JP3705877B2 - 光記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は透明基板上に色素を含有する記録層、反射層を有する光記録媒体に関し、特に高密度に記録可能な光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
色素を記録層とし、かつ、反射率を大きくするため記録層の上に金属の反射層を設けた記録可能な光記録媒体は、例えば、 Optical Data Storage 1989 Technical Digest Series Vol.1,45(1989) に開示されており、記録層にシアニン系色素やフタロシアニン系色素を用いた媒体はCD−R媒体として市場に供されている。これらの媒体は780 nmの半導体レーザーで記録することができ、かつ、780 nmの半導体レーザーを搭載している市販のCDプレーヤーやCD−ROMプレーヤーで再生できるという特徴を有している。
【0003】
しかしながら、これらの媒体は650 MB程度の容量しか持たず、デジタル動画等のように大容量の情報を記録すると、記録時間が15分以下と短い。又、機器の小型化が進むなかで従来の媒体は小型にすると容量が不足する。前記したCD−R媒体は780 nm前後の波長を有する半導体レーザーを用いて記録及び再生を行っていたのに対し、最近では630 〜650 nmの半導体レーザーが開発され、より高密度の記録及び/又は再生が可能となり、直径120 mmの媒体に2時間の高画質の動画を記録した光記録媒体が、DVDとして開発されている。この媒体は4.7GB/面の記録容量を有するが、現在のところ、ピットを基板に転写して作られる再生専用の媒体である。そのため、上記したようなDVDの記録容量に近い大容量を有する記録可能な光記録媒体が求められている。
【0004】
一般的に、記録可能な媒体において、記録容量を大きくするには記録レーザービームを小さくすればよい。用いるレーザーの波長が短い程、又、対物レンズの開口数(NA)が大きい程、ビーム径は小さくなり、高密度記録に好ましいが、現在の半導体レーザー技術やレンズのNAから、ビーム径には限界がある。例えば、前記したDVDのビーム径は、従来のCDの場合に比較して、記録密度の割には小さくない。従って、記録時に、CD−Rの場合と比較してビーム径に比してより小さなピットを正確に形成しなければならず、そのため記録時のピット間の熱干渉とクロストークが大きくなり、高密度の記録が困難となる。そこで、記録時に変調度を犠牲にせずに細く小さなピットを正確に形成することが求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、記録ビーム径に対してトラックピッチを小さくしても、クロストークが小さい、高密度で記録が可能な高密度光記録媒体を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、色素、記録ビーム径、トラックピッチ及びグルーブ形状について非自明な選択を行い本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(i)グルーブを有する透明な基板上に、直接又は他の層を介して、レーザー光を吸収する色素を含有する記録層と、該記録層の上に直接又は他の層を介して金属の反射層を有する光記録媒体において、λ/NAで表される記録ビームの径をr[ここで、λは記録波長(μm)、NAは対物レンズの開口数を表し、λが0.635〜0.655μm、NAが0.60±0.05である]、基板のグルーブのピッチ(トラックピッチ)をP(μm)、グルーブの幅をWg(μm)とした際に、WgおよびPが下記式を満足し、
0.24r≦Wg≦0.35r
0.68r≦P≦0.83r
かつ、該記録層に含有される色素が下記式(1)〔化2〕で表されるスチリル色素であることを特徴とする高密度光記録媒体、
【0008】
【化2】
[ここで、Aは1つの窒素原子を含む置換又は無置換の5員環、又は6員環からなる原子群を表し、Qは前記5員環又は6員環に縮合している無置換又は置換ベンゼン環又はナフタレン環からなる原子群を表し、R1 〜R3 は炭素数1〜12の無置換又は置換アルキル基を表し、R1 、R2 はアミノ基が結合しているベンゼン環と環を形成しても良く、nは1又は2を、X- は1価の陰イオンを表す]
である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の光記録媒体は、透明な基板上に少なくともレーザー光を吸収する色素を含有する記録層、金属の反射層からなるものであり、短波長の光に感度を有し、記録ビーム径の割にはトラックピッチを小さくしても、変調度を犠牲にせずに、クロストークを低減した高密度の記録を可能にするものである。
【0010】
記録層に色素を用いた場合、スピンコート法により記録層を成膜することができる。グルーブを有する基板上にスピンコート法で記録層を成膜した場合、グルーブ部の記録層の膜厚は、グルーブ間(ランド)部の記録層の膜厚より通常厚くなる。
【0011】
通常、記録感度は記録層の膜厚に依存し、特に、記録層の上に金属の反射層を設けた媒体の場合は、この反射層へ熱が拡散し、記録感度が低下する。記録層の膜厚が薄いほど、この熱拡散の影響を大きく受け感度が低下し易い。すなわち、グルーブとランド部の記録感度に大きな差が生じる。それ故に、記録レーザービームのビーム径が大きくても細いピットを形成することができ、クロストークの小さな記録が可能となる。
【0012】
しかしながら、いくら細いピットが記録できても、トラックピッチを小さくできるわけではない。なぜなら、トラックピッチを無制限に小さくしても、再生する際のレーザービームの径が大きいと変調度が小さくなるだけでなく、クロストークが大きくなり過ぎて再生できなくなるからである。すなわち、クロストークは、再生の際のビーム径とトラックピッチ及び記録したピットの幅に関係するのだが、通常、記録時と再生時のビーム径は同じなので、トラックピッチを小さくして、細いピットでクロストークの小さな記録ができても、再生時はクロストークが大きくなってしまうからである。
【0013】
本発明において、再生時の変調度を犠牲にせずにクロストークをが小さくなるように記録するには、λ/NAで表される記録ビーム径をrとすると、トラックピッチ(P)を0.68r〜0.83rに、且つグルーブの幅(Wg)を0.24r〜0.35rにするのが好ましい。ここでグルーブの幅とは半値幅を意味する。トラックピッチが0.68r未満の場合はクロストークが大きくなり過ぎて変調度が小さくなり、かつ、ジッター及びエラーレートが大きくなり好ましくなく、0.83rを越える場合は半径方向の記録密度が大きくならず、目的の記録容量が得られない。一方、グルーブの幅が0.24r未満の場合は変調度が小さくなり、0.35rを越える場合はクロストークが大きくなり好ましくない。
【0014】
本発明における記録、再生の際のビーム径は、用いるレーザーの波長が短い程、又、対物レンズの開口数(NA)が大きい程小さくなり高密度記録に好ましいが、装置の小型化や光学系を単純にできる等の点や、装置の経済性の点から記録に利用できる高出力のレーザーとしては0.635〜0.655μmの半導体レーザーが好ましく、0.635〜0.640μmが最も好ましい。又、レンズのNAは基板の厚みムラや基板の傾きによる収差の点から0.60±0.05である。
【0015】
本発明の光記録媒体において用いられる透明な基板としては、信号の記録や読み出しを行う光の透過率が85%以上で、かつ光学異方性の小さいものが好ましい。例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂等の公知の樹脂基板が挙げられる。これらの基板は、板状でもフィルム状でも良く、又、その形状は円形でもカード状でも良い。これらの基板の表面には記録位置を表すグルーブ及び/又はピットを有する。このようなグルーブやピットは、基板の成形時に付与するのが好ましいが、基板の上に紫外線硬化樹脂層を設けて付与することもできる。トラック(グルーブ)ピッチ及びグルーブの幅は前記したとおりであり、グルーブの深さは70〜180 nm程度が好ましい。
【0016】
本発明においては記録層に色素を含有してなるが、この記録層に用いられる色素の物性は記録感度、反射率等の点から重要であり、更に高密度記録に際しては、同じ大きさのピットを形成した場合に大きな変調度が得られ、かつ、しきい値特性に優れた色素が特に好まし。この点から、前記式(1)で表されるスチリル色素が好ましく、その一部は市販されているので、容易に入手可能である。
【0017】
本発明に用いられる前記式(1)のスチリル色素をより具体的には述べれば、Aで表される1つの窒素原子を含む置換又は無置換の5員環、又は6員環からなる原子群としては、下記式〔化3〕のオキサゾール(a)、チアゾール(b)、セレナゾール(c)、ピロール(d)、ピリジン(e)、イミダゾール(f)等の構造が挙げられる。
【0018】
【化3】
【0019】
Aがピロール(d)、イミダゾール(f)の場合の置換基R4 、R5 、R6 は炭素数1〜12の無置換又は置換アルキル基を、QはAの5員環又は6員環に縮合しているベンゼン環又はナフタレン環を表すが、このベンゼン環又はナフタレン環は置換基を有していても良く、この置換基の具体例としては、塩素、臭素、弗素、ヨウ素等のハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基等が挙げられる。
【0020】
又、前記式(1)において、X- としてはハロゲンイオン、過塩素酸イオン、ホスフォニウムイオン、スルフォニウムイオン、1重項酸素クエンチャーとして公知のジチオール金属錯体陰イオン等の1価の陰イオンが挙げられる。
【0021】
本発明においては、基板の上に直接に、あるいは無機系又は有機系の他の層(下引き層)を介して前記した色素を含有する記録層を設ける。該記録層を設ける方法は、例えば、スピンコート法、浸漬法、スプレー法、蒸着法等があるが、スピンコート法が好ましい。
【0022】
スピンコート法で成膜する際の塗布溶剤としては、基板へのダメージを与えない溶剤が好ましい。好ましい溶剤としては、例えば、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、テトラフロロプロパノール等のアルコール系溶剤が挙げられる。
【0023】
記録層を成膜する際に、必要に応じて、バインダーを併用することもできる。好ましいバインダーとしては、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ケトン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。又、記録特性などの改善のために他の色素を添加することもできる。記録層の膜厚は変調度や反射率に影響するが、本発明においては40nm〜300 nm、好ましくは60nm〜200 nmである。
【0024】
記録層を基板の上に成膜する際に、基板の耐溶剤性や反射率、記録感度等を改良するために、基板の上に無機物やポリマーからなる層を設けても良い。
【0025】
本発明においては、前記記録層の上に直接に、あるいは、他の層を介して反射層を設ける。反射層としては、金、銀、アルミニウム、銅、白金等の金属やこれらの金属を含有する合金が用いられるが、反射率や耐久性の点から金、アルミニウム、銀またはこれらの金属を主成分とする合金が好ましい。反射層の膜厚は通常40nm〜300 nm、好ましくは60nm〜200 nmである。反射層を成膜する方法は、例えば真空蒸着、スパッタ法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
【0026】
本発明においては、反射率、変調度等の特性を改良するために、前記した色素を含有する記録層と反射層の間に光干渉層を設けることもできる。光干渉層を形成する材料としては、無機誘電体、ポリマーや色素等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、対物レンズの開口数が大きいので、収差を小さくするために基板の厚みは0.5 〜0.8 mm程度が好ましい。この際、媒体の強度や機械特性の向上のために、接着剤を用いて2枚を貼り合わせて供されてもよい。貼り合わせに当たっては、反射層上に保護層を成膜することなしに、又は保護層を成膜した後、貼り合わせることができる。保護層としては、紫外線硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化性エポキシ樹脂、シリコーン系ハードコート樹脂等が用いられる。又、貼り合わせる際の接着剤としては紫外線硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化性エポキシ樹脂、ホットメルト接着剤等が用いられる。
【0028】
このようにして得られた本発明の光記録媒体は、レーザー光を記録層に集束することによりビーム径の割には、はるかに高密度に記録や再生を行うことができる。記録する際の信号としては、例えばCDやDVD等に用いられている変調信号が、本発明の効果を達成する上で好ましい。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の実施の態様はこれにより限定されるものではない。
(実施例1)
厚さ 0.6mm、直径 120mmのスパイラル状のグルーブ(深さ145 nm、幅 0.30 μm、ピッチ0.74μm)を有する射出成形ポリカーボネート基板のグルーブを有する面に、この樹脂基板を回転させながら、下記式〔化4〕の2-(p−ジメチルアミノスチリル)-1,3,3- トリメチルインドリウム- アイオダイド色素の3.5 重量%テトラフロロプロパノール溶液を滴下し、基板上に実質的に色素のみからなる記録層を成膜した。記録層の膜厚は170 nmであった。
【0030】
【化4】
【0031】
この記録層の上に反射層として厚さ80nmの金薄膜をスパッターにより成膜した後この反射層の上に紫外線硬化接着剤を塗布した。この接着剤の上に前記したのと同じ0.6 mmの基板を重ね合わせ、高速で回転し余分の接着剤を除去した後紫外線を照射して貼り合わせた光記録媒体を製作した。
【0032】
この光記録媒体をターンテーブルに乗せ、2.8 m/sの線速で回転させながら、640 nmの発振波長を有する半導体レーザーとNAが0.64の対物レンズからなる光ヘッドを搭載したドライブを用いて、レーザービームを基板を通してグルーブ上の記録層に集束するように制御しながら、記録レーザーパワーを変化させながら最短ピット長が0.4 μmのCDと同じEFM 変調信号を記録した後、同じ装置を用いてレーザー出力を1 mWにして記録した信号の読み出しを行った。なお、読み出す際はイコライゼーション処理を施した。記録パワーが8.4 mWのレーザー出力の時が最もエラーレートが小さく(最適記録パワー)、エラーレートは5 ×10-4、又その際のジッターは、ピットの立ち上がりも立ち下がりもチャネルビットクロックの7 %であった。未記録部の反射率は52%、最長ピットの変調度は64%、最短ピットの変調度(I3/I11:最短ピットの振幅の最長ピットの振幅に対する割合)の0.24、クロストークは64%であり、きわめて良好な記録、再生ができた。又、再生波形には殆ど歪は観測されなかった。なお、この場合のWgは0.30r、Pは0.74rである。
【0033】
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
実施例1において〔表1〕に示すグルーブ形状の基板を用いる以外は実施例1と同じ方法で媒体を作り、評価した。結果は〔表2〕にまとめた。〔表2〕から明らかなように、本発明の実施例においては極めて良好な記録、再生ができたが、比較例においてはクロストークが大きかったり、最短ピットの変調度が小さく、エラーレーレート及びジッターが大きく、うまく記録、再生ができなかった。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
(実施例5〜8)
記録層に用いる色素として下記式〔化5〕に示されたA〜Dのスチリル色素と、トラックピッチ0.8 μm、グルーブ幅0.35μm、深さ170 nmの基板を用いる以外は実施例1と同じ方法で媒体を作り評価した。但し、NAが0.60の対物レンズからなる光ヘッドを搭載したドライブを用いた。結果は〔表3〕にまとめた。なお、この場合のWgは0.33r、Pは0.75rである。
【0037】
【化5】
【0038】
【表3】
【0039】
【発明の効果】
本発明の実施例及び比較例から明らかなように、本発明においては、基板上に少なくともスチリル色素を含有する記録層、反射層を有してなる光記録媒体において、トラックピッチ及びグルーブ幅をλ/NAで表される記録ビーム径(λは記録波長、NAは対物レンズの開口数)に対して規定することにより、クロストークを可能な限り小さくでき、高密度で記録することができる。
Claims (1)
- グルーブを有する透明な基板上に、直接又は他の層を介して、レーザー光を吸収する色素を含有する記録層と、該記録層の上に直接又は他の層を介して金属の反射層を有する光記録媒体において、λ/NAで表される記録ビームの径をr[ここで、λは記録波長(μm)、NAは対物レンズの開口数を表し、λが0.635〜0.655μm、NAが0.60±0.05である]、基板のグルーブのピッチ(トラックピッチ)をP(μm)、グルーブの幅をWg(μm)とした際に、WgおよびPが下記式を満足し、
0.24r≦Wg≦0.35r
0.68r≦P≦0.83r
かつ、該記録層に含有される色素が下記式(1)〔化1〕で表されるスチリル色素であることを特徴とする高密度光記録媒体。
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JP31056996A JP3705877B2 (ja) | 1996-11-21 | 1996-11-21 | 光記録媒体 |
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- 1996-11-21 JP JP31056996A patent/JP3705877B2/ja not_active Expired - Fee Related
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