JP3703111B2 - セメント製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、セメント製造方法及び製造装置、特に、都市ゴミ焼却灰などの塩素を多量に含む原料を用いたセメント及びセメント系固化材の製造において、コーティングトラブルやダイオキシンの再生成を抑制したセメント製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、社会の進展に伴い、一般廃棄物及びこれらを焼却処理する際に発生する焼却灰が著しく増加している。都市ゴミ焼却灰のほとんどは埋立て処分されているが、最終処分場である埋立地の不足や、埋立地周辺土壌への有害物質の溶出等が深刻な社会問題になっている。
【0003】
都市ゴミ焼却灰の化学成分は発生源及び季節により多少変化するが、SiO2 、Al23 、CaO、アルカリ(Na2 OまたはK2 O)、塩素、重金属等を含む。このような組成物を有する都市ゴミ焼却灰は、従来、セメントの増量材として混合使用したり、透水性のブロック用骨材又は増量材として一部使用又は開発されつつあるが、現状では大部分がそのまま埋立て処分されている。又、都市ゴミ焼却灰を溶融処理して重金属の溶出が発生しないような形で減容化処分されるが、この場合も大部分は埋立て処分されている。
【0004】
さらには、これら都市ゴミ焼却灰をセメント焼成原料として積極的に活用することも提案されている(特公昭59−11545号、特開昭49−131959号)。原料として利用する都市ゴミ焼却灰には、塩素が5〜10重量%含有されており、この値は、通常のセメント原料中における塩素含有量の数百倍に相当する。この塩素は、他の原料成分と結合し、アリナイトやカルシウムクロロアルミネートなどの主要なセメントクリンカ鉱物を形成するが、一方で、クリンカ鉱物を形成する塩素の割合は多くなく、残りの塩素は、キルン内で揮散し、排気ガスと共にキルン下流側に導かれる。この間、特に、キルン窯尻に続くダクトや予熱装置において、塩素化合物がセメント原料と接触して凝縮し、ダクト内壁面上にコーティングを形成する。コーティングを形成すると、通風障害やダクト詰り等を引起こし、操業中断に至る場合もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなコーティング付着問題に対して、従来、運転中に高圧空気や高圧水を吹付けてコーティングを除去したり、又、人的に突棒等を利用してコーティングを掻落すことが行われている。しかしながら、上記方法によるコーティング除去作業は、いずれも厳しい環境での危険作業であるほか、コーティング物の系内への脱落は、キルンの安定運転を阻害する。
【0006】
また、都市ゴミ焼却灰は少量のダイオキシン生成物を有する。一般に、セメント製造においては、キルンによりダイオキシンの分解温度以上で操業されるために、ダイオキシン生成を特に問題にする必要はない。しかし一方で、ダイオキシンは、300℃付近、470℃付近で合成されるので、排ガス中のダイオキシンの再生成には注意する必要がある。
【0007】
この発明は上記事情に鑑み、簡単にしかも効率良く、コーティングトラブルを解消し、キルンの安定運転を可能とすると共に、ダイオキシンの再生成を抑制したセメント製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、この発明のセメント製造方法によれば、都市ゴミ焼却灰などの塩素含有原料をキルンで焼成するセメント及びセメント系固化材の製造において、キルン窯尻の排ガスを温度300℃以下に急冷することによりダイオキシンの再生成を抑制することを特徴とする。急冷は、空冷、若しくは水冷が好まし
【0009】
さらに、キルン窯尻の排ガスに炭カル、ドロマイト、生石灰、又は、消石灰の少なくとも一種を吹き込み急冷することができる。
【0010】
また、この発明のセメント製造装置によれば、都市ゴミ焼却灰などの塩素含有原料をキルンで焼成するセメント及びセメント系固化材の製造において、キルン窯尻に連通するハウジング若しくは排気ダクトに排ガスを温度300℃以下に急冷することによりダイオキシンの再生成を抑制する急冷手段を設けたことを特徴とする。排ガスの急冷手段としては、空気、若しくは水の吹き込み手段のほか、炭カル、ドロマイト、生石灰、又は、消石灰の少なくとも一種の吹き込み手段とすることができる。
【0011】
急冷手段を設けたハウジング若しくは排気ダクトに連通する排ガス下流側の排気ダクト、あるいは、急冷手段を設けた排気ダクトに連通する排ガス上流側の排気ダクトに粗大粒子の重力沈降部を形成することが好適であり、重力沈降部は、垂直の排気ダクトに形成した拡大部であることが好ましい。
【0012】
またさらに、排気ダクトにダストの分級手段を連結し、該分級手段により、分級された粗粒ダストをキルンに導入する返却ダクトをさらに設けることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を図面に基いて説明する。図1において、都市ゴミ焼却灰、下水汚泥、その他産業廃棄物などに、従来周知のセメント原料である石灰石、粘土、珪石、アルミ灰、ボーキサイト等を調整成分材として加えた調合原料Aは、粉末状で、又は、図示しない造粒機や成形機などにより、5〜50mm、好ましくは、10〜30mm程度のペレットやフレーク状に成形され、乾燥後、キルン窯尻1aに連通するハウジング2からロータリキルンなどのキルン1に供給される。調合原料Aは、キルン1でクリンカに焼成された後、クリンカクーラ6で冷却される。冷却されたクリンカは、図示しない仕上げ工程で粉砕調整されて最終製品であるセメント及びセメント系固化材が製造される。
【0014】
一方、前記ハウジング2に連通する排ガス下流側には、重力沈降部Gを有する排気ダクト3が連結され、さらに、排気ダクト3に続いてダストの分級手段4、集塵機5、及びファン装置7が連結されている。重力沈降部Gは、ほぼ垂直の断面が角型、若しくは丸型の直筒状に形成された排気ダクト3の中間部に拡大部3a、すなわち、排気ダクトの下部3b、及び上部3cの横断面よりも大きい拡大部3aを形成し、キルン1からの燃焼ガスに伴われて搬送されるダスト中の粗大粒子を分離除去してキルン1に戻すようにしたものである。
【0015】
また、この発明においては、キルン窯尻1aに連通するハウジング2若しくは排気ダクト3の下部3bに、空気、若しくは水等を噴射して吹き込む排ガスの急冷手段8が設けられる。排ガスの急冷手段8としては、500℃〜800℃程度の排ガス温度を400℃以下、好ましくは300℃以下となるようにすればよく、その取り付け手段に制限はないが、一例として、前記ハウジング2若しくは排気ダクト3の複数箇所に吹付管8aを設け、高圧源から高圧空気、若しくは圧力水を排ガス流の横断方向に吹き付けるようにすることができる。尚、急冷手段8は、排気ダクト3の上部3cに設けるようにしても良い。
【0016】
このようなセメント製造装置において、キルン1内で揮散し、塩素を多量に含む排気ガスは、特に窯尻ハウジング2からダクト3間で塩素化合物が飛散ダストに凝縮、吸着されて溶融状態でダクトの絞り部やダンパー等で閉塞を起こしやすいが、この発明は、特に排ガス温度を400℃以下、好ましくは300℃以下となるように急冷することで、揮発性物質が融点以下の付着しにくい状態となり、排ガス下流のダクト3以下におけるコーティングを防止することができる。
【0017】
また、都市ゴミ焼却灰は少量のダイオキシン生成物を有するが、排ガスを急冷することで、ダイオキシンの合成温度域を短時間で通過させ、排ガス中のダイオキシンの再生成を抑制することができる。さらに、前記排ガスの急冷手段8として、空気、若しくは水の吹き込み手段のほか、炭カル、ドロマイト、生石灰、又は、消石灰の少なくとも一種を吹き込むことにより、ダイオキシンを生成する化合物源である塩化水素を除去してダイオキシンの生成をさらに抑制することもできる。
【0018】
排気ダクト3の重力沈降部Gでは排ガスの上昇気流速度が減速され、上昇気流に乗れない排ガス中の粗大な粒子が分離、落下してキルン1に戻される。従って、ダスト負荷の軽減された排ガスが排気ダクト3から後続の分級手段4や集塵機5などのダスト処理設備に搬送することができる。
【0019】
分級手段4は、融点以下に急冷された塩素化合物を含むダストを微粉と粗粉に分級し、微粉を集塵機5に送り回収すると共に、粗粉をセメント製造ライン、例えば、返却ダクト9から前記ハウジング2若しくはダクト3の下部3bに戻してキルン1内で再焼成に供する。すなわち、前記塩素化合物を含むダストを詳細に分析したところ、約10μm以下の微粉部分に塩素化合物が多く存在し、粗粉部分にはそれが少なくセメント原料として好適にそのまま再使用することができるものである。尚、回収した微粉部分は、水洗等により、塩素化合物を除去し、原料の一部として前記調合原料に加えることができる。
【0020】
また、分級手段4としては、各種公知のもの、例えばサイクロンなどを用いることができる。また、高効率空気分級機、例えば、O−SEPA(秩父小野田K.K製)、セパックス(F.L.スミス社製)、セポール(ポリシウス社製)などの強制渦流式の分級機を用いれば、サイクロン等と比較して効率的な分級が可能であり、排ガス中のダストを極めてシャープに効率良く微粉と粗粉に分級することができる。さらに、これらの分級機のロータ回転数を制御することにより、分級する粒子の大きさをコントロールすることが可能であり、例えば排ガス中のダストの粉末度が変わっても、容易に分級コントロールすることができる。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明は、極めて簡単な方法及び装置により、塩素を多量に含む排気ガスを温度300℃以下に急冷することにより、コーティングトラブルを解消すると共に、ダイオキシンの再生成を抑制し、キルンの安定運転を可能とする一方、排ガスダストを効率的に処理して活用し、都市ゴミ焼却灰などの塩素を多量に含む原料を用いて安定したセメント及びセメント系固化材を製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1 キルン
1aキルン窯尻
2 ハウジング
3 排気ダクト
3a拡大部
3b下部
3c上部
4 分級手段
5 集塵機
6 クリンカクーラ
7 ファン装置
8 急冷手段8
8a吹付管
9 返却ダクト
A 調合原料
G 重力沈降部

Claims (10)

  1. 都市ゴミ焼却灰などの塩素含有原料をキルンで焼成するセメント及びセメント系固化材の製造において、キルン窯尻の排ガスを温度300℃以下に急冷することによりダイオキシンの再生成を抑制することを特徴とするセメント製造方法。
  2. キルン窯尻の排ガスを空冷、若しくは水冷により急冷することを特徴とする請求項記載のセメント製造方法。
  3. キルン窯尻の排ガスに炭カル、ドロマイト、生石灰、又は、消石灰の少なくとも一種を吹き込み急冷することを特徴とする請求項1または2記載のセメント製造方法。
  4. 都市ゴミ焼却灰などの塩素含有原料をキルンで焼成するセメント及びセメント系固化材の製造において、キルン窯尻に連通するハウジング若しくは排気ダクトに排ガスを温度300℃以下に急冷することによりダイオキシンの再生成を抑制する急冷手段を設けたことを特徴とするセメント製造装置。
  5. 排ガスの急冷手段が空気、若しくは水の吹き込み手段であることを特徴とする請求項記載のセメント製造装置。
  6. 排ガスの急冷手段が炭カル、ドロマイト、生石灰、又は、消石灰の少なくとも一種の吹き込み手段であることを特徴とする請求項記載のセメント製造装置。
  7. 急冷手段を設けたハウジング若しくは排気ダクトに連通する排ガス下流側の排気ダクトに粗大粒子の重力沈降部を形成したことを特徴とする請求項4〜6いずれか記載のセメント製造装置。
  8. 急冷手段を設けた排気ダクトに連通する排ガス上流側の排気ダクトに粗大粒子の重力沈降部を形成したことを特徴とする請求項4〜6いずれか記載のセメント製造装置。
  9. 重力沈降部が垂直の排気ダクトに形成した拡大部であることを特徴とする請求項7または8記載のセメント製造装置。
  10. 排気ダクトにダストの分級手段を連結し、該分級手段により、分級された粗粒ダストをキルンに導入する返却ダクトをさらに設けたことを特徴とする請求項5〜9いずれか記載のセメント製造装置。
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