JP3699820B2 - 内燃機関の動弁装置 - Google Patents

内燃機関の動弁装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の動弁装置、とりわけ駆動カムから伝達機構を介して所定角度範囲で揺動する揺動カムによって機関弁を開閉作動させる内燃機関の動弁装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、機関低速低負荷時における燃費の改善や安定した運転性並びに高速高負荷時における吸気の充填効率の向上による十分な出力を確保する等のために、吸気・排気バルブの開閉時期とバルブリフト量を機関運転状態に応じて可変制御する動弁装置は従来から種々提供されており、その一例として特開昭55−137305号公報等に記載されているもの知られている。
【0003】
図18に基づきその概略を説明すれば、シリンダヘッド1のアッパデッキの略中央近傍上方位置にカムシャフト2が設けられていると共に、該カムシャフト2の外周にカム2aが一体に設けられている。また、カムシャフト2の側部には、制御シャフト3が平行に配置されており、この制御シャフト3に偏心カム4を介してロッカアーム5が揺動自在に軸支されている。
【0004】
一方、シリンダヘッド1に摺動自在に設けられた吸気弁6の上端部には、フォロワであるバルブリフター7を介して揺動カム8が配置されている。この揺動カム8は、バルブリフター7の上方にカムシャフト2と並行に配置された支軸9に揺動自在に軸支され、下端のカム面8aがバルブリフター7の上面に当接している。また、前記ロッカアーム5は、一端部5aがカム2aの外周面に当接していると共に、他端部5bが揺動カム8の上端面8bに当接して、カム2aのリフトを揺動カム8及びバルブリフター7を介して吸気弁6に伝達するようになっている。
【0005】
また、前記制御シャフト3は、図外のアクチュエータによって所定角度範囲で回転制御されて、偏心カム4の回動位置を制御し、これによってロッカアーム5の揺動支点を変化させるようになっている。
【0006】
そして、偏心カム4が正逆の所定回動位置に制御されるとロッカアーム5の揺動支点が変化して、他端部5bの揺動カム8の上端面8bに対する当接位置が図中上下方向に変化し、これによって揺動カム8のカム面8aのバルブリフター7上面に対する当接位置の変化に伴い、揺動カム8の揺動軌跡が変化することにより吸気弁6のバルブリフト量と開閉時期(バルブタイミング)を可変制御するようになっている。尚、図中10は、揺動カム8の上端面8bを常時ロッカアーム5の他端部5bに弾接付勢するスプリングである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述の動弁装置における機関弁のカムリフト特性は、高い吸・排気効率と良好な運動性を確保し、カムとフォロワの耐摩耗性に優れる特性などが要求されており、これらを満足すべく種々のカムリフト曲線が開発されている。
【0008】
そして、一般の回転カム51(図19参照)によるカムリフト曲線の各特性値はカム回転角θ(rad)に対して図20に示すようになっている。すなわち、衝突速度の小さい初期の緩衝部速度区間(ランプ速度区間)θrから正加速度区間θ1が続き、その後、負加速度区間θ2が続いており、この負加速度区間θ2によってリフト減速を行なって最大リフト付近で滑らかなカーブを形成するようになっている。また、2点鎖線に示されている速度y'は、正加速度区間θ1と負加速度区間θ2の境界付近で最大速度y'max をとっている。
【0009】
そして、回転カム51がフォロワであるバルブリフター61の平坦な上面61aを摺動する範囲(トラベル量t)は、t=dy/dθで求められ、速度y'と同じ式となる。
【0010】
ここで、前記図18に示した従来例の揺動カム8もバルブリフター7に対するカムリフト特性は回転カム51の場合と同一であって、一般の回転カム51に揺動カム8を適用した場合を考察すると、揺動カム8の場合は、伝達機構であるリンク機構によって該揺動カム8全体がバルブリフター7上を移動しながら摺動するため、揺動角、すなわち限られたカム回転角で所定のリフト量を確保するためには、y'max を大きくしなければならず、したがってトラベル量tも必然的に大きく設定しなければならない。このため、揺動カム8のバルブリフター7上面7aに対するカムノーズ部側の接点がバルブリフター7上面7aから外れて上面7aの外端縁に当接してしまうおそれがある。
【0011】
したがって、揺動カム8の支軸9をバルブリフター7の中心から外方へ離間させたり、上面7aの外径を大きくなしなければならない。この結果、各構成部品のレイアウトに制約が生じたり、動弁装置全体が大型化すると共に、重量が増加するといった技術的課題を招来している。
【0012】
そこで、トラベル量t自体を小さく設定しようとすると、最大リフトymax が低下して、機関の十分な出力が得られないおそれがある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記従来の揺動カム型の動弁装置の実情に鑑みて案出されたもので、請求項1に記載の発明は、機関のクランク軸によって回転駆動し、外周に駆動カムが固定された駆動軸と、伝達機構によって前記駆動カムと機械的に連係され、駆動カムの回転に応じて所定角度範囲内で軸周りに揺動し、カム面がフォロワに摺接して機関弁を開閉作動させる揺動カムと、該揺動カムのカムリフト量を機関の運転状態に応じて連続的に可変制御する可変機構とを備え、前記揺動カムの少なくともカムリフトの開始点から最大リフト点において、初期のランプ区間から前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が正となる区間(正加速度区間)の後に、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値がほぼ零となる区間(ほぼ零加速度区間)を連続して設けると共に、該ほぼ零となる区間を所定の範囲で継続させたことを特徴としている。
【0014】
したがって、この発明にあっては、カムリフト曲線の特性値において、正加速度区間の後に続いて、ほぼ零加速度区間を継続して設けることにより、正加速度区間後の速度が一定となり、したがってトラベル量の最大値(tmax )を小さくしつつ、大きなリフト量を確保することができる。
【0015】
補足すると、速度y'の面積がカムリフトyになるため、
【0016】
【数1】
Figure 0003699820
【0017】
したがって、加速度がほぼ零の全区間に渡り長期間y'max が継続するため、y'の面積が大きくなる。よって、トラベル量tの最大値tmax を抑えつつカムリフト量の最大値ymax を十分に大きくすることができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、カムリフトの最大リフト点が、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値がほぼ零となる区間になるように設定したことを特徴としている。
したがって、バルブスプリングからのばね反力が最も大きくなる最大リフト位置において揺動カムが比較的大きな曲率半径となる部位でフォロアに接触するため、両者間の面圧が十分に小さくなり、両者間の耐摩耗性が向上する。
【0019】
請求項3に記載の発明は、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値がほぼ零となる区間に続いて、揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が負となる区間を設けると共に、前記揺動カムのカム面とフォロワの接触領域に前記負となる区間を含めないように設定したことを特徴としている。
このため、揺動カムとフォロワが当接しない部位(カムノーズ部)の曲率半径を小さくでき、揺動カムをコンパクト化でき、さらに両者の接点が揺動カムの曲率半径が小さい負加速度区間に入らないため、両者間の摩耗の発生を抑制できる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、前記カム面に摺接するフォロワの上面を円弧状に形成したことを特徴としている。このため、揺動カムのトラベル量をさらに小さくすることが可能になる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、機関のクランク軸によって回転駆動し、外周に駆動カムが固定された駆動軸と、伝達機構によって前記駆動カムと機械的に連係され、駆動カムの回転に応じて所定角度範囲内で軸周りに揺動し、カム面がフォロワに摺接して機関弁を開閉作動させる揺動カムとを備え、前記揺動カムの少なくともカムリフトの開始点から最大バルブリフト点において、初期のランプ区間から前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が正となる区間の後に、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値がほぼ零となる区間を連続して設けると共に、該ほぼ零となる区間では、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が微小変化するように設定したことを特徴とした。
【0022】
請求項6に記載の発明は、機関のクランク軸によって回転駆動し、外周に駆動カムが固定された駆動軸と、伝達機構によって前記駆動カムと機械的に連係され、駆動カムの回転に応じて所定角度範囲内で軸周りに揺動し、カム面がフォロワに摺接して機関弁を開閉作動させる揺動カムとを備え、前記揺動カムの少なくともカムリフトの開始点から最大リフト点において、初期のランプ区間から前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が正となる区間の後に、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値がほぼ零となる区間を連続して設けると共に、該ほぼ零となる区間では、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が、最大バルブリフト部付近で、揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が負となる側へ微小変化するように設定したことを特徴としている。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の動弁装置の第1の実施形態を図1〜図3に基づいて詳述する。この実施形態の動弁装置は、1気筒あたり2つの吸気弁を備えかつ該吸気弁のバルブリフトを機関運転状態に応じて可変にする可変機構を備えたものを示している。
【0025】
すなわち、この動弁装置は、シリンダヘッド11に図外のバルブガイドを介して摺動自在に設けられた一対の吸気弁12,12と、シリンダヘッド11上部の軸受14に回転自在に支持された中空状の駆動軸13と、該駆動軸13に、圧入等により固設された偏心回転カムである2つの駆動カム15,15と、駆動軸13に揺動自在に支持されて、各吸気弁12,12の上端部に配設されたフォロワであるバルブリフター16,16の平坦な上面16a,16aに摺接して各吸気弁12,12を開作動させる揺動カム17,17と、駆動カム15と揺動カム17,17との間に連係されて、駆動カム15の回転力を揺動カム17,17の揺動力として伝達する伝達機構18と、該伝達機構18の作動位置を可変にする可変機構19とを備えている。
【0026】
前記駆動軸13は、機関前後方向に沿って配置されていると共に、一端部に設けられた図外の従動スプロケットや該従動スプロケットに巻装されたタイミングチェーン等を介して機関のクランク軸から回転力が伝達されており、この回転方向は図1中反時計方向に設定されている。
【0027】
前記軸受14は、シリンダヘッド11の上端部に設けられて駆動軸13の上部を支持するメインブラケット14aと、該メインブラケット14aの上端部に設けられて後述する制御軸32を回転自在に支持するサブブラケット14bとを有し、両ブラケット14a,14bが一対のボルト14c,14cによって上方から共締め固定されている。
【0028】
前記両駆動カム15は、ほぼリング状を呈し、小径なカム本体15aと、該カム本体15aの外端面に一体に設けられたフランジ部15bとからなり、内部軸方向に駆動軸挿通孔15cが貫通形成されていると共に、カム本体15aの軸心Xが駆動軸13の軸心Yから径方向へ所定量だけオフセットしている。また、この各駆動カム15は、駆動軸13に対し前記両バルブリフター16,16に干渉しない両外側に駆動軸挿通孔15cを介して圧入固定されていると共に、両方のカム本体15a,15aの外周面15d,15dが同一のカムプロフィールに形成されている。
【0029】
前記揺動カム17は、図1〜11に示すようにほぼ横U字形状を呈し、ほぼ円環状の基端部20に駆動軸13が嵌挿されて回転自在に支持される支持孔20aが貫通形成されていると共に、一端部のカムノーズ部21にピン孔21aが貫通形成されている。また、揺動カム17の下面には、カム面22が形成され、基端部20側の基円面22aと該基円面22aからカムノーズ部21側に円弧状に延びるランプ面22bと該ランプ面22bの先端側に有する最大リフトの頂面22cとが形成されており、該基円面22aとランプ面22b及び頂面22cとが、揺動カム17の揺動位置に応じて各バルブリフター16の上面16a所定位置に当接するようになっている。
【0030】
そして、揺動カム17のカム面22によるカムリフト及びリフトダウン時の加速度特性は、図4及び図5に示すように基円面22aにおける接触開始点K2,リフト開始点Ksとランプ面22bに渡った比較的速度の遅い緩衝区間(ベースサークル区間,ランプ区間)θ1と、該緩衝区間θ1からカムノーズ部21方向へ連続してランプ面22bから頂面22cにかけての所定範囲に設定された正加速度区間θ2と、該正加速度区間θ2からカムノーズ部21方向へさらに連続して頂面22cの所定範囲に設定された零加速度区間θ3と、該零加速度区間θ3からさらにカムノーズ部21の頂面22cの頂点側へ連続した負加速度区間θ4の4つの加速度特性を備えている。
【0031】
また、前記零加速度区間θ3は、頂面22cにおける最大リフト点K1を包含する範囲まで継続して設定されており、前記接触開始点K2から零加速度区間θ3の最大リフト点K1までがカムリフトに供されるカム面22の使用範囲に設定されている。さらに、零加速度区間θ3の最大リフト点K1を越えた負加速度区間θ4の終点までの範囲は、カム面22の不使用範囲に設定され、したがって、負加速度区間θ4の範囲全体がカムリフトの作用に供しない不使用範囲に設定されている。
【0032】
前記伝達機構18は、図1に示すように駆動軸13の上方に配置されたロッカアーム23と、該ロッカアーム23の一端部23aと駆動カム15とを連係するリンクアーム24と、ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17とを連係するリンクロッド25とを備えている。
【0033】
前記各ロッカアーム23は、図3に示すように平面からみてほぼクランク状に折曲形成され、中央に有する筒状基部23cが後述する制御カム33に回転自在に支持されている。また、各基部23cの各外端部に突設された前記一端部23aには、リンクアーム24と相対回転自在に連結するピン26が嵌入されるピン孔23dが貫通形成されている一方、各基部23cの各内端部に夫々突設された前記他端部23bには、各リンクロッド25の一端部25aと相対回転自在に連結するピン27が嵌入されるピン孔23eが形成されている。
【0034】
また、前記リンクアーム24は、比較的大径な円環状の基部24aと、該基部24aの外周面所定位置に突設された突出端24bとを備え、基部24aの中央位置には、前記駆動カム15のカム本体15aの外周面に回転自在に嵌合する嵌合孔24cが形成されている一方、突出端24bには、前記ピン26が回転自在に挿通するピン孔24dが貫通形成されている。
【0035】
さらに、前記リンクロッド25は、図1にも示すように所定長さのほぼく字形状に折曲形成され、円形状の両端部25a,25bには前記ロッカアーム23の他端部23bと揺動カム17の端部21の各ピン孔23e,21aに嵌入した各ピン27,28の端部が回転自在に挿通するピン挿通孔25c,25dが貫通形成されている。
【0036】
尚、各ピン26,27,28の一端部には、リンクアーム24やリンクロッド25の軸方向の移動を規制するスナップリング29,30,31,が設けられている。
【0037】
前記可変機構19は、駆動軸13の上方位置に同じ軸受14に回転自在に支持された制御軸32と、該制御軸32の外周に固定されてロッカアーム23の揺動支点となる制御カム33とを備えている。
【0038】
前記各制御カム33は、夫々円筒状を呈し、図1に示すように軸心P1位置が制御軸32の軸心P2からα分だけ偏倚している。
【0039】
前記制御軸32は、駆動軸13と並行に延設されて、一端部に設けられた図外の電磁アクチュエータによって所定回転角度範囲内で回転するように制御されており、前記電磁アクチュエータは、機関の運転状態を検出する図外のコントローラからの制御信号によって駆動するようになっている。コントローラは、クランク角センサやエアーフローメータ,水温センサ等の各種のセンサからの検出信号に基づいて現在の機関運転状態を演算等により検出して、前記電磁アクチュエータに制御信号を出力している。
【0040】
以下、本実施形態の作用を説明すれば、まず、機関高回転高負荷時には、機関運転を検出したコントローラからの制御信号によって、電磁アクチュエータが一方向に回転駆動されて、制御軸32が制御カム33を図1及び図6〜図9に示す位置に回転させて厚肉部33aを下方向へ回動させる。このため、ロッカアーム23は、全体が駆動軸13方向(下方向)へ移動して他端部23b揺動カム17のカムノーズ部21をリンクロッド25を介して下方へ押圧して該揺動カム17全体を所定量だけ図示の位置に回動させる。
【0041】
この状態で揺動カム17の揺動作用、つまり駆動カム13と伝達機構18による揺動カム17のカムリフト作用を図1及び図6に基づいて説明すると、まず図1に示すように揺動カム17の基円面22aがバルブリフター16の上面16aに位置している場合は、ベースサークル領域であって吸気弁12が閉作動状態にある。
【0042】
この状態から駆動カム13の回動駆動に伴い伝達機構18を介して揺動カム17が図6に示すように時計方向へわずかに揺動することによって、カムリフトが開始されて、さらに図7に示す揺動位置までが、図5に示す緩衝区間θ1の範囲になる。この図7に示す位置から正加速度区間θ2が開始され、揺動カム17がさらに時計方向へ揺動して図8に示す位置になると正加速度区間θ2が終了して、零加速度区間θ3が開始される。この状態からさらに揺動して図9に示す位置になり頂面22cがバルブリフター16の上面16aに当接した段階では、零加速度区間θ3内で最大リフト点K1になる。したがって、揺動カム17が図8から図9に示す揺動範囲は零加速度区間θ3が継続するため、この間の速度y'が一定となり、したがってバルブリフター16上面16a上での揺動カム17のトラベル量tの最大値tmax を小さくすることができる。すなわち、
【0043】
【数2】
Figure 0003699820
【0044】
y″≒ 0 であるならば、y'=一定となる。したがって、t(=y')の最大値tmax を小さく抑えることができる。
【0045】
一方、速度y'の面積がカムリフトyであるので、前述したように、
【0046】
【数3】
Figure 0003699820
【0047】
ここで、加速度零区間θ3に渡ってy'max が長期間継続するため、y'の面積としては大きくなる。つまり、トラベル量の最大値tmax を抑えつつカムリフト量の最大値ymax を大きくすることができる。この結果、バルブリフター16等の各構成部材のコンパクト化とレイアウトの自由度が向上するとともに、大きなカムリフト量によって機関性能の向上が図れる。
【0048】
また、揺動カム17は、図4に示すようにカム面22と反対側の不使用部位17aを研削ラインに沿って切除できるが、不使用領域である負加速度区間θ4のカムノーズ部21の曲率半径が小さくなるため、全体の形状を十分に小さくでき、軽量化が図れる。
【0049】
これは、曲率半径をRとすると、R=Rb+y+y″で表され、y″が負であるので、Rが小さくなるためである。(Rbはベースサークル半径,yはカムリフト,y″はカム加速度である。)
さらに、前述のように負加速度区間θ4をカム面22の不使用領域としたことにより、曲率半径Rの部分(負加速度区間)と接せず、比較的曲率半径の大きい部分(零加速度区間)と接するため、カム面22とバルブリフター上面16aとの面圧が下がり摩耗の発生を抑制できる。さらに、図5に示す△θ、図4に示す△Sだけ余裕をもたせてあれば、各リンクアーム14やリンク部材25等の連結部分が摩耗して各部間の隙間が大きくなっても、曲率半径小(負加速度区間)に入り込まないため、より確実に摩耗の発生を抑制できる。
【0050】
また、前述の揺動カム17を用いた動弁系では、揺動カム17の揺動角自身が変化するため、図13に示すように揺動角が滑らかな最大値となる特性を有する。この結果、クランク軸と同期して回転する駆動軸13の回転角Xを横軸にしてみると、図5に示すカムリフト特性であっても回転角Xを基準にみると、図14に示すように滑らかな最大値となる特性を有する。したがって、揺動カム17の使用範囲内において、零加速度区間θ3内で最大リフト点K1になるようにした場合でもXベースのリフト特性は滑らかになり、従来の回転カムと同様な滑らかなカムリフト特性が得られる。
【0051】
要するに、従来の回転カムのように負加速度区間を最大リフト点とすることなく、零加速度区間θ3に最大リフト点K1としてもリフト特性は滑らかになるのである。しかも、揺動カム17はバルブスプリングのばね力が最も大きい最大リフト点K1が零加速度区間θ3に入り、すなわち比較的曲率半径の大きな部位でバルブリフター上面16aと接するため、接触面圧が小さくなり、摩耗の発生が抑制できる。
【0052】
また、以上のように高回転高負荷域では、揺動カム17全体のバルブリフター16上面16aに対するカム面22の当接位置が図1などに示すように左方向位置に移動するため、駆動カム15が回転してロッカアーム23の一端部23aをリンクアーム24を介して押し上げると、バルブリフター16に対するそのリフト量L2は図9に示すように大きくなる(ymax )。
【0053】
よって、かかる高速高負荷域では、カムリフト特性が大きくなり、図12の実線で示すようにバルブリフト量も大きくなると共に、各吸気弁12の開時期が早くなると共に、閉時期が遅くなる。この結果、吸気充填効率が向上し、十分な出力が確保できる。
【0054】
一方、機関がアイドリングに移行した場合は、コントローラからの制御信号によって電磁アクチュエータが他方に回転駆動される。このため、制御カム33は、軸心P1が図10,図11に示すように制御軸32の軸心P2から左上方の回動位置に保持され、厚肉部33aが駆動軸13から上方向に離間回動する。このため、ロッカアーム23は、全体が駆動軸13に対して上方向へ移動し、このため、各揺動カム17は、リンクロッド25を介して端部23が強制的に若干引き上げられて全体が左方向へ回動する。
【0055】
したがって、図10,図11に示すように駆動カム15が回転してリンクアーム24を介してロッカアーム23の一端部23aを押し上げると、そのリフト量がリンクロッド25を介して揺動カム17及びバルブリフター16に伝達されるが、そのリフト量L1は図11,図12破線に示すように小さくなり、吸気のガス流動が強化され、燃焼が改善されアイドル燃費が向上する。
【0056】
また、この可変機構19による前記カムリフト制御は、前記の運転状態だけではなく、連続的な運転状態の変化に応じて自由に可変制御できるため、図12に示すように連続的なリフト特性を得ることができ、機関性能を十分に引き出すことが可能になる。
【0057】
また、本発明は、図15に示すようにほぼ零加速度区間θ3において加速度y"を正負加速度側へうねらせることも可能であり、このように設定すると、バルブリフター16のトラベルも若干うねりを起こしてバルブリフター上面16aのカムとの接点も若干変化する。したがって、バルブリフター上面16aの接点が局部的に摩耗するのを防止できる。本発明では、零加速度区間θ3において加速度y″を正負にうねらせたが、当該θ3区間において加速度y″を正または負側のどちらか一方にうねらせても、揺動カム17とバルブリフター16の接点が変化することは言うまでもない。
【0058】
さらに、図16に示すように最大リフト位置で加速度y″を負加速度側へうねるように設定すれば、バルブリフター上面16aのカムとの接点が最大リフト位置で使用領域内側にずれるため、バルブリフター上面16aの局部的な変形が抑制されてバルブリフター16の最外周縁つまりエッジに当たるのを防止できる。
【0059】
また、バルブリフター上面16aを、図17に示すように、球面状(円弧状)すなわち、円弧フォロワとすることにより、
【0060】
【数4】
Figure 0003699820
【0061】
トラベル量をさらに小さくすることができる。さらに、この円弧フォロワは、円筒状のバルブリフターに限られるものではなく、ロッカアームなどのように支点を中心に上下動する円弧フォロワであってよい。
【0062】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、零加速度区間θ3の長さを揺動カム17の大きさ等に応じて任意に設定できると共に、低回転低負荷域でのカムリフト特性にも適用できる。さらに、排気弁側にも適用が可能である
【0063】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、カムリフト曲線の特性値において、正加速度区間、つまり前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が正となる区間の後に続いて、加速度がほぼ零の区間、つまり前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値がほぼ零となる区間を継続して続けることにより、揺動カムのフォロワ上のトラベル量の最大値を十分に抑制しつつ、カムリフト量の最大値を十分に大きくすることができる。この結果、フォロワのレイアウト上の制約が抑制されると共に、大きなカムリフト量による機関性能の向上が図れる。
また、前記揺動カムのカムリフト量を可変制御する可変機構を設けたことによって、トラベル量を小さく抑えつつカムリフト特性を広範囲に変化させることが可能になり、機関運転条件に応じたバルブリフトの高精度な制御が可能になる。
【0064】
請求項2記載の発明によれば、最大リフト位置における揺動カムとフォロワとの面圧が十分に小さくなり、両者間の耐摩耗性が向上する。
【0065】
請求項3記載の発明によれば、揺動カムとフォロワとの当接しない部位の揺動カムの曲率半径を小さくできるので、該揺動カムをコンパクトにでき、さらに両者の接点が揺動カムの曲率半径の小さな負加速度区間に入らないため、両者間の摩耗の発生が防止できる。
【0066】
請求項4に記載の発明によれば、フォロアのトラベル量をさらに小さくすることが可能になる。
【0067】
請求項5に記載の発明によれば、ほぼ零区間の微分値を微小変化させることによってフォロアの局部的な摩耗の発生を抑制できる。
【0068】
請求項6に記載の発明によれば、バルブスプリング荷重が最大となる最大リフト位置でのフォロアの局部的な摩耗の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す図2のA−A線断面図。
【図2】同実施形態の側面図。
【図3】同実施形態の平面図。
【図4】本実施形態に供される揺動カムの正面図。
【図5】本実施形態におけるカムリフト曲線及び特性図。
【図6】機関高回転高負荷時における本実施形態の作用説明図。
【図7】機関高回転高負荷時における本実施形態の作用説明図。
【図8】機関高回転高負荷時における本実施形態の作用説明図。
【図9】機関高回転高負荷時における本実施形態の作用説明図。
【図10】機関低回転低負荷時における本実施形態の作用説明図。
【図11】機関低回転低負荷時における本実施形態の作用説明図。
【図12】本実施形態のバルブリフト特性図。
【図13】揺動カムの揺動角特性図。
【図14】揺動カムのカムリフト特性図。
【図15】零加速度区間をうねらせた状態を示す特性図。
【図16】最大リフト付近をうねらせた状態を示す特性図。
【図17】上面が円弧状に形成されたバルブリフターと揺動カムとのトラベル量の説明図。
【図18】揺動カムを用いた従来の動弁装置を示す概略図。
【図19】回転カムを用いた従来の概略図。
【図20】回転カムを用いた従来の動弁装置のカムリフト曲線及び特性図。
【符号の説明】
11…シリンダヘッド
12…吸気弁
13…駆動軸
15…駆動カム
16…バルブリフター
17…揺動カム
18…伝達機構
19…可変機構
20…基部
21…一端部
22…カム面
23…ロッカアーム
23a,23b…端部
24…リンクアーム
25…リンクロッド
40…ローラフォロワ
θ1…緩衝部区間
θ2…正加速度区間
θ3…零加速度区間
θ4…負加速度区間

Claims (6)

  1. 機関のクランク軸によって回転駆動し、外周に駆動カムが固定された駆動軸と、
    伝達機構によって前記駆動カムと機械的に連係され、駆動カムの回転に応じて所定角度範囲内で軸周りに揺動し、カム面がフォロワに摺接して機関弁を開閉作動させる揺動カムと
    該揺動カムのカムリフト量を機関の運転状態に応じて連続的に可変制御する可変機構とを備え、
    前記揺動カムの少なくともカムリフトの開始点から最大リフト点において、初期のランプ区間から前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が正となる区間の後に、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値がほぼ零となる区間を連続して設けると共に、該ほぼ零となる区間を所定の範囲で継続させたことを特徴とする内燃機関の動弁装置。
  2. カムリフトの最大リフト点が、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値がほぼ零となる区間になるように設定したことを特徴とする請求項1記載の内燃機関の動弁装置。
  3. 前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値がほぼ零となる区間に続いて、揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が負となる区間を設けると共に、前記揺動カムのカム面とフォロワの接触領域に前記負となる区間を含めないように設定したことを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の動弁装置。
  4. 前記カム面に摺接するフォロワの上面を円弧状に形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の動弁装置
  5. 機関のクランク軸によって回転駆動し、外周に駆動カムが固定された駆動軸と、
    伝達機構によって前記駆動カムと機械的に連係され、駆動カムの回転に応じて所定角度範囲内で軸周りに揺動し、カム面がフォロワに摺接して機関弁を開閉作動させる揺動カムとを備え、
    前記揺動カムの少なくともカムリフトの開始点から最大バルブリフト点において、初期のランプ区間から前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が正となる区間の後に、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値がほぼ零となる区間を連続して設けると共に、該ほぼ零となる区間では、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が微小変化するように設定したことを特徴とする内燃機関の動弁装置。
  6. 機関のクランク軸によって回転駆動し、外周に駆動カムが固定された駆動軸と、
    伝達機構によって前記駆動カムと機械的に連係され、駆動カムの回転に応じて所定角度範囲内で軸周りに揺動し、カム面がフォロワに摺接して機関弁を開閉作動させる揺動カムとを備え、
    前記揺動カムの少なくともカムリフトの開始点から最大リフト点において、初期のランプ区間から前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が正となる区間の後に、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値がほぼ零となる区間を連続して設けると共に、該ほぼ零となる区間では、前記揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が、最大バルブリフト部付近 で、揺動カムの角度に対してカムリフトを微分した値をさらに前記揺動カムの角度に対して微分した値が負となる側へ微小変化するように設定したことを特徴とする内燃機関の動弁装置。
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