JP3700510B2 - サージ吸収素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、雷等のサージやノイズから電子回路を保護するサージ吸収素子及びその製造方法に関し、更に詳しくは、端子電極のめっき時におけるめっき張り出しを抑える技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器等の回路には、雷等によるサージやノイズから回路を保護する目的でサージ吸収素子の設けられることがある。
サージ吸収素子は、絶縁基板上に放電ギャップを隔てて一対の放電電極が形成され、放電ギャップを密閉空間内で包囲するキャップが絶縁基板上に密着されて構成され、保護すべき回路に並列に設けられたり、接地回路に設けられる。サージ吸収素子では、一対の放電電極に、放電開始電圧以上のサージ電圧がかかると、放電ギャップにグロー放電が発生し、更に、このグロー放電がアーク放電へと移行して大量のサージが流れ、保護すべき回路へサージを作用させないようにして、回路を保護する。
【0003】
従来、この種のサージ吸収素子を製造するには、図5(a)に示すように、絶縁基板1の表面に、縦横のブレーク溝5、7(図6参照)を格子状に形成する。次いで、図6に示す帯状の導電性膜からなる放電電極3を、横方向(図6の左右方向)のブレーク溝7と平行に形成する。放電電極3を縦方向のブレーク溝5同士の間で分断し、放電ギャップ9を形成する。次いで、縦横のブレーク溝5、7で包囲された絶縁基板1の最小単位領域Sの周縁に、接着用ガラス11を形成する。周縁に形成する接着用ガラス11のうち、横方向の接着用ガラス11は、図7に示すように、横方向のブレーク溝7を挟んで隣接する領域Sのそれぞれに形成される。
【0004】
次いで、図5(b)に示すように、接着用ガラス11を介してキャップ13をそれぞれの領域S毎に接着する。キャップ13は、密閉空間の中央に放電ギャップ9が位置し、且つ放電電極3の両端が外部へはみ出すように接着される。また、キャップ13は、大気中或いは不活性ガス中にて、所望のガスを密閉空間内に閉じ込めて封止される。次いで、図5(c)に示すように、絶縁基板1を縦横のブレーク溝5、7に沿って分割し、図5(d)に示す個々の素子を得る。
【0005】
次いで、図5(e)に示すように、放電電極3のはみ出したキャップ13の両端面に、端子電極15を形成する。次いで、端子電極15に、Niとはんだのめっきを施し、サージ吸収素子17の作製を終了する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の製造方法で得られるサージ吸収素子は、横方向の接着用ガラス11が横方向のブレーク溝7を挟んで隣接する領域Sのそれぞれに形成されるため、縦横のブレーク溝5、7に沿って絶縁基板1を分割した際、図8に示すように、個々の素子の横方向のブレーク溝7に平行な側面には、ブレーク溝7の二分割された溝19が両端の端子電極に亘って形成された。このような溝19が形成されていた場合、端子電極15に、めっきを施すと、端子電極15からはみ出した一部のめっきが溝19に進入し、溝19に沿って相手側端子電極15方向に延出する所謂張り出し20の生ずることがあった。そして、このめっきの張り出し20は、素子が小型化されるに従って、短絡の危険性を増大させる要因となった。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、めっきの張り出しが防止できるサージ吸収素子及びその製造方法を提供し、端子電極間の絶縁信頼性の向上を図ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明に係る請求項1記載のサージ吸収素子は、縦横のブレーク溝が格子状に形成された絶縁基板の表面に、放電ギャップを有する帯状の放電電極が横方向の前記ブレーク溝と平行に形成され、前記縦横のブレーク溝で包囲された前記絶縁基板の最小単位領域の周縁に、接着用ガラスが形成され、前記放電ギャップを密閉するキャップが該接着用ガラスを介して前記最小単位領域毎に接着され、前記縦横のブレーク溝を境に前記絶縁基板がブレークされて形成されるサージ吸収素子において、キャップ接着面と、横方向の前記ブレーク溝との間に前記接着用ガラスが充填されていることを特徴とする。
【0008】
このサージ吸収素子では、従来、絶縁基板とキャップとの間に残る横方向のブレーク溝が接着用ガラスによって埋められる。これにより、キャップの両端面に端子電極を形成し、この両端の端子電極にめっきを施す際に、両端の端子電極に施しためっきが、横方向のブレーク溝に進入して、相手側の端子電極側へ向かって張り出すことがない。この結果、めっきが張り出し、このめっき同士が接触することによる端子電極同士のショートが確実に防止される。
【0009】
請求項2記載のサージ吸収素子の製造方法は、縦横のブレーク溝が格子状に形成された絶縁基板の表面に、帯状の放電電極を横方向の前記ブレーク溝と平行に形成し、縦方向の前記ブレーク溝同士の間の前記放電電極を分断して放電ギャップを形成し、前記縦横のブレーク溝で包囲された前記絶縁基板の最小単位領域毎の周縁に、接着用ガラスを形成し、前記放電ギャップを密閉するキャップを、前記接着用ガラスを介して前記最小単位領域毎に接着し、前記キャップの接着された前記絶縁基板を、前記縦横のブレーク溝を境にブレークするサージ吸収素子の製造方法において、前記周縁に形成する接着用ガラスのうち、横方向の前記ブレーク溝に沿って形成する前記接着用ガラスを、該横方向のブレーク溝を覆って形成することを特徴とする。
【0010】
このサージ吸収素子の製造方法では、縦横のブレーク溝で包囲された絶縁基板の最小単位領域の周縁に、接着用ガラスを形成する工程において、横方向のブレーク溝に沿って形成される接着用ガラスが横方向のブレーク溝を覆うように形成され、キャップを絶縁基板に接着した際に、キャップ接着面と横方向のブレーク溝との間に接着用ガラスが充填され、横方向のブレーク溝が接着用ガラスで埋められることになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るサージ吸収素子及びその製造方法の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るサージ吸収素子の斜視図、図2は図1のC−C矢視図、図3は図1のサージ吸収素子の接着用ガラス形成工程の基板平面図、図4は図3のD−D矢視図である。
【0012】
サージ吸収素子21は、縦横のブレーク溝23、25(図3参照)が格子状に形成された絶縁基板27の表面に、放電ギャップ29を有する帯状の放電電極31が横方向のブレーク溝25と平行に形成されている。絶縁基板21としては、絶縁性を有し且つ気密を保てる材料、例えばアルミナ、コランダム、ムライト、コランダムムライト、アクリル、ベークライト及びその混合物が挙げられる。放電電極31としては、Ti、TiN、Ta、W、SiC、BaAl、Ag、Pt、Pd、Ag/Pd、Ag/Pt、Au、SnO2、Al、Ni、Cu、ITO、Ru及びその混合物等が挙げられる。
【0013】
縦横のブレーク溝23、25で包囲された絶縁基板27の最小単位領域S(図3参照)毎の周縁には、接着用ガラス33が形成されている。接着用ガラス33としては、硼珪酸鉛系ガラスの他、SiO2、B2O3、PbO、Na2O、Li2O、BaO、CaO、ZnO、MgO、TiO2、Al2O3の一種又は二種以上を組み合わせたガラスを用いることができる。
【0014】
放電電極31の形成された絶縁基板27の上面には、従来と同様なキャップ35が接着用ガラス33によって最小単位領域S毎に接着される。キャップ35は、密閉空間36を有し、密閉空間36の中央に放電ギャップ29が位置し、且つ放電電極31の両端が外部からはみ出すように接着されている。
【0015】
キャップ35の接着された絶縁基板27は、縦横のブレーク溝23、25を境にブレークされる。放電電極31のはみ出したキャップ35の両端面には、端子電極37が形成される。ブレーク溝23、25でブレークされて、両端面に端子電極37の形成されたサージ吸収素子21は、端子電極37に挟まれる側面に、キャップ35と、横方向のブレーク溝25との接着部が露出する。図2に示すように、サージ吸収素子21では、このキャップ接着面35aと、横方向のブレーク溝25との間に、接着用ガラス33が充填されている。
【0016】
このように構成されたサージ吸収素子21では、キャップ接着面35aと、横方向のブレーク溝25との間に、接着用ガラス33が充填されていることで、従来、絶縁基板27とキャップ35との間に凹溝として残る横方向のブレーク溝25(即ち、図8に示した溝19)が接着用ガラス33によって埋められる。これにより、キャップ両端面の端子電極37にめっきを施す際に、両端の端子電極37に施しためっきが、横方向のブレーク溝25に進入して、相手側の端子電極37側へ向かって張り出すことがない。
【0017】
このように、上述のサージ吸収素子21によれば、めっきが相手側の端子電極37側へ向かって張り出すことを防止できるので、張り出しためっき同士が接触することによる端子電極37同士のショートを確実に防止することができる。
【0018】
次に、このように構成されるサージ吸収素子21の製造方法を説明する。
サージ吸収素子21を製造するには、絶縁基板27の表面に、縦横のブレーク溝を格子状に形成する。次いで、図3に示す導電性膜からなる帯状の放電電極31を、印刷法、蒸着法、スパッタリング法等により横方向(図3の左右方向)のブレーク溝25と平行に形成する。放電電極31を縦方向のブレーク溝23同士の間でレーザーカットにより分断し、放電ギャップ29を形成する。
【0019】
次いで、縦横のブレーク溝23、25で包囲された絶縁基板27の最小単位領域Sの周縁に、接着用ガラス33を形成する。この際、最小単位領域Sの周縁に形成する接着用ガラス33のうち、横方向のブレーク溝25に沿って形成する接着用ガラス33を、図4に示すように、横方向のブレーク溝25を覆って形成する。次いで、放電ギャップ29を密閉するキャップ35を、接着用ガラス33を介して最小単位領域S毎に接着する。キャップ35は、密閉空間36の中央に放電ギャップ29が位置し、且つ放電電極31の両端が外部へはみ出すように接着される。また、キャップ35は、大気中或いは不活性ガス中にて、所望のガスを密閉空間内に閉じ込めて封止される。
【0020】
キャップ35の接着された絶縁基板27を、縦横のブレーク溝23、25を境にブレークし、個々の素子を得る。次いで、放電電極31のはみ出したキャップ35の両端面に、端子電極37を形成する。この端子電極37に、更にNiとはんだのめっきを施し、サージ吸収素子21の作製を終了する。
【0021】
このサージ吸収素子21の製造方法では、縦横のブレーク溝23、25で包囲された絶縁基板27の最小単位領域Sの周縁に、接着用ガラス33を形成する工程において、接着用ガラス33が横方向のブレーク溝25を覆うように形成される。これにより、キャップ35を絶縁基板27に接着した際に、キャップ接着面35aと横方向のブレーク溝25との間に接着用ガラス33が充填され、横方向のブレーク溝25がこの接着用ガラス33で埋められることになる。
【0022】
従って、このサージ吸収素子21の製造方法によれば、横方向のブレーク溝25が埋められ、めっきの張り出しの生じる虞れのないサージ吸収素子21を容易に得ることができる。
【0023】
【実施例】
次に、上述のサージ吸収素子21を実際に作製し、従来の製造方法により作製した比較例のサージ吸収素子と、めっき張り出しの有無について比較した結果を説明する。
〔実施例のサージ吸収素子の作製手順〕
先ず、表面にブレーク溝の形成されているアルミナ基板(49.5×60.0×0.4mm)上に、スクリーン印刷法により、RuO2−ガラス系ペーストを印刷・乾燥し、850°Cで焼成して幅0.3mm、厚み5μmの放電電極を形成した。
次いで、スクリーン印刷法により、接着用ガラスを、密閉空間を除く部分に印刷・乾燥して厚み3μmに形成した。なお、接着用ガラスの乾燥後、以下の工程に移ったが、本工程で仮焼成を行ってもかまわない。
次いで、スクリーン印刷法により、厚み70μmの接着用ガラスを、絶縁基板の最小単位領域毎の周縁に、縁取りするよう(密閉空間を除く部分)に形成して乾燥した。その際、横方向のブレーク溝に沿って形成する接着用ガラスを、図3に示すように横方向のブレーク溝25を覆うように形成した。その後、750°Cで仮焼成した。
次いで、放電電極に3mmピッチの間隔で幅10μmの放電ギャップを形成した。なお、放電ギャップのピッチは、3mmに限らず、素子寸法に合わせて変更することができる。また、放電ギャップ幅も、0.1μm〜2.8mm、1〜100本とすることができる。
次いで、接着用ガラスを形成した絶縁基板と、密閉空間を有するキャップ(アルミナ3.0×1.48×1.1mm)とをArの不活性ガス中で加熱し、キャップの密閉空間中にこの不活性ガスを満たして、キャップを絶縁基板上に接着した。
縦横のブレーク溝に沿って絶縁基板をブレークし、個々の素子を得た。
放電電極の露出した素子の両端面に、端子電極を形成し、200°Cで硬化させた。この端子電極には、Ag、Ag/Pd、Pd、Pt、Ag/Pt、Au、Cu、Ni等の焼き付け電極を用いてもよい。
次いで、端子電極に、Ni、はんだめっきを施して3.2mm×1.6mm×厚さ1.8mmのチップ型サージ吸収素子を作製した。
【0024】
〔比較例のサージ吸収素子の作製手順〕
比較例のサージ吸収素子は、上述の作製手順において、横方向のブレーク溝を覆うように形成した接着用ガラスを、図6に示すように、横方向のブレーク溝5を挟むようにして、ブレーク溝5を覆わずに形成した。他の手順及び諸条件は、上述の実施例のサージ吸収素子の場合と同様である。
【0025】
〔比較結果〕
下表に示すように、実施例のサージ吸収素子は、端子電極幅(左右の端子電極間の幅)が0.40mmでめっきの張り出しが生じず、比較例のサージ吸収素子は、端子電極幅が0.55mmでめっきの張り出しが生じた。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明に係るサージ吸収素子は、キャップ接着面と横方向のブレーク溝との間に、接着用ガラスを充填したので、従来、絶縁基板とキャップとの間に残る横方向のブレーク溝が埋められることになり、キャップ両端面の端子電極にめっきを施す際に、端子電極に施しためっきが、この横方向のブレーク溝に進入して、相手側の端子電極側へ向かって張り出すことを確実に防止することができる。
【0028】
また、本発明に係るサージ吸収素子の製造方法は、縦横のブレーク溝で包囲された絶縁基板の最小単位領域の周縁に、接着用ガラスを形成する工程において、横方向のブレーク溝に沿って形成する接着用ガラスを、横方向のブレーク溝を覆うように形成するので、キャップを絶縁基板に接着した際に、キャップ接着面と横方向のブレーク溝との間に接着用ガラスが充填され、横方向のブレーク溝が接着用ガラスで埋められたサージ吸収素子を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るサージ吸収素子の斜視図である。
【図2】 図1のC−C矢視図である。
【図3】 図1のサージ吸収素子の接着用ガラス形成工程の基板平面図である。
【図4】 図3のD−D矢視図である。
【図5】 従来のサージ吸収素子の製造手順説明図である。
【図6】 従来のサージ吸収素子の接着用ガラス形成工程の基板平面図である。
【図7】 図6のA−A矢視図である。
【図8】 図5のB−B矢視図である。
【図9】 従来のサージ吸収素子の外観図である。
【符号の説明】
21 サージ吸収素子
23、25 縦横のブレーク溝
27 絶縁基板
29 放電ギャップ
31 放電電極
33 接着用ガラス
35 キャップ
35a 接着面
S 最小単位領域
Claims (2)
- 縦横のブレーク溝が格子状に形成された絶縁基板の表面に、放電ギャップを有する帯状の放電電極が横方向の前記ブレーク溝と平行に形成され、前記縦横のブレーク溝で包囲された前記絶縁基板の最小単位領域の周縁に、接着用ガラスが形成され、前記放電ギャップを密閉するキャップが該接着用ガラスを介して前記最小単位領域毎に接着され、前記縦横のブレーク溝を境に前記絶縁基板がブレークされて形成されるサージ吸収素子において、
キャップ接着面と、横方向の前記ブレーク溝との間に前記接着用ガラスが充填されていることを特徴とするサージ吸収素子。 - 縦横のブレーク溝が格子状に形成された絶縁基板の表面に、帯状の放電電極を横方向の前記ブレーク溝と平行に形成し、縦方向の前記ブレーク溝同士の間の前記放電電極を分断して放電ギャップを形成し、前記縦横のブレーク溝で包囲された前記絶縁基板の最小単位領域毎の周縁に、接着用ガラスを形成し、前記放電ギャップを密閉するキャップを、前記接着用ガラスを介して前記最小単位領域毎に接着し、前記キャップの接着された前記絶縁基板を、前記縦横のブレーク溝を境にブレークするサージ吸収素子の製造方法において、
前記周縁に形成する接着用ガラスのうち、横方向の前記ブレーク溝に沿って形成する前記接着用ガラスを、該横方向のブレーク溝を覆って形成することを特徴とするサージ吸収素子の製造方法。
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