JP2003277628A - 熱硬化性樹脂組成物および該組成物を用いてなる半導体装置 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物および該組成物を用いてなる半導体装置

Info

Publication number
JP2003277628A
JP2003277628A JP2002088635A JP2002088635A JP2003277628A JP 2003277628 A JP2003277628 A JP 2003277628A JP 2002088635 A JP2002088635 A JP 2002088635A JP 2002088635 A JP2002088635 A JP 2002088635A JP 2003277628 A JP2003277628 A JP 2003277628A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin composition
resin
thermosetting resin
epoxy resin
compound
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002088635A
Other languages
English (en)
Inventor
Yuji Ikuta
優司 生田
Yukihiro Kiuchi
幸浩 木内
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NEC Corp
Original Assignee
NEC Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NEC Corp filed Critical NEC Corp
Priority to JP2002088635A priority Critical patent/JP2003277628A/ja
Publication of JP2003277628A publication Critical patent/JP2003277628A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 臭素系の難燃剤やリン系の難燃剤を添加なし
で、高度な難燃性を示し、環境調和性と実用特性に優れ
る熱硬化性樹脂組成物を提供する。 【解決手段】 エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無
機充填材等を含む樹脂組成物の総質量に対して、高温加
熱時にN2、CO、CO2、NH3の何れか一種類以上の
不燃性の熱分解ガスを発生させる化合物を1〜15質量
%および熱硬化性の樹脂で表面処理した水酸化アルミニ
ウムを3〜30質量%で配合する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハロゲン系やリン
系の難燃剤を利用することなく高度な難燃性を示す熱硬
化性樹脂組成物、および、これを用いてなる成形体に関
するものであり、より具体的には、ICやコンデンサー
等に代表される電気・電子部品封止用途の熱硬化性樹脂
組成物、および、これを用いて硬化・成形してなる半導
体装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ICやコンデンサーに代表される
半導体装置類は、主にエポキシ樹脂組成物で硬化成形さ
れているが、エポキシ樹脂組成物は燃えやすいので、火
災時の高度な安全性確保のために、UL安全規格によっ
て難燃性の付与が義務付けられており、通常は難燃剤が
利用されている。例えば、ハロゲン系の難燃剤やリン系
の難燃剤はその代表的なものであり、前者は燃焼時のラ
ジカル捕捉作用、後者は燃焼面でのリン酸化合物による
難燃被膜の形成と炭化促進作用との相乗効果によって、
延焼を防止すると考えられている。あるいは、金属水酸
化物が高温加熱時に引き起こす吸熱反応を利用した安全
性に優れる難燃化技術も開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】まず、ハロゲン系の難
燃剤は、不完全な焼却時に有害な有機臭素化合物、具体
的にはハロゲン化したダイオキシン類が発生し、大気や
土壌を汚染する環境問題がある。加えて、ハロゲン化合
物を含む封止樹脂は、電子部品を高温で使用する際の信
頼性を低下させる問題がある。この現象はハロゲンやア
ンチモンが高温時に半導体装置の金属腐食を促進するた
めと考えられている。
【0004】一方、リン系の難燃剤は、微量の水分と反
応してホスフィンや腐食性のリン酸の発生により耐湿性
に問題が生じる場合があり、特に、要求水準の厳しい電
子部品の封止や積層板などの電子機器材料用途では必ず
しも十分ではなかった。
【0005】これらの難燃化技術が抱える課題に対して
は、それ自体が無害であり、燃焼時に有害ガスの発生が
無く、埋め立て後の土壌や地下水を汚染する心配も無
い、金属水酸化物の利用技術が提案されている(例え
ば、特開2000-265040号公報、特開平10-279782号公
報)。これらの従来技術に記載されている、金属水酸化
物の高充填によるエポキシ樹脂組成物の難燃化技術は、
樹脂硬化物の熱膨張率の増加や、樹脂硬化物の耐熱分解
性を低下させるなどの問題があり、特に、近年盛んにそ
の導入が進められている、鉛フリーはんだを用いる高温
実装技術に対しては、はんだ耐熱性が不十分な場合があ
った。
【0006】加えて、エポキシ樹脂を利用する封止材に
対しては、金属水酸化物の添加量の多少に関わらず、エ
ポキシ樹脂の硬化反応が阻害される問題があり、得られ
た樹脂硬化物は不完全な状態にあるなど、封止材として
の実用特性に問題があった。
【0007】金属水酸化物がエポキシ樹脂の硬化反応を
阻害する課題に対しては、金属水酸化物の表面を熱硬化
性の樹脂、具体的にはエポキシ樹脂でコーティングして
使用する技術(特開平11-228792号公報)が提案されお
り、この従来技術によって解決できるようになった。し
かしながら、上記の技術は、高度な難燃性を保持するた
めの金属水酸化物の配合濃度を低減させる技術ではない
ので、難燃性と流動性や耐熱性などの実用特性の両立に
は至っていない。さらに、この従来技術はリン化合物を
利用する点で、完全な脱ハロゲンと脱リンを達成する難
燃化技術でもなかった。
【0008】近年、脱ハロゲン・脱リン系の難燃剤を利
用して難燃性を付与する手法として、窒素含有化合物の
利用技術が公開されている。例えば、特開2000-239640
号公報に記載の複素環化合物を用いるエポキシ樹脂組成
物は、難燃性の付与効果はみとめられるものの、臭素や
リン系の難燃剤を併用しない組成では高度な難燃性が得
られない。特開平11-100492号公報に記載のエポキシ樹
脂組成物は、高度な難燃性を達成する反面、無機系の難
燃剤として利用できる金属水酸化物の表面処理を行わな
いので、封止材用途ではエポキシ樹脂の硬化反応が低下
する問題がある。また、水酸化マグネシウムと硬化剤と
反応する官能基を含有する含窒素化合物とを併用する特
開平11-217487号公報に記載の組成物は、実質的に無機
充填材の高充填をベースに、前記の添加物を併用するも
のであり、高度な難燃性を達成する反面、樹脂組成物の
流動性などの実用特性を両立するものではない。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に鋭意検討を重ねた結果、本発明の熱硬化性樹脂組成物
は、表面処理された金属水酸化物(A)と、下記部分構
造式(1)〜(4)(化2)で表される化学構造を有し、熱
分解してN2、CO、CO2、NH3の何れか一種類以上
の不燃性ガスを発生させる化合物(B)(以下不燃性ガ
ス発生剤(B))とを必須成分とする熱硬化性の樹脂組
成物、および、これを用いて封止形成してなる半導体装
置である。
【0010】
【化2】
【0011】すなわち、金属水酸化物(A)の表面を樹
脂で処理することによって、エポキシ樹脂等の熱硬化性
樹脂の硬化阻害を回避し実用的な硬化特性を達成すると
同時に、上記部分構造式(1)〜(4)に記載の構造単
位を有する不燃性ガス発生剤(B)の併用によって、特
別な耐熱分解性に優れる樹脂を利用しなくても高度な難
燃性を保持しながら、流動性や耐熱性を低下させる金属
水酸化物の配合率を低減できることを見出した。
【0012】
【本発明の実施形態】本発明の熱硬化性樹脂組成物で利
用できる母材としての熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、
フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾオキサジン樹
脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、
ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、フラン樹
脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、ポリイミド樹脂、ビニ
ル樹脂、尿素樹脂などであり、単独もしくは二種類以上
の併用でもよく、加熱で硬化する樹脂であれば、その反
応様式や反応条件によって制限されるものではない。特
に、これらの樹脂群の中でも、エポキシ樹脂は、経済
性、加工性、電気物性などから好ましく、特に、フェノ
ール樹脂を硬化剤として利用する樹脂組成物が推奨され
る。
【0013】本発明で用いる金属水酸化物は、特に半導
体装置の封止用途で用いる場合には、その粒子表面が物
理的および/または化学的に処理されてなるものであ
る。即ち、本発明の表面処理された金属水酸化物とは、
熱硬化性樹脂へ金属水酸化物を添加する際に引き起こさ
れる硬化反応の阻害に対して改善効果を見出す処置が施
された金属水酸化物を指す。
【0014】表面処理効果の有無は、例えば、以下の具
体的な方法によって定量的に確認できる。未処理の金属
水酸化物を添加してなる熱硬化性樹脂組成物を任意の温
度で加熱保持し、その条件下での硬化開始時間、即ち、
ゲルタイムを測定する。このゲルタイムを短縮させる効
果が見出せる表面処理が施された金属水酸化物を、本発
明では、表面処理された金属水酸化物と呼ぶ。
【0015】金属水酸化物の表面処理剤としては、無機
物や有機物を用いることができ、両者の複合物も利用で
きる。一般的には、加工性や経済性の面から樹脂を用い
た表面処理が行われるが、耐熱分解性や難燃性の低下を
抑えるためには、熱硬化性の樹脂の利用が好ましい。中
でもエポキシ樹脂が利用しやすく、安価で取り扱いが容
易な、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、ビスフェノ
ールF型のエポキシ樹脂、クレゾールノボラック型のエ
ポキシ樹脂等が利用できる。
【0016】本発明では具体的な表面処理法を規定する
ものではないが、例えば、ゾルゲル法を利用したシリカ
等の無機物を金属水酸化物の表面に析出させる方法、溶
剤に溶解させた熱硬化性や熱可塑性樹脂を減圧装置内で
噴霧しながら攪拌加熱して金属水酸化物の表面に樹脂皮
膜を形成させるスプレードライ方法、あるいは、溶剤中
で金属水酸化物の表面に樹脂の皮膜を形成させる方法な
どが知られており、何れも利用できる。
【0017】本発明で使用できる金属水酸化物は、アル
ミニウム、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、ニッケ
ル、コバルト、スズ、モリブデン、銅、鉄、チタンから
選ばれた少なくとも一つの元素から構成される金属水酸
化物である。金属水酸化物の具体的な例としては、水酸
化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウ
ム、水酸化ニッケル、水酸化コバルト、水酸化スズ、モ
リブデン酸亜鉛、水酸化銅、水酸化鉄等を主成分とする
金属水酸化物が挙げられる。これらの金属水酸化物を単
独または数種類を混合あるいは固溶化、あるいは、一方
の金属水酸化物の表面に他の金属水酸化物を被覆させて
用いても差し支えない。中でも水酸化アルミニウムが好
ましく、高度な難燃性や流動性が低下し難い点で優れて
いる。
【0018】本発明で使用する水酸化アルミニウムは、
その粒子径、比表面積、結晶形態によって制限されるも
のではなく、通常は、平均粒子径が0.5〜100μ
m、好ましくは1〜50μmである。平均粒子径が10
0μmを超えると半導体装置の微細構造よりも大きくな
り、適切な樹脂封止が行えなくなることがある。逆に
0.5μm未満になると樹脂組成物の粘度が著しく上昇
し、封止材の成形性を低下させると共に、水酸化アルミ
ニウムの耐熱性が低下する。加えて、不純物であるナト
リウム、例えばNa2O等の含有濃度は、耐熱分解性を
向上させる上で、できる限り低いことが好ましく、実用
的には0.1質量%未満であることが好ましい。不純物
であるナトリウム濃度が0.1質量%を超えると水酸化
アルミニウム自身の耐熱性が著しく低下してしまうこと
がある。
【0019】本発明の熱硬化性樹脂組成物の総質量に対
する金属水酸化物の含有率は5〜30質量%であり、よ
り好ましくは、10〜25質量%である。ここで、上記
熱硬化性樹脂組成物の総質量とは、エポキシ樹脂、硬化
剤のほか、充填材等の各種添加剤を含む総質量いう。上
記のような含有率にすれば、特開平11-228792号公報で
推奨する水酸化アルミニウムの添加量では得られなかっ
た耐熱性や流動性等の実用特性を良好に保持しつつ、同
時に高度な難燃性も両立できる。含有率が30質量%を
超えると、鉛フリーの高温はんだでの高温実装工程での
はんだ耐熱性が不十分となる場合があり、逆に5質量%
未満の添加率では、併用する不燃性ガス発生剤の添加量
を著しく増加させねばならず、耐湿信頼性の低下や樹脂
組成物の流動性が低下する問題が生じる。
【0020】さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物に
は、必要に応じて金属酸化物を併用してもよい。併用で
きる金属酸化物の具体的な例としては、三酸化タングス
テン、パラタングステン酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、
酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅、酸化カルシウム等が挙げら
れるが、特に限定されるものではない。これらの金属酸
化物を単独または、数種類を混合あるいは固溶化させた
ものを、金属水酸化物と混合または、金属水酸化物の表
面に被覆あるいは金属水酸化物と固溶化させて用いても
差し支えない。
【0021】本発明の不燃性ガス発生剤(B)は、樹脂
組成物等が燃焼などで熱分解する温度以上で、揮発、お
よび、熱分解して不燃性のガス、例えば、N2、NH3
CO、CO2などを発生させる化合物質である。不燃性
ガス発生剤(B)の熱分解開始温度は、母材として利用
する熱硬化性樹脂の硬化開始温度よりも高いことが必要
である。これは、熱硬化性樹脂組成物の成型加工時に、
不燃性ガス発生剤(B)による樹脂成形物の発泡化を防
止する上で必要であり、さらに、実用的には、熱分解開
始温度が150℃以上であることが望ましい。これらの
温度条件を満たすことで、成型加工時は安定に利用で
き、燃焼等の高温加熱時でのみ熱分解して不燃性のガス
を発生し、難燃性を付与できる。
【0022】不燃性ガス発生剤(B)は、下記部分構造
式(1)〜(4)(化3)で表される構造単位を化学構
造中に一つ又は複数含有することを特徴とする。これら
の構造単位を分子構造中に含有することで、熱分解によ
ってCO、CO2、N2、NH3などの不燃性のガスを発生
させることができる。
【0023】
【化3】
【0024】より具体的には、化学式(5)〜(10)
(化4)で表される化合物であり、カルボンアミドおよ
びその誘導体、ヒドラゾジカルボンアミドおよびその誘
導体、イソシアヌル酸およびその誘導体、メラムおよび
その誘導体が挙げられる。
【0025】
【化4】
【0026】中でも化学式(8)で表されるイソシアヌ
ル酸およびその誘導体はより難燃性に優れ、例えば、ト
リグリシジルイソシアヌル酸、ジグリシジルイソシアヌ
ル酸、モノグリシジルイソシアヌル酸、ジアリルイソシ
アヌル酸、ジアリルモノグリシジルイソシアヌル酸、モ
ノアリルイソシアヌル酸、モノアリルジグリシジルイソ
シアヌル酸、トリス(3,5-ジ−t−ブチル−4−ヒ
ドロキシルベンジル)イソシアヌレート、2,4−ジア
ミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンイソシアヌ
ル酸付加塩、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオ
キシ−1,3,5−トリアジンイソシアヌル酸付加塩、
2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル−
(1’))エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加
塩、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加塩、
2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加塩、およ
び、メラミンイソシアヌレートであり、その他にも、イ
ソシアヌル酸樹脂なども利用できる。
【0027】グリシジル基で変性したイソシアヌル酸誘
導体、例えば、トリグリシジルイソシアヌル酸、ジグリ
シジルイソシアヌル酸およびモノグリシジルイソシアヌ
ル酸類や、アルコール性のOH基を含有するイソシアヌ
ル酸誘導体、例えば、トリス(2−ヒドロキシプロピ
ル)イソシアヌラート等は、単に添加されるのみなら
ず、その一部がエポキシ樹脂やフェノール樹脂と化学結
合を形成するので安定性に優れる。
【0028】本発明の不燃性ガス発生剤(B)の含有率
は、熱硬化性樹脂組成物の総質量に対して、1〜15質
量%であり、より好ましくは3〜10質量%である。そ
の含有率が1質量%未満の場合は、樹脂硬化物の高度な
難燃性を保持するために併用する水酸化アルミニウムの
含有率が上昇するため、成形性や耐熱性の低下、あるい
は、樹脂硬化物の誘電率が上昇し、実用特性の両立が難
しくなる。逆に、配合濃度が15質量%を超える場合
は、併用する水酸化アルミニウムの配合濃度を低減でき
る半面、樹脂組成物の粘度が上昇して流動性が低下する
こと、加えて、樹脂硬化物の吸水率が上昇するのでこの
樹脂組成物で封止成形して成る半導体装置の信頼性が低
下する場合がある。
【0029】不燃性ガス発生剤(B)と水酸化アルミニ
ウムとの併用時に得られる高度な難燃性は、単に前者の
熱分解で生じる不燃性ガスによる可燃性ガスの稀釈効果
と、後者の吸熱効果との加算効果ではない。より詳しく
は、不燃性ガス発生剤としてイソシアヌル酸およびその
誘導体を利用する場合、熱分解反応の初期過程でイソシ
アン酸が発生するが、これ自身は不燃性であり、熱分解
によってCO、CO2、NH3へと変化する。このイソシ
アン酸は、水の存在によって、CO2とNH3とに加水分
解されるが、金属水酸化物である水酸化アルミニウム
は、水の供給源となってこの加水分解反応を促進させ、
この結果イソシアヌル酸からの不燃性ガスの発生が促進
され、同時に水酸化アミニウムの吸熱効果との相乗作用
によって、高度な難燃性が得られるようになる。この相
乗作用は、同様に加熱時に水を発生する水酸化マグネシ
ウムに対しても期待される効果であるが、同様の利用を
試みても水酸化アルミニウムで得られる高い難燃効果を
見出せないことから、特に水酸化アルミニウムとの組み
合わせで得られる特異的な現象であることを見出した。
【0030】この様な少量のイソシアヌル酸類の併用で
得られる相乗効果によって、厚さが1.6mm以下の試
験片に対してUL94難燃規格のV−0水準の高度な難
燃水準を得るためには、単独では多量に添加しなくては
ならなかった水酸化アルミニウムの添加量を、30質量
%以下、より好ましくは10〜25質量%まで低減でき
るようになった。この少量の水酸化アルミニウムとイソ
シアヌル酸類の併用効果は、特別に耐熱分解性や難燃性
に優れるエポキシ樹脂および硬化剤を用いなくても、汎
用的に用いられ、それ自身は難燃性や耐熱分解性には特
に優れていないエポキシ樹脂や硬化剤を利用する際にも
得られる。
【0031】本発明のフェノール系樹脂(D)は、フェ
ノール性水酸基を有する樹脂である限り、特に限定され
るものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、
フェノールフェニルアラルキル樹脂、フェノールビフェ
ニルアラルキル樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ある
いは、α−ナフトール、β−ナフトール等のナフトール
類、ビスフェノールフルオレン型フェノール、あるいは
クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチル
フェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール等
のアルキルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノ
ールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール等
の多価フェノール類、フェニルフェノール、アミノフェ
ノール等が挙げられる。これらのフェノール類は、その
使用にあたって一種類に限定されるものではなく、二種
類以上の併用も可能である。上記フェノール系樹脂以外
に、その他のフェノール系樹脂やアミン系化合物を組み
合わせて使用することができる。併用できるフェノール
系樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、フ
ェノールビフェニルトリアジン型樹脂、フェノールフェ
ニレントリアジン型樹脂、フェノールトリアジン型樹
脂、ビフェニル−4,4’−ジヒドロキシルエーテルと
3,3',5,5'−テトラメチルビフェニル−4,4'
−ジヒドロキシルエーテル、テトラフェニロールエタ
ン、トリスフェニロールエタン、フェノールノボラック
樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型
樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールS型樹
脂、ポリフェノール型樹脂、脂肪族フェノール系樹脂、
芳香族エステル型フェノール系樹脂、環状脂肪族エステ
ル型フェノール系樹脂およびエーテルエステル型フェノ
ール系樹脂等が挙げられる。また、これらのフェノール
系樹脂は、その使用にあたって一種類に限定されるもの
ではなく、二種類以上の併用も可能である。中でも、特
に好ましいフェノール樹脂類の具体的な化学構造を、化
学式(11)〜(20)(化5)に示す。
【0032】
【化5】
【0033】本発明のエポキシ樹脂(C)は、電子部品
の封止で用いられるエポキシ樹脂材料であれば特に限定
されるものではなく、一般に用いられる、ビスフェノー
ルA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹
脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂を利用出来る。ま
たノボラック型のエポキシ樹脂としては、例えば、フェ
ノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラッ
ク型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型
エポキシ樹脂、フェノールフェニレンアラルキル型エポ
キシ樹脂、フェノールジフェニルエーテルアラルキル型
エポキシ樹脂、ナフタレン含有ノボラック型エポキシ樹
脂、アントラセン含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビフ
ェニレン含有ノボラック型エポキシ樹脂、フルオレン含
有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレ
ン含有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールS含
有ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF含有ノ
ボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含有ノボラ
ック型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でもより好まし
い構造としては、上記化学式(11)〜(20)で示し
たフェノール樹脂類の水酸基がグリシジルエーテル化さ
れたものである。これらのエポキシ樹脂は、その使用に
あたって一種類に限定されるものではなく、二種類以上
の併用も可能である。
【0034】本発明で利用できるエポキシ樹脂やフェノ
ール系樹脂が、これらの主鎖構造中に耐熱分解性に優れ
る芳香族基、より好ましくはビフェニル、フェニレン、
ナフタレンを含有するアラルキル型の樹脂構造である場
合には、これらの官能基が疎水性に優れるため、樹脂硬
化物の耐湿信頼性が改善される。また、これらの芳香族
基の含有によって、樹脂硬化物の架橋密度が適度に減少
するので、加熱時にゴム状となり、応力吸収機能が発現
する。これらの樹脂を用いる樹脂組成物を硬化させてな
る半導体装置は、そのハンダ耐熱性に優れるのみならず
難燃性にも優れる。この難燃性は、耐熱分解性に優れる
芳香族基の導入によって樹脂自身の難燃性が向上するこ
とに加え、高温加熱時にゴム状となった樹脂硬化物内部
で生じた熱分解ガスによる発泡構造の形成による断熱作
用との相乗効果によって発現する。
【0035】本発明の難燃性の熱硬化性樹脂組成物にお
いて、不燃性ガス発生剤(B)の化学構造が、主剤であ
るエポキシ樹脂(C)の化学構造と同一の化学式、具体
的には化学式(21)、(22)(化6)で示されイソ
シアヌル酸の誘導体である場合には、より高度な難燃性
が得られる。この樹脂組成物の高度な難燃性は、主剤で
あるエポキシ樹脂自身が不燃性のガスを発生させる化合
物であること起因する。
【0036】
【化6】
【0037】同様に、本発明の難燃性の熱硬化性樹脂組
成物において、不燃性のガス発生剤(B)の化学構造
が、硬化剤であるフェノール系樹脂(D)の化学構造と
同一の化学式、具体的には化学式(23)、(24)
(化7)で示されるイソシアヌル酸の誘導体である場合
にも、高度な難燃性が得られる。基本的にフェノール性
の水酸基を複数個含有するイソシアヌル酸の誘導体を利
用できる。
【0038】
【化7】
【0039】さらに、不燃性ガス発生剤(B)、エポキ
シ樹脂(C)およびフェノール系樹脂(D)のいずれも
が、イソシアヌル酸の誘導体であり、その組み合わせか
らなる樹脂組成物である場合に、高度な難燃性を得るこ
とができる。例えば、化学式(21)および/または化
学式(22)と、化学式(23)および/または化学式
(24)との組み合わせが挙げられる。
【0040】本発明のエポキシ樹脂組成物を構成するエ
ポキシ樹脂(C)とフェノール系樹脂(D)の配合比
は、すなわち、フェノール系樹脂の水酸基の合計数(O
H)に対する、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数(E
p)との比(OH/Ep)は、0.5〜2.5であり、
より好ましくは0.7〜2.0である。OH/Epが
0.7に満たない場合には、前記硬化物中の硬化剤とエ
ポキシ樹脂が形成した架橋構造に残余している未反応基
に由来する可燃成分の発生量が増加することから、難燃
性の向上を阻害する可能性がある。また、前記OH/E
pが2.5を超える場合には、前記エポキシ樹脂と硬化
剤を反応させてなる前記硬化物の架橋密度が著しく低下
することによって、硬化物の耐熱性や強度が不足する場
合がある。
【0041】本発明の無機質充填材(E)は、半導体封
止樹脂に一般に使用されている公知の充填材を使用する
ことができ、例えば、溶融シリカ、結晶質シリカ、アル
ミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭
化珪素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、タルク、酸化チタ
ン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、クレー、フライ
アッシュ、ジルコニア等の粉末、、ガラス繊維、カ−ボ
ンファイバ−等の繊維が挙げられる。これらの無機質充
填剤は、一種を単独で用いてもよく、二種 以上を混合
して用いてもよい。特に半導体装置用のエポキシ樹脂組
成物に対しては、溶融シリカや結晶質シリカの粉体が好
ましい。また、これらの粉体は破砕形や球状形を利用す
ることができ、異なる形状物の混合比率や粒度分布は特
に限定されない。これらの無機質充填剤の中でも、特
に、熱膨脹率が低い溶融シリカの利用が望ましく、その
形状は不定形、および、球形が利用でき、両者を混合し
て利用してもよい。
【0042】また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は必要
に応じて、下記の一般的に知られる硬化促進剤を含有し
てもよい。例えば、ジアザビシクロウンデセン−オクチ
ル酸塩、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデ
セン−7等のジアザビシクロアルケン及びその誘導体、
トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、
トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、テト
ラフェニルホスホニウム・テトラボレート等のテトラ置
換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4
−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−
メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラ
フェニルボロン塩、トリエチレンジアミン、ベンジルジ
メチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノ
エタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノー
ル等の三級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−ウ
ンデシルイミダゾール、2−ヘプタシルイミダゾール、
1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチ
ルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェ
ニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フ
ェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダ
ゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、
シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、
1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−
ヘプタデシルイミダゾール、1-シアノエチル−2−フェ
ニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4
−メチルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエ
チル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、
1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメ
リテイト、2,4−ジアミノ−6−(2’―メチルイミ
ダゾリル−(1’))−エチル−s−トリアジン、2,
4−ジアミノ−6−(2’−ウンデシルイミダゾリル)
−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−
(2’−エチル−4−メチルイミダゾリル-(1’))−
エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−
(2’−メチルイミダゾリル−(1’))−エチル−s
−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミ
ダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾー
ルイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒ
ドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4-メチ
ル−5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエ
チル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキ
シ)メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2
−フェニルイミダゾリン、1−ベンジル−2−フェニル
イミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6
−メタクリロイルオキシ−s−トリアジン、2,4−ジ
アミノ−6−ビニル−1,3,5−トリアジンイソシア
ヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6―メタクリロイル
オキシ−1,3,5−トリアジンイソシアヌル酸付加物
などのイミダゾール化合物、および、これらの変性物な
どが挙げられ、二種類以上を混合しての利用も可能であ
る。なお、本発明で利用できる硬化促進剤はこれらに限
定されるものではない。
【0043】本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物には、
他の添加剤として、必要に応じて、カーボンブラック等
の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応
力化剤、シリコーンパウダー等の可撓剤、天然ワック
ス、合成ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、エ
ステル系ワックス、ポリオレフィン系ワックス、パラフ
ィン等の離型剤、有機シラン化合物、有機チタネート化
合物、有機アルミネート化合物等の表面処理剤、ハイド
ロタルサイト等のイオン捕捉剤などの各種添加剤を適宜
配合しても差し支えない。
【0044】本発明の難燃性エポキシ樹脂組成物には、
この他必要に応じて、赤リン、リン酸化合物、有機リン
化合物等のリン系難燃剤を難燃助剤として適宜添加して
も良く、その使用を制限するものではない。
【0045】
【実施例】以下に、実施例により本発明を具体的に示す
が、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0046】まず、実施例および比較例で用いた原材料
について説明する。
【0047】[エポキシ樹脂1]下記化学式(25)
(化8)のフェノールビフェニルアラルキルエポキシ樹
脂(PB)(エポキシ当量 273g/eq、n=0〜
10、OGはグリシジルオキシ基)
【0048】
【化8】
【0049】[エポキシ樹脂2]下記化学式(26)
(化9)のフェノールフェニルアラルキルエポキシ樹脂
(PX)(エポキシ当量 236g/eq、n=0〜1
0、OGはグリシジルオキシ基)
【0050】
【化9】
【0051】[エポキシ樹脂3]下記化学式(27)
(化10)のクレゾールボラックエポキシ樹脂(CN)
(エポキシ当量 194g/eq、n=0〜10、OG
はグリシジルオキシ基)
【0052】
【化10】
【0053】[エポキシ樹脂4]下記化学式(21)
(化11)のトリグリシジルイソシアヌル酸(TGCI
A)(エポキシ当量 100.7g/eq)
【0054】
【化11】
【0055】[フェノール系樹脂1]下記化学式(2
8)(化12)のフェノールビフェニルアラルキル樹脂
(PB)(活性水素当量 205g/eq、n=0〜1
0)
【0056】
【化12】
【0057】[フェノール系樹脂2]下記化学式(2
9)(化13)のフェノールフェニルアラルキル樹脂
(PX)(活性水素当量175g/eq、n=0〜1
0)
【0058】
【化13】
【0059】[フェノール系樹脂3]下記化学式(3
0)(化14)のフェノールノボラック樹脂(PN)
(活性水素当量 107g/eq、n=0〜10)
【0060】
【化14】
【0061】[不燃性ガス発生剤(B)]ヒドラゾジカ
ルボンアミドまたはイソシアヌル酸
【0062】[硬化促進触媒]2−フェニル−4−メチ
ルイミダゾール
【0063】[無機充填材1]溶融破砕シリカ(平均粒
子径18.5μm(BET法で測定))
【0064】[水酸化アルミニウム1]硬化したビスフ
ェノールF型エポキシ樹脂での表面処理品(中心粒子径
16μm、Na2O含有濃度0.06%)
【0065】[水酸化アルミニウム2]未処理の水酸化
アルミニウム(中心粒子径12.4μm、Na2O含有
濃度0.06%)
【0066】[水酸化マグネシウム]未処理の水酸化マ
グネシウム(中心粒子径1.04μm、Na2O含有濃
度10ppm)
【0067】[シランカップリング剤1]γ−グリシド
キシプロピルトリメトキシシラン
【0068】[樹脂組成物の作製方法]実施例、比較例
および実験例で用いた樹脂組成物は、表1〜3に記載の
樹脂配合で、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進触媒、破
砕シリカおよび微量添加剤をミキサーにて予備混合した
後、ロール表面温度100℃のミキシングロールを用い
て5分間加熱混練し、冷却の後、粉砕して樹脂組成物を
得た。
【0069】[ゲルタイムの測定方法]実施例および比
較例で用いた樹脂組成物のゲルタイムは、前記の方法で
作製した樹脂組成物を用い、155℃の熱板上で加熱し
ながら、流動性が失われるまでの時間として測定し、2
回の測定値の平均値を平均ゲルタイムとした。ゲルタイ
ムの評価結果は下の基準で表記した。 ○:50秒未満 ×:50秒以上
【0070】[樹脂組成物のスパイラルフローの測定方
法]実施例および比較例に記載のエポキシ樹脂組成物の
スパイラルフローは、前記の方法で作製した樹脂組成物
を、成形温度175℃、成形圧力70kgf/cm 2
成形時間120秒の成形条件でMF−O型の成形機を用
いて測定した。スパイラルフローの評価結果は下の基準
で表記した。 ○:50cm以上 △:30cm以上50cm未満 ×:30cm未満
【0071】[熱膨脹率の測定方法]実施例および比較
例に記載のエポキシ樹脂硬化物の熱膨張率(α1)は、
前記の方法で作製した樹脂組成物を、トランスファー成
形機を用いて、165℃で120秒の条件で予備硬化さ
せた後、150℃で5時間ポストキュアーさせた樹脂硬
化物を用いて、TMA測定によって求めた。熱膨脹率
(α1)の評価結果は下の基準で表記した。 ◎:2.0ppm未満 ○:2.0ppm以上2.2ppm未満 △:2.2ppm以上2.5ppm未満 ×:2.5ppm以上
【0072】[煮沸吸水率の測定方法]実施例および比
較例に記載のエポキシ樹脂硬化物の煮沸吸水率は、前記
の方法で作製した樹脂組成物を、165℃で120秒間
ポストキュアーさせた樹脂硬化物を用い、まず100℃
で2時間の乾燥処理を行いデジケータ内で1時間冷却の
のち初期質量を測定した。次に、これを100℃で24
時間の煮沸吸水処理したのち冷水で15分冷却し、表面
に付着した水分を拭き取り、これを秤量して吸水後の質
量を測定した。吸水率は、煮沸前後での質量の変化率を
求め、2本の試験片の平均値から算出した。煮沸吸水率
の評価結果は下の基準で表記した。 ◎:0.25質量%未満 ○:0.25質量%以上0.5質量%未満 △:0.5質量%以上1.0質量%未満 ×:1.0質量%以上
【0073】[樹脂硬化物の難燃性の測定方法]実施
例、比較例および実験例に記載のエポキシ樹脂硬化物の
難燃性は、前記の方法で作製した樹脂組成物を、175
℃で20分間プレス成形の後、UL試験規格に準じた寸
法に切断して、厚さ1.6mmのUL試験片を作製して
用いた。
【0074】[樹脂硬化物の難燃性の判定方法]実施
例、比較例および実験例に示したエポキシ樹脂硬化物の
難燃性は、UL94難燃規格に準じて測定し判定した。
即ち、成形板の長さ方向と地面が垂直になるように、サ
ンプル支持具(クランプ)で成形板を固定する。次に、
クランプと反対側の成形板の端面にバーナーで10秒間
接炎した後、バーナーを遠ざけて成形板上に炎が残って
いる時間(残炎時間、秒)を測定する(1回目の残炎時
間=F1)。この炎が消えたら、再度バーナーで10秒
間接炎した後、バーナーを遠ざけて、1回目と同じよう
に残炎時間(2回目の残炎時間=F2)を測定する。こ
の試験を、一つの樹脂硬化物につき5枚の成形板を用い
て行い、難燃性を評価した。
【0075】UL94難燃規格の難燃性の判定基準を最
高のものから最低のものの順に並べると、V−0、V−
1、V−2、NOT V−2の順番になる。以下に、そ
の基準を記載する。 (1)UL94V−0 ΣF≦50秒(ΣFは、5枚の成形板を用いて行った試
験の残炎時間の合計を示す。すなわち、1枚の成形板に
ついてF1およびF2を測定し、これらを合計したもの
1枚の成形板の合計残炎時間Fとする。これを5枚の成
形板について測定して、さらに合計したものをΣFとし
た。) Fmax≦10秒(Fmaxは、試験で得られたF1ま
たはF2の中で最長の残炎時間を示す。) ドリップ(接炎により硬化物が液垂れする現象)無、ク
ランプまで燃えない。 (2)UL94V−1 ΣF=250秒、Fmax≦30秒、ドリップ無、クラ
ンプまで燃えない。 (3)UL94V−2 ΣF≦250秒、Fmax≦30秒、ドリップ有、クラ
ンプまで燃えない。 (4)UL94 NOT V−2 ΣF>250秒、Fmax>30秒、クランプまで燃え
きる。
【0076】難燃性の評価結果は下の基準で表記した。 ◎:1.0mmでV−0 ○:1.6mmでV−0 △:1.6mmでV−1 ×:1.6mmでV−2以下の難燃性
【0077】[半導体装置の成型方法]実施例および比
較例で用いた半導体装置は、線幅及び線間隔10μmの
アルミニウム製の配線(ただし、パッド部は70μm
角)を施した縦3.0mm×横3.5mm×厚さ350
μmのシリコン製チップを、16ピンDIP用の42ア
ロイのフレームに搭載して、前記パッド部に直径が28
μmの金線をワイヤボンドした後、これをシングルプラ
ンジャータイプのトランスファー成形機を用いてタブレ
ットで封入して(予熱温度85℃、注入時間15秒、注
入圧力100kgf/cm2〈実効圧〉、成型温度17
5℃、成形時間120秒)、16ピンDIP型(縦18
×横5×厚さ3mm)を得た。これを、175℃で4時
間、後硬化させ半導体装置とした。
【0078】[半導体装置のハンダ耐熱性試験方法]実
施例および比較例で示したハンダ耐熱性試験は、上記の
半導体装置50個を用いて、温度260℃で10秒間の
リフロー加熱処理を3回実施し、回収された半導体装置
の誘電正接、等価直列抵抗および外観を観察した。これ
らの評価項目に対して良否を総合的に判定した。ハンダ
耐熱性の評価結果は下の基準で表記した。 ◎:不良率10%未満 ○:不良率10%以上20%未満 △:不良率20%以上30%未満 ×:不良率30%以上
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】実施例1〜6 安価な汎用型のクレゾールノボラック型のエポキシ樹脂
とフェノールノボラック型のフェノール樹脂に、表面処
理した水酸化アルミニウムと不燃性ガス発生剤を併用し
た例である。何れも、表面処理した水酸化アルミニウム
の利用でエポキシ樹脂の高い反応性が保持でき、良好な
ゲルタイムを得ることができる。加えて、はんだ耐熱性
や熱膨脹率を悪化させる水酸化アルミニウムの添加量
は、10〜25質量%の低濃度であっても高度な難燃性
を実現している。
【0083】実施例7〜8 芳香族基を含有するエポキシ樹脂やフェノール樹脂の利
用によって、難燃性、煮沸吸水率、および、はんだ耐熱
性がより優れる例である。
【0084】実施例9〜11 エポキシ樹脂が不燃性ガス発生剤を兼ねる例であり、こ
の場合も、高度な難燃性と良好なはんだ耐熱性が得られ
ることがわかる。
【0085】比較例1〜4 各種のエポキシ樹脂およびフェノール樹脂との組み合わ
せに対して、表面処理を行わない水酸化アルミニウムを
用いた例である。これらの樹脂組成物はゲルタイム、す
なわち、エポキシ樹脂の硬化反応が妨げられており、実
用的な反応性を得られない。この樹脂硬化物は不完全な
硬化状態にあるので、難燃性、吸水率、熱膨脹率、およ
び、はんだ耐熱性等が著しく悪化する。
【0086】比較例5および比較例6 表面処理した水酸化アルミニウムを用いるが、その添加
量を、推奨範囲である5〜30質量%以外に設定した。
水酸化アルミニウムの添加量が5質量%を下回る場合
(比較例5)には十分な難燃性が得られない。逆に水酸
化アルミニウムの添加量が30質量%を超える場合(比
較例6)には、高度な難燃性が得られても流動性、熱膨
脹率、および、はんだ耐熱性等の実用特性を満たさない
ことが分かる。
【0087】比較例7および比較例8 不燃性ガス発生剤の添加量を推奨範囲である1〜15質
量%以外に設定した。不燃性ガス発生剤の添加量の添加
量が1質量%を下回る場合(比較例7)には十分な難燃
性の確保には多量の水酸化アルミニウムが必要であり、
この結果、著しい流動性の低下、熱膨脹率の上昇、およ
び、はんだ耐熱性の低下を引き起こし実用特性のバラン
スがとれない。逆に不燃性ガス発生剤の添加量が15質
量%を超える場合(比較例8)には、難燃性は確保でき
るが、樹脂組成物の著しい流動性の低下や樹脂硬化物の
吸湿量の増加によって実用特性が得られなくなる。
【0088】実験例1〜4 表3は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムおよ
び不燃性ガス発生剤の単独および併用した場合の難燃性
を比較した実験例である。実験例1、2は、表面処理水
酸化アルミニウムおよびイソシアヌル酸を本発明に記載
の推奨濃度範囲内で、それぞれ単独利用した場合の難燃
性であるが何れも不十分である。一方、実験例3は、実
験例1、2で使用した表面処理水酸化アルミニウムとイ
ソシアヌル酸を併用した場合であり、両者の併用によっ
て始めて高度な難燃性を示すことがわかる。一方、金属
水酸化物として表面処理していない水酸化マグネシウム
を利用する実験例4では、難燃性が低下する。
【0089】以上より、本発明の樹脂組成物は、単に金
属水酸化物の吸熱作用と不燃性ガス発生剤との単純な併
用効果ではなく、特に水酸化アルミニウムとの併用によ
る相乗効果によるものであることがわかる。
【0090】以上の実施例および比較例から、実用的な
難燃性のエポキシ樹脂封止材を得るためには、水酸化ア
ルミニウムの表面処理が必要不可欠であること、加え
て、水酸化アルミニウムの添加量を低減することが重要
であり、水酸化アルミニウムを低減する手段として、不
燃性ガス発生剤を1〜15質量%の配合で併用すること
によって、高度な難燃性と良好な実用特性をバランス良
く達成できる。
【0091】
【発明の効果】本発明の熱硬化性樹脂組成物は、表面処
理した金属水酸化物と、熱分解してN 2、CO、CO2
NH3の何れか一種類以上の不燃性ガスを発生させる化
合物との併用によって、それぞれを単独で利用する従来
の技術では得られなかった特性、即ち、金属水酸化物に
対しては耐熱分解性、吸湿性、誘電特性などの低下や、
不燃性のガスを発生させる化合物に対しては難燃性の不
足や流動性の低下といた課題を解決すると同時に、リン
化合物、アンチモン化合物、ハロゲン化合物等を利用し
ない高度な環境調和性を達成する難燃性の熱硬化性樹脂
組成物、および、これを用いてなる半導体装置を提供で
きる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 23/31 Fターム(参考) 4J002 CC031 CC161 CC181 CD001 CE001 CF001 CJ001 CM041 CP031 DA018 DE076 DE086 DE096 DE106 DE136 DE146 DF018 DJ008 DL008 EQ017 EU187 FA048 FB006 FD018 FD137 GQ00 4M109 AA01 EA02 EB03 EB07 EB12 EB17 EC05

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面処理された金属水酸化物(A)およ
    び熱分解してN2、CO、CO2、NH3の何れか一種類
    以上の不燃性ガスを発生する化合物(B)を必須成分と
    して含有することを特徴とする、熱硬化性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 樹脂で表面処理された金属水酸化物
    (A)および熱分解してN2、CO、CO2、NH3の何
    れか一種類以上の不燃性ガスを発生する化合物(B)を
    必須成分として含有することを特徴とする、熱硬化性樹
    脂組成物。
  3. 【請求項3】 熱硬化性の樹脂で表面処理された金属水
    酸化物(A)、および、熱分解してN2、CO、CO2
    NH3の何れか一種類以上の不燃性のガスを発生する化
    合物(B)を必須成分として含有することを特徴とす
    る、熱硬化性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 エポキシ樹脂(C)を必須成分として含
    有することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載
    の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 フェノール系樹脂(D)を必須成分とし
    て含有することを特徴とする、請求項1〜4の何れかに
    記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 無機充填材(E)を必須成分として含有
    することを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の
    熱硬化性樹脂組成物。
  7. 【請求項7】 金属水酸化物(A)が水酸化アルミニウ
    ムであることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記
    載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 【請求項8】 熱分解してN2、CO、CO2、NH3
    何れか一種類以上の不燃性ガスを発生させる化合物
    (B)の分解開始温度が、母材として利用する熱硬化性
    樹脂の硬化開始温度よりも高いことを特徴とする、請求
    項1〜7の何れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  9. 【請求項9】 熱分解してN2、CO、CO2、NH3
    何れか一種類以上の不燃性ガスを発生させる化合物
    (B)が、部分構造式(1)〜(4)(化1)からなる
    群より選ばれる、一種類又は二種類以上の構造単位を有
    する化合物であることを特徴とする、請求項1〜8の何
    れかに記載の熱硬化性樹脂組成物。 【化1】
  10. 【請求項10】 熱分解してN2、CO、CO2、NH3
    の何れか一種類以上の不燃性ガスを発生させる化合物
    (B)が、イソシアヌル酸とその誘導体からなる群より
    選ばれることを特徴とする、請求項1〜9の何れかに記
    載の熱硬化性樹脂組成物。
  11. 【請求項11】 前記請求項1〜10の何れかに記載の
    熱硬化性樹脂組成物で封止し硬化成形されてなることを
    特徴とする、半導体装置。
JP2002088635A 2002-03-27 2002-03-27 熱硬化性樹脂組成物および該組成物を用いてなる半導体装置 Pending JP2003277628A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002088635A JP2003277628A (ja) 2002-03-27 2002-03-27 熱硬化性樹脂組成物および該組成物を用いてなる半導体装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002088635A JP2003277628A (ja) 2002-03-27 2002-03-27 熱硬化性樹脂組成物および該組成物を用いてなる半導体装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003277628A true JP2003277628A (ja) 2003-10-02

Family

ID=29234437

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002088635A Pending JP2003277628A (ja) 2002-03-27 2002-03-27 熱硬化性樹脂組成物および該組成物を用いてなる半導体装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003277628A (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010222569A (ja) * 2009-02-24 2010-10-07 Hitachi Chem Co Ltd 樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグ、積層板、配線板
US8828500B2 (en) 2008-11-28 2014-09-09 Three Bond Co., Ltd. Photocurable resin composition for sealing organic EL device
US9265145B2 (en) 2009-02-24 2016-02-16 Hitachi Chemical Company, Ltd. Varnish, prepreg, film with resin, metal foil-clad laminate, and printed circuit board

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8828500B2 (en) 2008-11-28 2014-09-09 Three Bond Co., Ltd. Photocurable resin composition for sealing organic EL device
JP2010222569A (ja) * 2009-02-24 2010-10-07 Hitachi Chem Co Ltd 樹脂組成物及びそれを用いたプリプレグ、積層板、配線板
US9265145B2 (en) 2009-02-24 2016-02-16 Hitachi Chemical Company, Ltd. Varnish, prepreg, film with resin, metal foil-clad laminate, and printed circuit board
US10465089B2 (en) 2009-02-24 2019-11-05 Hitachi Chemical Company, Ltd. Varnish, prepreg, film with resin, metal foil-clad laminate, and printed circuit board

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6730402B2 (en) Flame-retardant epoxy resin composition and laminate made with the same
JP3414340B2 (ja) 難燃性樹脂材料および難燃性樹脂組成物
JP2001288339A (ja) エポキシ樹脂組成物の難燃化方法および難燃性エポキシ樹脂組成物
JP2003147052A (ja) 難燃性エポキシ樹脂組成物
JP2006342346A (ja) 難燃剤、該剤を含有する難燃性樹脂組成物及び該組成物の使用
JP2003277628A (ja) 熱硬化性樹脂組成物および該組成物を用いてなる半導体装置
JP2003277588A (ja) 熱硬化性樹脂組成物及びこれを用いた積層板
KR100388141B1 (ko) 에폭시수지조성물
JP2007099996A (ja) 封止用樹脂組成物および半導体封止装置
JPH09241483A (ja) エポキシ樹脂組成物
JP3976367B2 (ja) 半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置
JP5284693B2 (ja) 半導体装置封止用エポキシ樹脂組成物
JP2002003577A (ja) 半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置
JPH10182940A (ja) 封止材用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置
JPH09100337A (ja) 半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれを用いた半導体装置
JPH11100492A (ja) 半導体封止用樹脂組成物及びそれを用いた半導体装置
KR100611442B1 (ko) 티타늄 함유 유기질소화합물을 난연제로 포함하는 에폭시수지 조성물
JP2002367869A (ja) タンタルコンデンサおよびエポキシ樹脂組成物
JP3912747B2 (ja) 難燃性熱硬化性樹脂組成物
KR100797976B1 (ko) 반도체 소자 밀봉용 에폭시 수지 조성물
KR101234846B1 (ko) 반도체 소자 밀봉용 에폭시 수지 조성물 및 이를 이용한 반도체 소자
JP2003226727A (ja) 難燃性樹脂材料および難燃性樹脂組成物
KR100696878B1 (ko) 반도체 소자 밀봉용 에폭시 수지 조성물
JP2001210759A (ja) エポキシ樹脂組成物および電子部品封止装置
JP2001213942A (ja) 難燃性のエポキシ樹脂組成物

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20041213

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Effective date: 20041213

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424