JP3700181B2 - 免疫学的診断薬および担体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は免疫学的診断薬用担体およびこれを用いた免疫学的診断薬に関し、特に光散乱測定法または積分球濁度測定法による測定に高い感度を与える免疫学的診断薬用担体およびこれを用いた免疫学的診断薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
抗原抗体反応を利用した免疫測定法は、臨床検査領域の主流となっている。免疫学的微量測定法には、既に多くの測定法があるが、活発な動きを見せているのが、粒子免疫測定法である。これは担体粒子表面に抗体(または抗原)を感作させた試薬(免疫学的診断薬)を検体中の抗原(または抗体)と反応させて複合体、つまり凝集塊を形成させ、この凝集塊の濁度を光学的に測定する方法である。これにより抗原または抗体を検出したり定量することができる。
【0003】
日本工業規格(JIS)によると、濁度の光学的測定は、1)視覚濁度、2)透過光濁度、3)散乱光濁度、4)積分球濁度の4つの方法に分類されている。このうち、積分球濁度法では、前方散乱光と同時に平行透過光を測定し、その比率を求めて、抗原抗体反応本来の変化量以外の干渉因子に対する補償措置としている。
【0004】
このような方法において用いられる担体粒子においては、担体表面における表面特性がコントロールされており、しかも安定で非特異反応、非特異凝集などを起こさないこと、適正な粒径範囲内において単分散性に優れていること、診断感度が高いことなどの特性が要求される。
【0005】
従来、免疫学的診断薬に使用されている担体粒子としては、例えばスチレン重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体などの重合体ラテックス、あるいは金属粒子、リポソームなど、様々な粒子があるが、臨床応用の大勢を占めるのは、粒径分布や表面形状特性の均一化されたスチレン重合体ラテックスである(特開昭54−109494号)。
【0006】
しかしながら、上記のようなスチレン重合体ラテックスを担体として用いた免疫学的診断薬では、低濃度(ng/mlの範囲)領域のアナライト(分析対象物)に対する測定においては信頼性が乏しいという問題点がある。これはスチレン重合体の屈折率が低いためである。
【0007】
粒子懸濁液の光散乱性は、粒子サイズ、測定に使用される光の波長、および分散媒と粒子との屈折率の差に依存し、粒子の屈折率がより高い程、光散乱のシグナルはより高く、高感度な測定を行うことができる。
従って、光散乱測定においては従来のスチレン重合体ラテックスより屈折率が高く、しかも粒径分布や表面特性が均一化されている高屈折率の担体が必要となる。
【0008】
一方、特公平2−20067号には、官能基を有する外側シェルと高屈折率を有する内側コアとからなる担体に抗体を結合した光散乱イムノアッセイ用粒子試薬が開示されている。
しかし、この試薬においては、抗体を化学的に結合させるため、抗体に対応させて官能基を導入する必要があり、また抗体を結合させるための反応が必要になるという問題点がある。
【0009】
ところで、特開平3−273011号には、後述の一般式〔1〕で表わされる化合物が高屈折率有機ガラスとして記載されている。
しかし、上記公報には、この化合物が免疫学的診断薬用担体の素材として利用できることは記載されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を解決するため、屈折率が高く、高感度の測定を行うことができ、抗原または抗体の固定化が容易な免疫学的診断薬用担体およびこれを用いた免疫学的診断薬を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は次の免疫学的診断薬およびこれを用いた免疫学的診断薬である。
(1) (A)一般式〔1〕
【化2】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、XはF、Cl、BrおよびIから選ばれるハロゲン原子またはメチル基を示す。kは1または2を示し、mおよびnは0または1を示す。)
で表わされるスチレン誘導体5〜99.9重量%、および
(B)ビニル系化合物0.1〜95重量%
からなる単量体成分を、ラジカル重合開始剤を用いて水系媒体中で重合させた重合体粒子を含むことを特徴とする免疫学的診断薬用担体。
(2) 上記(1)記載の免疫学的診断薬用担体に抗原または抗体を固定化した固定化抗原または固定化抗体の水系分散体からなることを特徴とする免疫学的診断薬。
【0012】
本発明に用いられる前記一般式〔1〕で表わされるスチレン誘導体(A)としては、例えばp−[(フェニルチオ)メチル]スチレン、m−[(フェニルチオ)メチル]スチレン、p−[(p−クロロフェニルチオ)メチル]スチレン、m−[(p−クロロフェニルチオ)メチル]スチレン、p−[(m−クロロフェニルチオ)メチル]スチレン、m−[(m−クロロフェニルチオ)メチル]スチレン、p−[(p−ブロモフェニルチオ)メチル]スチレン、m−[(p−ブロモフェニルチオ)メチル]スチレン、p−[(m−ブロモフェニルチオ)メチル]スチレン、m−[(m−ブロモフェニルチオ)メチル]スチレン、p−[(p−ヨードフェニルチオ)メチル]スチレン、m−[(p−ヨードフェニルチオ)メチル]スチレン、p−[(m−ヨードフェニルチオ)メチル]スチレン、m−[(m−ヨードフェニルチオ)メチル]スチレン、p−[(p−メチルフェニルチオ)メチル]スチレン、m−[(p−メチルフェニルチオ)メチル]スチレン、p−[(m−メチルフェニルチオ)メチル]スチレン、m−[(m−メチルフェニルチオ)メチル]スチレン、p−[(フェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、m−[(フェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、p−[(p−クロロフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、m−[(p−クロロフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、p−[(m−クロロフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、m−[(m−クロロフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、p−[(p−ブロモフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、m−[(p−ブロモフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、p−[(m−ブロモフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、m−[(m−ブロモフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、p−[(p−ヨードフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、m−[(p−ヨードフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、p−[(m−ヨードフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、m−[(m−ヨードフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、p−[(p−メチルフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、m−[(p−メチルフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、p−[(m−メチルフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレン、m−[(m−メチルフェニルチオ)メチル]−α−メチルスチレンなどがあげられる。
【0013】
これらのスチレン誘導体(A)は一種単独で、または二種以上を組合せて使用できる。このようなスチレン誘導体(A)を単量体成分として使用することにより、高屈折率の共重合体が得られる。前記一般式〔1〕で表わされるスチレン誘導体(A)の使用量は、全単量体成分の5〜99.9重量%、好ましくは30〜99.9重量%である。使用量が5重量%未満の場合には、屈折率の上昇が不十分となり好ましくない。
【0014】
本発明で使用するビニル系化合物(B)としては、前記一般式〔1〕で表わされるスチレン誘導体(A)と重合可能なビニル系化合物が制限なく使用でき、例えばラジカル重合可能な不飽和二重結合を含む単官能ビニル化合物あるいは多官能ビニル化合物などがあげられる。
【0015】
上記単官能ビニル化合物としては、例えばスチレン、クロルメチルスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル系化合物;スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸リチウム、スチレンスルホン酸アンモニウム等のスチレンスルホン酸塩;その他に酢酸ビニル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニルなどがあげられる。
【0016】
また、多官能ビニル化合物としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)オキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール(メタ)アクリレート誘導体;その他にグリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]プロパンなどがあげられる。多官能ビニル化合物を用いた場合には、架橋性重合体が得られる。
【0017】
これらのビニル系化合物(B)は一種単独で、または二種以上を組合せて使用できる。ビニル系化合物(B)の使用量は、全単量体成分の0.1〜95重量%、好ましくは0.1〜70重量%である。
【0018】
本発明の免疫学的診断薬用担体は、前記スチレン誘導体(A)およびビニル系化合物(B)を単量体成分とし、これらをラジカル重合開始剤の存在下に、水系媒体中で重合させることにより得られた重合体粒子を含むものである。
【0019】
水系媒体中で重合する方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、ソープフリー重合法、またはシード重合法などが採用できる。これらの重合方法は、公知の方法に従って行うことができ、例えば(A)および(B)の単量体成分全量を反応系に一括して仕込んで重合する方法、単量体成分の一部を仕込んで反応させた後、残りの単量体成分を連続または分割して添加して重合する方法、単量体成分全量を連続して仕込んで重合する方法などによって行うことができる。これらの重合方法において、ラジカル重合開始剤の添加方法も任意に選択でき、全量を一括して仕込む方法、連続的または分割して添加する方法などが採用できる。
【0020】
重合に使用するラジカル重合開始剤としては、水溶性または油溶性のいずれのラジカル重合開始剤でも使用できる。
上記水溶性のラジカル重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩や過酸化水素などがあげられる。
水溶性のラジカル重合開始剤を使用する場合、還元剤を併用することもできる。このような還元剤としては、例えばピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸およびその塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどをあげることができる。
【0021】
また、油溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1′−アゾビス−シクロヘキサン−1−カルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、クメンヒドロ過酸化物などがあげられる。これらの油溶性のラジカル重合開始剤は、単量体に溶解して、または水系媒体に分散して使用する。
ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体成分に対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%とするのが望ましい。
【0022】
反応媒体となる水系媒体としては、水を単独で使用することもできるし、水に有機溶媒を混合した有機溶媒混合水を使用することもできる。このような有機溶媒としては、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等の水混和性有機溶媒などが使用できる。有機溶媒の添加量は、水に対して0〜30重量%とするのが好ましい。
【0023】
水系媒体に対する単量体成分の濃度は、(A)および(B)の合計量で0.2〜30重量%、好ましくは1〜10重量%とするのが望ましい。反応温度、反応時間は、ラジカル重合開始剤の種類等の合成条件により異なるが、通常5〜50時間、30〜90℃で反応を行うのが好ましい。
【0024】
重合方法としてシード重合法を採用した場合、シード粒子としては、スチレン重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体等のスチレン系共重合体、メタクリル酸メチル重合体等の(メタ)アクリル酸系重合体または共重合体などを使用することができる。これらのシード粒子は架橋されたものであってもよい。またシード粒子の粒径は、0.05〜2μmの範囲において、得ようとする重合体粒子などの条件によって適宜選択することができる。
【0025】
上記のような条件で水系媒体中、ラジカル重合開始剤を用いて、スチレン誘導体(A)とビニル系化合物(B)とを重合させることにより、常温で固体の重合体粒子が水系分散体(ラテックス)の状態で得られる。このとき生成する架橋性単量体の重合物等の凝縮物は濾過等により分離され未反応の単量体やラジカル重合開始剤などは遠心分離により分離して精製される。分離した重合体粒子はそのままであるいは水系媒体に再分散することにより水系分散体の形で免疫学的診断薬用担体として使用されるが、場合によっては凍結乾燥等により粉末化して利用することもできる。水系分散体として使用する場合、水系分散体中の重合体粒子の濃度は0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%とされる。
【0026】
このようにして得られる免疫学的診断薬用担体の平均粒子径は、目的によって任意に設定しうるが、免疫学的診断薬用担体として使用する上において、通常0.02〜20μm、好ましくは0.05〜1μmとするのが望ましい。このような平均粒子径とすることにより、乳化剤を添加しなくても、担体粒子は水系媒体に分散し、安定な水系分散体を形成する。
【0027】
平均粒子径はラジカル重合開始剤および水溶性単量体成分の量ならびにそれらの添加方法、その他の反応条件の選択によって調整可能である。ラジカル重合開始剤および水溶性単量体成分の量が多いほど平均粒子径は小さくなる傾向にあるが、ラジカル重合開始剤の大幅な変動は他の反応条件や重合体の物性等に大きく影響するので、水溶性単量体成分の調整により平均粒子径を制御するのが好ましい。
【0028】
上記の免疫学的診断薬用担体は、ナトリウムD線で測定した屈折率が1.59〜1.70の範囲となるように、任意に設定することができる。屈折率はスチレン誘導体(A)の組成割合が高いほど高くなり、ビニル系化合物(B)の組成割合が高くなるほど低くなるので、目的とする屈折率に合わせて、それらの組成割合を決定することができる。
【0029】
本発明の免疫学的診断薬は、上記免疫学的診断薬用担体に抗原または抗体を固定化した固定化抗原または固定化抗体を水系媒体に分散させた水系分散体(ラテックス)からなる。
免疫学的診断薬用担体に固定化する抗原は、抗原性を示す物質であれば特に制限されない。
【0030】
また免疫学的診断薬用担体に固定化する抗体は、主に牛、ヤギ、ウサギ、マウス、ニワトリ、ヒト等のあらゆる動物種に由来のIgGであるが、これ他にもIgA,IgM,IgD,IgEなどいずれのクラスに属する免疫グロブリンであってもよく、またポリクローナルあるいはモノクローナル抗体のいずれであってもよい。また、Fab,Fc,F(ab)′など抗体由来の種々のセグメントであってもよい。
【0031】
抗原または抗体の免疫学的診断薬用担体への固定化は、水系媒体中で両者を混合することにより行うことができる。この場合、抗原または抗体と担体とは疎水基同士の物理化学的な結合力により結合するため、抗原または抗体の固定化および脱離は容易であり、脱離による担体の再生使用も可能である。
【0032】
固定化は免疫学的診断薬用担体を製造した反応液に抗原または抗体を添加して行うこともできるし、反応液から免疫学的診断薬用担体を単離し、この担体を水、水に前記水混和性有機溶媒を混合した有機溶媒混合水または緩衝液などの水系媒体に分散し、ここに抗原または抗体を添加して行うこともできる。
【0033】
このようにして抗原または抗体を担体に固定化することにより、水系分散体として本発明の免疫学的診断薬が得られ、抗原または抗体の検出または定量などに利用できる。免疫学的診断薬用担体として平均粒子径0.02〜20μmのものを用いると、抗原または抗体を固定化した担体は乳化剤がなくても容易に水系媒体に分散し、安定な水系分散体としての免疫学的診断薬が得られる。水系分散体中の抗原または抗体固定化担体の濃度は0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%とされる。
【0034】
抗原または抗体の検出または定量は、本発明の免疫学的診断薬が抗原抗体反応を起こした凝集物を光散乱測定法または積分球濁度測定法により測定するのが好ましい。この場合、免疫学的診断薬用担体の屈折率が高いため、高感度の測定が可能であり、例えばng/mlの濃度のアナライトに対しても高感度の測定が可能である。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、単量体成分として前記一般式〔1〕で表わされるスチレン誘導体を用いるようにしたので、高屈折率を有し、抗原または抗体の固定化が容易な免疫学的診断薬用担体が得られる。
【0036】
また上記担体に抗原または抗体を固定化するようにしたので、低濃度のアナライトに対しても高感度で測定を行うことができる免疫学的診断薬が得られる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を何ら制限するものではない。
実施例1
窒素ガスで置換した反応容器にイオン交換水2000重量部、過硫酸カリウム0.15重量部、ならびに表1に示す組成で(A)成分のスチレン誘導体および(B)成分のビニル系単量体を添加し、攪拌装置を毎分200回転で駆動し、反応温度を70℃にコントロールしながら24時間共重合を行った。共重合反応後、25℃まで冷却し反応を終了した。凝固物をろ過して除去した後、8000rpmで15分間遠心分離し、上澄みを除去した後、イオン交換水で再分散することにより精製し、免疫学的診断薬用担体としての重合体粒子の水系分散体からなる試料1〜5を得た。
【0038】
得られた試料について、COULTER社製のサブミクロン粒度分布計MODEL N4SDにより粒径を測定した。
また、アッベ屈折率計を用い、ナトリウムD線で試料の屈折率の測定を行った。このときの屈折率測定用の試料は、前記水系分散体を凍結乾燥後、tert−ブチルブロモアセテートを溶媒として用いて10重量%に希釈したものであり、測定値から溶媒の屈折率に対応する値を差引いて重合体の屈折率を算出した。これらの結果を表1に示す。
さらに、協和メデックス(株)社製の装置EL−1000を用い、試料2および3について、各ラテックス濃度における積分球濁度の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0039】
比較例1
表1に示す組成で単量体を添加し、実施例1と同様の方法で重合、精製を行い、(A)成分を含まないスチレン粒子である比較試料1、2を得た。
得られた比較試料について、実施例1と同様にして粒径、屈折率および積分球濁度を測定した。結果を表1および表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1の結果から、実施例1の試料1〜5の屈折率は、いずれも比較例1の比較試料1〜2の屈折率に比べて高いことがわかる。また表2の結果から、実施例1の試料2および3の積分球濁度は、比較例1の比較試料2の積分球濁度に比べて高いことがわかる。
【0043】
実施例2、比較例2
試料2または比較試料2(1.0重量%の水系分散体2mlに、0.1重量%抗CEA(carcino−embryonic antigen)抗体溶液1mlを加えて、試料に抗体を吸着させて固定化することにより、抗体感作を行って診断薬を得た。なお試料2の抗体の結合率は、比較試料2に対し92%であった。
【0044】
このような抗CEA抗体で感作された診断薬を用い、各CEA濃度における積分球濁度変化を協和メデックス(株)社製のEL−1200を用いて測定した。測定は、診断薬0.25mlに対して緩衝液0.15mlおよび各CEA濃度のサンプル0.1mlを加えて行った。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3の結果から、比較試料2を用いた比較例2では、一般に積分球濁度は低く、またCEA濃度の変化に対して積分球濁度が大きく変化しないのに対し、高屈折率の試料2を用いた実施例2においては、高い積分球濁度を示すとともに、CEA濃度の変化に対して積分球濁度も大きく変化しており、感度が高いことがわかる。
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