JP3704786B2 - 偏光板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は偏光板に関する。詳しくは、偏光フィルムと保護フィルムとの接着性および耐湿熱性に優れた偏光板に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、一般にポリビニルアルコール(以下、PVAと称する)にヨウ素を吸着配向せしめたヨウ素系フィルムや、PVAに二色性染料を吸着配向せしめた染料系フィルムを偏光子として用い、この偏光子フィルムの少なくとも片面にPVA系樹脂の水溶液(PVA系接着剤)を用いて形成された接着剤層を介して、トリアセチルセルロース(TAC)等の保護フィルムを貼合した構成の偏光板が用いられている。このような構成の偏光板には、湿熱下で長時間使用した場合、保護フィルムと偏光子の端面が剥離しやすいといった問題がある。
【0003】
これを解決するため、偏光子と保護フィルムをPVA系接着剤を用いて貼合した後、
90〜110℃の温度で加熱乾燥することにより、耐湿熱性を改良した偏光板が提案されている。また特開昭 56-50301 号公報には、保護フィルム表面をケン化処理して接着力を強固にし、耐湿熱性を向上させる方法が提案されている。特開昭 61-245107号公報には、偏光フィルムを接着剤で一度処理した後、再度接着剤を介して保護フィルムを接着することによって、接着強度を向上させる方法が提案されている。さらに、特開平 7-198945 号公報には、アセトアセチル基含有PVA系樹脂と架橋剤を含む樹脂溶液を接着剤として用い、耐久性および耐湿熱性に優れた偏光板とすることが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の偏光板は、耐湿熱性および耐久性において、未だ十分とは言い難い。本発明者らは、偏光フィルムと保護フィルムとの接着性および耐湿熱性の向上を図るべく、鋭意検討した結果、接着剤として水溶性エポキシ化合物を特定量含有するPVA系接着剤を用いることにより、偏光フィルムと保護フィルムとの接着性および耐湿熱性に優れた偏光板が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムの少なくとも片面に、ポリビニルアルコール系接着剤層を介して保護フィルムが貼合された偏光板であって、接着剤層が水溶性エポキシ化合物を含有したポリビニルアルコール系接着剤からなり、接着剤中の水溶性エポキシ化合物とポリビニルアルコール系樹脂の比が(5〜50)/100(固形分重量比)であることを特徴とする偏光板である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。PVA系偏光フィルムとしては、従来公知のPVA系偏光フィルムが用いられる。例えば、PVA系フィルムにヨウ素を吸着配向せしめたヨウ素系偏光フィルム、PVA系フィルムに二色性染料を吸着配向せしめた染料系偏光フィルム、これらのフィルムを部分的に脱水処理したポリエン系偏光フィルムなどを挙げることができる。PVA系フィルムとしては、PVAフィルム、ポリビニルブチラールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)共重合体ケン化フィルムなどが挙げられる。PVA系偏光フィルムの厚みは、例えば、約10〜50μm 程度である。
【0007】
保護フィルムとしては、例えば、表面をケン化処理したトリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)等の光学透明性に優れたアセチルセルロース系フィルムが挙げられる。保護フィルムの厚みは、例えば、約10〜200μm 程度である。
【0008】
PVA系接着剤は、例えば、PVA系樹脂を水に溶解させた後、その水溶液に水溶性エポキシ化合物を溶解して調製される。PVA系樹脂と水の比は特に限定されるものでないが、例えば、PVA系樹脂/水が(1〜10)/100(重量比)程度、好ましくは(1〜5)/100(重量比)である。PVA系樹脂としては、例えば、カルボキシル基、アセトアセチル基、メチロール基、アミノ基等で変性されたものが用いられるが、特に、カルボキシル基変性PVAが好ましい。また、PVA系樹脂としては、分子量40,000〜120,000のPVA系樹脂を用いることが好ましい。
【0009】
水溶性エポキシ化合物としては、ポリアミドとエピクロルヒドリンの反応生成物を用いる。このポリアミドとエピクロルヒドリンの反応生成物は、具体的には、ジエチレントリアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキルポリアミン化合物と、アジピン酸等のアルキルジカルボン酸との反応で得られるポリアミドに、エピクロルヒドリンを反応させて得られる反応生成物である。かかる水溶性エポキシ化合物として、例えば、ポリアミドエポキシ系添加剤(住友化学工業(株)製のスミレーズ レジン650やスミレーズ レジン675)、ポリアミドエピクロルヒドリン(日本PMC社製のWS−525)等が市販されている。
【0010】
PVA系接着剤中の水溶性エポキシ化合物とPVA系樹脂の比は、一般には水溶性エポキシ化合物/PVA系樹脂で(5〜100)/100(固形分重量比)の範囲から選び得るが、本発明では(5〜50)/100(固形分重量比)とする。水溶性エポキシ化合物の量がこの範囲より少ないと、保護フィルムの剥離を防止する効果が少なくなり、また多くなりすぎると、接着剤層が脆くなるので、好ましくない。
【0011】
水溶性エポキシ化合物を含有するPVA系接着剤には、接着剤の硬化促進のため、塩化亜鉛、塩化スズ、ホウフッ化亜鉛、三級アミン、四級アンモニウム塩、イミダゾール化合物などを添加してもよい。
【0012】
PVA系偏光フィルムと保護フィルムを貼合する方法としては、例えば、PVA系偏光フィルムまたは保護フィルムの表面にPVA系接着剤を均一に塗布し、塗布面にもう一方のフィルム(保護フィルムまたはPVA系偏光フィルム)を重ねてロール等により貼合し、乾燥する方法が挙げられる。PVA系接着剤は、通常、調製後15℃〜40℃の温度下で塗布され、貼合温度は通常15〜30℃の範囲である。乾燥温度は通常30〜85℃の範囲、好ましくは40〜80℃の範囲である。
【0013】
かくして、水溶性エポキシ化合物とPVA系樹脂の比が(5〜50)/100(固形分重量比)であるPVA系接着剤からなる接着層を介して、偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された本発明の偏光板が得られる。
【0014】
【発明の効果】
本発明の偏光板は、湿熱条件下での偏光フィルムと保護フィルムの端面剥離の問題がなく、耐久性に優れている。このため、従来の偏光板では使用できなかった湿熱条件下でも使用することができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示して詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
実施例1
厚さ75μm のPVAフィルム(平均重合度1,700、ケン化度99.9%以上)に一軸延伸を施し(延伸倍率5倍)、緊張状態に保ったまま、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含む水溶液(重量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水= 0.05/5/100)に60秒間浸漬した。次に、ヨウ化カリウムおよびほう酸を含む65℃の水溶液(重量比でヨウ化カリウム/ほう酸/水=2.5/7.5/100)に300秒浸漬した。25℃の純水で20秒水洗した後、50℃で乾燥して、PVA系偏光フィルムを得た。
【0017】
PVA系樹脂((株)クラレ製のKL−318、ケン化度87.8%、分子量85,000)の5重量%水溶液に水溶性エポキシ化合物であるポリアミドエピクロルヒドリン(日本PMC社製のWS−525)の25重量%水溶液を加えてPVA系接着剤(固形分重量比でKL−318/WS−525=100/10)とした。28℃の雰囲気下で、上記偏光フィルムの両面にこのPVA系接着剤を塗布し、保護フィルム(表面にケン化処理が施された厚さ50μm のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックSH−50))を両面に貼合した。そして、80℃で6分乾燥して偏光板を得た(接着剤層の厚み約0.1μm)。この偏光板の外観は良好であった。
【0018】
得られた偏光板の片面に粘着剤を塗布し、この粘着剤を介してガラス板に偏光板を貼合し、偏光板の端面剥離の試験サンプルとした。ガラス板に貼合した偏光板を60℃、90%RHの湿熱下で240時間放置した後、端面を観察したところ、保護フィルムとPVA系偏光フィルムの端面剥離は観察されなかった。
【0019】
実施例2
ヨウ素およびヨウ化カリウムを含む水溶液に代えて、二色性染料と芒硝を含む60℃の水溶液(重量比で二色性染料/芒硝/水=0.5/40/10,000)を用い、そこに5分間浸漬したこと、また、ヨウ化カリウムおよびほう酸を含む水溶液に代えて、ほう酸水溶液(重量比でほう酸/水=150/2,000)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、PVA系偏光フィルムを得た。その後、厚さ50μm のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックSH−50)に代えて、厚さ80μm のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックUV−80)を用いた以外は、実施例1と同様にして偏光板を得た。さらに実施例1と同様にして、端面剥離の試験サンプルを作製した。ガラス板に貼合した偏光板を60℃、90%RHの湿熱下で240時間放置した後、端面を観察したところ、保護フィルムとPVA系偏光フィルムの端面剥離は観察されなかった。
【0020】
実施例3
PVA系接着剤の組成比(KL−318/WS−525)を、固形分重量比で100/5.5 とした以外は、実施例2と同様にして偏光板を得、これから剥離試験用サンプルを作製した。ガラス板に貼合した偏光板を60℃、90%RHの湿熱下で240時間放置した後、端面を観察したところ、保護フィルムとPVA系偏光フィルムの端面剥離は観察されなかった。
【0021】
比較例1
ポリアミドエピクロルヒドリン(日本PMC社製のWS−525)を加えず、PVA系樹脂((株)クラレ製のKL−318)の5重量%水溶液を単独でPVA系接着剤として用いた以外は、実施例2と同様にして偏光板を得、これから端面剥離の試験サンプルを作製した。ガラス板に貼合した偏光板を60℃、90%RHの湿熱下で240時間放置した後、端面を観察したところ、保護フィルムとPVA系偏光フィルムの端面剥離が観察された。
【0022】
比較例2
PVA系接着剤の組成比(KL−318/WS−525)を、固形分重量比で100/2.8 とした以外は、実施例2と同様にして偏光板を得、これから剥離試験用サンプルを作製した。ガラス板に貼合した偏光板を60℃、90%RHの湿熱下で240時間放置した後、端面を観察したところ、保護フィルムとPVA系偏光フィルムの端面剥離が観察された。
Claims (5)
- ポリビニルアルコール系偏光フィルムの少なくとも片面に、ポリビニルアルコール系接着剤層を介して保護フィルムが貼合された偏光板であって、該接着剤層は、ポリアミドとエピクロルヒドリンとの反応生成物である水溶性エポキシ化合物を含有したポリビニルアルコール系接着剤からなり、接着剤中の水溶性エポキシ化合物とポリビニルアルコール系樹脂の比が(5〜50)/100(固形分重量比)であることを特徴とする偏光板。
- ポリビニルアルコール系偏光フィルムが10〜50μm の厚みを有する請求項1記載の偏光板。
- 保護フィルムが表面をケン化処理したトリアセチルセルロースである請求項1または2記載の偏光板。
- 保護フィルムが10〜200μm の厚みを有する請求項1〜3のいずれかに記載の偏光板。
- ポリビニルアルコール系接着剤のポリビニルアルコール系樹脂がカルボキシル基変性ポリビニルアルコールである請求項1〜4のいずれかに記載の偏光板。
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