以下、本発明に係る揺動カム式動弁装置について、これを採用したエンジンを搭載する自動二輪車を例にとり、図面を参照して説明する。
[自動二輪車]
図1は、本実施の形態に係る動弁装置を採用したエンジンEを搭載する自動二輪車1の右側面図である。なお、以下の実施の形態で用いる方向の概念は、自動二輪車1の進行方向を前方としてこれを基準とし、その他の方向については自動二輪車1に搭乗したライダーRが上記基準に従って見た方向の概念と一致するものとして説明する。
図1に示すように、自動二輪車1は前輪2と後輪3とを備え、前輪2は略上下方向に延びるフロントフォーク5の下部にて回転自在に支持され、該フロントフォーク5は、その上端部に設けられたアッパーブラケット(図示せず)と該アッパーブラケットの下方に設けられたアンダーブラケットとを介してステアリング軸(図示せず)に支持されている。ステアリング軸はヘッドパイプ6によって回転自在に支持されており、アッパーブラケットには左右へ延びるバー型のステアリングハンドル4が取り付けられている。従って、ライダーRはステアリングハンドル4を回動操作することにより、ステアリング軸を回転軸として前輪2を所望の方向へ転向させることができる。
ヘッドパイプ6からは車体の骨格を構成する左右一対のメインフレーム7が後方へ延設されており、該メインフレーム7の後部からは、ピボットフレーム(スイングアームブラケットとも称する)8が下方へ延設されている。このピボットフレーム8にはピボット9が設けられており、該ピボット9には前後方向へ延びるスイングアーム10の前端部が軸支されている。そして、該スイングアーム10の後端部には後輪3が回転自在に支持されている。
メインフレーム7の上方であってステアリングハンドル4の後方には燃料タンク12が設けられ、該燃料タンク12の後方には騎乗用のシート13が設けられている。また、左右のメインフレーム7間の下方にはエンジンEが搭載されている。エンジンEの出力は、チェーン(図示せず)を介して後輪3へ伝えられ、該後輪3が回転駆動することによって自動二輪車1に推進力が付与される。また、自動二輪車1の前部、具体的には、ヘッドパイプ6、メインフレーム7の前部、エンジンEの側方部分を覆うようにして、一体的に形成されたカウリング14が設けられている。このような自動二輪車1では、ライダーRはシート13に跨って自動二輪車1に搭乗し、ステアリングハンドル4の端部に設けられたグリップ4aを握り、且つエンジンEの後部近傍に設けられたステップ15に足を載せて走行することができる。
[エンジン]
図2は、図1に示すエンジンEの右側面図であり、一部分を断面にして示している。図2に示すようにエンジンEは、シリンダヘッド20、シリンダヘッドカバー21、シリンダブロック22及びクランクケース23を主として備えており、車幅方向へ気筒が配設された並列四気筒のダブル・オーバーヘッド・カムシャフト式(DOHC式)のエンジンである。
シリンダヘッド20の後部には、各気筒に夫々対応して吸気ポート20Aが斜め後上方へ向けて開口するように設けられ、シリンダヘッド20の前部には、排気ポート20Bが前方へ向けて開口するように設けられている。なお、本実施の形態に係るエンジンEは、1つの気筒に対して2つの吸気ポート20Aと排気ポート20Bがそれぞれ設けられている。
シリンダヘッド20の上部には吸気システム用の駆動カムシャフト24と排気システム用の駆動カムシャフト25とが車幅方向に軸芯を沿わせて配置され、これらの駆動カムシャフト24,25は、後述する下側ブラケット81及び上側ブラケット82から成る軸支持ブラケット49(図3参照)によって回転自在に保持されている。そして、軸支持ブラケット49の上方からシリンダヘッドカバー21が被せられ、該シリンダヘッドカバー21はシリンダヘッド20にボルト締結されて固定されている。
シリンダヘッド20の下部には、ピストン(図示せず)を収容するシリンダブロック22が接続され、更にシリンダブロック22の下部には、車幅方向に軸芯を沿わせて設けられたクランクシャフト26を収容するクランクケース23が接続されている。これらシリンダヘッド20、シリンダヘッドカバー21、シリンダブロック22、及びクランクケース23の右壁部には、クランクシャフト26の回転動力を駆動カムシャフト24,25に伝達する回転伝達機構28が収容されるひと続きのチェーントンネル27が形成されている。また、クランクケース23の下部には潤滑用又は油圧駆動装置用のオイルを溜めるオイルパン29が設けられ、クランクケース23の前部には、オイルパン29から吸い上げたオイルを浄化するオイルフィルタ30が設けられている。
回転伝達機構28は、吸気カムスプロケット31、排気カムスプロケット32、クランクスプロケット33及びタイミングチェーン34を備えている。詳しくは、吸気システム用の駆動カムシャフト24の右端部がチェーントンネル27内に突出しており、この端部に吸気カムスプロケット31が設けられている。また、排気システム用の駆動カムシャフト25の右端部もチェーントンネル27内に突出しており、この端部に排気カムスプロケット32が設けられている。更に、クランクシャフト26の右端部もチェーントンネル27内に突出しており、この端部にクランクスプロケット33が設けられている。
そして、吸気カムスプロケット31、排気カムスプロケット32及びクランクスプロケット33には、タイミングチェーン34が巻き掛けられており、クランクスプロケット33が回転すると、吸気カムスプロケット31及び排気カムスプロケット32がこれに連動回転するようになっている。従って、吸気カムスプロケット31、排気カムスプロケット32、クランクスプロケット33及びタイミングチェーン34から構成される回転伝達機構28により、クランクシャフト26の回転動力が駆動カムシャフト24,25へ伝達される。
チェーントンネル27内には、可動式チェーンガイド35と固定式チェーンガイド36とが設けられている。固定式チェーンガイド36は、タイミングチェーン34の前側にて上下方向に延設され、クランクスプロケット33の前方近傍位置から排気カムスプロケット32の下方近傍まで延びている。この固定式チェーンガイド36は、タイミングチェーン34に前方からあてがうことによって該タイミングチェーン34を前方から支持している。
可動式チェーンガイド35は、タイミングチェーン34の後側にて上下方向に延設され、その下端部は、クランクスプロケット33の上方近傍にてクランクケース23の右壁部に枢支され、その上端部は、吸気カムスプロケット31の下方近傍に位置している。可動式チェーンガイド35は、シリンダヘッド20の後壁部に設けられた油圧式テンショナー37により、タイミングチェーン34を後方から付勢して該タイミングチェーン34に適度な張力を与えている。
クランクシャフト26の右側部分には、クランクシャフト26の回転を出力するための出力ギヤ38が、クランクシャフト26と一体回転可能に設けられている。一方、クランクケース23の後部はトランスミッション室39になっており、その内部にはクランクシャフト26と略平行に配設されたインプットシャフト40とアウトプットシャフト(図示せず)とが収容されている。インプットシャフト40及びアウトプットシャフトには複数のギヤ41が取り付けられ、トランスミッション42を構成している。
そして、インプットシャフト40の右端部には、クランクシャフト26の出力ギヤ38に噛合する入力ギヤ43が一体回転可能に設けられている。従って、エンジンEの動力は、クランクシャフト26から出力ギヤ38及び入力ギヤ43を介してインプットシャフト40へ伝えられ、更にトランスミッション42により回転速度が変速されて後輪3(図1)へ出力されるようになっている。
また、本実施の形態に係るエンジンEは、トロコイドロータ式のオイルポンプ44を備えている。このオイルポンプ44の入力軸には従動ギヤ46が設けられており、該従動ギヤ46は、トランスミッション42のインプットシャフト40に設けられた駆動ギヤ45に噛合し、クランクシャフト26の回転に伴ってオイルポンプ44が駆動されるようになっている。そしてエンジンEには、オイルポンプ44によってオイルパン29から汲み上げられたオイル47を各所へ送るべく、潤滑用又は油圧用のオイルが通るオイル通路が設けられている。
このようなエンジンEは、クランクシャフト26の回転に連動して吸気ポート20A及び排気ポート20Bをそれぞれ開閉する動弁装置50A,50Bを備えている。このうち動弁装置50Aは、吸気ポート20Aから燃焼室52への吸気の流量及びタイミングを調整し、動弁装置50Bは、燃焼室52から排気ポート20Bへの排気の流量及びタイミングを調整するようになっている。以下、この動弁装置50A,50Bについて詳述する。
[動弁装置]
図3は、図2に示すエンジンEの上部を拡大して示す断面図であり、動弁装置50A,50B等を拡大して示している。図3に示すように、シリンダヘッド20には、燃焼室52を吸気ポート20Aに対して開閉させる吸気バルブ機構51Aと、燃焼室52を排気ポート20Bに対して開閉させる排気バルブ機構51Bとが設けられている。並列四気筒であるエンジンEでは、各気筒の燃焼室52は、図3の紙面奥方向へ1列に4つ配置されている。そして、吸気バルブ機構51Aは吸気側の動弁装置50Aにより開閉動作(往復動作)され、排気バルブ機構51Bは排気側の動弁装置50Bにより開閉動作(往復動作)される。吸気システムと排気システムとでは、バルブ機構51A,51B及び動弁装置50A,50Bが互いに略同一構造となっているため、以下では吸気システムが備えるバルブ機構51A及び動弁装置50Aについて説明する。
吸気バルブ機構51Aは公知の構造であり、吸気ポート20Aを開閉すべく該吸気ポート20Aから燃焼室52を臨むようにして設けられた弁体53aと、この弁体53aから上方に延びるステム53bとから成るバルブ本体53を備えている。ステム53bの上端部には溝が形成され、その溝にコッター56が挟み込まれ、該コッター56にスプリングリテーナ55が取り付けられている。また、スプリングリテーナ55より下方には、シリンダヘッド20に取り付けられてスプリングシート54が設けられており、これらのスプリングシート54とスプリングリテーナ55との間にはバルブスプリング57が介装されている。従って、バルブスプリング57によりバルブ本体53はスプリングリテーナ55を介して上向きに、即ち、弁体53aが吸気ポート20Aを閉じる方向に付勢されている。
一方、動弁装置50Aは、エンジンEのクランクシャフト26の回転に連動する駆動カムシャフト24と、該駆動カムシャフト24に固定された駆動カム24aと、該駆動カム24aに接触してその動きを吸気バルブ機構51Aのタペット58に伝達する揺動カム機構48とを備えている。
この揺動カム機構48は、駆動カム24aから与えられる動力を吸気バルブ機構51Aに伝達するものであり、これによって吸気バルブ機構51Aは、クランクシャフト26の回転に応じて吸気ポート20Aを開閉駆動するための動力を得る。また、揺動カム機構48は、後述する制御シャフト60をその軸芯60a回りに角変位させるシャフト角変位手段を成す駆動手段の一例として、本実施の形態ではモータ87によって全体的な外形形状が変更され、これにより、駆動カム24aから吸気バルブ機構51Aへの動力の伝達タイミングや吸気バルブ機構51Aの変位量が変更される。従って、クランクシャフト26の回転に連動する吸気ポート20Aの開閉タイミングや開閉量、換言すると吸気バルブ機構51Aのリフト特性を、任意に変更可能となっている。
なお、駆動カム24aは、その回転中心に沿って見たときの輪郭が非円形状となっており、輪郭に沿って進むに従って該輪郭上の箇所と駆動カム24aの回転中心との距離は変化する形状となっている。
[揺動カム機構]
図4は、図3に示す揺動カム機構48の分解斜視図、図5は、組み立てられた状態の揺動カム機構48の要部正面図、図6は、図5に示す揺動カム機構48の要部斜視図、そして図7は、図5に示す揺動カム機構48の別の角度から見た要部斜視図である。本実施の形態に係る動弁装置50Aは、1つの気筒に設けられた2つの吸気ポート20Aを開閉する2つの吸気バルブ機構51Aに対応して、2組の揺動カム機構48を備えている。
動弁装置50Aは、第1支持シャフトの一例である制御シャフト60と、該制御シャフト60に角変位自在に支持されて各タペット58を夫々個別に押動する2つの揺動部材61と、該揺動カム61に支持された第2支持シャフトの一例である連結ピン62に角変位自在に支持されて駆動カム24aに接触する2つの従動部材63と、揺動部材61に対する従動部材63の相対姿勢を変更するための2つの相対姿勢変更機構64とを主に備えている。本実施の形態では、動弁装置50Aは1つの揺動部材61,1つの従動部材63,及び1つの相対姿勢変更機構64によって構成される揺動カム機構48が2つ配置されている。
従動部材63と揺動部材61とが制御シャフト60の軸芯60a回りに揺動するように角変位することで、揺動カム機構48は、駆動カム24aから与えられる動力を吸気バルブ機構51Aに与えて吸気ポート20Aを開閉させる。また、相対姿勢変更機構64によって従動部材63が連結ピン62の軸芯62d回りに角変位することで、揺動部材61に対する従動部材63の相対姿勢が変更される。そして、この相対姿勢の変更により、駆動カム24aから吸気バルブ機構51Aへの動力の伝達タイミングや吸気バルブ機構51Aの変位量が変更されて、吸気バルブ機構51Aのリフト特性を変更可能となっている。
図4に示すように、制御シャフト60は略円柱状に形成され、本実施の形態では複数のサブシャフト67が連結して形成されている。互いに連結されるサブシャフト67のうち一方のサブシャフト67の端部には、サブシャフト67の軸芯からずれた位置に嵌合突起67aが突設され、他方のサブシャフト67の端部にはこの嵌合突起67aに整合する形状の嵌合孔67bが形成されている。また、各サブシャフト67には、その軸芯からずれた位置にて該軸芯に沿って貫通して形成された丸孔状の挿通孔67cが夫々設けられている。
このような各サブシャフト67は、互いの端部を対向させて一方の嵌合突起67aが他方の嵌合孔67bに嵌め込まれ、更に各サブシャフト67を合わせた長さ寸法を有する丸棒状のローラシャフト68が挿通孔67cに挿通されることにより同軸状に連結され、1本の制御シャフト60に形成される。また、このように制御シャフト60を複数本のサブシャフト67によって形成するため、各サブシャフト67に設ける挿通孔67cを精度よく形成することができる。
また、制御シャフト60の長手方向の複数の所定位置にはシャフト切欠部69が夫々形成されている。このシャフト切欠部69は、残余の部分に比べて制御シャフト60の径方向の中心向きに陥没した凹部を成している。本実施の形態では、シャフト切欠部69は所定の幅寸法B1を有して軸芯60aに直交する断面が略半円形状を成している。より具体的には、シャフト切欠部69は、矩形平面状の底壁面69aと、該底壁面69aの両側部から立ち上がる略半円形状の側壁面69bとを有する形状となっている。そして上述した挿通孔67cは、該切欠部69の側壁面69bにおいて、底壁面69aから離隔した位置の近傍を貫通して形成されている。制御シャフト60において、切欠部69の左右に隣接する縁部分70は、その他の部分に比べて外径寸法が大きく形成されている。
また、このような制御シャフト60には、軸芯60aに対して偏芯した位置に設けられる偏芯部として、ローラシャフト68に支持されるローラ71が取り付けられる。本実施の形態では、ローラ71は円筒状を成してその軸芯方向の寸法B2がシャフト切欠部69の幅寸法B1と略同一となるように(より厳密には、ローラ71の軸芯方向の寸法B2はシャフト切欠部69の幅寸法B1より若干小さくなるように)形成されており、その軸芯位置には制御シャフト60の挿通孔67cと内径寸法が略同一の挿通孔71aが形成されている。該ローラ71は、制御シャフト60の挿通孔67cにローラシャフト68が挿通される際に、該ローラシャフト68が挿通孔71aに挿通されるようにして組み付けられ、ローラシャフト68によって該ローラシャフト68の軸芯回りに回転自在に支持される。このようにして組み付けられたローラ71は、シャフト切欠部69の左右の側壁面69bとの間に若干の隙間を空けて配置され、且つ制御シャフト60の軸芯に対して偏芯して設けられる。また、ローラ71の軸芯は制御シャフト60の断面内を通る位置にある。本実施の形態では、ローラ71は、制御シャフト60の外周面より部分的に外方へ突出するようになっている。
この制御シャフト60には、1つの動弁装置50Aの構成部材として2つの揺動カム61が外嵌して設けられる。各揺動カム61は、制御シャフト60の軸芯60a回りに角変位自在にして該制御シャフト60に支持される。揺動カム61は、制御シャフト60に外嵌して該制御シャフト60の軸芯60a回りに回転自在に支持される外嵌筒部61aと、該外嵌筒部61aの外周部に突設された軸受部61bと、外嵌筒部61aから外方へ延設されてタペット58を押圧するタペット押圧部74とを有している。
このうち外嵌筒部61aは円筒状を成し、制御シャフト60が貫通する円形の貫通孔61fが形成されている。また外嵌筒部61aにおける軸芯方向の中間部分には、周方向へ切り欠かれた筒部切欠部61cが形成されている。その結果、外嵌筒部61aには、この筒部切欠部61cを挟んで軸芯方向に間隔を空けて位置する円環部61d,61dが夫々形成されている。そして本実施の形態では、外嵌筒部61aの筒部切欠部61cの幅寸法、即ち、各円環部61d,61dの軸芯方向の離隔寸法B3は、シャフト切欠部69の幅寸法B1と略同一になっている。
軸受部61bは、各円環部61dの夫々から径方向外方へ突出するように設けられており、連結ピン62が挿通されるべく軸芯方向に延びる貫通孔61eが形成されている。
外嵌筒部61aから延設されたタペット押圧部74は、タペット58から加わる力の方向に所定の肉厚寸法B4を有してタペット58に接触する押圧壁部74aと、該押圧壁部74aと外嵌筒部61aとを連結するリブ74bとを含んで構成されている。押圧壁部74aの外壁面は、円環部61dの軸芯と中心が一致する基本円弧面74cと、該基本円弧面74cから連続して延設されて、先端へ向かうに従って円環部61dの軸芯と外周面との距離が変化し、例えば軸芯から離隔するリフト曲面74dとから構成されている。また、リブ74bは、押圧壁部74aから延設され、途中で軸芯方向の一方及び他方に分岐し、各円環部61aと各軸受部61bとに接続された構成となっている。
また、この揺動部材61には、制御シャフト60よりも小径を成す中空管状の連結ピン62を介して従動部材63が支持される。従動部材63は、連結ピン62が挿通される挿通部63aと、該挿通部63aから径方向の一方向へ延びるレバー部63bと、挿通部63aから径方向の他方向へ延びて駆動カム24aに当接する駆動カム当接部75とを含んで構成されている。このうち挿通部63aは、揺動カム61の左右の軸受部61bの離隔寸法B3と略同一の幅寸法B5(より厳密には、軸受部61bの離隔寸法B3より若干小さい幅寸法B5)を有し、連結ピン62が挿通されるべく貫通孔63cを有している。また、駆動カム当接部75の外周面は、先端へ向かうに従って挿通部63aの軸芯と外周面との距離が変化し、例えば軸芯とは異なる位置に設定された中心を有する円弧状摺接面75aを成し、表面にはクロムメッキ等の表面硬化処理が施されている。本実施の形態では、円弧状摺接面75aは押圧壁部74aのリフト曲面74dよりも硬く構成されている。なお、従動部材63において駆動カム24aに当接する駆動カム当接部75は、駆動カム24aからの力が加わる方向に所定の肉厚寸法B6を有して形成されており、その寸法B6は、揺動カム61においてタペット58に当接する押圧壁部74aの肉厚寸法B4より大きく、高速で回転する駆動カム24aとの接触に対して高い耐摩耗性を有している。また、駆動カム当接部75の軸芯方向寸法B7もまた、押圧壁部74aの軸芯方向寸法B8より大きく形成されている。
この従動部材63は、その挿通部63aが揺動部材61の左右の軸受部61bの間に位置した状態で、これら軸受部61b及び挿通部63aの貫通孔61e,63cに連結ピン62が挿通されることにより、軸受部61bの貫通孔61eと挿通部63aの貫通孔63cとが同軸状となり、この連結ピン62に対して回動自在に支持される。また、この連結ピン62は、2つの従動部材63をその両端部近傍で支持するようになっている。連結ピン62は、軸受部61b及び挿通部63aに外嵌されて従動部材63を支持する左右の支持部62aに比べて、左右の従動部材63間の部分(即ち、左右の支持部62aの間の部分)62bは外径寸法が小さくなっており、軽量化が図られている。
また、制御シャフト60には付勢手段の一例であるコイルバネ77が外嵌して設けられるようになっており、コイルバネ77の一端は連結ピン62の端部にて支持される。より詳しく説明すると、コイルバネ77は所定の弾性を有する金属製の丸棒状部材が複数回密着巻きされて形成されており、その巻回されたコイル本体部を成す巻回部77aの内径は制御シャフト60の外径より若干大きい寸法となっている。また、コイルバネ77の一端77b及び他端77cは何れも、巻回部77aの外周面の接線方向に沿って互いに逆向きに延設されており、このうち一端77bは巻回部77aの巻回方向とは逆向きに且つ小径に巻回された係止巻回部77dを有している。
このコイルバネ77の一端77bを支持する連結ピン62の端部には、係止部の一例として、周回する断面略半円形状の凹部が形成される係止溝部62cが形成されており、この係止溝部62に係止巻回部77dが嵌め込まれることにより、コイルバネ77の一端77bは連結ピン62に係止される。更に、コイルバネ77の他端77cは、駆動カムシャフト24を下方から支持する下側ブラケット81の下面と(図3も参照)、シリンダヘッド20の上部に形成されて制御シャフト60を下方から支持すると共に下側ブラケット81が上方から組み付けられるマウント部78の上面との間に形成された凹部78a内に挿通され、ここで保持されている(図21(a)も参照)。即ち、本実施の形態では、制御シャフト60を下方から支持する下側支持部の一例としてのマウント部78と、駆動カム24を下方から支持してマウント部78に上方から組み付けられる下側ブラケット81とにより、コイルバネ77の他端77cは上下から保持される。また、下側ブラケット81の下面には上方への窪みが形成されており、下側ブラケット81がマウント部78に上方から組み付けられると、両者によって上下から挟まれて外方(図7での制御シャフト60側)へ開口するように凹部78aが形成される。そしてコイルバネ77の他端77cは、この凹部78a内に挿通されて保持されるようになっている(図7参照)。
本実施の形態に係る揺動カム機構48は、上述したように主に制御シャフト60,揺動部材61,従動部材63,及びコイルバネ77という比較的少ない部品によって構成され、以下に説明するような手順によって組み立てることができる。まず、揺動部材61の円環部61aに制御シャフト60を挿通し、揺動部材61の筒部切欠部61cと制御シャフト60のシャフト切欠部69とが一致するように配置する。この状態で、揺動部材61の筒部切欠部61cを通過させて制御シャフト60のシャフト切欠部69へローラ71を嵌め込み、制御シャフト60の挿通孔67cへローラシャフト68を挿通する。そして、このローラシャフト68をローラ71の挿通孔71aにも挿通することにより、ローラ71を制御シャフト60に支持させる。
この時点で、ローラ71が制御シャフト60の外周面より突出して固定されるため、このローラ71が左右の円環部61aの間に位置する揺動部材61は、左右方向への位置ずれが規制される一方、制御シャフト60の軸芯回りへは所定角度範囲内で角変位自在となっている。
次に、揺動部材61の左右の軸受部61b間に、貫通孔61e,63cが一致するように従動部材63を配置し、貫通孔61e,63cへ連結ピン62を挿通する。そして、コイルバネ77を2組の揺動部材61及び従動部材63の両側方から制御シャフト60に外嵌させ、その一端77bの係止巻回部77dを連結ピン62の端部の係止溝部62cに巻き掛けるようにして係止させると共に、その他端77cは、シリンダヘッド20に下側ブラケット81を取り付ける際に、シリンダヘッド20のマウント部78と下側ブラケット81との間に形成される凹部78a内に位置させられる。これにより、従動部材63は円弧状摺接面75aが駆動カム24aに当接する方向へコイルバネ77によって付勢された状態となり、図6及び図7に示すような2組の揺動カム機構48が組み立てられる。
このような揺動カム機構48は、例えて説明するならば、駆動カム24aと吸気バルブ機構51Aとの間に設けられたロッカーアームに例えることができる。より詳しくは、長寸アーム状を成して途中部分で枢支されるロッカーアームを、枢支位置よりも駆動カム24a寄りの箇所で分割し、枢支位置を含む吸気バルブ機構51A側の部分を揺動部材61とし、駆動カム24a寄りの部分を従動部材63とし、更に揺動部材61に対する従動部材63の相対姿勢を変更可能としつつ、駆動カム24aの回転時には揺動部材61及び従動部材63が一体的に制御シャフト60回りに角変位するようにした如くのものである。
なお、上記のように連結ピン62に形成された係止溝部62cにコイルバネ77の一端77bの係止巻回部77dを巻き掛けて係止するため、専用の係止部材を別途設ける必要がない。また、係止溝部62cが断面略半円形状を成すため、丸棒状部材から成り断面が略円形の係止巻回部77dとの接触面圧が低減され、両部材の摩耗が抑制されるようになっている。また、コイルバネの他端77cはマウント部78及び下側ブラケット81とによって挟持する構成となっているため、この他端77cを保持する専用の部材を別途設ける必要がなく、部品点数の低減が図られている。
なお、上記のようにコイルバネ77を組み付けることにより、従動部材63は制御シャフト60回りの一方向へ付勢され、駆動カム当接部75が駆動カム24aに当接すると共に、レバー部63bがローラ71に当接することとなる。また、従動部材63の挿通部63aの軸芯に沿って見たときに、駆動カム当接部75の先端とレバー部63bの先端とを通る直線L(図10参照)によって区分けされる2つの領域のうち、一方の領域に、駆動カム24a及びローラ71は配置している。また、駆動カム24aに接する円弧状摺接面75a、及び、レバー部63bにおいてローラ71に接する面は、直線Lに対して一方の領域側へ向けられている。
また、上記のような揺動カム機構48の制御シャフト60には、モータ87(図9参照)の出力軸が連結されており、このモータ87を駆動することによって制御シャフト60をその軸芯60a回りに任意の角度だけ回転させて位相を変更可能になっている。そして、後に詳述するが、制御シャフト60を回転させてその軸芯60a回りのローラ71の位相を変更すると、これに当接するレバー部63bが移動して揺動部材61に対する従動部材63の相対姿勢が変更される。更に、このような姿勢変更により、駆動カム24aから吸気バルブ機構51Aへの動力伝達タイミングや吸気バルブ機構51Aの変位量が変更され、吸気バルブ機構51Aのリフト特性が変更される。このように、ローラ71及びレバー部63bは、揺動部材61に対する従動部材63の相対姿勢を変更することによって吸気バルブ機構51Aのリフト特性を変更する相対姿勢変更機構64を構成している。
また図3に示すように、揺動カム機構48が備える揺動部材61と従動部材63とは、エンジンEの前後方向の中央位置側へ開くように構成されている。即ち、揺動部材61のタペット押圧部74は、制御シャフト60からエンジンEの前後方向の中央位置へ向けて延び、従動部材63の駆動カム当接部75は制御シャフト60から上方へ向かいつつやはりエンジンEの前後方向の中央位置へ向けて延びている。従って、揺動部材61及び従動部材63は、制御シャフト60を基端としてエンジンEの前後方向の中央位置側へ鋭角に開いた構成となっている。
本実施の形態では、図3に示す吸気システムの駆動カム24aは反時計回りに回転するようになっており、排気側の駆動カム24aにおいても上記吸気側の駆動カム24aとは同様に、図3に示すところで反時計回りに回転するようになっている。
一方、図3に示すようにシリンダヘッド20の上面には、駆動カムシャフト24を回転自在に支持する軸支持ブラケット49が設けられている。軸支持ブラケット49は、シリンダヘッド20の上面に突設する下側ブラケット81と、この下側ブラケット81に上方からボルト80によって取り付けられる上側ブラケット82とから構成されている。下側ブラケット81は断面半円状の下側軸受凹部81aを有し、上側ブラケット82は下側軸受凹部81aと対面する断面半円状の上側軸受凹部82aを有している。そして、下側軸受凹部81aと上側軸受凹部82aとで形成される断面円形状の軸受け空間に駆動カムシャフト24が回転自在に挿入支持されている。
さらに、下側ブラケット81には、駆動カムシャフト24の軸芯方向に沿って貫通する挿通孔81bが形成され、この挿通孔81bにオイルパイプ83が挿通されている。従って、オイルパイプ83を支持する専用部材を備える必要がなく、部品点数の削減及び省スペース化が図られている。そして、オイルパイプ83は、吸気システムが備える動弁装置50Aと排気システムが備える動弁装置50Bとの間に2本設けられている。このオイルパイプ83の周壁には、長手方向に沿って間隔をあけて複数の吐出口83aが形成されている。これらの吐出口83aは、動弁装置50Aに対応する位置に形成されており、オイルパイプ83を流れるオイルがこの吐出口83aから動弁装置50Aに向けて吐出される。
また、オイルパイプ83の吐出口83aは、従動部材63の駆動カム当接部75の先端部に近接して配置されている。即ち、オイルパイプ83は、吸気システムの揺動カム機構48と排気システムの揺動カム機構48との間の空間に配置され、且つ、揺動カム機構48の可動範囲の少なくとも1つの位置で、オイルパイプ83の吐出口83aが、従動部材63と駆動カム24aとが当接する夫々の面に向けられるように配置されている。
図8は、図3に示すエンジンEのヘッドカバー21を外した状態を示す平面図であり、図9は、図8に示すエンジンEから上側ブラケット82及び駆動カムシャフト24,25を更に外した状態を示す平面図である。図8に示すように、左右方向へ1列に並べられた4つの燃焼室52の一方側に吸気システムの動弁装置50Aが1列に配置され、他方側に排気システムの動弁装置50Bが1列に配置されている。また、これら動弁装置50A,50Bの配列方向に沿って駆動カムシャフト24,25が延在しており、既に説明したように、この駆動カムシャフト24,25の端部はチェーントンネル27内にてカムスプロケット31,32に夫々接続されている。
また、図9に示すように、動弁装置50A,50Bの配列方向に沿って制御シャフト60が延在している。エンジンEにおいてチェーントンネル27とは反対側の端部にはギヤ室85が設けられており、このギヤ室85には制御シャフト60と噛合する制御ギヤ86が収容されている。この制御ギヤ86はシリンダヘッド20に付設されたモータ87により駆動され、これに連動して制御シャフト60が回転するようになっている。なお、このモータ87は自動二輪車1に搭載された図示しないECU(電子制御ユニット)によりその動作が制御される。
そして、図8及び図9に示すように、一対のオイルパイプ83が、吸気システムの揺動カム機構48と排気システムの揺動カム機構48との間において、動弁装置50A,51Aの配列方向(左右方向)に沿って延在配置されている。また、オイルパイプ83の一端部は、シリンダヘッド20の上面に設けられたパイプ接続部88に連結されている。このパイプ接続部88は、オイルポンプ44によってオイルパン29から汲み上げられたオイルが通流するオイル供給路(図示せず)を有しており、このオイル供給路を通じてオイルパイプ83にオイルを供給している。
[動作原理]
次に、本実施の形態に係る動弁装置50Aの動作原理について説明する。図10は、揺動カム機構48が一の態様に設定されている状態での動弁装置50Aの動作を説明する図面である。この設定では、揺動カム機構48の揺動部材61と従動部材63とが比較的大きな角度をもって開いた状態となっている。図10に示すように、駆動カム24aの先端部(より詳しくは、カムノーズの先端)が上限に位置する場合、揺動部材61のタペット押圧部74の基本円弧面74cがタペット58に当接している(実際には、基本円弧面74cとタペット58とは微小のクリアランスを空けて位置している)。従って、タペット58のリフト量(即ち、バルブ本体53のリフト量)は実質的にゼロで、バルブ本体53は吸気ポート20Aを閉塞した状態になっている。また、このとき従動部材63の駆動カム当接部75はコイルバネ77によって連結ピン62を介して駆動カム24aに押し付けられるように、制御シャフト60の軸芯60a回りの一方向(図10における時計回り方向)へ向けて付勢されている。この際、従動部材63のレバー部63bはローラ71に当接した状態となっているので、挿通部63aが軸芯60a回りの一方向へ角変位することが阻止される。
そして、駆動カム24aが回転(図10において反時計回りに回転)し、カムノーズが下降してくることで、従動部材63の駆動カム当接部75が駆動カム24aにより押し下げられる。このとき、レバー部63bがローラ71に当接して従動部材63は連結ピン62回りの一方向(図10における反時計回り方向)への角変位が阻止されているため、従動部材63は連結ピン62を制御シャフト60回りに角変位させる。そして、連結ピン62を介して接続された従動部材63と揺動部材61とは、一体的に制御シャフト60回りに角変位して揺動する。これにより、揺動カム61の基本円弧面74cがタペット58の上面を摺動している間はタペット58のリフト量はゼロのままであるが、揺動カム61が更に回転して、そのリフト曲面74dがタペット58の上面を摺動するようになると、揺動部材61の回転に伴ってタペット58は下方へ押し下げられ、同時にバルブ本体53も下方へ変位してリフト量が大きくなり、吸気ポート20Aが開放される。
なお、既に言及したように揺動部材61の基本円弧面74cとタペット58の上面との間には微小のクリアランスが設けられているため、厳密にいえばタペット58の上面に基本円弧面74cが対向している間、両者は摺動せず、前記クリアランスを有して対向した状態で、基本円弧面74cがタペット58の上面に対して移動することとなる。
また、このように動作する揺動カム機構48の可動範囲の少なくとも1つの位置で、オイルパイプ83の吐出口83aは従動部材63と駆動カム24aとの摺動部分に(従動部材63の駆動カム当接部75に妨げられることなく)向くように構成されている。これにより、動弁装置50Aの動作中において、オイルパイプ83の吐出口83aから吐出されたオイル47が、従動部材63と駆動カム24aとの摺動面に直接的に着地するので、この摺動面にオイル47が十分に供給されて摺動面に油膜が安定的に形成される。したがって、動弁装置50Aの摩耗等に対する耐久性をより向上させることができる。
図11は、揺動カム機構48が他の態様に設定されている状態での動弁装置50Aの動作を説明する図面である。図11に示すように、制御シャフト60が図11中時計回りに回転すると、それに伴ってローラ71も移動する。これにより、ローラ71に対する従動部材63のレバー部63bの当接位置が変化し、揺動部材61に対する従動部材63の相対姿勢が変更される。そして、図11に示された態様では、揺動カム機構48の揺動部材61と従動部材63とが図10に示した態様に比べて小さい角度をもって開いた状態となっている。
これにより、揺動部材61によりタペット58を介して押し下げられるバルブ本体53の動作タイミング及びリフト量が変更され、具体的には、図11に示すようにリフト量は小さくなり、且つバルブ本体53による吸気ポート20Aの開放時間は短くなる。そして、図11のように揺動部材61に対する従動部材63の相対姿勢が変更された場合でも、揺動カム機構48の可動範囲の少なくとも1つの位置で、オイルパイプ83の吐出口83aは、従動部材63と駆動カム24aとの摺動部分に(従動部材63の駆動カム当接部75に妨げられることなく)向くように構成されている。従って、この態様であっても油膜の安定的な形成を実現することができる。
以上に説明した揺動カム機構48の構成および動作から分かるように、本実施の形態に係る揺動カム機構48は、駆動カム24aの回転時に可動する部材が少なくて済む構成となっており、また、連結ピン62が中空管状を成して軽量化が図られており、動作時の慣性モーメントの増加を抑制可能となっている。しかも、制御シャフト60の角変位によって揺動部材61に対する従動部材63の相対姿勢を変更することにより、吸気バルブ機構51Aのリフト特性を変更することも可能である。
また、本実施の形態に係る揺動カム機構48では、制御シャフト60とローラ71とが別体に構成されているため、種々の形状・寸法を有する複数のローラ71から適宜選択したものを用いてローラシャフト68で支持することにより、様々のリフト特性を容易に実現することができる。
なお、本実施の形態では前述した通り動弁装置50A,50Bが互いに略同一構造となっているが、例えば、駆動カム24aについて、その外形形状(駆動カムシャフト24の軸芯方向に沿って見たときの輪郭形状)を吸気システムと排気システムとで異ならしてもよい。これにより、揺動部材61及び従動部材63については吸気システムと排気システムとで共通の同一形状としつつ、吸排気の流量及びタイミングを吸気システムと排気システムとで互いに異ならせることが可能である。また、レバー部63b,ローラ71等を含んで構成される相対姿勢変更機構64についても吸気システムと排気システムとで同一形状の共通部材としてもよいし、揺動部材61及び従動部材63のうち何れか一方又は両方について、吸気システムと排気システムとで外形形状を異ならしてもよい。
[揺動カム機構の機構的構成]
図12は、上述した揺動カム機構48を備える動弁装置50Aの概略側面図であり、(a)は、制御シャフト60、連結ピン62、及び駆動カムシャフト24の位置関係と、従動部材63に作用する力関係とを説明するための図面であり、(b)は、従動部材63と駆動カム24aとの接点位置を説明するための図面である。既に説明したように、所定の位相に設定された制御シャフト60に支持された揺動部材61は、そのタペット押圧部74の外周面がタペット58に当接している。また、この揺動部材61に連結ピン62を介して支持された従動部材63は、レバー部63bがローラ71に当接し、駆動カム当接部75の円弧状摺接面75aは駆動カム24aに当接している。
そして、図12(a)に基づいて制御シャフト60、連結ピン62、及び駆動カムシャフト24の位置関係について見ると、第2支持シャフトの一例である連結ピン62は、第1支持シャフトの一例である制御シャフト60よりも駆動カムシャフト24側の位置に配設されている。また、従動部材63を支持する連結ピン62が制御シャフト60とは別体であるため、連結ピン62を小径とすることによって挿通部63a(図4参照)を小型化でき、従動部材63の小寸法化に貢献している。また、このように従動部材63や連結ピン62の小寸法化によって、制御シャフト60から離れた部分の軽量化が図られているため、該制御シャフト60回りの慣性モーメントの低減が実現されている。
次に、図12(a)に基づいて従動部材63に作用する力の関係を見ると、従動部材63の円弧状摺接面75aと駆動カム24aとの接点は力点P1を成し、従動部材63が回動自在に支持される連結ピン62の軸芯位置は作用点P2を成し、従動部材63のレバー部63bとローラ71との接点は支点P3を成している。そして、本実施の形態に係る動弁装置50Aでは、力点P1及び支点P3を結ぶ線分に直交してこれら力点P1及び支点P3を夫々通る2本の直線L1,L3間に作用点P2が位置し、更に、力点P1よりも支点P3に近い位置に作用点P2が設定されており、例えば直線L1,L3間以外に作用点P2が位置する場合に比べて従動部材63の小型化を図りつつ、駆動カム24aから揺動部材61へと効率的に動力を伝達することができ、しかも、従動部材63の小型化によって該従動部材63の慣性モーメントを低減してPV値を低減できるようになっている。
続いて、図12(b)に基づいて従動部材63と駆動カム24aとの接点位置について見ると、駆動カム24a及び揺動部材61の夫々の軸芯を結ぶ線分を第1線分L4とし、駆動カム24a及び従動部材63の接点(力点P1)と駆動カム24aの軸芯を結ぶ線分を第2線分L5とすると、これらの角線分L4,L5が成す設定角度A1は鋭角(即ち、90度>A1>0)に設定されており、より好ましくは35度以上45度以下の範囲内に設定されている。また、この設定角度A1について更に詳説すると、駆動カム24aが回転したときにバルブ本体53の最大リフト量を増大させる方向となる角変位方向(図12(b)では反時計回り)へ制御シャフト60が最大に回動して揺動部材61と従動部材63との成す角が最大に設定された状態で、揺動部材61が時計回りに最も回動したとき(換言すれば、従動部材63と駆動カム24aとの接点が駆動カム24aの軸芯に最も接近したとき)の各線分L4,L5の成す角としている。これにより、駆動カム24aと従動部材63との接触箇所におけるPV値、即ち、当該接触箇所での面圧(P)と滑り速度(V)との乗算値(P×V)を低減することができ、当該箇所の耐摩耗性の向上が図られている。
図13は、設定角度A1とPV値との関係の一例を示すグラフであり、ここでのPV値は、設定角度A1がある値に設定されたときの最大値を示している。この図13に示すように、PV値の最大値は、設定角度A1が40度付近のときに最小値をとり、40度付近から増加する方向及び減少する方向へ離れるに従って大きくなる傾向にあり、35度以上45度以下の範囲では予め定められた規定値未満となっている。
ここで、設定角度A1とPV値との関係について考察すると、設定角度A1を小さくするに従って、制御シャフト60の軸芯から接点P1までの距離を小さくでき、従動部材63を短寸化できるため、慣性モーメントを小さくできる。また、設定角度A1を小さくすると、本実施の形態に係る構成では駆動カム24aのカムトップ半径(即ち、駆動カム24aの軸芯からカムノーズまでの距離)を小さくできる可能性があり、これに伴ってV値の最大値を低減することができる。但し、駆動カム24aが一回転する間のバルブ本体53のリフト特性を固定して考えると、従動部材63に作用するモーメントは原則的に不変である必要があるため、設定角度A1を小さくするに従って従動部材63が短寸化した分、駆動カムと従動部材との接触箇所が揺動部材の角変位の中心に近付くため、接点P1に作用するP値は大きくなり得る。
以上から分かるように、PV値を低減するに際して、設定角度A1は小さければよいというものではなく最適な値が存在する。そして本発明者は、このような考察を踏まえて、上述したように設定角度A1としては鋭角であることが好ましく、35度以上45度以下の範囲であることがより好ましいことを突き止めた。なお、シミュレーション・プログラムを用いて最大PV値が最も小さくなる設定角度A1を求め、この設定角度A1付近となるように各部材を設計してもよい。
なお、PV値に影響を及ぼすパラメータとしては、上述した設定角度A1の他にも従動部材63が有する駆動カム当接部75の円弧状摺接面75aの形状や、駆動カム24aの外周面形状、更には摺接箇所の動摩擦係数なども存在するが、設定角度A1を変化させたときのPV値の変化の度合い(感度)が比較的大きいため、これらのパラメータを調整するよりも設定角度A1を調整してPV値を低減する方が容易である。以上では、吸気ポート20Aに対応する動弁装置50Aについて説明したが、排気ポート20Bに対応する動弁装置50Bにおいても同様の構成により同様の効果を得ることが可能である。
以上に説明した動弁装置50A,50Bによれば、主に制御シャフト60,揺動部材61,従動部材63,及びコイルバネ77という比較的少ない部品によって構成されているため、組み付け精度の向上及び製造コストの低減を図ることができる。また、揺動部材61に従動部材63を支持する連結ピン62が取り付けられているため、揺動部材61を支持する制御シャフト60と連結ピン62との相対位置を精度良く定めることができる。
また、相対姿勢変更機構64を成すローラ71を制御シャフト60から離隔して設けず、制御シャフト60の軸芯近傍に取り付けているため、揺動カム機構48は制御シャフト60回りの慣性モーメントの低減が図られている。更には、従動部材63が有する駆動カム当接部75の円弧状摺接面75aが硬化処理され、且つ駆動カム24aとの摺接部にオイル47が直接に供給されるようになっているため、駆動カム24aと従動部材63との間に油膜を安定的に形成可能になっている。
[バルブ本体及び揺動部材の加速度曲線]
図14は、上述したような動弁装置50A,50Bにおけるバルブ本体53の加速度の変化を説明するためのグラフであり、(a)は比較例について、(b)は本実施の形態に係る動弁装置50A,50Bについて示している。また、図14(a),(b)の何れも、横軸は、駆動カム24aの変位角度であって駆動カム24aが1回転する間にバルブ本体53が正の加速度を有するバルブ加速区間を示し、縦軸は、バルブ本体53の加速度を示している。また、図15は、揺動部材61の角加速度の変化を説明するためのグラフであり、(a)は比較例について、(b)は本実施の形態に係る動弁装置50A,50Bについて示している。また、図15(a),(b)の何れも、横軸は、駆動カム24aの変位角度であって駆動カム24aが1回転する間に揺動部材61が正の加速度を有する揺動部材加速区間を示し、縦軸は、揺動部材61の角加速度を示している。また、図16は、本実施の形態に係る動弁装置50A,50Bにおける駆動カム24aの角変位に対する駆動カム24aと従動部材63との接触箇所のPV値の変化を説明するためのグラフであり、横軸に駆動カムの角変位、縦軸にPV値を夫々示し、細線は比較例について、太線は本実施の形態に係る動弁装置50a,50bについて示している。
駆動カム24aが回転すると、駆動カム24aと従動部材63との接触箇所、および揺動部材61とバルブ本体53(より正確にはタペット58)との接触箇所が摺動する。そして、図14(a)に示すように、比較例とする動弁装置では、駆動カムが1回転する間にバルブの加速度が正の値を有するバルブ加速区間において、その中間点X1Aよりも後半の領域にバルブ本体53の加速度が最大値Y2Aとなるバルブ最大加速点X2Aが位置している。また、バルブ加速区間において、バルブ最大加速点X2Aより後半の方が前半に比べて、バルブ本体53の加速度の変化率が大きくなっている。また、図15(a)に示すように、駆動カムが1回転する間に揺動部材の角加速度が正の値を有する揺動部材加速区間(バルブ加速区間とほぼ一致)において、その中間点X3Aよりも後半の領域に、揺動部材61の角加速度が最大値Y4Aとなる揺動部材最大加速点X4Aが位置している。また、揺動部材加速区間において、揺動部材最大加速点X4Aより後半の方が前半に比べて、揺動部材61の角加速度の変化率が大きくなっている。そして図16の比較例(細線)に示すように、バルブ加速区間及び揺動部材加速区間の各後半の区間にて、上述した接触箇所のPV値が最大となる傾向にある。なお、上述した「バルブの加速度が正の値を有するバルブ加速区間」及び「揺動部材の加速度が正の値を有する揺動部材加速区間」でいう「加速度が正」とは、駆動カム24aと従動部材63との面圧Pが増大するときの加速度を意味している。
そこで、本実施の形態に係る動弁装置50A,50Bでは、バルブ加速区間の後半でのバルブ本体53の加速度が小さくなるように、より具体的には、PV値が最大となる傾向にあるバルブ加速区間の後半を避けて、バルブ加速区間の前半にバルブ最大加速点が位置するように、駆動カム24a、従動部材63、揺動部材61、及びローラ71のそれぞれについて位置及び形状が設定されている。また、揺動部材加速区間の後半での揺動部材61の角加速度が小さくなるように、より具体的には、PV値が最大となる傾向にある揺動部材加速区間の後半を避けて、揺動部材加速区間の前半にバルブ最大加速点が位置するように、駆動カム24a、従動部材63、揺動部材61、及びローラ71のそれぞれについて位置及び形状が設定されている。
更に、バルブ加速区間におけるバルブ最大加速点より前半の方が、バルブ加速区間におけるバルブ最大加速点より後半に比べて、駆動カム24aの単位角変位あたりのバルブ本体53の加速度変化率の絶対値が大きくなるように、駆動カム24a、従動部材63、揺動部材61、及びローラ71のそれぞれについて位置及び形状が設定されている。また、PV値が最大となる駆動カム24aの位置にて、揺動部材61の角加速度がほぼゼロとなるように、駆動カム24a、従動部材63、揺動部材61、及びローラ71のそれぞれについて位置及び形状が設定されている。
図14及び図15を用いてより具体的に説明すると、図14(b)に示すように、本実施の形態に係る動弁装置50A,50Bの場合は、バルブ加速区間の中間点X1Bよりも前半の領域に、バルブ本体53の加速度が最大値Y2Bとなるバルブ最大加速点X2Bを位置させている。また、バルブ加速区間において、バルブ最大加速点X2Bより後半の方が前半に比べて、バルブ本体53の加速度の変化率を小さくさせている。また、図15(b)に示すように、本実施の形態に係る動弁装置50A,50Bの場合は、揺動部材加速区間の中間点X3Bよりも前半の領域に、揺動部材61の加速度が最大値Y4Bとなる揺動部材最大加速点X4Bを位置させている。また、揺動部材加速区間において、揺動部材最大加速点X4Bより後半であってPV値が最大となる位置で、揺動部材61の角加速度をほぼゼロとしている。
これにより、PV値が最大になるときのバルブ本体53の加速度は、図14(a)に示す比較例の加速度Y3Aに比べて、図14(b)の本実施の形態に係る動弁装置50A,50Bの加速度Y3Bの方が小さくなっている。また、PV値が最大になるときの揺動部材61の角加速度についても、図15(a)に示す比較例の角加速度Y5Aに比べて、図15(b)の本実施の形態に係る動弁装置50A,50Bの角加速度Y5Bの方が小さくなっている。
図17は、本実施の形態に係る動弁装置50A,50Bにおける駆動カム24aの角変位に対する駆動カム24aと従動部材63との接触箇所の面圧P及び相対速度Vを示しており、横軸に駆動カム24aの角変位、縦軸に接触箇所の速度V及び面圧Pを夫々示している。なお、面圧Pは太線で、速度Vは細線で示している。また図18は、本実施の形態に係る動弁装置50A,50BにおいてPV値が最大となるときの駆動カム24aと従動部材63との接触箇所での接触荷重を示す棒グラフである。
図17の太線に示すように、加速度曲線を図14(b),図15(b)の如く設定することにより、駆動カム24aと従動部材63との接触箇所の面圧Pのピークは、バルブ加速区間の前半に位置しており、図18に示すように、バルブ加速区間の後半に位置するPV値が最大となる点での接触荷重は、比較例に比べて本実施の形態に係る動弁装置50A,50Bでは低減している。その結果、図17の細線で示すように速度Vはバルブ加速区間の後半へ向かうに従って大きくなっているにも拘わらず、図16にて太線で示すように、動弁装置50A,50BではPV値の最大値はバルブ加速区間の後半にありつつも、その値は比較例(破線)よりも低減している。
なお、図4乃至図6および図12を用いて説明した駆動カム24a、従動部材63、揺動部材61、及びローラ71等から成る動弁装置50Aの構成を前提とした場合、バルブ加速区間の前半にバルブ最大加速点を位置させること、揺動部材加速区間の前半にバルブ最大加速点を位置させること、バルブ加速区間におけるバルブ最大加速点より後半の方が前半に比べてバルブ本体53の加速度を小さくすること、及び、揺動部材加速区間における揺動部材最大加速点より後半の方が前半に比べて揺動部材61の加速度を小さくすること、を夫々目的として、該目的と達成し得るように駆動カム24a、従動部材63、揺動部材61、及びローラ71の位置及び形状を設定すること自体は、当業者であれば適宜成し得ることである。例えば、駆動カム24aの軸芯と制御シャフト60とを所定位置に固定した状態では、駆動カム24a、従動部材63、及び揺動部材61の形状を適宜設定することで、上述したリフト特性及び揺動特性を得ることができる。また、市販又は別途作成したシミュレーション・プログラムを用いることによって、所望のリフト特性及び揺動特性となる部材の条件を、試作品を製作することなく容易に決定することができる。従って、ここではこのような位置及び形状の設定に関しては詳説しない。
このように、本実施の形態に係る動弁装置50A,50Bでは、駆動カム24aと従動部材63との接触箇所、及び揺動部材61とバルブ本体53(より正確にはタペット58)との接触箇所におけるPV値の低減が図られている。
[揺動カム機構の他の構成]
ところで、上述した動弁装置50Aの説明では2つの吸気ポート20Aに対応して、駆動カム24a,従動部材63及び揺動部材61などが2組備えられた構成について開示しているが、これとは異なる態様も可能である。
図19は、エンジンEに適用することができる動弁装置の他の構成を示す斜視図である。この図19に示すように、この動弁装置90は、図6に示す第1の実施の形態と同様の1組の揺動カム機構48と、これとは異なる構成の他の1組の揺動カム機構90aとを備えている。即ち、一方の吸気ポート20A(図3参照)に対応して、駆動カム24a、従動部材63、揺動部材61、及びローラ71(図19には図示せず)等から成る揺動カム機構48が備えられているが、他方の吸気ポート20Aに対しては、揺動部材61は備えるが駆動カム24a、従動部材63、及びローラ71が備えられていない揺動カム機構90aが設けられている。
このような構成の動弁装置90であっても、上述した動弁装置50Aと同様に動作可能であり、既に説明したのと同様の作用効果を奏することができる。なお、図19に示す動弁装置90において、前述の動弁装置50Aと同様の構成を成す部分については同符号を付しており、ここでの説明は省略する。
更に、コイルバネについても上述したコイルバネ77とは異なる構成をとることが可能である。図20は、動弁装置50A,90に適用することができるコイルバネの他の構成を示す側面図である。この図20に示すコイルバネ91は、前述のコイルバネ77と同様に所定の弾性を有する金属製の丸棒状部材が複数回密着巻きされて形成されており、その巻回されたコイル本体部を成す巻回部91aから前記丸棒状部材の一端91b及び他端91cが延設されている。そして、前述のコイルバネ77では、一端77b及び他端77cが巻回部77aの外周面に接する1つの接線上に位置するようにして互いに反対方向へ延設されているのに対し、図20のコイルバネ91の一端91b及び他端91cは、巻回部91aの外周上においてコイル本体部91aの軸芯91fを挟んで互いに反対側に位置する2つの地点91g,91hから延設されている。より具体的には、一方の地点91gからは、軸芯91fに沿った方向から見たときにこの地点91gでの巻回部91aの接線91dに沿って一端91bは延設され、本実施の形態では直線的に延設されている。また、他方の地点91hからは、この地点91hでの巻回部91aの接線91eに沿って他端91cは一端91bと略同一方向へ延設され、直後に巻回部91aでの巻回方向とは反対に巻回されている。
このような構成のコイルバネ91によれば、駆動カム24aの回転によって揺動カム機構48,90が動作したときに、コイルバネ91の巻回部91aが制御シャフト60に接触する接触圧を低減することができる。即ち、揺動カム機構48,90が動作したときに、コイルバネ91は揺動カム機構48,90aを復帰させようとする復元力を発揮すると同時に、これに対する抗力F1,F2がコイルバネ91の一端91b及び他端91cに夫々及ぼされる。そして、図21(a)に示すように、例えば図6に示したコイルバネ77のように、その一端77b及び他端77cがコイル本体部分に対して逆方向へ延設されていると、この抗力F1,F2はコイルバネに対して略同一の方向へ向く力となるため、コイルバネが制御シャフト60に合力F3で当接することとなる。一方、上記のコイルバネ91のように一端91b及び他端91cをコイル本体部分91aに対して略同一方向へ延設されると、図21(b)に示すようにコイルバネ91の一端91bに及ぶ抗力F1と他端91cに及ぶ抗力F2は互いに略逆方向へ向く力となって相殺され、コイルバネ91が制御シャフト60に当接する力は上記合力F3よりも小さく抑制することができる。
なお、上述した揺動カム機構48,90aでは、位相変更機構64としてローラ71及びレバー部63bから成るものを説明したが、これに限られない。例えば、従動部材63と連結ピン62とを固定的に接続し、連結ピン62を回転させるように構成してもよい。また、ギヤを介して従動部材63の連結ピン62回りの位相を変更するように構成してもよい。
また、揺動カム機構48,90aは、1つの気筒に配置される吸気バルブ機構51A及び排気バルブ機構51Bの数に応じて設ければよく、1つの気筒に1つの吸気バルブ機構51A及び1つの排気バルブ機構51Bを有するエンジン、1つの気筒に3つ以上の吸気バルブ機構51A及び3つ以上の排気バルブ機構51Bを有するエンジンなどであっても、本発明を適用可能である。
更に、揺動部材61及び従動部材63の構成についても、上述した構成に限られない。図22乃至図24は、他の構成を有する揺動部材及び従動部材を備えた揺動カム機構を示す図面であり、図22(a),図23(a),図24(a)は夫々一の態様に設定されているときの揺動カム機構を示し、図22(b),図23(b),図24(b)は夫々他の態様に設定されているときの揺動カム機構を示している。また、図22乃至図24において、既に説明した揺動カム機構48と同様の構成になっている部分には、同一の符号を付してその説明は省略する。
図22に示す揺動カム機構100は、揺動カム機構48の揺動部材61及び従動部材63とは異なる構成の揺動部材101及び従動部材102を備えている。具体的に説明すると、揺動部材101については、従動部材102を連結ピン62を介して支持する軸受部103とタペット押圧部104との制御シャフト60回りの位相差B10が、揺動部材48の軸受部61bとタペット押圧部74との制御シャフト60回りの位相差に比べて小さく形成されている。また、従動部材102については、軸芯60aに沿った方向から見たときの駆動カム当接部105の最大の幅寸法B11が駆動カム当接部75の幅寸法より大きく形成されている。なお、ここで軸受部103とタペット押圧部104との制御シャフト60回りの位相差B10とは、軸受部103の軸芯103aと制御シャフト60の軸芯60aとを結ぶ線分と、タペット押圧部104の先端104aと軸芯60aとを結ぶ線分とが成す鋭角の角度と同義的に用いている。
図23に示す揺動カム機構110は、図22に示したものと同様の構成を成す揺動部材101を備える一方、既に説明した従動部材63,102とは異なる構成の従動部材111を備えている。この従動部材111が有する駆動カム当接部112は、駆動カム24aに押圧される方向に所定の肉厚寸法B12を有し、連結ピン62が挿通される挿通部63aから延設されている。また、この駆動カム当接部112は、図22に示した従動部材102の駆動カム当接部105において、円弧状摺接面105aを形成する摺接壁部105bのみから構成されるような形状となっており、摺接壁部105bと挿通部63aとを接続する支持壁部105c(図22参照)が省かれている。このような従動部材111は、図22に示した従動部材102に比べると軽量化が可能であり、駆動カム24aが回転したときの慣性モーメントの増加を抑制することができる。
図24に示す揺動カム機構120は、揺動部材121と従動部材122とを備えている。揺動部材121は、外嵌筒部61aから径方向の外方へタペット押圧部123が延設され、更に該タペット押圧部123から駆動カム24a側へ、連結ピン62を先端部で支持する軸受部124が延設されている。一方、従動部材122は、長手方向の中間部分が駆動カム24a側に近接するように湾曲した円弧状を成し、その基端部122aは連結ピン62に枢支され、先端部122bはローラ71に当接している。そして、従動部材122の外周面、即ち、円弧の外側の面に、駆動カム24aと摺接する円弧状摺接面122cが形成されている。
これら図22乃至図24に示した揺動カム機構100,110,120においても、上述した揺動カム機構48,90aと同様に、部品点数の削減によって駆動カム24aが回転したときの慣性モーメントを低減することが可能となっている。
なお、上述した実施の形態では自動二輪車1を例に説明したが、自動四輪車、小型滑走艇、不整地走行車両など、他の乗り物に搭載するエンジンに採用する動弁装置に適用してもよい。特に、座席型に比べて小型となりやすい鞍乗型の乗り物に好適に適用することができる。また、本発明に係る動弁装置の構成は、上述した実施の形態のみに限定されるものではない。例えば、乗り物以外に用いられてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。