JP3704986B2 - 水素化nbr組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素化NBR組成物に関する。更に詳しくは、耐熱性および低温特性にすぐれた加硫物を与え得る水素化NBR組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は先に、水素化NBRが本来有する機械的強度(常態物性)や耐油性を殆んど損うことなく、それの耐熱性を改善させるために、水素化NBR100重量部、比表面積が約20〜200m2/gのホワイトカーボン約30〜150重量部および有機過酸化物約1〜10重量部を含有する水素化NBR組成物を提案している(特開平9-3246号公報)。
【0003】
ここで提案された組成物の主要成分である水素化NBRについて、分子主鎖中の炭素-炭素二重結合量やムーニー粘度ML1+4(100℃)についての言及はなされているが、結合アクリロニトリル量(AN量)についての言及はなく、その実施例で用いられている日本ゼオン製品ゼットポール2000のAN量は36重量%である。
【0004】
しかるに、このような高AN含量の水素化NBRを用いた上記組成物は、耐熱性にはすぐれているものの、低温特性については満足し得ないという問題点がみられた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、水素化NBRが本来有する機械的強度(常態物性)や耐油性を殆んど損うことなく、それの耐熱性および低温特性を改善せしめた水素化NBR組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、結合アクリルニトリル量が15〜30重量%の水素化NBR100重量部、比表面積が200m2/g以下のホワイトカーボン30〜100重量部および有機過酸化物1〜10重量部を含有する水素化NBR組成物によって達成され、好ましくはそこに更に多官能性不飽和化合物を1〜10重量部含有せしめてなる。
【0007】
【発明の実施の形態】
水素化NBRとしては、AN量が15〜30重量%、好ましくは20〜25重量%のものが用いられる。AN量がこれ以下では耐油性に劣り、一方これ以上になると低温特性の改善効果が得られない。アクリロニトリルとブタジエンとの共重合ゴムまたはそこに更にエチレン性不飽和化合物を共重合させた3元共重合ゴムであるNBRを水素添加し、分子主鎖中の炭素-炭素二重結合量を減じ、それのヨウ素価を30以下、好ましくは20以下とした水素化NBRが本発明では用いられる。また、そのムーニー粘度ML1+4(100℃)は、一般には約60〜100程度のものが用いられるが、100以上のものも用いることができる。実際には、例えば日本ゼオン製品ゼットポールシリーズのものなどで規定されたAN量のものが用いられる。
【0008】
ホワイトカーボン(補強性シリカ)としては、ハロゲン化けい酸または有機けい素化合物の熱分解法やけい砂を加熱還元し、気化したSiOを空気酸化する方法などで製造される乾式法ホワイトカーボン、けい酸ナトリウムの熱分解法などで製造される湿式法ホワイトカーボンなどであって、比表面積(窒素吸着法による)が約200m2/g以下、好ましくは約30〜130m2/gのものが用いられ、これらは一般にゴム工業用として上市されている市販品をそのまま用いることができる。比表面積がこれより小さいものは、ホワイトカーボンとしての補強性が得られなくなり、一方これより大きい比表面積をもつものは、ホワイトカーボンの粒子径があまりにも小さくなって補強性が強くなりすぎ、また組成物の粘度上昇により混練が困難となり、加硫物も非常に硬くなるようになる。
【0009】
これらのホワイトカーボンは、水素化NBR100重量部当り約30〜100重量部、好ましくは約50〜80重量部の割合で用いられる。これより少ない配合割合では、目的の一つとする耐熱性の改善効果が達成されず、一方これより多い割合で用いられると、組成物の粘度上昇によって混練が困難となるばかりではなく、ゴム硬度が非常に高くなり、またゴム弾性も失われるようになる。
【0010】
ホワイトカーボンを配合した水素化NBRの加硫は、有機過酸化物を用いて行わなければならない。
【0011】
有機過酸化物としては、例えばジ第3ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、第3ブチルクミルパーオキサイド、1,1-ジ(第3ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、第3ブチルパーオキシベンゾエート、第3ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、n-ブチル-4,4′-ジ(第3ブチルパーオキシ)バレレート等が、水素化NBR100重量部当り約1〜10重量部、好ましくは約2〜8重量部の割合で用いられる。有機過酸化物の配合量がこれ以下では、十分なる架橋密度の加硫物が得られず、一方これ以上の割合で用いられると、発泡して加硫成形できなかったり、あるいはそれが可能であってもゴム弾性や伸びが低下するようになる。
【0012】
組成物中には、以上の必須成分以外に、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート等の多官能性不飽和化合物を水素化NBR100重量部当り約1〜10重量部、好ましくは約2〜8重量部配合することが好ましい。多官能性不飽和化合物の配合は、耐熱性、特にその際の圧縮永久歪をより改善させるのに有効である。ただし、これ以上の割合で用いられると、ゴム弾性や伸びに低下がみられる。
【0013】
組成物中には、カーボンブラック、例えばオイルを不完全燃焼させて製造されるファーネスブラック、天然ガスを熱分解させて製造されるサーマルブラック等の一般に用いられているカーボンブラックを、水素化NBR100重量部当り約20重量部以下の割合で配合して用いることができる。後記比較例2の結果に示されるように、必要量のホワイトカーボンに代えてカーボンブラックを用いると、低温特性は良好であるものの耐熱性の低下は免れず、しかるに上記配合割合でのカーボンブラックのホワイトカーボンとの併用は、耐熱性を実質的に低下させることなく、低温特性を改善させる。
【0014】
この他、タルク、クレー、グラファイト、けい酸カルシウム等の充填剤、ステアリン酸、パルミチン酸、パラフィンワックス等の加工助剤、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の受酸剤、老化防止剤、可塑剤などゴム工業で一般的に用いられている各種配合剤が適宜添加されて用いられる。
【0015】
組成物の調製は、インタミックス、ニーダ、バンバリーミキサ等の混練機あるいはオープンロールなどを用いて混練することによって行われ、その加硫は、射出成形機、圧縮成形機、加硫プレス等を用い、一般に約150〜200℃で約3〜60分間程度加熱することによって行われ、更に必要に応じて約120〜200℃で約1〜24時間加熱する二次加硫も行われる。
【0016】
【発明の効果】
特定の結合アクリロニトリル量を有する水素化NBRにホワイトカーボンを配合し、それを有機過酸化物で加硫することにより、水素化NBRが本来有する機械的強度(加硫物性)や耐油性を殆んど損なうことなく、それの耐熱性および低温特性を同時に改善することができる。
【0017】
従って、本発明に係る水素化NBR組成物は、-40°〜+150℃といった温度条件下で使用されるシール部品、例えばOリング、ガスケット、パッキン、オイルシール等の成形材料として有効に用いられる。
【0018】
【実施例】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0019】
Figure 0003704986
以上の各配合成分をニーダおよびオープンロールで混練し、混練物について170℃、20分間のプレス加硫および160℃、3時間のオーブン加硫(二次加硫)を行ない、加硫シート(150×150×2mm)を得た。
【0020】
実施例2
実施例1において、トリアリルイソシアヌレート5重量部が追加して用いられた。
【0021】
比較例1
実施例1において、水素化NBRとしてAN36%、ヨウ素価11のものが用いられた。
【0022】
比較例2
実施例1において、補強性シリカ量が10重量部に、またFEFカーボンブラック量が60重量部にそれぞれ変更された。
【0023】
比較例3
実施例1において、補強性シリカ量が120重量部に変更すると、混練が不可能であった。
【0024】
比較例4
実施例1において、補強性シリカとして比表面積が300m2/gのものが用いると、混練が不可能であった。
【0025】
比較例5
実施例1において、ジクミルパーオキサイド量が0.5重量部に変更された。
【0026】
比較例6
実施例1において、ジクミルパーオキサイド量を12重量部に変更すると、混練は可能であったが、加硫成形できなかった。
【0027】
以上の実施例1〜2および比較例1〜2、比較例5で得られた加硫シートについて、次の各項目の測定が行われ、後記表に示されるような結果を得た。
常態物性:JIS K-6253, JIS K-6251準拠
耐熱性 :JIS K-6257準拠
(150℃に70時間または500時間放置後の硬さ変化)
JIS K-6262準拠
(150℃に70時間または500時間放置後の圧縮永久歪)
低温特性:ASTM D-1329準拠(TR-10値)
Figure 0003704986

Claims (3)

  1. 結合アクリルニトリル量が15〜30重量%の水素化NBR100重量部、比表面積が200m2/g以下のホワイトカーボン30〜100重量部および有機過酸化物1〜10重量部を含有してなる水素化NBR組成物。
  2. 更に多官能性不飽和化合物を1〜10重量部含有せしめた請求項1記載の水素化NBR組成物。
  3. 更にカーボンブラックを含有せしめた請求項1または2記載の水素化NBR組成物。
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