JP3699492B2 - デジタルステレオ復号回路 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、受信された多重ステレオ信号を処理するためのデジタルステレオ復号回路であって、受信された多重ステレオ信号は、そのベースバンドの和又は合成信号(L+R)と、差信号(L−R)によって変調された副搬送波と、この副搬送波の半分の周波数を有するパイロット信号とを含んでいる、受信された多重ステレオ信号を処理するためのデジタルステレオ復号回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
多重信号の復号化のためには一方では副搬送波周波数の差信号の復調が必要となり、他方ではそれによって生じた差信号の、和信号によるマトリクス化が必要である。多重信号の中に含まれている大抵の場合は“パイロットトーン”と称されるパイロット信号は副搬送波の生成を可能にする。そのため副搬送周波数の差信号の復調に対しては同期復調器ないし接続された復調器が用いられ得る。これに関してはアナログ回路技術分野において種々異なる回路技術が公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、有利にはデジタル形式の多重信号の復号化を、デジタル回路技術における手段を用いて有利に実現させることである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば上記課題は、受信された多重ステレオ信号を処理するためのデジタルステレオ復号回路において、この回路は、
ローカルサンプリングクロック信号を使用して、互いに90゜位相シフトされた第1及び第2の基準搬送波信号を発生する手段を有し、
デジタルに多重信号を第1及び第2の基準信号の各々により乗算し、これにより第1及び第2の補正されていない混合又は積信号を発生するための個々の手段を有し、
第1及び第2の補正信号を形成するための手段を有し、この手段は、以下の手段を有する、すなわち、基準搬送波と位相結合されたパイロット信号から、90゜だけ相互にずらされた位相を有する第1及び第2のパイロット基準信号を発生するための手段を有し、
デジタルに多重信号を第1及び第2のパイロット基準信号の各々により乗算するための個々の手段を有し、
これらの乗算手段の出力側に結合された個々の第1及び第2のローパスフィルタを有し、
第1のローパスフィルタからの出力信号を二乗し、これから第2のローパスフィルタの出力信号の二乗を減算し、第1の補正信号を発生するための手段と、
第1及び第2のローパスフィルタの出力信号を互いに乗算し、この結果に2を乗算し、これによって第2の補正信号を発生するための手段を有し、
第1の補正信号を第1の補正されていない混合信号によりデジタルに乗算して第1の補正された混合信号を発生し、さらに第2の補正信号を第2の補正されていない混合信号により乗算して第2の補正された混合信号を発生するための個々の手段を有し、
第1の補正された混合信号と第2の補正された混合信号を加算して加算器出力信号を発生する加算器を有し、
加算器出力信号及び和又は合成信号を受信し、個々のオーディオ出力側において、ステレオ左チャネル信号及びステレオ右チャネル信号を生成するマトリクス回路を有することによって解決される。
【0005】
本発明の回路によって得られる主な利点は、基準搬送波がデジタル処理のために生成されたサンプリングクロックと結合されることである。これにより、デジタル回路の設計仕様においてより一層の簡単化が実現され、例えば記憶されたテーブルから基準搬送波のサンプリング値を読み出すようなことが可能となる。
【0006】
さらに本発明の回路によって得られる別の利点は、高いコストと過渡特性に関する問題とによって際立っているパイロット信号からの基準搬送波の再生が必要なくなったことである。本発明の回路装置においてはスイッチオンの直後ないし選局の直後に直ちに基準搬送波が使用可能になる。それにより差信号の復調が直ちに行われる。この復調は当然補正回路の過渡期間内においては最適には補正されていない。
【0008】
本発明の別の有利な実施例によれば、ローパスフィルタリングされた別の混合信号は、パイロット信号の振幅を表す信号の形成のために2乗されて加算される。これにより補正信号が、パイロット信号の振幅を表す信号によってその振幅の正規化のために制御される。
【0009】
パイロット信号の振幅を表す信号は例えば受信品質を識別するために別の方式で評価されてもよい。
【0010】
本発明の別の有利な実施例によれば、補正信号の形成のためにさらにそれぞれ1つのフィルタが設けられ、このフィルタの帯域幅は、受信放送局の選局切換直後は大きくてその後は低減するように制御可能であり、さらに当該フィルタは補正信号の振幅の正規化のために用いられる。
【0011】
これによりステレオ受信の迅速な検出と、選局切換後の混合信号の迅速な補正が可能になる。他方で定常状態での動作においては僅かな帯域幅がノイズの低減に寄与する。
【0012】
補正信号の導出のためのコストは、別の混合信号のローパスフィルタリングの後でサンプリングレートの低減が行われることによって著しく低減され得る。
【0013】
本発明のさらに別の有利な構成例及び実施例は従属請求項に記載される。とりわけ従属請求項には別の混合信号から補正信号を導出するために別の回路が含まれている。
【0014】
【実施例】
次に本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【0015】
図中同じ部分には同じ符号が付されている。本発明の実施例とその実施例の一部を表したものはブロック回路図で示されている。しかしながらこれは本発明による回路が、当該ブロックに相応する個々の回路を用いての実現にのみ制限されていることを意味するものではない。それどころか本発明による回路は特に有利には大規模集積回路を用いて実現可能である。この場合適切なプログラミングの下に、ブロック回路図に示されているような処理過程を実行するデジタル信号プロセッサを用いてもよい。本発明による回路装置は集積回路内の別の回路装置と共に放送受信機の主要な構成部分を形成するものである。
【0016】
図1によるステレオデコーダには入力側1を介してデジタル多重信号MPXが供給される。この多重信号は公知の形式で和信号L+R、差信号L−Rで変調された副搬送波及びパイロット信号を含んでいる。VHFステレオ放送採用の場合、副搬送波の周波数は38kHzであり、これに対してパイロット信号は19kHzの周波数を有している。パイロット信号の角周波数は以下では符号wpで示す。
【0017】
搬送波周波数の信号の復調のために、図1によるステレオデコーダでは乗算器2,3,4,5と1つの加算器6が設けられている。この加算器6の出力側からは別の乗算器7を介して、復調された差信号L−Rが多重信号と共に2つの別の加算器8,9からなるマトリクス回路に供給される。復号化されたデジタルステレオオーディオ信号LとRは2つのローパスフィルタ10,11を介して出力側12,13に達する。
【0018】
乗算器2、3をもちいて多重信号はまず基準搬送波と乗算される。この場合3での乗算は、2での乗算に対して90°だけ位相シフトされた基準搬送波で行われる。基準搬送波のサンプリング値はテーブル14から読み出される。この場合基準搬送波の周波数はサンプリング周波数の整数分の1となる。このサンプリング周波数は多重信号に基づいている。サンプリング周波数はそれ自体公知の形式で放送受信機において生成される。
【0019】
228kHzの有利なサンプリング周波数の下では基準搬送波の周期毎に6つのサンプリング値が得られる。多重信号MPXのサンプリング値は、
MPXn:=MPX(n・T)で得られる。この場合のnは以下に記載されるパラメータにおいて整数であり、個々のサンプリング値を表す。
【0020】
多重信号は以下の形式を有する。
【0021】
MPXn=(Ln+Rn)+(Ln−Rn)・sin(2wpn・T+2α)
+√A・sin(wpn・T+α)
テーブル14から読み出された基準搬送波の値(sin(2wpt)ないしcos(2wpt)との乗算により以下の混合信号が得られる。
【0022】
Imr1=MPXn・sin(2wpnT)
=1/2(Ln−Rn)・cos2α+…, (1)
Imr2=MPXn・cos(2wpnT)
=1/2(Ln−Rn)・sin2α+…, (2)
この場合αは受信されたパイロット信号と受信機内のサンプリングクロックから生成された基準パイロット信号との間の位相差である。比較的高い周波数の項は式(1)及び(2)には示されていない。なぜならこれらは後でローパスフィルタ10,11によってフィルタリングされてしまうからである。
【0023】
信号Imr1,Imr2は別の乗算器4,5に供給される。この乗算器4,5の出力信号は、以下において別の混合信号と称するが、以下の式で表される。
【0024】
Ims1=Imr1・G38c
=1/2(Ln−Rn)・cos2α・G38cn
Ims2=Imr2・G38s
=1/2(Ln−Rn)・sin2α・G38sn
後ほどまた記述するが、信号
G38s=sin2α
G38c=cos2α
である。これによりこれらの別の混合信号は:
【0025】
Ims1=1/2(Ln−Rn)・cos2α・cos2α
Ims2=1/2(Ln−Rn)・sin2α・sin2α
これにより加算器6の出力信号は1/2(Ln−Rn)となる。従って乗算器7によって供給された値D=2による適切な正規化により(Ln−Rn)となる。このDはさらにチャンネル分離を円滑にモノラル受信からステレオ受信へクロスフェードするために用いることができる。モノラル動作の場合にはD=0である。
【0026】
加算器8,9とローパスフィルタ10,11から成る次のマトリクス回路はデジタル出力信号LないしRを生成する。有利には有効信号より上の周波数の抑圧の他にデエンファシスを行うようにローパスフィルタを設計してもよい。
【0027】
以下では図1に基づいて、乗算器4及び5に供給される補正信号G38c,G38sの生成を説明する。この生成のために多重信号MPXはまず、90°だけ相互に位相のずれた2つの基準パイロット信号sin(wpt)及びcos(wpt)と乗算される。これらの基準パイロット信号はテーブル16から読出される。乗算器14,15の出力信号は、ローパスフィルタ17,18を介して導かれて信号SPC1n=√A・cosα及びSPC2n=√A・sinαを送出する。これらの信号の周波数はパイロット信号に比べて非常に低いのでサンプリングレートの低減が19,20において行われる。これにより回路網21においての比較的高いコストが節約され得る。これらの回路の出力信号は回路網21に供給される。この回路網21を用いて補正信号G38sとG38cが導出される。回路網21は以下において図2に基づき詳細に説明する。
【0028】
入力側23,24を介して供給される信号SPC1,SPC2はそれぞれ25,26において2乗され、27において相互に乗算される。2乗された信号SPC1,SPC2は28において相互に減算され、29において相互に加算される。2つの信号の積は30において“2”で乗算される。
【0029】
それにより全体的に以下のような信号が生じる。
【0030】
A=(SPC1)2+(SPC2)2
F38c=(SPC1)2−(SPC2)2=A・cos2α
F38s=2・(SPC1・SPC2)=A・sin2α
パラメータAは受信したパイロット信号の振幅を表し、減算器31と閾値回路32とを用いて切換信号STIに変換される。この切換信号STIは出力側33から取り出され、ステレオ受信の表示のために用いられる。
【0031】
ステレオ復号化へのパイロット信号の振幅変化の影響が無くなるように、信号F38cとF38sは、信号Aが供給されるフィルタ34,35によって成分Aを取り除かれる。成分Aの取り除かれた信号G38cとG38sは出力側36,37から取り出されて、乗算器4,5(図1)に供給される。
【0032】
フィルタ34、35の実施例は図3に示されている。それは2つの加算器41,42、2つの乗算器43,44及び1つの遅延素子45とからなる。入力側46,47,48には信号F38cとAと実数μとが供給される。この実数μによってステップ幅が制御され得る。図3によるフィルタの出力側49から得られる信号は以下のようになる。
【0033】
G38cn=G38cn−1+μ(F38cn−A・G38c−1)ないしは
G38sn=G38sn−1+μ(F38sn−A・G38s−1)
過渡期間の後ではG38cn=cos2αないしはフィルタ35(図2)の場合にはG38sn=sin2αとなる。数値μは固定的に設定される。しかしながらこの数値μと過渡期間を変化させることも可能である。例えば短い過渡期間をフィルタの大きな帯域幅に相応して放送局の新たな調整の直後に使用することも可能である。この大きな帯域幅はS/N比の向上のためにより小さな帯域幅へ低減される。
【0034】
図1にはさらに信号Dを供給する回路22が示されている。この信号Dは受信品質を表す。これは公知の形式で受信電界強度からか又は前述したように信号Aから導出され得る。回路22の出力信号Dは乗算器7に供給され、この結果ステレオ受信とモノラル受信との間の円滑なクロスフェーディングが可能となる。
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、基準搬送波がデジタル処理のために生成されたサンプリングクロックと結合されることにより、デジタル回路の設計仕様において著しい簡単化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による回路のブロック回路図である。
【図2】 図1によるブロック回路図中の補正信号導出用の回路装置の一部を示した図である。
【図3】 図2による回路装置において用いられるフィルタのブロック回路図である。
【符号の説明】
1 入力側
2 乗算器
3 乗算器
4 乗算器
5 乗算器
6 加算器
7 乗算器
8 加算器
9 加算器
10 ローパスフィルタ
11 ローパスフィルタ
12 出力側
13 出力側
23 入力側
24 入力側
28 減算器
29 加算器
31 減算器
32 閾値回路
34 フィルタ
35 フィルタ
Claims (11)
- 受信された多重ステレオ信号を処理するためのデジタルステレオ復号回路であって、前記受信された多重ステレオ信号は、そのベースバンドの和又は合成信号(L+R)と、差信号(L−R)によって変調された副搬送波と、該副搬送波の半分の周波数を有するパイロット信号とを含んでいる、受信された多重ステレオ信号を処理するためのデジタルステレオ復号回路において、該回路は、
ローカルサンプリングクロック信号を使用して、互いに90゜位相シフトされた第1及び第2の基準搬送波信号を発生する手段(14)を有し、
デジタルに前記多重信号を前記第1及び第2の基準信号の各々により乗算し、これにより第1及び第2の補正されていない混合又は積信号(Imr1,Imr2)を発生するための個々の手段(2、3)を有し、
第1及び第2の補正信号(G38c、C38s)を形成するための手段を有し、該手段は、以下の手段を有する、すなわち、
基準搬送波と位相結合されたパイロット信号から、90゜だけ相互にずらされた位相を有する第1及び第2のパイロット基準信号を発生するための手段(16)を有し、
デジタルに多重信号を前記第1及び第2のパイロット基準信号の各々により乗算するための個々の手段(15A、15)を有し、
これらの乗算手段の出力側に結合された個々の第1及び第2のローパスフィルタ(17、18)を有し、
第1のローパスフィルタ(17)からの出力信号を二乗(25)し、これから第2のローパスフィルタ(18)の出力信号の二乗(26)を減算(28)し、第1の補正信号(G38c)を発生するための手段と、
前記第1及び第2のローパスフィルタ(17、18)の出力信号を互いに乗算し、この結果に2を乗算し、これによって第2の補正信号(G38s)を発生するための手段(27、30)を有し、
前記第1の補正信号を前記第1の補正されていない混合信号(Imr1)によりデジタルに乗算して第1の補正された混合信号(Ims1)を発生し、さらに前記第2の補正信号を前記第2の補正されていない混合信号(Imr2)により乗算して第2の補正された混合信号(Ims2)を発生するための個々の手段(4、5)を有し、
前記第1の補正された混合信号(Ims1)と前記第2の補正された混合信号(Ims2)を加算して加算器出力信号を発生する加算器(6)を有し、
前記加算器出力信号及び前記和又は合成信号を受信し、個々のオーディオ出力側(12、13)において、ステレオ左チャネル信号及びステレオ右チャネル信号を生成するマトリクス回路(8、9、10、11)を有する、受信された多重ステレオ信号を処理するためのデジタルステレオ復号回路。 - ローパスフィルタ(17、18)の二乗された出力信号を加算し、パイロット信号の振幅を表すパラメータ(A)を導出するための手段(29)を有する、請求項1記載の回路。
- パイロット信号振幅(A)に応じて、第1及び第2の補正信号(G38c、C38s)の振幅を正規化するための手段を有する、請求項2記載の回路。
- 第1(34)及び第2(35)の可変帯域幅フィルタを有し、該第1(34)及び第2(35)の可変帯域幅フィルタは、放送局の選局切換に応じて、初期広帯域幅モードに入り、所定の時間経過の後で、狭帯域幅モードに回復する、請求項3記載の回路。
- ローパスフィルタ(17,18)の出力信号に応じてサンプリングレートを低減するための手段を有する、請求項1記載の回路。
- ステレオ放送の受信がなされているか否かの表示(STI)を発生するために前記パイロット信号の振幅(A)を閾値と比較するための手段(31、32)を有する、請求項2記載の回路。
- 基準搬送波及び基準パイロット信号による乗算はテーブルから読み出される値による乗算によって行われる、請求項1記載の回路。
- 補正された混合信号の和は乗算器(7)を介してマトリクス回路に供給され、前記乗算器(7)は受信信号の品質を指示する回路(22)によって制御される、請求項1記載の回路。
- さらに、補正信号の形成のために、ローパスフィルタリングされた別の混合信号から2乗化と相互間での減算によって1つの信号が発生され、ローパスフィルタリングされた前記別の混合信号から相互間での乗算と2との乗算によってもう1つの信号が発生され、
これらの信号の各々がそれぞれパイロット信号の振幅を表す信号の逆数と乗算され、
これらの乗算の結果が補正信号である、請求項2記載の回路。 - 補正信号の形成のために、ローパスフィルタリングされた別の混合信号から2乗化と相互間での減算によって前記補正信号のうちの第1の補正信号が発生され、
ローパスフィルタリングされた前記別の混合信号から相互間での乗算及び2との乗算によって前記補正信号のうちの第2の補正信号が発生され、
パイロット信号の振幅を表す信号は、マトリクス回路へのこの信号の供給の前に和信号と乗算される、請求項2記載の回路。 - 補正信号とパイロット信号の振幅を表す信号は、ローパスフィルタ(34、35)を通過する、請求項10記載の回路。
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