JP3701513B2 - 固形粉末化粧料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、なめらかでしっとりした感触を有し、使用感に優れ、外力による割れが少ない固形粉末化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ファンデーション、フェイスパウダー、アイシャドウ等の固形粉末化粧料は、一般に、容器に原料組成物を充填後圧縮して固化させるプレス成型法により製造されている。しかし一般の固形粉末化粧料は、油剤の配合量が比較的少ないため粉体間結合力が弱く、上記プレス成型法では高いプレス圧が必要になる。その結果得られた成型品は一般的に硬く、粉っぽい感触になる。
固形粉末化粧料の硬度を低くすると、通常はそれに伴って粉体間結合力が低下するため、成型品が外力により割れ易くなる。
【0003】
一方、その他の成型法として、化粧料基材を低沸点有機溶剤などに混合してスラリー状とし、これを容器に充填した後、溶剤を除去して固化させる溶剤法がある(特開昭56−108703号)。
溶剤法は、内容物を均一に充填できる点で有利であるが、乾燥時にスラリー中の多量の溶剤が揮発するのに伴って収縮やひび割れが生じたり、成型後の内容物が外力により割れ易かったり、又はケーキングしやすいという欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、なめらかでしっとりとした感触を有し、粉取れ等の使用感に優れ、しかも割れが生じ難い固形粉末化粧料を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、粉体及び特定の被膜形成性高分子を含有する固形粉末化粧料の硬度、空隙率及び耐衝撃性値を特定の数値とすれば、上記目的とする固形粉末化粧料が得られることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、次の成分(A)及び(B):
を含有し、硬度がアスカーゴム硬度計C1L型で10〜75であり、空隙率が0.4〜0.7で、かつ耐衝撃性値(成型品を50cmの高さから厚み25mmのラワン材ベニヤ板上にくり返し落下させたとき異常が生じるまでの回数)が5以上である固形粉末化粧料を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の固形粉末化粧料は、硬度がアスカーゴム硬度計C1L型で、10〜75であり、空隙率が0.4〜0.7、特に0.45〜0.7であり、耐衝撃性値が5以上、特に7以上であることが使用感及び割れの点で優れるので好ましい。また、固形粉末化粧料がファンデーションである場合には、硬度は10〜70であり、特に10〜65であるのがより好ましく、アイシャドウの場合には、硬度が30〜75、特に50〜75であるのがより好ましい
【0009】
ここで、硬度は、成型品の硬度を直接アスカーゴム硬度計C1L型で測定する。以下の製造例においては、直径54mm、深さ4mmのアルミ製中皿に試料を充填、成型、乾燥したもので測定した。また、空隙率は、成型品の重量、体積及び粉体バルクの真比重を測定し、次式により求めた。
【0010】
【数1】
【0011】
ここで、成型品とは、成型、乾燥後の化粧料をいう。また粉体バルクとは、成型前の粉体混合物を乾燥したもので、その真比重は、島津製作所社製アキュピック1330型を用いて測定した。
【0012】
耐衝撃性は、上記成型品を、50cmの高さから、厚み25mmのラワン材ベニヤ板上にくり返し落下させ、かけや割れなどの異常が生じるまでの回数を評価したものである。
【0014】
本発明で用いる成分(B)の皮膜形成性高分子は、弾性率が1〜200kg/cm2 であり、特に1〜100kg/cm2 であるものが好ましい。弾性率が200kg/cm2 を超えるものを用いた場合は、製品がやわらかさやなめらかさ等に劣り、使用感が悪くなる。
本発明において、弾性率は以下のようにして測定した。
すなわち、まず各皮膜形成性高分子の10重量%溶液又は分散液を直径5cmのテフロン製シャーレに10g量り取り、5日〜10日間自然乾燥して得られた皮膜(厚さ0.3〜0.5mm)を、縦15mm、横5mmの短冊状に切り、測定用試料とした。この試料を、25℃、相対湿度30%に24時間以上放置した後、動的粘弾性測定装置(UBM社製、レオスペクトラーDVE−V4)の引っ張り試験用ジグに固定し、加振周波数10Hz、振幅10μmの条件で測定した。
【0015】
このような皮膜形成性高分子は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はこれとスチレンとの重合体、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン(特開平5−112423号、特開平7−133352号、特開平10−95705号)、ビニル・シリコーンブロックポリマー(特開平11−100307号)の群から選ばれるもので、分子量が10,000〜1,000,000程度のものが好ましい。
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルが挙げられる。
【0018】
また、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーンとしては、分子内に式(6)
【0019】
【化2】
【0020】
(式中、R11は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基のいずれかを示し、mは2又は3である。)で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)のセグメントと、オルガノポリシロキサンのセグメントを有し、オルガノポリシロキサンのセグメントの末端に、又は側鎖として、ヘテロ原子を含むアルキレン基を介して、前記式(6)で表される繰り返し単位からなるポリ(N−アシルアルキレンイミン)のセグメントが結合しており、該ポリ(N−アシルアルキレンイミン)のセグメントとオルガノポリシロキサンのセグメントとの重量比が1/50〜20/1で、分子量が10,000〜500,000、特に50,000〜300,000のものが好ましい。
【0021】
また、ビニル・シリコーンブロックポリマーとしては、次の一般式(7)
【0022】
【化3】
【0023】
(式中、R12、R13、R14及びR15は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又はニトリル基を示し、R16、R17、R18及びR19は同一又は異なって、水素原子、ハロゲン原子が置換していてもよいアルキル基又はアリール基を示し、Yはハロゲン原子が置換していてもよい炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和炭化水素基を示し、Aは−CONH−基又は−COO−基を示し、Bは−NHCO−基又は−OCO−基を示す。ここでAが−CONH−基のときBは−NHCO−基であり、Aが−COO−基のときBは−OCO−基である。qは0〜200の数を示し、pは0〜6の数を示し、aは2〜300の数を示す。)
で表されるシリコーンポリマー単位とフッ素原子を有しないビニルモノマー単位とを構成単位とするビニル・シリコーンブロックコポリマーであって、一般式(7)のシリコーンポリマー単位を構成するシリコーンモノマーの総数は5〜106であり、該ビニルモノマー単位の総数は10〜106であり、該シリコーンモ
ノマーの総数と該ビニルモノマーの総数との和は102〜106であり、かつ該シリコーンモノマーの総数/該ビニルモノマーの総数の比が1/99〜99/1であるブロックコポリマーを、その一例として挙げることができる。
【0024】
皮膜形成性高分子は、1種以上を用いることができ、全組成中に0.1〜15重量%含有するが、特に0.5〜10重量%、更に1〜8重量%含有するのが好ましい。
【0025】
また、成分(A)の体質顔料及び着色顔料(以下、粉体と記載することもある)としては、例えばケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、セリサイト、マイカ、カオリン、ベンガラ、クレー、ベントナイト、チタン被膜雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、酸化クロム、水酸化クロム、カラミン及びカーボンブラック、これらの複合体等の無機粉体;ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シルクパウダー、セルロース、長鎖アルキルリン酸金属塩、N−モノ長鎖アルキルアシル塩基性アミノ酸等からなる有機物粉体、これらの複合体等の有機粉体、或は、上記無機粉体と有機粉体との複合粉体などが挙げられる。
【0026】
これらの粉体は、粉体として本来表面が疎水性であるものや、表面を疎水化処理したものを使用でき、使用感により優れるので好ましい。
疎水化処理は、例えばシリコーン油、脂肪酸金属塩、アルキルリン酸、アルキルリン酸のアルカリ金属塩又はアミン塩、N−モノ長鎖(炭素数8〜22)脂肪族アシル塩基性アミノ酸、パーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物等の疎水化処理剤を用いて行われる。
【0027】
粉体を疎水化処理する方法は特に制限されず、常法に従って行えば良く、また粉体に対する疎水化処理剤の処理量は、好ましくは0.05〜20重量%、より好ましくは2〜10重量%である。
【0028】
粉体は、1種以上を用いることができ、全組成中に55〜99.9重量%含有するが、特に65〜99.9重量%、更に75〜99.9重量%含有するのが好ましい。
【0029】
本発明の固形粉末化粧料には更に油剤を配合でき、しっとり感や肌へのつきが向上するので好ましい。油剤としては、例えばワセリン、ラノリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバロウ、キャンデリラロウ、高級脂肪酸、高級アルコール等の固形・半固形油分;スクワラン、流動パラフィン、エステル油、ジグリセライド、トリグリセライド、シリコン油等の流動油分;パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等のフッ素系油剤などが挙げられる。
【0030】
これら油剤は、1種以上を用いることができ、全組成中に30重量%程度まで、特に20重量%以下、更に15重量%以下の範囲で配合するのが好ましい。
【0031】
本発明の固形粉末化粧料には、更に界面活性剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合できる。
【0032】
本発明の固形粉末化粧料は、例えば粉体、弾性率が200kg/cm2 以下の皮膜形成性高分子及び揮発性溶剤を混合した後、揮発性溶剤を揮発させて固形化することにより製造される。
ここで用いられる揮発性溶剤としては、例えば水;エタノール、イソプロピルアルコール等の低沸点アルコール;ヘキサン、イソパラフィン、アセトン、酢酸エチル、揮発性シリコーン油などが挙げられる。特に水又はアルコール水溶液が好ましい。
粉体、皮膜形成性高分子及び揮発性溶剤を混合する際には、粉体を40〜94.9重量%、特に50〜94.9重量%、皮膜形成性高分子を0.1〜14重量%、特に0.5〜10重量%、及び揮発性溶剤を5〜40重量%混合するのが好ましい。揮発性溶剤を5〜40重量%使用したときの混合物はやや湿った粉粒体であるが、揮発性溶剤量を40重量%を超えて配合すると、特開昭56−108703号にあるように「スラリー状」となり、乾燥時にスラリー中の多量の溶剤が揮発するのに伴って、固形分が収縮するため、空隙率が小さくなり、成型品が固くなるとともにひび割れ等の問題が生じる場合があり、好ましくない。
粉体、皮膜形成性高分子及び揮発性溶剤の混合物を、容器に充填して圧縮成型し、適当な条件(温度、圧力、時間)下で溶剤を揮発させることにより、固形化粉末化粧料が得られる。ここに、圧縮成型及び溶剤揮発の条件は、目的とする固形粉末化粧料の種類、大きさ、形状に応じて適宜決めることができる。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、なめらかでしっとりした感触を有し、粉取れが良好で使用感に優れ、しかもひび割れがなく、外力による割れが少ない固形粉末化粧料が得られる。本発明の固形粉末化粧料は、例えばファンデーション、フェイスパウダー、ほほ紅、アイシャドウ等のメイクアップ化粧料などとして好適である。
【0034】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明する。
【0035】
調製例1
反応容器に水150部、ラウリル硫酸ナトリウム3部、過硫酸カリウム0.5部を仕込み、窒素ガスを流して溶存酸素を除去した。一方滴下ロートにスチレン17部、アクリル酸−2−エチルヘキシル33部、n−ドデシルメルカプタン2.0部を仕込んだ。攪拌下に反応容器を70℃まで昇温し、滴下ロートより上記モノマーを3時間かけて滴下した。滴下終了後、3時間かけて熟成を行い、若干の凝集物を除去し、固形分45重量%のアクリル酸アルキル共重合体エマルジョンを得た。更に水で希釈し、12重量%エマルジョンとした。
【0036】
調製例2
反応容器に、メタクリル酸5部、メタクリル酸メチル22部、アクリル酸n−ブチル33部、分子中にポリジメチルシロキサン構造を有するマクロアゾ重合開始剤(和光純薬社製、VPS−0501、平均分子量3〜4万)40部、メチルエチルケトン200部を仕込み、室温で攪拌下、約1時間窒素ガスを流し、溶存酸素を除去した。攪拌下に反応容器を80℃まで昇温して6時間重合を行った後、更に85℃で2時間熟成を行い、透明な粘ちょう溶液を得た。得られた溶液をメチルエチルケトン100部で希釈し、次いで、1N−NaOH5部で中和した後、イオン交換水600部を加えた。得られた溶液からメチルエチルケトンを減圧留去し、イオン交換水で希釈し、固形分12重量%エマルジョンとした。
【0037】
実施例1
表1に示す組成の固形粉末ファンデーションを製造し、やわらかさ、なめらかさ、粉取れを以下の基準で評価した。すなわち、まず粉体成分を、ヘンシェルミキサーを用いて混合した後、油分(ジメチルポリシロキサン)を加え、更に皮膜形成性高分子を加えて混合した。
これを中皿に充填し、プレス成型した後、乾燥させて固形粉末ファンデーションを得た。また、耐衝撃性については、直径54mm、深さ4mmのアルミ製中皿に充填、3kg/cm2 の圧力でプレス成型し、50℃、常圧で3時間乾燥させたものを、50cmの高さから、厚み25mmのラワン材ベニヤ板上にくり返し落下させ、かけや割れなどの異常が生じるまでの回数で評価した。結果を表1に併せて示す。本発明品は、比較品に比べて、やわらかな感触を有し、なめらかさ、粉取れ等の使用感に優れ、かつ耐衝撃性も良好であった。
【0038】
(評価基準)
◎:優秀。
○:良好。
△:やや劣る。
×:劣る。
【0039】
【表1】
【0040】
*1:特開平10−95705号の合成例7に記載のものをエタノールに溶解し、溶媒置換によって12重量%水分散液としたもの。
*2:ヨドゾールGH−800(カネボウNSC社製)を水で希釈し、12重量%エマルジョンとしたもの。
【0041】
実施例2
実施例1と同じポリ(N−アシルアルキレンイミン)変性シリコーン12重量%水分散液を用い、実施例1と同様にして、表2に示す組成のアイシャドウを製造した。評価結果を表2に示す。本発明品は比較品に比べて顕著な耐衝撃性を有しており、使用感も良好であった。
【0042】
【表2】
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