JP3700771B2 - タンタルコンデンサおよびエポキシ樹脂組成物 - Google Patents

タンタルコンデンサおよびエポキシ樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性エポキシ樹脂組成物で封止したタンタルコンデンサに関する。より詳細には、難燃性にすぐれ、焼損時にも安全性が高く、周囲汚染の少なく、加えて、燃焼や埋め立てなどの廃棄後に環境汚染の少ない環境調和性に優れるタンタルコンデンサに関する。また、電気・電子部品用途、特にタンタルコンデンサに好適な封止用の難燃性エポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コンデンサ、トランジスタ、ICやLSI等の集積回路に代表される電子部品類は、主にエポキシ樹脂組成物をトランスファーモールド等で硬化成形して製造されている。一般に、電子部品の樹脂封止で用いるエポキシ樹脂組成物は燃え易く、火災時の安全性を確保するために、UL安全規格によって難燃性の付与が義務付けられており、各種の難燃剤が加えられている。
【0003】
従来は、テトラブロモビスフェノ−ルA(TBBA)に代表される臭素を含有するハロゲン系の難燃剤が広く利用されており、難燃助剤として三酸化アンチモンが併用されている。ハロゲン系の難燃剤は、燃焼時にハロゲン化水素を発生させラジカル捕捉剤として作用すると同時に、その一部は比重の大きなハロゲン化アンチモン化合物へと変化し、これが揮発することで生じる酸素遮蔽効果との相乗作用によって延焼を防止すると考えられている。
【0004】
一方、リン系の難燃剤においては、赤リンやリン酸エステルが広く用いられており、これらは燃焼時にポリリン酸を形成し、これが樹脂燃焼面の炭化膜を被覆することで熱や酸素、または、可燃性ガスの供給を遮断すると共に、形成されるリン酸化合物による炭化促進作用との相乗効果によって、延焼を防止すると考えられている。
【0005】
しかし、従来のハロゲン化合物を含有するエポキシ樹脂組成物は、燃焼時の発煙量が多く、不完全な焼却処理では有害な有機臭素化合物(具体的にはハロゲン化したダイオキシン類)へと変化する問題があった。また、難燃助剤の三酸化アンチモンは慢性毒性を示す劇物であり、電子部品を製造する工程排水の水処理が必要であることや、埋め立てた廃棄物が地下水を汚染する危険性があった。加えて、ハロゲン化合物を含む封止樹脂は、電子部品を高温で使用する際の信頼性を低下させる問題があり、この現象はハロゲンやアンチモンが高温時に半導体装置の金属腐食を促進するためと考えられている。
【0006】
これらの課題を解決するために開発されたリン化合物を含有する難燃性のエポキシ樹脂組成物は、ハロゲン化合物と同等の高い難燃性付与効果を示す反面、微量の水分と反応してホスフィンや腐食性のリン酸を生じるので耐湿性に問題があった。従って耐湿性に対する要求水準の特に厳しい電子部品の封止や積層板などの電子機器材料用途には、十分な物性を得ることが難しかった。加えて、有機リン化合物を利用する場合には、製品を使用する際に徐々に揮発する場合があり、使用環境の安全性に対する問題があった。また、燃焼時の発煙量は、ハロゲン化合物を含有するエポキシ樹脂組成物に対しては低下するが、有害なリン化合物を含有することを考慮すると必ずしも安全性は十分ではなかった。
【0007】
これらの難燃化技術の抱える課題に対しては、それ自体が無毒であり燃焼時に有害ガスの発生が無く、埋め立て後の土壌や地下水汚染の心配の無い金属水酸化物の利用技術がある。具体的には、従来技術(特開2000−265040号公報、特開平10−279782号公報)の様に、金属水酸化物の高充填によるエポキシ樹脂硬化物の難燃化技術が知られている。しかし、金属水酸化物の添加と高充填は、エポキシ樹脂硬化物の熱膨張率を増加させ、樹脂硬化物の耐熱分解性を低下させること、加えて、エポキシ樹脂の硬化反応を阻害し迅速な硬化成形が妨げられることなどの問題があり、電子部品用途への利用できなかった。
【0008】
前記のエポキシ樹脂の硬化反応阻害に対しては、金属水酸化物の表面を熱硬化性樹脂によって被覆して利用する技術(特開平11−228792号公報)が考案されており、この従来技術によれば、エポキシ樹脂組成物の速硬化を実現し、樹脂硬化物はUL94難燃規格でV−0の高度な難燃性を達成できる。しかしならが、リン化合物を利用する点で、完全な脱ハロゲン、および脱リンで難燃性を実現したエポキシ樹脂組成物ではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された電気・電子部品としては、トランジスタ、LSI等の他にもいくつかの部品が知られている。その中でも特にタンタルコンデンサは、陽・陰極間でのショート故障、すなわち焼損時に外装のモールド樹脂が激しく燃焼する問題がある。
【0010】
タンタルコンデンサの焼損は、製品の検査中および使用中の両方の場合に生じることがあり、ショート事故が製品検査中に生じた場合は、発生する煙や煙に含まれる煤の付着によって、検査をパスした正常な製品まで汚染されて廃棄せざるを得なくなる。また、ショート事故が使用中に生じた場合には、焼損時の燃焼で発生した多量の煙により、タンタルコンデンサに隣接する正常な電子部品や回路パターンの品質や性能を損なうので、リサイクルやリユースの妨げとなる。また、使用中の発煙や発火は、危険性がほとんどない場合であっても、ユーザーに多大な不安を与えるので好ましくない。
【0011】
タンタルコンデンサ以外の電子部品、例えばLSIやトランジスタでは、タンタルコンデンサで生じるような激しい焼損が生じないため、故障時の発煙や周囲の汚染が問題にされることはなかった。
【0012】
近年、部品の小型化に伴い、タンタルコンデンサにおいても小型で高容量を進めるに従い、上記問題は潜在的により大きくなって来ていると言えるが、現在までのところ、発煙量が少なくかつ環境負荷の少ないタンタルコンデンサについての提案は全くなされていなかった。本発明者の検討では特に、従来のハロゲン化合物やリン化合物を含有するエポキシ樹脂組成物で封止されたタンタルコンデンサは、特に多量の煙を発生し、周囲を汚染する問題がある。また、煙には有害な臭素化合物やリン化合物が煙に含まれるので、廃棄物の焼却による大気汚染、焼却残渣の埋め立てによる土壌汚染、および、地下水汚染の危険性があり、環境負荷が高いという問題もある。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、故障時(焼損時)の発煙量が少ないためタンタルコンデンサ周辺部への汚染が少なく、修理やリサイクル性、さらに使用時の安全性が向上し、加えて廃棄物の焼却や焼却灰の埋め立て処理での環境負荷を低減したタンタルコンデンサを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、電気・電子部品用途、特にタンタルコンデンサに好適な封止用の難燃性エポキシ樹脂組成物であって、臭素系の難燃剤やリン系の難燃剤およびアンチモン系の難燃助剤も用いることなく高度な難燃性を達成し、同時に実用水準の速硬化性や流動性を保持しながら、熱膨張率の低い樹脂硬化物を与える電気・電子部品封止用途の難燃性のエポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止されたタンタルコンデンサであって、このエポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂(A)、フェノール系樹脂(B)、硬化促進剤(C)、無機充填剤(D)硬化した熱硬化性の樹脂で表面被覆処理された水酸化アルミニウム(以下、表面処理水酸化アルミニウムという。)(E)、およびタングステン酸アンモニウムを必須成分とし、前記タングステン酸アンモニウムの配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、前記硬化促進剤(C)、および前記無機充填剤(D)の合計100重量部に対して0.1重量部以上かつ20重量部未満であり、前記表面処理水酸化アルミニウム(E)と前記タングステン酸アンモニウムとの合計配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、前記硬化促進剤(C)、および前記無機充填剤(D)の合計100重量部に対して25重量部以上かつ50重量部未満であり、前記表面処理水酸化アルミニウム(E)と前記タングステン酸アンモニウムと前記無機充填剤(D)との合計配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、および前記硬化促進剤(C)の合計100重量部に対して150重量部以上かつ500重量部以下であることを特徴とするタンタルコンデンサに関する。
【0016】
ここで用いるエポキシ樹脂組成物として、その硬化物0.1gを、温度750℃、空気流量0.5L/分に設定したJIS−K7217に準拠の加熱炉へ投入しスパークさせながら1分間の加熱および燃焼させたときの平均発煙量が、光散乱積分方式のデジタル粉塵計を用いた計測値として平均粒子径0.3ミクロンのステアリン酸粒子による校正値1500CPM以下となるものを用いることが好ましい。これは、タンタルコンデンサが焼損する際の汚染量は、エポキシ樹脂硬化物の燃焼または高温加熱時の発煙量と密接に関係しており、発煙量が多いほど汚染量も増加する傾向にある。従って、樹脂の発煙量が上記の範囲を満たすようにすることで、焼損時しても周囲の汚染量の少ないタンタルコンデンサが得られる。
【0017】
上記タンタルコンデンサにおいては、ハロゲン系の難燃剤、リン系の難燃剤、アンチモン系の難燃助剤を用いなくとも高度な難燃性を達成することができる。
【0018】
本発明のタンタルコンデンサでは、前記エポキシ樹脂組成物が、金属アンモニウム塩(F)であるタングステン酸アンモニウムを必須成分として含む。
【0019】
さらに本発明は、エポキシ樹脂(A)、フェノール系樹脂(B)、硬化促進剤(C)、無機充填剤(D)、表面処理水酸化アルミニウム(E)およびタングステン酸アンモニウムを必須成分とし、前記タングステン酸アンモニウムの配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、前記硬化促進剤(C)、および前記無機充填剤(D)の合計100重量部に対して0.1重量部以上かつ20重量部未満であり、前記表面処理水酸化アルミニウム(E)と前記タングステン酸アンモニウムとの合計配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、前記硬化促進剤(C)、および前記無機充填剤(D)の合計100重量部に対して25重量部以上かつ50重量部未満であり、前記表面処理水酸化アルミニウム(E)と前記タングステン酸アンモニウムと前記無機充填剤(D)との合計配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、および前記硬化促進剤(C)の合計100重量部に対して150重量部以上かつ500重量部以下であることを特徴とする電気・電子部品封止用途の難燃性のエポキシ樹脂組成物に関する。この金属アンモニウム塩(F)であるタングステン酸アンモニウムを含有するエポキシ樹脂組成物は、難燃性用途の樹脂組成物として新規であり、タンタルコンデンサのみならず、LSI、IC、トランジスタ等の半導体装置を含む電子・電気部品の封止用途に広く使用することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明者は、鋭意検討の結果、タンタルコンデンサが焼損する際の汚染量は、封止樹脂の組成によって変化することを見出した。即ち、従来のタンタルコンデンサは、難燃剤としてリン化合物やハロゲン化合物を含有するエポキシ樹脂で封止されているため、焼損時に多量の煙を発生する。また、同一の発煙量に換算した場合の汚染量は、ハロゲン化合物、リン系化合物を含有する順に多い。
【0021】
これに対して、本発明のタンタルコンデンサでは、リン化合物やハロゲン化合物を含まず、表面処理水酸化アルミニウムを含有していることにより焼損時の煙の発生が抑えられ、有害なハロゲン化合物やリン化合物の発生も無いので、安全性や環境調和性を向上させることができる。
【0022】
さらに、エポキシ樹脂組成物が金属アンモニウム塩を含んでいる場合は、エポキシ樹脂組成物の流動性を低下させ、加えてエポキシ樹脂硬化物の熱膨張率を増加させる水酸化アルミニウムの添加量を、焼損時にタンタルコンデンサから発生する煙の量を増加させることなく、高度な難燃性を保持しながら減らすことができる。
【0023】
本発明のタンタルコンデンサでは、硬化前のエポキシ樹脂組成物の流動性やエポキシ樹脂硬化物の熱膨脹率、および、難燃性のバランスを良好に保ちながら、同時に焼損時の汚染量を減少させることができる。
【0024】
次に、各成分およびその配合割合について説明する。
【0025】
エポキシ樹脂(A)としては、電子部品の封止で用いられるエポキシ樹脂材料であれば特に限定されるものではなく、一般に用いられる、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂を利用出来る。またノボラック型のエポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールフェニレンアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールジフェニルエーテルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールS含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含有ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、アリル基や炭素数が2〜5のアルキル基等で変性させた液状タイプのエポキシ樹脂、具体的には、ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂などの利用も可能である。これらのエポキシ樹脂は、その使用にあたって一種類に限定されるものではなく、二種類以上の併用も可能である。
【0026】
フェノール系樹脂(B)としては、フェノール性水酸基を有するフェノール系樹脂である限り、特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールフェニルアラルキル樹脂、フェノールビフェニルアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、あるいは、α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール類、ビスフェノールフルオレン型フェノール、あるいはクレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール等のアルキルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール等の多価フェノール類、フェニルフェノール、アミノフェノール等が挙げられる。上記フェノール系樹脂以外に、その他のフェノール系樹脂やアミン系化合物を組み合わせて使用することができる。併用できるフェノール系樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、フェノールビフェニルトリアジン型樹脂、フェノールフェニレントリアジン型樹脂、フェノールトリアジン型樹脂、ビフェニル−4,4’−ジヒドロキシルエーテールと3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジヒドロキシルエーテル、テトラフェニロールエタン、トリスフェニロールエタン、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールS型樹脂、ポリフェノール型樹脂、脂肪族フェノール系樹脂、芳香族エステル型フェノール系樹脂、環状脂肪族エステル型フェノール系樹脂およびエーテルエステル型フェノール系樹脂等が挙げられる。また、アリル基や炭素数が2〜5のアルキル基等で変性させた液状タイプのフェノール樹脂、具体的には、アリル変性フェノールノボラック樹脂、アリル変性フェノールフェニレンアラルキル樹脂、アリル変性フェノールビフェニルアラルキル樹脂、アリル変性フェノールジフェニルエーテルアラルキル樹脂などの利用も可能である。これらのフェノール樹脂は、その使用にあたって一種類に限定されるものではなく、二種類以上の併用も可能である。
【0027】
硬化促進剤(C)としては、エポキシ基とフェノ−ル性水酸基との硬化反応を促進させるものであれば使用できるが、ハロゲン化合物およびリン化合物を含まないものが好ましく、特にイミダゾール系化合物が好ましい。イミダゾール系化合物の使用により樹脂硬化物に対しては高いガラス転移温度(Tg)を保持しながら、完全にハロゲン化合物、アンチモン化合物およびリン化合物を含有しない難燃性のエポキシ樹脂組成物を提供できる。
【0028】
イミダゾール系化合物としては、例えば、2,3−ジヒドロ1H−ピロロ−(1,2−a)ベンズイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル)−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−エチル−4−メチルイミダゾリル−(1))−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4-メチル−5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシ−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシ−1,3,5−トリアジンイソシアヌル酸付加物などのイミダゾール化合物、およびこれらの変性物などが挙げられるが。特に、2−フェニル−4−メチルイミダゾールおよび2−エチル−4−メチルイミダゾールは、樹脂組成物の混練温度付近での熱安定性に優れ、同時にエポキシ樹脂の速硬化性が得られ、エポキシ樹脂やフェノール系樹脂との相溶性にも優れる点で好ましい。また2種類以上を混合しての利用も可能である。
【0029】
無機充填材(D)は、半導体等の封止樹脂に一般に使用されている公知の各種無機充填材を使用することができる。例えば、シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化ケイ素、窒素化ホウ素、タルク、酸化チタン、ジルコニア等の粉末、及びガラス繊維、カ−ボンファイバ−等の繊維が挙げられる。この中でも、シリカが好ましく、半導体等の封止樹脂に一般に使用されている溶融シリカや結晶質シリカの粉体が好ましい。また、これらの粉体は破砕形や球状形を利用することができ、異なる形状物の混合比率や粒度分布は特に限定されない。無機質充填剤は、単独または2種以上を併用することができる。特にシリカを、その他の無機充填材の1種または2種以上と共に混合して用いる方が特性上より実用的であり好ましい。
【0030】
硬化した熱硬化性の樹脂で表面被覆処理された水酸化アルミニウム(E)の原料として用いられる水酸化アルミニウムは、その粒子径、比表面積、結晶形態によって制限されるものではなく、通常は、平均粒子径が0.5μm〜100μm、好ましくは1μm〜50μmである。不純物のナトリウム(Na2O)含有濃度は出来る限り低い値であることが望ましく、好ましくは0.1重量%未満であることが望ましい。Na2O濃度が0.1重量%を超えると水酸化アルミニウム自身の熱分解開始温度の低下が顕著となり、水酸化アルミニウムを含有したエポキシ樹脂硬化物の耐熱分解性を低下させる傾向がある。
【0031】
水酸化アルミニウムの表面被覆に用いる熱硬化性の樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂などが利用でき、その化学構造に限定はない。水酸化アルミニウムの表面処理方法には、乾式法や湿式法などを用いることが出来、水酸化アルミニウムの重量に対して0.1重量%〜30重量%の範囲で付着させ、その後、加熱処理して樹脂硬化させることによって、硬化したエポキシ樹脂で表面処理を施した水酸化アルミニウムの紛体が得られる。なお、本発明のエポキシ樹脂組成物、および、このエポキシ樹脂組成物で封止した電子部品は、水酸化アルミニウムの表面処理方法の違いによって制限されるものではない。
【0032】
表面処理水酸化アルミニウム(E)の配合割合は、金属アンモニウム塩を含まない場合には、エポキシ樹脂(A)、フェノール系樹脂(B)、硬化促進剤(C)、無機充填材(D)の合計100重量部に対して25重量部(20重量%)以上かつ50重量部(33.3重量%)未満であることが好ましい〔カッコ内は成分(A)〜(E)の合計を100重量%としたときの割合である。〕。表面処理水酸化アルミニウムの添加量を増やすほどより一層の発煙量の低減効果が期待できる。しかしながら、水酸化アルミニウムの添加量の増加は、エポキシ樹脂組成物の粘度を上昇させ、エポキシ樹脂硬化物の熱膨脹率を顕著に増大させ、また樹脂硬化物の耐熱分解性が低下し易いなどの問題が生じるので、電気・電子部品の封止用途では、これらの諸特性によって制限される。
【0033】
従って、表面処理水酸化アルミニウム(E)の配合割合を、上記範囲にすると、エポキシ樹脂組成物の速硬化性と高度な難燃性を達成しながら、水酸化アルミニウムの添加によるエポキシ樹脂硬化物の熱膨張係数の上昇を抑えることができるので好ましい。
【0034】
無機充填材(D)と表面処理水酸化アルミニウム(E)の合計配合割合は、金属アンモニウム塩を含まない場合には、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、および、硬化促進剤の合計100重量部に対して150重量部(60重量%)以上かつ500重量部(83.3重量%)以下、さらに240重量部(70重量%)以上かつ500重量部(83.3重量%)以下がより好ましい〔カッコ内は成分(A)〜(E)の合計を100重量%としたときの割合である。〕。成分(D)と成分(E)の添加量が少なすぎる場合には十分な難燃性が得られず、難燃性を補強するために成分(E)の配合割合を高くし過ぎると、樹脂硬化物の熱膨張率を著しく増加させるなどの問題がある。加えて、成分(D)と成分(E)の合計配合が多すぎる場合は、樹脂硬化物の難燃性の向上と熱膨脹率が低減する反面、樹脂組成物の流動性が著しく低下するので実用的な流動性(成形性)が得られない。従って、上記範囲は、エポキシ樹脂組成物の高い流動性を保持しながら、エポキシ樹脂硬化物の熱膨張率の上昇が抑えられるので好ましい。
【0035】
エポキシ樹脂組成物が金属アンモニウム塩を含む場合に使用される金属アンモニウム塩(F)としては、例えば、タングステン酸アンモニウム、モリブデン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、過マンガン酸アンモニウム、重クロム酸アンモニウム、リン酸亜鉛アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、硫酸鉄アンモニウム、チタン酸アンモニウムおよび硫酸ニッケルアンモニウム等を挙げることができる。
【0036】
金属アンモニウム塩の選定に当たっては、水酸化アルミニウムとの併用時の難燃および減煙効果と共に、安全性(毒性)、取り扱い性(低水溶性等)、安定性等を勘案して選択することが好ましい。特に好ましいものとしてタングステン酸アンモニウムが挙げられ、本発明では少なくともタングステン酸アンモニウムを必須成分として用いる。タングステン酸アンモニウムとしては、パラタングステン酸アンモニウム、メタタングステン酸アンモニウムの粉体を用いることができる。特に、難水溶性のパラタングステン酸アンモニウムが樹脂硬化物の特性上好ましい。
【0037】
金属アンモニウム塩(F)は配合量が少なすぎると、難燃・減煙の効果が十分でなく、また多すぎてもそれ自身の熱分解によって発生する水やアンモニアガスの影響で成形物に気泡が生じる場合があり実用的でないので、用いる種類に合わせて適宜配合割合を選択するのが好ましい。一般的(タングステン酸アンモニウムを用いる場合など)には、配合割合は、エポキシ樹脂(A)、フェノール系樹脂(B)、硬化促進剤(C)、シリカ無機充填剤(D)および表面処理水酸化アルミニウム(E)の合計100重量部に対して0.1重量部(0.1重量%)以上かつ20重量部(16.7重量%)未満が好まし〔カッコ内は成分(A)〜(E)の合計を100重量%としたときの割合である。〕、本発明では特にこの配合割合とする。この配合によって、難燃・減煙の効果を保ちながら、表面処理水酸化アルミニウム(E)の添加量を低減でき、その結果、樹脂硬化物の熱膨張係数の上昇をさらに抑えることができる。特に、1重量部以上かつ5重量部以下で配合することが好ましい。
【0038】
表面処理水酸化アルミニウム(E)と金属アンモニウム塩(F)の合計配合割合は、エポキシ樹脂(A)、フェノール系樹脂(B)、硬化促進剤(C)、および無機充填材(D)の合計100重量部に対して25重量部以上かつ50重量部未満であることが好ましく、本発明では特にこの配合割合とする
【0039】
また、表面処理水酸化アルミニウム(E)、金属アンモニウム塩(F)および無機充填材(D)の合計配合割合が、エポキシ樹脂(A)、フェノール系樹脂(B)および硬化促進剤(C)の合計100重量部に対して150重量部以上かつ500重量部以下であることが好ましく、本発明では特にこの配合割合とする
【0040】
エポキシ樹脂(A)とフェノール系樹脂(B)の配合比は、フェノール系樹脂の水酸基の合計数(OH)に対する、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数(Ep)との比(OH/Ep)が0.7〜2.5であることが望ましく、より好ましくは前記の官能基の比OH/Epが1.0であることが望ましい。前記の官能基の比OH/Epが0.7に満たない場合には、前記硬化物中の硬化剤とエポキシ樹脂が形成した架橋構造に残余している未反応基に由来する可燃成分の発生量が増加することから、難燃性の向上を阻害する可能性がある。また、前記OH/Epが2.5を超える場合には、前記エポキシ樹脂と硬化剤を反応させてなる前記硬化物の架橋密度が著しく低下することによって、硬化物の耐熱性や強度が不足する場合がある。
【0041】
樹脂組成物には、必要に応じて各種の微量添加剤、例えば、カルナバワックスなどの離型剤、カーボンブラック等の着色剤、およびシランカップリング剤などの表面処理剤などを含有させることができる。さらに、タンタルコンデンサの素子と封止樹脂のガラス転移温度や熱膨脹率の違いに起因する応力によって生じる素子と封止樹脂との界面剥離を抑制させるために、低応力剤、応力緩和剤、あるいは、低弾性率化剤を必要に応じて任意に加えることが可能であり、例えばシリコーン化合物が利用でき、その化学構造は限定されない。これらの微量添加剤は、製品の製造工程の管理や製品の基本性能を保持するために補助的に用いられるものであり、これらの使用や組み合わせによって本発明は制限を受けない。
【0042】
なお、エポキシ樹脂やフェノール系樹脂構造中にフェニレンやビフェニルレン基を含有する樹脂の利用では、エポキシ樹脂硬化物の架橋密度が減少するので、高温加熱時にゴム状となり応力吸収機能を付与できるので、前述の応力緩和剤や低弾性率化剤の添加量の低減が期待できる。
【0043】
本発明で規定する発煙量は、JIS K7217のプラスチック燃焼ガスの分析方法で規定の燃焼炉を用いて測定できる。発煙量を計測するデジタル粉塵計は、平均粒子径が0.3ミクロンのステアリン酸粒子で校正されたものを用い、1分間に計測される煙の計測数、単位CPM(Count Per Minute)として与えられる。発煙量の比較はこの実測値を用い合計5回の計測値の平均値を平均発煙量とする。
【0044】
発煙量は、前記の実験装置等の諸条件に準拠することで測定できるが、僅かな測定条件の変化によって変動する場合があるので、以下の樹脂硬化物を標準試料とし、その平均発煙量との相対値を比較に用いることが出来る。即ち、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂17.1重量部、フェノールノボラック型樹脂9.4重量部、シリカ粉体42重量部、熱硬化性樹脂で表面処理した水酸化アルミニウム30重量部、硬化促進剤0.2重量部、カルナバワックス0.5重量部、カップリング剤0.8重量部の合計100重量部からなるエポキシ樹脂組成物の硬化物を標準試料とする。この平均発煙量は822CPMなので(実施例3)、本発明で規定の発煙量1500CPMとの相対値は1.82である。従って、前記の標準試料の発煙性試験で得られる平均発煙量を1とし、その1.82倍以下のエポキシ樹脂硬化物は、本発明の発煙量が1500CPM以下のエポキシ樹脂硬化物と同等とみなされる。
【0045】
次に、本発明のタンタルコンデンサの構造について説明する。本発明を適用しうるタンタルコンデンサは、樹脂で封止・外装されている公知の固体タンタルコンデンサであれば制限はなく、例えば特開平7−22288号公報、特開平7−22283号公報に記載されている。図1(斜視図)、図2(断面図)に示すように、陽極体9は、タンタル粉末を加圧成形後、焼結して形成され、その表面には誘電体層として、陽極酸化等により酸化皮膜層が形成されている。そして、陽極体の外側に対向電極として、例えば二酸化マンガン層等の半導体層とその周囲に銀ペースト等で陰極層1が設けられ、導電性接着剤3等によって、外部陰極リード2に接続されている。陽極側の取り出しは、予め陽極体9に埋め込まれたタンタル引き出し線10とそれに接続された外部陽極リード6によって行われる。これらの構造は、封止材5により外装されている。
【0046】
本発明のタンタルコンデンサは、この封止材5が、前記のエポキシ樹脂組成物の硬化物で形成されるものである。
【0047】
本発明のタンタルコンデンサは、タンタルの焼結体の表面が酸化されて誘電体層として機能し、樹脂により封止・外装されているものであれば特に制限はなく、種々の変形・改良されたものを含む。形状としても、図1、図2には、表面実装型のチップ型コンデンサを示したが、この形状に制限されるものではない。
【0048】
また、エポキシ樹脂(A)、フェノール系樹脂(B)、硬化促進剤(C)、無機充填材(D)、表面処理水酸化アルミニウム(E)および金属アンモニウム塩(F)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、これまで説明してきたように、タンタルコンデンサの封止樹脂として好ましく用いることができるが、ICやLSIなどの集積回路、トランジスタやダイオード等の電子部品、及び、これらの電子部品を使用する半導体装置へも利用できる。タンタルコンデンサ用途以外に使用するときは、それぞれの用途に合わせて組成、組成比、添加材等について適宜決めることができるが、通常は前述のタンタルコンデンサの用途と同様に決めればよい。
【0049】
【実施例】
以下に、実験例および実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実験例および実施例に限定されるものではない。
【0050】
<各実験で用いた材料>
用いた材料について説明する。
【0051】
エポキシ樹脂1:下記式(1)のフェノールビフェニルアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量 273g/eq)。
【0052】
エポキシ樹脂2:下記式(2)のフェノールフェニルアラルキルエポキシ樹脂(エポキシ当量 236g/eq)。
【0053】
エポキシ樹脂3:下記式(3)のクレゾールボラックエポキシ樹脂(エポキシ当量194g/eq)。
【0054】
フェノール系樹脂1:下記式(4)のフェノールビフェニルアラルキル樹脂(活性水素当量205g/eq)。
【0055】
フェノール系樹脂2:下記式(5)のフェノールフェニルアラルキル樹脂(活性水素当量175g/eq)。
【0056】
フェノール系樹脂3:下記式(6)のフェノールノボラック樹脂(活性水素当量107g/eq)。
【0057】
硬化促進触媒: 2−フェニル−4メチルイミダゾール
無機充填材 : 破砕シリカ(平均粒子径18.5μm)
表面処理水酸化アルミニウム:硬化したビスフェノールF型エポキシ樹脂で表面被覆処理品(中心粒子径16μm、Na2O含有濃度0.06%)
未処理水酸化アルミニウム:水酸化アルミニウム(中心粒子径12.4μm、Na2O含有濃度0.06%)
カップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
臭素系の難燃剤:テトラブロモビスフェノールA
難燃助剤:三酸化アンチモン
リン系の難燃剤:赤リン
タングステン酸アンモニウム:パラタングステン酸アンモニウム
【0058】
【化1】
Figure 0003700771
【0059】
<各物性の測定法>
[スパイラルフロー]
各エポキシ樹脂組成物のスパイラルフローは、成形温度175℃、成形圧力70kgf/cm2、成形時間120秒の成形条件でMF−O型の成形機を用いて測定した。
【0060】
[平均ゲルタイム]
各エポキシ樹脂組成物のゲルタイムは、155℃の熱板上で加熱しながら、流動性が失われるまでの時間として測定し、2回の測定値の平均値を平均ゲルタイムとした。
【0061】
[熱膨脹率]
各エポキシ樹脂硬化物の熱膨張率は、樹脂組成物を、トランスファー成形機を用いて、165℃で120秒の条件で予備硬化させた後、150℃で5時間ポストキュアーさせた樹脂硬化物を用いて、TMA測定によって求めた。
【0062】
[難燃性]
各エポキシ樹脂硬化物の難燃性は、樹脂組成物を175℃で20分間プレス成形の後175℃で6時間ポストキュアーさせて板状の樹脂硬化物を作製し、UL試験規格に準じた寸法に切断して、厚さ1.6mmのUL試験片を作製して用いた。以下に、UL94難燃性の判定基準の詳細を示す。
【0063】
エポキシ樹脂硬化物の難燃性は、UL94難燃規格に準じて測定し判定した。即ち、成形板の長さ方向と地面が垂直になるように、サンプル支持具(クランプ)で成形板を固定する。次に、クランプと反対側の成形板の端面にバーナーで10秒間接炎した後、バーナーを遠ざけて成形板上に炎が残っている時間(残炎時間、秒)を測定する(1回目の残炎時間=F1)。この炎が消えたら、再度バーナーで10秒間接炎した後、バーナーを遠ざけて、1回目と同じように残炎時間(2回目の残炎時間=F2)を測定する。この試験を、一つの樹脂硬化物につき5枚の成形板を用いて行い、難燃性を評価した。ただし、難燃性の判定基準を最高のものから最低のものの順に並べると、UL94V−0、V−1、V−2、NOT V−2の順番になる。
【0064】
(1)UL94V−0
ΣF≦50秒
(ΣFは、5枚の成形板を用いて行った試験の残炎時間の合計を示す。すなわち、1枚の成形板についてF1およびF2を測定し、これらを合計したものを1枚の成形板の合計残炎時間Fとする。これを5枚の成形板について測定して、さらに合計したものをΣFとした。)
Fmax≦10秒
(Fmaxは、試験で得られたF1またはF2の中で最長の残炎時間を示す。)ドリップ(接炎により硬化物が液滴れする現象)なし、クランプまで燃えない。
【0065】
(2)UL94V−1
ΣF=250秒、Fmax≦30秒、ドリップなし、クランプまで燃えない。
【0066】
(3)UL94V−2
ΣF≦250秒、Fmax≦30秒、ドリップあり、クランプまで燃えない。
【0067】
(4)UL94 NOT V−2
ΣF>250秒、Fmax>30秒、クランプまで燃えきる。
【0068】
[発煙性試験]
発煙量の測定は、所定の大きさに粉砕したエポキシ樹脂硬化物を所定量秤量し、一定量の支燃ガスを流入させた電気炉加熱炉へ投入した後スパークさせながら1分間の加熱および燃焼させ、この際に発生する煙を光散乱積分方式のデジタル粉塵計を用いて行う。以下に発煙量の測定条件、測定方法の詳細を示す。
【0069】
(1)燃焼条件
発煙量を計測する燃焼条件は、設定温度750±5℃、支燃ガス空気、支燃ガス流量0.50±0.05L/分、試料形状は原則として3×3×3mm程度の粒状とし、これらを数個合わせて0.1±0.01gとする。また、燃焼管内での保持時間は10分とし、試料を炉内へ挿入して1分間の間に発生する煙の量を計測する。尚、燃焼管内での保持時間とは、燃焼管内に試料を設置した直後から、試料を管内から取り出すまでの時間をいう。尚、JIS K7217では、フィラーを含有する樹脂サンプルは可燃物が0.1gとなる様に秤量すると規定されているが、本発明では、無機物を含む樹脂サンプルを0.1g秤量して用いる。これは、樹脂成分のみに着目するのではなく、無機物を含有した樹脂硬化物としての発煙量の比較を目的とするからである。
【0070】
(2)支燃ガス供給部
支燃ガスとは、試料の燃焼に必要なガスをいう。支燃ガス供給部は、燃焼のために必要な支燃ガスを供給する部分で、支燃ガスの量、および、組成を任意に変化できるように構成されなければならない。また、空気、窒素、および、酸素の流量をそれぞれ測定するための流量計を備えていなくてはならない。
【0071】
(3)燃焼部
燃焼部は、燃焼管、加熱炉、温度調節器、温度計、点火装置、および、試料皿保持装置などから構成され、着火時間、および、燃焼時間の測定、並びに、燃焼状態を観察できる構造でなくてはならない。
【0072】
(4)燃焼管
燃焼管の寸法および形状は、JIS−K7217で規定の石英製を用い、下部に直径が5mmのアルミナ球を満たしたものとし、点火装置および試料皿保持装置を備えた石英製の蓋および付属の締め金具によって、密閉できるものでなくてはならない。
【0073】
(5)加熱炉
加熱炉は、加熱管の外側から熱を加え、設定温度に昇温および保温できるものであれば特に限定されない。また加熱炉には、着火時間、および、燃焼時間の測定、並びに、燃焼状態を観察するための観察用窓を設けることができる。
【0074】
(6)温度調節器および温度計
温度調節器、および、温度計は、温度の調節、および、燃焼管内の温度の測定ができるもので、熱電対、補償導線、指示計などから構成されなくてはならない。尚、熱電対は、JIS C1602の構成材料記号がKで、階級記号0.4、素線径1.00±0.04mmのものを使用する。
【0075】
(7)点火装置および試料皿保持装置
点火装置は、電源、および、火花を発生する電極で構成され、電極は試料皿保持装置を兼ね、試料の中央部の真上で火花が発生できるものでなくてはならない。
【0076】
(8)試料皿
試料皿は、石英製で、底部、および、側壁部に直径1.5〜2.5mmの穴を10個以上持つものでなくてはならない。
【0077】
以上の支燃ガス供給部、燃焼部、燃焼管、加熱炉、点火装置、試料保持装置、および、試料保持皿の詳細は、JIS K 7217のプラスチック燃焼ガスの分析方法に記載されており、基本的にこれらの条件に準拠した装置が利用できる。
【0078】
[平均発煙量]
発煙量は、燃焼管の燃焼ガス出口より、長さ25cmの耐熱チュ−ブを用いデジタル粉塵計と接続して計測する。この際に、煙の粒子が冷えて付着しない様に、耐熱チューブの外壁を150℃以上に加熱保温することが望ましい。デジタル粉塵計は、平均粒子径が0.3ミクロンのステアリン酸粒子で校正されたものを用い、1分間に計測される煙の計測数、単位CPM(Count Per Minute)として与えられる。発煙量の比較はこの実測値を用い、合計5回の計測値の平均値を平均発煙量とする。
【0079】
[タンタルコンデンサの焼損時の汚染量の測定]
200×200mm角のプリント配線基板2枚を用意する。その一枚の基板の中央にチップタンタルコンデンサ(NEC製0J107型、定格電圧6.3V、静電容量100μF)を1つ取り付け、チップタンタルコンデンサの固定面を上にして基板を水平に固定し、もう一枚のプリント配線基板を30mmの間隔を空けて平行にセットする。タンタルコンデンサに定格電圧の2倍以上の印加電圧、具体的には15Vの印加電圧を30秒間加えて、タンタルコンデンサを意図的に焼損させる。その際に発生する煙によって、向かい側のプリント配線基板が汚染されるので、その汚染半径を測定して汚染量とする。ここで、汚染半径とは、プリント配線基板上の中央からの最大の汚染距離(単位mm)を汚染半径と定義した。汚染の判断は基本的には目視で行い、プリント配線基板の変色および煤の付着が認められる部分を汚染範囲とした。目視による判定が難しい場合は、基板表面の可視光の反射率が60%以下となる領域を汚染範囲とした。
【0080】
樹脂組成物の特性
<実験例1〜14>
表1〜表3に示した樹脂組成で、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、破砕シリカ、表面処理水酸化アルミニウムおよび微量添加剤をミキサーにて予備混合した後、ロール表面温度100℃のミキシングロールを用いて5分間加熱混練して冷却の後、粉砕して樹脂組成物を得た。各樹脂組成物の測定結果について表1〜表4にまとめて示した。
【0081】
<比較実験例1〜10>
表4〜5に示した樹脂組成で、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、破砕シリカ、未処理水酸化アルミニウムおよび微量添加剤をミキサーにて予備混合した後、ロール表面温度100℃のミキシングロールを用いて5分間加熱混練した後に冷却し、粉砕して樹脂組成物を得た。各樹脂組成物の測定結果について表5に示した。
【0082】
【表1】
Figure 0003700771
【0083】
【表2】
Figure 0003700771
【0084】
【表3】
Figure 0003700771
【0085】
【表4】
Figure 0003700771
【0086】
【表5】
Figure 0003700771
【0087】
実験例1〜14と比較実験例1〜10の比較から、表面処理水酸化アルミニウムを用いたエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂の硬化反応を阻害することなく、実用的な速硬化性が得られることが分かる。
【0088】
また、実験例1〜5から、エポキシ樹脂硬化物をより高度に難燃化させるには、樹脂構造中に耐熱分解性に優れる、フェニレン基やビフェニレン基を含有したエポキシ樹脂やフェノール系樹脂の利用や併用が有利であることもわかる。
【0089】
さらに実験例6〜8から分かるように、タングステン酸アンモニウムを併用すれば、より少ない水酸化アルミニウムの添加量に対しても高度な難燃性を保持できる。
【0090】
表面処理水酸化アルミニウムの量は、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、硬化促進剤、および無機充填材の合計100重量部に対して25重量部以上かつ50重量部未満の範囲で配合することが好ましく、また、シリカ等の無機充填材を併用する合計添加量としては、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、および、硬化促進剤の合計100重量部に対して150重量部以上、かつ500重量部以下が好ましいことが分かる。
【0091】
タンタルコンデンサ焼損時の汚染量と樹脂硬化物の発煙量
参考実施例1〜4>
表6に示した樹脂組成(それぞれ表6中の実施例1〜4と対応)で、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、破砕シリカ、表面処理水酸化アルミニウムおよび微量添加剤をミキサーにて予備混合した後、ロール表面温度100℃のミキシングロールを用いて5分間加熱混練し、冷却の後、粉砕して樹脂組成物を得た。なお、参考実施例4が本発明のタンタルコンデンサの実施例に相当する。
【0092】
発煙量試験用の試料用には、この樹脂組成物をトランスファー成形機を用いて165℃で120秒の条件で予備硬化させた後、150℃で5時間後硬化させた後、この樹脂硬化物を5mm以下に砕き試験試料とした。
【0093】
また、発煙試験用の試料と同じ硬化条件にて、チップタンタルコンデンサ(NEC製0J107型、定格電圧6.3V、静電容量100μF)を作製した。
【0094】
<比較例1〜4>
表7に示した樹脂組成で、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、破砕シリカ、表面未処理水酸化アルミニウムおよび微量添加剤を実施例1と同様に処理して、発煙量試験用の試料およびタンタルコンデンサを作製した。
【0095】
尚、比較例1および2では赤リンが難燃剤であり、比較例3および4では臭素化ビスフェノールA(TBBA)と三酸化アンチモンが難燃剤である。
【0096】
【表6】
Figure 0003700771
【0097】
【表7】
Figure 0003700771
【0098】
表面処理水酸化アルミニウムを用いたエポキシ樹脂硬化物は、臭素系の難燃剤やリン系の難燃剤を添加して難燃化したエポキシ樹脂硬化物と比較して、燃焼時の発煙量が少なく、加えて、難燃剤の熱分解に由来する有害物質も発生しないので安全性にも優れていることが分かる。
【0099】
表面処理水酸化アルミニウムを用いたエポキシ樹脂硬化物で封止されたタンタルコンデンサは、焼損時の汚染範囲が小さく、周囲の汚染が少ないことが分かる。
【0100】
【発明の効果】
本発明のタンタルコンデンサは、従来の臭素系の難燃剤やリン系の難燃剤が添加されたエポキシ樹脂硬化物で封止されているタンタルコンデンサと比べて、故障時(焼損時)の発煙量が少なく周辺部への汚染が少なく、修理やリサイクル性が向上する。また、エポキシ樹脂組成物に添加した難燃剤が電子部品の使用環境へ揮発することも無いので使用時の安全性も向上し、タンタルコンデンサの廃棄物の焼却や焼却灰の埋め立て処理での環境負荷を低減できる。
【0101】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、臭素系の難燃剤やリン系の難燃剤、アンチモン系の難燃助剤を用いることなく、金属アンモニウム塩、表面処理水酸化アルミニウムおよびシリカを併用することによって高度な難燃性を達成し、同時に実用水準の速硬化性や流動性を保持しながら、熱膨張率の低い樹脂硬化物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】タンタルコンデンサの1例を示す斜視図である。
【図2】タンタルコンデンサの1例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 陰極層
2 外部陰極リード
3 導電性接着剤
5 封止材
6 外部陽極リード
9 陽極体
10 タンタル引き出し線

Claims (6)

  1. エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止されたタンタルコンデンサであって、
    このエポキシ樹脂組成物が、エポキシ樹脂(A)、フェノール系樹脂(B)、硬化促進剤(C)、無機充填剤(D)硬化した熱硬化性の樹脂で表面被覆処理された水酸化アルミニウム(以下、表面処理水酸化アルミニウムという。)(E)、およびタングステン酸アンモニウムを必須成分とし、
    前記タングステン酸アンモニウムの配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、前記硬化促進剤(C)、および前記無機充填剤(D)の合計100重量部に対して0.1重量部以上かつ20重量部未満であり、
    前記表面処理水酸化アルミニウム(E)と前記タングステン酸アンモニウムとの合計配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、前記硬化促進剤(C)、および前記無機充填剤(D)の合計100重量部に対して25重量部以上かつ50重量部未満であり、
    前記表面処理水酸化アルミニウム(E)と前記タングステン酸アンモニウムと前記無機充填剤(D)との合計配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、および前記硬化促進剤(C)の合計100重量部に対して150重量部以上かつ500重量部以下であることを特徴とするタンタルコンデンサ。
  2. 前記硬化促進剤(C)が、イミダゾール系の化合物であることを特徴とする請求項1記載のタンタルコンデンサ。
  3. 前記無機充填剤(D)が、少なくともシリカを含むことを特徴とする請求項1または2記載のタンタルコンデンサ。
  4. エポキシ樹脂(A)、フェノール系樹脂(B)、硬化促進剤(C)、無機充填剤(D)、硬化した熱硬化性の樹脂で表面被覆処理された水酸化アルミニウム(以下、表面処理水酸化アルミニウムという。)(E)、およびタングステン酸アンモニウムを必須成分とし、
    前記タングステン酸アンモニウムの配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、前記硬化促進剤(C)、および前記無機充填剤(D)の合計100重量部に対して0.1重量部以上かつ20重量部未満であり、
    前記表面処理水酸化アルミニウム(E)と前記タングステン酸アンモニウムとの合計配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、前記硬化促進剤(C)、および前記無機充填剤(D)の合計100重量部に対して25重量部以上かつ50重量部未満であり、
    前記表面処理水酸化アルミニウム(E)と前記タングステン酸アンモニウムと前記無機充填剤(D)との合計配合割合が、前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール系樹脂(B)、および前記硬化促進剤(C)の合計100重量部に対して150重量部以上かつ500重量部以下であることを特徴とする電気・電子部品封止用途の難燃性のエポキシ樹脂組成物。
  5. 前記硬化促進剤(C)が、イミダゾール系の化合物であることを特徴とする請求項4記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. 前記無機充填剤(D)が、少なくともシリカを含むことを特徴とする請求項4または5記載のエポキシ樹脂組成物。
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