JP3701677B2 - トリアリールボランの製造 - Google Patents

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Description

発明の技術分野
本発明は、式Ni(NC(CH2)4CN)2(NCBAr3)2のニッケル錯体からのトリアリールボランの製造に関しており、Arはフェニルまたは炭素数1〜4を有するアルキル基で置換されたフェニルであってアルキル基が一つ以上のフッ素原子を含むことができることを特徴とする。これらのニッケル錯体は、触媒として有機リンニッケル錯体および触媒促進剤としてトリアリールボランを用いたアルケンヒドロシアン化(alkene hydrocyanation)(例えば、ブタジエンヒドロシアン化)の間に形成される触媒残留物中に含まれる。
発明の背景
Kingらによる米国特許第3,798,256号では、触媒としてニッケル錯体および促進剤として有機ボロン化合物を用いて、アジポニトリルを製造するための3−ペンテンニトリルのヒドロシアン化を開示している。かかるヒドロシアン化反応は、主としてNi(NCR)4(NCBAr3)2(以後NCBCとして引用する)である触媒残量物を生み出す。Shookによる米国特許第4,082,811号では、トリアリールボランのアミン付加物を沈殿させるために水酸化アンモニウムでかかる残留物を処理することを開示している。トリアリールボランは、金属水酸化物を用いた処理によって付加物から回収される−−Shookによる米国特許第4,134,923号を参照されたい。
本発明は、触媒残留物からトリアリールボラン促進剤の直接回収法である。
発明の要旨
本発明は、式BAr3を有するトリアリールボランの製造方法であり、ここでArはフェニルまたはアルキル基が一つ以上のフッ素原子を含むことができる炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェニルであり、式Ni(NC(CH2)4CN)2(NCBAr3)2(Arは上述した通り)の錯体を、不活性雰囲気下、大気圧より小さい圧力で、120℃〜300℃の範囲内の温度に加熱する工程と、トリアリールボランを含む蒸気を形成する工程と、その蒸気からトリアリールボランを濃縮する工程と、を備えることを特徴とする。本発明の方法の好ましい具体例において、不活性ガス流が、トリアリールボランを含む気体をトリアリールボランが濃縮される領域に移動させる。
図の説明
図は、本発明の方法を実行するのに使用するのに適切な装置の断面線図である。
発明の詳細な説明
本実施例の一つの具体例において、触媒残留物またはNCBCが、慣用の昇華装置内に置かれ、窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気の下で、または、好ましくは、触媒残留物またはNCBCを分解させ、BAr3およびRCNをリリースするような減圧下で加熱される。BAr3およびRCNは、昇華冷却フィンガー(sublimer cold finger)上で固化される。120℃〜300℃の範囲の温度が用いられ、170℃〜230℃が好ましい。0〜760トールの範囲の圧力が用いられ、0.001〜40トールが好ましい。
本発明の第二の具体例として、触媒残留物またはNCBCは、チューブ内に置かれ、窒素またはアルゴンのような不活性キャリヤーガスの流れが触媒残留物またはNCBC上を通過し、冷却トラップを通過する間、好ましくは、減圧下で加熱される。この方法の間にリリースされたBAr3およびRCNは、キャリヤーガスによってトラップ内に吹き払われ、トラップの表面上に濃縮される。
触媒残留物は、アルケン、好ましくは3−ペンテンニトリル(3PN)から得られ、ヒドロシアン化は、活性Ni触媒Ni[P(OR)3]4および式BAr3のトリアリールボラン促進剤の存在下で行われる。ここで、Rは炭素数18までを有するアリールラジカルであり、Arは炭素数10までを有するアリールラジカルであり、好ましくはBPh3(Ph=フェニル)である。このタイプの典型的なNi触媒には、Ni[P(OC6H5)3]4、Ni[P(O-p-C6H4CH3)]4、Ni[P(O-m-C6H4CH3)3]4、およびNi[p(O-m&p-C6H4CH3)3]4を含む。用いられた促進剤の量は、触媒に対する促進剤のモル率を約1:16から50:1に徐々に変化させることができる。触媒残留物の配合の詳細な説明は、米国特許第4,082,811号で知られている。
NCBCは、Coneによって米国特許第4,394,321号に記載されているように製造される。
実施例
次の実施例において、断りのない限り、全ての操作は窒素雰囲気の下、乾燥箱を用いて、または標準Schlenk法で行われた。トリフェニルボロンを空気または湿気にさらすことは、典型的にジフェニルボロン誘導体の形成に導く。ADN-NCBCは、アジポニトリル(ADN)、特にNi(NC(CH2)4CN)2(NCBPh3)2から誘導されたNCBCに引用される。触媒残留物およびADN-NCBCの元素分析は、次の通りであった。Ni触媒残留物:C,72.96;H,5.66;N,10.53。ADN-NCBC:C,72.14;H,5.70;N,11.71;Ni,6.56;B,4.26。
実施例1
ADN-NCBC0.158g(0.195mmol)は、ドライアイス冷却フィンガーを設けた昇華機内に置かれ、次に15分間にわたって0.004トール、150℃で加熱され、その結果、白色固体が冷却フィンガー上に形成し始めた。温度は、30分間にわたって190℃に上昇され、そして最終的には、4時間200℃であった。装置は室温に冷却され、白色固体が冷却フィンガーから回収された。収量0.133g。これらの固体の1HNMRスペクトル分析より、BPh3に対するADNミックスが1.5:1で、ジフェニルボロン誘導体が少量であることがわかった。BPh3の収率は83%。
実施例2
Ni触媒残留物2.0gは、ドライアイス冷却フィンガーを設けた昇華機内で、約0.004トールで210℃に加熱された。1日後、温度を数時間で約230℃に上昇させた。室温に装置を冷却したのち、白色固体1.192gが冷却フィンガーから回収され、1HNMRを用いて分析された。試料は1.0:1.1の割合のBPh3とアジポニトリルの混合物、および少量のジフェニルボロン誘導体を含有していた。BPh3の収率は71%。
実施例3
Ni触媒残留物5.0gが、図に示したようなガラスチューブ2の内側のセラミックボート1に置かれた。系の内側の圧力は、窒素流4が約200ml/分の速さで触媒残留物の上を通過している間に、約20トールに減少された。チューブは、約5時間にわたって190℃で加熱され、揮発性生成物がドライアイストラップ3中に回収された。淡黄色固体3.4gがトラップから回収された。生成物の1HNMRスペクトル分析より、BPh3およびADNの混合物(65重量%がBPh3である)が検出された。
BPh3のヒドロシアン化の性能は、劣化した触媒から得た。
ヒドロシアン化の活性(activity)に対して上記の述べたように劣化したヒドロシアン化触媒から回収されたトリフェニルボロンを含む材料の評価は、一段階で、22mlガラス連続撹拌タンク反応器中で行われた。米国特許第4,874,884号に、促進剤の性能を評価するための連続撹拌タンク反応器の利用を開示しており、当該米国特許を参照することによって、当該米国特許出願の明細書の内容が本明細書の一部を構成するものとする。連続ヒドロシアン化の定常状態の条件は次の通りであった。
反応速度=1.0×10E−4モルADN/リットル秒
3PNの20%変換
Ni(TTP)4触媒0.1モル/モル供給HCN
(ここでTTPはトリトリル亜リン酸(tritolylphosphite)を引用している)
TTP0.12モル/モル供給HCN
BPh30.0065モル/モル供給HCN
温度=40℃
反応器は、初め、Ni(TTP)4触媒24重量%、TTP6.3%、およびBPh30.28%を含む3PN溶液で充填された。定常状態の状況は、41時間にわたる連続様式において次の溶液を供給する(pumping)ことによって達成された。
試薬 供給速度
3PN中HCN25重量% 0.88g/時間
3PN中BPh32.24% 0.57g/時間
3PN中TTP35% 0.66g/時間
3PN中Ni(TTP)451%、TTP3.7% 2.39g/時間
3PN 0.80g/時間
BPh3促進剤溶液は、3PN52.0gおよび昇華された材料2.1gで製造され、実施例2に記載された方法で劣化したNi触媒から回収された。液体クロマトグラフィーによる溶液の分析より、溶液がBPh32.24重量%含むことがわかった。
反応生成物は、ガスクロマトグラフィーによる分析のために反応器オーバーフローから回収された。与えられた促進剤の反応は、収率および下に示された選択特性によって特徴付けられる。示された結果は、連続フローの初めから17〜41時間にとられた試料全ての平均をとっている。比較として、結果は、促進剤として市販されているBPh3を使用する以外、同じ条件下での連続ヒドロシアン化について示されている。
回収されたBPh3 市販 BPh3
ADN収率 92.6% 92.9%
直線性 96.2% 96.3%
2PN 収率 3.7% 3.6%
VN収率 0.04% 0.04%
定義:
転換=反応したモル/供給モル
VN=バレロニトリル
2PN=2−ペンテンニトリル
MGN=メチルグルタロニトリル
ESN=エチルスクシノニトリル
ADN(2PN/VN)収率=製造されたADN(2PN/VN)モル/反応された3PNモル
直線性=ADNモル/ADN+MGN+ESNモル

Claims (4)

  1. 式BAr3を有するトリアリールボランの製造方法であって、Arがフェニルまたはアルキル基がフッ素化されていてもよい炭素数1〜4を有するアルキル基で置換されたフェニルであり、式Ni(NC(CH2)4CN)2(NCBAr3)2(Arは前に定義した通りである)の錯体を、不活性雰囲気中、大気圧より小さな圧力で、120℃〜300℃の範囲内の温度に加熱する工程と、トリアリールボランを含む蒸気を形成する工程と、その蒸気からトリアリールボランを濃縮する工程と、を備えることを特徴とするトリアリールボランの製造方法。
  2. 不活性ガス流が、トリアリールボランを含む蒸気を、トリアリールボランが濃縮される領域に移動させることを特徴とする請求項1に記載のトリアリールボランの製造方法。
  3. 錯体が触媒残留物に含まれることを特徴とする請求項1に記載のトリアリールボランの製造方法。
  4. Arがフェニルであることを特徴とする請求項1に記載のトリアリールボランの製造方法。
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