JP3704863B2 - 高温鋼板の冷却装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱間圧延された高温鋼板を板幅方向に均一に冷却するための高温鋼板の冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱間圧延された高温の鋼板は、一般に圧延直後の水冷中に、温度分布や鋼板の形状または表面状態の相違に起因して冷却むらが生じ、生成した冷却むらのために、冷却後の鋼板に、変形、残留応力、材質のバラツキなどの発生や、鋼板の変形による操業上のトラブルが生じやすい。更に、鋼板が変形した場合には、圧延後の精整工程においてプレスや矯正機等による成形作業が必要になるために、コスト高になることが避けられなかった。
【0003】
上述した問題を解決し、高温の鋼板を均一に冷却するための装置や方法が従来から種々提案されている。圧延後の高温の鋼板をオンラインで移送しながら冷却する手段としては、水平に移送される鋼板の上下面に対し、その板幅方向に冷却水を噴射して冷却することが一般的である。
【0004】
通常、熱間圧延直後の高温鋼板は、その板幅方向両端部の温度が中央部の温度よりも低い温度分布を有している。このような温度分布を是正するためには、板幅方向両端部に対する冷却効果が、その中央部に対する冷却効果よりも低くなるように冷却能を制御することが必要である。
【0005】
鋼板下面に対する冷却に関しては、下面に衝突後の冷却水は重力によって直ちに流下するので、冷却水を板幅方向両端部に当たらないように制御すれば、鋼板下面両端部の温度低下を防止することができる。
【0006】
しかしながら、鋼板上面に対する冷却に関しては、上面に噴射された冷却水が、鋼板上面上を板幅方向に流れ最終的には鋼板両端部から流出するので、鋼板上面の板幅方向両端部が過冷却になることは避けられなかった。
【0007】
そこで、このように、鋼板上面の板幅方向両端部に過冷却が生じないように制御する手段について、従来から種々研究されており、例えば、次のような技術が開示されている。
【0008】
(1) 特公昭59−13573号:
高圧のスプレー水を使用して、鋼板上の滞留水を誘導し排除する(以下、先行技術1という)。
【0009】
(2) 特開昭62−21414号、21415号:
底板の吸水孔から冷却水を吸い上げ且つ空気を噴射して、滲み出る冷却水を吹き飛ばし除去する(以下、先行技術2という)。
【0010】
(3) 特開昭55−153616号:
スリット状のラミナーノズルから供給されるラミナー冷却水のうち、板幅両端部に供給される冷却水の水量を、中央部に供給される冷却水の水量よりも少なくすることによって、鋼板端部の過冷却を防止する(以下、先行技術3という)。
【0011】
(4) 特開昭58−32511号:
鋼板端部のラミナーノズル直下に遮蔽物を設け、鋼板端部に流下する冷却水をカットして、鋼板端部の過冷却を防止する(以下、先行技術4という)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、先行技術1によっては、大量の冷却水を制御することが困難であり、先行技術2によっては、鋼板端部のように面積が広い部分では、吸水が追いつかず、また、底板を鋼板に近づけることが困難である。また、先行技術3および先行技術4においては、何れも鋼板上に流下した冷却水は、鋼板上面を流れ、鋼板の板幅方向端部から流出するので、鋼板両端部の過冷却を防止することは不可能である。
【0013】
このように、従来技術では、鋼板板幅方向両端部の過冷却を、適確には防止することができず、従って、冷却後の鋼板に、変形、残留応力、材質のバラツキなどの発生や、鋼板の変形による操業上のトラブル等の発生を防止することができなかった。
【0014】
従って、この発明の目的は、上述した問題を解決し、熱間圧延された高温鋼板を冷却するに際し、その板幅方向両端部の過冷却を防止し、冷却むらの生ずることなく均一に鋼板を冷却することができる、高温鋼板の冷却装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明は、熱間圧延された高温の鋼板を挟んで、その上下に1対の拘束ロールが一定ピッチで複数組設けられ、前記複数組の拘束ロールの各上ロール下流側には、前記鋼板の上面に向け冷却水を噴射するためのスリットノズルが、前記鋼板の板幅方向に設けられている高温鋼板の冷却装置において、前記鋼板の板幅方向両端部に、前記鋼板から所定間隔をあけ、その上方に鋼板と平行に設けられた水切り板と、前記鋼板と前記水切り板との間の隙間に、先端部を前記鋼板の両端部から中央部に向けて挿入された空気噴射用ノズルとからなる水切り機構が、前記スリットノズル付近の鋼板板幅方向両端部に位置して設けられ、前記水切り機構は、前記鋼板と前記水切り板との間の隙間に空気を噴射して、前記冷却水を前記水切り板の上面上を流すことに特徴を有するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、この発明を図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の装置の第1実施態様を示す概略斜視図、図2は水切り装置部分の拡大斜視図、図3は水切り装置部分の拡大断面図である。図面に示すように、鋼板1を挟んでその上下に1対の拘束ロール2,3が、鋼板1の移送方向に一定ピッチで複数組設けられており、上拘束ロール2の下流側の鋼板上面には、鋼板移送方向の上流側ロールから下流側ロールに向けたスリットノズル4が設けられ、そして、鋼板下面側には、水中に没した円管ノズル5が板幅方向に一定ピッチで複数個設けられている。
【0017】
このような冷却装置内を連続的に移送される高温の鋼板1に対し、鋼板上面側に設けられたスリットノズル4から所定量の冷却水を噴出させることにより鋼板1の上面は冷却され、そして、鋼管下面側に設けられた円管ノズル5から所定量の冷却水を噴射することにより、その随伴流で生じた液流によって、鋼板1の下面は冷却される。
【0018】
この発明の装置においては、スリットノズル4の噴出口付近における、鋼板1の板幅方向両端部に位置して、水切り機構6が設けられている。水切り機構6は、鋼板1から所定間隔をあけてその両端部上方に、鋼板1と平行に設けられた、所定の幅および長さを有する、表面が平坦な水切り板7と、鋼板1と水切り板7との間の隙間に、先端部を鋼板1の両端部から中央部に向けて挿入された、スリット状の空気噴射用ノズル8とからなっている。空気噴射用ノズル8は、水切り板7の長さ方向に連続して複数個設けられている。
【0019】
上述した構造の水切り機構6は、鋼板1の板幅および厚さに適応できるように、鋼板1の板幅方向に水平移動可能になっており、且つ、上部拘束ロール2に追従して上下移動可能になっている。このような水切り機構6は、鋼板1の移送方向に一定ピッチで複数組設けられている拘束ロール2,3の各組相互間の下流側複数段にわたって設けることが好ましい。
【0020】
鋼板1と水切り板7との間の隙間に先端部が挿入されたスリット状の空気噴射用ノズル8から噴射された空気は、図3に示すように、鋼板1の両端部の各々からその中央部に向けて流れ、水切り板7の端部において、スリットノズル4から鋼板1上に噴出した冷却水と衝突する。その結果、鋼板1の中央部から両端部に向けて流れる冷却水は、ノズル8から噴射された空気流により押し戻されて行き場を失い、水切り板7の表面上を流れ、水切り板7の端部から排出される。従って、鋼板1の両端部に冷却水が接触することはなく、鋼板両端部の過冷却が防止される。
【0021】
図4は、この発明の第2実施態様を示す水切り装置部分の拡大断面図である。この実施態様においては、鋼板1と水切り板7との間の隙間に、複数個の空気噴射用ノズル8が、一定間隔をあけて設けられている点が第1実施態様の装置と異なる。第2実施態様の装置によれば、一定間隔をあけて設けられた各空気噴射用ノズル8から、鋼板1と水切り板7との間の隙間に吹き込まれた空気は拡がって隙間のない空気流となり、鋼板1と水切り板7との間を流れ、水切り板7の端部において、スリットノズル4から鋼板1上に噴出した冷却水と衝突し、冷却水を水切り板7の表面上に流す。水切り板7の表面上を流れる冷却水は、一定間隔をあけて設けられた複数個の空気噴射用ノズル8の空気供給管9の間を流れ、水切り板7の端部から排出される。
【0022】
この発明の装置は、上述のように構成されているので、冷却される鋼板1の板幅に応じ、水流制御体6を、鋼板1の板幅方向両端部上に位置させることにより、鋼板板幅方向両端部の過冷却は防止され、鋼板を冷却むらの生ずることなく均一に冷却することができる。
【0023】
【実施例】
次に、この発明を実施例により、比較例と共に説明する。
〔実施例1〕
板幅4.3m、長さ30m、厚さ25mmの熱間圧延後の高温鋼板を、図1〜3に示した本発明の第1実施態様の冷却装置に40mpm の速度で通過させ、下記条件で冷却した。
【0024】
Figure 0003704863
上述した条件で冷却したときの鋼板の板幅方向における温度分布を図5に示す。図5において、(a) は冷却装置入側における鋼板の板幅方向における温度分布であり、(b) は鋼板を上述した条件で冷却装置に通して冷却し、20秒経過した後の板幅方向温度分布である。
【0025】
図5から明らかなように、鋼板の冷却開始前における板幅方向両端部の温度は中央部の温度よりも低かったが、冷却を開始して20秒経過後においては、板幅方向両端部の温度は中央部の温度とほぼ同じになった。
【0026】
〔実施例2〕
実施例1と同じ寸法の高温鋼板を、図4に示した本発明の第2実施態様の冷却装置に40mpm の速度で通過させ、下記条件で冷却した。
【0027】
Figure 0003704863
その結果、鋼板を実施例1と同様の温度分布で冷却することができた。
【0028】
〔比較例〕
スリットノズル4の噴出口付近に水切り機構6が設けられていないほかは、実施例1と同じ装置を使用し、板幅4.5m、長さ30m、厚さ25mmの鋼板を40mpm の速度で通過させ、下記条件で冷却した。
【0029】
拘束ロール :2000mmピッチ
鋼板上面冷却用スリットノズルの冷却水流量:2000l/m2min
鋼板下面冷却用円管ノズル:100mmピッチ
鋼板を上述した条件で冷却装置に通し、20秒経過した後の板幅方向温度分布を図5に(c) で示す。図5から明らかなように、鋼板の冷却開始前における板幅方向両端部の、中央部よりも低い温度分布は、冷却を開始して20秒経過後において更に拡大した。
【0030】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明の装置によれば、熱間圧延された高温鋼板を冷却するに際し、その板幅方向両端部の過冷却が防止され、板幅方向にむらの生ずることがなく、均一な冷却を行うことができ、歪みの発生が防止され、板幅方向両端部の過冷却による規格外れがなくなり製品歩留りが向上すると共に、鋼板の変形がなくなったことから、レベラーやプレスによる精製を行う必要がなく、従って、製造コストは引き下げられ、経済性が向上する等、多くの工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の装置の第1実施態様を示す概略斜視図である。
【図2】水切り装置部分の拡大斜視図である。
【図3】水切り装置部分の拡大断面図である。
【図4】この発明の装置の第2実施態様を示す水切り装置部分の拡大断面図である。
【図5】鋼板の板幅方向における温度分布を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼板
2 上拘束ロール
3 下拘束ロール
4 スリットノズル
5 円管ノズル
6 水切り機構
7 水切り板
8 空気噴射用ノズル
9 空気供給管

Claims (1)

  1. 熱間圧延された高温の鋼板を挟んで、その上下に1対の拘束ロールが一定ピッチで複数組設けられ、前記複数組の拘束ロールの各上ロール下流側には、前記鋼板の上面に向け冷却水を噴射するためのスリットノズルが、前記鋼板の板幅方向に設けられている高温鋼板の冷却装置において、
    前記鋼板の板幅方向両端部に、前記鋼板から所定間隔をあけ、その上方に鋼板と平行に設けられた水切り板と、前記鋼板と前記水切り板との間の隙間に、先端部を前記鋼板の両端部から中央部に向けて挿入された空気噴射用ノズルとからなる水切り機構が、前記スリットノズル付近の鋼板板幅方向両端部に位置して設けられ、前記水切り機構は、前記鋼板と前記水切り板との間の隙間に空気を噴射して、前記冷却水を前記水切り板の上面上を流すことを特徴とする、高温鋼板の冷却装置。
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