JP3856052B2 - 高温厚鋼板の冷却装置及び高温厚鋼板の冷却方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間圧延された高温鋼板を冷却する装置及び冷却方法であって、冷却中の鋼板のC反りを防止し、高温鋼板の均一冷却を可能とする冷却装置及び冷却方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、熱間圧延された高温の鋼板は、圧延直後の水冷中に冷却ムラが生じ易い。この冷却ムラは、冷却後に鋼板の変形や残留応力、材質のバラツキを引き起こすと共に、鋼板を変形させ、操業上のトラブルを発生させやすい。さらに、変形した鋼板は、後にプレスや矯正機によって変形を取り除く精整行程を必要とするため、コスト上不利になってきた。そこで、従来から、冷却ムラをなくすため、いわゆる均一な冷却法が種々提案されてきた。
【0003】
圧延後の高温の鋼板をオンラインで冷却するに際しては、水平の状態で、その上下から冷却水を注水して冷却を施すことが一般的である。特に、近年、冷却と圧延を組み合わせた制御圧延や、オンラインで鋼板を冷却する制御冷却に関する技術が開発されているが、これらの技術の進歩に伴い、高精度の温度制御、特に冷却停止温度制御が益々重要になってきている。
【0004】
ところが、厚鋼板では製品サイズが大きく幅が5mにも及ぶ場合があり、さらに板厚が厚いために、冷却するには多量の冷却水が必要である。よって、この冷却水を効率的に利用するためには、冷却装置出側でこの冷却水をせきとめていかに水切りを行うか、さらにこのせきとめた冷却水をいかに速やかに板端部から流出させるかが重要な問題となっている。
【0005】
これらの問題を解決するため、従来から鋼板の水切り装置に関して種々の研究がなされており、例えば、次のような技術が提案されている。
【0006】
実開昭53−39508号公報には、鋼板の上面に向けてエアノズルを上下移動自在に配置して、噴射するエアによって水切りを行う技術が開示されている。
【0007】
特開平7−9023号公報には、テーブルローラ上を移送される鋼板の1側方に設けられた噴射ノズルから鋼板の幅方向に高圧のスプレー水を噴射し、鋼板上に滞留している残水を鋼板の他の側端面から排除する方法が開示されている。
【0008】
また、実開昭58−125611号公報、実開昭59−161062号公報には、鋼板を上下に設けたゴムロールにより挟んで押圧して水切りを行う方法が開示されている。
【0009】
さらに、特開昭60−206516号公報、実開平7−33406号公報には、水切りロールを配置し、その下流側に鋼板の板幅方向に噴射ノズルを設け、鋼板の板幅方向中央部より両端部に向け、かつ水切りロールに向けて水を噴射し水切りをする技術が開示されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実開昭53−39508号公報に開示される技術のように上下移動自在にエアノズルを配置して噴射エアで水切りをするもの、及び特開平7−9023号公報に開示される技術のようにサイドから高圧のスプレー水を噴射して、滞留している冷却水を板端部から排除させる方法においては、幅の広い鋼板上に滞留する冷却水をせきとめ、かつ板端部へ押しやって排除することは困難であった。
【0011】
実開昭58−125611号公報、実開昭59−161062号公報に記載される技術、特開昭60−206516号公報、実開平7−33406号公報に記載される技術には、以下のような問題点があった。
【0012】
すなわち、厚鋼板の冷却のように、鋼板を急速に冷却する場合には、鋼板の上面と下面の冷却が必ずしも同一とはならないことから、板幅方向にいわゆるC反りと称する変形が生じ易い。このC反りは、板幅、板厚、上下面の温度差、上下面の温度履歴の差等によってそり量や反りの方向が決まる。
【0013】
この様子を図4に示す。図4において、1は鋼板、2上拘束ロール、3は下拘束ロールである。一般に上面の冷却が強いと冷却装置内では図4(a)に示すように下に凸のC反りが発生しやすく、逆に下面の冷却が強いと図4(b)に示すように上に凸のC反りが発生する。
【0014】
前記各特許公報に開示されている発明をはじめとして、オンライン通過型で鋼板の冷却を施すに際しては、冷却水をせきとめる水切りロールを兼ねた複数のロールで鋼板を挟んで通板し、そのロール間に冷却水を注水して鋼板の冷却を行う方法が一般的である。このような方式の冷却装置において、前述したC反りが生じると、水切りロール(拘束ロール)と鋼板との間に隙間が生じ、その隙間から冷却水が漏洩して非冷却部分を過冷却してしまうという問題点が発生する。
【0015】
特に、図4(a)に示すように下に凸のC反りが発生した場合には、鋼板中央部の水切りロールと鋼板の隙間から冷却水が漏洩するため、冷却水が鋼板中央部に滞留してこの部分の過冷却を引き起こし、板幅方向の不均一冷却が避けられなかった。
【0016】
さらに、中央部に滞留した冷却水によって、鋼板上部中央部が冷却されるため、C反りが助長されてしまうという問題点があった。
【0017】
このように、水切りロールを上下に設けて水切りを行う従来のいずれの方法も、C反りのために十分な効果を果たすことができなかった。
【0018】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、高温鋼板の冷却装置においてC反りの発生を防ぎ、もって有効な水切りを行い、冷却ムラの発生しない冷却装置及び冷却方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、先端部と後端部が他の設備によって拘束されていない厚鋼板を複数組の上下拘束ロールで高温の挟み込んで拘束しながら搬送し、搬送途中において厚鋼板に上下から冷却水を注水し、上下拘束ロール間の上側面には搬送方向の上流側の上拘束ロールから下流側の上拘束ロールに向かって厚鋼板に沿って冷却水を流して、高温厚鋼板を冷却する高温厚鋼板の冷却装置であって、上下拘束ロール間のギャップを厚鋼板の厚み以下とし、隣り合う前記上下拘束ロールの間隔(ロールピッチ)をLとするとき、上拘束ロールの位置と下拘束ロールの位置を、高温厚鋼板のパスライン方向に0.02 L以上 100mm 以下ずらして配置したことを特徴とする高温厚鋼板の冷却装置(請求項1)により解決される。
【0020】
上拘束ロールの位置と下拘束ロールの位置がパスライン方向にずれていると、上拘束ロールよって、鋼板が下拘束ロールの上縁よりも下方に押し込まれる。その結果、鋼板が上下に折れ曲がりながら拘束ロール間を通過していくために剛性が大きくなる。よって、冷却のアンバランスに起因してC反りが発生しようとしても、大きな剛性のために板幅方向のC反りの発生を抑制することができる。
【0021】
この結果、拘束ロール(水切りロール)と鋼板との間に隙間が発生することが無く、確実な水切りが可能となる。
【0022】
さらに、上拘束ロールにバックアップロールを設けると(請求項2)、押し付け力により上拘束ロールが撓んで鋼板との間に隙間ができるのを避けることができ、確実に水切りができる。
【0023】
上下拘束ロールのずれ量は、鋼板1の通板に支障がなく、かつ、C反りの発生を防ぐことができるような量を適宜決定すれば良い。通常は、隣り合う上下拘束ロール2、3の距離(ロールピッチ)をLとすると、ずれ量100mm ≧Δx≧0.02L程度とすることが望ましく、Δx<0.02L では、十分C反りの発生を防ぐことができない。
【0024】
先端部と後端部が他の設備によって拘束されていない厚鋼板を複数組の上下拘束ロールで挟み込んで拘束しながら搬送し、搬送途中において厚鋼板に上下から冷却水を注水し、上下拘束ロール間の上側面には搬送方向の上流側の上拘束ロールから下流側の上拘束ロールに向かって厚鋼板に沿って冷却水を流して、高温厚鋼板を冷却するに際し、上下拘束ロール間のギャップを厚鋼板の厚み以下とし、隣り合う前記上下拘束ロールの間隔(ロールピッチ)をLとするとき、上拘束ロールの位置と下拘束ロールの位置を、高温厚鋼板のパスライン方向に0.02 L以上 100mm 以下ずらして高温の厚鋼板を拘束しながら冷却を行うことを特徴とする高温厚鋼板の冷却方法(請求項3)、及びこれに加え、上拘束ロールにバックアップロールを設け、バックアップロールにより上拘束ロールを押さえながら冷却を行うことを特徴とする高温厚鋼板の冷却方法(請求項4)においても同じ作用が期待できる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態の1例を示す図である。図1において、1は鋼板、2は上拘束ロール(水切りロール)3は下拘束ロール(水切りロール)4はスリットノズル、5は円管ノズル、6は油圧シリンダである。この冷却装置においては、20組の上拘束ロール2、下拘束ロール3の間を圧延直後の鋼板1が搬送されながら、上側をスリットノズル4からの冷却水により、下側を円管ノズル5からの冷却水によりオンラインで冷却される。図においては、上拘束ロールを3本分、冷却ゾーンを2ゾーン分示している。各ロールのピッチは1mである。
【0026】
各ロール2、3間の上側面には、鋼板搬送方向の上流側の上拘束ロール2から下流側の上拘束ロール2に向かって、鋼板1の進行方向にスリットノズル4から板幅1mあたり2m3 /min の冷却水を鋼板1に沿って流している。一方、下面は、100mmピッチで設け水中に没した円管ノズル5から、水を噴射し、その随伴流で生じた水流で冷却を施している。
【0027】
この20組の拘束ロール2、3において、下拘束ロール3は搬送ロールを兼ねており、固定式である。上拘束ロール2は直径200mmで、上下に昇降が可能であり、0.5 mmピッチで制御可能である。
【0028】
さらに、この上拘束ロール2と下拘束ロールの3のギャップは、鋼板1の厚み以下にセットされ、鋼板1が通過した際には、上拘束ロール2が油圧シリンダ6の押し付け力に抗して持ち上げられ、その反力により鋼板1に押し付け力がかかり、鋼板1が拘束されるようになっている。
【0029】
図2に、上拘束ロール2と下拘束ロール3の位置関係を模式的に示す。以下の図において、前出の図に示された構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。図2に示すように、上拘束ロール2の中心線は下拘束ロール3の中心線より、パスライン下流にΔx=100mmだけずれて配置されている。
【0030】
この実施の形態においては、Δxを100mmとしているが、このずれ量は鋼板1の通板に支障がなく、かつ、C反りの発生を防ぐことができるような量を適宜決定すれば良い。通常は、隣り合う上下拘束ロール2、3の距離(ロールピッチ)をLとすると、Δx≧0.02Lとすることが望ましく、特に、Δxを0.05〜1.5 Lとすることが望ましい。Δx<0.02L では、十分C反りの発生を防ぐことができない。
【0031】
また、あまりずれ量を大きくとりすぎると、鋼板1が上拘束ロール2によって下に曲げられ、下方に傾斜しすぎて下拘束ロール3にかみ込まなくなる恐れがあるので、ずれ量の上限値はこの関係を考慮して決定すべきである。
【0032】
上拘束ロール2と下拘束ロール3の位置ずれによって鋼板1に加わる板長手方向の歪みは、弾性変形範囲内であるので、冷却後にこれに起因する歪みが残ることはない。
【0033】
なお、本実施の形態においては、上拘束ロール2を下拘束ロール3に対してパスラインの下流側にシフトして設置したが、逆にパスライン上流側にシフトして設置してもよい。
【0034】
本発明の別の実施の形態の例を図3に示す。図3において、図1と異なるのは、上拘束ロール2の上方に接して、その中央部にバックアップロール7が設けられていることである。バックアップロール7は、圧延機においては周知のものであるが、この場合は、上拘束ロール2が鋼板1からの反力を受けて撓むのを、上から押さえつけることで防ぐ役割を果たす。バックアップロールの胴長は、この実施の形態の場合、500mm、直径は250mmである。
【0035】
この冷却装置においては、20組の上拘束ロール2、下拘束ロール3の間を圧延直後の鋼板1が搬送されながら、上側をスリットノズル4からの冷却水により、下側を円管ノズル5からの冷却水によりオンラインで冷却される。図においては、上拘束ロールを3本分、冷却ゾーンを2ゾーン分示している。各ロールのピッチは1mである。
【0036】
各ロール2、3間の上側面には、板搬送方向の上流側の上拘束ロール2から下流側の上拘束ロール2に向かって、鋼板の進行方向にスリットノズル4から板幅1mあたり2m3 /min の冷却水を鋼板に沿って流している。一方、下面は、100mmピッチで設け水中に没した円管ノズル5から、水を噴射し、その随伴流で生じた水流で冷却を施している。
【0037】
この20組の拘束ロール2、3において、下拘束ロール3は搬送ロールを兼ねており、固定式である。上拘束ロール2は直径200mmで、上下に昇降が可能であり、0.5 mmピッチで制御可能である。
【0038】
さらに、この上拘束ロール2と下拘束ロールの3のギャップは、鋼板1の厚み以下にセットされ、鋼板1が通過した際には、上拘束ロール2が油圧シリンダ6の押し付け力に抗して持ち上げられ、その反力により鋼板1に押し付け力がかかり、鋼板1が拘束されるようになっている。
【0039】
バックアップロール7を設けることは、板厚の厚い鋼板1を冷却する際に有効である。すなわち、板幅4.3 m、長さ30m、厚み40mmの高温鋼板を冷却する場合を考え、ロールのずれ量Δx=100mmとすると、必要な拘束力は16Tとなる。この拘束力を直径200mmの上拘束ロール2の両端の油圧シリンダ6から加えると、ロールが撓んで鋼板1と上拘束ロール2との間に隙間が生じる。この例では、隙間が5.6 mmに達すると計算された。よって、このような厚い鋼板1を冷却する場合には、バックアップロール7を設けることにした。
【0040】
バックアップロール7の必要、不必要の判断は、板幅と所要拘束力、上拘束ロール2の直径等によって決まるが、上拘束ロール2の両端から荷重を加えた場合のロールのたわみ量を弾性力学的に求め、この数字が数mm以上である場合にはバックアップロールを設ける必要がある。
【0041】
【実施例】
(実施例1)
図1に示す冷却設備を用い、圧延直後の板幅4.3 m、長さ30m、厚み25mmの高温鋼板を、搬送速度40mpmで通過させて冷却した。本実施例では、所要の冷却速度を得るために、各ロール間の冷却水を1ゾーンおきにオン・オフさせた。また、円管ノズルも1バンクおきにオン・オフせさた。すなわち、スリットノズルの冷却水を2本に1本停止し、円管ノズルのバンクも1バンクおきに停止して間欠的な冷却を実施した。なお、上下拘束ロール間のギャップは、板厚−1.5 mm、すなわち23.5mmに設定した。
【0042】
又、上拘束ロールの拘束力は弾性計算によって以下のように求めて設定した。鋼板の次ロール到達点での下方への撓み量が鋼板の噛み込みを阻害しない程度の量、ここでは50mm以下となるように約6Tと設定した。この拘束力は大きいほうがC反りを防止する点で好ましいが、大きすぎると通板不良発生の恐れがある。例えば同じ板幅4.3 mであれば、板厚12mmの場合には、拘束力は0.8 T程度が好ましい。
【0043】
実施した結果、各冷却水が流れている冷却ゾーンの下流側ロールの後側に冷却水が漏洩する現象は見られなかった。すなわち、C反りが抑制されていた。
又、通板時にしたロールとの衝突で傷が発生することはなく、安定した通販を実現できた。
【0044】
この時、入側の鋼板温度分布を走査型の放射温度計で計測したところ、850℃±15℃であった。この冷却装置の下流側20mの位置で同じく走査型の放射温度計でその温度分布を計測したところ、500℃±10℃であって、冷却ムラの発生はなかった。
【0045】
この時、板幅方向に大きなC反り変形はなく、冷却床での冷却後も特に大きな変形が発生せず、特別な矯正を行うことなく製品が得られた。又、冷却後に板幅方向の硬度分布を調べたところ、特に大きな硬度分布差はなかった。このことから、大きな冷却ムラはなかったと判定される。
【0046】
(実施例2)
図3に示す冷却装置により、圧延直後の板幅4.3 m、長さ30m、厚み40mmの高温鋼板を冷却した。本実施例では、所要の冷却速度を得るために、各ロール間の冷却水を1ゾーンおきにオン・オフさせた。また、円管ノズルも1バンクおきにオン・オフせさた。すなわち、スリットノズルの冷却水を2本に1本停止し、円管ノズルのバンクも1バンクおきに停止して間欠的な冷却を実施した。上下拘束ロール間のギャップは、板厚−1.5 mm、すなわち38.5mmとした。
【0047】
この時、入側の鋼板温度分布を走査型の放射温度計で計測したところ、850℃±10℃であった。この冷却装置の下流側20mの位置で同じく走査型の放射温度計でその温度分布を計測したところ、500℃±10℃であって、冷却ムラの発生はなかった。
【0048】
この時、板幅方向に大きなC反り変形はなく、冷却床での冷却後も特に大きな変形が発生せず、特別な矯正を行うことなく製品が得られた。又、冷却後に板幅方向の硬度分布を調べたところ、特に大きな硬度分布差はなかった。このことから、大きな冷却ムラはなかったと判定される。
【0049】
(比較例)
図1と同じ冷却設備を用い、上拘束ロール2と下拘束ロール3の中心軸を一致させて冷却を行った。すなわち、この比較例においては、上拘束ロール2と下拘束ロール3の中心位置がパスライン方向にずれていない。その他の条件は、実施例1の条件と同じとした。
【0050】
すなわち、圧延直後の板幅4.3 m、長さ30m、厚み25mmの高温鋼板を、搬送速度40mpmで通過させて冷却した。本比較例においても、所要の冷却速度を得るために、各ロール間の冷却水を1ゾーンおきにオン・オフさせた。また、円管ノズルも1バンクおきにオン・オフせさた。すなわち、スリットノズルの冷却水を2本に1本停止し、円管ノズルのバンクも1バンクおきに停止して間欠的な冷却を実施した。なお、上下拘束ロール間のギャップは、板厚−1.5 mm、すなわち23.5mmに設定した。
【0051】
これに加えて、ロールの搬送方向の下流側には、板端部にヘッダーを設け、そのヘッダーに取り付けられたスプレーノズルから100リットル/minの水切り水を噴射した。
【0052】
この冷却装置においては、板幅方向中央部の上拘束ロールと鋼板との隙間から冷却水が漏洩し、隣接するゾーンへ流れ込んだ。この漏洩した冷却水の推量は多く、ロール後流側に置かれたスプレーノズルからの水きり水では完全に排除することは不可能であった。よって、この冷却水は常時鋼板の中央部に存在していたので、鋼板の中央部が選択的に過冷却されていた。
【0053】
この時、入側の鋼板温度分布を走査型の放射温度計で計測したところ、850℃±15℃であった。この冷却装置の下流側20mの位置で同じく走査型の放射温度計でその温度分布を計測したところ、400℃〜510℃であって、大きな冷却ムラの発生があった。この時、板幅方向にC反り変形が観察された。この板を冷却床へ搬送し、常温まで冷却したところ、形状不良が発生した。そこで、レベラー及びプレス矯正機でこの変形を除去する精整工程を必要とした。また、冷却後に板幅方向の硬度分布を調べたところ、板中央部に硬度の高い、いわゆる焼きムラが観察された。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては、上拘束ロールの位置と下拘束ロールの位置を、高温鋼板のパスライン方向にずらして配置しているので、鋼板が上下に折れ曲がりながら拘束ロール間を通過していくために剛性が大きくなって、C反りが防止される。
【0055】
よって、厚鋼板を連続的に冷却するオンライン冷却装置において、冷却ムラのない均一な冷却が可能となる。よって、鋼板内の材質のバラツキが少なく、均質な鋼板を安定して製造することができる。加えて、冷却中及び冷却後に大きな鋼板の変形がなく、通板トラブルが発生しないため、連続的な操業を阻害しない。
【0056】
さらに、冷却後も大きな熱歪みが発生しないため、レベラーやプレスによる精整工程が不要であって、低コストの厚鋼板製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す図である。
【図2】上拘束ロールと下拘束ロールの位置関係を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施の形態の他の例を示す図である。
【図4】鋼板の冷却中に発生する板の反りを模式的に示した図である。
【符号の説明】
1 鋼板
2 上拘束ロール
3 下拘束ロール
4 スリットノズル
5 円管ノズル
6 油圧シリンダ
7 バックアップロール
Claims (4)
- 先端部と後端部が他の設備によって拘束されていない厚鋼板を複数組の上下拘束ロールで挟み込んで拘束しながら搬送し、搬送途中において厚鋼板に上下から冷却水を注水し、上下拘束ロール間の上側面には搬送方向の上流側の上拘束ロールから下流側の上拘束ロールに向かって厚鋼板に沿って冷却水を流して、高温厚鋼板を冷却する高温厚鋼板の冷却装置であって、上下拘束ロール間のギャップを厚鋼板の厚み以下とし、隣り合う前記上下拘束ロールの間隔(ロールピッチ)をLとするとき、上拘束ロールの位置と下拘束ロールの位置を、高温厚鋼板のパスライン方向に0.02 L以上 100mm 以下ずらして配置したことを特徴とする高温厚鋼板の冷却装置。
- 上拘束ロールにバックアップロールを設けたことを特徴とする請求項1に記載の高温厚鋼板の冷却装置。
- 先端部と後端部が他の設備によって拘束されていない厚鋼板を複数組の上下拘束ロールで挟み込んで拘束しながら搬送し、搬送途中において厚鋼板に上下から冷却水を注水し、上下拘束ロール間の上側面には搬送方向の上流側の上拘束ロールから下流側の上拘束ロールに向かって厚鋼板に沿って冷却水を流して、高温厚鋼板を冷却するに際し、上下拘束ロール間のギャップを厚鋼板の厚み以下とし、隣り合う前記上下拘束ロールの間隔(ロールピッチ)をLとするとき、上拘束ロールの位置と下拘束ロールの位置を、高温厚鋼板のパスライン方向に0.02 L以上 100mm 以下ずらして高温の厚鋼板を拘束しながら冷却を行うことを特徴とする高温厚鋼板の冷却方法。
- 上拘束ロールにバックアップロールを設け、バックアップロールにより上拘束ロールを押さえながら冷却を行うことを特徴とする請求項3に記載の高温厚鋼板の冷却方法。
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