製造プロセスから得られるかん水;および上記海水またはかん水に添加されるアルカリを含む、前記(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
【0019】
(11) 上記リチウム含有水溶液はかん水を含み;および上記アルカリは水酸化ナトリウム(NaOH)である、前記(10)に記載の方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明は、リチウム含有マンガン酸化物の吸着剤を用いることによるリチウム含有水溶液からのリチウムイオンの吸着方法に関するものであり、特に、海水、または海水から塩を製造するためのプロセス若しくは海水からの純水製造プロセスから得られるかん水からのリチウムイオンの吸着方法に関するものである。
【0022】
すなわち、本発明の方法は、水溶液中のリチウムイオンが吸着剤に吸着されるように、リチウム含有水溶液をリチウム含有マンガン酸化物の吸着剤に接触させることを含む吸着剤によるリチウム含有水溶液からのリチウムイオンの吸着方法であって、当該リチウム含有水溶液のpHを、好ましくはアルカリの添加によって、吸着操作前に予め10以上、特に好ましくは11にまで上昇させておくことことを特徴とするものである。このような方法によって、吸着剤当たりのリチウムイオンの飽和吸着量が有意に向上できる。
【0023】
本発明において、リチウム含有水溶液は、リチウムを含むものであればよく、本発明による吸着剤は、水溶液中のリチウム濃度が低くとも、高い吸着能をもってリチウムを回収できるため、リチウム含有水溶液中のリチウム濃度が低くてもよい。具体的には、海水やかん水などが好ましく挙げられ、より好ましくはかん水である。この際、かん水は、海水から塩を製造するためのプロセスまたは海水からの純水製造プロセスから得られる。
【0024】
本発明において、リチウム含有水溶液のpHは、10以上であり、好ましくは11以上であり、特に好ましくは11である。このようなpH値は、通常、リチウム含有水溶液の元のpH値によって適宜上記範囲になるように調節されればよく、その調節方法も公知の方法が使用でき特に制限されるものではないが、一般的には、アルカリをリチウム含有水溶液に添加することによって上昇できる。この際使用できるアルカリとしては、特に制限されず公知のアルカリが使用でき、リチウム含有水溶液のpH値によって適宜選択できる。このようなアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられ、これらのうち、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0025】
本発明において、リチウム含有マンガン酸化物の吸着剤は、リチウム含有マンガン酸化物の粉末、及びバインダーとしてのポリマーを含む粒状吸着剤であることが好ましい。この際、バインダーとしては、バインダー機能を有するものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル共重合体、ポリスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、アセチルセルロースなどが挙げられ、これらのうち、ポリ塩化ビニルが好ましい。
【0026】
また、本発明において、バインダーの使用量は、リチウム含有マンガン酸化物に対して、5〜60質量%であることが好ましい。この際、バインダーの使用量が5質量%未満であると、粒状吸着剤中にバインダーが均一に分散されず、得られた粒状吸着剤の破砕や粉末化が起こりやすくなる可能性がある。これに対して、バインダーの使用量が60質量%を超えると、マンガン酸化物中のリチウムの溶出が困難になり、吸着性能が低下する場合がある。
【0027】
また、本発明の方法において使用されるリチウム含有マンガン酸化物の吸着剤を構成するリチウム含有マンガン酸化物は、リチウムを含有するものであれば特に制限されず公知のリチウム含有マンガン酸化物が使用できる。例えば、式:LixMnyzで表わされるものがある。この際、式:LixMnyzで表わされるものは、単一の成分から構成されるものであってもあるいは混合物の形態であってもよい。このため、上記式において、xは、リチウム含有マンガン酸化物中のリチウム原子の平均原子数を示し、好ましくは1〜2の値であり;yは、リチウム含有マンガン酸化物中のマンガン原子の平均原子数を示し、好ましくは1〜2の値であり;zは、リチウム含有マンガン酸化物中の酸素原子の平均原子数を示し、好ましくは3〜4の値である。より具体的には、LiMn24及びLi2MnO3を含むものなどが好ましく挙げられ、これらは単独で使用されてもあるいは混合物の形態で使用されてもよい。この際、リチウム含有マンガン酸化物は、粉末の形態で使用されることが特に好ましく、この場合の、リチウム含有マンガン酸化物の粒径は、0.01〜100μm、より好ましくは0.1〜10μmであることが好ましい。
【0028】
また、本発明によるリチウム含有マンガン酸化物の調製方法は、特に制限されず、公知の方法によって使用できる。例えば、本発明による好ましい実施態様である、リチウム含有マンガン酸化物の粉末は、米国特許第4,665,049号公報に記載に開示される方法によって調製できる。即ち、(a)Li2O及びマンガン化合物を混合し;(b)得られた混合物を300〜1200℃の温度で加熱して、リチウム及びマンガンを含む生成物を形成し;さらに(c)酸性溶液で生成物からリチウムを溶出する(leach out)ことによって、リチウム含有マンガン酸化物の粉末が調製される。または、特開平3−8439号公報に記載される方法が挙げられる。より詳細に述べると、多孔性のマンガン含水酸化物にリチウムを吸着させた後、500℃以上の温度で加熱処理する方法(特開昭61−171535号公報);及び水酸化酸化マンガンと炭酸リチウムとの混合物を200℃以上の温度で加熱処理する方法(特開昭63−80844号公報)などが使用できる。
【0029】
本発明において、好ましくは粒状の、リチウム含有マンガン酸化物の吸着剤の製造方法もまた特に制限されず、公知の方法によって使用できる。例えば、特開平3−8439号公報に記載される方法が好ましく使用できる。より詳細に述べると、本発明の好ましい一実施態様によると、バインダーとしてのポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル)を有機溶媒中に溶解し、得られた溶液と上記で得られたようなリチウム含有マンガン酸化物(好ましくは、粉末形態)とを混合してスラリーを形成し、このスラリーを、細管を介して、有機溶剤と親和性を有しかつバインダーとしてのポリマーに対して非溶剤性である液体中に通して、粒状体を形成し、さらにこの粒状体を酸の水溶液と接触させて、リチウムを溶出させることによって、本発明のリチウム含有マンガン酸化物の粒状吸着剤が調製できる。
【0030】
上記方法において、バインダーを溶解するのに使用される有機溶剤としては、バインダーを溶解できるものであれば特に制限されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトンなどが挙げられ、好ましくはN−メチル−2−ピロリドン(NMP)である。また、有機溶剤と親和性を有しかつバインダーとしてのポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル)に対して非溶剤性である液体としては、水、アセトン、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられる。これらの液体は、単独で使用されてもあるいは混合液の形態で使用されてもよい。これらのうち、水または水とアルコールとの混合液が好ましい。
【0031】
このようにして得られる本発明によるリチウム含有マンガン酸化物の大きさは、特に制限されず、上記したような方法における細管の系や供給(滴下)速度によって適宜調節されうる。例えば、本発明の好ましい実施態様である、粒状吸着剤の場合の粒径は、特に制限されず、水溶液中のリチウムイオンが吸着剤に吸着できるような粒径であればよい。
【0032】
また、本発明において、リチウム含有マンガン酸化物のリチウム含有水溶液への添加量は、リチウム含有水溶液中のリチウムイオンが吸着剤としてのリチウム含有マンガン酸化物に十分吸着できる量であれば特に制限されず、またリチウム含有水溶液中のリチウム濃度やリチウム含有マンガン酸化物の種類などによって異なる。本発明では、リチウム含有マンガン酸化物の吸着剤は、好ましくはカラムに充填されて使用される。この際、例えば、このカラムに、かん水を18〜40/時間の流体空間速度で導入する。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1
図1に示されるフローチャートに示されるように、620±20の重合度を有する73gのポリ塩化ビニル(PVC)を、980mlのジメチルホルムアミド(DMF)に溶解した。得られたPVC溶液に、300gのスピネル相のLi1.33Mn1.674の粉末を添加した後、この混合物をよく混練した。次に、この混練混合物を、1200mlのメタノール及び水の混合溶液(1:1の体積比)中に細管(直径3mm)を通して滴下することにより、3.5〜4.3mm直径の粒状体が形成された。この混合物を、瀘過によって粒状体及び液体(濾液)に分離したところ、約959gのウェットな粒状体が得られた。このウェットな粒状体を真空中で乾燥することによって、約539g(630ml)のDMF溶剤が蒸発し、366gの乾燥粒状吸着剤が得られ、ゆえに、約7gの固体の損失であった。約1367mlの濾液を分離して、約1200mlのメタノール及び水の混合液(1:1の体積比)及び167mlのDMFを得た。さらに、182.15mlのDMFを排気ガスから集めた。投入量及び生産量の質量バランスを上記質量及び体積を用いて調べたところ、正しいことが分かった。
【0035】
実施例2
実施例1において、DMFの代わりに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を使用する以外は、実施例1の方法を繰り返した。3.5〜4.3mm直径の粒状吸着剤が得られた。
【0036】
実施例3
実施例1及び2で調製された2種の粒状吸着体の断面を、電子顕微鏡で観察し、約1μmの孔数を、一つの主要な相違で(with one major difference)観察した。この結果、実施例1(DMF)で調製された粒状吸着体の構造は、スポンジ状(密度が0.33g/cm2)であり、実施例2(NMP)で調製された吸着体の構造は、羽毛状(密度が0.41g/cm2)であった。これから、本発明の上記2種の粒状吸着体の多孔質構造は、吸着剤中にリチウムが拡散でき、好ましいと考えられる。
【0037】
また、40gの実施例1及び2で調製された2種の粒状吸着体を、別々に、カラムに充填して、脱イオン水に浸漬した後に吸着剤床を形成した。この吸着剤床を、脱イオン水、1300mlの0.5N HCl水溶液、及び再度脱イオン水で洗浄し、等温吸着試験(isothermal adsorption test)の準備をした。
【0038】
様々な濃度のLiCl水溶液を調製した。この際、LiCl水溶液のpH値は7であった。8gの粒状吸着体を吸着剤床からとり、過剰量のLiCl水溶液と混合した。溶液をLi+濃度を、サンプルを常時抜きながら測定した。溶液の実測Li+濃度が安定し続ける、即ち、Li+平衡濃度に到達したら、試験を止めた。特定の濃度を有するLiCl水溶液における吸着剤1g当たりのLi+の飽和吸着量を、初期のLiCl水溶液中に及び平衡溶液中に含まれるLi+量の相違から算出した。
【0039】
図2及び3に、それぞれ、pHが7で25℃での様々な濃度のLiCl水溶液における実施例1及び2で調製された2種の粒状吸着体を用いた場合の等温吸着の結果を示す。図2及び3から、実施例1及び2で調製された吸着体1g当たりのLi+の飽和吸着量は双方とも6mg/g吸着剤であることが分かった。
【0040】
さらに、NaOHを添加することによって、LiCl水溶液のpH値を11に調節して、pHが11のLiCl水溶液を用いる以外は、上記と同様の等温吸着試験を繰り返した。その結果を、図4及び5に示す。図4及び5から、実施例1及び2で調製された吸着体1g当たりのLi+の飽和吸着量は双方とも約25mg/g吸着剤であり、この値はリチウム含有水溶液のpHが7である際の6mg/g吸着剤に比べて有意に高い値であることが示された。これらの結果から、リチウム含有水溶液のpHを上げることによって、リチウムイオンの吸着量が有意に向上できるという驚くべき結果が得られた。
【0041】
【発明の効果】
本発明は、リチウム含有水溶液中のリチウムイオンが吸着剤に吸着されるように、リチウム含有水溶液をリチウム含有マンガン酸化物の吸着剤に接触させることを含み、該リチウム含有水溶液が10以上のpH値を有することを特徴とする、吸着剤によるリチウム含有水溶液からのリチウムイオンの吸着方法に関するものである。本発明の方法によると、リチウム含有水溶液を、リチウム含有マンガン酸化物の粒状吸着剤と接触させて、水溶液からリチウムイオンを吸着剤に吸着させるが、この際、アルカリを、吸着する前にpH値が10以上、好ましくは11にまで上昇するように水溶液に添加することによって、吸着剤1g当たりのリチウムイオン(Li+)の飽和吸着量を顕著に増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明の好ましい実施態様による粒状吸着剤を調製するための概略のフローチャートを示すブロック図である。
【図2】は、pH 7及び25℃での様々な濃度のLiCl水溶液における実施例1で調製された粒状吸着剤を用いることによる等温吸着試験(isothermal adsorption test)の結果を示すものである。この際、横軸は水溶液におけるLiClの平衡濃度を表わし、縦軸は吸着剤1g当たりのリチウムイオン(Li+)の飽和吸着量を表わす。
【図3】は、pH 7及び25℃での様々な濃度のLiCl水溶液における実施例2で調製された粒状吸着剤を用いることによる等温吸着試験の結果を示すものである。この際、横軸は初期のLiCl水溶液の濃度を表わし、縦軸は吸着剤1g当たりのリチウムイオン(Li+)の飽和吸着量を表わす。
【図4】は、pH 11及び25℃での様々な濃度のLiCl水溶液における実施例1で調製された粒状吸着剤を用いることによる等温吸着試験の結果を示すものである。この際、横軸は水溶液におけるLiClの平衡濃度を表わし、縦軸は吸着剤1g当たりのリチウムイオン(Li+)の飽和吸着量を表わす。
【図5】は、pH 11及び25℃での様々な濃度のLiCl水溶液における実施例2で調製された粒状吸着剤を用いることによる等温吸着試験の結果を示すものである。この際、横軸は初期のLiCl水溶液の濃度を表わし、縦軸は吸着剤1g当たりのリチウムイオン(Li+)の飽和吸着量を表わす。

Claims (11)

  1. リチウム含有水溶液中のリチウムイオンが吸着剤に吸着されるように、リチウム含有水溶液をリチウム含有マンガン酸化物の吸着剤に接触させることを含み、該リチウム含有水溶液が10以上のpH値を有することを特徴とする、吸着剤によるリチウム含有水溶液からのリチウムイオンの吸着方法。
  2. 該リチウム含有水溶液のpHが11である、請求項1に記載の方法。
  3. 該リチウム含有マンガン酸化物の吸着剤は、リチウム含有マンガン酸化物の粉末、及びバインダーとしてのポリマーを含む粒状吸着剤である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 該バインダーは、ポリ塩化ビニルである、請求項3に記載の方法。
  5. 該リチウム含有マンガン酸化物の吸着剤は、LiMn24及びLi2MnO3からなる群より選ばれる少なくとも一種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 該リチウム含有マンガン酸化物の粉末は、(a)Li2O及びマンガン化合物を混合し;(b)得られた混合物を300〜1200℃の温度で加熱して、リチウム及びマンガンを含む生成物を形成し;さらに(c)酸性溶液で生成物からリチウムを溶出することによって、調製される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 該リチウム含有マンガン酸化物の粒状吸着剤は、バインダーとしてのポリマーを有機溶剤に溶解し;該リチウム含有マンガン酸化物の粉末を得られたバインダー溶液と混合して、スラリーを形成し;該スラリーを、細管を介して、有機溶剤と親和性を有しかつバインダーとしてのポリマーに対して非溶剤性である液体中に通して、粒状体を形成し;さらに粒状体を酸の水溶液と接触させて、リチウムを溶出させることによって調製される、請求項6に記載の方法。
  8. 該有機溶剤は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)である、請求項7に記載の方法。
  9. 該液体は、水または水とアルコールとの混合液である、請求項7または8に記載の方法。
  10. 該リチウム含有水溶液は、海水、または海水から塩を製造するためのプロセス若しくは海水からの純水製造プロセスから得られるかん水;および該海水またはかん水に添加されるアルカリを含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 該リチウム含有水溶液はかん水を含み;および該アルカリは水酸化ナトリウム(NaOH)である、請求項10に記載の方法。
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